
与えられたお題を記憶だけを頼りに描く・・・
それが「記憶スケッチ」。通販生活で95年から02年まで連載していた大人気投稿企画の再録です。さぁ、百聞は一見にしかず。理事長・ナンシー関さんの愛ある選評をご堪能ください。

ナンシー関
消しゴム版画家、コラムニスト。1962年、青森市生まれ。84年、消しゴム版画家としてデビュー。コラム執筆でも才能を発揮し、雑誌連載や著書も多数。02年6月12日逝去。享年39。
今回のお題 「スフィンクス」

新谷秦(7歳・小学生)
- ナンシー関
- スフィンクスとピラミッドをごっちゃにしている作品のひとつではありますが、これは最も思い切りのいい間違い方。ダイナミック!

山本 薫(19歳・学生)
- ナンシー関
- 頭のかぶりモノを「ボブ・カット」と見なして、女の人にしてしまう作品も多くありました。中でもコレはカチューシャや豊満な胸に濃い目のメイクと、開き直ってマダムです。

佐藤直美(23歳・会社員)
- ナンシー関
- 何かコワいっすね。全体のつるりとした質感は、生まれたての生き物のイメージです。ちょっとホラーな感じ。マニトウとかあのへんの。

岡村陽子(24歳・事務員)
- ナンシー関
- エジプト感が皆無です。中国の指導者に見えます。太陽と砂の乾いた暑さというのが全く無い。背中の方の日陰部分など、ひんやりしていて見た事のないキノコが育ちそうです。

鈴木香苗(18歳・高校生)
- ナンシー関
- 兵隊さんですか。アゴひものせいで、頭の部分が完全に帽子になってしまいました。でもエジプトの灼けつくような暑さは、何故か見事に表現されています。行った事ないですが。

南 清美(34歳・会社員)
- ナンシー関
- ピラミッドとの複合モノは他にもいろいろありましたが、これは完全に下敷きになっている珍しいパターンです。もうペシャンコ。災難としか言いようがありません。

椎野絢子(15歳・高校生)
- ナンシー関
- おカッパ型のかぶりものがでかすぎます。カットしたバームクーへンか。どこで輪切りにしてもこの顔が出てきそうです。

東秀和(48歳・会社員)
- ナンシー関
- スフィンクスは「人面獅身」ですがその「人面」が大泉滉になってしまいました。古代遺跡の壮大なスケールが、いきなり貧乏くさいです。

山下佳代子(27歳・主婦)
- ナンシー関
- 生えてますね。ピラミッドから。バーチャルな作品です。ピラミッドから生えているスフィンクスを、CGも使わず手描きで表現しようという心意気をかいました。

平林潤子(38歳・主婦)
- ナンシー関
- 恐ろしいです。どこを見つめているのでしょう。前髪がOLみたいに立ててあるうえに、顔が非常に大きい。「家畜人ヤプー」的なものも感じます。

田中麻優(14歳・学生)
- ナンシー関
- にらんでますね。気の強い嫁とのケンカに一歩も引かないお姑さんをほうふつとさせます。「ウチのヨメときたら」と近所にグチリ回っている時の顔です。眉間のシワが味わい深い。

永井ミチ江(55歳)
- ナンシー関
- 「思うんですがよくかけません」これこそ記憶スケッチの、いや、人間の本質を端的に言い表したひとことでしょう。きっと永井さんも、あやふやではあってもこんなのとは確実に違う、もっと立派なスフィンクスを思ったはずです。しかし描き上がったらこの始末。「とほほ」は人生の合い言葉。しかし、頭の上にピラミッドを乗せますか。

備全克己(41歳・自営業)
- ナンシー関
- 格子戸の前の獅子舞という日本情緒かと思いきや、後ろのマス目はピラミッドか。ピラミッドは三角形という基本を無視する勇気はすごい。

新田智子(17歳・学生)
- ナンシー関
- 巨大なスフィンクスを建造している古代ロマンの図かと悠久の歴史に思いをはせていたら左端に旗を持った人が1人。添乗員か。ただの観光客か。背中に乗るな。

渡辺節子(40歳・主婦)
- ナンシー関
- うんこかと思いました。よく見ると、ピラミッドの頂上に人面が載っているということですね。それでも大間違いなわけですが。年賀状の残りでの応募はOKです。

塚本昌弘(44歳・自営業)
- ナンシー関
- 紀元前の昔、土と石によって建立されたスフィンクス。元々「生命」というものを持たないからこそ、現在でも見る人を圧倒する威厳を保っているのかもしれません。なのにコイツ、あからさまにちょこまかと生きています。こんなに「生き物然」としたスフィンクスなんて、砂漠に放したら3日で死ぬでしょう。
今回のお題 「スフィンクス」の総評

そもそも「スフィンクス」というのは何なのか、ちゃんと知っている人は意外に少ないと見ました。かく言う私も、理事長という要職にありながらよくは知りません。王様の墓であるピラミッドの門番とも言われ、紀元前2500年頃カフラー王が建立したらしい。人間の頭にライオンの体を持ち、かなりでかい。以上、スフィンクス一口メモ。案の定、ピラミッドやツタンカーメンとの混同が目立ちました。中でもピラミッドに関しては、ピラミッドの「上に乗っかる」「下に敷かれる」、更には「溶け合う」といった深いカラませ方をした作品も見られ、計らずも日本人のエジプト観を垣間見ることとなりました。