7人に1人(13.9%)と言われるわが国の子どもの貧困率は、ひとり親世帯、とくに母子世帯の子どもにかぎってみると、2人に1人(50.8%)にはね上がります。朝から働いて、子どもを迎えにいって、晩ごはんをつくって、子どもが寝たあとでまた働きに出ても、お金が足りない。
子どもたちがお母さんの横顔ばかり見なくてすむように、ひとりで踏んばっているお母さんたちへの支援が必要です。
「入学応援給付金をキッカケにつながることで、金額以上の効果が得られるんです」
NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク/東京都豊島区
取材・文=釜池雄高(通販生活編集部)
「くりばー、ただいまー!」
豊島区の子どもたちを地域で見守り育てるNPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(以下、WAKUWAKU)が毎日開催している「池袋本町プレーパーク」に、子どもたちの元気な声が響きます。「くりばー」とは、子どもたちが同法人の理事長である栗林知絵子さんを呼ぶ際の愛称なのです。
学校帰りの小学生や未就学児とその母親が、自由に外遊びをしています。隣を見ると、今年高校に進学した男子生徒がやってきて、東屋の机で宿題を始めました。
栗林さんの地域活動の原点とも言えるプレーパークで、WAKUWAKUの入学応援給付金について話を伺いました。
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豊島子どもWAKUWAKUネットワークは、プレーパークのほかに、学びの場である「無料学習支援」、子どもがひとりで来ても安心してご飯が食べられる「こども食堂」や「夜の児童館」、何かあった際の宿泊機能を持った「WAKUWAKUホーム」、子育て中の家庭に研修を受けた先輩ママが訪問して話を聞いたり家事を手伝ったりする「ホームスタート・わくわく」など多様な活動をしています。
そして昨年、カタログハウスからの支援を基に始めたのが、「WAKUWAKU入学応援給付金」です。義務教育ではないので公的支援(就学援助)を受けられない高校1年生の困窮家庭(50世帯)に、4万円の支援を行ないました。
「入学応援給付金は2年目になりますが、今年は高校1年生(4万円✕40世帯)と、新たに小学1年生(2万円✕20世帯)も対象としました。小学校入学時点でつながることで、私たちの支援をより効果的に届けることができるのです。
入学応援給付金の事業には、豊島区や学校も協力してくれています。対象となる高校1年生には、中学3年の1月時点で学校を介して全員に応募チラシを配っています。
小学1年生の場合、公立の保育園では全員に応募チラシを配ってもらいました。認可保育園、小規模保育園などは、区役所の保育園課が協力してくれてメールで情報提供しました。
対象は、生活保護世帯、住民税非課税世帯、そして児童扶養手当受給世帯です。
今回、実際に受給したのは、生活保護世帯が高1、小1でそれぞれ10世帯。残り40世帯はすべてシングルマザー(児童扶養手当受給世帯)でした。
豊島区は外国籍の世帯も多いし、シングルのお母さんは、仕事、子育て、家事に追われて余裕のない方もたくさんいます。だから応募チラシを配っただけで、対象の方が申し込んでくれるわけではありません。
先日、話を聞いた生活保護家庭のお母さんも、最初は応募チラシを捨てたと言っていました。それでも生活保護家庭には、区のソーシャルワーカーさんが家庭訪問の際にもう一度案内をしてくれて、その場で申込み書を一緒に書いて提出してもらいました」
高校進学時に必要なお金は、平均で約17万円。
WAKUWAKUの入学応援給付金の特長は、お金を支援者に直接渡すこと。その際に協力してくれる弁護士が同席して、生活についてのヒアリングも行なっています。
「高校1年生は入学前の3月中に渡して、制服や体操着、あとは部活動の用具を買う費用に使ってもらいます。2016年に私たちが調べたところ、高校進学時には少ないところで約11万円、平均で約17万円もかかるので、お母さんたちはとても喜んでくれますね。
一方で小学1年生は、4月に入ってからヒアリングを開始しました。小学生の場合は、公的な就学援助の入学準備金が3月に支給されるので、いちばんの目的は、その子とWAKUWAKUがつながること。学校生活の話を聞きながら、来週の学習支援に誘ったり、そのままこども食堂で一緒にご飯を食べたりすることもできます。
金銭的な支援は2万円かもしれないけれど、小さい頃から伴走することで金額以上の効果が得られるんです」
「今回、いちばん印象的だったのは、二間しかないアパートで高2、高1、中学生の3人を育てていたお母さん。布団は2組しかなくて、それを敷くともうスペースがないので、布団で受験勉強をしたと言っていました。その家庭には、去年も給付金を渡していたんですが、そこから時間をかけて伴走したことで、今年は家庭の事情をいろいろと話してくれました。
悩みの話って、やっぱり話してくれるようになるまで少し時間がかかるんですよね。昨年つながった50世帯も、給付したあとしばらくしてから、やっぱり弁護士の方に相談したいと言ってくれて、それで解決した例が3件ありました。
丁寧に話を聞くことで、お母さんたちの意識が変わってくることも実感しています。栗林さんたちが話を聞いてくれたことで前向きになれたと、区議会議員にまでなったシングルのお母さんもいるんですよ。
そういう関係性をつくるキッカケとして、この入学応援給付金は本当に重要な機会になっています。だから来年は、カタログハウスさんに頼らないで自分たちでお金を集めようって話をしているんです。
1000円支援してくれる人を2000人集めたら、地域で子どもたちのことを考える人を増やすことにもつながりますよね。私たちの理念である、『子どもたちを地域で見守り育てる』を確かなものにするためにも、いまから頑張らなくっちゃ」
この活動に、275万円をカンパしました。
WAKUWAKU入学応援給付金 200万円
フードパントリー事業費 50万円
団体の運営費 25万円
※「フードパントリー(食の中継地点)」は、生活困窮者に食料を提供すると同時に、生活状況や食以外の困りごとについて話を聞き、課題に応じた相談支援機関等につなぐ事業。
活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。
NPO法人「豊島子どもWAKUWAKUネットワーク」
所在地 | 〒171-0014 東京都豊島区池袋3-52-21 |
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