ネコの作家 第3回「東京友禅」

第3回「東京友禅」

そめもようさんイメージ

作家集団

そめもよう

そめもよう

2013年発足。東京都を拠点に約10人が所属し、メンバーの作品の展覧会やネット販売を行なう。代表は町田久美子さん(まちだ・くみこ/写真左)と大野深雪さん(おおの・みゆき/写真右)。剱持愛子さん(けんもつ・あいこ/写真中央)は猫モチーフの作品を多く手がけるメンバーのひとり。

友禅の猫はバリエーションが豊富。
可愛い猫も化け猫も自由自在なんです。

手描き友禅ができるまで

  • 1.地に「青花(あおばな)」と呼ばれる水性染料で下絵をつける イメージ

    1.生地に「青花(あおばな)」と呼ばれる水性染料で下絵をつける。

  • 下絵の上から輪郭線を糸目糊でなぞる。染めムラを防ぐため、生地にふのりを引く イメージ

    2.下絵の上から輪郭線を糸目糊でなぞる。染めムラを防ぐため、生地にふのりを引く。

  • 彩色筆等で色をぬった後、蒸して染料を定着させる。染めた柄の上にふせのりを置き、地の色と混ざらないよう防染(ぼうせん)する イメージ

    3.彩色筆等で色をぬった後、蒸して染料を定着させる。染めた柄の上にふせのりを置き、地の色と混ざらないよう防染(ぼうせん)する。

  • 地の色を染め、糸目糊や余分な染料などを洗い落とす。蒸気を当てて生地を整えた後、必要に応じて金粉をあしらえば完成 イメージ

    4.地の色を染め、糸目糊や余分な染料などを洗い落とす。蒸気を当てて生地を整えた後、必要に応じて金粉をあしらえば完成。

猫ならではのしなやかな曲線には、
うっとりしてしまいます。

町田
東京友禅は、京友禅や加賀友禅と並ぶ三大友禅の1つ。色数を抑えた渋めの色合いと、すっきりしたデザインが特徴です。江戸の町人文化の影響を受けて発展してきた歴史から、艶やかさよりも「粋(いき)」の感性や洒脱さが重視される染物といえます。
大野
東京友禅の職人は、下絵から染めまでほとんどの行程を1人でこなし、多くの場合、デザインも自分で考案します。デザインに決まったルールはなく、自由に描けるのも魅力です。作家の持ち味が出やすいので、色遣いや柄の細かさで「これはあの人の作品だな」というのはお互いすぐに分かりますね。
剣持
猫は「次は何の図案にしようか」と考えている時、結構な頻度で頭に浮かびます。日本画などにおける伝統的なモチーフということもありますが、それだけではなく、猫には現代の作家である私たちの絵心をも刺激する、なんとも表現しがたい魅力があるんです。
作品1 イメージ
大野
「二本足で立って歩いたらどんな感じ?」「人間に交じって、盆踊りに参加したら?」と、いろいろな場面を想像したくなるし、描いてみたくもなる。
剣持
しっぽや背中のラインなど、猫ならではのしなやかな曲線には、思わずうっとりしてしまいます。ぱっちりした瞳でこちらをのぞき込むような可愛い仕草だけでなく、今にも人に襲いかかりそうな恐ろしい表情までもが絵になるところも魅力的。ある種のミステリアスさも想像力をかきたてます。
町田
友禅に描かれる猫は、ふさふさの毛並みの洋猫や、軽妙なタッチで描かれたユーモラスな猫など、恐らくみなさんが想像するより多様です。もちろん、目つきの据わった悪代官のような猫や化け猫など、「これぞ『和』の猫!」という猫を描いた友禅もたくさんあります。ぜひいろんな作品を見比べて、好みのものを見つけていただきたいですね。
剣持
猫柄の友禅は「この猫、うちの子に似ているわ」と喜んでいただけることが多いので嬉しいです。友禅は職人の技を駆使してつくりあげる、世界に1つだけの作品ですから、長く大事にしてくださる方に買っていただくことに、やりがいや喜びを感じます。自分の手で、誰かの生活を彩るものを作って、売る。日常の中で、口にするものや身に着けるものから作り手の姿を想像するのが難しい時代だからこそ、自分たちの仕事のシンプルさ、明快さに、どこか救われています。
作品2 イメージ
町田
私たちが「そめもよう」を結成したのは2013年。東京手描き友禅の若手女性作家のグループとして誕生しました。作品数の少ない若手は単独で展示会を開催するのが難しいし、結婚や子育てなどで仕事を離れなくてはならない時期もある。だからみんなで助け合おうと、グループを立ち上げました。
大野
英語の「SOME(何人かの)」と「染め」をかけて、十人十色のもよう(作品)を作り出す作家集団という意味で「そめもよう」と名付けました。今では女性や若手に限らず、また手描き友禅にも限定せず、広く工芸作家を受け入れています。現在は10人程度でギャラリーやネットショップの共同運営などを行なっています。
最近力を注いでいるのが、「デジタル友禅」です。これは、職人が染めた友禅をスキャンしてデータ化し、デジタル染色で複製してつくる友禅のこと。職人の技を次世代につなぐため、1人でも多くの方に、気軽に友禅の魅力に触れてほしいという思いで、販売を開始しました。
町田
職人の技と最新技術の融合により、価格を従来の5分の1~10分の1程度に抑えられました。「猫の手描き友禅に関心はあるけど、高価すぎて……」という方は、デジタル友禅から試してみるのもおすすめです。
作品3 イメージ

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