夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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3月の兼題

「土筆」

1月の審査結果発表

兼題「蒲団」

今回も3348句もの投句数があり、3ヵ月連続の3000句超えです。
毎晩のお供である『蒲団』という馴染み深い兼題に、みなさんの作句意欲も高まったのではないでしょうか。このままの勢いで今月の兼題『梅』の作句もなにとぞよろしくお願いいたします!みなさまの素敵な作品、心よりお待ちしております(編集部)。

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
三人目できたら布団どうするか

青海也緒

夏井いつき先生より

 小さなアパートの小さな部屋で健気に生きる家族を思いました。結婚し子どもも授かり、共働きをしながら力を合わせて今日を生き抜く夫婦。そして三人目の懐妊。授かるという喜びの向こうから、仕事はどうしよう、上の子どもたちの預け先は、出産費用の蓄えは……と、現実の厳しさがじわじわと押し寄せてくるのです。
 夫と妻との間に二人の子どもたちを寝かせ、今日も無事に過ごせたという安堵にひたる夜。ふっと心を過ったのが、まさにこの思いなのでしょう。こんな単純な呟きでもって、やがて来る切実な現実と冬という季節の気配を書けるものかと、ささやかな感動を覚えました。俳句はこれでよいのだと、改めてしみじみと思うのです。

地
収まらぬ蒲団たたいてもたたいても

花紋

「蒲団」の一物仕立てって案外難しいと思うのですが、果敢に挑んだ一句です。干す前と後の違いは、吸収した太陽の熱と空気の分量。「収まらぬ」事実と「たたいても」のリフレインが愉快です。

古蒲団位牌の金の曇りゆく

古瀬まさあき

 実家の仏間の光景でしょうか。代々の「位牌」の金色の部分はくすんでしまっています。久しぶりに泊まる実家。その「古蒲団」の綿は干したところで太陽を吸う力もなく、ぺしゃんこのままか。

蒲団敷く貧しき夜の逃げどころ

小池令香

「蒲団敷く」のは「貧しき夜の逃げどころ」を作るための行為なのだというのです。誰でもこんな夜ってあるよと、作者に語り掛けたくなった一句。敷かれた蒲団の冷たさまでありありと感知されて。

掛蒲団地震速報まだ出ない

シュリ

 夜中の地震に驚いて目覚めたのでしょう。揺れがおさまった後、震源地はどこだったのかと手に取る携帯。「地震速報」が出るのを待ちつつ、もう一度「掛蒲団」をしっかりと掛け直す冬の真夜です。

蒲団抜け出そうヤクルトさんが来た

綱長井ハツオ

 どうやって「蒲団」から「抜け出そう」という発想の土台に乗っけたのが「ヤクルトさんが来た」というフレーズ。いやはや、やられました、笑いました。毎朝届けてくれる音を知っててこその一句。

人
  • 掛布団重しぞろぞろ身内消ゆじゃすみん

  • 金縛りの寂しく匂ふ蒲団かなじゃすみん

  • 蒲団干す艀溜りを見下ろしてすがりとおる

  • 海鳴りへ蒲団と老母干してありすがりとおる

  • 蒲団に垢生きてゐることにも慣れて古田秀

  • 眼裏の生家恍惚なる蒲団古田秀

  • 蒲団干す時報チャイムのファはにごる南風の記憶

  • 蒲団打つ二回目の流産の予後南風の記憶

  • 乱歩読む布団なにやら獣めく播磨陽子

  • わたしだけひとりのふとんママのバカ播磨陽子

  • 筋斗雲に向かぬ蒲団と向く蒲団可笑式

  • 干蒲団の数生きている人の数可笑式

  • 包まるる布団や吾の孵りさう南方日午

  • 蒲団干す朝を地球の匂ひだす南方日午

  • まぐわいの蒲団まがまがしく閑平本魚水

  • 干蒲団憎し 日よもつともつと平本魚水

  • 出国前夜 殊更温かき蒲団碧西里

  • 誰ぞの手誰ぞの脚を踏み蒲団へ碧西里

  • 酔ひどれを蒲団に任せ山静か北野きのこ

  • 蒲団ごと祖父の骸を曳き出しぬ北野きのこ

  • 誰よりも人懐っこいその蒲団鈴木(や)

  • 訳あって実家の蒲団干してます鈴木(や)

  • 詩のかけら蒲団を剥げば転がりぬ花伝

  • 逃げ込んだ蒲団私は卵抱く花伝

  • すぐ謝る自分が嫌い布団好きあいだほ

  • 先生をだまして保健室の布団あいだほ

  • 親友や布団あらわに宿題会いかちゃん

  • 丘陵に化石布団に私かないかちゃん

  • 一つの蒲団背中合わせの二人いさな歌鈴

  • 叫んでも殴つても蒲団は真白いさな歌鈴

  • フォアハンドバックハンドで蒲団打ついなだはまち

  • 寝る蒲団三合の米それでよいいなだはまち

  • 右側にずれる癖ある蒲団かなうさぎまんじゅう

  • 蒲団干す屋根って空の続きらしうさぎまんじゅう

  • 叱りたる子を引き寄せる蒲団かなくりでん

  • 太陽もわたくしも暇蒲団干すくりでん

  • 目を赤くして毎夜蒲団の中に自慰けーい〇

  • 獏は夢を蒲団は時を喰らいけりけーい〇

  • このようにヒトは布団に飼われますさとけん

  • 絶滅する時も布団の中だらうさとけん

  • 蒲団干す死ぬにはちやうど佳い日ですあまの太郎

  • 蒲団干す星生まれる日星死ぬ日あまの太郎

  • 星生まれ死ぬる合間に敷く蒲団すりいぴい

  • 蒲団敷く悪い噂を耳にしてすりいぴい

  • いつもの蒲団に亡骸を置くたんばたろう

  • 人のかたちに凹んだままの蒲団たんばたろう

  • 蒲団干すげに広かりき四畳半トマト使いめりるりら

  • 恋文の折り鶴と化す蒲団かなトマト使いめりるりら

  • 今日の夜蒲団山トンネル開通ちま(5さい)

  • 今夜から蒲団の中は秘密基地ちま(5さい)

  • 青天を昇るロケット蒲団干すとかき星

  • 恐竜を抱いて独りの布団かなとかき星

  • 畳が海布団は舟てふ遊びトポル

  • アパートの窓幅の陽に蒲団干すトポル

  • 不自由な膝の起伏や掛布団ねぎみそ

  • 滑り込む蒲団に母のぽうちゃぽちゃねぎみそ

  • 母かなし厚き蒲団をうすく寝てふじこ

  • 婆様の蒲団の他は寄らぬ猫ふじこ

  • 富士美しくひらける朝や蒲団干すふるてい

  • 蒲団から放たれこの世とは険しふるてい

  • 干蒲団わが心臓の発酵すほろろ。

  • まづ蒲団くたびれて己くたびれてほろろ。

  • 昨日より明日が好きな蒲団かなみやこまる

  • 寂しさや蒲団の重さちよと減りぬみやこまる

  • 蒲団干す屋根の真上をスパイ衛星みやざき白水

  • 三百年太郎をもてなしたる蒲団みやざき白水

  • 蒲団はねのけるみぎあしあついいきむらさき(7さい)

  • 蒲団抜けまぶしいへやはうみのそこむらさき(7さい)

  • 打ち直し布団真中に元の生地ゆすらご

  • 大海に引き摺りこもうとする蒲団ゆすらご

  • 海鳴りの聞こゆる宿の蒲団かなラーラ

  • 蒲団敷く男無口や羽後の宿ラーラ

  • 臨月の腹沈み込む蒲団かな安宅麻由子

  • 暁や蒲団の初潮生温し安宅麻由子

  • 蒲団購ふ此処に幾年住むやらん伊予吟会宵嵐

  • 犬臭き蒲団に包まりて泣きぬ伊予吟会宵嵐

  • 子宮に戻りたき日あり干蒲団一斤染乃

  • 病室の布団を動く音白し一斤染乃

  • 干蒲団の香に恍惚として正午浦文乃

  • 歯磨き粉の臭う吐息や蒲団干す浦文乃

  • 身の丈は蒲団に収まる程度なり加裕子

  • 蒲団干す昨夜の栞ひらひらと加裕子

  • 夜汽車の音かすかに届く布団かな夏雨ちや

  • つまのぬうねんねふとんにあおいとり夏雨ちや

  • 木綿縞のそこだけ昭和布団干す花岡淑子

  • 学寮の一畳に敷く柔布団花岡淑子

  • 蒲団捨て安堵している父送り笠原理香

  • 蒲団から獣のやうな匂ひする笠原理香

  • 北陸は海へ突き出す布団干し亀山酔田

  • 親戚の布団なんだか落ち着かぬ亀山酔田

  • さみしさは月の匂ひよ掛布団久我恒子

  • 幸せは時々萎ぶ干布団久我恒子

  • 押入れの底の布団の御所車宮部里美

  • 寄る辺なき軽さ病院の布団宮部里美

  • 蒲団入り足は尾鰭に戻りけり玉木たまね

  • まだ足の位置定まらぬ蒲団かな玉木たまね

  • 蒲団干す斑鳩の鐘届きけり桑島幹

  • 叡山電車の車窓に干蒲団桑島幹

  • 特急は通過する駅蒲団干す畦のすみれ

  • 京極夏彦の本を枕に蒲団かな畦のすみれ

  • 通夜の蒲団硬く押入れの匂い彩楓(さいふう)

  • 梁太き母屋の匂ひ羽根布団彩楓(さいふう)

  • 終電や人に蒲団というゴール三茶F

  • 羽蒲団あすの目覚めを疑わず三茶F

  • 後悔の一夜を均す敷布団山内彩月

  • 布団干す遠くでゴジラ対ガメラ山内彩月

  • をんなの蒲団に独りの夜を弄られ次郎の飼い主

  • まだ父のかたち留めし蒲団かな次郎の飼い主

  • 蒲団綺麗なまま死にゆく口惜しさ七瀬ゆきこ

  • 今日だけは空飛ぶ蒲団じやない七瀬ゆきこ

  • 干し布団太陽のごと良き死臭潤目の鰯

  • 風呂上がり蒲団三十組堂々潤目の鰯

  • 野良猫と飼ひ猫蒲団嗅ぎにけり小林陸人

  • 新しき蒲団と蒲団干されけり小林陸人

  • 蒲団より出で蒲団に帰る一日かな上原淳子

  • 日輪に遠きベランダ蒲団干す上原淳子

  • プロレスの技にも耐える布団かな上野眞理

  • 義理の父母泊める布団のシワ伸ばす上野眞理

  • 長男の部屋に妖怪蒲団棲む城内幸江

  • 陽だまりの溶けた布団を掛けられる城内幸江

  • こんなにも薄い蒲団で寝てたんか常幸龍BCAD

  • 蒲団かぶる僕はこんな匂いなのか常幸龍BCAD

  • 二組の蒲団の一つ皺のなし真宮マミ

  • 吾子よりも大きなバンビ蒲団干す真宮マミ

  • 進化論に沿つて蒲団を出でにけり仁和田永

  • 蒲団打つ記憶の父の舞い散らん仁和田永

  • 島渡しに布団の包みと新任教師清島久門

  • 人間に戻つてしまふ布団かな清島久門

  • 片手づつ蒲団に温め『白夜行』西川由野

  • 蒲団だいすき尻尾忘れて生まれ来て西川由野

  • いくばくの尿意持ち込む蒲団かな赤馬福助

  • 蒲団かな地球儀のあのへんにゐる赤馬福助

  • 真夜中の布団の中のラジオかな多喰身・ラックス

  • キルケゴールの闇布団の中の闇多喰身・デラックス

  • 蒲団からジェットストリーム漏れて中村凧人

  • 蒲団から出たらきっと良い人になる中村凧人

  • 蒲団温くて魂今生を自由落下長谷川京水

  • 誰か乗っているような掛布団長谷川京水

  • エチゼンクラゲの如き蒲団かな椎名貴之

  • 蒲団に沈みゆく人間失格椎名貴之

  • はいはいと言ったきりまだ蒲団かな藤田ゆきまち

  • 蹴る掛ける蹴る掛ける蹴る掛布団藤田ゆきまち

  • 千台の時計を匿す蒲団かな内藤羊皐

  • 精妙に吾を象る蒲団かな内藤羊皐

  • 蒲団にて泣く太陽が怖かった白よだか

  • 蒲団に付す真白き青の空の香白よだか

  • 何起こらうと蒲団被つて再生す八幡風花

  • 蒲団出で今日の重荷を羽織りをり八幡風花

  • 銀嶺まぶし全快の蒲団干し板柿せっか

  • 蒲団干す電車の人と目が合ひぬ板柿せっか

  • 焼け焦げて放水受くる蒲団かな比々き

  • 掛蒲団めくる初潮の朝かな比々き

  • 蒲団軽過ぎてをとめのごとき夢富山の露玉

  • ぎゅーと寄せて三枚の蒲団敷く富山の露玉

  • ありたけの蒲団を干してまだ一人椋本望生

  • 蒲団被てこむら返りを喰らひたり椋本望生

  • 食べてるか蒲団要らぬか母の文門前町のり子

  • もう話すことなくなりて蒲団被る門前町のり子

  • 四組の蒲団に五人日吉館鈴木淑葉

  • 宿坊の蒲団に友の語る恋鈴木淑葉

  • 布団布団朝に固体で居られるか青海也緒

  • 蒲団出て此処より人生の続き綱長井ハツオ

  • 沼のごと蒲団の底にある湿度古瀬まさあき

  • ギリギリまで空に差し出す客蒲団花紋

  • 蒲団干す遂に息子は四十過ぎ小池令香

  • 夜好きの死にたがり虫掛布団シュリ

  • ふとんぬれただってととろがきたんだよゆうら(3才)

  • 奥の間の布団の金糸銀糸かなRUSTY

  • 蒲団打つしなやかな腕きょうも見る榊昭広

  • 愛犬は吾娘の蒲団を嗅いでおり⑦パパ

  • 主なき蒲団畳みて献盃すANGEL ANGEL

  • 熱の児の取り残さるる蒲団かなM.李子

  • ちどり足ルームキー蒲団に弾むnid

  • 干蒲団トワレ微かに夜半の雨sakura a.

  • 蒲団からつと現るる腱ほそしあきのひなた

  • 客布団棄てて終活宣言すあくび指南

  • 布団中(じゅう)深夜ラジオの推しの声あざみ

  • 白絹の蒲団や祖母の百二年あまぐり

  • 陽が歪み布団叩きし街の音おうれん

  • 温もりの消えし蒲団よ父の香よおおい芙美子

  • 千羽鶴折りし手畳む蒲団かなおざきさちよ

  • 勾玉に膨らむ蒲団バスケの男(こ)おぼろ月

  • いつも右側に落ちたる蒲団かなかつたろー。

  • 給水塔見ゆるベランダ蒲団干すかねつき走流

  • 今日よりは自宅治療の蒲団かなかんきゅう

  • 手術明け病室の蒲団は固しきなこもち

  • 地下道の薄暗がりにゐる蒲団

  • 蒲団すらあの世へ持って行けぬとはぐずみ

  • 闇は優し布団を熟れてゆく憂ひぐでたまご

  • 父を看る母の薄手の敷蒲団くま鶉

  • 合鍵のなき鍵束や布団重しくるみだんご

  • 羽蒲団褒めて寝ること恒例にクロエ

  • 青春がナンボのもんじゃい蒲団干すサイコロ帝釈天

  • 脱出は不可能かもと布団敷くさくやこのはな

  • 木霊来る遅れて蒲団はたきけりさくら亜紀女

  • 蒲団干す腑に落ちぬことたたきをりさとう菓子

  • 友の部屋蒲団連ねて夢語るさなぎ

  • 手も足も錆びし夜半や羽蒲団しかもり

  • 蒲団干す海に向かいて直角にしゅういずみ

  • 合宿の布団袋の鳩目かなシュルツ

  • ほっといて次女の言葉と焦げた蒲団じょいふるとしちゃん

  • 故郷に五体を落とす蒲団かなジョビジョバ

  • 民宿の屋根に迎える干蒲団しらふゆき

  • 布団干す夫の気配は消さぬやうすみすずき

  • 体内の海傾けて蒲団入るせり坊

  • せんべいと称する布団畳む朝髙辻康治

  • 頭から蒲団かぶりて聴くロックたじま

  • 小包の切手十枚布団干すたむらせつこ

  • 寝ているというには静かすぎる蒲団ちゃうりん

  • 先に出た布団の丸みほろぬくしツユマメ

  • 泣いた時母の蒲団がふかふかでツユマメ末っ子@8歳

  • 思春期の抱く蹴る潜る蒲団かなテツコ

  • かび臭き布団敷かるる湯治宿でぷちゃん

  • ひそひそと双子の会議は布団にててんてこ麻衣

  • 体温は蒲団にくれてやり太陽ときこ

  • 明けぬ夜のありぬべし八十路の布団 としなり

  • 息殺し蒲団目深に映画みるとみことみ

  • 子守歌ふくみふくらむ蒲団かなとりこ

  • 川の字の真ん中の蒲団が待っているなおりん

  • 刃あり義母往生の布団下なかにしうさぎ

  • 羊水に浮かぶ心地や絹蒲団なごやいろり

  • 評判の宿の蒲団が軽すぎるにゃん

  • 半分は日の当たりたる干蒲団のこも

  • 病床の蒲団にゆだね窓の星はなあかり

  • 遠鳴りや眠れぬ夜を吸う蒲団はのんぴあの

  • 遺影ずらり仏間にひとり敷く蒲団はむ

  • 布団が重いと君は言って逝ったはらぐちゆうこ

  • 蒲団干す過不足だらけ私たちひっそり静か

  • 入ったら寝ろそれが蒲団の本懐じゃひでやん

  • 鳥の声蒲団に籠めし日曜日ひろき

  • 蒲団の入り口朝のままの形ひろ夢

  • ネコだいて空飛ぶ羽毛布団かなポンタ

  • お布団に逃げ込んでいる喧嘩かなまりい@

  • ほんたうはあの人嫌ひ蒲団干すみかりん

  • 民宿に客あるらしき干し布団みちむらまりな

  • 布団部屋泣きに来し子のランドセルみなと

  • 干し上げる蒲団の数や島の宿みやかわけい子

  • 嫁ぐ姉の蒲団にもぐり込む夜更けみやこわすれ

  • 寝る前の弱気を包み込む蒲団むつき

  • 付き添いの簡易ベットの薄布団もつこ

  • 吾を抱きしめる吾を包む蒲団かなももたもも

  • いつかあの雲で眠ろう干蒲団ゆりたん

  • 母の間の見慣れぬ高額蒲団かなよしざね弓

  • 気がかりのありて蒲団に四角く寝るりぼうし

  • 母に抓られ父に打たれて干蒲団葵新吾

  • 合宿の匂うて重き蒲団かな葦たかし

  • 叡山を借景にして布団干し伊藤ひろし

  • 初孫の布団に太き鯉はねる伊藤順女

  • 黒き富士布団抜け出す夜明け前井原靖

  • 吾の旅は温い蒲団で終いたし郁松松ちゃん

  • 蒲団干す向かいの畑はコンビニに宇佐美好子

  • 朝四時のバスを見送る蒲団かな宇田建

  • 鏡見る母の背を見る蒲団より伊藤亜美子

  • 寝返りをうつ蒲団から湿布の香遺跡納期

  • 蒲団から飛ばす指令の数あまた永田凡々

  • 亡骸の薄き蒲団を押し上ぐる

  • 太陽と地球の間蒲団干す遠藤一治

  • 熱臭い寝息の孫や厚衾黄桜かづ奴

  • 何処にでも何時にも行ける蒲団かな火炎猿

  • 軍歌聞き夢の続きの蒲団かな花岡紘一

  • 蒲団干せ干せ晴天は威嚇する花南天

  • 猪も熊も出る村干蒲団雅喜

  • 警備室煎餅蒲団沼臭く海口あめちゃん

  • 蒲団干す隣のピアノ下手っぴね海老名吟

  • 直敷きの避難所蒲団干すフェンス蛙里

  • 蒲団からイタリアの風観る土曜甘酢あんかけ

  • 布団敷きここに根城の出来にけり甘平

  • 画布のごと鳥影走る蒲団かな閑蛙

  • 寝ぞう悪し輪に輪をかけて掛け布団岸本元世

  • 亡母の布団捨てよかと言ふ父の顔季切少楽

  • 蒲団2枚捨てて介護は道半ば亀山逸子

  • 二組の蒲団の軽き旅館かな亀田荒太

  • あれやこれや持ち込みこもる蒲団かな菊原八重

  • 点滴の繋がる足へ蒲団かな菊池洋勝

  • おふとんね!もりのこびとがいるんだよ吉田結希

  • 剣岳眺めてならべる干し蒲団吉田びふう

  • 布団着て明日の命を疑はず吉野中瓶

  • 島旅や風を孕みて干し布団居升典子

  • 蒲団撥ね鞍馬の山に詣けり京野秋水

  • 羽根布団小鳥になった夢を見た玉井令子

  • 取り込めば蒲団かるがる日をはらみ玉響雷子

  • それぞれのにほひ温めて蒲団かな金田登

  • いい日です家族の蒲団並べ干す

  • 夫となり蒲団とりあう仲となり研知句詩

  • 仮通夜の蒲団冷し母眠る原善枝

  • 雲に乞う蒲団になれと病む我は源氏物語

  • 東北の日ざし集めて蒲団干す光子

  • 学生寮に新品の布団の匂い江戸川ちゃあこ

  • へたりたる緞子の蒲団真珠婚紅茶一杯

  • 蒲団干す向こうから声かけられし高橋なつ

  • むかしむかし母は蒲団を飛ばすかな高橋寅次

  • 蒲団めが吾を飲み込みて吐きもせず高石たく

  • お前いま蒲団にくるまつてゐるだらふ高田祥聖

  • 細胞が沈みゆくやう干蒲団根々雅水

  • 売れる日は来るのか蒲団引っ被る佐東亜阿介

  • コインランドリーに花柄蒲団繚乱す佐藤儒艮

  • 故郷は重い蒲団と山羊の声砂舟

  • ふとんにぎたいする起きたくない朝座敷わらしなつき(8才)

  • 蒲団より白き庭おもう子規のごと斎藤数

  • 乳の香や蒲団の角を吸ひ眠る斎乃雪

  • 犬小屋の布団はらわた千切れおり三島瀬波

  • ローカル線蒲団畑に入ります山﨑瑠美

  • サイレンの鎮みて蒲団の白かりき山沖阿月子

  • 布団干す屋根に光の子守唄山吉白米

  • 病床の蒲団でラーメン食べる夢山女魚

  • 雨戸の節一本のひかり蒲団刺す山川恵美子

  • ぬひぐるみ集め蒲団は方舟に山太狼

  • 月光や男が蒲団までも穢す山田喜則

  • 暫くはココハドコてふ朝の蒲団山踏朝朗

  • 垂乳根の蒲団柔軟剤の優山本先生

  • 蒲団わさわさどんな寝方をすれば斯う山名凌霄

  • ふとんふとんラジオは中東のニュース獅子蕩児

  • 猫、たぬき、キリンと眠る蒲団かな紫瑛

  • 布団干してはならぬ巴里十六区紫小寿々

  • ダンヒルの匂いの残る布団かな紗千子

  • 蒲団干す死ぬとき人はひとりなり若井柳児

  • 穢れある私をくるむ蒲団かな珠凪夕波

  • 鼻唄はいつもさびだけ布団干す寿松

  • 介護終わる布団に残るくぼみかな秀耕

  • 蒲団敷く母の遺影を仰ぐ部屋秋夕介

  • 干蒲団たたく八分の六拍子春海のたり

  • 団欒あと淋しき昼に蒲団干す

  • 蒲団綿だらけの母の膝なりき宵猫

  • 故郷の潮騒聞こゆ干蒲団小磯悠人

  • 眠剤を欲す身体や蒲団干す小鞠

  • 片想い僕は蒲団で丸くなる小栗福祥

  • かくれんぼ蒲団とともに折り畳む小笹いのり

  • 最後の夜母と並べる蒲団かな小山晃

  • 温もりに今日をくるむや干蒲団小川都

  • 滅びへの渦中のけふも蒲団敷く小川天鵲

  • 介護タクシーの薄き蒲団や夕まぐれ小倉あんこ

  • ちと拗ねてかぶる蒲団の重さ哉小谷百合乃

  • 君のかた残りしままに蒲団冷ゆ小南子

  • 一日を笑って沈みゆく蒲団小野睦

  • 引っ越しの連れは蒲団と愛唱歌小柳悠子

  • 大の字に凹んで蒲団の言い訳松井くろ

  • 産声や小さき布団は真白なり松本裕子

  • 蒲団まで焼肉臭くなってもた松野菜々花

  • におう蒲団生き残ったら残ったで焼田美智世

  • この蒲団は時空歪める羽毛なり城ヶ崎由岐子

  • 轟音を蒲団がつつむ震度7植田かず子

  • 濃き闇にふとん幽かにおもくなり色葉二穂

  • 義母のくれし鼠の噛んだ蒲団かな新開ちえ

  • 真向かいの山の名知らず蒲団干す森の水車

  • 蒲団干しはにかむ子供の冒険談森井はな

  • 蒲団干す街の彼方の光る海森弘行

  • 蒲団干す如来のような薄目して森青萄

  • 義母帰る何はともあれ布団干す真雪割豆

  • 脱け出せし魂帰りくる蒲団かな真繍

  • ひとり寝の欲云へばそう干蒲団真優航千の母

  • 大空へ投げ出すように蒲団干す水夢

  • 蒲団よりはみ出し足のもの悲し酔進

  • 蒲団縫ふ綴ぢめの房は緋色なり杉浦夏甫

  • 蒲団干すふとんに鳥の影とまり杉本果蓏

  • 太陽の黒点増えし蒲団干す世良日守

  • こだまから見える蒲団やテロニュース星善之

  • 子の布団挟む向こふの寝息かな晴好雨独

  • バタフライの息継ぎのごと蒲団干す正山小種

  • まなかひに大阪城や布団干す清水 容子

  • 手と足と尻尾が覗く蒲団かな清水トキ

  • 手もくの字胴もくの字に蒲団かな清水祥月

  • 掛蒲団重とうなったと齢かな西原さらさ

  • 掛布団の母と敷布団の父西村小市

  • 蒲団取りこまぬ隣家の顔しらず西藤智

  • ベランダに蒲団の柄の愉しけれ青い月

  • 炙りくさい蒲団に入って俺んちだ青井晴空

  • 蒲団カバー真白な海を君想ふ青田奈央

  • 蒲団干す隣同士の会釈かな石井茶爺

  • 週末はリーグ開幕布団干す石川巴鈴

  • 残り香の蒲団泣き出しそうな空赤橋渡

  • 重ための蒲団かぶりて逃避行雪華きなこ

  • ほくろ見っけ蒲団温もるまで待って千日小鈴

  • トクホンの香亡父の蒲団しまい込む千葉睦女

  • 貸ぶとん安酒あふりもぐりこむ川村昌子

  • 花袋より私のふとん暖かい川畑彩

  • 冬蒲団地球の裏までもぐりこむ泉子

  • 太陽に心を開く布団かな倉岡富士子

  • 日曜の雨匂ひくる蒲団かな倉木はじめ

  • 積もりし気配や蒲団にもぐる月曜日痩女

  • 熱二日蒲団の鎖絡みたり蒼空蒼子

  • 海賊の船は沈没ふとん干す蒼奏

  • 干蒲団叩くに調子ありにけり蒼鳩薫

  • まだ帰らぬか横には冷えた蒲団足立智美

  • 天窓のひかり布団を抱きに来り多事

  • 蒲団まづ我がししむらで暖めり多々良海月

  • 夢読みを招き入れたき干蒲団大山小袖

  • 羽蒲団乗って空飛ぶ夢なのか大村真仙

  • 終の日はこんな日にしたき蒲団干す大庭慈温

  • 人目には風抱くやうに蒲団抱く大和田美信

  • 布団干文机のメモ風にのる滝川華子

  • 天翔ける布団の船のあればこそ滝谷朗

  • 電リクにナマエ蒲団を頭から沢拓庵

  • 山小屋の薄き蒲団や風荒ぶ知足

  • 同棲の長さ蒲団を干す重さ池之端モルト

  • 巣立つ日のケトルと羽毛布団かな竹口ゆうこ

  • 眠ったら会える蒲団に潜りこむ竹内みんて

  • この街で一人で生きる布団買ふ中岡秀次

  • 帰る場所なくす蒲団を片付けて中山月波

  • 小児病棟恐竜はねる掛布団宙のふう

  • 蒲団から手の届くまでが今日衷子

  • 蒲団まで太陽来たる日曜日朝日のど飴

  • 蒲団被る体に残る震度七長谷川ろんろん

  • 敷蒲団洗う冷水痛し少女の朝長尾桃子

  • 蒲団着て星のない夜の孤独かな辻が花

  • 蒲団干し見つけられたる成人誌辻句楽

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  • 病院の蒲団白くて軽すぎて藤田真純

  • 蒲団のネコ干しておひさま降りてくる徳田ヨーコ

  • 旅先の陽の匂ひする布団かな独星

  • 窓を開け蒲団三枚流星群寅次郎

  • 布団冷たっ!たまの一人は温もり恋し内田誠美

  • 蒲団干すいがぐり頭の後頭部内本惠美子

  • 干布団魑魅魍魎を叩き出し二鬼酒

  • 小さき日の蒲団の重み豆明かり入江幸子

  • 新設のベッドに古き羽根布団埜水

  • 祖父の寝る蒲団ロココの薔薇模様巴子

  • 無きことがあり得ぬ布団乾燥機馬祥

  • ちょうどよい温さのころに出る蒲団背馬

  • 掛けれども掛けれども布団剥ぐ息子梅嶋紫

  • 独り分畳む布団の軽さかな白井百合子

  • 積まれたる蒲団に隠る小兵士白雨

  • 捨てられぬ母の手縫いの蒲団ゆえ白土景子

  • ばあちゃん家はみ出る足やミニ布団白藍こはく

  • 幾年も重み蓄へ蒲団棄て畑詩音

  • 赤子寝る布団の余白の広きかな八重葉

  • 寝返りの数だけ馴染む干蒲団板垣美樹

  • 引き寄せし蒲団の重さ甲羅めく比良山

  • お向かいは喧嘩中なり蒲団干す緋乃捨楽

  • 病床の母の蒲団の薄きかな樋熊広美

  • 真夜中に蒲団掛けし子ら父になる尾関みちこ

  • 老いのみの部屋の日だまり蒲団干す美山つぐみ

  • ずっしりと重き蒲団の快然たる美翠

  • 稀なるか蒲団は木綿母恋し蛭本喜久枝

  • のしかかる子宮のぬくもり綿布団風泉

  • もがきたる蒲団の中の深海魚風峰

  • こんな夜は蒲団かぶりて小宇宙風来

  • かけぶとん子等の寝相の姿して福ネコ

  • 頬染め寝入る孫の布団ほこほこ福弓

  • 届け先は東京シングル布団福月スミレ

  • あずき色の布団袋届く四畳半福泉

  • 一人寝の蒲団に猫の重さかな平井みき子

  • 本めくり早く温もれ冬布団平塚明美

  • 妊娠初期の妻を制して蒲団干す片岡ひまり

  • 夫定年も一度潜る蒲団かな片岡佐知子

  • 柔らかに蒲団の中に足のばす片栗子

  • 人の家四肢縮こめる蒲団かな穂積のり子

  • 一日を生きし褒美に入る蒲団睦月くらげ

  • 母手製の今にし重き綿蒲団本間美知子

  • 阿弥陀くじ団地の窓の干蒲団盆暮れ正ガッツ

  • 蒲団に潜り慟哭宇宙(そら)を漂う麻生恵澄

  • 長電話終わって妻は布団干す抹香

  • 蒲団へ中継チンアナゴ砂漠から抹茶金魚

  • 笑みこぼる肩のぬくもり朝蒲団湊かずゆき

  • 六畳に蒲団を敷けば我家成る蓑田和明

  • まだぬくもりのある蒲団看取り果つ眠睡花

  • 湯上がりの匂ひ持ち込む蒲団かな夢見昼顔

  • 星へ海へ絵本と母と子のふとん名計宗幸

  • 押入れの主なき蒲団薄くなり木下桃白

  • 孫たちの残香ほのか蒲団干す木村修芳

  • 伏した父掛けた蒲団の嵩ひくく木村波平

  • 冬の布団我の動きを鈍くする夜香

  • 青空へ客布団干す早や三日野尻敏子

  • 100までも生きてくれろと布団かけ野村良徳

  • 午前二時まるまって爪先の布団野々香織

  • 朝5時の余震蒲団に身を屈め矢引達教

  • アン畜生うっぷん晴らす布団干し有馬裕子

  • 臨終の母に冷たき布団かな柚木窈子

  • 帰省した娘の残り香蒲団しまう由実

  • 潜るべき蒲団の無くて体育館遊飛

  • 孫あずかりて眠れぬ夜の蒲団かな雄山卓女

  • 抱き合ひて互ひが蒲団となり落つ藍野絣

  • 空模様慌てて蒲団干し入れる利光

  • 蒲団干す夫の背ことに丸くなり立花綾子

  • 押入れの蒲団の隙間で眠りたい隆月

  • 出汁を取る蒲団の夫の鼻ぴくり龍季

  • お日様の香に埋もれたし蒲団干す林田りこ

  • 閉じ籠る真昼の硬き敷蒲団鈴木上む

  • 明け方の温き布団の我は猫蓮花麻耶

  • わが着物蒲団に化けし戦後かな鷲野の菊

  • 手書き文字父の布団に頭と足

  • 蒲団干し温もり残し取り込むや戌の箸置

  • 蒲団着て獣の如く丸くなり戌亥

  • 青天へやすのりちゃんのおねしょ蒲団朶美子

  • ひんやりと生家の匂いの蒲団かな楡野ふみ

  • 宝くじ当たれと蒲団西向きに櫻井弘子

  • 陽の香り吸ひて吐きたる布団かな洒落神戸

  • 肩口にすわる猫あり蒲団あけ澤真澄

  • 幾千の夜を吸いたる蒲団かな籠居子

  • せんべい蒲団吾のグチ呑んで日に放つ 

  • 整えて主婦の満足蒲団かな蓼科川奈

  • 蒲団乞う犬のかわいや裾上げる黎成

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号には苗字を!

〇俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて、姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。よろしくご協力ください。


◆ひとことアドバイス

●俳句の正しい表記とは?

  • 蒲団出し 大足ぴくり 零度の夜角谷圭子
  • 幼き日 温く温く蒲団 母の横vivi
  • 布団入れ 思わずうずめる陽のふわり
  • 干蒲団 叩くやパッと 鳥去りぬ小林憲子
  • 乳房吸い 寝る子に譲る 羽毛布団猫梟
  • 無沙汰にも 布団の温し 寒椿葉月
  • 蒲団干す 夫のラインに 病室で笑む梶本幸子
  • 窮屈も 犬には甘く 蒲団シェア細谷弘美

○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪

  • 冬ふかし
    念仏のごとく
    キャベツきる安藤信子

○テレビの俳句番組では、三行書きにする場合が多いのですが、あれはテレビの画面が四角なので、そのような書き方をしているだけです。重ねていいますが「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが正しい書き方です。


●一句一季語から練習

  • 春の嵐蒲団飛ばされ豆を撒くカメ
  • 充電の湯たんぽ入れる冬衾一枝
  • 犬抱きて布団いらずの昼寝かな榎本真希子
  • 炬燵から猫が這い出し腰布団岡月すず
  • 耳寒し布団の角を弄ぶ音声
  • 待ちわびる蒲団のように雪よ降れ加島
  • 早朝の除雪車感謝しつつも出れぬ蒲団齊藤裕
  • 冬の朝蒲団の中は時間切れほそのまさる
  • 更年期蒲団剥いでは風邪を引き原口和博
  • 冬晴れの日朝顔柄の布団干す珠草
  • 咳すれば咳が応える蒲団ふたつ村若案山子
  • 意を決し蒲団蹴散らす寒い朝

○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。


●兼題とは

  • 稲おじぎいばる案山子に富士笑う幸田泰子
  • タピオカや 飛んで弾けて 子供泣くマグナムの兄貴
  • 水仙を差して眺めてあっ図書館弓削美和子
  • 帰省子の去りたる部屋の寒さかな田中由美

○今回の兼題は「蒲団」です。兼題を詠み込むのが、本サイトのたった一つのルールです。

  • ドアを閉じまたドアを開け去年今年野曾良

○おーっと、これは前回の兼題。遅かりし由良之助~いや、遅かりし野曾良~やな、とほほ。


●季語深耕

  • 午後六時結びの一番蒲団舞う亀田勝則
  • 座布団の特等席や猫どかす大道真波

○「蒲団」は冬の人事の季語です。土俵へ向かって投げられる座布団は、あくまでも座布団であって、季語の蒲団とは言い難いなあ。

  • 腰蒲団木賃宿座す山頭火ときめき人

○「腰蒲団」も冬の人事の季語に分類されます。腰の冷える女性や妊婦などが使う小蒲団です。うーむ、山頭火かあ。ちょっと微妙。

  • 冬衾水道水の甘きこと石井一草
  • 太陽の香りまみれや冬衾村松登音
  • 死期迫る母に添い寝の厚衾木村修芳

○「衾(ふすま)」も冬の人事の季語です。ネット辞書には以下の解説。【身体の上にかける寝具。木綿・麻などで縫い、普通は長方形であるが、袖や襟を付けたものもある。現在のかけぶとんの役割をした。】 ページ数の少ない歳時記や季寄せなどでは、「蒲団」の傍題として「衾」を載せているものもあるかとは思いますが、大判の歳時記などでは、別の季語として分類されています。

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「土筆」

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