沖縄県外の皆さん、辺野古のこと、沖縄の基地のこと、「他人ごと」でなく「自分ごと」としてそろそろ考えていただけませんか。 沖縄県外の皆さん、辺野古のこと、沖縄の基地のこと、「他人ごと」でなく「自分ごと」としてそろそろ考えていただけませんか。

2019年2月24日、辺野古(沖縄県名護市)への新基地建設の是非を問う県民投票が行なわれ、沖縄県民は明確に「ノー」の意思表示をしました。あれから5年——。国はその意思を無視して基地建設のための埋め立て工事を進めています。当時、県民投票を呼びかけて実現した元山仁士郎さんと、県の行政の責任者だった玉城デニー知事に、改めて辺野古のこと、沖縄の基地のことについて語っていただきました。

司会/今井一(ジャーナリスト)

元山
私も玉城知事と同じようにこの5年間、北は北海道から南は鹿児島まで講演などでいろんな場所でお話をさせていただきました。ただ、「これをいつまで続けなくてはならないのだろうか」との思いもあります。
各地で住民の方たちと一緒になって、国に対して「沖縄県民投票の結果を尊重してほしい」という意見書を各自治体から出してもらうための陳情にも取り組みました。たくさんの方が協力してくださり、本当にありがたかった。でも、そもそも「県民投票の結果の尊重」という課題自体を認識されていない人が多かったのも事実です。
19年2月の県民投票後、『沖縄タイムス』が都道府県知事に行なったアンケートでは、県民投票の結果を国は尊重すべきと答えた知事は46人中2人(達増拓也岩手県知事、川勝平太静岡県知事)でした。沖縄の民意を無視する国の後ろ側には、全国の自治体の首長や有権者がいるわけです。
私のもっと上の世代の先輩方も声をあげてこられたわけですが、どれだけ話をすれば沖縄県外の人たちは理解してくれるのか、どうすればもっと広がるのか、イメージを持ちづらいというのが正直なところです。

「70人分のランドセル」を背負わされているのが今の沖縄。

玉城
元山さん、私はね、トークキャラバンで最近こんな話をするんですよ。
まず一つは「ランドセルの話」。日本全体を、生徒が100人いる小学校1年生のクラスだとします。このクラスでは、なんと「沖縄くん」に70人分のランドセルを背負わせている。次にたくさん背負っているのが「青森くん」で9人分。「東京くん」「神奈川くん」もそれぞれ5人分背負っているという、アンバランスな状況です。
いったい「沖縄くん」はいつまで自分以外の69人分のランドセルを背負わされなくてはいけないのか。自分は手ぶらのまま「沖縄くんに持たせておけばいいや」と思っているのは誰なのか。私はトークキャラバンの会場で「もし、この話を聞いた子どもたちにそう聞かれたら、皆さんはどう答えるのか、ぜひお考えください」と問いかけるんです。
元山
沖縄県外、なかでも基地のないところに住んでいる方にとっては手厳しい質問です。
玉城
あともう一つは「家を建てる話」です。今、基地が建設されようとしている辺野古には、海域の東側に非常に柔らかい軟弱地盤があって、このままでは護岸が造れないので地盤改良をしなくてはいけないと言われています(コラム参照)。それで政府は設計変更の計画を立てたわけですが、実は一番深いところまで掘らなくてはならない地点のボーリング調査は行なわれていません。それなのに「いや、300メートル離れた地点と同じ地層だから問題はありません」と言って、そのまま進めようとしている。

辺野古の「マヨネーズ地盤」

辺野古沖の大浦湾海底には「マヨネーズ状」と言われる軟弱地盤が広く分布している。そのため何万本もの杭を海底に打ち込む大規模な地盤改良工事が必要とされているが、軟弱地盤はもっとも深いところで水面下90メートル。国内では水面下70メートルまでしか地盤改良工事の実績はないという。それにもかかわらず、軟弱地盤が海面から90メートルの深さに達する地点については、地盤の強度の把握を目的とした調査すらも行なわれていない。

埋め立て区域の南側は工事をほぼ終えているが、「本番」とも言える大浦湾の工事はほぼ手つかずの状況(図・写真提供/共同通信社)。