二人のじれったい恋愛が美しい。
テンポの良さと引きの強いストーリー展開にイッキ見してしまいがちな韓国ドラマ。
2024年3月にNetflix独占配信されるや、たちまちグローバルTOP10部門でナンバーワンを獲得した『涙の女王』や、自閉スペクトラム症の弁護士の奮闘を描いた『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』、済州島を舞台とした名優たちが繰り広げる人間ドラマ『私たちのブルース』、 “少年犯罪”に焦点をあてた『未成年裁判』、苛烈な復讐劇『ザ・グローリー~輝かしき復讐~』など、著名な作品を観ると、ジャンルを問わず、どれもこれも質が高い。
そんな中、まだまだ韓国ドラマ初心者の自分がほぼ未開拓のラブコメ分野で最近イッキ見したのが、韓国で“国民的年下彼氏”と呼ばれるチョン・へインが初めてラブコメに挑戦した話題作『となりのMr.パーフェクト』だ。
チョン・へイン扮する「Mr.パーフェクト」スンヒョは、外見も性格も良く、韓国建築界で注目されている気鋭の建築家。そんなスンヒョがある日、ぺ・ソンニュ(チョン・ソミン)と偶然再会。ソンニュは母親同士が親友で、家が隣同士で育った幼馴染だが、成績優秀でアメリカに留学、世界的大企業に勤め、エリートとの結婚も決まっていた。しかし、突然、婚約破棄、会社も辞めて帰国したソンニュにスンヒョは振り回されつつ、交流が復活する。
ドラマでは二人の出会いの幼少期から、いつも一緒に過ごした高校時代までの日々、空白を経て再会した現在を交錯して描く。30代男女が、幼馴染ならではの距離感でじゃれ合う様子は気恥ずかしいほどだし、30年も思い続けた気の遠くなるほどの一途さにも驚く。
さらに驚くのは、ストレートなラブコメなのに、家族の問題や社会の問題が普通に描かれていること。日本以上に差別と格差が深刻と言われる韓国ではラブコメと言えど、病気や人種差別、経済格差、滅私奉公とも言うべき利他の精神などがデフォルト要素のよう。だからこそ二人のじれったい恋愛が美しいのかもしれない。
たこう・わかこ●ライター。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。雑誌、ウェブ媒体等で俳優やタレントなどのインタビューを手掛け、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『脚本家・野木亜紀子の時代』(blueprint、共著)など。