池田敏さんのドラマ批評 - ハイ・ポテンシャル

地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。

※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。

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ハイ・ポテンシャル

2026/3/23公開

IQ160の頭脳を持つシングルマザーが次々と事件を解決

画像:ハイ・ポテンシャル 1

© 2026 Disney and its related entities

 海外ドラマをたくさん見ていると、何年も長く続きそうな新作をつい探しがちになるが、かつて米国のドラマは毎週の各話にオチがある“一話完結形式”のドラマが主流だった。中でも『24 -TWENTY FOUR-』以来、物語が次回に続く“連続形式”のドラマが興隆しているが、視聴率を調べると各話で事件が解決する犯罪ミステリー、米国なら『CSI』の各シリーズや『クリミナル・マインド』の本家、日本なら『相棒』『科捜研の女』のほうが人気は安定し、結果的に“連続形式”がかなわない長寿ドラマになることも多い。

 そんな米国で人気急上昇を果たしたのが『ハイ・ポテンシャル』だ。本国ではTV(ABCネットワーク)と配信、いずれも好調だ。

 基本はオーソドックスな犯罪捜査もの。ロサンジェルス市警のある分署の重大犯罪課は日々難事件に挑むが、本作では頼りになる助っ人(給料も出るコンサルタント)が活躍。彼女はモーガン・ギロリー。子ども3人を育てるシングルマザーだが、IQはなんと160。犯行現場の検証で小さな痕跡も見つけ出し、容疑者たちと会えばおかしな挙動は見逃さない。理系の知識もたくさん持っている。

画像:ハイ・ポテンシャル 2

© 2026 Disney and its related entities

 しかし、少々変わっている。英語でいう“HIP(High Intellectual Potential)”であり(タイトル『ハイ・ポテンシャル』の由来)、知能の高さゆえに周囲と噛み合わないことが多く、しばし周囲の空気を読めないことも。シングルマザーながらいつも超ミニスカート姿なのもかなり風変り。だからか深夜の警察分署で清掃員として働いていたが、犯罪捜査の才能があるのを見出され、警察のコンサルタントとなって再出発する。

 ……と、これだけならよくある“天才型・素人探偵&捜査官もの”だ。それぞれ主人公が一瞬見たものも忘れない記憶力を持つ「アンフォゲッタブル 完全記憶捜査」、霊能力を持つ「ミディアム 霊能者アリソン・デュボア」などと似ていると思われるかも。

 しかし本作が斬新なのはそのスピード感だ。各話は45分前後だが、事件の発覚から解決までを描きつつ、主人公モーガンの家庭生活、警察の人間模様まで、びっしりと詰め込んでいる。そして出色なのは犯人の動機もしっかりと描く点。“科学捜査”が題材のドラマの中にはトリックの描写を重視し過ぎて、犯人の動機が曖昧なことも多い。また事件を理解するために短いインサート・ショットを多用する、そんな工夫も惜しんでいない。

 つまりモーガンの天才的頭脳を疑似体験させられているかのよう。一話見逃すと分からなくなる連続ドラマ以上に、一瞬も目が離せない高い(ハイな)テンションが魅力だ。

画像:ハイ・ポテンシャル 3

© 2026 Disney and its related entities

 それにしてもモーガンのミニスカート姿は、筆者のようなおっさんじゃなくても見ていて素直に楽しくなるのではないか。こういう描写を見てヒロインの性的魅力を強調し過ぎていると眉をひそめる人がいるかもしれないが、ミニスカ姿の素人探偵という意外性がそもそもポップで、それはまたモーガンの常識にとらわれない生き様を象徴している。ジュリア・ロバーツがアカデミー賞で主演女優賞に輝いた映画『エリン・ブロコビッチ』の主人公を、探偵か刑事にしたらこうなるのでは?

 シーズン2の第11話「消されたプレイヤー」では、映画『硫黄島からの手紙』やドラマ『SHOGUN 将軍』などハリウッドで活動する俳優、尾崎英二郎氏がゲスト出演。日本から米国に渡って20年近い尾崎氏でさえ、本作のスピードの速い展開には戸惑ったとか。

 夜、寝る前の小一時間、ヒマつぶしに楽しむ……のも悪くないが、むしろ気がつけばエキサイトして眠れなくなってしまう可能性大。そんな極上のエンターテインメントだ。

画像:ハイ・ポテンシャル 4

© 2026 Disney and its related entities

今回ご紹介した作品

ハイ・ポテンシャル

配信
ディズニープラス スターで独占配信中

情報は2026年3月時点のものです。

筆者一覧(五十音順)

相田冬二

映画批評家

池田敏

海外ドラマ評論家

伊藤ハルカ

海外ドラマコラムニスト

今祥枝

映画・海外TV批評家

影山貴彦

同志社女子大学メディア創造学科教授・コラムニスト

小西未来

映画・海外ドラマライター

辛酸なめ子

漫画家・コラムニスト

辛淑玉

人材コンサルタント

田幸和歌子

フリーライター

寺脇研

映画評論家・元文部官僚

成馬零一

ライター・ドラマ評論家

ペリー荻野

コラムニスト

松本侑子

作家・翻訳家

村上淳子

海外ドラマ評論家

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