連日、ロシア軍の攻撃を受けるウクライナの首都キーウで取材を続けるフォトジャーナリストのKaoru Ng(クレ・カオル)さんが、日本のメディアが伝えない現地市民の暮しを伝えます。
2022年4月6日更新
4月4日、ウクライナの首都キーウ近郊の街ブッチャで、街の中心部にある駅近くで暮らしている人たちに会った。彼らは、3月12日にブッチャが陥落してから3月31日にウクライナ軍が奪回するまでの約20日間、ロシア軍占領下の街で生き抜いてきた。彼らの表情からは、死者を悼む気持ちと同時に、生きている喜びがうかがえる。人道的災難に見舞われたにもかかわらず、ウクライナの人々の気の強さを感じた。
ユニセフ(国連児童基金)と連携関係にある人道団体「ボランティア・ムーブメント(Волонтерський рух)に同行して、物資を必要としている市民に食材、犬のエサなどを配った(上写真)。ブッチャの街はひどく破壊され、ロシア軍占領下では電気や水道が止まり、通信ネットワークも途絶え、食料もなくなった。それでも、行き先がなく、残ることを余儀なくされた市民が大勢いた。
現在、街では犠牲者の埋葬が行われ、電気や水道システムの修理が進められるなか、ロシア軍による住民虐殺などの戦争犯罪の証拠収集も行われている。かつては別荘地として栄えたこの街の復旧は、まだまだ先になりそうだ。
ブッチャの街中のある家の玄関には、
「私たちは、ただの平和な年寄りです」とロシア語で書いた紙が貼ってあった。
kaoru ng(クレ・カオル)
1986年、香港生まれ。2019年-2020年の香港民主化デモをきっかけにフォトジャーナリストに。昨年秋にイギリスへ移住し、今年2月18日以降キーウに滞在。現在、身の安全確保のためキーウ市内の宿泊施設や友人宅など5~6ヵ所を転々と滞在しながら取材を続ける。