私のこだわり道具

各界で活躍する方たちに「これがないと困る!」という
「こだわり道具」をご紹介いただきます。

第13回

高橋ひとみさん

俳優

最愛の相棒であり
仕事のモチベーションアップにも。
みんなから褒められる愛車・アバルト

アバルト「695C リヴァーレ」

「アバルトには、もしかすると車好きの男性が乗るイメージがあるかもしれませんが、コンパクトで運転しやすく、スタイリッシュなので、ぜひ女性にも乗ってほしいです」と高橋さん。

「ひとみさんの車、すごくかっこいい」「いつか譲ってください」って、いろいろな方が言ってくださるんです。「エンジン音を聞かせてください」って駐車場までわざわざ来てくれるメイクさんもいらっしゃるくらい、とにかくファンが多い。これまで長いこと車に乗っていますが、そんなことを言われたことはありませんでした。惚れ込んだ私としてはうれしい限りですよね。自慢の愛車です。

父の影響で車好きに。
かっこよくて高馬力なこの車に一目惚れ!

イタリアの「アバルト(ABARTH)695Cリヴァーレ」という車で、私が乗っているオープンカーのタイプは日本に65台しかないそうです。見た瞬間、一目惚れでした! 魅力は挙げ出したらきりがないんですけれど、なんと言ってもスタイリッシュなデザイン。ネイビーの幌とシルバーの車体とのコンビネーションがすっごく素敵。ダッシュボードにマホガニーがあしらわれていたり、シートの革もネイビーだったりして、内装も特別な感じがします。さらに馬力がすごくて、小さいのにやんちゃな感じがするんです。コンパクトでかっこいい車を探していた私の理想どおりの車、いえ理想を超えた車、それがこのアバルトです。

知り合いの方が乗っていらっしゃるのを見て、「この車だ! 私も欲しい!」と思ったのですが、限定車ですでに手に入りませんでした。がっかりしていたら、「そんなに気に入ったのだったら、譲ってもいいよ」とおっしゃってくれたんです。よほどがっかりしていたんでしょうね(笑)。お言葉に甘えて譲っていただくことになりました。それが2021年11月。それから、ほぼ毎日一緒です。仕事現場に行く時は、いつも自分で運転しています。山梨県や群馬県あたりまでなら、この車で行っています。

大切な相棒で、長く乗り続けたいので、お手入れは念入りにしています。タイヤのホイールにすすが付くので、取り寄せたクロスで毎日磨いています。洗車やコーティングも欠かしません。かっこいい車だから、きれいにしてあげないとかわいそうかなと思って。私のインスタグラムにもよく登場させていて、「いいね!」もたくさん押していただいています。

「『ボボボボボボ』という排気音も、エンジンをかける時の『ウオンオンオン』という音も耳に心地いいんです」。

免許取り立ての頃、
寺山修司さんを乗せて軽井沢にドライブ。

「意外です」と言われることもあるんですが、私は車も運転も大好きなんです。19歳で免許を取った直後に家に帰ったら、父が内緒でいすゞの真っ赤な「ジェミニ」を買ってくれていました! 当時、みんなの憧れの車は「ジェミニかシルビアか」という時代でしたから、本当に、本当に嬉しかった。ただ、すぐには運転に慣れなくて、しばらくは、右折はもちろん、左折するのも怖いから、ひたすら直進していました。「道路はずっと繋がっているからいつかは着くでしょ」と思って(笑)。その頃、劇作家の寺山修司さんを乗せて、軽井沢に行ったこともあるんです。初心者の運転で怖かったかもしれませんが、寺山さんは助手席で足を伸ばしてぐっすり寝ていました。とてもいい思い出です。

運転が好きでも、馬力のある車が好きでも、私は安全運転がモットーです。高速道路ではいつも左側を走っています。以前、いつものように高速道路を運転していると、隣にパトカーが来たんです。「スピードは守っているし、一体何を言われるのかしら」と思っていたら、「流れに乗って〜」と言われてしまって(笑)。意識して遅く走っているつもりはなかったんですけれど、事故が怖いからスピードは出しません。車好きで運転好きなのに、慎重派って珍しいんでしょうか?

最近、車を持っていない若い人が多いそうですが、私が仕事を始めた頃は「20代で○○に乗りたい、30代で××に乗りたい」という目標がありました。「頑張れば、あれに乗れるようになる! だから仕事を頑張る!」という方、多かったんじゃないでしょうか。私にとっては、仕事のモチベーションに直結していましたね。そして振り返ってみれば、父が「超のつく車好き、運転好き」でした。だから私が小さい頃は家族で出かけると言えば、必ず車でした。幼い頃のそんな楽しい記憶も心に刻まれていて、私も車好きになったんだと思います。

イタリアのボートメーカー「リーヴァ」とコラボして誕生したモデルで、ダッシュボードの一部には、マホガニーがあしらわれている。

アバルトと共に大田区の
新たな魅力を発見していきたい。

2022年から公演が始まった『ハリー・ポッターと呪いの子』は、おかげさまで総観客数110万人を突破しました。もう3年目に入りましたが、毎回、ワクワクしています。ダブルキャストなので芝居相手も変わるし、相手の演技も違う。観客の皆さんも毎日違う。だから、まるっきり「同じ」ということはありません。お客さんが「ひゃー、来ないで!」って本気で怖がってくれると、こちらもさらに興が乗りますし、芝居が終わって観客の皆さんが立ち上がって熱い拍手をしてくれると、「今日のお客さん、すっごい喜んでくれているね」と出演者も自然と笑顔になります。生の舞台ならではの魅力に取りつかれています。

8歳の時に東京都の大田区に引っ越して以来、現在も大田区民です。そんなご縁もあってか、2019年から「大田区観光PR特使」を務めています。街の情報を扱うケーブルテレビの番組でナレーションを担当したり、数ヵ月に一度は区内の古民家カフェやプライベートサロンなどを紹介するロケにも行ったりしています。

一番のお気に入りは、洗足池公園です。2022年に亡くなってしまったゴールデンレトリバーの「モモエ」といつも散歩していました。「犬友」もたくさんできました。四季折々の景色が素晴らしくて、子どもたちの歓声がいつも響いている。都内とは思えないのどかな場所です。

「ネイビーが好き」と話す高橋さんと、まさにいい相棒。未来の愛犬とドライブする日も近いかもしれない。

勝海舟が晩年を過ごした場所で、ご夫妻のお墓は洗足池公園にあるんです。以前、勝海舟の父・小吉とその妻・お信を描いた時代劇『小吉の女房』(N H K BSプレミアム)に小吉の兄の妻・お遊役で出演させていただいたこともあって、洗足池との縁の深さを改めて感じました。

50年以上も大田区に住んでいるのに、観光PR特使になって初めて知ったスポットもたくさんあります。区内には3500もの工場や、田園調布のような高級住宅街もありますし、何と言っても日本中の皆さんがよくご存じの羽田空港もあります! これからはアバルトで区内を巡り、私も大田区の魅力を発掘していきたいと思います。

取材・構成/宮本由貴子 写真/ホリプロ・ブッキング・エージェンシー提供

高橋ひとみ(たかはし・ひとみ)

俳優。寺山修司演出の演劇『バルトークの青ひげ公の城』で舞台デビュー。1983年『ふぞろいの林檎たち』(TBS系列)に出演し、脚光を浴びる。以降、多くのドラマや映画で幅広い役を演じる。近年ではバラエティ番組にも出演するなど活躍の場を広げている。2015年から南アフリカ観光親善大使、2019年から大田区観光PR特使を務める。現在、東京・TBS赤坂ACTシアターでロングラン上演中の『ハリー・ポッターと呪いの子』にミネルバ・マクゴナガル役で出演中。