連日、ロシア軍の攻撃を受けるウクライナの首都キーウで取材を続けるフォトジャーナリストのKaoru Ng(クレ・カオル)さんが、日本のメディアが伝えない現地市民の暮しを伝えます。
2022年4月1日更新
今日は、キーウで知り合って以来、取材先を紹介してくれたり、車を運転してくれたりしたアリーシャ(右)の誕生日。彼女の自宅で開かれた、戦時下のバースデーパーティーに招かれた。
戦時下で「禁酒令」が出て酒類の販売が停止されるなか、苦労して入手したお酒でお祝いをした後、一服するアリーシャと彼女の元同僚のイリナ。アリーシャの誕生日の願いは、「キーウに早く平和が訪れること」だ。
この日、ウクライナとロシアの代表による停戦協議がトルコのイスタンブールで開催。同日、「キーウへの攻撃を緩和する」とロシア側が発表した。アリーシャの願いが、少しだけではあるが早くも叶った。
数週間続いてきた緊張感がちょっと和らぎ、女同士の「恋話」に花を咲かせる二人。時折、窓越しに爆撃の声が聞こえるが、戦争が嘘のように感じられる。
イリナとアリーシャは、戦争前までは「ただの元同僚」だったが、戦争が始まり一緒にボランティアをするようになりすっかり仲良しになった。
電気を消した部屋で楽しそうに話す二人の姿からは、戦争という「暗闇」の中に明るい光を放つ人々の「繋がり」が感じられた。これは、私が生まれ育った香港、そして取材で2020年に訪れたベラルーシで感じた気持ちと同じだった。
余談だが、イリナさんは元々タバコ嫌いだったが、戦争が始まってから気晴らしに加熱式タバコを吸って以来、手放せないという。
kaoru ng(クレ・カオル)
1986年、香港生まれ。2019年-2020年の香港民主化デモをきっかけにフォトジャーナリストに。昨年秋にイギリスへ移住し、今年2月18日以降キーウに滞在。現在、身の安全確保のためキーウ市内の宿泊施設や友人宅など5~6ヵ所を転々と滞在しながら取材を続ける。