地上波にBS・CS、ネット配信と、観られるドラマの数がどんどん増える昨今、本当に面白いドラマはどれなのか──。ドラマ批評の専門家や各界のドラマ好きの方々が、「これは見るべき!」というイチオシ作品を紹介します。あなたの琴線に触れるドラマがきっと見つかるはず。
※紹介する作品は、コラム公開時点で地上波・BS/CS・ネット配信などで見られるものに限ります。
クロエマ
2026/7/17公開
杉咲花×多部未華子主演甘くてダークな占いミステリー

©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW
6月12日からAmazonプライムビデオで配信が始まった全5話のPrime Original ドラマシリーズ『クロエマ』は、甘くてちょっとダークな占いミステリーだ。
30歳のエマ(杉咲花)は恋人、仕事、住む家を失い、迷い込んだ屋敷の玄関先で横になって休んでいたところ、謎めいた資産家・クロエ(多部未華子)に助けられ、次の住む場所と仕事が見つかるまで、屋敷に居候させてもらうことになる。
そして、エマは占いを得意とするクロエといっしょに、日曜日だけ開く占いのお店を始めることになる。

©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW
クロエのお店には、一癖も二癖もある相談者が訪れる。相談者の悩みを通して描かれるのは容姿の美醜に関する悩みや、誹謗中傷の書き込みをするクレーマーが抱える鬱屈といった現代的な問題。各話で描かれるのは社会に蔓延する様々な格差だが、持たざる弱者の鬱屈だけでなく、一見、満たされているように見える強者が抱えている周囲には理解されない苦しみも描いているのが、本作のフェアなところだろう。
相談者はクロエの占いを通して自分の問題と向き合っていくのだが、占いで相談者の抱える問題が解決されるミステリーだと思って観ていると、意外な場所に連れて行かれる。
その決着の付け方が、少しだけ甘くてダークなところが本作の魅力だ。
原作は海野つなみの同名漫画(講談社)。ドラマ化されて話題になった『逃げるは恥だが役に立つ』(講談社)の作者として知られる海野の作風はロジカルで、社会的なテーマをクールなコメディに仕上げる手腕が見事だ。『クロエマ』でも、扱いが難しい格差にまつわるテーマを、ダークな語り口で楽しく見せている。

©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW
『クロエマ』のコミックス第1巻の「後書き」によると、マジシャンと物理学者の男女バディが様々な事件に挑むダークな笑いが散りばめられたミステリードラマ『TRICK』(テレビ朝日系)と、女社長の悩みをコミカルなタッチで描いたスクリューボール・コメディ『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)という二作のテレビドラマのような漫画を描きたいと海野は考えていたそうで、当初は『トリック or とわ子』と呼んでいたようだ。
ドラマ化された『クロエマ』を観ていると、確かに資産家のクロエが占いで相談者の謎を解いていく姿には、この二作の要素が反映されていると感じる。
一方、全話の監督は今年の冬クールに放送され、大きな反響を呼んだ恋愛ドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系、以下『冬のなんかさ』)の脚本・監督を手掛けた今泉力哉が担当している。
Amazonプライムビデオで今泉がドラマを手掛けるのは2024年の「1122 いいふうふ」に続いて二作目。『1122 いいふうふ』は、渡辺ペコの漫画『1122』(講談社)が原作で、不倫を許容しているセックスレスの夫婦の物語で、脚本は今泉力哉の妻・今泉かおりが担当していた。
本作は社会的に正しいとされる夫婦の関係と個人が求める性愛の齟齬によって生まれる心の機微を描いた、切なくて恐ろしい恋愛ドラマだった。
対して、『クロエマ』は引き続き、今泉かおりが脚本を担当しているが、エマとクロエという正反対の女性の関係を通して、富裕層と貧困層という強者と弱者の共存と連帯は可能か? という難しいテーマに挑んでいる。

©海野つなみ/講談社 ©2026 WOWOW
『クロエマ』は多部未華子と杉咲花のW主演で、杉咲は『冬のなんかさ』に続いての今泉作品だが、コメディ寄りのミステリーということもあってか、前作のシリアスな芝居と違い、コミカルで楽しい芝居を見せている。
今泉が得意とする淡々とした演出は健在だが、同じ監督・同じ俳優の作品でありながら、ここまで真逆のドラマになるのかと驚かされる。
『冬のなんかさ』の杉咲花に衝撃を受けた人は是非『クロエマ』も観てほしい。
今回ご紹介した作品
Prime Original ドラマシリーズ『クロエマ』
- 配信
- PrimeVideoにて世界独占配信中
情報は2026年7月時点のものです。














