7人に1人(13.9%)と言われるわが国の子どもの貧困率は、ひとり親世帯、とくに母子世帯の子どもにかぎってみると、2人に1人(50.8%)にはね上がります。朝から働いて、子どもを迎えにいって、晩ごはんをつくって、子どもが寝たあとでまた働きに出ても、お金が足りない。
子どもたちがお母さんの横顔ばかり見なくてすむように、ひとりで踏んばっているお母さんたちへの支援が必要です。
就活応援シッターが、シングルマザーと子どもたちの“第一歩”をつくる。
認定NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ/東京都千代田区
取材・文=丸山裕子(通販生活編集部)
「シングルマザーだと子どもを保育園に入れやすいから、偽装離婚した人がいる」
慢性的な保育園不足へのフラストレーションからか、ネット上ではこんなうわさがひとり歩きしています。
実際には、シングルマザーの子どもはすべて優先的に保育園へ入れるというのは誤解です。とくに離婚(死別)前までは専業主婦で、まだ仕事に就いていないシングルマザーの子どもは、収入のある共働き夫婦の子どもよりも保育園入所の優先度がぐっと下がります(下コラム参照)。
離婚したばかりで仕事のないお母さんは、子どもを保育園に預けられなければ就職活動すらできません。
「すぐに働かないと生活できないのに、保育園に落ちて、世の中から『シングルマザー、死ね』って言われた気持ちだった」
昨年、この「子どもの貧困・ネット1%カンパ」でしんぐるまざあず・ふぉーらむさんを取材して出会ったお母さんのこの言葉に、私たち編集部も衝撃を受けました。
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そこで今期のカンパでは、しんぐるまざあず・ふぉーらむさんにお願いして、前回の「緊急食料支援」と「緊急DV避難支援」と合せて「就活応援シッター支援」を立ち上げていただくことにしました。
離婚後、自立に向けてがんばろうとしている矢先に、保育園の合否で就職活動に挫折しないように、母子の暮しの〝第一歩〟を応援するあらたな試みです。
コラム
収入がある共働き夫婦より、仕事を探しているシングルマザーの方が子どもを保育園へ入れにくい。
フルタイム労働の指数ポイント(保育園入所の優先基準を表す数値)は、「求職中」のポイントよりも高くて、2~7倍に設定されている。
一方で「ひとり親」に充てられたポイントは、いずれの市区もフルタイムの半分以下。「求職中」で「ひとり親」の場合、2つのポイントを合算しても、フルタイムの保護者のポイントに届かない市区が多い。
子連れでは面接に行けないから、
携帯のバイト求人に頼るしかない。
いま、まさにこの“求職中の保育園審査の壁”にぶつかっているお母さんがいると聞いて、取材にうかがいました。
杉田香菜さん(24歳・以下すべて仮名)は、長女の優里ちゃん(4歳)、次女の沙里ちゃん(2歳)、末っ子の亜里ちゃん(1歳)と今年の2月に4人暮しをはじめたばかり。昨年5月に元夫と別居後、都内のアパートに引っ越すまでは、首都圏の実家に身を寄せていたそうです。
「離婚前までは専業主婦だったので、仕事探しも、子どもを保育園に入れることもこんなに大変だとは知りませんでした。うちの実家は父も母も働いていますから、同居といっても日中は子どもたちをみてもらえません。でも、住民票では『親と同居』になっているので、保育園に入る基準のポイントは減点されてしまいます。
実家では同居している家族から暴力を受ける危険があって、少しでも早く自立して子どもたちを連れて出たかったのに、役所の窓口の人は『緊急性はないですよね? いま申込んでもたぶん保育園はムリですけど、申請しますか?』って。話すらまともに聞いてもらえませんでした」
杉田さんが働きに出られたのは、仕事から帰った両親に子どもを預けられる夜だけ。近所のコンビニで夜勤のアルバイトを始めたものの、週に4日夜10時から翌朝の3時までしかシフトに入れず、収入は月に8万円に届くかどうかだったそうです。元夫とは離婚後に連絡が取れなくなり、養育費はもらえていません。
「両親も経済的に余裕がなかったし、このままでは子どもたちを保育園に入れて働くこともできないので、とにかく実家を出ようと決めました。最初は生活保護に頼ることになるけれど、これから4人で生きていくにはそれしか道がなかったから」
引っ越し先の区役所では、杉田さんが抱えている問題をていねいに聞いて保育園の申込みも受付けてくれたそうですが、杉田さんの住んでいる区の場合、「求職中」「ひとり親」「生活保護」をすべて合せた指数ポイントは、フルタイムで働いている両親の子どもの指数ポイントにやっと半分届くくらい。つまり、保育園に入れる優先順位は低いのです。
「運よく保育園入れても、『求職中』で申請した人は3ヵ月以内に仕事が決まらないと退園になっちゃう。仕事を探したいけれど、子どもが3人いるとみんなを連れて外出するのもやっとです。いまは携帯のアルバイトサイトで、少しでも条件のいい仕事をコツコツ探すしかありません」
妹たちと遊んでいたお姉ちゃんが、お母さんの“保育園”という言葉を聞いて顔を上げ、「優里、幼稚園に行ったことがあるんだよ」と教えてくれました。
「別居前に2ヵ月だけ通っていて、すごく楽しかった記憶があるみたい。こっちに戻ってからも優里は保育園に行きたいって言っているのに、もう9ヵ月も我慢させてしまっています。
区役所の人は、子どもが小さいうちはムリに働かずに生活保護だけで暮してもいいのよって言ってくれるけど、親が働いていないと優里は保育園に入れません。小学校に入るまで家に居て、妹たちとしか遊べないのはかわいそう……。それに子どもたちの将来のことを考えたら、少しずつでも自立して早く保護を抜けたい。働きたいです」
新生活スタートの仕事探しが、子どもたちの未来にもひびいていく。
しんぐるまざあず・ふぉーらむ代表の赤石千衣子さんによると、
「離婚(死別)後、心身ともにヘトヘトになりながら自立を目指している矢先に、保育園に入れずに就職で挫折して、その後の生活がうまく回らなくなるお母さんたちは多い」そうです。
「そもそも、シングルマザーというだけで就職のハードルは上がります。ご存知のように、お子さんが小さいうちはしょっちゅう熱を出したりして休まざるを得ないことが多いので、敬遠する会社が多いのです。そのうえ、保育園がまだ決まっていないとなれば、ふつうは内定を出さないでしょう。
それ以前に、まだ目の離せない幼い子どもがいるお母さんは、子どもを連れて電車に乗るのもやっとですから、ハローワークへ通うのもむずかしい。結果、目についた時給が安いパートの仕事に就いて、子どもが大きくなるまで苦しい生活がつづいたり、生活保護から抜け出せなくなるお母さんたちも多いのです。
ひと昔前なら、『子どもはみててあげるから、面接がんばっておいで』と送り出してくれるご近所さんがいたかもしれません。
今回、わたしたちが挑戦する“就活中シッター”クーポンが、そんなふうにお母さんたちと子どもたちの背中をそっと後押しする力になればいいなと思っています」
この活動に、440万円をカンパしました。
就活応援シッタークーポン 100万円
食料支援ボックス 200万円
DV緊急避難 100万円
運営費 40万円
※就活応援シッターでは、就職活動の面接や研修で子どもを預ける必要があるシングルマザーを対象に、しんぐるまざあず・ふぉーらむが時間単位のクーポンを発行。プロフェッショナルのシッターを派遣してもらう。
活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。
認定NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ
所在地 | 〒102-0052 東京都千代田区神田飯田橋1-8-9 ニューシティハイツ飯田橋402 |
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電話 | 03-3263-1519(平日13:00~17:00) |
支援金受付 | 三菱東京UFJ銀行 高田馬場駅前支店 口座番号4536336 口座名義特定非営利活動法人しんぐるまざぁずふぉーらむ |