子どもたちは親のお金の苦労をよく知っています。受験で友だちと同じように模試を受けたくても、塾に行きたくても言えない。部活に入りたくても言えない。最初から諦めてしまいがちな子どもたちが、学ぶことで自信をつけて貧困の連鎖から抜け出す力を持つために、学習支援は、いま、子どもたちに欠かせない支援です。
どんなにお金がなくても
サッカーに夢を持てる環境を
つくりたい。
こどもスポーツ支援協会/東京都府中市
取材・文=横山健(通販生活編集部)
子どもの習い事には意外とお金がかかります。ボールひとつでできそうなサッカーも例外ではなく、月会費が1万円以上、遠征費を入れると月の出費が2万円を超えてしまうサッカークラブも珍しくありません。
2015年、鴨川さんが立ち上げたサッカークラブは、月15回以上練習がある上級者クラスでも月会費は4千円。
生活保護を受けている、またはひとり親家庭の子どもなら月会費もユニフォーム代も無料で、ほとんどお金がかかりません。
しかも、コーチ陣には元Jリーガーやフットサルの現役日本代表選手などの名前がずらり。
鴨川さん自身も、中学では柏レイソルのジュニアユースに入り、中学卒業後はブラジルへ渡って3年間、クラブチームの下部組織でプロ契約を目指したサッカー経験を持っています。
サッカー選手の道は18歳であきらめたものの、ブラジルでの経験がこのサッカークラブのユニークな取り組みに生かされているのです。
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日本ではスタート地点にすら立てない。
「ブラジルではいたる所で、服や靴が買えない貧しい子どもたちが上半身裸、裸足でストリートサッカーをしていました。サッカーがしたければ、町中にだっていくらでもする場所がある。
そういったストリートサッカーからプロのサッカー選手になるというのは、ごく一般的な話です。
一方で今の日本はどうかというと、靴が買えないほど困っている子どもはあまり見かけませんが、子どもたちが自由にボール遊びをできる場所は公園でもなかなかありません。
小学生がサッカーをしたいと思ったら、地域のサッカークラブに入るしかない。家計に余裕のない家の子は、サッカーをはじめることすらできないのが現状です。
サッカーに夢を持とうにも、そもそもスタート地点にすら立てない。
そんなことを考えながらも何もできずにいましたが、4年前に柏レイソルのジュニアユースで後輩だった長谷川太郎(元Jリーガー)と20年ぶりに再会して、『自分たちがやってきたサッカーで何か社会に還元したいよね』と話したことがサッカークラブをつくるキッカケになりました」
鴨川さんは「小さいころからやっていたサッカーに関わる仕事をしたいと思ってましたから」と事もなげに言いますが、それまで経営していた会社を人に譲ってサッカークラブをつくるのには相当の覚悟が必要だったはずです。
現在、メンバーは幼稚園児が36人、小学生が86人、中学生が10人です。
鴨川さん自らコーチをし、クラブ設立の趣旨に共感してくれる元Jリーガーたちは格安でコーチをしてくれますが、低く抑えた月会費だけで運営費はまかなえません。
活動に賛同し、月1万円のサポートをしてくれる企業サポーターが徐々に増えて14社になり、今年(18年)9月、ようやく収支はトントンになったばかり。
決まった練習場はないので、ほとんど毎日の練習にあわせて市立競技場や中学校のグランド、体育館を予約するのも楽ではありません。
運営の苦労は絶えませんが、それでも「すべての子どもがサッカーを楽しみ、夢を持てるようにしたかったんです」とひたすら前向きです。
合宿費が払えずサッカーをやめた。
鴨川さんの言葉通り、一度はあきらめたサッカーへの夢をこのサッカークラブで再び持つことができた小学6年生の瞬くんと、母親の優子さん(どちらも仮名)にも話を聞きました。
5歳からサッカーを始めた瞬くんは、4年生のときには地元の市の選抜に選ばれるほど上達しましたが、5年生の6月に所属していた地元のサッカークラブを辞めることになりました。
優子さんにとっても心苦しい決断でしたが、やむを得ない状況があったからです。
「2年前に離婚したのですが、とたんに家計は苦しくなりました。収入は事務のパートで月に15、6万円。瞬のサッカークラブの月会費は1万2千円くらいでしたから、決して安くはありません。それでもなんとかやりくりしてましたけど、その月は別に合宿費を払う必要があったんです。
瞬の上に中学生、下にも幼稚園の子がいて何かと出費が重なってしまい、合宿費を払えそうにありませんでした。申し訳ないけど『今お金に困ってるからサッカーはやめてほしい』と言うしかなかったんです」
鴨川さんが立ち上げたサッカークラブを知るまでの約1年間、瞬くんはサッカーができませんでした。
「もうサッカーすることはあきらめかけてた。それまで練習してた時間は家でスマホのサッカーゲームしたり……サッカーができるみんながうらやましかった」
今、瞬くんは週に5回練習しています。鴨川さんのサッカークラブにはジュニアユース(中学生)のチームもありますから、少なくともあと3年ちょっと、中学いっぱいはここでサッカーをすることができます。
家から府中市まで、練習場所によっては1時間くらい歩くこともありますが、「ここならサッカーを続けられるから嬉しい。将来はプロになりたいです」と屈託なく笑います。
このサッカークラブの設立趣旨に賛同しているのはJリーグ関係者だけではありません。鴨川さんの知人を通じて、海外のプロチームや著名なスカウトマンとのつながりもできているといいます。
もちろんプロになるためには、本人の才能と努力と運が必要ですが、少なくともここにはサッカーで人生を切り拓くことができる道があります。
この活動に、220万円をカンパしました。
●練習グラウンド借料………150万円
●無料ユニフォーム費………50万円
●団体の運営費(10%)………20万円
活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。
一般社団法人 こどもスポーツ支援協会
所在地 | 〒183-0057 東京都府中市晴見町1-14-15 エスペランサ1F |
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電話 | 050-5308-6073 |
メール | pup@kodomo-sports.jp |