夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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10月の兼題

「秋の暮」

12月の審査結果発表

兼題「河豚」

 大変お待たせしました!12月「河豚」の結果発表でございます。
【河豚=超高級魚】のイメージ一択だった私は「外道の魚」として冷遇されたり鳴き声を上げたりする、河豚の別の顔をみなさまの句のおかげで(恥ずかしながら)知ることができました。子供のころお父様と毎日のように伝馬船を漕いで鯛釣りに行かれていたという海育ちの夏井先生。釣り人の心境にもさすがにお詳しいですね。
 ぜひアドバイスを参考に復習なさってみてください。2月の兼題「霞」へのご応募もお待ちしております。

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
河豚ぎゅいと鳴く貧民に余生なし

桃園ユキチ

 季語「河豚」は、種類によって随分とイメージが変わります。専門店で饗されるトラフグは高価で高級な食材。かたや、ハリセンボンの類いは、河豚提灯として吊るされるユーモラスな姿が印象的。ハコフグあたりになると、釣りを邪魔する外道という認識もあり、各々の傍題によって本意そのものが大きく変わります。
 掲出句の巧みは、それらを包括して「貧民に余生なし」と言い切ったところです。食うところも少ない、食えもしない河豚は、釣り上げられて「ぎゅい」と鳴くばかり。釣り上げた人間の方も、また外道かと放り捨てます。「貧民」の我らには「余生」などという優雅な言葉はない。死ぬまで、生きることに必死であるよ。そんな切実な感慨が、「ぎゅい」と鳴く河豚に託された一句です。

地
河豚捨てゝまた同じ河豚釣りにけり

古賀

 小さな河豚たちは、あのおちょぼ口で餌だけをつついてしまう邪魔者です。「同じ河豚」をまた釣ってしまうのは、堤防釣りアルアル。下五の詠嘆「けり」には、釣り人の嘆息が入っているかのよう。

きゅると鳴き海へ蹴らるる膨れ河豚

蛙里

 これも、外道の河豚を釣り上げてしまった場面。「きゅる」というオノマトペ、思わず蹴ってしまう釣り人の行動にも真実味があります。下五「膨れ河豚」という着地が、映像的なリアリティとなって。

歌舞伎観て河豚嗜みてよき日かな

藤原涼

 こちらは豪勢な河豚。ちょっとお洒落をして、歌舞伎を楽しみ、帰りには「河豚」を食べる。中七「嗜みて」という言葉の選択が、下五「よき日かな」という詠嘆と響きあいます。羨ましき、佳き日です。

裸婦のごと河豚の白子の炙らるる

玉響雷子

「河豚の白子」の比喩としては意表を衝く一句。上五「裸婦」から入っていく意外性は勿論、あの質感は確かに裸婦の皮膚感かもと納得させられます。下五「炙らるる」の後の余白、いかにも酒が進みそうで。

河豚食うて太閤の御歳越えし哉

杉岡ライカ

「太閤」まで上りつめた豊臣秀吉は、六十二歳で死去。「御歳」を「おんとし」「おとし」どちらに読んでも字余りにはなりますが、河豚という贅沢を甘受する感慨に、同年代としてしみじみと共感致します。

人
  • 河豚喰ひに繰り出す雨の浪花かなRUSTY=HISOKA

  • こきざみに尾びれ拳のごとく河豚千夏乃ありあり

  • 大仰に肝見せつけて河豚捌く山月

  • 河豚食ふや世の音少しづつ止まり大和田美信

  • 小箱河豚ポンプの泡に漂わん花鳥風猫

  • 箱河豚の真に箱なる真正面川越羽流

  • 古伊万里はとうに売ったか河豚の来る坂まきか

  • 入れ食ひのあはれ草河豚地獄かな比々き

  • 河豚刺しや此より此方が我の分青井季節

  • ふぐ刺や喉を真珠の艶まろぶ青居舞

  • 浮遊せる河豚はパ行の貌をして青木りんどう

  • 三日後に地球滅びる夜の河豚蒼空蒼子

  • また小河豚返して父子の釣り終はる青田奈央

  • 前職はオペラ歌手てふ河豚の店青水桃々@いつき組俳句迷子の会

  • 河豚喰つて徒党を契る夢を見む赤尾てるぐ

  • 河豚、お笑い、君、毒まで美味いもの赤馬福助

  • 仮帰宅あばら骨なき河豚の汁あかり

  • 接待の酒注ぐつぐつぐ河豚づくし秋野しら露

  • 姥捨山月例会は河豚尽くし秋星子

  • 必死とは滑稽なれや河豚膨る朝雲列

  • 転勤の打診どうりで河豚の店朝霧さら

  • 河豚煮るやぽつりと告げる入院日朝月沙都子

  • 皿に載る河豚の切り身を割り算しあさぬま雅王

  • トラックの生簀を河豚の泳ぎおり朝日雫

  • 同期らにゆるぶ胸襟河豚の宿あじさい卓

  • てつちりや大阪弁に中りしか阿曽遊有

  • 砕いても通わぬこころ河豚に毒藍創千悠子

  • ふぐを引く刃に鏡面のまたたきよ足立智美

  • 河豚膨る自衛の核という空虚あたなごっち

  • 河豚の身を手繰りて歪む伊万里の絵アツシ

  • ぼんくらのやうなつらしてやがるふぐat花結い

  • 透け透けの世辞を肴に河豚つつく諧真無子

  • 河豚食わせ根はいい人の話する阿部八富利

  • 奥歯から河豚の余韻や電車待つあまぐり

  • やり場なき心破裂しさうな河豚あまぶー

  • 捕はれて河豚きりきりと日を噛めり綾竹あんどれ

  • ぺらぺらに二次元にされ喰われふぐ在在空空

  • 金杯は当たらず河豚に当たるなどあみま

  • 河豚刺しに透ける絵皿の寿老人雨霧彦@木ノ芽

  • 河豚茶漬海峡凪ぎて貨物船石塚彩楓

  • 辞表出し馴染みの店で河豚喰らう石の上にもケロリン

  • 潮騒の風の岬やふぐの宿さいたま水夢

  • 捨て河豚のなほ動きをる鰭と口アロイジオ

  • 河豚食うて腹に据えたる隠し事アンサトウ

  • 河豚の鍋囲み各々妻を恋ふ飯沼深生

  • 説教の長かりしあと河豚喰らふ杏っ子

  • 古伊万里の透けぬ河豚刺し箸重し飯村祐知子

  • 河豚膨るパ行の口を忙しなくいかちゃん

  • 虎河豚や捌かれてなお動きをり郁松松ちゃん

  • 河豚刺を敷詰め家元が来ない池内ときこ

  • 有馬記念あたらぬあたる河豚を食ぶ池之端モルト

  • 河豚摘む箸の隙間の同期生池ノ村路

  • 甘し甘し性格悪さうだつた河豚イサク

  • 止めたつてやさぐれが好き河豚旨い伊沢華純

  • 日本酒が先か河豚刺しのが先か石川巴里

  • 銀輪の旅や男鹿路のふぐと汁石塚碧葉

  • 河豚食ったあの水槽の河豚食った石本美津

  • 俎板の河豚はキュインと泣きにけり泉晶子

  • 生命の値段世界の値段河豚を喰ふ磯野昭仁

  • 河豚食うてふぐりの位置の定まりぬ石上あまね

  • 河豚喰うて山の漢のよく笑いいその松茸

  • 河豚の身や青磁の青を吸うがごと一井かおり

  • 虎河豚やあの目の姉に近づくな無花果邪無

  • 河豚食いに花街の先へ二人組樹魔瑠

  • 河豚喰うかフェラーリ買うかどうするか伊都

  • ご贔屓の役者の噂ふぐと汁伊藤亜美子

  • ときどきは我儘を言へふぐを食へ伊藤映雪

  • あちら鶴こちらは牡丹皿の河豚伊藤恵美

  • 永らへて永らへて河豚たべてゐる伊藤順女

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  • 河豚泳ぐ夢透けている皿のなか糸川ラッコ

  • 河豚刺やほんまこの子はよう喋る稲畑とりこ

  • 河豚の皿うまし布袋の腹のとこ居並小

  • きかん子に育ててしまひ河豚の皮犬山裕之

  • 河豚の子や性善説の小さき球井納蒼求

  • 河豚運ぶ傷つけぬまま生きたまま井原昇

  • 河豚刺や酒は一合あれば好しいまいやすのり

  • 芳一の耳のそれから河豚の鍋妹のりこ

  • 周坊の海の男の河豚さばき岩佐りこ

  • 河豚提灯ネオンの浪の浮き沈み岩清水彩香

  • ふぐの眼の窪めるほどにふくらみぬ磐田小

  • 缶蹴りが嫌いだったの河豚提灯植木彩由

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  • 美味なるも箸に儚きてつさかなさかい癒香

  • 河豚さしや花の都はもう正午さかえ八八六

  • 教職を去ることを聞く河豚を釣る坂野ひでこ

  • 羽二重の如き河豚刺しかみしめて坂本千代子

  • うたかたをこぼして河豚の硬くなるさくさく作物

  • ふぐ刺しを絡め流線描く箸佐々木佳芳

  • 河豚煮るやオペラの主役射止めたりさざなみ葉

  • 河豚の鰭焦げむばかりに返さるるさち今宵

  • 河豚鍋や身寄り協議の墓仕舞佐藤恒治

  • 河豚食ふや幸せさうにこぼす愚痴佐藤茂之

  • まな板の河豚ことごとく虚ろなり佐藤志祐

  • 揚がり来て怒りの河豚の軋めく歯佐藤儒艮

  • 河豚喰うて余人の生前贈与聞くさとう昌石

  • 河豚群れて夜の生簀は帯電す佐藤レアレア

  • 河豚白し妻子を置いて転職す里こごみ

  • 死にたさの鈍りて友と食らふ河豚さとマル

  • 河豚食うて人に優しくなれる夜紗羅ささら

  • 河豚を食う最上階の夜景かな紗藍愛

  • 虎河豚の値踏み力士を見るやうにさるぼぼ@チーム天地夢遥

  • 私を嫌ふ私が嫌ひ河豚つつく沢井如伽

  • 恋文をいつ破ろうか針千本沢胡桃

  • 河豚喰らひ厄落としした気で日の出さわだ佳芳

  • 捌かるる河豚へ滂沱のみづざんざん三月兎

  • 迂闊かな河豚を捌けば指へ傷珊瑚霧

  • 湯気纏ふ河豚のほろんと箸の上三尺玉子

  • たのんますと金の所望や河豚の席三水低オサム

  • 河豚鍋のお礼代筆社長秘書紫檀豆蔵

  • 河豚囲み儲け話と損自慢じつみのかた

  • 占いは大凶夜は河豚料理信濃のあっくん

  • 口説かれるつもりの座敷河豚さし来篠原雨子

  • 目にも毒あると指南の河豚捌き篠雪

  • ひかり食ぶごとく河豚刺すきとほる渋谷晶

  • お参りは水掛不動その後河豚島田あんず

  • 河豚食うて街のネオンの強ばりぬ清水祥月

  • 跨ぐ足捕らへ灯すや河豚提灯清水明美

  • てうちかな河豚でもたべにいきませう清水縞午

  • 函館は豊漁河豚は二百円霜月詩扇

  • ふぐ漁の打ち上げ飯はセリのあと霜月ふう

  • 堤防に臭いを放つ河豚の山下野海

  • 知らずして道を外るる河豚乾く洒洒落落

  • 月のよな箱河豚福は手に余るじゃすみん

  • 河豚刺しの薄さしみじみ一人酒沙那夏

  • 河豚刺しをさらはれさらされる伊万里十月小萩

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  • 食えぬ女で結構河豚は自腹シュリ

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  • 半径の三乗に河豚膨れたり不知飛鳥

  • 紙鍋の襞の光や河豚を待つ白玉みぞれ

  • 臨月の嫁はふはふと河豚を食ふ白猫のあくび

  • 河豚毒は人魚ミイラの旨味らし白プロキオン

  • ちらほらと美濃派の混じる卓へ河豚白よだか

  • ひとひらに透かす光明義母へ河豚神宮寺るい

  • 河豚鍋や知盛担ぐ大碇ジン・ケンジ

  • 月孕む波際の河豚ざらりふむ新城典午

  • 干河豚はあぶられ美しき格子柄杉本果ら

  • 生け船の河豚群青の星睨み涼風亜湖

  • 河豚のはらわたはちきれる夜が来る鈴木隆史

  • 河豚の眼や玻璃の向うの誘導灯鈴木由紀子

  • 歯軋りの河豚や水槽煌々と鈴白菜実

  • 仰向けの河豚の腹裂き詰める味噌清白真冬

  • あぶく銭通天閣の河豚喰らふ鈴野蒼爽

  • 終活をおえたと叔父が河豚を食ふ鈴野冬遊

  • 舌打ちは外道の河豚を又釣りて青児

  • 小上がりで河豚海鳴りは遠くよりせいしゅう

  • いっぱいの寂しさ熟れた河豚の腹瀬紀

  • 板前のきつと生真面目河豚薄しせとみのこ

  • 慰謝料を話し終えたる河豚の鍋惣兵衛

  • ふぐ提灯星くづあまた食べたとふそうま純香

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  • 帰帆せり怒れる河豚を両の手につちや郷里

  • 此岸には河豚を食ふまでをりました津々うらら

  • 河豚提灯百味箪笥を明るうす綱川羽音

  • 瞼とは祈りのとばり河豚ゆらぐツナ好

  • 海吸つて吐き出し河豚が鳴門生む坪田恭一

  • 網底を藻掻くまだ毒なき子河豚坪山紘士

  • 河豚づくし親父はうんと言つたきり丁鼻トゥエルブ

  • 空には一等星吾は河豚を食ふ哲庵

  • 河豚炙り飛切燗の夜這いかな哲山(山田哲也)

  • 取組後の力士の如き河豚の息でんでん琴女

  • 皿ばかり褒め河豚さしのうすっぺら天陽ゆう女性

  • 河豚鍋や嫌いな上司一人あり土井あくび

  • 河豚食ふと出掛け八年過ぎにけりとき坊

  • 今生の別れの如く河豚を噛むときめき人

  • 箱河豚の一辺光る浅瀬かな常磐はぜ

  • 河豚でも行こう約束の先は空徳庵

  • 河豚刺しや正座の痺れおさへつつ戸口のふつこ

  • ふぐねぎを揃えて巻けば河豚に透けどこにでもいる田中

  • 味の輪郭なる藻塩河豚をくふとしなり

  • 河豚食べた夜はしんみり手紙書く土手かぼちゃん

  • てつさでも喰はしてみつかあと二票戸部紅屑

  • 虎河豚の人間を競る面構え苫野とまや

  • 河豚刺の醤油買ひけり浜の風斗三木童

  • 河豚食うて背の冷たきを埋め合わす登盛満

  • 口中を転がし河豚の息を吐く富山の露玉

  • 河豚の肝食わせるとか云ふ地下の店豚々舎休庵

  • 板長の包丁や河豚鳴くを聞くとんぼ

  • 悪口の止まぬ女やふぐと汁内藤羊皐

  • 河豚喰ふや角の丸みの下足札内藤由子

  • 河豚の身に留まる海の昏さかななかかよ

  • 水槽の河豚に見らるる濁世かな中岡秀次

  • 河豚の鰭酒にどすんと酔ひてをり中島走吟

  • 虎河豚のぎぎと哭きゐる糶の鐘中原柊ニ

  • 学校に来ないあいつと釣った河豚中村すじこ

  • 怖いのは今のその口河豚喰らう中山由

  • 死にたくて河豚をたらふく盛りにけり梨山碧

  • 河豚鍋の出汁の極めの溶き玉子那須のお漬物

  • 握る手のじっとり河豚の袋糶夏草はむ

  • 掴まれて河豚は寄り目となりにけり夏椿咲く

  • 河豚鍋の湯気やさしくてつい本音七瀬ゆきこ

  • ふぐ刺しは吉祥天の透け衣七森わらび

  • おほらかな国の旅人食らふ河豚菜々乃あや

  • ぎゆこと啼く河豚かなしみの海を吸ふナノコタス

  • 河豚鍋や芝居を回す汚れ役名計宗幸

  • 五合の水吐いて河豚絶命す奈良素数

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  • 河豚にしよう鶴の一声教頭様火車キッチンカー

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  • 言ひたきを溜めて生簀の河豚も吾も日向こるり

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  • ふぐ刺しや咲く白菊のごとくあり平井千恵子

  • 青い目の嫁の披露や河豚の膳平井由里子

  • 元カレの妻が馳走す河豚料理平岡花泉

  • 験担ぎ玄界灘の河豚を喰ふ平林政子

  • 河豚刺しの透く大皿の模様かな比良山

  • 河豚料理回転寿司で換算す平山仄海

  • 掛軸や箸置きまでも河豚の宿フージー

  • 噛み浸むや箸震るる手の河豚の胆風泉

  • 河豚鍋やしめの雑炊抜きんでてFUFU

  • 同窓が今年も集う河豚の島風民

  • てつさ旨し河豚に逝く人有りければ福井桔梗

  • 中皿に六分盛りたる河豚の刺し福川敏機

  • 河豚身欠き転移浸潤せず寛解福田みやき

  • 燐寸でぽっ河豚のひれ酒とろとろり河豚ふく子

  • 河豚はえ縄船待つ朝鮮飴をほおばる子ウィステリア

  • 赤きぬりばしのやはらかきふぐ刺し藤井かすみそう

  • 河豚刺や箸のためらふ皿の花藤井眞おん

  • 河豚鍋とピリケン並ぶ通天閣藤丘ひな子

  • これだけは容赦なき母河豚料理藤川雅子

  • 花のごとふぐを白寿の祝膳ふじこ

  • ポン酢つけ舐める箸先いざ河豚へ伏見レッサーレッサー

  • 青い空の平和な日本河豚食べる藤本だいふく

  • 河豚透けて円卓の吾を素通りす二見歌蓮

  • 河豚や河豚借銭取りに差し出そか船橋こまこ

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  • 求愛のミステリーサークル河豚の作古庄萬里

  • ふぐ刺しをゾロリとすくう孫の箸古道具

  • 白花に大皿写る河豚刺身古谷芳明

  • 結果は要観察五十年の河豚豊後の李子

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  • ふぐ肝は豆腐の如し臼杵かな星善之

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  • 草河豚の天色目玉砂の上増山銀桜

  • 河豚喰らひ悪女めく夜の毒を吐く町田勢

  • 河豚鍋の交差する箸ぬくぬくと町屋の日々輝

  • 禍福とも湯気に包みて河豚の鍋松井酔呆

  • 福々し河豚提灯平和かな松井貴代

  • 釣り上げてふくを得たりと老二人松浦姫りんご

  • 百河豚の所縁の宿のふぐと汁松尾祇敲

  • 虎河豚に箸も付けずに大悪酒松尾老圃…

  • 古伊万里の華やかさ食ふ河豚を食ふ松風花純

  • 河豚刺しやぐるり一箸すくい上げ松坂コウ

  • 河豚よりも睡魔がまさる朝かな松沢ふじ

  • 接待の糸目を付けず河豚づくし松平武史

  • 河豚を食べ始めて愚痴の止まりたる松田慶一

  • 不器用な河豚はあばらを諦めてまっちゃこ良々

  • 恐れては先へ進まず河豚料理まつとしきかわ

  • 河豚食す明日は休みあさっても松本俊彦

  • 料亭前初河豚に孫にらめっこ松本直樹

  • 河豚捌く河豚の愛嬌河豚の毒松本裕子

  • 同期らと河豚を勤続十年目真宮マミ

  • この浦の最後の漁師ふぐの刺し毬雨水佳

  • てっさ盛る藍の大皿絞り染め真理庵

  • 河豚刺しを透かし眺めて口に入れまりい@木ノ芽

  • 小さき河豚干す漁師町風わたるまるにの子

  • 河豚喰ひや生き存へて河の郷三池のり子

  • 絵のようにぷっと膨れた河豚見たり三浦ゆりこ

  • てつさ皿花弁がさと掬ひけり神酒猫

  • 河豚刺しや祭り上げてる人がいる三茶F

  • 河豚十貫次は河豚鍋しめ河豚汁水越千里

  • 大皿にいっちょ残しの河豚刺身MR.KIKYO

  • 外は白鍋はしゅんしゅん河豚食す水谷未佳

  • 若狭河豚久谷の朱透けいきいきと巳智みちる

  • 河豚コース終はる頃みな河豚の貌満生あをね

  • 膨らみて怒れる河豚よ可愛し哀し光月野うさぎ

  • 大将の眼光河豚のぎりぎりへ満る

  • 無害だが食えない奴とつつく河豚ミテイナリコ

  • 初体験恐る恐るや河豚料理湊かずゆき

  • 舌に吸い付くごと河豚の刺身かな源早苗

  • 過呼吸やはくはくあえぐ河豚の口美村羽奏

  • 姪の披露宴ふぐ刺しを噛み締め見屋桜花

  • わぁきれい子の手をたたく河豚の刺身みやかわけい子

  • 河豚の腹滑る甲板青海波宮川令

  • 釣り船で河豚を釣ったと胸張る子深山柚仁

  • 悪びとも河豚喰らう今日は天赦日宮村寿摩子

  • 河豚雑炊あと何回の福あるや宮村土々

  • 河豚の身に毒は回らぬ不思議かな三輪白米

  • 節くれの手でさばく河豚孔雀盛りむねあかどり

  • 鶴となり皿の絵透かし河豚は舞う村上の百合女

  • 南風泊賑やか河豚の仏頂面紫小寿々

  • 口閉じぬ愚行みつめる河豚提灯村先ときの介

  • 鍋沸きぬ藍の文様透けて河豚むらのたんぽぽ

  • 河豚競りや「どうか、ええか」のしゃがれ声暝想華

  • 大皿にかくも薄きな河豚の鶴恵のママ

  • 配送の青年の声暮れの河豚目黒智子

  • 吸い殻で釣れる河豚の子釣る子供めでかや

  • 河豚鍋を頂く順序歳の順モコ

  • その口に突っ込みたくてふぐの毒望月朔

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  • 子らはふぐをありがたがらぬ鍋の中山口愛

  • 河豚食ひて夜の街へと色男山崎かよ

  • ふぐ鍋や夕餉に急ぐ脈はやし山崎鈴子

  • 皿の絵見事透けて見える河豚見事山育ち

  • 河豚刺しや絵皿を透かす深き味山田季聴

  • 目の前の河豚鍋かっ込み明日は明日山田啓子

  • 大皿の河豚刺しに笑み丸くなり山田翔子

  • 河豚刺しや赤い帽子を被りつつやまだ童子

  • 河豚鍋を囲む子大人になりにけり山田はつみ

  • 恨まずに生きていきたい河豚を削ぐ山田蚯蚓

  • ふぐ料理食べたくもありたくもなし山田文妙

  • 還暦やここまでくれば河豚三昧大和杜

  • 河豚刺しのお皿が一つカラになる山野花子

  • 河豚の鰭張り付け干すや法善寺山本八

  • 関門海峡を越えし河豚は福になる雪兎

  • 河豚刺身神妙になり妻として雪子

  • ふぐ飯で締めてお開き別れけり柚木みゆき

  • 皮はもう無し河豚刺透けるだけゆすらご

  • 河豚刺しの透ける皿絵の青き山柚木啓

  • 自慢はねウチのふるさと河豚の町夢一成

  • 河豚刺や掬い取るなり皿の海夢散人(光散人)

  • 河豚食んで怒り納める肚の内緩木あんず

  • 親潮や釣る爲だけに釣らる河豚陽花天

  • 河豚刺しのひとひら惜しむ色絵皿陽光樹

  • 箱河豚のまん丸なるや地曳き網よかひよい

  • 施設の母「河豚行きたい」と幾年か夜香

  • 河豚刺しや伊万里の皿に魅入る朱横須賀うらが

  • 四万円の河豚水すらないガザ横田信一

  • 平らげて呻るてっさの絵柄かな横浜J子

  • 皿の柄透けて鮮やか河豚の刺し横山道男

  • この湖に河豚泳ぐとて驚きぬよしぎわへい

  • 接待の河豚の想ひ出半世紀吉崎寛

  • 河豚まろき写真の父と飲む酒や吉田蝸牛

  • 河豚喰へば呉須鮮やかに出にけり吉武茂る

  • 河豚刺しの薄さ戸惑う箸のあり吉田春代

  • 河豚ちりや鍋の底まで堪能す吉富孝則

  • 板長の情移るなり河豚の顔吉藤愛里子

  • フクと云ふ河豚を喰らへば倍美味しYoshimin空

  • 渦潮の生け簀虎河豚三年目四葉の苦労婆

  • 毒舌の毒に中りし河豚の鍋余田酒梨

  • 河豚突く仄とプワゾン箸の落つらん丸

  • 河豚なるぞ鍋はひそかに三人で六星菴

  • パンパンの腹息絶え絶えの河豚リコピン

  • 初孫や酒酌み交わす花のふぐ鈴玲

  • 河豚の鍋声が膨らむワンルーム麗詩

  • 河豚刺身透ける灯りの薄さかな連雀

  • 河豚刺に飛びつく猫を押し戻しわかなけん

  • これが河豚の味かと笑まふ余命三月若和志歩

  • 河豚食べて毒消しに呑む酒の量若林鄙げし

  • 隣家より差し入れのあり河豚刺しよ若宮直美

  • 大皿に河豚刺しの花つややかにわきのっぽ

  • 裏金の毒のタラフク肥ゆる河豚和光

  • わが合格祝いて叔父は河豚奢り海神瑠珂

  • 河豚の子の一丁前に膨れおりわたなべすずしろ

  • 食わねども暫し眼の合う河豚丸しわたなべいびぃ

  • 潮の香と店提灯の夜河豚の町渡邉久晃

  • いつもの座顔赤らめて河豚に酔ひ渡辺陽子

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
 俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。

※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。


●兼題無し

  • 年の瀬に部屋も心も大掃除平吉

 本サイトでは、「兼題」として季語を出題しています。次回の兼題を確認して、再挑戦して下さい。


●河豚と海豚を勘違い?

  • 禪くさき句の作者也海豚汁河上輝久
  • いるかには人の魂宿るのか日向大海

 兼題「河豚」と「海豚」を勘違いしたのかもしれません。河の豚と書けば「河豚(ふぐ)」、海の豚と書けば「海豚(いるか)」です。ちなみに、「海豚」も季語。季節はいつなのか、歳時記を調べてみましょう。


●残念ながら季節が違います

  • 心して沖へ沖へと菜種河豚千葉信子

「河豚」という言葉は入っていますが、「菜種河豚」は季節が違います。これもまた歳時記で調べてみましょう。歳時記から新しい知識を仕入れることができますよ。


●季語というには微妙

  • 河豚むすめふくれる頬に毒は無したじりまなぷ
  • 激怒して部長は河豚のような顔べべべけべべべ
  • 河豚のよな頬ふくらましそっぽ向き樅山楓
  • 絵手紙の河豚ぷっくりとおちょぼ口金子あや女
  • 絵手紙の河豚微笑まし友傘寿多胡蘆秋
  • 河豚と言うあだ名の教師その後知らず今井淑子
  • 好物は河豚と書く見合いの釣書小川野雪兎
  • ふた閉める間もなきタッパ河豚せんべい小山田之介 
  • 河豚免許取る免停のひと月目火炎幸彦
  • 通勤路ふぐ料亭の出汁香る亀子てん
  • 貝塚に見つけし河豚と人の骨坂本雪桃

 これらの句における「河豚」は、比喩や見立てであったり、絵や文字の「河豚」であったり。季語というには、微妙な使い方です。

  • ふぐ暖簾分け出で星座へ散会すさくら亜紀女

  • 「ふぐ鍋」の幟をかわしコンビニへ静江

  • せめてもの「ふぐの炊き込みご飯の素」石垣エリザ

  • 通学路ふぐ屋の前で立ち止まり 松野蘭

「暖簾」や「幟」、「ふぐ味の調味料」「ふぐ屋の前」は、季語というには微妙。他にも、季語の力が発揮されない使い方の句、多数ありました。


●季語の表記

 敢えて片仮名にしているのだとは思いますが、その意図が明確に読み取りにくい句もありました。

  • 水槽のフグ正装の客をとる伊予吟会 宵嵐

  • ハコフグやぶっきらぼうに針外すうめやえのきだけ

  • トラフグの群れみちのくへ来る不思議 峠南門

 敢えて片仮名にする意図がある場合は別ですが、季語は漢字・平仮名で書くのが定石。

  • 釣ってみりゃ四角いフグでおったまげいちばほうすい

  • 食べました味もわからずフグさしをコロンのママ

  • フグ食べて懐寒く無常かなたいたい

  • 渦潮に三年鍛えたフグ来たり中村こゆき

  • 顔と顔透けるトラフグ一掬いはるるん1号

  • ホシフグは弱毒らしい味見良しピコリス

  • まあるくまあるくフク来る地球青し美月舞桜

  • 薄衣をふたひらづつのフグの味 安池のんの

「ヒレ酒」も「鰭酒」と書くのが妥当でしょう。

  • 通ぶったふぐヒレ酒のさめる夜半熟かさぶた

  • お行きなせヒレ酒女将ふぐ料理ミツの会


●季重なり

  • 河豚鍋を独り占めする冬の夜霧土人

  • 熱燗やコップの底の河豚の鰭中村あつこ

  • ふぐなべや紅道しるべ花すすき松尾美郷

  • 年の瀬に河豚鍋囲み喜寿近し皆川徳翁

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「山茶花」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。


●表記

  • はて河豚と 福と読む土地 想い笑むしげ3

  • ふぐ刺しや 透けて聳える 富士の山田中恭司

  • 父の河豚 末っ子だけは 膝で待つ緋色

  • 河豚の顔 泥酔してる 旦那かな

  • かわのブタ 河豚と読めたら 味を知る村田真

  • 大晦日 河豚鍋まずは あなたから本橋理音

 一行に五七五の間を空けないのが俳句の基本的な表記です。まずは、ここから覚えて下さい。


●文字化け

  • 河豚かこむノンアル女子会?そめ稲葉こいち
  • 河豚の継ぐ父の?や下関徹光よし季

 ネット俳壇における文字化けは不可抗力。ただ、投句を繰り返しているうちに、文字化けしそうな文字を予測することはできるようになります。


●今回は、句意が掴みにくいものや、季語が季語としての力を発揮できてない句がかなりありました。

 投句する前に、客観的に自分の句をもう一度確認する習慣をつけましょう。そのためにも、〆切日ギリギリに句作するのではなく、早めに作っておいて、少し時間を置き、冷静な目で自句を吟味することをおススメします。

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10月の兼題

「秋の暮」

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