「食物繊維は腸内細菌を元気にして、生活習慣病を防いでくれます」
青江誠一郎先生
あおえ・せいいちろう/大妻女子大学教授、農学博士、(一社)日本食物繊維学会理事長
日本人の食物繊維摂取量の推移
まず下のグラフをごらんください。日本人の穀物摂取量の減少にともなって、食物繊維摂取量も減少しています。その一方で厚生労働省は、1995年以降、食物繊維を「積極的な摂取が生活習慣病の予防に重要である」として、摂取基準を定めるほど評価するようになりました。
その理由をご説明します。
●池上幸江:日本食物繊維研究会誌, 1:3-12(1997)と「国民健康・栄養調査(平成30年)」および「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を元に編集部で作成。
食物繊維と一口に言っても、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水にも油にも溶けない「不溶性」の2種類があります。
水溶性食物繊維は、大麦、アガベ、キウイ、海藻、ゴボウに多く含まれていて、水に溶けるとドロドロのジェル状に変化します。これが腸、大腸の中で糖や脂質の吸収をさまたげて、血糖値を上げにくくしてくれます。さらにこのドロドロは、腸の中の善玉菌のエサになって腸内環境を整えてくれます。
不溶性食物繊維は、腸内の水分を吸って便のカサを増やして排便を促します。このときに腸を刺激して蠕動(ぜんどう)運動を助け、便通を改善する役割もあります。雑穀やきのこ類、甲殻類に豊富に含まれています。
厚生労働省は、食物繊維の1日当りの目標摂取量を「女性18g」「男性21g」と定めています(※1)が、1日の平均摂取量は「女性14.1g」「男性14.7g」とだいぶ不足しています(※2)。
現代の日本人が食生活で、もっとも食物繊維を多く摂っている食品は主食の「米」ですが、白米に含まれている食物繊維は野菜や豆類ほど多くありません。
(※1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より「18〜64歳の目標摂取量」。
(※2)厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成30年)」。
食物繊維はこんな食品に豊富に含まれています。
あなたは食物繊維、しっかり摂れていますか?