沖縄県外の皆さん、辺野古のこと、沖縄の基地のこと、「他人ごと」でなく「自分ごと」としてそろそろ考えていただけませんか。 沖縄県外の皆さん、辺野古のこと、沖縄の基地のこと、「他人ごと」でなく「自分ごと」としてそろそろ考えていただけませんか。

2019年2月24日、辺野古(沖縄県名護市)への新基地建設の是非を問う県民投票が行なわれ、沖縄県民は明確に「ノー」の意思表示をしました。あれから5年——。国はその意思を無視して基地建設のための埋め立て工事を進めています。当時、県民投票を呼びかけて実現した元山仁士郎さんと、県の行政の責任者だった玉城デニー知事に、改めて辺野古のこと、沖縄の基地のことについて語っていただきました。(前編はこちら

司会/今井一(ジャーナリスト)

沖縄との対話を拒否して、国は辺野古「代執行」に踏み切る。

司会
玉城知事や元山さんのそうした活動によって、沖縄の問題に関心を持つ沖縄県外の人は確実に増えていると思います。しかし、一方では政府による辺野古埋め立ての作業は進められています。国は2023年12月28日、今後の埋め立てに必要な設計変更を沖縄県に代わって承認する「代執行」(コラム参照)に踏み切りました。この件についてお二人の考えをお聞かせください。

代執行制度とは?

代執行制度は、地方自治法245条の8に定められた手続き。本来国が果たすべき役割に係る事務であるが、法令により自治体が処理することとしている「法定受託事務」を、自治体の知事や市町村長が法令の規定に違反した執行をしたとき、または執行しなかった場合に、国が代わって直接行なうことができるとされている。
沖縄防衛局は、辺野古の基地建設予定地で軟弱地盤の存在が明らかになったことから2020 年、沖縄県に「設計変更」を申請。しかし、沖縄県は公有水面埋立法の要件を満たさないものであることから、この申請を不承認。これを不服とした沖縄防衛局は行政不服審査法に基づく審査を国交省に請求、同省は沖縄県に対し不承認を取り消す裁決を出した。また、国交省は、沖縄県に対して申請を承認するよう是正の指示を出した。このため、沖縄県は裁決と是正の指示の取消しを求める訴えを起こしたが、2023 年9 月までに最高裁で沖縄県の敗訴が確定。その後、沖縄県が対応を検討していたところ、国は代執行に向けて沖縄県を提訴し、2023年12月に福岡高裁那覇支部で沖縄県に対し承認するよう命じる判決が出され、2024年2月の最高裁の決定により沖縄県の上告受理申立てが認められず、沖縄県の敗訴が確定した。
代執行制度が設けられたのは2000 年施行の改正地方自治法からだが、これまで実際に代執行が行なわれたケースはなかった。その意味でも今回は「異例の事態」と言える。

2024年1月10日、代執行を受けて辺野古・大浦湾で作業船から石材を投入する重機(写真提供/共同通信社)。

玉城
一番大きな問題は、国が代執行に踏み切る前に対話による解決を一切講じてこなかったことです。国は「説明は尽くしている」と言いますが、その「説明」とは、国が決めたことや考えていることを一方的に伝えるだけのもの。私たち沖縄県側が納得できるような説明はまったくなされてきませんでした。閣僚と沖縄県知事が「沖縄に関連する基本政策について協議する場」である「沖縄政策協議会」ですら、2013年以来一度も開かれていません。
司会
ネット上では「長年にわたる国と沖縄県の話し合いがまとまらず裁判になったのだから、沖縄県はその結果を受け入れるべきだ。裁判の結果に従わないのは沖縄のわがままだ」というような声も見受けられますが。
玉城
それは事実とまったく違います。特に国が普天間飛行場の移設先は「辺野古が唯一」と主張してきたことの根拠については、私は衆議院議員時代から何度も政府に問いただしてきました。どこと比較して辺野古の優位性があるのか、その優位性とは具体的に何なのか。しかし、答えはもらえず、まったく対話になりませんでした。
元山
答えをもらえないのは、「辺野古が唯一」という国側の主張に合理性がなく、答えられないということですよね。
玉城
そうです。たとえば元防衛大臣の森本敏さんは普天間の海兵隊の移動先は「地政学的にも沖縄である必要はない」と発言していますし、同じく元防衛大臣の中谷元さんは、沖縄県外への移設が難しい理由は「県外での抵抗が大きい」からだと述べています。
元山
つまり、政府が言う「辺野古が唯一」という主張は軍事的な合理性に基づくものではなく、「沖縄県外の自治体や人々の反発」を恐れてのことだと言っているわけです。