お母さん、今日は笑ってくれるかな。

お母さん、今日は笑ってくれるかな。

7人に1人(13.9%)と言われるわが国の子どもの貧困率は、ひとり親世帯、とくに母子世帯の子どもにかぎってみると、2人に1人(50.8%)にはね上がります。朝から働いて、子どもを迎えにいって、晩ごはんをつくって、子どもが寝たあとでまた働きに出ても、お金が足りない。

子どもたちがお母さんの横顔ばかり見なくてすむように、ひとりで踏んばっているお母さんたちへの支援が必要です。

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家庭に入って親を支えなければ、
子どもは守れない。

NPO法人バディチーム/東京都新宿区

取材・文=丸山裕子(通販生活編集部)

 子どもの虐待をめぐって、耳をふさぎたくなるようなニュースが増えています。
 虐待の背景にはさまざまな問題がありますが、少なからず要因の一つになっていると言われるのが、親の病気や経済的な困窮です。

 追い込まれた親たちの不安や焦り、絶望感が、閉鎖された家庭の中で子どもたちへ向かってしまう前に、孤立しがちな親たちを支える「訪問型の子育て支援」に取り組んでいるのが、NPO法人バディチーム(2007年設立)です。

「訪問型の子育て支援」とは、子どもの養育支援を必要としている家庭を訪れて、乳幼児のお世話をしたり、食事の準備や掃除・洗濯、子どもの勉強をみるなど、子育てに関するあらゆる支援をおこなう、いわば“子育てのヘルパー”です。
 代表の岡田妙子さんは、「家庭の中へ入って支援する」ことに大きな意味があるとおっしゃいます。

おかだ・たえこ●2000年の虐待防止法施行と自らの出産・育児が重なったのをきっかけに、医療関係職から訪問型子育て支援のスタッフとなる。2007年に子育て支援・虐待防止・里親支援を3本柱にしたバディチームを設立。

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「行政の相談窓口や面談のときには、なんとか頑張れそうだと思われていたお母さんでも、私たちが家庭へサポートに入って初めて『ここまで生活ができてなかったのか』と判るケースはよくあります。

 床が物で埋まっている中で子どもたちが暮していたり、ゴミが膝の高さまで積みあがっていたり、カビで真っ黒になった布団に子どもたちが寝ていることもめずらしくありません。中には、洗濯ができていないせいで、学校で『臭い』と言われて不登校になっている子や、家庭や学校生活がうまくいかずに自傷行為をくり返している子、長年ホコリの中で暮らしているせいで重篤な病気にかかっている子もいます。

 学校の家庭訪問と同じで、行政の訪問日前にはお母さんたち、頑張って片づけるんです。どんなお母さんも『おおやけの場所では、親としてちゃんとした姿を見せなければ』というプライドがあります。
 病気でふだんは一日じゅう寝ているお母さんでも、面談日に合せて必死で体調を整えて、『このわが家なら見てもいいですよ』という状態で迎えられる方も多い。行政の人もその姿を信じて帰られますから、ご家庭によっては、そこまで差し迫った状況だと気づけないことも出てくるのです」

 この溝を埋めるためにも、養育状況をジャッジする立場以外の民間の支援者が家庭に入って、親に寄り添う必要があると岡田さんはおっしゃいます。
 よく、民間による子どもの支援では、「困っている子どもにつながりにくい」というジレンマがありますが、バディチームの場合は都内の13区と連携し、親子とつながっています。

「経済的なよりどころがないまま出産したお母さんであれば、緊急度が高い支援としてほぼ毎日、長期的に病気で働けなかったり、仕事の帰りが遅いひとり親の家庭であれば定期的に週に1~2回、といったように、状況によって訪問回数は変ってきます。

 たとえ、児童相談所で子どもを一時保護しても、親御さんたちが抱えているもともとのつらさが解決されなければ、子どもが帰ってきたときにまた同じことがくり返されます。ですから、家庭の中へ入ってお母さんたちが本当に困っていることは何か理解したうえで、家庭ごと支えていかなくては、子どもたちは守れないと思っています」

お母さんが元気になると、
子どもたちが甘えはじめる。

 現在、バディチームで訪問型の子育て支援を行なっているのは、年間でおよそ300家庭。そのうち半数ほどが、経済的困窮にあるひとり親世帯だそうです。
 ひとり親、とくに経済的に追い込まれている家庭では、大部分のお母さんはうつ傾向にあると言います。

「どのお母さんも、支援をすぐに受け入れてくれるわけではありません。ひとりで必死に守ってきた家庭に他人が入ってくるわけですから、警戒されるのは当然ですよね。わたしたちの様子をこわごわうかがっていらしたお母さんが、一緒に家事をしたり、お子さんの面倒をみたりしながら同じ時間を長く過ごしていくうちに、少しずつ心を開いてくださるようになります。

 すると、どのお母さんもすごく悩んで、苦しんでいらっしゃる。隣りで洗濯物をたたんだり、お皿を洗ったりしているときに、『わたしもつらい家庭で育ったの』とか、『自分は温かい家庭をつくろうと思っていたのに』とか、心のうちがポロッと剥がれて出てくることがあるんです。
 面談のように向き合って『聞き出される』のではなくて、横に並んで洗濯物やお皿に目をやりながら、という生活の中での会話が、お母さんたちの気持ちをゆるませるのかもしれません」

 これに加えて、サポートが入ることで、滞っていた家の問題がわずかずつでも片づき、心理的な負担が減ることで、やっと前向きになれるお母さんもいらっしゃるそうです。

「ずっと『お母さんなんだからちゃんとしなければいけないのに、わたしはできない』と追い込まれていたお母さんが、家の中がきれいになったり、子どもたちが温かいごはんを食べてよろこんでいるのを見ると、困っているときには人に頼っていいんだと気づいてくれます。
自分はダメだと責めてばかりいたお母さんに『いままでつらかったね、よく頑張ったね』と共感のことばをかけると、少しずつ前を向いてくださるようになるのです。

 子育てのつらさを誰かにわかってもらえる心強さは、育児経験のある方でしたら、ご想像いただけると思います。子育ては目立ったトラブルがない日でも、本当に大変ですよね。そこへ経済的な困窮や病気、障害やDVといった別のつらさがつみ重なっていくと、お母さんたちのつらさは、本来は守りたいはずの子どもたちへとなだれ込んでいってしまう。子どもの虐待は、かぎられた特殊な立場の人にだけに起こる問題ではないのです」

 理解者であるバディチームの〝子育てパートナー〟と出会ったことでお母さんが明るくなると、子どもたちも変っていくそうです。

「お父さんやお母さんが病気を持っていたり、経済的な問題を抱えているご家庭のお子さんは、親子の立場が逆転していることが多いんですね。いつもお母さんの具合を気にしていて、『寝てなきゃダメよ』と声を掛けたり、すぐにお金の心配をしていたような小学校低学年の子が、お母さんと遊びたいとか、宿題やりたくないとか、今日はカレーがいいとか、ふつうの子どもらしいわがままを言うようになります。すごくうれしいわがままです」

バディチームには、現在70~80名の子育てパートナーが登録している。「子どもたちがくれた絵や折り紙は、どんなに小さなものでも捨てられません」(事務局:村田裕子さん)

この活動に、220万円をカンパしました。

訪問交通費の不足補助 100万円
訪問支援で必要な物品などの購入費 100万円
運営費 20万円

※バディチームでは都内13区から訪問型子育て支援の業務委託を受けているが、交通費が一律のため不足したり、調味料や衛生用品など、訪問家庭で不足している消耗品の一部を団体で補っている。この費用分として当カンパを充てていただく。

活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。

NPO法人バディチーム

所在地 〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28-205
電話 03-6457-5312(平日10:00〜17:00)
支援金受付 三菱東京UFJ銀行 広尾支店
口座番号1359694
口座名義特定非営利活動法人バディチーム