

いま、わが国の子どもの7人に1人、およそ280万人が「貧困の状態にある」と言われています。ランドセルが買えず、入学式に1人リュックサックで出席する子。夏休みに入って給食が食べられなくなると痩せてしまう子。ふつうの子どもにとっての「あたりまえ」に手が届かない子どもが、私たちのすぐそばにいるのです。
お金のことでつらい思いをしている子どもたちに、少しでも寄り添っていきたい。私たちがはじめたのが、この「ネット1%寄付」です。
困窮の理由もさまざま。でも、私たちはあなたの近くにいて、いつも応援しています
認定NPO法人 フードバンク山梨/山梨県南アルプス市
取材・文=神尾京子(通販生活編集部)
破棄される食品を有効活用できないか――そんな想いから始まった米山さんの活動は貧困支援と結びつき、「フードバンク山梨」の食のセーフティネット事業に結実しました。 現在、活動は学習支援などにも広がっていますが、根幹をなす食糧支援では今なお多くの支援が必要です。
米山けい子さん●認定NPO法人「フードバンク山梨」理事長。1953年、山梨県生まれ。生活協同組合パルシステム山梨理事長を経て、フードバンク山梨を設立。全国フードバンク推進協議会代表。
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「段ボールいっぱいの食品をありがとうございました。小5の娘は大好きなお菓子を次々と手にとり、『お父さんがいなくても、こんないいことがあるんだね。食べていい?』と大喜びでした」
「箱を開けたとき『お菓子だ。ジュースもある!』と子どもが大喜び。ふだん買い与えていないことを反省しました。食べたい盛りの子どもはいつも『おなか空いた』と言い、それを黙って聞くしかない毎日でしたから」
「子どもが箱の開封をしました。『パパ、すごいよ、すごいよ』と何回も繰り返し、ニコニコしていました。2人で料理をしておいしくいただきました。『お菓子はぼくのだよ』とうれしそうでした」
食品の詰まった箱が届くと、子どもたちは大喜び。支援を受けたある家庭のひとコマ
これらはすべて、支援の食品を受け取った方からのメッセージです。
私たちフードバンク山梨は、企業や農家、一般の方から寄付していただいた食品を、困窮家庭に配布する取り組みを行なっています。
約100世帯、半数は子どものいる家庭に対して月2回発送する「食のセーフティネット事業」と、夏休みと冬休みに約600世帯に発送する「フードバンク子ども支援プロジェクト」が食支援の2本柱です。
この取り組みでは、山梨県内6市(※)の78の小中学校と連携することで支援が拡大しました。(※中央市、笛吹市、南アルプス市、都留市、山梨市、大月市)
どちらの事業も箱詰め作業の流れは同じです。
まず、お米や調味料などの「基本セット」を箱に入れ、さらに家庭ごとに適した食品を選んで足していきます。
家族構成や年齢、家庭の事情が書かれた個々のファイルを見ながら、「小さい子がいるからお菓子やジュースを多めに」「食べざかりの男の子がいるから乾麺やレトルトを入れよう」「この家には電子レンジがないのでレンジ調理が不要な缶詰を」といった具合に、びっしりとすき間なく、丁寧に詰めていきます。
季節によっては、クリスマスプレゼントやバレンタインデーのチョコレートをプラスするサプライズも。
受け取る人の顔は見えませんが、何が喜ばれるかを考えながら箱詰めする作業は、ボランティアの方々も楽しんでいるようです。
箱の中身はさまざま。各家庭の事情に照らし合わせて内容を決めているからだ
月2回の「食のセーフティネット事業」では、隔週の木曜日と金曜日に借りている倉庫にボランティアが集まって、スタッフと一緒に約100件分の発送作業をします。
空調設備がない倉庫の冬は寒く、夏は暑くてたいへんなのですが、毎回10人以上のボランティアが参加してくださいます。
支援している家庭は、家族構成も困窮の理由もさまざまです。
お孫さんとふたり暮らしのAさん。収入はわずかな年金のみです。福祉課も生活保護の申請をすすめたそうですが、お孫さんとご両親の間に複雑な問題があり、生活保護は受けたくないと断っているそうです。
「1日に豆腐一丁しか食べさせることができない日がありました。体の大きな孫は空腹で眠れずに、夜中にふと気づくと台所でボーッと立ちすくんでいました」と話してくれました。
11歳、10歳、7歳の3人の男の子を育てる30代のシングルマザー・Bさんは、非正規の仕事に就いていて月収は多くても15万円ほど。子どもの病気や学校の行事で休むことが多く、収入は不安定です。
2016年にお会いしたとき、「子どもたちにおなかいっぱい食べさせたいから、自分は夕食を食べていない」と打ち明けてくれました。
支援を受けた家庭からのアンケートハガキ。よろこびの言葉にあふれている
生活に困窮している親御さんたちを精神面でも支えるために、箱詰めされた食品のいちばん上にはフードバンク山梨からのお便りを入れています。
「あなたの近くに私たちはいて、いつも応援していますよ」と伝えることはとても重要だと思うからです。
「食品だけでなく力になってくださる方がいると思うと、不安、孤独感も少し減ったように思います。いつか、いつか恩返しできるように、子どもが独立できるまでもう少し親子でがんばります」
最近、あるお母さんからメッセージをいただきました。
ああ、想いはちゃんと届いているなとうれしくなりました。
安定した支援を継続して続けるためには運営費が必要になります。
フードバンク山梨は、まだ十分に食べられるのに捨てられてしまう食品を、児童養護施設や福祉施設に配布する運動からスタートしました。2008年のことです。
翌年、地元の南アルプス市に働きかけて、生活保護を受けていない困窮家庭に食品を直接発送する活動を開始。
2012年には厚生労働省「絆」再生事業の委託を受けて、「食のセーフティネット事業」が県下全域の400世帯にまで拡がりました。
ところが2015年4月に「絆」再生事業が終了し、予算や情報の不足などで支援体制が整わなくなりました。そして、フードバンク山梨と連携している6市の100世帯以外については、食品支援ができなくなってしまったのです。
それまでに支援したのべ2000世帯を調査したところ、19歳以下の子どもが690人もいることがわかりました。
彼らのためにできることを模索していたとき、ある小学校の教頭先生から電話をもらいました。
「夏休み中におなかを空かせた生徒が学校に来て『先生、何か食べるものない?』と言ってきた。フードバンクから食料を支援できないか」という内容でした。
夏や冬の長い休みの間は給食がないため、ギリギリの生活をしている家庭では十分な食事がとれないのです。
そこで2015年、就学援助を受けている準要保護世帯の子どもたちを対象に、夏休みと冬休みに食品を届ける「フードバンク子ども支援プロジェクト」を開始しました。夏休みに2回、冬休みには1回、約600世帯に発送しています。
学校に働きかけて、就学援助を受けている世帯や教師が気になる生徒たちに「フードバンクの食料支援申請書」を配布してもらいます。保護者は学校からの配布物にはしっかり目を通すので申請漏れが少なくなるからです。申請後のやり取りについても、フードバンク山梨と直接行なうことで申請者のプライバシーが守られます。
1校の13世帯からはじまり、2017年の冬休みには78校582世帯にふえました。
申請書には現在の状況を記入する欄があり、そこには切実な声が溢れています。
「契約社員で働きながら2人の息子を育てる母子家庭です。子どもたちの食事量がふえても、食費が足りず我慢させることが多々あります。野菜やたんぱく質を十分に与えられません」
「子どもが4人いるので食費は本当にたいへんです。パンやお米や麺がほとんどで、ひとりの収入では買えないものも多く……。なんとか工夫して食事をつくっていますが、夏休みなどは本当にたいへんです」
貧困の理由や状況は家庭によりさまざま。この事業だけで支援が足りることはありえない
そんな声に応える私たちの活動は、食品や運営費を寄付してくださる方、作業をしてくださるボランティアによって支えられています。
食品を提供してくださる企業は現在54社。食品なので安全性にはとくに気をつけています。提供企業とは同意書を結び、万が一、何かあったときに追跡できるよう準備しています。
お米は地元の農家が協力してくださるし、一般の方から食品を集める「フードドライブ」というイベントには学校や企業が取り組んでくれています。
ご提供いただいた食品は私どもの倉庫に集められ、毎週水曜日にボランティアの方といっしょに賞味期限を1点1点チェックし、仕分けます。
ボランティアによる箱詰め作業。空調のない倉庫での作業は季節によっては重労働だ
「フードバンク子ども支援プロジェクト」では、地域の学校などがボランティアに取り組む
私どもがいちばん不得手なのは、寄付金集めでしょうか(笑)。県内の企業を回って協力をお願いしたり、街頭募金したりもしていますが、つねに自転車操業の状態。ですから、今回の支援は本当に助かります。
フードバンクは寄付された食品を無料でお分けする活動なので、お金のかからない運動だと思われがちですが、実際には運営費用が必要です。システムとして確立させ、継続していくために、私たちは食支援に給与の発生する専従スタッフを2名置いています。
食品を単に右から左へ移動させるだけではないことをご理解いただければと思います。もちろん配送費や食品の保管にもお金が必要です。
来年度はまだ支援を受けていない子どもたちのいる自治体も支援対象に加え、さらに支援世帯を増やしたいと思っています。細くとも長く活動を続けられるよう、今後も応援してください。
この活動に、300万円をカンパしました。
宅配費 180万円
ダンボールなど消耗品代 30万円
倉庫家賃 90万円
※毎月200世帯に、夏休みと冬休みは600世帯に、食糧支援を実施する。食品を届けるための宅配費とダンボールなど消耗品費に加え、食品を集めて保管し、発送作業を行なう倉庫の維持費が必要となる。
活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。
認定NPO法人「フードバンク山梨」
所在地 | 〒400-0214 山梨県南アルプス市百々3697-2 |
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電話 | 055-298-4844(平日8時30分~17時30分) |
支援金受付 | 郵便振替口座 口座番号00220-0-100567 口座名義フードバンク山梨 銀行口座 山梨中央銀行 県庁支店 普通671338 口座名義特定非営利活動法人フードバンク山梨 理事長 米山恵子 |