「DHAとEPAは脳の老化対策に欠かせません。積極的に摂ってください」
渡辺志朗先生
わたなべ・しろう/富山大学和漢医薬学総合研究所准教授。薬学博士、日本脂質栄養学会評議員。専門は脂質生化学。
脂質を構成する「多価不飽和脂肪酸」は、人の体の中ではつくることができないので「必須脂肪酸」と呼ばれています。必須脂肪酸の中でもDHA、EPAは、「オメガ3脂肪酸」に分類され、主にマグロやいわし、サバなどの青魚に多く含まれています。
またオメガ3脂肪酸の中でもエゴマ油やアマニ油のような植物油に多く含まれる「α -リノレン酸」の一部は、体内でDHA、EPAへ変換されます。
Nguyenらネイチャー誌509:503-506(2014)等をもとに編集部で作成。
DHAは脳の「血液脳関門」を通過できる成分です。脳細胞にまで届いたDHAは細胞膜を柔らかくし、情報を伝える神経伝達物質の受け渡し場所であるシナプスの働きを活性化させます。
情報を伝える神経伝達物質が「声」だとすれば、DHAはこの声が大きく聞こえるように「耳」の感度を上げる働きをしています。加齢期でもDHAを摂ることによって脳細胞が活発に働けば、脳の老化のスピードを鈍化させることができるのです。
また、EPAには血管内の赤血球をやわらかくして血流をスムーズにする働きがあります。血流がスムーズになると血管がしなやかになり、血栓ができにくくなります。認知症原因の2割と言われる「脳血管性認知症」の対策としても期待できます。
一方、必須脂肪酸にはサラダ油や肉類の脂などに含まれる「オメガ6脂肪酸」があります。このオメガ6脂肪酸は健康に悪いわけではありませんが、過剰に摂取すると動脈硬化のリスクが高まり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしやすくすることが最近わかってきました。肉や揚げ物などの摂り過ぎには注意が必要です。
オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は
体内でつくれない必須脂肪酸。
あなたはDHA・EPA、しっかり摂れていますか?