夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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9月の兼題

「石榴」

2月の審査結果発表

兼題「猫の子」

お待たせしました!2月の兼題「猫の子」の結果発表でございます。みなさまの渾身の一句、猫の子の情景を思い浮かべながら拝見し、ほっこり。なんで猫って字だけでも可愛いんですかね。今月もみなさまのご投句、お待ちしております(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
空箱の猫の子傷林檎の重さ

GONZA

夏井いつき先生より

「空箱の猫の子」は、空箱の中に捨てられていた子猫に違いありません。こんなところに捨てられている……と思わず、手に取ったのでしょう。手のひらにある重さは、何かの重さに似ていると感じ、ああ、これは「傷林檎」と同じ重さだと気づくのです。
 ということは、子猫を手のひらに置いている人物は、リンゴ農家の人ではないか。傷林檎を選別する手のひらには、その重さが刻まれているのではないか、と、読みが広がっていきます。
 手間ひまかけて育てた林檎にも傷がつき、捨てざるを得ないという現実があります。生れでた小さな命である「猫の子」を捨ててしまうのも、何らかの事情があったのだろうが……と、春の思いは揺れていきます。

地
猫の子の爪切るだけの帰郷かな

稲畑とりこ

 久しぶりの故郷。何をしたいでもなく、何をするでもなく過ごした数日。結局は、「猫の子の爪」を切っただけだなというほの温かく、ほの苦い「帰郷」。下五「かな」の詠嘆がしみじみと響きます。

パスタ巻く仔猫を肘でよけながら

銀紙

 何にでも好奇心を持つ「仔猫」が、パスタをくるくる巻く様子に興味を示さないわけがないのです。「肘でよけながら」という描写に臨場感があり、この後の動作への想像がさらに広がります。

猫の子を貰ふ相談寛解期

朝月沙都子

「寛解期」ですから、病気が軽快したのです。もし癌ならば病巣が消滅した状態。やれやれという安堵から、猫の子を飼いたい希望が生まれます。ふわふわとした猫の子は、まさに命の感触です。

猫の子の決死の威嚇なるふああ

at花結い

 猫の子にとっては「決死の威嚇」なんだけど、なんとも可愛い「ふああ」なのでしょう。中七の二つの固い熟語と、下五の柔らかいオノマトペの対比。季語「猫の子」の様子を的確に描いています。

猫の子の可愛いところ百個書く

たまのねこ

 猫好きの人たちは、「可愛いところ」を書き出せといわれたら、幾らでも書けるのでしょうね。「百個書く」という下五が、愛すべき猫好きたちの気持ちを代弁。俳号も含めて、笑ってしまいました。

人
  • 反る跳ねる転がる仔猫てふ動詞真井とうか

  • 猫の子の鳴く立つ歩くもう猫だ蒼空蒼子

  • 子猫寝るまだ寝るぱあとしつつ寝るかむろ坂喜奈子

  • はじかれて吸えぬ子猫の尻を押し石原直子

  • ほむらめく仔猫よ街は壊れてゐる錆田水遊

  • 猫の子の月のかたちに反るからだギル

  • 白い子猫抱くウクライナは静か海野碧

  • 水すくうように猫の子だきあげる愛燦燦

  • 猫の子といふ一粒を掬ひけりあいだほ

  • 濡れそぼつ猫の子の舌真っ赤っ赤藍野絣

  • 紐振れば子猫三匹釣れにけりあいむ李景

  • 猫の子や土手で寝ころぶ五時限目青井晴空

  • 猫の子に名前をつけず五日過ぎあおのめ

  • 猫の子や港見下ろす坂の街蒼鳩薫

  • ふところに仔猫いよいよ猫背なる赤松諦現

  • 猫の子は前かごに乗り土手を行くあかり

  • 猫の子に顔をうずめている専務秋沙美洋

  • 猫の子を包むタオルは吾子の香秋田白熊

  • 猫の子なら登るべきですカーテンを昭谷

  • 猫の子の眠るとなりの力石秋野茜

  • 猫の子の声色色に染む光あきののかなた

  • 自転車のかごに産まれし子猫たちあきみ

  • 猫の子を膝に独酌二合半あくび指南

  • 猫の子を譲る手に残るぬくもり朝雲列

  • 砂っぽい毛なみや猫の子をひざへ朝方静流

  • 朗らかに猫の子狩りを全うす明後日めぐみ

  • 反撃はさて子猫にカリカリやってから字土街海

  • 猫の子も君が代だけはじつと聴くあさのとびら

  • 貰われてゆく猫の子を褒めちぎり明日良い天気

  • 猫の子の息たしかめている二人梓弓

  • ビル壊すドリルの先に猫の子よあすなろの幸

  • 爪の紅いひとに子猫は触らせない足立智美

  • 猫の子やまだ空は風は見えぬかあたなごっち

  • 被災地に髭面見上ぐ猫の子よ新子熊耳

  • 疲れ果てバッハで眠る猫の子ら中はじめ

  • スカートの裾のほつれに猫の子来渥美こぶこ

  • 通学路の円陣目の開かぬ仔猫あまぐり

  • 留守番の猫の子五匹駐在所天野幸子

  • 野に出れば野のものとなる子猫の眼あまぶー

  • エッシャーの絵と戯れてゐる子猫あみま

  • 猫の子は淋しいなんぞ呟かぬ雨降りお月さん

  • 子猫やわやわ心まだ生きてるか綾竹あんどれ

  • ガラス函並ぶひとり遊びの猫の子のあやや

  • 裏通り歩む銀座の仔猫かな荒井類

  • 魂を吸うか猫の子この瞳あらかわすすむ

  • 猫の子のとうとう柵を乗り越えて荒木俊充

  • 猫の子の瞳全開みぎひだり荒木豊

  • 猫の子の尾も靴下もくたびれてありあり

  • 仔猫あららクレーンゲームのやうに有本仁政

  • 猫の子が眼鏡を叩く齧る曳くアロイジオ

  • 猫の子をくわえ東へ雲迫る阿波オードリー

  • 猫の子やフェリー埠頭の五目釣安春

  • 猫の子や眠るひとつはまつくろけ飯村祐知子

  • 猫の子として校長の前よぎるイエティ伊藤

  • ミサイルの飛ばない空が子猫の目いかちゃん

  • 猫の子や誰のものでもない野草池内ときこ

  • Gパンに猫の子連なる台所池田華族

  • 八百萬の猫の子籠に盛られをり池之端モルト

  • 夜明け来よ星に子猫の目がひらくいさな歌鈴

  • 都合よく忘れられない仔猫の眼石井一草

  • 蝿追う子猫ニュースはウクライナ石垣

  • 8Bで猫の子を画くぐりんぐりん石垣エリザ

  • 降ろされたところを知らぬ猫の子ら石川あ世楽

  • 日僅かに差して子猫子猫子猫いしきひさき

  • 猫の子を半日だけと借りて行く石塚彩楓

  • 猫の子が頭ぶつけて内緒事石山日滔

  • 猫の子のこの子の脚はこれかいな和泉攷

  • 懐中に仔猫古書肆を巡りけり石上あまね

  • 黒幕のやうな顔した仔猫かないその松茸

  • 猫の子や今月五万の養育費磯むつみ

  • 貰ひ手の決まらぬ子猫乾かしぬ板柿せっか

  • 脱ぎ捨てた服に子猫の息づかい唯茅古

  • 猫の子の隙間から打つキーボードいつかある日

  • 海女小屋の桶に束子のごと子猫斎乃雪

  • 手が離せないの子猫が寝ているの一斤染乃

  • おとうとと覗く仔猫や風の土手伊藤治美

  • うかうかと目を合わせけり猫の子と伊藤柚良

  • 猫の子の目やに拭いしおばあの手伊藤小熊猫

  • 猫の子の尻尾震わせ尿かな糸川ラッコ

  • 猫の子の左目に母右に龍糸川ラッコ

  • 猫の子に閉じられて読みかけの本伊ナイトあさか

  • 五年ぶりの駅猫の子は何世居並小

  • ちちちちち呼んでも猫の子そっぽ向く犬野れい

  • 猫の子の親あの猫かこの猫か犬山裕之

  • 猫の子の我の匂ひになりにけり井納蒼求

  • 四代の前の毛並みのこの子猫ゐのかたゆきを

  • 猫の子の気になつてゐる子のパジャマいまいやすのり

  • 薄紅の子猫の舌や水はじく今井淑子

  • 眼の青き猫の子ころうりこおろころ今村ひとみ

  • 猫の子を避けて世間の流れをり伊予吟会宵嵐

  • 猫の子のぞろぞろ豚舎より出で来磐田小

  • ゆびはらにひびく子猫の鼓動かな岩橋春海

  • あの箱の猫の子1つ減っている上野眞理

  • 石炭へ産み落とされし子猫かな上原淳子

  • 街猫に子猫交わる日向坂上原まり

  • 猫の子はラの音で鳴く薄暮光うからうから

  • いのち飛び出さうよ猫の子のあくびうさぎまんじゅう

  • 猫の仔のももいろづくし手も鼻も宇佐美こころ

  • 目の開かぬ猫の子の聞く子猫たち宇佐美好子

  • こねここねるこねられこねこ唱ふ子うた歌妙

  • 猫の子の消えをり星は潤みをり内田こと

  • 雑居ビル猫の子咥え過る朝うちだまみ

  • 人の子と猫の子同じ好奇心空木眠兎

  • 猫の子を祝い国際電話かなうつぎゆこ

  • 猫の子はカスタードクリームのやう卯夏野心

  • 猫の子や命名忘る“ミー”と呼ぶ梅尾幸雪

  • 猫の子やしっぽは空がお気に入り梅木若葉

  • 猫の子や人指し指で弾くピアノ梅鶏二号

  • 猫の子の眠る合図や陽のにほひ梅野めい

  • 五番目の白い猫の子雨しとど浦文乃

  • 猫の子の首の後ろの愛の痕詠頃

  • ふくらむ宇宙猫の子はてのひらに蝦夷野ごうがしゃ

  • 風いでて子猫にすこし手を貸しぬ越前岬

  • 猫の子の貰い手全て決まりし夜越冬こあら@QLD句会

  • 目も鼻も口も猫の子の武器に絵十

  • 数ふ毎はて猫の子の数違ふ江藤すをん

  • 猫の子の鼻先寄ってきて微熱戎居多佳子

  • 左手に仔猫右手にジンライム朶美子

  • 猫の子や匂い引ずるダンボールM・李子

  • 猫の子や明日の来ない夜は無いえりいも

  • 鈴付けて猫になりたる仔猫かなえんかず

  • 猫の子の未明乳腺炎の熱おおい芙美子

  • 猫の子の熱き腹嗅ぐ牛の鼻大熊猫@四句八句

  • 猫の子の散らかつてゐる居間である大黒とむとむ

  • 猫の子や膝から肩へ本棚へ大小田忍

  • 絵手紙に子猫の手形押しにけり大阪駿馬

  • 不承知の名を付けられて鳴く子猫大槻壽子

  • 猫の子を抱けば文庫本の重さ大津美

  • 猫の子を振り返りつつ向かう塾大原雪

  • 猫の子を飼うそぶりない女の子大村真仙

  • 猫の子の何も傷つけぬつめの先大本千恵子

  • 猫の子や心拍数は上昇す岡井風紋

  • 子猫みる世界は今でも美しいか魚返みりん

  • 猫の子のつむところなきまるみかな可笑式

  • 猫の子に猫の子つづく石畳緒方朋子

  • 木の匂ふ実家に増ゆる子猫かな岡田雅喜

  • 子猫啼く瑠璃色の目を開きつつ岡山小鞠

  • 夕闇の仔猫の声や砂金めく小川さゆみ

  • 猫の子のどこぞで啼きて日暮れかなオガワ野棕櫚

  • 猫の子や世界は丸くやはらかく小川野棕櫚

  • 猫の子のもらはれてすぐ名をもらふおきいふ

  • 猫の子の爪のふにゅっと透きとおるオキザリス

  • 猫の子の午睡の睫毛に光満つ奥寺窈子

  • この街に転校生と猫の子と奥野悦穂

  • 猫の子の声してやめるかくれんぼ奥の

  • 夕雲や猫の子の声九日目小倉あんこ

  • 猫の子の親も嵌まったU字溝小栗福祥

  • 野良の猫の子に今日名がつきましたおこそとの

  • 半濁音こぼるるごとく子猫鳴くオサカナクッション

  • 猫の子だったときを知らないあくびおさむらいちゃん

  • 猫の子の耳から透けてをる生ぞ小沢史

  • 猫の子のへばり付くやう無人駅小田和子

  • 猫の子の鳴き声やがて風と化す小田龍聖

  • 猫の子の里親の手に菓子折りあり小田ビオラ

  • 猫の子に猫の母ゐて日あまねしおだむべ

  • 砲撃の空耳猫の子の不穏越智空子

  • 陽に揺れし水に猫の子後退り音のあ子

  • 陽だまりに子猫を置いてくる遊び音羽凜

  • お日さまをすくふてのひら子猫かなおひい

  • 猫の子やひかり嗅ぎわけ生きんとすおぼろ月

  • 猫の子の無声映画めく本気かいぐりかいぐり

  • パン焼けば黄色に決まる子猫の目灰頭徨鴉

  • 猫の子や裏返つてるランドセル海峯企鵝

  • もうすでに欠伸覚えし子猫かなカオス

  • 猫の仔や露軍の戦車過ぐる道に馨子.N

  • 猫の子の百グラムあるいのちかな加賀くちこ

  • 猫の子は日向に出されてちぢこまり笠置祐子

  • 妖怪めく歯茎を見せし子猫かな風花まゆみ

  • ねこの子の名前だんだん偉くなり風花美絵

  • 猫の子の星まで届くしっぽかな霞山旅

  • 眇なる子猫声無き声で鳴く樫の木

  • 金の鈴つけて子猫は所有物加世堂魯幸

  • 猫の子の薄桃の腹掌を温む片岡六子

  • 夜の底猫の子一匹抱いて寝る交久瀬小夜時雨

  • 猫の子の甘き鳴き声雨近し加田紗智

  • 獣医に「シャーッ」ミケは半貫の仔猫花鳥風猫

  • 仮の名が本名となる子猫かなかつたろー。

  • 産毛を濡らす雨より軽き子猫かな克巳@夜のサングラス

  • 海の底猫の子の目をのぞく月桂葉子

  • 懐の仔猫は何も疑はず花伝

  • 缶チューハイ少年と見てゐる仔猫加藤ゆめこ

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  • 落ちている豆大福のごと子猫川村湖雪

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  • 生まれたての猫の子が来る日曜日川村昌子

  • 仔猫吸う乳ハナは元繁殖犬閑々鶏

  • 猫の子の影尖りゆく威嚇かな喜祝音

  • 猫の子をしがみつかせて逃避行キートスばんじょうし

  • 猫の子へ伸ぶや絆創膏の指菊池洋勝

  • 猫の子も老母看取りし仲間なり岸本元世

  • 猫の子の威嚇突っ張る細き足岸来夢

  • きうきうと子猫の肺の膨らみぬ北野きのこ

  • 手のひらに仔猫を包む自衛官キッカワテツヤ

  • 猫の子の髭ふくふくと動きたるきなこもち

  • 猫の子の鳴いて子宮のあたたかく城内幸江

  • 傷つきしこの世に猫の子の寝息木原洋子

  • 猫の子のいる間だけ緩む居間木ぼこやしき

  • もみくちゃの子猫らの顔足尻尾木村となえーる

  • 猫の子よぎる明け方の歌舞伎町Q&A

  • 猫の子にもう不要となつたつばさきゅうもん@木ノ芽

  • 子猫居る六畳一間は遊園地鳩礼

  • 星落ちるたび猫の子の痙攣す杏乃みずな

  • 猫の子が離れたいのか居たいのか銀長だぬき

  • 空耳の空猫の子の生あくび金羊

  • 猫の子のげつぷ明るきなゐの朝

  • 神さまにまだ返さない子猫かな久我恒子

  • 猫の子や耳かきの梵天至福楠美翠

  • 猫の子の口ひげ早も恋を識るぐずみ

  • 猫の子も吾も東京を溺れゐるぐでたまご

  • 早世の子の名でまねく子猫かな工藤悠久

  • 丹田に猫の子潤む真昼かなくま鶉

  • 足音を聞きて仔猫のかしこまる熊谷 温古

  • ビルの間の子猫にしゃがむランドセル倉岡富士子

  • 二拍子の子猫は進む鼓笛隊倉木葉いわう

  • 女にふられ猫の子に嗅がれをる倉木はじめ

  • 石敢當にそぞろく集ふ孕み猫栗の坊楚材

  • 猫の子のあくびと小さき獣の歯空流峰山

  • 猫の子を提げて別間へ転居せり恵勇

  • 手のひらの仔猫の舐める結婚線けーい〇

  • 猫の子やビッグイシューを売る足にげばげば

  • 猫の子がピリリ引っ掻く恋の傷減塩の小林

  • エコバッグよりバゲットと猫の子と剣橋こじ

  • 生まれでし世はなにいろやこの子猫小池令香

  • お砂場の匂いや猫の子のうんちこいぬ

  • 猫の子の三匹もつれきらいすき公木正

  • 舐めて舐めて舐めて全き猫の産幸田柝の音

  • 「猫の子はきらい」あなたの嘘がすき古賀

  • レガートの母スタッカートの子猫五月ふみ

  • 猫の子にいとまを告ぐる小さき客小久保ゆた夏

  • 爪立てし夫の背中よ猫の子よ小笹いのり

  • 家族となる帽子の中の仔猫かなコスモス

  • 猫の子に優しい第二反抗期木染湧水

  • 甘食のやうに猫の子鳴きにけり小だいふく

  • かつおぶし付けて猫の子貰われる後藤周平

  • 猫の子のこちらを見てる見ないふり古都鈴

  • 猫の子ら眠る取つ組み合ひのままこなねこ

  • 猫の子の腹ハーモニカふはふはとこのねこのこ

  • 猫の子の金目銀目を帯びはじむこのみ杏仁

  • 猫の子の国籍も死亡届もなく虎八花乙

  • 猫の子が居なくなったと回覧板小林昇

  • 金銀妖瞳猫の子既に魔性帯ぶこま

  • てのひらの子猫とことん頼りなく小町瑞泉

  • 猫の子がボクに魔法をかけた午後小山晃

  • オンザロック猫の子なにも言わないで今藤明

  • 雪国の犬より仔猫離れざる紺乃ひつじ

  • 猫の子の数に合わせた乳首あり西條晶夫

  • 雨匂ふ子猫のパンチ柔らかしさいたま水夢

  • 古希の手を零るるほどに仔猫鳴く彩汀

  • 乳臭き子猫の舌の湿りかな齋藤杏子

  • 猫の子の籠からこぼれる6番目さいとうすすむ

  • 猫の子の老人ホームの巡回さおきち

  • 上履きを嗅ぐ猫の子や金曜日坂上一秀

  • 猫の子のここぞここぞのわらべうた坂内桜佳

  • 廃プラの奥の微かは猫の子か坂まきか

  • 子猫寝てより運休のプラレールさくさく作物

  • 拾はれて余生の顔の子猫かな咲元無有

  • 仮の名を聞かず猫の子貰はるる雑魚寝

  • 我が余生を喰ひつぶす気か子猫らよ砂舟

  • 猫の子を抱いてこの子はいらない子紗千子

  • 猫の子の呼名の違ふ家族かな佐藤志祐

  • 助手席の膝の仔猫や眠しねむし佐藤儒艮

  • 撃たれたる兵士のよこを猫の子ら佐藤綉綉

  • 猫の仔の未来吸い込む大あくび佐藤しらべ

  • 体育着に猫の子包む雨天なり佐藤ちかこ

  • 猫の子のつま先立ちて尾の太し佐藤裕人

  • 膝の上ゴーシュのセロか猫の子か佐藤佳子

  • 油さすチェーンの奥の子猫かなさとけん

  • 正座よりあぐらがいいんだろ子猫里すみか

  • 妻の膝に世渡り上手なる仔猫さとマル

  • 猫の子を拾い今宵を歩きけり里山子

  • 猫の子の仕草満載吾の日記さぶり

  • 悲しみを丸めて置くと猫の子にさむしん

  • 食パンの縮尺ねこの子の伸縮さるぼぼ@チーム天地夢遥

  • 子猫包む縫い痕ありし獣医の手澤田郁子

  • 偵察を止めて子猫の目は青し沢拓庵

  • 風の贄仔猫の耳の桜色三月兎

  • 猫の子を抱けば重なる脈の音三休

  • 子猫抱く吾子をあやしし手の形紫瑛

  • 学ランの中の猫の子の体温獅子蕩児

  • 餌食らふ仔猫食ひ入るやうに観る信田龍之介

  • 純な眼はやめて猫の子は飼えない篠原雨子

  • 乳を飲む猫の子の手のアンダンテ篠雪

  • 猫の子やボロボロの「ねことオルガン」柴桜子

  • 子猫なく声なないろの砂糖菓子渋谷晶

  • 猫の子の抱きかた愛の育てかた嶋村らぴ

  • 猫の子のひなたのにほひ溢れけり清水祥月

  • まだ見えぬ夕つづ猫の子の名とす清水 三雲

  • 仔猫抱く仄かにあたたかな無臭芍薬

  • 猫の子や幽き月の傷に似てじゃすみん

  • 猫の子を抱く子が猫の目をしてる沙那夏

  • 猫の子の爪とぎ怖い向う脛じゃむぱん泉

  • 猫の子をほぐしてひとつ貰ひけり砂楽梨

  • パッカー車過ぎて猫の子わらわらと洒落神戸

  • 猫の子を追ひし子を追ひ日暮かなしゅういずみ

  • 初めての鏡を凝視する子猫寿松

  • 乳を吸ふ子猫の上を行く子猫シュリ

  • 四五枚の体操服に寝る仔猫じょいふるとしちゃん

  • 猫の子はふわふわ嘘の詩はきれい常幸龍BCAD

  • がぶとくびねっこ猫の子借りた猫正念亭若知古

  • 読経終えし僧の鞄へゆく子猫白プロキオン

  • 猫の子や父を知らぬといふ螺旋白よだか

  • 泣きやまぬ猫の子吾の子幼稚園新開ちえ

  • 古ソファー猫の子波の調べ聴く神宮寺チェルシー

  • まだ家の隅に戸惑ふ仔猫かなしんぷる

  • 猫の子を順に選る音もなく雨深幽

  • 子猫拾ふ後から二匹付いてくる酔芙蓉

  • その嘘は子猫三回分の罪水蜜桃

  • 猫の子や骨たよりなくあたたかくすいよう

  • 丹田の無垢や仔猫へ風流るすがりとおる

  • おざなりに振らるる尾みる仔猫かな杉本果ら

  • 猫の仔を拒みし夕べ吾子遅し鈴木由紀子

  • 猫の子を抱いてホストの朝帰り鈴木麗門

  • やはらかな猫の子焼跡の蒼しすずさん

  • おぼろげな子猫を君の手のひらへ主藤充子

  • 猫の子の鍵束ほどの重さなりすりいぴい

  • 言ひ合ひに子猫を抱かせ終はらしむ醒子

  • 猫の子と遊ぶ失職して三日背馬

  • 猫の子につしまのやまのかみのなを世良日守

  • 猫の子の甘噛み夫の朝帰り千波佳山

  • 猫の子や産まれてすぐに崖っぷち惣兵衛

  • 母猫を知らぬ子猫の鋭き眼そうま純香

  • 猫の仔の木には登ってみたもののそうり

  • 猫の子よもしかしてあの猫の子か素空

  • 肉球のまだ湯気の立つ子猫かなそまり

  • こはもての棟梁抱へたる子猫染井つぐみ

  • 猫の子や空を切る足かゆい耳染野まさこ

  • 白地図に見知らぬ五島子猫鳴く空野兎

  • 毛糸は朱絡めとられた子猫は白空豆魚

  • 歩くたび世界のかたち知る子猫ぞんぬ

  • メモ帳を埋める仔猫の名の候補太閤検地郎

  • 足先に猫の子もてあそぶ日暮れ橙と紫

  • 猫の子へ母の三度目のおはよう高尾里甫

  • 猫の子の一匹足らぬポスト下高橋寅次

  • まだ人のかたちに慣れぬ子猫かな高橋なつ

  • 孕猫影絵あそびをとほりけり滝川橋

  • 馥郁たる乳の香りの猫の子よ多木紫蝶

  • 二匹目の野良猫の子の名をつける瀧本敦子

  • 手のひらの心音ととと猫の子よ卓女

  • 猫の子をむつと男が持ち去りぬ竹内一二

  • 猫の子であること忘れたる走り武田歩

  • 猫の子を覗いて子らは学校へ竹田むべ

  • 親猫の待つ石壁の高きこと竹八郎

  • 我ながら気に入る猫の子の名前たけろー

  • 新宿のかくも静かか捨仔猫多事

  • 日に日にとくはへ子猫の重たさよたすく

  • 猫の子のおほかた箱に捨ておかれ糺ノ森柊

  • 猫の子のかたまりふたつ陽の射して唯飛唯游

  • 猫の子のまろび首上ぐ星明り橘春容

  • かわいさの指標の子猫百グラムダック

  • 頑な吾子猫の子の爪痛し立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部

  • 微睡の吾を猫の子の迂回せり田面類

  • あふむけにはたかるる親猫の顎田中木江

  • 仔猫抱く轢かれし親の事言わず谷町百合乃

  • 乳首六つ猫の子七つ実るよう谷本真理子

  • 五線譜に最初の音符猫の子とタマゴもたっぷりハムサンド

  • 舶来の猫の子抱いて夏目坂たま走哉

  • 子猫とは迷子にならぬ猫である玉庭マサアキ

  • 猫の子の出しっぱなしの爪やわらか玉響雷子

  • 黒猫の子と云ふ割に魔術へた田村利平

  • 首傾ぐ鏡の前の子猫かなダメ夫

  • みづあめの如く摘める小猫かな丹波らる

  • 家無しと猫の子雨の停留所千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部

  • 求婚のベンチ猫の子じゃれついて千代 之人

  • 猫の子に貸すひざのしびれぞ甘き澄心静慮

  • まだ地球知らぬ猫の子うんちする蝶番

  • 猫の子や閉店中の直売所月石幸

  • 猫の子と捨てられた鍵盤の音月岡方円

  • 花びらのやうに子猫の肉球は月影の桃

  • 軒つたう雨猫の子の目を開く月硝子

  • 猫の子の丸む縞の尾ドレミファソつきのひと

  • 首傾ぐ猫の子の居る佳き日かな辻内美枝子

  • 猫の子やペルシャの空の蒼すでに辻野 花

  • つかまえし猫の子の息生臭し土田耕平

  • 猫の子を抱けるチカラがあればいい土屋ひこぼし

  • てのひらをこぼれて猫の子の余熱ツナ好

  • 猫の子の雲踏むやうに眠りをり露草うづら

  • 猫の子と思しき声に遠回り露口全速

  • 猫の子や馬屋は梁まで肥臭いツユマメ@いつき組広ブロ俳句部

  • 猫の子は一塊にスラム街ツユマメ末っ子10歳@いつき組広ブロ俳句部

  • 猫の子の影追ひ影に追はれ追ふテツコ

  • 猫の子の前後不覚という形寺尾当卯

  • 猫の子のゐてクッションにしわなくてでんじゃらすババア

  • 猫の子の背骨はおもちゃの櫛のごとてんてこ麻衣

  • 境内に高田さん待つ猫の子らでんでん琴女

  • 猫の子の尻尾からめるとき寂し天陽ゆう

  • 三毛ひっそり子猫残らずもらわれてどいつ薔芭

  • 猫の子の鳴いて短き祈りかなdoいつもcoいつも

  • ひと月の仔猫ちりぢりちりぬるを

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  • 陽だまりにばあばじいじと猫の子と横田信一

  • 猫の子の目の開く頃は寮住まいよこやままさよし

  • 猫の子や飼ってやるから福招け吉哉郎

  • 猫の子やミルク掬いし舌の性よし季

  • 猫の子や闇夜が割れる一声によしぎわへい

  • 銭湯の帰りに猫の子の慈顔れむ

  • 猫の子や猫の日挙式はや五年四葉の苦労婆

  • 瞳孔に人たらし立つ猫の子やラタタタム

  • 猫の子や飽きずに尾で遊びけり鈴音

  • 猫の子やこの子の父はいずこかな若林鄙げし

  • 鈴の音窓を開ければ猫の親わきのっぽ

  • 床下に猫の子の声聞く深夜海神瑠珂

  • 猫の子や耳まで裂ける大あくびわたなべすずしろ

  • 猫の子や子のまま猫の子のままで渡邉竹庵

  • 猫の子の肉球の下にはカマキリ渡辺ヤスコ

  • 猫の子や家族見つかる譲渡会渡辺陽子

  • 猫の子の穢れなきパンチ空振り渡邉わかな

  • 草むらや猫の子眠るゆりかごか和の光子

  • 猫の仔にお手玉遊び切りもなし吾亦紅

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

◆お願い
●俳号には苗字を!

○俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて、姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。よろしくご協力ください。


●俳句の正しい表記とは?

  • この子どこ 誰の子どもか 猫の子かうちゅ。
  • 猫の子が・ミルクの匂い・母の傍奥原邦敏
  • 猫の子も うまれた時から 別の道
  • 猫の子は ペルセデゥスの 金貨なりギザギザ仮面
  • 猫の子の 明け方の声 朝日呼ぶ研さん
  • 親猫も 子猫逃走 タフマンよ西垣まゆみ
  • 寂しがり 子猫を抱いて 夢語る芽森

○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●前回の兼題

  • 福寿草包む両手の陽射しかなず☆我夢@木ノ芽

○季語「福寿草」は、前回の兼題。(全部で10句ありました。)〆切時間に遅れてしまったか……。


●文字化け

  • 猫の子のごと?まり立ちの決めポーズ幸内悦夫

○ネット投句の宿命というべき、文字化け。残念……。


●一句一季語から練習

  • てのひらにのる猫の子や春炬燵桐野鈴子
  • 猫の子と一緒にうとうと日向ぼっこ関根和子
  • 猫の子も春を迎えて独り立ち高橋紀代子
  • 親猫の 手を借り足借り 除雪かな忠臣蔵市之助
  • こねこどもこたつじんどりにゃんまり旭川主婦みこりん
  • 首都降雪報猫の子は台所山田一予
  • 病院の庭で猫の子春日向裕子

○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。


●季重なりながら……

  • 子猫飼う目標決めし新入社員遠藤波留
  • 待春やまだ蒲公英も猫の子も柘植雅一

○むしろ新社員の句、むしろ待春の句というべき二句です。


●兼題とは

  • マイナス10水抜き必須かな小嶋優子
  • 野を歩く 春田撫づ風 肌寒し駒さん
  • 春野菜箱いっぱいの親の愛新米ママ
  • 芽吹く枝 寂しさ乗り越え 春まぢかタカシ
  • 値段より 顔より何より 愛嬌や誰がバカボンなのだ~
  • 鬼は外今年は思わずコロナ外でえくのぼお
  • 姉嫁ぐ遠く野焼の香の辛し弁女

○今回の兼題は「猫の子」です。兼題を詠み込むのが、本サイトのたった一つのルールです。

  • 若草の中を行進四兄弟伊東美樹
  • 掌で必死に生きてにゃーと泣き笠江茂子
  • 庭先につぶらな瞳見かけぬ仔服部たんぽぽ
  • 頸咥え茶トラを運ぶ三毛の母森下薫

○これらは、猫の子のことを念頭に作られた句だろうと推測はできるのですが、季語「猫の子」という言葉が入っていません。

  • 安産と 娘と猫を 祈る日々あんず
  • 恋敵猫の世界も春ならば池谷勝利
  • 悶々と丑三つ時に猫の声いた津
  • お隣のボス猫またまた腹ふくる市場さと枝
  • 猫にゃぁーと鳴けば姿も愛くるし大島すみ子
  • 猫の手を借りて整うマイルームお寺なでしこ
  • アロマ連れ隣の猫の証拠かな果音
  • 吾はラビアメショーブラックスモーキー辻由美
  • 我が猫は子は成さん日向であくび灯火
  • 御作法を仔らに教える猫の手や成瀬悠
  • 花の幹見て黒猫の目と合ひぬ西村鈴代
  • 猫五匹 シングルマザー 育ており村上照葉
  • 迷い猫拾い育てし家猫に蓮風

○「猫」という言葉は入っていますが、季語はあくまでも「猫の子」なのです。

  • 恋猫を怒鳴りし吾の声を恥じ河上輝久
  • 肉球の汚れを隠す猫の恋吉田わさび

○「恋猫」「猫の恋」は、独立した別の季語です。


●これは季語ではない……

  • 猫の子の剥製撫でる神父かな蒼天

○猫の子の剥製って……生きてないのですから、季語とは認められません。


●喩えとしての「猫の子」

  • 猫の子と戯れるごと花の舞立野音思
  • 猫の子のごとく吾の名を呼びし子ら玉木雅代
  • スキップの目力猫の子のごとく哲山(山田哲也)
  • 昼下がり猫の子のごと膝まくら
  • 猫の子のやうなわが家の三兄弟野田鮎子
  • 猫の子のやうな五黄の寅も居て瑞季ゆうな
  • 猫の子のぬくみにも似た午後の部屋麦畠案山子

○言いたいことも、お気持ちもよく分かるのですが、季語を比喩に使うと、季語としての鮮度が落ちます。

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9月の兼題

「石榴」

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