いま、わが国の子どもの7人に1人、およそ280万人が「貧困の状態にある」と言われています。ランドセルが買えず、入学式に1人リュックサックで出席する子。夏休みに入って給食が食べられなくなると痩せてしまう子。ふつうの子どもにとっての「あたりまえ」に手が届かない子どもが、私たちのすぐそばにいるのです。

お金のことでつらい思いをしている子どもたちに、少しでも寄り添っていきたい。私たちがはじめたのが、この「ネット1%支援」です。

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支援した団体の一覧

すべての子どもがこども食堂につながるために、
こども食堂を安心・安全な場所にしたい。

こども食堂安心・安全向上委員会/滋賀県大津市

取材・文=釜池雄高(通販生活編集部)

 2018年4月4日の『朝日新聞』一面に、「子ども食堂2200ヵ所超」の見出しと共に、各都道府県のこども食堂数一覧が掲載されました。
 最も多かったのが、東京都の335ヵ所。続いて、大阪府219ヵ所、神奈川県169ヵ所、沖縄127ヵ所、北海道113ヵ所……、最も少なかった徳島県と長崎県の7ヵ所まで、すべての都道府県に少なくとも2286ヵ所のこども食堂があることがわかったのです。

 この調査を行なったのが、こども食堂の運営者などで構成された「こども食堂安心・安全向上委員会」です。
 代表を務める湯浅誠さん(社会活動家/法政大教授)は、「こども食堂はこの2年間で約2000ヵ所増えました。私はこれまで約30年間貧困問題に関わっていますが、政府が予算をつけて声かけしたわけでもなく、全国で同時多発的にこうした取り組みが広がった例は初めてです」と語ります。

こども食堂安心・安全向上委員会のメンバー。前段左より、栗林知絵子さん(豊島子どもWAKUWAKUネットワーク・東京)、園田愛美さん親子(森の玉里こども食堂・鹿児島)、近藤亜弥さん(おてらde食堂・北海道)。 後段左より、黄瀬絢加さん(滋賀県社会福祉協議会・滋賀)、湯浅誠さん(社会活動家/法政大学教授)、小西由美子さん(子ども食堂ひがしっこ・滋賀)、大谷清美さん(チャイルドケアセンター・福岡)

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どこかで不慮の事故が起きたら、連鎖的に多くのこども食堂に影響を及ぼす。

「こども食堂が広がったのは、『子どもの貧困対策』という福祉の面だけでなく、『地域交流の拠点』としても機能していることが大きいと思います。
 また、地域のおばちゃんたちが自発的に始めた例も多く、活動に多様性があるのも特徴です。その自主性と多様性はこども食堂の命だと思うのですが、それゆえに、安心・安全面での不安があるのも事実です。

 私は、2016年から始まった『広がれ、こども食堂の輪! 全国ツアー』で、約30の都道府県を訪れ、各地のこども食堂の運営者をはじめ、議員、行政職員、学校関係者など多くの人の話を聞きました。
 すると、地域でこども食堂に協力したい人からは、保健衛生面での不安が強い。一方でこども食堂を運営している人は、毎回の開催に手一杯で資金的にも厳しいとろこが多い。万が一に備えて保険に入りたいが、そこまで手がまわらないという課題が見えてきました。

動画)こども食堂安心・安全向上委員会のメンバーによる座談会「保険はなぜ必要?」

 こども食堂は、1軒1軒が独立して運営されていますが、もし、どこかのこども食堂で不慮の事故や食中毒が起きてしまったら、連鎖的に多くのこども食堂に影響を及ぼすことは避けられません。
 ここまで数が増えたのに、まだ大きな事故が報告されていないのは、運営者の方たちの努力が大きい。保健所の職員を招いた講習会を実施している県もあるし、食事をつくるスタッフの検便をしているこども食堂もあります。

 しかし、どんなに気をつけていても、事故は起きてしまうものです。
 そんなときに、参加した子どもや大人にきちんと医療費などが払われること。そして、こども食堂の運営者も安心・安全面を気にかけていることを知ってもらい、学校や町内会など地域の人たちが協力することで、子どもたちがこども食堂につながりやすくなること。
 この2つを目的として、200軒のこども食堂の3年分の保険料を、インターネットを使って集めるプロジェクトを企画したのです。

保険料が1人28円の「行事用保険」に加入した場合、30人が参加すると1回840円。月1回開催すると、年間10,080円の保険料が必要になる。

希望したすべてのこども食堂に3年分の保険料を提供しました。

『あなたの寄付が食材になり、子どもたちのお腹を満たします』といったわかりやすいものではありませんでしたが、『こども食堂の基盤が整備されることが安心感につながり、子どもたちの利益になる』と、こちらの意図を十分理解してくれた方が多かったのがうれしかったですね。

 インターネットを通じた募金では、5500人を超える方から当初目標としていた1000万円を超える寄付をいただきました。広報費や振込み手数料など経費もかかっているため、カタログハウスからの寄付も合わせて、最終的に希望した207ヵ所のこども食堂すべてに3年分の保険料を提供することができました。

食事を食べたあと、元気に遊ぶ子どもたち(写真提供/要町あさやけ子ども食堂)

『徳島県は全国一こども食堂の数が少ないとのことでしたが、7月より奮起して、夏休み平日毎日こども食堂を開催しました。学校がないので給食がなく、お父さんお母さんは仕事に行っている子ども達だけの参加がほとんどで、のべ300人近い参加がありました。 
 地産の野菜などの材料をできるだけ使い、手作りのため1食あたり200円の材料費がかかっています。無料ですので、約6万円の持ち出しとなりました。(中略)保険料をいただき、安心して開催できるようになりました。これからも、子どもの居場所として地域の拠点として定着できるよう努力してまいります』

 保険料を受け取ったこども食堂の方からのメッセージです。お金の面もありますが、多くの人がこども食堂を応援し、期待してくれていることが、運営者の方たちを勇気づけると思います。

保険料の寄付を受けたこども食堂からのメッセージ。

 今回のプロジェクトで、こども食堂での事故や食中毒などの万が一に対応することができました。しかし私たちは、こども食堂がすべての子どもたちにとっての『社会のインフラ』になる可能性があると考えています。そのためには、質・量ともにまだ足りません。
 全国に小学校は約2万校。こども食堂はまだその10分の1です。各小学校区に1つこども食堂をつくることを目標に掲げる自治体も出てきています。

 こども食堂で、子どもたちはさまざまな体験をし、地域の人たちは子どもたちとの交流を通して、虐待などのサインに気づいていく。そんな場所が増えると、誰もが生きやすい社会になるのではないでしょうか。
 私たちは引き続き、こども食堂を支援する活動を継続していきますので、『通販生活』読者の方にも、今後のこども食堂への注目、ご協力をお願いできればと思います」

この活動に、330万円をカンパしました。

●こども食堂の保険料……300万円
●団体の運営費(10%)……30万円
保険料は、開催頻度が週1回以下のこども食堂に年間1万円、週1回を超すこども食堂に年間3万円をそれぞれ3年分給付しました。

活動を応援したい方は、
ぜひ下記へご支援をお寄せください。

こども食堂安心・安全向上委員会

所在地 〒525-0072
滋賀県草津市笠山7-8-138
滋賀県社会福祉協議会事業部門
電話 077-567-3924
メール kodomo-anshin@shigashakyo.jp