「65歳以上の5人に1人は、筋肉量が著しく低下しています」
野嶽勇一先生
のだけ・ゆういち/農学博士。専門は食品美容科学。日本食生活学会評議員。
50歳をすぎると、男女ともに筋肉量が低下していきます。高齢になるほど筋肉をつくり出す能力が衰えてくるので、若いころと同じ量の栄養素を摂っているだけでは筋肉量は減る一方です。加齢とともに外出する機会が減っていくと、ますます筋肉低下が心配です。
筋肉が減ると、生きるために必要なエネルギー量(基礎代謝)が低下して、体力の維持力や回復力が弱っていきます。たとえば免疫細胞を含む白血球の働きが鈍くなって、体内に侵入してきたウイルスや細菌を撃退する力も弱くなってしまいます。風邪や肺炎にかかりやすくなってしまいます。
画像提供:国立長寿医療研究センター 荒井秀典理事長
それでは、筋肉量を増やすためにはどうしたらいいのか。
筋肉の材料であるたんぱく質を摂ることが大切です。たんぱく質は体内で消化されて、アミノ酸に分解されます。このアミノ酸は体内で再構築されて筋肉、内臓、骨、毛髪、皮膚、爪に変わります。
それだけではありません。免疫の抗体やホルモン、血液(白血球や赤血球)の成分もたんぱく質からできていますから、生命活動を維持するために不可欠です。
たんぱく質は20種類のアミノ酸の組合せでつくられていますが、なかでも重要なのが体内ではつくることのできない「9種の必須アミノ酸」です。この9種は〝命の源〟と言われ、筋肉を強化するとともに体内でエネルギー源としても使われます。疲労回復にも影響し、免疫力を高める働きも期待できます。
たんぱく質を食べる重要性、これでおわかりですね。
※京都大学大学院医学研究科による「日本人高齢者におけるサルコペニア有病率」より。65〜89歳のサルコペニア有病率は「男性21.8%」「女性22.1%」。
たんぱく質は人体の20%を構成する命の源になる栄養成分。
あなたはたんぱく質、しっかり摂れていますか?