各界で活躍する方たちに「これがないと困る!」という
「こだわり道具」をご紹介いただきます。
大草直子さん
ファッションエディター、スタイリスト

「30代だったら使えなかったかもしれない高級なノート。とにかく忘れてしまわないように、何でも書きます!」
スマイソン MaraレザーPortobelloノートブック(限定品)

2019年から新しいメディア「AMARC(アマーク)」を立ち上げ、ウェブや雑誌を通して、ファッションやビューティー、生き方などについてさまざまなことを発信しています。ここでしか手に入らないファッションやビューティーアイテムを提供し、商品開発にも関わっています。他のブランドとの協業やスタイリングなどもしているので、もはや肩書きは「大草直子」としか言いようがない! みたいな感じでいろんなことをやっています。
夢中になったサルサのために会社を辞めて中南米へ。
20代から40代にはさまざまなことがありましたね。新卒で入った出版社を5年で退社して、夢中になったサルサのために中南米に向かいました。20代後半に結婚と出産があったのですが、子育てをしながらフリーランスのエディターやスタイリストとして走り回っているうちに、夫とすれ違いの時間が増えて30歳で離婚。32歳でベネズエラ人の夫と再婚し、2人の子どもを出産しました。
40代では、講談社が新たに立ち上げた、ミドルエイジ女性向けウェブメディア『mi-mollet(ミモレ)』の編集長とコンセプトディレクターを務めました。そして、昨年9月に50歳を迎えました。
昔から、仕事やプライベートのいろんなことを書き込むためのノートは欠かせませんでした。私が長年愛用しているのは、イギリスのスマイソンというブランドのもので、大小合わせて20冊くらいは使ってきました。きっかけはここのレターカードで、実用品なのに心が踊って美しいものってあるんだ!と実感してから、ノートも使うようになったんです。スマイソンのノートに使用されているフェザーウェイトペーパーは、色が美しくて書き心地が本当にいい。罫線のバランスや、軽くて薄い紙なのにあまり裏写りしないのも気に入っています。

さまざまな思いを巡らせながらノートに向き合うひとときは、とても大切なもの。
スケジュール管理はウェブ上のカレンダーでも、ノートに関してはアナログ派。
今使っているのは、「MaraレザーPortobelloノートブック」。このノートは限定品で、アーティストの直筆イラストとサインが描かれていて、私のイニシャルも入れてもらいました。ここまで超ビッグなノートはこれが初めて。以前はもっと小さなサイズを使っていたんですけど、老眼が進んでしまって、メガネをかけないと自分の字が見えなくなってしまって……。でもここまで大きいと、ちゃんと書けるし見える。また、前なら1ページに収まりきらずに次のページに書いていたものでも、1ページにまとめられるようになったので快適です。ただし、大きいので、打ち合わせなど必要な時のみ持ち歩いています。
7、8年前からスケジュール管理はgoogleカレンダーですが、ノートに関してはアナログ派。何かを書き留める時は必ず手書きですし、単純に字を書くのが好きなんですよ。集中して書いている時は、瞑想に近いものがあるように感じます。それに、老化のせいか、なかなか覚えていられないし、とにかくすぐ忘れちゃう! こうやって手書きをしている方が、ちゃんと自分の脳に残るんですよね。

大きなページにゆとりを持ってたくさん書き込めるので、後で振り返る時も見やすくて快適とのこと。
ノートってとてもカラフルでかわいいものがたくさんあるので、選ぶ楽しみもあります。私の普段の装いがベーシックなものが多いので、その分、小物に鮮やかなものを選ぶことが多いですね。きれいな色のノートがバッグの中に入っていると楽しい気持ちになれますし。
正直なところ、スマイソンのノートは決して安くはありません。30代の頃なら、スマイソンのノートを買って、使い終わったらまた新しいものを買い替えて、というのは難しかったかもしれません。でも、この年齢になってゆとりができたからこそ、このノートを少しは気軽に使えるようになったんじゃないかと思うんです。高いといっても、洋服よりはお手頃な値段ですし、ちょっとした贅沢を味わいたくて。
もう一つの愛用道具は、あの家具チェーン店のキャリーバッグ。
実はもう一つ、愛用しているアイテムがあります。それはIKEAの「フラクタ」というキャリーバッグです。IKEAに行ったことがある方ならおなじみの、舟形の大きなアレです。スタイリストの仕事で、撮影現場に私物を持ち込むことが多いのですが、引っ越し並に荷物を持参しなきゃいけない時もあるんです。でも、この大きなキャリーバッグなら、靴やバッグ、アクセサリー、洋服など何でも入れられますし、耐久性も抜群。手持ちと肩掛けの2つの取っ手がついているので、持ち運びで重宝します。

IKEAの「フラクタ」は、袋の中で撮影用商品を並べることができ、取り出しも便利。「もうこれ以外は考えられない」と大草さん。
現場に着いたら、これを床に置いて靴などを並べておけばさっと取り出せます。マチが広くて、バッグの高さが高すぎないところもポイント。この袋は何枚も持っているのですが、全然破れないので、ボロボロになったものも未だに現役で使っています。
私は昨年9月、50歳の誕生日プレゼントとして、都心のマンションでの一人暮しを始めました。家族が住む家は別にあって、私も子どもたちも、お互い行き来しています。子育てがある程度一段落したこともありますし、都心に拠点があることで、生活スタイルや人との付き合い方にも変化が出てきて、今は新鮮な気持ちでいます。

50歳の誕生日を機にスタートした、都心のマンションでの新しい暮し。「今はここで心穏やかに過ごしています」。
また、2ヵ月前からはピラティスを始めました。更年期で体力の衰えを感じるので、もっと筋肉をつけて、インナーマッスルも鍛えたい。それに骨粗鬆症も怖い(笑)。以前からヨガのグループレッスンをやっていたのですが、ピラティスはプライベートレッスンで、自分の体の使い方が正しいかどうかを見てもらいながら体を動かしています。あと、もともとワインが大好きなのですが、もっとワインのことを深く知りたくて、ワインを飲みながら知識が得られるような講座に参加してみようかなと思っています。
50歳ってもう中年じゃなくて初老。だからこそ、もうぶっちぎってもいいかなと。以前は「あまり目立たないように」「電車で人に見られるような服はやめよう」とか思っていたけど、自分が好きでいいなと思える服を着たっていいじゃない。この先への投資や備えも大切だけど、やっぱり今、楽しい方がいいから、楽しいと思えることをやりたいですね。
取材・構成/𠮷川明子
写真/家老芳美
大草直子(おおくさ・なおこ)
ファッションエディター、スタイリスト。1972年、東京都生まれ。大学卒業後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。サルサとの衝撃的な出合いから中南米に遊学し、帰国後はフリーの編集者、ライター、スタイリストとして活動。2015 年よりウェブマガジン『ミモレ』創刊編集長、2018 年に『ミモレ』のコンセプトディレクターに就任。2019 年よりセルフメディア『アマーク』をスタートし、不定期で『AMARC magazine』を刊行。商品開発やブランドコンサルタント業などでも活躍。著書に『大草直子のSTYLING&IDEA 10年後も使える「おしゃれの結論」』『飽きる勇気』(講談社)など。