特集 明るいお葬式。現場から東海林がお伝えします。

みなさんこんにちは、東海林のり子です。リポーター歴50年、
200名以上の著名人の方のお葬式をリポートしてきましたが、
この数年でお葬式の形も大きく変わってきました。
私も100歳まであと10年、大往生の暁にはみんなに「明るく」送ってほしい。
私の理想のお葬式を探しに現場を取材してきました。

エンディング
ドレス

「こんなに素敵な死装束をデザインしてもらえるなら、ぜひこれを着て送られたい」(東海林さん)

オーダーメイドのエンディングドレスを着て送られる。

 どうも、現場の東海林です。最初の「明るいお葬式」の現場は、「エンディングドレス」です。死装束って自分では選べませんよね。でも、お葬式も結婚式と同じで人生で一度っきりの大イベント。ウエディングドレスと同じように自分の好きなドレスを着て出棺されるのもいいと思う。
 デザイナーの杉下由美さんのこだわりは「横になったとき、どれくらい綺麗に見えるか」だそうですね。

「お客様と対話を重ね、その人の人生をデザインに落とし込み、型紙からつくり上げていきます」(杉下さん)

「棺に横たわった状態でお召しになるので、細くなってしまった腕を生地が拾わないように袖口にタックをたっぷりとって太くしています。また、首元は痩せていたり手術の痕が見えてしまうことがあるので、寝かせていても襟がしっかり立つよう設計しました。燃え残りがないように、パールはコットンパール、ファスナーはプラスチック製を使用しています」(杉下さん)
 一つ一つのディテールが本当に素敵。じっくり見入ってしまいます。参列者が「あら、きれい」、「いい生地ね」なんて言って、出棺が遅れてしまいそう。

【編集部より】
 既製品は即日発送。オーダーメイド品は、杉下さんが依頼主と対話をしてイメージ画を作成、パターンを起こし、2〜3ヵ月かけてつくり上げます。

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ハワイアン

「私たち世代にとってハワイアンは特別な音楽。ウクレレが式を明るくしてくれます」(東海林さん)

別れではなく「愛の歌(アロハ・オエ)」で送られる。

 私のお葬式でハワイアンを生演奏してくれたら……そんな願いを叶えてくれるのが、プロハワイアン奏者の鴻池薫さんとアネラさんによる「ハワイアン葬」です。お葬式ではどんな曲を演奏されるんですか。
「ハワイアンには別れの曲はないので、ラブソングである『アロハ・オエ』や『バリー・シェルズ』だったり、望郷を歌った『ブルー・ハワイ』などを演奏します。もちろん、故人様の好きな曲も演奏できますよ」(鴻池さん)

日本を代表するハワイアン奏者の鴻池薫さんとアネラさん。

『ブルー・ハワイ』! とっても懐かしい。73年のプレスリーのハワイ公演を、運よく現地で観られたあの感動を思い出しました。私のお葬式では、ぜひフラダンスも踊ってほしい。

【編集部より】
 ハワイアン葬を手がけるのはクライス音楽事務所。プロの演奏家が200人以上所属しているので、ハワイアンだけでなく、クラシック、ジャズ、雅楽、民族音楽まで幅広いジャンルの音楽葬をオーダーできます。全国対応可。

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餅つき葬

「葬儀でお餅搗きとは驚いたけれど、100歳を超えた大往生ならなるほど、めでたいものね」(東海林さん)

参列者がお餅を搗いてめでたく送られる。

 お葬式にお餅をお供えする宗派や地域はありますが、参列者でお餅搗きをして故人を送り出すお葬式は初めて聞きました。私は今年で90歳になるけれど、100歳まで大往生したら、「おめでとう!」って気持ちよく送り出されるのもいいですね。
「お餅搗き葬」を行なっているのは葬儀会社の太平洋企画さんです。先日も101歳のご長寿をお餅搗き葬で送られたそうですね。

「お餅好きが高じて、鎌倉で『湘南しり餅』というお餅屋さんを始めました」(古賀社長)。

「お餅が好きだった方で、生前に『私のお葬式に、ぜひ』とご依頼がありました。参列者の方たちにもお餅を搗いてもらい、搗き立てのお餅を食べていただきました」(古賀太平洋社長)
 お餅搗きパフォーマンス、圧巻です。空に響く気持ちのいい掛け声、ぺったんぺったんと湯気をもくもく出しながら搗かれる真っ白のお餅。気分が高揚してきますよ。何より、搗き立てのお餅のおいしさったら!

【編集部より】
 3人の演者さんによるお餅搗きパフォーマンスと100人分のお餅がセットになったプランです。葬儀代とは別に15万円かかります。対応地域は東京、神奈川、埼玉、千葉。

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坊主バンド

「ロック好きな私にぴったり。タテノリの軽快なリズムに思わず体が動き出しました」(東海林さん)

般若心経のロックバージョンで送られる。

 現職のお坊さんたちがお経をロックに乗せて歌って故人を送り出す「坊主バンド葬」です。リーダーの藤岡善信さん(写真中央)は浄土真宗のお坊さんなんですよね?
「ええ、そうです。ふだんは埼玉県入間市のお寺で副住職をしています。ベースの彼女も浄土真宗の尼僧です。で、ギターの彼は曹洞宗」(藤岡さん)
 あら、性別も宗派もバラバラなバンドなのね。とっても自由で、ロックでいいと思う。どうしてお経をバンドで演奏しようと思ったのでしょうか。
「宗教と音楽は密接な関係があります。僧侶が唱えるお経は声明と言って、音楽的な要素が入っているんです。誰にでも共感、理解していただけるように、弦楽器や打楽器を使ってバンド演奏という形式を選びました」

 ちなみに、お葬式ではどんな曲を演奏されるの?
「子どもでも分かるように、般若心経を私が現代語に訳して歌っています。先日は、『海でお葬式がしたい』という故人様の願いから、船上で弾き語りをしてきました」

【編集部より】
生前に打ち合せをしておくと、故人のオリジナルソングを藤岡さんが作詞・作曲して披露してくれます。スケジュールが合えば、全国どこでも駆けつけてくれるそうです。

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遺人形

「ここまでリアルにつくれるなら、5年前に亡くなった愛猫のミミちゃんをつくってほしい」(東海林さん)

遺影ではなく遺「人形」で個人を偲ぶ。

 遺影の代わりに遺「人形」を飾って故人を偲ぼう、というのがロイスエンタテインメントの廣瀬勇一社長のお考えだそうです。間近で見ると想像以上にリアルで驚きます。すごい再現技術ですね。
「ありがとうございます。写真をもとに3Dデータを作成し、最新の3Dプリンターで出力、着色します。写真は正面を向いたものがほとんどですので、熟練の造形デザイナーが想像の域を超えないように、横顔や後ろ姿を可能な限りご本人に近づけるように制作しています」(廣瀬社長)

「正面の他に横顔や後ろ姿が分かる写真があると、つくりやすいです」(廣瀬社長)

 私は5年前に亡くなった愛猫のミミちゃんをつくってほしいな。
「もちろんつくれます。ただ動物は人間より再現が難しいので、お時間とコストがかかってしまいます」

【編集部より】
 制作できる人形の大きさは20~30cmまで。3Dプリンターで出力する前に画像で確認できます(修正は1回なら無料)。納期は2ヵ月ほど。

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クローゼット

「使い捨てではなく、生きている間はクローゼットとして使える棺とは、アイディアですね」(東海林さん)

クローゼット棺を置いてメメント・モリ(死を想う)を常に意識する。

 これ、ただのクローゼットじゃないんです。横にして中のハンガー部分を外すと、なんと棺になるんです。もの余り時代に適した素晴らしいアイディア。開発者の棺作家、布施美佳子さん、この発想の源泉は?
「これまでオーダーメイドの棺を製作していましたが、『家に置いておく場所がない』と諦める人が多かったんです。家具なら置いていても違和感はないな、と閃いて、クローゼットという形に行きつきました」(布施さん)

「お好きなデザインに装飾したオーダーメイドの棺(写真・蓋)もつくれます」(布施さん)

 気になるお値段は税込みで4万1800円だそうです。一日で燃やしてしまう棺と比べて、クローゼットとして文字通り死ぬまで使えるわけだから、リーズナブルじゃないかしら。
「ありがとうございます。ご依頼いただければ、東海林さんのお好きな柄にオーダーメイドいたしますよ」

【編集部より】
 梱包材や家具にも使われている特殊強化段ボール紙製。重さは約3キロで、大人一人だと10分ほどで組み立てられます。段ボール製の棺を多く手がけるウィルライフ(2000年設立)製。

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編集部からのおすすめ。

小さい
仏壇

高さ25.5cmしかないミニ仏壇。仏間がなくても大丈夫。

 マンション住まいの人や、仏間がない家にお住まいの人におすすめの、ミニ仏壇セットです。
 位牌をおさめる厨子は高さ25.5㎝、横幅は15.5㎝とコンパクトなので、キャビネットの上や、テーブルの上に置いても場所を取りません。木材は国産のウォールナット材。天然素材の木の風合いと、モダンなデザインが和洋問わずお部屋と調和します。
 厨子の内側には取り外しができる「形見箱」がついているので、故人の遺品やお骨を保管しておけます。形見箱を外せば背の高い位牌も置けます。仏具は真鍮製の花立て、前香炉、灯立て、おりんの4点セット。付属の仏具板に乗せてお使いください。
 つくっているのは仏壇・仏具の老舗、ルミエール(1985年創業)。静岡市にある工房で、熟練の仏壇職人さんが一つずつ手作業でつくり上げています。限定30セット。

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リポートを
終えて

「形式にとらわれない、自由で明るいお葬式がどんどん増えていくといいですね」(東海林さん)

 昔のお葬式は「対外的」な要素が強かったけれど、いまはそんな時代ではないんですね。
 少子高齢化の影響もあるけど、みんなのお葬式に対する価値観はコロナ禍が大きく変えましたね。「あれ、家族だけでもいいんだ」って。昔に比べてしがらみ、というか形式が崩れたいまこそ、「自分の好きなように」お葬式をあげるのがいいと思います。好きだった音楽を演奏してもらって、好きだったご飯をみんなに食べてもらって、そして好きな服を着て送られる。
 私は相棒とも呼べるマイクをお棺に入れたいけれど、「金属だから燃やせないの」ってこぼしたら、編集部の方がこれを見つけてくれました。『木製の納棺できるマイク』ですって。カラオケ好きの人用らしいけど、こんなユーモアがあってもいいわよね。きっと参列した人も「東海林さんらしいなあ」って笑ってくれるはずよ。

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以上、現場から
東海林のり子が
お伝えしました。

しょうじ・のりこ●1934年生れ。リポーター、元ニッポン放送アナウンサー。近著に『我がままに生きる』(トランスワールドジャパン)。