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世界の現場から5
10年以上続く内戦に加え、23年2月の大地震でさらなる人道危機に直面。被災地には以前より、内戦を逃れてきた多くの避難民が身を寄せていた。国境なき医師団は地震発生直後から救援物資の配布、医療施設の支援や医療・心のケアの提供、キャンプでの水・衛生活動を実施している。
© Abd Almajed Alkarh
© MSF
外資系IT企業での営業職を経て、05年から国境なき医師団に参加。12年、日本人初の現地活動責任者を務める。
主な 活動歴 |
05年7月~06年5月 | スーダン |
---|---|---|
12年5月~15年2月 | シリア |
私はスーダンやイエメンなど紛争地での活動が長く、物資輸送や水の確保といった管理、財務や人事などで経験を積みました。2012年から15年まではシリア北部のアレッポ県での全てのプロジェクトを統括する現地活動責任者を務めました。
現地活動責任者の仕事は、チームが医療活動を行なえるよう必要な環境を整えることです。外交折衝もそのひとつ。さまざまな勢力が対立し、利害も複雑に入り組む紛争地で安全かつ円滑に活動を実施するには、現地政府や主要コミュニティの理解と承認が欠かせません。まず相手先に出向き、私たちが何者でどんな活動をするのか丁寧に説明します。
折衝には本当に神経をすり減らしましたが、国境なき医師団が「独立・中立・公平」の人道援助団体であり、運営資金が個人を中心とした民間寄附で賄われている点はとても有効でした。特定の国家や政治勢力から資金援助を受けていないからこそ、現地政府も疑心なく受け入れができるのです。
長年続く内戦により、シリア国内では人口の約70%、1530万人が人道援助を必要としています。14年には戦闘激化のため、海外派遣スタッフのアレッポ撤退という苦渋の決断をしなくてはなりませんでした。
そのような状況下で23年2月にトルコ・シリア地震が起こり、多くの国内避難民が被災しました。医療のひっ迫も深刻で、アレッポ周辺だけでも50以上の医療施設が倒壊しました。私たちは避難キャンプに医療チームを派遣するなど、緊急支援に乗り出しています。
東日本大震災から12年経ってわかるように、復興には長い時間がかかります。シリア復興も長期化は確実で、一時的なものにとどまらない継続的な支援が欠かせません。だからこそ、みなさんの寄附がシリアの人々への一本の注射、ひと巻の包帯になると考えて、長期的に支援してくださることを願っています。
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