「通販生活」で連載中の「こんなことを言っても、得することはないんですけども・・・」。気鋭の小説家、中村文則さんが誰に忖度することなく書き記していく時事エッセイです。
第4回
初出:「通販生活」2026年盛夏号
世論の支持を得られていないリベラル系野党は、
Kポップを参考にしたらどうだろう。
最初に時事問題と関係ないことを書いてしまうけど、昔の日本の演歌の歌詞って、ちょっとどうかと思う。
たとえば森昌子さんの名曲「越冬つばめ」。
〝娘盛りを 無駄にするなと 時雨の宿で 背を向ける人〟
若いんだから、俺なんて相手にするな、ということだろう。自制ができる、ちゃんとした男じゃないか、と思う。でもすぐ次の歌詞が、
〝報われないと 知りつつ抱かれ 飛び立つ鳥を 見送る私〟
いやいや、やることやってんのか、と驚く。何て酷い男だ。その後「ヒュールリー、ヒュールリーララー」となるのだけど、ヒュールリーなんて歌ってる場合じゃない。今すぐ別れた方がいい、と言いたくなってしまう。
全然関係ない話から、急に政治の話をしてしまうけど、今、リベラル系野党はなかなか大変だ。どこも前回の衆院選で大敗し、世論の支持も得られていない。越冬つばめどころか、冬を越せない感じすらある。
今は緊急事態だから、
ひとまず協力したらいいのに。
外から見ていると、ここがいけない、とか、こうした方がいい、とか、皆さんも色々浮かぶのではないだろうか。そこで、ユーチューブのチャンネル「デモクラシータイムス」で、野党議員と「再生策」を議論する番組を行った。
「どうする? 中道・立憲 野党再生作戦会議①」という題。中道改革連合の長妻昭さん、立憲民主党の打越さく良さん、落選してしまった中道/元立憲の山岸一生さん、そして雨宮処凛さんと僕で話し合った。
「どうする? 共産・社民 野党再生作戦会議②」では、同じく雨宮さんと僕、そして共産党の吉良よし子さん、社民党のラサール石井さんと話した。
どちらも、ぜひ観てくださると嬉しいです。れいわ新選組の回も企画しているので、今号が発売される頃には、できているといいなと思う。
少し内容を言うと、こういう感じになる。
中道改革連合が支持を得るのは難しいと感じるので、解党した方がいいこと。
まだ傷の浅い参院の立憲を中心に、新しい人達を前に出して、新党をつくるのはどうかということ。
でもそれだけでは支持は絶対得られないので、新党と同時に、魅力的な経済政策を掲げること等々。
その他、色々話している。
番組に呼んでおいて「中道は解党した方が」とか言うのは考えてみれば失礼なんだけど、彼らはこちらの意見をシャットアウトせず、真摯に話してくれた。
番組内で言いそびれたことを、ここに書いてみる。
中道や立憲の支持母体の一つ、労働組合の連合の上層部は、やたらと共産党との選挙協力に批判的だ。それで候補者が乱立し、現与党を利している問題がある。
でも労働組合が共産党を嫌うのは、本来おかしい。共産党の支持が拡大すると、労働者の給料が上がる、という歴史があるからだ。
共産主義が台頭した時代、資本主義国の経営者達は「従業員を蔑ろにするとまずい。共産主義になってしまう」と危機感を持ち、給料を上げざるを得なくなった。
今は緊急事態だから、平和を望む党同士、ひとまず協力したらいいのに、と感じる。
共産・社民の回では、日本共産党の共産主義は、実は世界の共産主義と違うので、そこをもっとアピールした方が、ということや、社民党は、社会民主主義を掲げているのだから、そこを前面に出した方が、みたいなことなどを話した。
社民党の政策、と言われても「もう大体知ってる」となって興味を持たれにくいけど、社会民主主義の経済政策、と言われたら、どんな感じかな、と興味も湧くのではと。
中道・立憲の時と同じく、お二人も真摯に議論してくれた。
れいわ新選組を含め、今(この原稿を書いてる5月)、少数野党は、内輪モメが話題になっている。特に社民党は、党首選の記者会見で、前副党首が席を立ち、帰ってしまう事態にもなった。
仲の良さは微笑ましいだけでなく、
共感や感動を生む。
政策の話をしたくて、番組ではその件はあまり話さなかったから、ここで書いてみる。ちょっと妙な言い方だけど、Kポップを参考にしたらどうだろう。
昨今のアイドルグループは「仲のよさ」が非常に重要で、人気の理由の一つになっている。
多国籍グループのTWICEさんが、東アジアの問題に、理不尽に巻き込まれたことがあった。そういった荒波を、グループ内の驚異的な絆と結束で乗り越えたことで、グループの「仲の良さ」が改めて、エンタメ界で注目されるようになったのでは、とも思う。
仲の良さは微笑ましいだけでなく、共感や感動を生む。逆に言えば、仲の悪そうなグループは、いま支持されない。
自民党内の権力争いは、与党で強いから面白がられる。でも弱くなった野党のそれは、ただの足の引っ張り合いに見えてしまう。
その「内輪モメ」を右派メディアに利用される有様で、リベラルのイメージがどんどん悪くなっている。
頑張ってほしいのであえて言うと、外から見ると、社民党さんは党内改革をすれば党勢が伸びる、という段階ではもはやなく、未来はもっと深刻だと思う。
〝ヒュールリー〟と言ってる場合じゃないのと同じように、喧嘩してる場合ではない。〝報われないと 知りつつ党首になり 席を立つ前副党首を 見送る私〟と歌ってる場合でもない(誰も歌っていない)。芸能界で「人気」という現象をずっと見てきたラサール石井さんが、明るさを意識し、とにかくいま前を向こうとしている姿は、やはり正しいと僕は思う。
喧嘩していた者同士が再び手を握り合う、という姿は人々の共感を呼ぶ。そういう巧みな「演出」ができる余裕(?)が、あったらいいなと思うけど。
今号が出る頃、リベラルな野党はどうなっているだろう。