「勉強したい」と言えない子どもたちがいる。

「勉強したい」と言えない子どもたちがいる。

子どもたちは親のお金の苦労をよく知っています。受験で友だちと同じように模試を受けたくても、塾に行きたくても言えない。部活に入りたくても言えない。最初から諦めてしまいがちな子どもたちが、学ぶことで自信をつけて貧困の連鎖から抜け出す力を持つために、学習支援は、いま、子どもたちに欠かせない支援です。

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支援した団体の一覧

三者面談に必要な模擬試験の結果。でも、模試代が払えない。

全国子どもの貧困・教育支援団体協議会

取材・文=佐々木とく子(フリーライター)

 中学3年の2学期に行なわれる三者面談は、高校進学の志望校を絞り込むために重要な場。
 このとき、学校側から求められるケースが多いのが模擬試験の結果です。

 学校のテストの点数や偏差値は、あくまでもその学校の中だけのもの。
 たとえば都立高校を志望する場合には、東京都全体の中学3年生の中で自分がどのくらいの位置にいるのかがわからなければ、志望校を絞り込めません。
 模擬試験は進路指導する際の目安としても大切なのです。

 経済的な理由で模擬試験を受けられない子どもたちのために、全国子どもの貧困・教育支援団体協議会を通じて「通販生活の子どもの貧困支援」から模擬代をカンパしました。

 この協議会は、貧困状態にある子どもたちに教育支援をしている非営利団体の集まりで、2018年11月末現在72団体が加盟しています。
 会員団体のうち、申請のあった11団体に模試代が分配されました。そのなかの1つ、無料塾を開催しているNPO法人キッズドア(東京都)の活動をご紹介します。

「学習会に通ってくる子どもたちのほとんどが、お金がなくて模擬試験を受けられない」と、キッズドア教育支援事業部の東操(ひがし・みさお)さんは言います。

無料塾のひとつ、「未来塾」は月2回開催。小学校4年~中学校3年が参加できる。左が東操さん。

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 キッズドアは東京都と宮城県で学習支援をしていますが、その学習会に通う子どもたちは、一人親家庭が6割超。世帯年収は200万円未満が最多で、3割を占めています。

 一方、模試代は、東京都の場合1回4,300円程度。会場までの交通費なども入れると、1回の模試にかかるお金は5,000円ほどになります。
 年収200万円ならば、月収は16~17万円ですから、そのなかから5,000円を捻出するのは、とても大変です。

高校入試の本番に模試経験が大きく影響する。

「余裕のあるご家庭の子どもは、模試を何度も受けられます。模試を経験すると場慣れしますし、要領もつかめます。模試の結果から、志望校に入るにはどの教科を強化すればいいか、学習の方針もはっきりします」

 それに対して模試を受けたことがない子どもは、自分の実力がわからないだけでなく、弱点の克服ができず、高校入試の当日もあがってしまって実力を出せない可能性があります。
 模試を受けられるかどうかで、教育格差が拡大してしまうのです。

生徒は自分が持って来た教材を使ってもいいし、会場に用意されたテキストから選んでもいい。

「キッズドアでは、中学3年生を対象にした、高校受験のための『タダゼミ』という学習会を開いています。ここに通う子どもたちには、当団体が負担して模試を2回受けられるようにしています。
 しかし、タダゼミの開催曜日が都合に合わなかったり、場所が遠かったりなどの理由で、タダゼミ以外の学習会に通っている中学3年生の分までは、模試代を捻出することができませんでした。
 今回いただいたカンパで、これまで模試を受けられなかった子どもたちも受けることができて、とてもありがたかったです」

 実際に模試を受けた中学3年生からは、「実力がわかった。もっと頑張らないといけないと思った」「第一志望は合格できそうだから、他校も検討したい」といった声が届いているそうです。

学習会に3回以上通った中3の高校進学率は100%!

 キッズドアでは、学習会に通いたいと申し出のあった親子に対して、最初にヒアリングをします。
 その際に「家でどれくらい勉強をしていますか」と尋ねると、「ゼロ」という答えが圧倒的に多いのだそうです。
 ダブルワーク、トリプルワークで親がほとんど家にいないため、子どもがずっとゲームをしていても叱る人がいないのです。

「10分でいいから毎日勉強してほしいと話すのですが、それが難しい子もいます。ただ、模試を受けて、志望校の合格可能性が最低のE判定だったりすると、さすがに『このままではまずい』と思うようです。
 私たちも、模試の結果があれば苦手なところが把握できて、集中的にフォローできますから、すごく助かります」

 キッズドアのスタッフは、生徒が第一志望の高校に落ちても、挫折しそうになる本人と家族を支えながら、二次募集、欠員募集と、受験の機会を捉えては送り出します。

「3月末まで奔走しますが、その甲斐あって、学習会に3回以上通ったことのある中学3年生の高校進学率は100%です」

 子どもの実力を伸ばして将来の選択肢を広げる。
 貧困の連鎖を断ち切るために、キッズドアのスタッフ、ボランティアのみなさんは本気で子どもたちに向き合っています。

この活動に、330万円をカンパしました。

●模擬試験代……11の会員団体に300万円
●団体の運営費(10%)……30万円

活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。

全国子どもの貧困・教育支援団体協議会

所在地 〒104-0033
東京都中央区新川2-1-11 八重洲第1パークビル7階
特定非営利活動法人キッズドア内
電話 03-5244-9990(協議会宛である旨、お伝えください)
メール info@kyoikushien.net
支援金受付 三井住友銀行 日本橋東支店
口座番号7792927
口座名義全国子どもの貧困・教育支援団体協議会
※ご寄付いただける際には、可能であれば、ご一報いただけると幸いです。