池田敏さんのドラマ批評

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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イカゲーム シーズン3

2025/7/11公開

危険な魅力に満ちた“ゲーム”はまだ続く?

Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~3:独占配信中

※このレビューにはシーズン1・2のネタバレがあり、シーズン3についてもほんの少しネタバレをしています。全3シーズンを完走した上でご覧ください。


 シーズン1に続いてシーズン2も世界的大反響を呼んだ韓国のドラマ『イカゲーム』。しかしシーズン2は以前この「ドラマ批評」で筆者がご紹介した通り、賛否両論が分かれることになった。あらためて少しだけシーズン2のネタバレをしつつ、ネタバレ厳禁でシーズン3の見どころをご紹介してみたい。

 敗者は殺され、参加者が減れば減るほど勝者の賞金が増える非情のデスゲーム。しかも最終的に1人しか生き残れない。そこに参加し、最後の1人となって賞金456億ウォン(約50億円)を受け取った男ソン・ギフン(イ・ジョンジェ)だが、大金を持って海外に向かう直前、今後のデスゲームを終わらせようと決心し、シーズン1は幕を下ろした。

 シーズン2はその3年後。ギフンはゲームを主催する組織の正体を突き止めんと、大金を使ってプロの借金取りたちを雇って行動を起こしたが、気がつけばまたゲームの会場にいて参加者になっていた(悪夢だ!)。今度も最初のゲームは“だるまさんがころんだ”。すべてのゲームが韓国の子どもたちの遊びをベースにしている。

Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~3:独占配信中

 第3話でようやく新たな物語のスタートラインに立ったことに、シーズン1のファンはいらっとしたかもしれない。とはいえギフンが“だるまさんがころんだ”に再チャレンジすること、シーズン1の終わりでやっと顔を見せたフロントマン(韓国のスーパースターであるイ・ビョンホン)がその正体を隠してイノと名乗り、トランスジェンダーの元軍人チョ・ヒョンジュ(パク・ソンフン)など多種多様な参加者がいるのはスリリングで、『イカゲーム』の世界の進化を思わせた。2番目以降のゲームもユニークで、そこはシーズン1のファンも夢中になったはずだ。

 しかし、シーズン2の最後、参加者たちの一部は反乱を起こし、ゲームを主宰する組織に反抗。壮絶な銃撃戦を繰り広げたが、シーズンの最後で物語が終わらないことに不満を感じた人は多かっただろう。推測するに、シーズン1があまりに人気が高かったので、シーズン2を前後編に分けて後編をシーズン3にすることにしたのか。それを事前に告知していなかったからファンは落胆した。

 それでも実際、シーズン2は5週連続でNetflixの週間グローバルTOP10(非英語シリーズ)の第1位に到達し、Netflix史上最多ビューの第2位を記録。つまりシーズン1に負けず劣らず、見始めると止まらなくなる面白さがシーズン2にもあったと考えられる。

Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~3:独占配信中

 さて、待ちに待ったシーズン3はどうか。これは筆者の感想だが、いくつかあるゲーム(見てのお楽しみなので説明しない)は、どれも楽しめた。引き続いて各ゲームの後に参加者たちがゲームを続けるかどうかの投票を重視。現実の世界の政治を連想させるような、生き残った者同士の駆け引きは前2シーズン以上に心理サスペンスの緊迫感を加えた。特に“最後のゲーム”は圧倒的。イ・ジョンジェもシーズン1に匹敵する熱演だ。

 一方、ゲーム会場の外、消えたギフンを探す面々のストーリーはあまり盛り上がらず、また、参加者たちを取り締まるピンクガードのある女性をめぐる展開も今ひとつか。

 そして気になるのはこのシーズン3が最終章になると告知されているが、シーズン4以降もあるかどうかだろう。筆者は“ある!”に一票だ。シーズン3を実際に見ると分かるが、新たな参加者たちさえいれば、まだまだ続編を作るのは可能としか思えない。

 ロングランシリーズ化するなら前述したようなシーズン2・3の問題点を整理・切磋琢磨する必要はあるように思うが、『イカゲーム』の背後にある“闇”はいつまでも覗き込んでいたくなるほど、危険な魅力に満ちている。

Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン1~3:独占配信中

今回ご紹介した作品

Netflixシリーズ「イカゲーム」シーズン3

配信
Netflixにて世界独占配信中

情報は2025年7月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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