7人に1人(13.9%)と言われるわが国の子どもの貧困率は、ひとり親世帯、とくに母子世帯の子どもにかぎってみると、2人に1人(50.8%)にはね上がります。朝から働いて、子どもを迎えにいって、晩ごはんをつくって、子どもが寝たあとでまた働きに出ても、お金が足りない。
子どもたちがお母さんの横顔ばかり見なくてすむように、ひとりで踏んばっているお母さんたちへの支援が必要です。
「都市に住むシングルマザーが、子どもを自然の中で遊ばせるのはハードルが高い」
NPO法人森のライフスタイル研究所/長野県伊那市
取材・文=横山健(通販生活編集部)
自然の中で遊ぶことは、子どもの成長には欠かせない大切なものです。
子どものときに自然体験が多いほど自己肯定感は高くなり(※1)、大人になってからの人間関係能力が高くなる(※2)という調査結果もあります。
でも子どもを自然の中で遊ばせることは、ひとり親家庭、とくに身の回りに自然がない都市に住む母子家庭にとっては簡単ではありません。
休日はたまっている家事をしなければいけないから遠出する時間がない。パートの仕事しか見つからず、経済的に遠くへ行く余裕がない。自然の中で遊んだことがないから何をしていいのかわからない。理由を挙げればきりがないほどです。
NPO法人森のライフスタイル研究所の代表理事、竹垣英信さんは、2014年から母子家庭の親子に森や山、海で自然体験をしてもらう活動を続けています。
※1 国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」(平成26年調査)
※2 国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」(平成22年10月)
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「もともとは森林への関心を高めるために、都市に住む人たちを森に連れて行って、伐採や植林をしてもらうツアーをしていました。メディアにも取り上げられて忙しくなり、それこそ土日祝日も関係なく活動していました。
あるとき妻に、休みは子どもをどこに連れて行っているのか聞いたら、『どこにも行ってない。私ひとりではムリ』と言われました。
それまで思い至らなかったのですけど、母親一人だと、子どもと遠出して自然の中で遊ばせることがとても難しくなるんですよね。
一般的に女性は男性よりも体力がないし、自然の中で遊んだ経験が少ない。同じひとり親家庭でも、男性と比べて女性の収入は低いことが多い。
東京23区内に住んでいるシングルマザーと子ども2人で、たとえば多摩川でバーベキューをしようと思っても、交通費とバーベキュー道具のレンタル、食材で1万円くらいはかかってしまいます。女手ひとつでは荷物を運ぶだけでも大変でしょう。バーベキューといえど、決してハードルは低くない。
一方、僕らは森の中が仕事場みたいなものですから、野外活動のスキルはある。伐採植林ツアーをしているから、大勢の人を連れて行くノウハウもある。それなら僕たちが母子家庭の親子を自然体験にお連れすればいいじゃないか、と考えました。
費用は、省庁の外郭団体や企業による社会福祉系の助成金がほとんどです。まず、助成事業に「母子家庭支援プログラム」として応募します。合格して助成金がおりれば、シングルマザー支援団体と連携して参加者を募ります。
14年から計23回、母子家庭の自然体験ツアーをおこなってきました。ただ、同じ助成金が何年もおりるわけではないので、続けるのは簡単ではありません」
今回、小社がカンパしたのは自然体験ツアー2回分。その1回目が4月14日に行われました。
参加者は8家族22人。池袋に集合して、貸切バスで自然豊かな茨城県東茨城郡へ向かいました。
原っぱを駆けまわり、生みたて卵のにおいを嗅ぐ。
常磐自動車道を走って約2時間。到着したのは、NPO環~WAが管理する里山でした。
雑木林に囲まれた野原に玉ねぎやじゃがいもの畑、鶏小屋、レストラン、薪風呂までそろっています。
ヨモギを摘んでモチをついて草餅をつくったり、鶏小屋で生みたての卵を採ったり、薪を割って薪風呂に入ったり、環で飼っている子犬と遊んだり、竹林でタケノコ掘りをしたりと、どれも普段の生活ではなかなかできない自然体験です。
最初は少し硬い表情だった子たちも、すぐに伸び伸びと遊びはじめます。
41歳のシングルマザー、田中みつきさんは、小学1年の莉子ちゃんと3歳の悠斗君(3人とも仮名)の3人で参加しました。
――これまで子どもとどんな自然体験をしていましたか?
「せいぜい近くの公園に行くくらいです。車もないし、悠斗はすぐ『歩きたくない』となるから遠くに行くのはムリ。自然体験と言ってもどこへ行けばいいのか何をすればいいのかもわからないです」
――莉子ちゃんは、ヨモギ摘みのときにアマガエルを見つけて捕まえました。
「カエルを触ったのは初めてじゃないかな。鶏小屋で卵を採ったのも初めて。莉子が卵を嗅いで『くさっ』って言ったので、私も嗅いだら確かにちょっとくさい(笑)。生みたての卵ってあんなにおいがするんですね。
莉子は家にいるとユーチューブを延々と観てしまうんですけど、ここに来たら生き生きしています。」
――自然の中だと気分も変わりますか?
「私自身リラックスできていて、子どもをおおらなか気持ちで見ることができています。子どもたちは2人とも大の野菜嫌いですけど、お昼のピザにのっていた菜の花まで食べていたので驚きました。自然の中だからおいしいのかな」
――ほかのお母さんたちと情報交換していましたね。
「私、公園では、ほかのママたちとあまり話せないんです。シングルマザーということと、私が病気で通院していて働けず、生活保護を受けているということが負い目になってしまって……。ここはみんなシングルマザーですし、自然に囲まれて開放的な気分になっているのか、心を開いて子どもや学校の話ができました。またあれば参加したいです」
この活動に、110万円をカンパしました。
母子家庭の自然体験ツアー 2回分
活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。
NPO法人森のライフスタイル研究所
所在地 | 〒396-0025 長野県伊那市荒井22番地 通り町第一ビルB1F |
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