第1回

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ウガンダ

リッチーエブリデイの
グッドウィルバッグ

リッチーエブリデイとは

『グッドウィルバッグ』の商品ページを見る

リッチーエブリデイ代表
仲本千津さん

静岡県に生まれ、大学院卒業後はメガバンクに入行。アフリカで農業支援を行うNGOでの勤務を経て、2015年にお母様の律枝さんとともにリッチーエブリデイを共同創業した。

アフリカンプリントとシングルマザー、
ウガンダで運命の出会い

 私が初めてウガンダを訪れたのは、アフリカで農業支援を行う国際NGOに勤めていたときでした。仕事でたまたま駐在することになったウガンダで、友人と現地のローカルマーケットへ出掛けたときに、たくさん積まれていたアフリカンプリントの布地に目がクギ付けになってしまって。

日本にはない鮮やかな色柄が魅力的なアフリカンプリント。
リッチーエブリデイでは、品質がよく、排水浄化や水の再利用など
環境に配慮した生産工程でつくられた生地を、
ガーナの工場から定期的に買い付けています。

 日本にはない鮮やかな色彩感覚に、柄も自然をモチーフにした伝統柄からハンバーガーや扇風機みたいに今風な柄まであって、すごく自由で面白いんです。友人と2~3時間ずっと、これカワイイ! これもカワイイ!と言いながら興奮しっぱなし(笑)。これがひとつめの運命の出会いです。

 ふたつめは、たくさんのシングルマザーたちとの出会いです。

ウガンダ共和国はアフリカ大陸の真ん中より少し東側に位置する内陸国。赤道直下ながら、首都カンパラは標高が1,200メートルもあるため、年間を通して軽井沢のように過ごしやすい気候が特長です。

 ウガンダは法律婚が少なく、一夫多妻制の国ということもあって、夫が知らないところで別の家族をつくっていたということもよくあります。こうした夫婦の問題やDVで家を追われる女性に加えて、HIVや紛争で夫を亡くした女性も多いので、シングルマザーは決して珍しくない存在ですが、そのうち定職に就ける女性はほんの数パーセント。公的支援も全くない中で、ほとんどの人が日銭稼ぎの不安定な仕事をしながら、家事や育児をこなしているのが現状です。

 しかも最近は家賃や食費、光熱費などの生活費がどんどん上がっていて、時には1つのパンを母親と子どもたちで分け合って…という切実な話も聞きます。

ウガンダの首都カンパラ市中心部から車で30分ほどの郊外にある工房。
現在は17人が社員として働いていますが、みんな勤勉で、
高い縫製技術を持った女性ばかりです。

 私は学生時代からアフリカの紛争における平和構築について研究していた経験もあり、卒業後も社会人として働きながら、アフリカの貧困や社会課題を解決する仕事で起業したいと、ずっと思っていました。

 縫製の技術もやる気もあるのに、安定した仕事に恵まれないウガンダのシングルマザーたちに雇用を生み、同時にアフリカンプリントの魅力を日本へ伝えられる仕事。これだ! と思いスタートしたのが、リッチーエブリデイでした。

コロナ禍で、
最悪は会社が潰れることも覚悟した

 今年で創業から8年、おかげさまでウガンダのシングルマザーがつくるバッグの熱心なファンも増えて、業績も順調に伸びていますが、これまで続けてきて、ウガンダでの仕事は想像以上に大変なことも多いです。

 たとえば輸出書類の手続き1つ取っても、ウガンダの人たちは急がずスローペース。そういうお国柄に合わせて先回りして動かないと、納期に間に合わない! ということになりかねません。

 仕入れの商談でもこちらが外国人だと、あり得ない高額な値段をふっかけられたりすることもありますし、驚くのは国の法律が事前の周知もなく勝手に変わっていたり、ガーナから布を輸入する際の関税が突然ハネ上がったりすることもよくあって。予測不能なことが多々起こるので、先の見えない不透明な中を辛抱強く進んでいく力が求められます。

工房で働くシングルマザーの女性たち。
年齢では40代がいちばん多く、中には5~6人の子供を育てているお母さんもいます。

 特にコロナ禍のときは、政府の方針で工房を閉鎖せざるを得なくなり、一時は商品の製造が完全にストップ。日本からウガンダへ入国することもできず、最悪は会社が潰れることも覚悟したほど不安な時期もありました。

 ようやく今は年に3回、1回につき1ヵ月ほどウガンダに滞在して仕事ができるようになりましたが、それでも現地ではトラブルや問題は日常茶飯事です。私の仕事のほとんどはトラブルシューティングかもしれないですね(笑)。

善意で寄付した古着が、
じつは途上国を苦しめている?

 コロナ禍ではウガンダでも観光客が激減して、困っている現地のお店を少しでも支援できればと、おみやげ品などの雑貨も私たちのお店で扱うようになりました。

 それでも、やはりリッチーエブリデイの主力商品は何と言ってもバッグ。中でもアフリカンプリントの伝統柄を使ったものが定番の人気ですが、常に新柄や新作が出るのを待っているコレクターのファンも多いので、現地を駆け回って珍しい生地を探したり、新作をデザインしたりするのも私の大切な仕事です。

 今回紹介いただく『グッドウィルバッグ』は2022年に発売したものですが、素材に使っているのは、ウガンダの古着マーケットで売られているデニムを洗濯・解体して再利用した生地です。

「グッドウィルバッグ」にあしらわれた色とりどりのフリルは、
別のバッグの製造過程で出たアフリカンプリントの端切れをつなぎ合わせたもの。
ひとつひとつ表情が異なる、すべてが1点物です。

 ウガンダのマーケットでは、古着を山積みにして売っているお店がたくさんあります。そのほとんどは、欧米や日本などの先進国から運ばれてきたもの。1枚が数十円~100円程度で安く衣類が買えるので、現地でも人気があるのですが、ただそのせいで自国でつくられている新品が売れなくなってしまう。結果的に国内の縫製工場がどんどん姿を消して、雇用が失われています。さらに、売れ残った古着が街中に大量投棄されたり、埋め立て場に廃棄されたりするゴミ問題も起きていて、大きな社会問題になっているんです。

 おそらく皆さんも、どこかで古着を寄付した経験のある方は多いのではないでしょうか? 私たちは善意のつもりでも、じつは回りまわって途上国の人たちの生活を圧迫しているかもしれないとしたら…

 そんな現実もあることを知ってもらえたらと、このバッグにはグッドウィル=善意という名前を付けました。皆さんに手にしていただくことで、改めて支援のあり方を考えるきっかけになれば嬉しいですね。

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