「あのドラマ、面白そうだけど、長いんだよなあ」なんて敬遠している作品、ありません? 年末年始はイッキ見するチャンスです。ウェブ通販生活の人気連載「週刊テレビドラマ」の筆者が、「ぜひ見るべき!」という「おすすめドラマ」を紹介します。

村上淳子

続編が待機中! ドラマ賞16冠の話題作に追いつくために一気見がオススメ。

日本の人気ドラマ『JIN-仁-』で現代の医師が幕末の江戸に転生したように、本人の意思とは関係なく過去や未来に時間を移動してしまう「タイムスリップ」という手法はSF作品ではお馴染みです。

この『慶余年』も同じくタイムスリップもので青年が現代の記憶を持ったまま戦乱の世に転生。自身の出生の秘密と母の死の真相を追い求めていく壮大な歴史ドラマなのですが、第1話は現代から始まります。大学生のチャン・チェンが教授に自身の研究を認めてもらうため、「難病に侵された青年ファン・シエンが、現代の記憶を持ったまま乱世に転生する物語(慶余年)を書き上げるー」という劇中劇の2重構造になっている異色の設定です。

物語の舞台・南慶国では、皇子たちが皇位継承を巡って争っていました。ファン・シエンは高官の隠し子で生後すぐに母を失い、田舎で武術や医術を叩き込まれて成長。ある日、都からの使者がシエンを迎えにやってくるのですが、同時に命を狙われるハメに。その理由と母の死の真相を明らかにするため上京したシエンは宮中の権力闘争に巻き込まれ、数々の謎の核心に迫っていくことになるのですが…。

©Tencent Pictures Culture Media Company Limited/©New Classics Television Entertainment Investment Co., Ltd.

仕事で数多くの中国ドラマを見ますが、なかには展開が遅いものもあり、もっと話数を短くできたのではと感じる作品もなきにしもあらず。でも本作は1話ごとに必ず伏線や盛り上がりが仕込まれている上に、どんでん返しの連続で一切ダレることが無い。その反面コミカルな演出も散りばめられ、シリアスと笑いがうまく融合。非常にテンポがよく46話が短く感じられたほど。中国のテレビドラマ賞16冠も納得の面白さです。

とりわけ主人公のファン・シエンが飄々としながらも情に厚く、不遜な態度を見せても嫌味にならない。現代の知識で障壁や難局を鮮やかに解決して爽快です。演じるチャン・ルオユンは表情豊かに熱演して本作で大ブレイクしました。さらに『陳情令』主演の美男シャオ・ジャンが38話から登場。物語の鍵を握る役で存在感を放ち、続編ありきの最終話で衝撃を与えてくれます。

今年10月に続編の撮影が完了。中国での期待度は非常に高く撮影の様子がたびたびニュースになっていました。そんな話題作に乗り遅れないためにも、年末年始に一気見がオススメです。

むらかみ・あつこ●海外ドラマ評論家。日本ペンクラブ国際委員会委員。サラ・ジェシカ・パーカーからヒョンビンまで主演俳優のインタビューや現地ロケ取材経験多数。著書に『海外ドラマ裏ネタ缶』(小学館)、『韓流マニア缶』(マガジンハウス)、『韓流あるある』(幻冬舎エデュケーション)など。

ペリー荻野

最高視聴率30%超、50年前の大河ドラマの底力をご覧あれ!

幕末から明治に至る激動の中で、江戸無血開城を実現させた偉人・勝海舟の人生を追った「勝海舟」(74年)。偉人というと、堅物なイメージだが、オランダ語辞書を丸写しして勉強しながらそれを売って儲けようと考えたり、モテ男で妾(大原麗子)がいたり、まったくそうでないところがミソだ。当初、脚本は倉本聰が担当していた。主役の渡哲也も病気降板し、急遽、松方弘樹が登場。舞台の仕事で大阪にいた松方は、突然、朝一番の電話で「作家の倉本です」と交代を頼まれて驚き、他の俳優の後をやるのは……と一瞬ためらったものの、周囲からの勧めと「ともに映画から頑張って来た渡の哲っちゃんのためなら」という気持ちで引き受けたという。その後、倉本も降板している。

下級の幕臣・勝麟太郎(渡哲也、松方弘樹)は、豪快で何かと人に頼りにされる父・勝子吉(尾上松緑)に期待をかけられて育った。そこへ黒船来航で大騒ぎ。麟太郎は、ジョン万次郎らと咸臨丸で渡米し、広く世界を見聞してくる。やがて勝海舟と号した麟太郎は、神戸に海軍操練所の創設を願い出るなど、頭角を現す。

そんな勝のもとに土佐の坂本龍馬(藤岡弘、)がやってきた。当初、勝を斬ろうとした龍馬だが、貿易で儲けた金で海軍を作る「それが唯一の方法でんしょう」と国策をべらんめえで語る勝の人柄に心酔し、弟子となる。また、武市半平太に命じられるままに人斬りを重ねていていた岡田以蔵(萩原健一)も勝の護衛として働くうち、少しずつ自分のことを見直す。無知ゆえに利用されてきた以蔵は勝に「わしゃ、どういうか…先生が好きじゃきに」と告げ、泣き笑いのような表情を浮かべる。しかし、武市は以蔵に勝暗殺を命じる。捕らわれて処刑される以蔵は、勝を巻き込まないよう、無視する。以蔵の悲しみが伝わり、ぐっとくる場面だ。

津川雅彦の一橋慶喜、石橋蓮司の吉田寅次郎、米倉斉加年の佐久間象山、藤竜也の土方歳三、宍戸錠の山岡鉄太郎など演技派が揃い、最高視聴率30パーセントを超えた大河ドラマ第十二弾。残念ながら、当時はNHKにビデオが保管されず(!)、総集編しか視聴できないが、見ごたえは十分。50年前の大河ドラマの底力、ご確認ください!

ぺりー・おぎの●コラムニスト・時代劇研究家。毎日新聞、時事通信、朝日新聞論座など新聞・雑誌・webで連載中。NHKラジオ第一「マイあさ!」土曜日出演中。『時代劇を見れば、日本史の8割は理解できます』(共著・徳間書店)、『脚本家というしごと~ヒットドラマはとうして作られる~』(東京ニュース通信社)、『テレビの荒野を歩いた人たち』(新潮社)など著書多数。