夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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2月の兼題

「春泥」

12月の審査結果発表

兼題「雪催い」

 お待たせしました! 12月の兼題「雪催い」の結果発表でございます。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。ここ数年は「雪が降る」と聞いたとき、まっさきに通勤の心配をしている自分に気づきました。大人になったなあという感じがします……。2月の兼題「春泥」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
雪催ひ雲は産卵期のにほひ

古賀

夏井いつき先生より

「雪催ひ」とは、雪雲が厚く垂れこめ、雪が降ってきそうな空模様を表す季語です。そんな空を覆っていく「雲」の様子を「産卵期のにほひ」と比喩しました。その詩的嗅覚の表現には、強いオリジナリティと鋭いリアリティがあります。
「産卵期」とは文字通り、生き物が卵を産む時期。「産卵期」という言葉は、生の営みの勢いや生臭さをもイメージさせます。
 雪催ひの空は暗さを増し、ぐんぐんと雪雲を厚くしていきます。やがて、魚たちが水中に産卵していくように、雲たちは雪という小さな卵を噴き出すように、産み出していくのでしょう。その寸前の凛凛たる「雪催ひ」の冷たさは、まさに「産卵期のにほひ」として、読者である私たちの鼻腔を刺すのです。

地
雪もよひ鳥は孤を啼く飢ゑを啼く

岡一夏

「雪もよひ」の空の下、鳥たちは「孤」であることを啼き、「飢ゑ」を啼くのだというのです。そんな鳥の声は、今にも雪を降らせそうな暗澹たる空へと吸われていきます。「~を啼く~を啼く」という調べが、読み手の心を切々と打ちます。

みづの香の澄みゆく花屋雪催ひ

川越羽流

 花の香りに満ちたお花屋さんには、「みづの香」もしています。その匂いが、今「澄みゆく」と感じたのは、空気の質が急変したからでしょうか。店先の空を見上げると「雪催ひ」の雲が押し寄せ、「みづの香」は更に凛烈と冷えていきます。

測鉛の捕へる底ひ雪催

内藤羊皐

「測鉛」とは、海の深さを測る鉛製の錘。船上から海底へ下ろすと、錘が「底ひ」に着いた瞬間、綱が弛みます。その手応えを感じつつ、見上げる空には「雪催」の雲がどっと押し寄せています。海風は増々冷たく、船を揺らせているのでしょう。

なきがほのやうな紙くず雪催

平本魚水

「なきがほ」から始める語順が巧みです。人物の表情かと思えば、それはクシャクシャにした「紙くず」なのだという。紙屑を丸めた人物の表情も、心情も、「雪催」の空も、「なきがほ」のように思えてくるのが、この句の味わいです。

海色の鴉の目玉雪催い

横山雑煮

「海色」とは鴉の瞬膜なのでしょう。瞬膜に覆われた「鴉の目玉」は、まるで白目を剥いているかのように異様な感じがします。冬の海の色のように陰惨な印象すら受けます。折しも「雪催い」の空は青白く、雪雲は黒く広がっています。

人
  • 喉へふる龍角散や雪催ひ樫の木

  • 雪催つぼみのやうに畳む羽恵勇

  • 雪催ひ部下の弔辞に父あたらしみつれしづく

  • 雪催い非の打ち所なきグレー男鹿中熊兎

  • 神職の祭り雪駄や雪催EarlyBird

  • 雪催い戦線膠着のニュース相生三楽

  • 蝋燭の光かそけき雪催愛燦燦

  • 肩ポンと訃報聞かされ雪催い藍野絣

  • 雪催い猫は抱かれてくれぬもの逢來応來

  • 雪暗を煙草五本目JAFはまだ青井えのこ

  • カラオケは中島みゆき雪催青井季節

  • 嘔吐する妻にいのちや雪催蒼井憧憬

  • 地下鉄に出口あちこち雪催い蒼空蒼子

  • 信号の過剰なるあを雪催い青田奈央

  • 雪催い書痴にやさしき照度にて青砥展典

  • 柔らかに声くぐもりて雪催いあおのめ

  • 雪催い山行きバスに土産さげ青松紫雲英

  • 見飽きたる妻の頬杖雪催赤尾てるぐ

  • 雪催い郵便受けの半開き赤尾双葉

  • 電球のぼんやり湯舟雪催あが野みなも

  • 青鷺の眼の金泥雪催い赤富士マニア

  • 雪催い匙に寂しさ一掬い赤目作

  • シャッターの軋んで下りる雪催いあかり

  • 雪暗の待合一位樫泰然愛柑(あかん)いつき組note俳句部

  • ボタン付け途中のでんわ雪催明惟久里

  • アヌビスの目もほの揺らぐ雪催い秋桜みりや

  • 雪催い北の帰郷へ列車待つ昭谷

  • 雪催ひ信徒の叩く槌の音空地ヶ有

  • 雪催い鳩にパンきれ投げるまね秋星子

  • 雪催い煙草踏み消しハローワーク昭廣凡字

  • 雪催い蔵の灯りに浮かぶ縄空き家ままごと

  • 競艇の時計見る眼や雪催い秋山らいさく

  • 雪催いロートレックの描く浮世芥茶古美

  • 冷凍肉あさから煮込む雪催いあくび指南

  • しづけさの芯の音ゆたか雪もよひ浅乃み雪

  • 雪催ひなづきへ火の粉あびせかけあさふろ

  • 錆色のピエロのなみだ雪催ひ芦幸

  • 舫ひ船軋み出したる雪催あじさい卓

  • 雪催いひとりぼっちの人といるアシツノカラ

  • 白湯注ぐ白磁に罅や雪催葦屋蛙城

  • 豆乳を入れたら弱火雪催いあすなろの邦

  • 雪催傘をひらけば骨折れて藍創千悠子

  • 托鉢の踵を返す雪催いあたしは斜楽

  • 象の鼻丸む東京雪もよひ足立智美

  • 雪催い偽卵抱く園のペンギンあたなごっち

  • 眉尻がしっくりひけん雪催いat花結い

  • 雑木は空き家を侵す雪催いあねもねワンヲ

  • 霊山も比叡の山も雪催い我孫子もふもふ

  • 雪催い人みな貌を失くしたり我孫婆

  • 雲垂れてこその故郷雪催い阿部八富利

  • 雪もよひ黒犬と突堤にゐる天風月日

  • 雪催い封切り前の映画かな天鳥そら

  • 留守録の小さき声や雪催いアマリリスと夢

  • はちみつに濁る紅茶よ雪もよひ綾竹あんどれ

  • 血管を探す針先雪催綾竹ろびん

  • 雪催吃音症の妻とゐて荒一葉

  • 紙垂の色疲れ始めて雪催いあらかわすすむ

  • 雪催い動かぬ脚をつかみ上げ蛙里

  • 鏨もて錆うつ漁夫や雪もよひ有村自懐

  • 雪催ひシャッター街のラーメン屋有本としを

  • 大橋に半円ありて雪催在在空空

  • 雪催ひ墨絵の掛る考の部屋淡湖千優

  • 裸婦像の空恋ふ眼雪もよひアンサトウ

  • 認知症検査の残夜雪催い安春

  • 雪催い音薄く散る寺の鐘杏っ子

  • 雪催い堪忍袋を切る自由井若宙

  • きときとと発つ銀翼よ雪催い飯塚煮込

  • 読経なき火葬の煙雪催飯沼深生

  • 軟膏のチューブはかたし雪もよひ飯村祐知子

  • 雪催Yの壊れしキーボード家守らびすけ

  • 海鳴りは山這ひ来たり雪催ひ猪狩鳳保

  • 老犬の幽けき寝息雪催い粋庵仁空

  • なゐの果て水害の果て雪催ひ生野薫

  • 湯屋の煙上りしぶるや雪催池田桐人

  • 足跡ハ下ノ畑ヘ雪催池之端モルト

  • ガス燈は昼を灯さぬ雪催イサク

  • 淡墨のにじみ濃尾の雪催い伊沢華純

  • 生活音せぬ住宅街雪催ひ石垣エリザ

  • 眼帯の中のひひらき雪催石塚碧葉

  • 墨の香の少し濃くなる雪催い石塚彩楓

  • 真夜中の風のトレモロ雪催い石堂多分

  • 道に落つ点滅の赤雪催い石原しょう

  • 雪催いテレビの映し出す故郷石原由女

  • 尾長とて美しき声欲し雪催石村香代子

  • 倒されて樹々の疲れや雪催ひ石村まい

  • 噛み合わぬ会話補聴器雪催い泉晶子

  • 角折れし離婚届や雪催ふ和泉あやめ

  • 条幅の墨の滲みや雪催いずみ令香

  • 雪もよひアルファロメオにこすり傷石上あまね

  • スタジオはラテンのリズム雪催いいそのサリー

  • 雪催ひすんとも言はぬ泡立て器板柿せっか

  • 雪催ばっか気にして桜の木いたまき芯

  • 雪もよい不在はあとからやってくる市川卯月

  • 雪催い瓦礫の街に沈みゆく市川りす

  • 雪催ひ暗渠へむかふみづ速し無花果邪無

  • 雪催ひアスファルトにも地平線いちすぺ

  • 雪催い呪文のやうな処方薬一ノ瀬なつめ

  • 雪催雲の底なる漁師町いつかある日

  • 雪催ひ鳥葬の髑髏の眼窩一久恵

  • 雪催い稜線空に滲み出す一秋子

  • 雪もよひ指輪となりし犬の骨伊藤映雪

  • 早口の詐欺めく電話雪催い伊藤亜美子

  • 雪催なにやら盗み逃ぐる猿伊藤恵美

  • 部屋に満つ湿布の匂ひ雪催伊藤貝

  • 裏路地の歌う軽トラ雪催い伊藤薫

  • 古書店の奥の灯や雪催い伊藤順女

  • 電柱を跨いで通う雪催い伊藤節子

  • 火葬場の高き煙突雪催伊藤なおじい

  • 黒板に自習と書いて雪催い伊藤小熊猫

  • 眠いかも雪もよひかも暮れゆきて糸川ラッコ

  • プレハブの校舎軋むや雪催いいとへん製作所

  • 干し魚しゃぶりほぐして雪催い伊ナイトあさか

  • 路地の奥に規制線揺れ雪催井中ひよこ号

  • 船底の錆ふる足場雪催いイナホセドリ

  • 雪催い受け身を受ける畳床居並小

  • 雪催果てはムーミン谷だらう井納蒼求

  • からすの餌となりうごかぬゆきもよひ猪子石ニンニン

  • 雪催い耳に残れるヴィヴァルディー井原昇

  • 遠き目の母の手握る雪催いいまいみどり

  • 二階より玩具のピアノ雪もよひいまいやすのり

  • 雪催コペイカ銀貨あとわずか伊予吟会宵嵐

  • 雪雲や抜歯の綿を噛みしめる伊代ちゃんの娘2

  • 雪催い山は木霊を眠らせて岩木順

  • 特養の眠りの中の雪催いいわさちかこ

  • ぶな林のすずろに啼くや雪催岩清水彩香

  • 雪もよい役員決めの保護者会岩瀬きわ

  • 鼻筋の白きばん馬や雪催いうえともこ

  • 生前の師からの手紙雪催い上野眞理

  • 吐く息に歪む街の灯雪催上原淳子

  • 持ち物へ喪服を加ゆ雪催うすい木蓮

  • 溜息はこんな色かも雪催ひうた歌妙

  • 雪催い穴掘り止めぬ砂場の吾子宇田の月兎

  • 二人掛けシートにひとり雪催内田こと

  • カーボン紙色の澱みや雪催空木眠兎

  • 雪催い中吊りの詩を伴いて靫草子

  • 雪催い無声映画のような街卯之町空

  • 雪催い雨戸ぐががと逆らひて海月のあさ

  • 母にしか閉めれぬサッシ雪催海野青

  • 夕暮れの瞽女一列や雪催梅里和代

  • 雪催い風蕭々と雲低し梅泰然

  • 悪声を放つ鳥二羽雪催ひ梅朶こいぬ

  • 着ぐるみのジッパーの音雪催梅田三五

  • 登記簿の見知らぬ山や雪催いうめやえのきだけ

  • 日勝の絶筆の馬よ雪催い江川月丸

  • 雪催い吾の足音の響く尾根江口朔太郎

  • 雪もよい見えない場所にあるこころ蝦夷野ごうがしゃ

  • 予約迄彷徨ふ街や雪催ひ越冬こあら@QLD句会

  • 雪催ひ採血室の混み合ひて絵十

  • 知らぬ間の隣人転居雪催い江戸きり子

  • 灰色の水面静もる雪催い榎本咲

  • 雪催い黒一色の戦争画えらいぞ、はるかちゃん!

  • 雪催ひ風に退く鳰の波近江菫花

  • 昇任の打診雪催いの車窓おおい芙南

  • 青銅の女のけぞる雪催大岩摩利

  • 魔女めける隣人の歌雪催ひ大久保加州

  • 賽の目は三と出し岐路雪催大越マーガレット

  • 湯煙りの立ち上りけり雪催ひ大嶋宏治

  • 雪催いメタセコイアの泥む赤大嶋めで

  • 淋しさを木馬に重ね雪催太田怒忘

  • ひとり言増して独居の雪催大塚恵美子

  • 生きている二本足なり雪催い大富孝子

  • 裏長屋昭和のまんま雪催大野喬

  • 雪催い老いの厨に湯湧く音大矢香津

  • 雪催い空家に溜まる風のあり大和田美信

  • 亡き人とかけ違うまま雪催い岡崎未知

  • 疼痛のやうな思ひ出雪催可笑式

  • 腸に良き赤き薬や雪催岡田雅喜

  • 戦争が終わらない国雪催い岡村恵子

  • 雪催ひ龍の飛び出す天井絵岡山小鞠

  • 実家来て待つ心には雪催い丘るみこ

  • 雪催い天押し上げし子らの声小川紅子

  • シッパーの錆びた鞄や雪催い小川さゆみ

  • 行間の母の孤独や雪催ひ小川しめじ

  • 殺意呼ぶほどの歯痛や雪もよい小川天鵲

  • 亡き妹の匂ひ残りぬ雪催小川野雪兎

  • 喪心へ急ぐな心雪催小川都雪

  • 雪催いまだらに錆びる鉄のくぎオキザリス

  • 忌避されし鳩の低音雪催い沖庭乃剛也

  • 殺し屋の鼻唄のよな雪催荻原湧

  • 雪催い手帳の余白広がりぬ奥寺窈子

  • 隔離部屋の小さき窓や雪催い小倉あんこ

  • 雪催い家取り壊すショベルカーおこそとの

  • 雲の底手が届きそう雪催ひ小田毬藻

  • 延着の移動スーパー雪催いおだむべ

  • 病棟にパン焼く香雪催越智空子

  • 生きて死ぬひとり見送り雪催い御成山

  • こねる手にかたき陶土や雪もよひおひい

  • 一通の辞表の重さ雪催ぉ村椅子

  • オクターブ上がる耳鳴り雪催おんちゃん。

  • 自転車の軋み止まらず雪催海音寺ジョー

  • 雪催い昨夜の酒を買いに行く海堂一花

  • つんざいた声は無邪気だ雪催い械冬弱虫

  • 封筒に糊付けの波雪催い海峯企鵝

  • 雪催にぎり仏に千の顔香依蒼

  • 削ぎあとの粗きバターや雪催い火炎幸彦

  • 雪催い明日へ急かす風の音影夢者

  • 亡き父の錆び鉋研ぐ雪催い笠谷風信子

  • 姿見に猫背のおんな雪催いかしくらゆう

  • 雪催い車中で過ごす一昼夜かじまとしこ

  • 仮名手本はねて南座雪催い華胥醒子

  • 雪催ひ巻寿司の端つまみ食ふ梶原菫

  • 白む眼の老犬憂ふ雪催ひ風遊び為参

  • 雪催いブルーシートの町閑か風薫子

  • 雪催色濃く淹れるダージリン加田紗智

  • パネトーネ焼けたか山は雪催い帷子砂舟

  • 愛犬の通院準備雪催いかつたろー。

  • 折り紙の小さき折り目や雪催いひだまりえりか

  • 入院を決めた数値や雪催い桂葉子

  • 雪催い獣ねむる魚ねむる加藤水玉

  • 雪催ひ係船の縄ささくれてかときち

  • 如来像金箔微かに雪催い叶田屋

  • 雪催朝鳴き遅き烏骨鶏金子泰山

  • 雪もよい土人形に朱色刷く金田庭園

  • ご飯にシチューかけるかけない雪催かねつき走流

  • 雪催尖りし波を征く鴎釜眞手打ち蕎麦

  • 雪催河馬のハナコは召されたか神島六男

  • 雪催さんびやくろくじゆうごれんきゆう神谷たくみ

  • 雪催いキューピーならぶ骨董屋紙谷杳子

  • 雪催いイヤホン越しの生返事亀子てん

  • 雪催い龍雲つどう日本海亀田かつおぶし

  • まとまらぬ思いじくじく雪催い亀山逸子

  • 雪催い耳あてごしの「また来いや」かもね

  • しゃがみ込む人はまぼろし雪催いかもめ

  • 雪催い「匂いがするね」と誰か言ふ加裕子

  • 分岐器のレールの炎雪催い刈屋まさを

  • 引き出しの増えた薬袋雪催い河上摩子

  • 針山に戻すまち針雪催ひ翡翠工房

  • 南座にまねきだけ観る雪催邯鄲

  • 食糧は焼跡のなか雪催干天の慈雨

  • イーストの膨らみ重き雪催神無月みと

  • 弾痕やバンクシーの猫雪催い岸壁の龍崎爺

  • 雪催一幹いよいよ黒ぞ濃き閑酉

  • 風見鶏嘴向けば雪催いkey

  • 仕立屋に灯の入りけり雪催い喜祝音

  • 雪催い筆圧の濃いラブレター季川詩音

  • 「目的地雪催いです」機長告げ菊池克己

  • 雪催い友が乗りしは黄泉の舟季紫子

  • 鈍色の胃痛しくしく雪催い岸来夢

  • 何処からか舟唄聞こえ雪催い酒暮

  • 鑑識の帰った庭や雪催季切少楽・いつき組広ブロ俳句部

  • 雪催ひ鞄の隅に四合瓶喜多丘一路

  • ゆきもよひ有馬記念の馬柱北村崇雄

  • 列車いまひかりの箱や雪催い北村環

  • 雪催い借りた工具を腰につけ城内幸江

  • 雪催ひ人を溜め込む駅構内木ぼこやしき

  • 灰色が雪催いから感染す気まぐれ亭いるか

  • 出雲路や母の見舞いは雪催い木村かわせみ

  • 安宿の酒に金箔雪催い木村信哉

  • アルプスの槍の尖るや雪催木村隆夫

  • 錆びかけの閂の音雪催い木村となえーる

  • 雪催い写真の母に薬置く木元紫瑛

  • テーブルに広ぐる古地図雪催Q&A

  • 米櫃の底の見えたる雪催久えむ茜咲

  • 陣痛の息の切なし雪催いQさん

  • 採血の跡蒼蒼と雪催きゅうもんde木の芽

  • 雪催い改札出れば右左鳩礼

  • 朝刊を開く音なき雪催ひ京野秋水

  • 黒猫の目のま緑や雪催杏乃みずな

  • 雪催ひ今朝のケトルのしやがれたる霧賀内蔵

  • 一列の冲見る鴎雪催い霧澄渡

  • いづこにもりんかくはなくゆきもよひギル

  • 教会へ懺悔の女や雪催ひ菫久

  • 三日後の異動の辞令雪催いくぅ

  • 緞帳てふきれいな未練雪催い句々奈

  • 境内に獣のけはい雪催いくさ

  • 左手の爪磨き終え雪催いくすみ輝く

  • 右耳を幾何に預けて雪催ひくずもち鹿之助

  • 雪催い空のてつぺんから孤独國本秀山

  • 公園の動かぬ時計雪催い國吉敦子

  • 芝居はね女形の脛や雪催熊谷温古

  • 雪催ひ母の手足のほの白き紅三季

  • 死体遺棄のような涙雪催曇ゆら

  • 雪催まなうらを発つ巨船は緋眩む凡

  • 街は雪催ならば故郷はもう空流峰山

  • 雪催ひ平家物語は佳境久留里61

  • 魚さばく出刃の曇りや雪催愚老

  • 頸動脈エコーに雪催いのカゲ黒田良@しろい

  • 雪催い模試D判定の自習室桑田しほり

  • 支えなき人形立ちて雪催いくんちんさま

  • 出張の靴擦れの足雪催い家古谷硯翠

  • 雪催ひ波濤のやうな労働歌げばげば

  • ハイビームに浮かぶ雪催いの嘘が欅谷風来

  • 雪催い空き家の門扉風に鳴く健央介

  • 採血の静脈たたく雪催ひ謙久

  • ちりちりとアイロン進み雪催紫雲英

  • 湖の向かうに生家雪催ケント

  • 金箔きららほのかに酔ひて雪もよひ剣橋こじ

  • 筋肉の強張る音や雪催い恋瀬川三緒

  • ナイフめく東京タワー雪催剛海

  • 交換のちり紙粗悪雪催い公木正

  • 朽ちた道躓くような雪催紅紫あやめ

  • 雪催い恋は関所を越ゆる頃幸田梓弓

  • 雪催ピアノの上の借りし本こうだ知沙

  • 雪催い君なき朝は続きたり郷りん

  • 豆腐屋のぬるき豆乳雪催いこきん

  • 雪催いグランド重く喘ぐ息ココヨシ

  • 鈍色のホームはまばら雪催い小園夢子

  • 鉛筆を削れば木の香雪催い木染湧水

  • 雪もよひ愛犬の墓見つからずコダマヒデキ

  • 雪催ひ面会を終へ上る坂虎堂吟雅

  • 病窓は雪催ひ筆ペンの写経後藤三梅

  • カーテンは洗えず仕舞い雪催い古都鈴

  • 出前機の速し俄の雪催い粉山

  • 満員のバスは素通り雪もよひこのみ杏仁

  • 開門待つ人の匂ひや雪催小林昇

  • 別れ花埋もれ逝きて雪催い小林澄精

  • 雪催い赤く錆び付く実家の門小林のりこ

  • 鳥一羽海まで黒き雪催木挽町豆奴

  • 神様の思案覗くや雪催ごま爺

  • 雪催い楔のやうな便所の灯五味海秀魚

  • ぶら下がる雲梯の空ゆきもよひ小山晃

  • 研ぎ汁の白さの痛し雪催い小山秀行

  • 雪催い煙草のむ父ガレージへ碁練者

  • 雪催い呆けた母を捨てに行くGONZA

  • 迷い猫探しています雪催い今藤明

  • 雪催い仕事をやめぬマセレーターこんのゆうき

  • 雪催歩み出したるブロンズ像さいたま水夢

  • 詩集繰る指の渇きよ雪催ひ齋藤桃杏

  • ソノシート彼の日の夢が雪催い坂口いちお

  • 雪催い草の錆びたる選果場坂野ひでこ

  • 雪催い幟ばかりの献血車坂まきか

  • 雪催い日光連山待ち構え坂本千代子

  • ちぎり投ぐパン屑に鳩雪催ひ坂本雪桃

  • 雪催い無人駅舎の伝言板櫻井こむぎ

  • はは居らぬ三面鏡や雪もよひ桜鯛みわ

  • 使わないアプリばつかり雪催いさくら悠日

  • 雪催いマスト天衝く海王丸雑魚寝

  • 雪催いかこちがほなる猫と猫笹桐陽介

  • 忘れもの乗せたバス行く雪催い笹靖子

  • 投函のしばらくしんと雪催いさち今宵

  • 雪もよひ賠償金の知らせかな佐藤かりんこ

  • 峠だと言われ四日目雪催い佐藤茂之

  • 雪催い今朝は患者がゐたベット佐藤志祐

  • 雪催ひ誘導棒の粒立ちぬさとう昌石

  • 雪もよひケーブルカーは谷の湯へ佐藤浩章

  • 雪催い心電計の波の揺れ佐藤まり子

  • 道化師のつけ鼻ざらり雪もよひ佐藤ゆま

  • 彼の世は春ですかこちらは雪催い佐藤佳子

  • 雪雲は蜜の匂ひや古都そぞろ佐藤レアレア

  • 雪なんてどうせ降らない雪催ひ錆田水遊

  • 古書街に探す切絵図雪催いさぶり

  • 映らない風呂の鏡や雪催い彷徨ういろは

  • 午後よりはアンダンテなり雪催さむしん

  • 雑踏にカーネル紛れ雪催い小夜ひと月

  • 熱の出る前の空洞雪催い紗藍愛

  • 雪もよひ刃先に魚の鰓弾きさるぼぼ17

  • 影生まぬ昼の街灯雪もよひ沢井如伽

  • 本日は空爆の無く雪催沢拓庵◎いつき組カーリング部

  • 銀紙の王冠眩し雪催ひ沢田恵子

  • 紙ストローくにゃり雪催のスタバ澤田紫

  • 雪催ひ風は燐寸を擦る匂ひ三月兎

  • 何処より昭和の歌や雪催ひ塩沢桂子

  • 雪催い飲み忘れたるピル一錠志きの香凛

  • 論文に論文積むや雪催い四條たんし

  • 船を待つふるさと訛り雪催じつみのかた

  • 雪催い臨月直前の破水芝歩愛美

  • かあさんの紅のにほひや雪もよひ渋谷晶

  • 子の爪のやわらかに切れ雪催い島田あんず

  • 湯上がりの母の背を拭く雪催ひ島田ユミ子

  • 雪催バリウムは腑を濡らしゆく清水縞午

  • 初めての腹部のエコー雪催清水祥月

  • 雪催ひ打ち倒されし像あまた清水三雲

  • 雪もよい土神眠る谷地に入る霜川このみ

  • 雪催い昨日来たがねお母さん霜月シナ

  • うがひする蛇口の曇り雪もよひじゃすみん

  • 音楽室の不協和音や雪催い沙那夏

  • 雪催い反り立つデパ地下の海老天紫藪@藻の霊

  • 蔵の開く鈍き音して雪催い柊瞳子

  • 神事めくマイムマイムや雪催シュリ

  • 雪催ひ手に文鳥の七匁順之介@QLD句会

  • AIに「はい」と答へて雪催ひじょいふるとしちゃん

  • 雪催剣は祭具として眠る常幸龍BCAD

  • やはらかきヴヱールのしとりゆきもよひ正念亭若知古

  • カスハラのマニュアルぺらり雪催白沢ポピー

  • 送信を躊躇ふ指や雪催ひ不知飛鳥

  • 土臭きゴボ天齧る雪催い四郎高綱

  • 雪催ひ小便臭き袋小路白猫のあくび

  • 雪催ひ編集後記の余白かな白プロキオン

  • 雪催い時おぼろげに長居せりしわしわ

  • 歯石無き昼の吐息や雪催白よだか

  • 雪催ふ横溝正史疎開宅ジン・ケンジ

  • 鉄錆びし豊予要塞雪催い新濃健

  • 追悼の友の帽章雪催い杉岡ライカ

  • 雪催い覗く雌蕊の赤々と涼風亜湖

  • 雪催い並びし埴輪はほの紅く鈴木秋紫

  • 拍手せず議案通過ぞ雪催い涼希美月

  • みぞおちの奥ことことと雪催ひ鈴木由紀子

  • 雪催ひ羽釜の余韻ある厨鈴白菜実

  • 祈るよに根菜煮ゆる雪催い清白真冬

  • 塹壕を囲む塹壕雪催いすずなき

  • 土壌医の爪の土くれ雪催ひ鈴野蒼爽

  • 雪催ねむねむさんの北の森鈴野冬遊

  • 炙り絵を炙るかをりや雪催主藤充子

  • 雪曇主室に正座崩す刀自須磨ひろみ

  • ハチミツの蓋固き朝雪催い静江

  • 柿田川光琳模様雪催い青児

  • 雪催い越後平野に瞽女の三味せいしゅう

  • 階に動悸しずめる雪催い青邑

  • 過去形の時間を抱き雪催い瀬紀

  • 放牧の牛を囲うや雪もよひsekiいつき組広ブロ俳句部

  • 六文に色つけ納む雪もよひせり坊

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  • 雪催い月参りの僧延着す山内文野

  • 安定はせぬ政局や雪催ひ山川腎茶

  • 牛すじと蒟蒻卵雪催い山川たゆ

  • 子の声の四方響けり雪催い山口絢子

  • 位牌堂陰気なるぞよ雪催い山口雀昭

  • 雪催い畳んだ傘で見得を切り山口笑骨

  • 鍋底の汁に味噌足し雪催い山口愛

  • 二人でも歩いて行ける雪催い山里うしを

  • 雪催い入歯の時期の迫りくる山下義人

  • 雪もよい電柱ずっと並びおり山育ち

  • 棘枝の獲物干からび雪催い山田季聴

  • 雪催い束の間浸る夢想かな山田啓子

  • 雪催ストップ高の株価かな山田好々子

  • 黙々とゆく道遠し雪催い山田翔子

  • 入場の列三時間雪催やまだ童子

  • 雪催い淡すぎる陽にも背を向けり山田はつみ

  • 茶をすすり古傷さする雪催いやまもとのり。

  • 階段に息つく杖や雪催い山本八角

  • 長靴で雪催いの下駆ける子ら山本葉舟

  • 筒型のポストじんわり雪催い山姥和

  • 雪催エアロバイクに唸る祖父ゆすらご

  • 室温の設定上げるや雪催い柚木啓

  • うらめしや能登に拡がる雪催い夢一成

  • 雪催い空白がある日記帳横田信一

  • 雪催きっと発泡スチロール横浜J子

  • 露天風呂つまさき歩く雪催い横浜順風

  • 一本の長き眉毛や雪催横山道男

  • 雪催い半袖の児は淡淡とよしぎわへい

  • 故郷に人の気配なく雪催い吉田びふう

  • 雪催い既読のままに一週間吉成小骨

  • どんよりと空が涙目雪催いyopin

  • くすり指に紅のほんのり雪催いよみちとせ

  • 雪催い次は嵐かメルヘンかリーガル海苔助

  • 雪もよひ待ち人の来ぬ昼下がり理真

  • 雪催キッチンカーも早仕舞い

  • 雪催い一歩踏み出す新任地わかなけん

  • 雪催など無き街で生きてゆく渡邉久晃

  • 雪催い膝カックンとフラミンゴ渡部克三度

  • 東京タワーぼやけ始むや雪催い渡辺陽子

  • 上目にて眺むる空や雪催い和脩志

  • 雪催い神在餅に手を合はす一駄歩

  • 雪催い覚悟を決めて空睨む鹿茜

  • 帰り道向かう彼方の雪催い蘆舟

  • 親と子で表情変わる雪催い喜楽胤

  • 雪催い山頂あきらめ鍋囲む高上ちやこ

  • 雪催い今夜は皆で鍋囲み真理庵

  • 雪催い白銀すべる楽しさよ司蓮風

  • 雪催い落語を聴いて気分上げひめりんご

  • 雪催い恩師の言葉蘇り福川敏機

  • 雪催雪下ろし出すどの町も藤本仁士

  • 雪催い明日の天気が気になりぬ三浦ユリコ

  • 年取るとトイレの近し雪催い森佳月

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

◆俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
 俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。


◆ひとことアドバイス


●俳句の正しい表記とは?

  • 雪催い 狸も急ぐ 家路かなケビンコス

  • 雪催い 夢見る子らは スノーマン鍵盤タロウ

  • ノーメイク ベビーカー押す 雪催い松門君佳

「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●兼題とは

  • 鍋囲み 「裏金」「予算」を 肴(あて)にしてちょく

  • 冬催し隠れ絶景車待機山田一予

  • 夢催い阿寒のマリモ湖の底へえのき絵巻

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「雪催い」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。


●季語として?

  • 雪催しコンクリ表面は濡れずわかわかし

  • 雪纏君帰らぬと告げられて赤尾実果

 季語「雪催い」とは、今にも雪が降りそうな昏い空の様子です。「雪催し」「雪纏」という使い方が気になります。


●季重なり

  • 早寝する明けに除雪の雪催いえのき筆丸

  • 囲む鍋仮設のこたつ雪催い小見澤おみそ

  • 白湯気と柚子と見上げる雪催い河嶋結鶴

  • 犬を抱き夜長散歩の雪催  わきのっぽ

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。
 まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「雪催い」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。


●季語の表記について

 今回の兼題「雪催い」ですが、本サイトが底本としている講談社版『新日本大歳時記』は送り仮名の「い」がついていますが、角川版『新版角川俳句大歳時記』には送り仮名のない「雪催」となっています。
 俳句では「夕焼け」の「け」を略すなどの独特の表記がありますが、歳時記によって表記のブレもあることを承知しておきましょう。
 表記も表現のうちに入りますので、作者ご自身が意図をもって選択することを心がけましょう。


●今回の選外

「雪催い」なのに、実際に雪が降っている句、降っているとしか読めない句も相当数ありました。季語の本意を歳時記で確認してから句作に入るのは、基本的なルーティンです。
 更に、詩の欠片はあるのですが、句意が判然としない句も、泣く泣く選外としました。自分にだけ意味が分かる句になっていないか、客観的に判断するためには、しばし時間を置いてから見直してみるのも、一つのやり方。〆切ぎりぎりの作句ではなく、ゆとりを持って取り組んでみましょう。

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2月の兼題

「春泥」

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