夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
10月の審査結果発表
兼題「秋の暮」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
秋の暮かへればうちにひとがゐる
可笑式
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夏井いつき先生より
そりゃ、家に帰れば誰かいるよと、この句をスルーする人もいるでしょう。が、この書き方には、穏やかな日常とは思えない、不穏な匂いがあります。誰もいないはずの家に、帰ってみれば、「ひと」がいる? 見知らぬ「ひと」が「うち」にいる? と想像させる何かがこの句にはあります。
俳句における表記も表現の一つだと考えますが、仮に「秋の暮帰れば家に人がいる」と比較してみると、この表記が恐怖スイッチとなっているのではないか、と。しかもこれを可能にしたのが、伝統的な奥行きをずっしりと持つ季語「秋の暮」の力。ひたひたと暮れていく「うち」にいる「ひと」を様々に想像していくと、ショートショートが幾つも書けそうな気がしてくる、怖い俳句です。
壁際に壁を向く椅子秋の暮
空豆魚
掃除をするついでに何気なくその向きに置かれただけなのかもしれません。が、人を拒絶するかのような向きに置かれた「椅子」に心がざわつきます。壁に映る椅子の陰影までもが見えてくるような「秋の暮」です。
秋の暮煤けた献花ある渋滞
玉家屋
道端に置かれた献花の句は折々に目にしますが、「煤けた」という描写は事故からの時間経過を思わせ、「~ある渋滞」と展開することで、作者の目線が車窓にあることも分かります。白い献花の残像が残る「秋の暮」です。
まだ墓とならざる石や秋の暮
佐藤志祐
墓石店に並んでいる石を思いました。当たり前のことではありますが、そこに戒名や墓碑銘が彫られるまでは、ただの「石」。まだ何物でも無い石群を、冷ややかに包んでいく「秋の暮」の一点景です。
秋の暮鳥みな絞るごとく吼え
千夏乃ありあり
カーカーと巣へ戻っていく鴉でしょうか。街路樹に群れ集う椋鳥かもしれません。「秋の暮」の寂しさに耐えかねて、鳥はみな、声を絞るかのように吼えているのだという把握に、生きるものたちの悲しみが滲みます。
秋の暮四本足のテレビの灯
ときめき人
昭和の東京オリンピックが開催された頃、一般家庭にカラーテレビが普及しました。「四本足のテレビ」は、まるで昭和の象徴のようにそこにあり、ぼんやりと点る「テレビの灯」は「秋の暮」の郷愁を誘います。
秋の暮ひよひよと鍼うたれゐるRUSTY=HISOKA
秋の暮こゑ上ぐるときこゑ掠れ高田祥聖
二階から漱石の呼ぶ秋の暮GONZA
秋の暮煙のやうな虚子の声亘航希
秋の暮きらいなしいたけいろのそら芦幸
秋の暮巻きたる傘のやうな花井納蒼求
発根のシャーレの湿り秋の暮白プロキオン
ジャングルジムが僕のなはばり秋の暮足立智美
秋の暮フェリーふ頭のふのやさしイサク
とうふ屋の「ふ」の音はやさし秋の暮だがし菓子
置き去りの声は消えない秋の暮いたまき芯
六畳に寝て起きて寝て秋の暮桜鯛みわ
踊り場に秋の暮が置き去りであるぞんぬ
電灯を死者は点さず秋の暮長谷川水素
にはとりがにはとりを追ひ秋の暮平本魚水
ありふれた感傷に効く秋の暮松岡倬伺
めそめそとのびゆく影や秋のくれ岬ぷるうと
捨つること自傷に似たり秋の暮桃園ユキチ
街も灯もグラスへ歪む秋の暮仁和田永
汗牛を抜かれし書架や秋の暮相生三楽
太陽の塔をすっぽり秋の暮愛燦燦
秋の暮街灯に寄り地図ひろぐ藍野絣
カーナビの終点は崖秋の暮逢来応來
どうしても秋の夕べに猫が要る青井えのこ
シャンプーの点字撫でをり秋の暮葵そら
秋の暮まっすぐ歩かない少年蒼井憧憬
麓より溜まりゆく闇秋の暮青井晴空
瘡蓋のきれいにとれて秋の暮青居舞
秋の暮明日も会ふけどさやうなら蒼空蒼子
自動ドアに挟まれて嗚呼、秋の暮青田奈央
秋の暮この家はカレー三日目か青砥転典
詰まりたる郵便受けや秋の暮蒼鳩薫
針穴の糸とおりゃんせ秋の暮あかねペン銀
をんなの名気づかぬ素振り秋の暮あが野みなも
色褪せてほころぶ幟秋の暮赤富士マニア
金持ちは詩集を捨てる秋の暮赤馬福助
寝返りの腓返りや秋の暮赤目作
杭打ちの音が止まって秋の暮あかり
一服の空の階調秋の暮れ赤尾実果
挨拶も握手も飽きて秋の暮明惟久里
秋の暮矮鶏の犇めく社務所前空地ヶ有
ヒバクシャは報はれたのか秋の暮あきちゃんはようせい
夢の書の落丁嵌る秋の暮秋野クレメンティア
秋の暮人の名前が出てこない秋野しら露
秋の暮取りに戻りし忘れもの秋星子
坂道の競馬帰りや秋の暮秋山らいさく
秋の暮影絵のような街の人芥茶古美
とうさんとふたりマージャン秋の暮淺井翠
住み古りしニュータウン掃く秋の暮朝雲列
約束の小指に余韻秋の暮加賀くちこ
秋の暮橋脚影と溶け合ひぬ明後日めぐみ
関西が恋しくなりぬ秋の暮麻場育子
秋の暮路地の奥からとおりやんせ葦屋蛙城
残渣積む中に青き実秋の暮飛鳥井薫
アレクサがジャスを選びし秋の暮れあすなろの邦
石ころを明日へ蹴って秋の暮藍創千悠子
秋の暮臥したる妻の靴洗ふあたしは斜楽
駆逐艦二艦沈メリ秋の暮あたなごっち
七輪の皮目がけぶる秋の暮れアツシ
秋の暮痩せたタオルを干す老爺at花結い
秋の暮出番二回目旅人A渥美こぶこ
塾なんか絶対嫌や秋の暮あねもねワンオ
秋の暮音楽室のロ短調我孫婆
秋の夕銀座につまむかっぱ巻き天風月日
筆文字の長き礼状秋の暮あまぐり
秋の暮なんだし猫になりたいしあまぶー
雨上がり手術立ち会ふ秋の暮天海楓
秋の暮義母の何度も聞く話アマリリスと夢
判定はBからCへ秋の暮あみま
顔彩の黄土減じて秋の暮アムゼルえりこ
候補者の襷も縒れて秋の暮雨乙女
湯治場の釜焚き飯や秋の暮れ雨霧彦(木ノ芽)
独り観るお笑いてれび秋の暮雨森茂喜
飴色に風きしむなり秋の暮綾竹あんどれ
親知らず抜きてぽっかり秋の暮綾竹ろびん
若き歩に追ひ抜かれをり秋の暮荒一葉
服処分した空間に秋の暮れあらいゆう
叩いても滑らぬ雨戸秋の暮あらかわすすむ
秋の暮そんな火星の独り言荒木響
立ち上がり遅きパソコン秋の暮蛙里
取り切れぬポリープひとつ秋の暮有村自懐
秋の暮ゴミ収集車も洗い終ふ在在空空
秋の暮じんわり傷む無き乳房淡湖千優
秋の暮「鬱」といふ字を分解すアンサトウ
つき減りし置き去りの杖秋の暮安春
銀貨二個珈琲に換え秋の暮飯田淳子
秋の暮半分ホントが嘘のコツ飯沼深生
肩つかむ母の握力秋の暮飯村祐知子
秋の暮解雇通知に封をせり家守らびすけ
草に寝て草を食ふカメ秋の暮いかちゃん
人は皆秋の暮なる空を持つ生野薫
バス停の硬き椅子あり秋の暮郁松松ちゃん
黒猫の金の目探す秋の暮池田悦子
道沿いの夕餉当てつつ秋の暮池田華族
骨上げし人ら散りゆく秋の暮池田桐人
酒二升さげて坂下る秋の暮池之端モルト
輪回しの子の影よぎる秋の暮伊沢華純
秋の暮妻と薬の数競う石井久次
秋夕をゆくハモニカの音はまっすぐ石垣エリザ
秋の暮物足りぬ子に園の鐘石川明
まだ慣れぬ新居の香り秋の暮石川巴里
鍵つ子の覗く駄菓子屋秋の暮石塚碧葉
雨の日は雨の音聞き秋の暮石塚彩楓
喪服まだ軒下にあり秋の暮石原しょう
石庭の波おだやかに秋の暮石原花野
けふ誰のためにも泣かず秋の暮石原由女
向かい合ひ無言の夕餉秋の暮石村香代子
秋の暮れ明ければ明日は米寿なり石本美津
空つぽの公園を猫秋の暮和泉攷
んで終わる絵文字しりとり秋の暮いずみ令香
秋の暮エコー検査のゼリー拭く遺跡納期
カーラジオたまにはショパン秋の暮磯野昭仁
秋のくれ芽切ばさみに塗るオイル板柿せっか
細道を互いに会釈秋の暮一井かおり
さよならのあとの寄り道秋の暮市川卯月
聖堂へ光集めて秋の暮市川りす
建売りの釘打つ速さ秋の暮いちご一会
乗り換ヘて乗り継ぐ電車秋の暮いちすぺ
秋の暮棺のひとの紅(べに)の色一ノ瀬なつめ
秋の暮妻が旅中の吹き溢し市原為参
景時の墓なる島の秋の暮いつかある日
刺繍糸緋色無くなる秋の暮一久恵
転がした石溝に落つ秋の暮五ツ葉@藻の霊
職員室の窓は明るし秋の暮伊藤亜美子
魚の目のくりぬかれたる秋の暮伊藤映雪
独り身の集ふ角打ち秋の暮伊藤恵美
葬儀所の隣の売り地秋の暮伊東海芋
欄干の擬宝珠にび色秋の暮伊藤順女
発つまでを生家のはなし秋の夕伊藤柚良
亡き友の漬けし酒尽く秋の暮伊藤小熊猫
月からは見えぬ紛争秋の暮糸川ラッコ
この電話鬼かもしれぬ秋の暮いとへん製作所
県境の仮設に灯り秋の暮伊ナイトあさか
秋の暮サインポールの立ちのぼる井中ひよこ号
吊り革を掴み損ねて秋の暮居並小
影踏みに歌はなかりき秋の暮井上鈴野
在日外国人選挙権なき秋の暮猪子石ニンニン
胸に置くムツクリ鳴らす秋の暮井原昇
秋の暮匂ひて乾くテレピン油妹のりこ
秋の暮有り金置いて消えてくれ伊予吟会宵嵐
褥には風の匂ひか秋の暮岩清水彩香
秋の暮ゆつくり抜ける風呂の水磐田小
臍の緒を捨てちまう母秋の暮岩森春宇
秋の暮軽いの選ぶ本と恋イワンモ
もの云はぬモノへ「ただいま」秋の暮植木彩由
秋の暮卆寿の皇妃健やけし植田かず子
夫と子は楽しそうです秋の暮うえともこ
山車小屋に清めて納む秋の暮上野徹
全力の転倒秋の暮痛し宇佐美好子
求人誌五分眺むる秋の暮うすい木蓮
地震あるが戦争はない秋の暮内本惠美子
秋の暮れポトフのウインナーに傷空木眠兎
秋の暮いつかの任地と同じ香のうつぎゆこ
黒猫を残し閉めたる秋の暮靫草子
出すゴミの半減ぐらい秋の暮宇野翔月
もうちょっとこの仔抱かせて秋の暮卯之町空
心音が生きたがつてゐる秋の暮海野青
減便のバス停ともる秋の暮うみのすな
引き算の暮らしはじめむ秋の暮梅里和代
秋の暮イエスとノーの境界線梅田三五
秋の暮守備練習の泥清しうめやえのきだけ
秋の暮瓦礫の街にひとりゐた浦城亮祐
影踏みの影なくなって秋の暮浦野紗知
秋の暮味覚戻らぬ夕餉かな麗し
新築の家よそよそし秋の暮江川月丸
秋の暮坂駆け足の古墳群江口朔太郎
わたくしが焼かれる光秋の暮蝦夷野ごうがしゃ
秋の暮悼むカーネルサンダース越冬こあら@QLD句会
秋の暮キーホルダーの重きこと絵十
秋の暮れ無神論者の夫とゐる笑姫天臼
たまゆらの薄日や雨後の秋の暮えらいぞ、はるかちゃん!
百塔の翳りプラハの秋の暮えりべり
秋の暮ほの青白き塾銀座円錐角膜
反り返る排除ベンチや秋の暮近江菫花
吾の名を母に教えし秋の暮おおい芙南
呆けたるカスタネットや秋の暮大岩摩利
彗星がつるつる沈む秋の暮大久保遊美
瑞垣や餓鬼のかしづく秋の暮大越マーガレット
秋の暮帰りそびれし靴ひとつ大嶋宏治
ポケットの飴握りしめ秋の暮大竹八重子
秋の暮あしたのジョーの背のあたり太田怒忘
看護師と休みが合わぬ秋の暮太田鵯
解体の頓挫したらし秋の暮大塚恵美子
テレカ吸う公衆電話秋の暮大津美
秋の暮ご当地キャラクターを脱ぐ大野美波
秋の暮雨に紛れるガス工事大原妃
床屋出て首筋触る秋の暮大原雪
秋の暮百葉箱に掛けた鍵大谷一鶴
秋の暮白き目玉の煮干裂く大矢香津
秋の暮また路線図の前に立ち大和田美信
いまだ見ぬ孵化の瞬間秋の暮岡井風紋
夫に髪結んでもらふ秋の暮岡井稀音
秋の暮あれが父との暇乞い岡邦俊
秋の暮れ机上に万葉語辞典小笠原保之
ほうじ茶がおいしくなった秋の暮岡田一竿
風の出てカランへ軍手秋の暮おかだ卯月
毎日のレシートあまた秋の暮岡田ひろ子
食卓のひとり笑ひや秋の暮岡田雅喜
とろろ汁擂るは夫なり秋の暮岡村恵子
由布岳に別れを告げる秋の暮オカメインコ
秋の暮曲がり角まで手を振りぬ岡山小鞠
秋の暮棺の蓋の角円し小川さゆみ
恐山の石の重さや秋の暮小川しめじ
玄関の土嚢そのまま秋の暮小川天鵲
文落つる音のかそけし秋の暮小川野雪兎
ゆきずりに頼まれて撮る秋の暮おきいふ
秋の暮とらえられし獣の聲沖庭乃剛也
秋の暮紙ストローは紙の味荻原湧
笑み歪む選挙ポスター秋の暮小倉あんこ
ただいまの声だけ返る秋の暮おこそとの
秋の暮遠き湖面に白骨林小田毬藻
捨つる物束ねて小さし秋の暮おだむべ
雲母のごとひかる肱川秋の暮越智空子
薬指リングの跡や秋の暮おでめ
二巻から読むドラえもん秋の暮音羽凜
ドリップの一滴まつや秋の暮おひい
身長の二センチ縮み秋の暮おぼろ月
半熟の卵の亀裂秋の暮海音寺ジョー
秋の暮何度も刺さる手縫い針海堂一花
秋の暮工事現場の警棒よ械冬弱虫
Y字路へ小さき躊躇ひ秋の暮海峯企鵝
秋の暮拾ふ隣家の不在票火炎幸彦
秋の暮しゃべる家電に返事する篝
秋の暮海の果てまで日を惜しむ影夢者
車座のサッカー少年秋の暮風花まゆみ
秋の暮養殖枡の消えた湾風早杏
靴紐に靴は従ひ秋の暮樫の木
お鈴の音風に流され秋の暮鹿嶌純子
我が耳に補聴器あらた秋の暮かじまとしこ
ささくれの僅かに沁みる秋の暮梶原菫
萎む野にいつものカラス秋の暮風かおる
秋の暮砂場にアンパンマンの型風薫子
川縁の鷺丸らかに秋の暮片岡一月
秋の暮台場に竈守る役目片岡六子
次々と貼り足す切手秋の暮加田紗智
除菌した手がひりひりと秋の暮蝸牛
自転車のギア1速に秋の暮かつたろー。
書庫にある優しい光秋の暮ひだまりえりか
秋の暮花屋の跡にまた花屋桂子涼子
秋の暮宝石箱を閉づが如桂佐ん吉
日焼け跡かすかに疼く秋の暮加藤水玉
病床の父の春歌や秋の暮かときち
風呂の栓過去も吸い込み秋の暮叶田屋
公団はカレーの匂ひ秋の暮仮名鶫
秋夕や自重に沈む落し蓋金子泰山
自転車の楕円に照らす秋の暮かねつき走流
寅さんがゐさうな待合秋の暮釜眞手打ち蕎麦
自転車の軋むチェーンや秋の暮紙谷杳子
めずらしき旅人来たり秋の暮亀井汀風
空ゆらすビルの解体秋の暮亀田かつおぶし
寝たきりの回復難し秋の暮亀田みのる
秋の暮鍋ぐずぐずと具沢山鴨の里
秋の暮谷戸の奥まで窓灯る加裕子
秒針のなき部屋秋の暮積もる河上摩子
泣くやうに日の崩れゆく秋の暮川越羽流
庭の鯉しずかに底へ秋の暮川崎ルル
三味線の糸巻きゆるむ秋の暮翡翠工房
紙ジャケの中古CD秋の暮川端芙弥
金太てふ店は何屋か秋の暮河村静葩
やもめなる身よ野宮は秋の暮川村ひろの
模擬店の売上数ふ秋の暮邯鄲
「主人公の気持ちを選べ」秋の暮干天の慈雨
ヘルパーと並ぶ母置き秋の暮神無月みと
廃業の書肆は灯らず秋の暮閑酉
唇に麻酔の余韻秋の暮喜祝音
この土地もランタン灯り秋の暮季紫子
ゴジラ岩と言われてみれば秋の暮岸来夢
一人食ふきつねどんべい秋の暮酒暮
貸本の犯人に〇秋の暮季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
秋の暮下手に動けば的になる北大路京介
粒ほどの石に躓く秋の暮喜多丘一路
工事場の怒声が響く秋の暮北川茜月
秋の暮吾子の目の根に艨北柴潤
活字から影伸びさうな秋の暮北藤詩旦
ドア横の弓袋すくと秋の暮北村崇雄
けふもまた人亡くなりぬ秋の暮貴田雄介
倒木に死に水の雨秋の暮ギックリ輪投げ
オーボエのリード浸すや秋の暮きつネつき俳句系Vtuber
遺言の下書始む秋の暮木寺仙游
秋の暮なんでもハラスメントになる着流きるお
小説に心置き去り秋の暮城内幸江
隣人に微かな訛秋の暮木下桃白
秋の暮Aマイナーで弾くギター木下美樹枝
家も木も街も影絵や秋の暮きべし
秋の暮墨の掠れのやうな枝木ぼこやしき
秋の暮老いて又弾くバッハかな木村かわせみ
大山は全山真朱秋の暮木村修芳
餃子屋の隅で君待つ秋の暮木村信哉
電線に手負いのからす秋の暮木村となえーる
秋の暮淡き記憶のやうな痣木村弘美
マネキンの解体さるる秋の暮Q&A
干し笊の縁の緩みや秋の暮久えむ茜咲
龍角散アルミ缶に閉ず秋の暮れきゅうもん@木の芽
秋の暮れ砂丘に立ちて長い息鳩礼
学舎の門出て八歩秋の暮京野秋水
東京が遠ざかる窓秋の暮杏乃みずな
径果てて風饐えてゆく秋の暮霧賀内蔵
秋の暮ラジオは志ん生の落語霧澄渡
吊革の痺れの残る秋の暮ギル
駐在はすでに私服や秋の暮菫久
爪切りの音の乾いて秋の暮銀長だぬき
秋の暮廃家の蔵の片喰紋句々奈
子牛売れ子のミルク買う秋の暮くさ
教室に影長くいる秋の暮鯨之
滑り台にのぼったままで秋の暮くすみ輝く
まち針の淡き秋暮のデイサービス草臥れ男
太陽の塔の背中や秋の暮國吉敦子
利き足の音高く立つ秋の暮熊谷温古
五回目の校閲に誤字秋の暮蜘蛛野澄香
瞬ける象のまつげや秋の暮クラウド坂の上
せんねん灸はは娘で据うる秋の暮倉岡富士子
畜牛の口数減りし秋の暮蔵豊政
靴のなかに足たつぷりと秋の暮眩む凡
秋の暮ぽかんと空の炊飯器栗田すずさん
金管のミュートふわふわ秋の暮久留里61
顔を見に回覧回す秋の暮黒田良@しろい
救急車しゅつどう待ってる秋の暮けい太四歳
秋の暮しづかに人を喰らふ辻恵勇
原付の風の流線秋の暮けーい〇
三人で運ぶガラス戸秋の暮げばげば
味噌蔵の石高々と秋の暮健央介
雲の底海へ降りてく秋の暮謙久
耳あなへ入る目ぐすり秋の暮剣橋こじ
コンビニで言葉を探す秋の暮れ小石蟻音
秋の暮馴染みの酒屋解体中恋瀬川三緒
秋の暮外野のいない草野球光宇
背凭れを戻し旅終ふ秋の暮剛海
秋の暮完治を三月待つ鎖骨幸田梓弓
秋の暮爪が伸びるの早すぎるこうだ知沙
秋の暮北魏の佛鼻欠けてごーくん
下手糞なシヨパン団地の秋の暮古賀
街並みはスーラの点描秋の暮古烏さや
妣の真珠艶失せにけり秋の暮こきん
焼きついたマフラー磨く秋の暮小笹いのり
文具屋の引出し薄し秋の暮木染湧水
南北に古都のありける秋の暮コダマヒデキ
標札の妻の字小さき秋の暮れ古知野朝子
面会の札を返して秋の暮虎堂吟雅
口内炎舌根にふたつ秋の暮後藤周平
空の巣を抱えて歩く秋の暮小鳥りこ
角膜は運ばれてゆき秋の暮このみ杏仁
秋の暮子らの「またね」は明日叶ふ小林のりこ
庭の木の悟ったやうな秋の暮こま爺
秋の暮美しき正座のロシア人駒村タクト
本に差す影移ろひて秋の暮小南子
四つだけ台詞もらへし秋の暮小山晃
古書市の半額セール秋の暮碁練者
六十にひんやり馴染む秋の暮れ今葉月
水牛の痩せた背中や秋の暮さいたま水夢
修行僧砂紋を描く秋の暮埼玉の巫女
秋の暮闇をどよもす街宣車齋藤桃杏
仮橋の狭き幅員秋の暮さおきち
秋の暮吉継陣へ歩道のみさ乙女龍チヨ
婚活は疾く振り出しや秋の暮酒井春棋
痩けし父の眼白し秋の暮榮紅
列島の裏も表も秋の暮さかえ八八六
秋の暮背に縦揺れの救急車坂まきか
叱られてハモニカふく子秋の暮櫻井こむぎ
無菌室11階の秋の暮櫻井りこ
オセローの一手に眩む秋の暮れ桜月夜
考の名を騙る電話や秋の暮さくら悠日
秋の暮まだ主を待つ革装本笹桐陽介
銭湯は遥かな記憶秋の暮さざれいし
鍵を手に表裏確かむ秋の暮佐藤恒治
鶴を折るやさしいかほや秋の暮佐藤茂之
運休に暫し騒然秋の暮佐藤俊
牛追いの聲ま直ぐなる秋の暮佐藤似貂
我が指紋認証されず秋の暮佐藤まり子
懐へ猫二、三匹秋の暮佐藤ゆま(歯科衛生子改め)
脊椎症手術日を待つ秋の暮れ佐藤佳子
秋の暮トロンボーンの金鈍し佐藤レアレア
友の死のグループライン秋の暮里こごみ
偽物の鞄をえらぶ秋の暮錆田水遊
救急車うなる近さや秋の暮さふじわよ
躓きし石ははて何処秋の暮さぶり
秋の暮いちばんやさしい楽譜かふさむしん
逢ひ見てののちの抗ひ秋の暮紗羅ささら
字余りのやうに釣銭秋の暮さるぼぼ17
すれ違ったきみに妻と子秋の暮澤田紫
学祭の立て看撤去秋の暮沢山葵
秋の暮タールの匂う操車場三角山子
秋の暮皿に残りし野良の餌三月兎
死ぬ様をじつと見る子ら秋の暮山月
秋の暮隣の薪を割る木霊珊瑚霧
秋の暮思ひ出せない友の名を三尺玉子
水族館の隅に地蔵や秋の暮三水低オサム
捜索のヘリ飛ぶ鄙の秋の暮塩風しーたん
退職の文届きけり秋の暮塩沢桂子
カルピスの未だ清々し秋の暮塩の司厨長
命日の秋のゆふベの家清ら柿司十六
引継ぎの仕事一覧秋の暮紫檀豆蔵
去る人の私物を捨てる秋の暮紫月
秋の暮妻との間合い推しはかるじつみのかた
秋の暮二人で運ぶ粗大ゴミ信濃のあっくん
この犬が最後の犬か秋の暮篠雪
ポケットに夕星ひとつ秋の暮渋谷晶
秋の暮千年続くあぶり餅島田あんず
古本のまぐさの匂ひ秋の暮島田ユミ子
樫ぐねの緑の高し秋の暮清水縞午
雇用延長の面接秋の暮清水祥月
「探しています」貼紙消えし秋の夕暮清水三雲
秋の暮古事記手に取る旅の宿霜月シナ
鬼のままごつこ終はりし秋の暮下村修
秋の暮声をつぶして選挙カーじゃすみん
父と子の合わぬ連弾秋の暮沙那夏
秋の暮操縦席の音白く紫藪@藻の霊
ちりちりとかつぶし反るや秋の暮朱胡江
階段を失いかけて秋の暮柊二@冨美夛
秋の暮ぼけっと焼かれている魚秋雪
「忌中」貼る隣家の黙や秋の暮柊瞳子
秋の暮淋しき鉄となる遊具樹海ソース
秋の暮見ゆれど挿せぬ針の穴じゅんこ
文鳥を籠へ戻して秋の暮順之介@QLD句会
観音の肘窩に水や秋の暮常幸龍BCAD
未開封のビデオ老後遠し秋の暮白井佐登志
自転車とぶつかる歩道秋の暮白井百合子
群れたままの魚の化石秋の暮白沢ポピー
微分して接線探す秋の暮不知飛鳥
ご愛顧を謝す紙薄し秋の暮白梵字
秋の暮拍手の波のリフレイン白よだか
秋の暮明日で終わりのクラゲ展神宮寺るい
知恩寺へ運ぶ古本秋の暮ジン・ケンジ
寅さんが柴又去ぬる秋の暮新濃健
秋の暮彗星の裂く桔梗色西瓜頭
くまモンにも悩みの有りて秋の暮水蜜桃
鯉の緋の色は散りぬる秋の暮すがりとおる
秋の暮女子のなぞなぞ手ごわいぞ杉本果ら
大仏の肩はなだらか秋の暮杉柳才
或る秋の暮CMだけの灯り鈴木季良恵
秋夕や翳の取込む子のつむじ鈴木由紀子
蓬けたる鴉のうなじ秋の暮鈴白菜実
クローゼットに作る隙間や秋の暮清白真冬
秋の暮牛脛肉の煮える間にすずなき
秋の暮錆びた蹄を老が引く鈴野蒼爽
流木に砂嵐鳴く秋の暮素敵な晃くん
秋夕や井戸に重たき石の蓋主藤充子
秋の暮ちくわの穴は身を縮めすりいぴい
吾と犬で百歳なりし秋の暮静江
秋の暮千住大橋矢立の地青児
はしゃぐ子を担ぎ家路や秋の暮瀬央ありさ
幾とせの和光の鐘や秋の暮摂田屋酵道
廃線やキハ二十の秋の暮瀬野広純
キャプテンの4を受け継ぐ秋の暮千・いつき組広ブロ俳句部
ユニクロのLINEしか来ぬ秋の暮れ全美
廃タイヤひとつ落ちさう秋の暮素因数分解
友の絵に黒きリボンや秋の暮そうま純香
シャッターに凸凹ありて秋の暮草夕感じ
明日からの勤務は週二秋の暮そうり
秋の暮百円玉のような雲想レベル7
叱りし子未だ帰らぬ秋の暮ソフィ
晩餐の弁当ふたつ秋の暮そぼろ
秋の暮風のかたちに人の声そまり
秋の暮フリマに並ぶリコーダー染井亀野
強制帰国や伊丹は秋の暮たーとるQ
家電買う子に付き添いし秋の暮大
校門にぷしゆうとバスや秋の暮平良嘉列乙
覚えなき人の会釈や秋の暮たいらんど風人
渋滞は瞑色を食う秋の暮高井大督
塩麹あれば三品秋の暮高岡春雪
特急を追ひ越す風や秋の暮高木音弥
秋の暮駅弁番付改訂版鷹取碧村
転んでもひとりぼっちの秋の暮高辺知子
秋の暮見送りには行くもんか高嶺遠
父だけが乗らぬ車や秋の暮高橋寅次
派出所の灯の円く垂る秋の暮高原としなり
秋の暮三軒とばす回覧板鷹見沢幸
金堂の閂堅し秋の暮たかみたかみ・いつき組広ブロ俳
牛市へ連れ行く子牛秋の暮高山佳風
秋の暮一面真赤なる初校滝上珠加
子の影の飛びついて来る秋の暮滝川橋
失恋の予定日決まり秋の暮たきるか
人嫌いゆえの図書室秋の暮武田豹悟
影のゐるうちに一杯秋の暮多数野麻仁男
秋の暮救世観音に逢ひにゆき糺ノ森柊
姥捨の旧き駅舎や秋の暮多田知代子
秋の暮一人ぼっちの一番星ただの山登家
貧乏を泣いて詫びられ秋の暮多々良海月
秋の暮飛んでった見つからなかった立川茜
秋の暮他人の家の窓灯り田鶴子
八分の七ほど生きて秋の暮立田鯊夢・いつき組広ブロ俳句部
四人目の介護いつまで秋の暮立石神流
追悼の映画ポスター秋の暮伊達紫檀
炊く米は独り分のみ秋の暮田中紺青
かなもじの川や流るる秋の暮田中みどり
秋の暮岐路にとどまる影ふたつ谷斜六
ト短調鳴らすオルガン秋の暮谷本真理子
牧柵の電流はOFF秋の暮田上大輔
秋の暮砂町銀座のメンチカツ田畑整
割れぬ食器増えゆく家よ秋の暮玉木たまね
コンパスの芯定まらぬ秋の暮たまのねこ
三十六時間寝たと鬱の子秋の暮玉響雷子
さびしさに口笛吹けり秋の暮たむらせつこ
大仏の見下ろすユンボ秋の暮田村ヒロミ
鳴き龍の天井高し秋の暮田村利平
秋の暮師長の啜る肉うどん丹波らる
けぶりゆく野末のポスト秋の暮竹庵
待つ君の手には吾子の手秋の暮ちくりん
雑踏に混じれり秋夕の喪服千歳みち乃
机には北を指すペン秋の暮千鳥城.いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
影踏みに絡まる身体秋の暮千葉右白
秋の暮見もせぬテレビ点いてをりちやあき
温めず独り弁当秋の暮千夜美笑夢
秋の暮アロエしとどにうねりけり彫刻刀
秋の暮ことばの教室のふたり千代之人
肩で息内視鏡飲む秋の暮月の莵
C棟の女医の靴音秋の暮月待小石
秋の暮鍾乳石の濡ちをりつくばよはく
名画座の朽ちた看板秋の暮辻瑛炎
聖痕は額に黒く秋の暮津島野イリス
鍋底のぬる火の痛み秋の暮津々うらら
秋の暮「ヤギあげます」のプラカード綱川羽音
木と花の渇き美し秋の暮ツナ好
前カゴに六法全書秋の暮椿泰文
秋の暮きりかぶに皿・スプーン・実坪田恭壱
キャンバスに罅入る秋の暮匂ふ罪一@藻の霊
秋の夕さみしさだけをひつぽなげ鶴富士
長文の志望理由書秋の暮デイジーキャンディー
やじろべぇよろよろ愉し秋の暮丁鼻トゥエルブ
秋の暮透析終へて飯を食ふ哲庵
秋の暮喫煙所てふ街の檻天雅
歩行器を遮る段差秋の暮電柱
置き去りの紙飛行機や秋の暮でんでん琴女
展示物なる連絡船よ秋の暮天童光宏
前衛書余白鮮やか秋の暮天王谷一
秋の暮かごめかごめの聲の影天陽ゆう
吾以外の人は静かな秋の暮どいつ薔芭
秋の暮ゆび跡うすき泥団子トウ甘藻
通院の定期買ふ友あきのくれ遠峰熊野
雉鳩の声は空洞秋の暮とかき星
秋の暮短き順に吊るす筆常磐はぜ
別れぎわ影で背くらべ秋の暮どくだみ茶
指に沿ふ和やかな水秋の暮戸口のふつこ
地下鉄の電車地上へ秋の暮どこにでもいる田中
秋の暮れ我の入らむ墓地見つけ杼けいこ
秋の暮電車に居場所無い右手となりの天然石
石段に映画の記憶秋の暮戸部紅屑
味の濃い防災カレー秋の暮苫野とまや
女湯に一人ばた足秋の暮斗三木童
人間を辞めていいかな秋の暮富野香衣
パソコンのアダプタぬくし秋の暮戸村友美
スナフキン真似て口笛秋の暮富山の露玉
天王寺嗚呼彷徨いて秋の暮鳥田政宗
花いちもんめ一人残され秋の暮とんぼ
腕の皺曲げれば笑う秋の暮内藤清瑤
子の玩具踏み毀ちたる秋の暮内藤羊皐
秋の暮植ゑるものなき植木鉢中岡秀次
伝えないことを選んだ秋の暮仲川暁実
秋の暮上腕二頭筋の張り中島紀生
秋の暮神の不在証明聞けり永嶋夜久
漕艇に覆いを掛けり秋の暮中藤雅子
秋の暮薪割りの音繰り返し中十七波
秋の夕星待つやうに屋根に猫中原柊ニ
余生なほ夫との夕餉秋の暮中村あつこ
あっさりと更地になりぬ秋の暮中村すじこ
影踏みや秋の暮から鬼のまま中村想吉
PayPayの残金足らぬ秋の暮なかむら凧人
秋の暮採石場の泣く線路中村雪之丞
トロッコの終着点は秋の暮なしむらなし
君が黒髪にした訳秋の暮夏風かをる
母はまた同じ話を秋の暮夏草はむ
看板を読む駅の色秋の暮夏雲ブン太
自転車ぎこぎこ桟橋は秋の暮夏雨ちや
とろ火にて時間を煮込む秋の暮夏目りる
スマホまだなかつた頃の秋の暮七瀬ゆきこ
秋の暮さつき昼飯喰つたのに7パパ・いつき組広ブロ俳句部
側溝の蓋かしやしやんと秋の暮名計宗幸
老医師の試歩の影見ゆ秋の暮なびい
秋の暮コピーの束にある余熱名前のあるネコ
救急車の帰りは乗れず秋の暮奈良素数
筆跡も年を取るとか秋の暮成松聡美
秋の暮拡大鏡の中の皺にいやのる
〆切を終えて伸びする秋の暮にえ茉莉花
旧札の顎みな細き秋の暮西川由野
客船の澪をちかたへ秋の暮西郡うり
木の香り残りし工房秋の暮西こでまり
分針を追ふ秒針や秋の暮西田月旦
秋の暮暖簾の赤き町中華二十八
秋の暮古書肆の奥の羽根帚二城ひかる
捌かれて獣は肉に秋の暮にゃん
ペン胼胝の赤く汚れし秋の暮庭野環石
太陽の塔に余熱や秋の暮暖井むゆき
グランドのブラシの音や秋の暮布村柚子
秋の暮おんどりは定位置に乗り沼沢さとみ
見はるかす墨田、上京、秋の暮沼野大統領
下の名で呼ばれるような秋の暮猫ふぐ
寅さんの背にもたれたき秋の暮れ猫またぎ早弓
睦みあふ北白犀や秋の暮ねこむらさきご
難聴の母の我儘秋の暮根々雅水
踊りだす影絵のきつね秋の暮ノセミコ
空っぽの金の額縁秋の暮野村齋藤
弦に払はれし耳燃ゆ秋の暮のんぬもんぬめぐ
枝揺らし羽をつくろふ秋の暮徘徊狂人
透ける帆や金波引き連れ秋の暮白雨
樟脳の強き紋付秋の暮はぐれ杤餅
秋の暮モデルハウスまで二千歩はごろも856
秋の暮れ戦車みたいな屋台引く橋本有太津
置き配のドアにもたるる秋の暮橋本こはく
秋の暮れ荒川土手へ富士を見に馬笑
絞り染めのやうな望郷秋の暮蓮井理久
秋の暮疎遠な父子の母命日蓮田初老
姨捨のスイッチバック秋の暮れ羽住博之
諏訪大社御神湯香る秋の暮蓮見玲
秋の暮都下一斉に古びたる長谷機械児
秋の暮染まらぬ白きマリア像畑中幸利
みたらしの蜜の滴る秋の暮れ畑美穂
会ふごとに丸まる背や秋の暮葉月庵郁斗
日記には食べたものだけ秋の暮葉月けゐ
曲がり角よそよそしいな秋の暮八田昌代
雨漏りの輪染み障子に秋の暮花岡淑子
赤い実は毒があるらし秋の暮花咲春
秋の暮選挙カーにも大と小花咲めだ香
大仏のさよならの手や秋の暮花南天あん
秋の暮第九の響く公民館花はな
臥せる身に畳み目数ふ秋の暮はなぶさあきら
翅(はね)ひとつ土に散りをり秋の暮英凡水
ビブラート微かに湿り秋の暮花豆
胃の腑まで透きとほるやう秋の暮花水木
秋の暮ワインボトルの底に山花見鳥
止まり木のジャズの沈黙秋の暮花和音
先細るラインカーの粉秋の暮馬風木瓜子
歴史書を解けば裏切り秋の暮浜友輔
秋の暮よこがほ細き観覧車葉村直
秋の暮絵筆へかなふ色を足し原水仙
閉店を店主敬白秋の暮原田民久
雲梯に硬き錆の香秋の暮巴里乃嬬
合谷にお灸の燃える秋の暮春あおい
秋の暮わが影伸びて道ふさぐharu.k
ヨット部は廃部琵琶湖の秋の暮晴田そわか
野良猫の城を我が家と秋の暮れはるの風花
なぞらずに塗りつぶす文字秋の暮春野ぷりん
あの家も訃報回さず秋の暮葉るみ
名山は寂しからずや秋の暮春海のたり
壊されし旧家に祠秋の暮はれまふよう
秋の暮髪の軋みを宥めをり半熟かさぶた
形見分け終えてベランダ秋の暮半ズボンおじいさん
バス待ちのスマホ明るき秋の暮HNKAGA
潮騒の近き食堂秋の暮ピアニシモ
大岩にもたるる松や秋の暮東田一鮎
秋の暮何を濯ぎし水の音東の山
採点後セコムかけたる秋の暮東原桜空
秋夕のボタン誤つ開と閉樋口滑瓢
烏鳴く声は皮膚撫で秋の暮火車キッチンカー
ささくれをまた切り損ね秋の暮髭撫子
秋の暮雲の影が雲に伸びる菱田芋天
国政の棄権者多き秋の暮ひすい風香
良き母はもうやめちまお秋の暮美竹花蘭
傾きて秋の暮れ告ぐ花時計ヒッチ俳句
田鼠どこ行ったやらもう秋の暮ひでやん
叢の球打ち捨つる秋の暮一石劣
子の髪に光の匂ひ秋の暮日向こるり
秋の暮言うほど嫌じゃない別れひなた和佳
多言語で話す鳶たち秋の暮比々き
吾にだって帰る家あり秋の暮ヒマラヤで平謝り
サーカスのピエロ戯けし秋の暮れひめりんご
赦しとは翳の交はり秋の暮141番
調律師さぐる「ソ」の音秋の暮日吉とみ菜
秋の暮赤銅色の湖しづか平井千恵子
ひとところ灯して出掛く秋の暮平井由里子
2リットル飲んで検査す秋の暮平岡花泉
我が影もまた我なりや秋の暮平野恵子
秋の暮ビール酵母の匂ふ街平野芍薬
頓服は腹八分目秋の暮平野純平
「三夕」の聞こゆる校舎秋の暮比良山
没作を燃やし尽くして秋の暮平山仄海
秋の暮古書の林を跨ぐ猫広木登一
禅僧のジャズ聴いてゐる秋の暮浩子赤城おろし
秋の暮傾ぐフランスパンの影広島じょーかーず
カーテンの外の会話や秋の暮広島立葵
長考の歩で飛車をとる秋の暮広瀬康
私には何も見えない秋の暮ひろ夢
秋のくれそろばんじゅくをズル休みフージー
秋の暮錆びし碇の重さかな風慈音
核の灰の土間へ入る陽や秋の暮風泉
この光を吸って死にたい秋の暮深町宏
橦木引き散りぼふ子らや秋の暮福田みやき
秋の暮一番星を指に載せ福ネコ
虫喰をはじき豆煮る秋の暮ふくのふく
ラーメンの液面楽し秋の暮福間薄緑
明日には無くなる智歯や秋の暮ふくろう悠々
すて猫の箱ごとかかへ秋の暮藤井かすみそう
古文書の御と候秋の暮藤丘ひな子
病室へ配膳早し秋の暮ふじこ
秋の暮に傾ぐ校庭のラインカー藤咲大地
恩師と会ふ職安通り秋の暮藤里玲咲
街路樹は黒き棒なり秋の暮藤永桂月
迂回路は標識多し秋の暮藤原涼
秋の暮太陽の塔影濃ゆく伏見レッサーレッサー
秋の暮写真の妻は聞き上手藤原訓子
電線の十条通る秋の暮藤原素粒子
枯れ松も飛砂とどめをり秋の暮舟端玉
散髪へ母を連れ出す秋の暮風友
石投げればとぷんと消える秋の暮冬島直
錆びついた鉄路跨ぐ子秋の暮古川しあん
医局への廊下一本秋の暮古瀬まさあき
石標左大和路秋の暮古谷芳明
涙腺のさきへさきへと秋の暮れ豊後のすもも
秋の暮昏き穴なる車窓の眼碧西里
秒針を追ふ点滴や秋の暮ペトロア
同窓会みたいな葬り秋の暮べびぽん
気の強き母が手繋ぐ秋の暮峰晶
秋の暮背と荷を別ける風の音房総とらママ
秋の暮空をごらんと兄の電話ほうちゃん
秋の暮横顔あをくとけてゆく黒子
円き背に九九唱え去る秋の暮ほこ
煮卵の黄身はとろんと秋の暮星鴉乃雪
声のする方に子居らず秋の暮星田羽沖
秋の暮ライブハウスのネオン管星月彩也華
少年は壊れて育つ秋の暮細川鮪目
秋の暮伊勢の神馬の鼻の奥ポップアップ
ピアス穴いつかふさがる秋の暮堀江むすぶ
秋の暮置かれた進路調査表堀川絵奈
秋の暮いっぽうの夢叶わずに堀籠美雪
爪を切る音の切なき秋の暮堀卓
秋の暮またすれ違ふチンドン屋堀隼人
また少し縮みし背丈秋の暮堀邦翔
筒抜けの内輪話や秋の暮れ前田冬水
牧場の数多の尻尾秋の暮牧場の朝
赤色の呼び名数へし秋の暮槇原九月
困憊や電卓重き秋の暮牧茉侖
あきのくれまぼろしのちのくもがくれまこと七夕
動かない大きな重機秋の暮眞さ野
うす墨の筆さき重し秋の暮町田勢
秋の暮赤き海割るボウズ船松井酔呆
身のうちの小さき獣や秋の暮松岡玲子
秋の暮山門潜る喪服連れ松尾祇敲
提灯に揺れる匂ひや秋の暮松坂コウ
南国の陽は未だ残る秋の暮松平武史
手のひらの金の文字呑む秋の暮松田寛生
近道は祖父眠る墓地秋の暮まっちゃこ良々
秋の暮左へ回るコルク栓松橋春水
閉館のお辞儀深々秋の暮松本こっこ
引き出しに娘の手紙秋の暮松本俊彦
人肌の薬の耳浴秋の暮真宮マミ
米研げば実家のリズム秋の暮豆くじら
煮え切らぬちくわぶを噛む秋の暮黛素らん
厨だけ灯る隣家や秋の暮毬雨水佳
ラの音を奏でるような秋の暮真理庵
秋の暮駅前の墓駅を向くまるごとハテナ
秋の暮もう生まれてもいいんだよまるにの子
血の滲む膝秋夕を一輪車三浦海栗
家出するバス代もない秋の暮澪那本気子
片麻痺の介助のうしろ秋の暮三日月なな子
道化師のメイクを落とす秋の暮帝菜
脚弱な犬と散歩や秋の暮神酒猫
うたたねの蒼きところや秋の暮三雲萠永
秋の暮トロイメライは帰る曲三茶F
『奥の細道』から戻り秋の暮三崎扁舟
秋の暮父は使へぬATM水須ぽっぽ
境内に缶けりの缶秋の暮MR.KIKYO
やはらかくジャムを煮る夫秋の暮水巻リカ
秋の暮獣の腹を割きました三隅涙
秋の暮下校バスからひとりかなみちむらまりな
秋の暮空籠下す土間に風美津うつわ
山姥の唄声美しき秋の暮満生あをね
折り鶴は千にとどかず秋の暮みづたま
ティシュの箱畳めば秋の暮早しみづちみわ
固形スープの銀紙やはし秋の暮満る
迷ひ人の防災無線秋の暮みつれしづく
天秤や偽薬は白く秋の暮南方日午
秋の暮猫のうなじのごと匂う水上ルイボス茶
友の死を伝ふる母や秋の暮みなづき光緒
録りだめのビデオ再生秋の暮みなみはな
マカロンと政治のはなし秋の暮源早苗
ビードロの破片集むる秋の夕美村羽奏
物言はず閉ぢられしドア秋の暮宮井そら
塀伝う猫に抜かれる秋の暮見屋桜花
亡き夫の戸をたたく音秋の暮みやかわけい子
もみあげに白髪三本秋の暮宮坂暢介
ポスタア捲れ落書の巴里秋の暮みやざき白水
溶接のロボットの火や秋の暮宮武濱女
学校のこども食堂秋の暮宮部里美
半熟の黄身が喉越す秋の暮みやま千樹
淋しさは慣れるまでだと秋の暮宮村寿摩子
秋の暮自転車溢る珠算塾みらんだぶぅ
コンセント足りぬ仮設の秋の暮ムーンさだこ
ウヰスキーの潮香に秋の夕を閉づ麦のパパ
秋の暮打刻としてのシャリマティー麦野光・いつき組広ブロ俳句部
秋の暮ラップの端が見つからぬ椋本望生
秋の暮空のベッドを整える霧想衿
我に置く老犬の右手秋の暮村上の百合女
バス停に捨つる鬱鬱秋の暮紫小寿々
秋の暮鶯嬢の連呼去るメディックス千里
顔面を踏まれし邪鬼や秋の暮毛利尚人
藍染の暗渠を歩く秋の暮茂木りん
我が型のギプス御別れ秋の暮望月朔
村のスーパー五時閉店の秋の暮望月ゆう
秋の暮地球はあをく涸れた星元野おぺら
秋の暮乗り捨てられし三輪車momo
秋の暮立ちっぱなしの木に触れて百瀬一兎
小芝居の雪を刻むや秋の暮百瀬はな
秋の暮ただ美しきことを詠むもりさわ
ただの町となる生家の秋の暮森太郎
秋の暮私へ語るセルフレジ森ともよ
ゆく人は帰宅か帰社か秋の暮森野恵
秋の暮れ母投票を終えしとぞ森野泰子
シルバーの指輪の霞み秋の暮森日美香
押花を見つけしページ秋の暮杜まお実
藍染は空へと滲み秋の暮森毬子
駆ける子の影まだここに秋の暮森萌有
秋の暮いつもの席の顔の無しもろ智行
見えぬもの見えると母や秋の暮山羊座の千賀子
秋の暮剥がされさうな祖母の影弥栄弐庫
躓きてノート散らばる秋の暮矢澤かなえ
ささくれの指先舐めし秋の暮矢澤瞳杏
まだ点かぬ看板ひとつ秋の暮安田伝助
秋の暮母の振る手は柿色か野生の栗
母の眼に夕日の名残り秋の暮山内彩月
売家の看板揺れて秋の暮れ山内文野
さる山の我のポジション秋の暮山尾政弘
対向車詩人づらして秋の暮山河穂香
サイレンの真鍮色めく秋の暮やまさきゆみ
カタカナのやうにつまづく秋の暮山里うしを
砂遊び凸凹陰り秋の暮れ山田季聴
忘れ物戻りて忘る秋の暮山田好々子
急かずゆく宿への小道秋の暮山田翔子
車窓から牛を撮りたる秋の暮山田はち
廃川を長き罅割れ秋の暮山田蚯蚓
秋の暮ふと節榑れし指を見る山田喜則
秋の暮スタバで眺む人の群れ大和杜
署名簿の飛び交う職場秋の暮やまな未
うおしゆうおしゆと褌洗ふ秋の暮山本先生
合掌の指輪のあとの秋の暮山本八角
またねの後の病室白し秋の暮やまもと葉美
秋の暮名前で呼んでくれる人山本美奈友
秋の暮引き戸の具合悪しきまま柚木みゆき
レシート紙替え時のレジ秋の暮宥光
頑張ったような気がする秋の暮ゆうらゆら
秋の暮帰りましょうと大きな手雪音
露商の手早う呑みたし秋の暮柚子こしょう
関門橋を潜る船上秋の暮ゆすらご
数独の解けぬままなる秋の暮柚木啓
秋の暮厨に声を閉じ込める湯屋ゆうや
シーソーの支点を通過秋の暮ユリノイロ
同僚の長き話や秋の暮緩木あんず
秋の暮君の眼鏡に増えた傷陽花天
発掘の一日(ひとひ)また果つ秋の暮陽光樹
秋の暮子の手を引いて詫びにゆく羊似妃
独り身や墓の向こうの秋の暮横井あらか
誰だって誰かといたい秋の暮横浜J子
原木の生ハム痩せる秋の暮横山雑煮
胃カメラに凸凹の丘秋の暮吉田春代
青い星すこし傾げて秋の暮吉成小骨
新しい惣菜店や秋の暮吉藤愛里子
藍染の藍は生きもの秋の暮四葉の苦労婆
この頃は素直に泣けて秋の暮ヨブコドリ
秋の暮陽は病室の奥までもよみ、ちとせ
さよならのらは消えてゆく秋の暮楽花生
秋夕の入院つまの箸で食ふらん丸
秋の暮天上天下に自我の死リーガル海苔助
新札の仏頂面や秋の暮理佳おさらぎ
ポケットをつい探す手よ秋の暮リコピン
往きよりも帰りの遠く秋の暮理真
つむりより入る縄のれん秋の暮柳絮
乗り継ぎて一輌の街秋の暮涼えつろう
空爆の死者数字のみ秋の暮ルージュ
寂しさを積んで貨車ゆく秋の暮瑠璃ホコリ
亡き夫の背広の値札秋の暮麗詩
秋の暮022番のかき揚げそば烈稚詠
橋架けて寂れし島や秋の暮朗子
馬の背に羽そだちゆく秋の暮ろまねす子
もう帰ると聞かぬ母にも秋の暮わかなけん
月山の神酒ふたりの秋の暮若林くくな
秋の暮自づから出る童歌若林鄙げし
被爆曝すドームの一日秋の暮若宮直美
秋の暮山の他無し山の中海神瑠珂
選挙カー雑に手を振る秋の暮わたなべいびぃ
病床の飯の薄さや秋の暮渡部克三度
猫の足胴に仕舞われ秋の暮渡辺香野
杖つく人に我が影迫る秋の暮渡辺陽子
還りこぬ母の水音秋の夕渡邉わかな
友の忌や弱みそと声秋の暮れ和脩志
母といふ港に灯り秋の暮笑笑うさぎ
秋の暮硝子に映る廊下の灯井松慈悦
鍋二つ洗うて伏せて秋の暮上原淳子
秋の暮リュートのためのプレリュード内田こと
荒神さんを下る人波秋の暮楠田草堂
校内の鍵ジャラジャラと秋の暮十月小萩
きやんと鳴る玩具のピアノ秋の暮野ばら
秋の暮砂落ち終へし砂時計さとうナッツ
カウンター椅子よじ登る秋の暮EarlyBird
秋の暮隣家の夫の安否問う哀郷
間違いを探すのをやめ秋の暮青山智士
箱椅子に白黒写真や秋の暮acari
秋の暮摩周湖天への道を行く明日に翔ぶ会
空き部屋に稚児の来るらし秋の暮笠谷タカコ
鳴き帰る家皆にあり秋の暮帷子砂舟
秋の暮レシピは身体が覚えてる神谷たくみ
長旅や文庫ずり落つ秋の暮郷りん
賽銭を集む宮司ら秋の暮四郎高綱
秋の暮周回遅れの走り人だっく
秋の暮に疲れ気味の路電かな野中泰風
大声の夫は難聴秋の暮野原蛍草
母さんは僕のこと好き?秋の暮野山めぐ
盤にらみ五手詰め読めぬ秋の暮れ長谷島弘安
秋の暮一番だしの黄金色羽奈あかり
映り好し遺影決めけり秋の暮花彼岸
秋の暮代替りの歯科検診増山銀桜
秋の暮れねばりねばりて出す印籠松下弘子
秋の暮帰宅メールでカツを揚げ松永佳子
前睨み歩く老人秋の暮森佳月
秋の暮かどもまあるく夫婦風呂八手薫
百貨店街から消えて秋の暮横山道男
今日も又幾つもへまを秋夕暮四四子
断易や賽をころがす秋の暮 占い?連雀
山の幸膳に仕立てて秋の暮渡辺草円
放免の夫痩けし頬秋の暮れ粋庵仁空
ぽかぽかの愛しやお手々秋の暮あいあい亭みけ子
庭仕事ひと区切りつけ秋の暮れ相沢薫
誰しもが人肌恋し秋の暮会田美嗣
夕飯の味染みしみて秋の暮れ逢花菜子
リハビリや意のままならぬ秋の暮れあ・うん
明日こそはと願ふ一票秋の暮青井季節
味噌汁に感謝秋の暮感謝青空豆千代
「警泥」の果てて園地の秋の暮青野すみれ
立ち止まる空耳せつない秋の暮あおのめ
猫が待つ家路を急ぐ秋の暮青松紫雲英
タクト部門銅賞の盾秋の暮青水桃々(俳句迷子の会)
秋の暮電子レンジで二人分青山蜜柑
マスターの訛るは何処秋の暮赤尾てるぐ
秋の暮わたしは家に帰れない赤尾双葉
帰り道青いアルプス秋の暮赤羽山子
秋の暮嫁ぐ娘の写真繰る愛柑
洗足池散歩人少なし秋の夕聰子
追試落ち勝ち馬探す秋の暮昭谷
バス停に匂う夕餉や秋の暮れ秋月あさひ
遠い駅おけら街道秋の暮空き家ままごと
女湯や鼻唄ひびく秋の暮あくび指南
銭湯の煙突残る秋の暮浅井カバ先生
秋の暮ただただただ海を眺むあさぬま雅王
缶馬の子ら帰路につく秋の暮淺野紫桜
秋の暮こそり内職闇バイトあさのとびら
連山の百様の影秋の暮浅乃み雪
投票所視界不良な秋の暮朝日雫
旅路ゆき甘香くすぐり秋の暮れ亜紗舞那
帯喪服義母に紅さす秋の暮あさみあさり
秋の暮夜爪を嫌ふ母なりしあじさい卓
こびりつく上着に雨の秋の暮渥美謝蕗牛
「ごはんだよ」呼ぶ声もなき秋の暮跡部榮喜
秋の暮閉まった門へ拝む吾子アニマル可秘跳
便箋の微かなコロン秋の暮我孫子もふもふ
秋の暮海じまい後のプルメリア阿部八富利
秋の暮れ値引きシールの重ね貼りあまどかに
地下鉄で席譲られて秋の暮雨戸ゆらら
はたき置き文字追いかけて秋の暮天鳥そら
秋の暮母の手紙を読み返す雨降りお月さん
面接の日々つれづれと秋の暮雨李
のぞみ号君待つ京都秋の暮彩香
秋の暮バターナッツの一袋あらい
病押し写経に託す秋の暮れ荒木ゆうな
閉院の老医への謝辞秋の暮有本としを
秋の暮急ぐ下校の声遠く杏っ子
秋の暮れ積まれたままの山頭火井若宙
八万年に沸き立つ秋の暮飯塚うらら
常陸への赤電車待つ秋の暮飯塚煮込
秋の暮亡き友偲び燗三合飯沼比呂倫
気疲れし井戸端会議秋の暮五十嵐翼
逆転のバッシュ地に落つ秋の暮五十嵐真人
静かなる秋夕ほうじ茶のカヌレいくたドロップ
秋の暮ライト眩しき帰途急ぐ池愛子
一番星灯る家路や秋の暮池田炭
雨粒の冠光る秋の暮伊澤遥佳
アパートの便座にシート秋の暮石岡女依
秋の暮ふけりたくなる物思い石川明世
それぞれにそれぞれの憂秋の暮石田ひつじ雲
三輪車母の帰り待つ秋の夕暮れ石田ひろみ
ヘッドライト不意に眩しき秋の暮石堂多分
ぎいこぎこ錆びたブランコ秋の暮石の上にもケロリン
秋の暮花がらを手に母待つ子泉晶子
風呂焚きや九九の練習秋の暮泉恵風
秋の暮残り香失せぬ姉の部屋石上あまね
閑かなる鬼無里の山や秋の暮いその松茸
秋の暮ぽつんと残るレモンケーキいたおみき
秋の暮テールランプの絶え間なく無花果邪無
秋の暮わざと憂ひを反芻す一秋子
秋夕や馴染みの店は駐車場一愼
肉じゃがは何処の夕餉秋の暮れ五つ星
秋の暮「もみじ」を歌う令和の子井出奈津美
秋の暮王子の星が光りだす伊都
秋の夕響く靴音無言館伊藤薫
秋の暮れ先程のひと誰のはなし伊藤テト
迎へには来るなと告げて秋の暮伊藤なおじい
風出でて洗濯仕舞ふ秋の暮伊藤正規
まどろみの十五ページや秋の暮伊藤ゆめ安
御朱印帳雨の匂いと秋の暮伊藤れいこ
二丁目のポスト色鈍き秋の暮伊那寛太
甘樫丘の豪族秋の暮イナホセドリ
踏み切りの立ち往生や秋の暮れ井上幸子
若き日の吾をなぞりて秋の暮いまいみどり
秋の暮人恋しくもんじや焼いまいやすのり
誰も居ぬ城門出れば秋の暮いまにしともき
裾つかみコロッケせがむ秋の暮今乃武椪
吹く息の雲に届かぬ秋の暮れ今林快波
駅ピアノの蓋は閉じられ秋の暮今村ひとみ
打ち直しのふさのたわわや秋の暮伊予素数
秋の暮夕餉支度は湯気の中伊代ちゃんの娘2
秋の暮背中まるめて坂下る岩木順
割引のおむすびひとつ秋の暮いわさちかこ
母逝きて家は更地に秋の暮れ岩佐りこ
三夕の歌に及ばぬ秋の暮岩田勇
新入りのライオン「こうめ」秋の暮ウィステリア
命日を明日に控えて秋の暮上野眞理
秋の暮縹の空はいよよ濃し鵜飼ままり
提灯の八咫烏笑う秋の暮氏家久美
愛弟子を送る秋の暮しづかうた歌妙
秋の暮ランドセルの心細き宇田の月兎
帆船の蹴り波は消え秋の暮海口竿富
ひじき煮の値引きシールや秋の暮梅朶こいぬ
秋の暮工事現場の缶コーヒー蝦夷やなぎ
山菜の煮しめコトコト秋の暮れ越後縮緬
狛犬に夕陽かたむく秋の暮越前岬
里の家アルバム開く秋の暮越中之助
烏にも道を外す子秋の暮江戸きりこ
秋の暮揚げの味噌汁盛る夕げえのき絵巻
秋の暮むすこ待つ間の金星よえのき筆丸
看て護る日々への終章秋の暮れ榎美紗
面会は二十分言葉出ぬまま秋の暮榎本奈
寂しさで家路をいそぐ秋の暮えみくれ
パンダ見てピカソ展観て秋の暮朶美子
両足のつる初体験秋の暮絵夢衷子
風荒ぶ八甲田山秋の暮遠藤千草
差し色も尽きてくすめる秋の暮遠藤玲奈
仕事終へカーブスに寄る秋の暮れ円美々
メゾン〇〇迷子のやうな秋の暮旺上林加
SLの音轟くや秋の暮大久保一水
溜息を吐けば日の落つ秋の暮大久保加州
秋の暮れブランコ揺らす子が二人大倉孝庵
秋の暮異界の境越えてみる大越総
子等の声消えてしまって秋の暮大阪駿馬
二の腕にタトゥーの異人秋の暮大澤眞
一番星輝きわたる秋の暮大島一声
ブランコに忘れた帽子秋の暮太田一駄歩
手を袖に車椅子押す秋の暮大野純子
訪れる人なし庵秋の暮大野喬
てのひらに赤子の温み秋の暮おかえさき
湯屋ゆきの近道を路地秋の暮おかげでさんぽ
透明なほむらと消ゆる秋の暮岡崎佐紅
火吹竹飯炊くにおい秋の暮岡崎未知
秋の暮夫婦茶碗もひび入り岡田恵美子
丸文字のカセットテープ秋の暮岡田きなこ
図書館の机に向かう秋の暮岡田佐和子
西郷像遠く見つめる秋の暮岡塚敬芳
逝く人の微笑みをられ秋の暮男鹿中熊兎
秋の暮おやつはえびせん母を待つ岡眞弓
吾子の顔仕事やめよか秋の暮岡本
軽き葉のかさかさ寄って秋の暮丘るみこ
尊厳の意味ひとしおに秋の暮小川紅子
音信のなき子もおなじ秋の暮小川都
花売りの子と目の合ひて秋の暮オキザリス
炊きあがるご飯の匂い秋の暮沖らくだ@QLD句会
書くことの怖さ知り初む秋の暮奥寺窈子
オンザロック氷カラコロ秋の暮お品まり
雑踏を求め独りの秋の暮小田ビオラ
硝子窓老いうつろへる秋の暮落句言
秋の暮駆け足のごと屋根日差し小野ぼけろうじん
鳴き声も音色潜める秋の暮十八番屋さつき
犬もまた布団恋しい秋の暮小見澤おみそ
青眼で片ひざをつく秋の暮カイト
老犬の静かに逝きし秋の夕加賀くちこか
秋の暮母待つ子らの小さき飯加賀谷はる馬
議員数減し総理の秋の暮雅喜(俳号を星雅綺羅璃から変えてみました)
バス遅延上着を忘れ秋の暮柿本苧麻
自嘲する背表紙の束秋の暮風花美絵
秋の暮れ珈琲の香に歩を止める梶浦和子
歩を止めてメモ帳くらん秋の暮れ梶浦正子
独り居の風呂はぬるめに秋の暮かしくらゆう
職安の帰りにカフェへ秋の暮風の母
読みかけの本縁側に秋の暮片岡明
秋の暮金沢駅のモニュメント片栗子
病む猫の寝息の愛し秋の暮花鳥風猫
またしてもワクチン接種秋の暮桂もふもふ
手をつなぐ離したくない秋の暮桂葉子
秩父路や友と語らう秋の暮金澤孝子
母の顔浮かんで立ち漕ぎ秋の暮可児真由美
烏啼き寺の鐘聞く秋の暮かぬまっこ@木ノ芽
父の膝降りぬ鯖猫秋の暮花星壱和
マラケシュにコーラン響く秋の暮花蜜伊ゆ
秋の暮喧嘩しちゃったバンドリハ神島六男
ひく波の小石寂貌秋の暮神谷米子
秋の暮すれ違う人声も無し亀岡恵夢
杖頼り社訪ねし秋の暮亀くみ
秋の暮デブリ取り出し出来ぬまま亀子てん
断捨離完胸伽藍堂秋の暮亀田荒太
秋の暮行き交う人の顔見えず亀山逸子
赤々と柱状節理秋の暮亀山酔田
肌さわぎロードショー果つ秋の暮かめよかめ
秋の暮かわら踏みしめ鳥瞰図かもね
道祖神なにを語るや秋の暮れかもめ
雨戸閉じ空き家の増ゆる秋の暮れカラハ
秋の暮小銭の跳ねる貯金箱刈屋まさを
ポテサラの色を確かむ秋の暮狩谷わぐう
秋の暮れ空皿横に高楊枝河嶋結鶴
サヨナラの滲むナプキン秋の暮川村湖雪
朱から灰鎮まっていく秋の暮カワムラ一重
秋の暮現場に槌音響きをり川村昌子
便箋をハート折りする秋の暮菅野まこ
秩父路の帰路山深く秋の暮樺久美
偲ぶ会あだ名は「博士」秋の暮岸壁の龍崎爺
影伸びて成績伸びず秋の暮key
白色のアオザイ増える秋の暮季川詩音
玄米の定食足りず秋の暮菊一輪
練習のボール集める秋の暮菊池克己
秋の暮れ馴染みの本屋も店じまい木口まり子
海水を歪めてしまう秋の暮ギザギザ仮面
足ばやのオフィス街や秋の暮きさらぎ正子
秋の暮厨子に孫らの金メダル如月ゆう
外飼いの犬ひんやりと秋の暮北乃大地
秋の暮早く帰れと上級生北の星
秋の暮紅茶へ沈む角砂糖きなこもち
干物焼く煙にむせぶ秋の暮木村隆夫
豆腐屋の笛急ぎ去る秋の暮木村弩凡
容態を聞けぬ画面に秋の暮木元紫瑛
読みきれぬ栞を挟む秋の暮Qさん
秋の暮改札ぬけて迷う刻清鱒
肩が触れ頬ばかり染まる秋の暮喜楽胤
秋の暮れ湯殿の煙り増し増して桐山榮壽
秋の暮はじめにだけ読み本を置く近未来
古き文庫本にカバー秋の暮くぅ
母連れて鬼太郎空港秋の暮草野紫陽花
秋の暮ビル解体の後の空久信田史夫
惚れたれどいまだ取り巻き秋の暮くずもち鹿之助
うぬぼれ鷺の水鏡秋の暮くちなしの香
秋の暮稜線を飛ぶ鴉二羽くつのした子
あやとびはいつも失敗秋の暮九萬太郎
また坐骨痛み増したる秋の暮紅三季
秋の暮君の笑顔と大阪弁倉森愛華
秋の暮百均店の毛玉買うぐりぐら京子
秋の暮向かう先には猫と闇空流峰山
目を凝らし鍵穴さがす秋の暮愚老
秋の暮同じ夕日か少納言黒猫さとみ
Nリュック改札駆ける子秋の暮黒ばあや
塾帰りコンビニに寄る秋の暮桑田栞
石膏像まだ描いている秋の暮くんちんさま
商店街モールと違う秋の暮奎星
往く風のターフ捕らへて秋の暮家古谷硯翠
秋の暮きれいに啜るラテアート月下檸檬
双子用のカートと交差す秋の暮欅谷風来
白頭の鐘撞く力秋の暮紫雲英
秋の暮れ路地へ曲がると煮しめの香ケンG
秋の暮心配無用面接日源氏物語
石を蹴るズツクのほつれ秋の暮ケント
別れ行く君の背中に秋の暮輝雲彩
秋の暮壁奔る影おびただし公木正
出直しか白髪掻き掻き秋の暮れ河国老末廣
殴られた頬の赤さや秋の暮紅紫あやめ
スコップに泥の残れり秋の暮柑たちばな
秋の暮れ犬のお供にライト持ち康寿
足早にヘルパーの去る秋の暮宏楽
秋の暮さん歩の連れの後しまつココヨシ
黄昏やグラデーションに秋の暮越乃杏
来館者の続く画廊や秋の暮小嶋芦舟
それぞれにカメラかまへて秋の暮小杉泰文
秋の暮雨の道路の哀しかり小園夢子
秋の暮広告メール読まず消し小手川とし
子ら残すチョークの落書秋の夕後藤昼間
またひとり名優逝きて秋の暮後藤三梅
硫黄の香外湯はこちら秋の暮来冬邦子
秋の暮ロードサービス頼むTEL古都鈴
老猫の静寂の先の秋の暮粉山
寺多き街の鐘鳴る秋の暮小林昇
秋の暮れお猿が数歩先を行く小林澄精
秋の暮読み返してみる日記帳小林弥生
不揃ひの野菜トントン秋の暮こひつじ@QLD句会
丹沢や山靴カサコソ秋の暮駒形さかつ
トラオサフレンタイチヤウや秋の暮五味海秀魚
秋の暮老舗のカフェの最後の日小湊八雲
山の端の明るき空に秋の暮こむぎ
炊ぐ手の軈てぼやけし秋の暮小望月あうる
空欄の投票用紙秋の暮小山秀行
秋の暮猫とたわむれ至福ときコロンのママ
肩たたき券あと二枚秋の暮今藤明
連れ去らるる五頭の子牛秋の暮こんのゆうき
壊れゆく母に優しく秋の暮西條晶夫
水鏡雲と列車の秋の暮齋藤鉄模写
お湯仕舞い銭湯張り紙秋の暮宰夏海
秋の暮電車待つ子の影長しさかい癒香
この道を行きつ戻りつ秋の暮坂上一秀
小言ひとつ罅ひろがる秋の暮れ榊昭広
下宿屋の軋む階段秋の暮坂口いちお
絡み合う糸はほどけて秋の暮坂田雪華
一人で駆け上がる校舎秋の暮坂野ひでこ
陽も風も虫も異変の秋の暮坂本千代子
皺深き手の乾きゆく秋の暮坂本雪桃
道草の流すささ舟秋の暮相良まさと
秋の暮強く握る手散歩道咲美まき
煙草の香染む古窓や秋の暮咲まこ
秋の暮カラスに塗れ服洗うさくら亜紀女
ミニブーケにありがとうと義母の字秋の暮櫻井弘子
追憶の風やはらかく秋の暮桜華姫
枕元のフルーツかほる秋の暮桜姫5
日の国をすっぽり包み秋の暮雑魚寝
塗香買ふ明日は写経の秋の暮佐々木佳芳
秋の暮鼻歌漏れる風呂洗い笹木好里
秋の暮再出発の二種免許笹靖子
秋の暮素通りできず暖簾分けさざんか
秋の暮見えないものに逢う時間さちコアラ
当番医待つ黙の中秋の暮さち今宵
懐かしの映画観終わり秋の暮れ砂月みれい
ばあばの手つないでぴょんぴょん秋の暮さっち
揺れ残るブランコの影秋の暮薩摩じったくい
ライブ後の眠れぬホテル秋の暮れ佐藤和代
母からの小包届く秋の暮佐藤公
やりかけの鋏を鞘に秋の暮さとう昌石
秋の暮マントルのごと対流す佐藤浩章
指折れば絶滅危惧種秋の暮里山子
秋の暮貨物列車が過ぎただけ彷徨ういろは
ケーキ屋に完売の札秋の暮さやじゅん
保護猫を送り出したる秋の暮紗藍愛
建ち並ぶ廃家に架線秋の暮沢井如伽
黒柴の眉のまろさよ秋の暮沢胡桃
秋の暮逆らう如き宴かなさわだ佳芳
秋の暮洗濯かごめく乳母車沢拓庵◎いつき組カーリング部
空っぽのアロマの瓶嗅ぐ秋の暮沢田恵子
鶴見線海芝浦の秋の暮澤野敏樹
風に靡く野の八千草や秋の暮塩原香子
のぼさんの命日偲ぶ秋の暮しかの光爺
老犬に眼差し優し秋の暮れ四季彩
秋の暮猫背らスマホ見る車内志きの香凛
幻日に手かざしカメラ秋の暮じきばのミヨシ
回頭を見入る左岸の秋の暮じじょう庵一口
便りなく日々移ろうや秋の暮実本礼
肉じゃがを炊いて散歩へ秋の暮柴桜子
指に付く果汁愛でるや秋の暮芝歩愛美
パート帰りひとりひとりに秋の暮しぼりはf22
ひとり綾シチュー香ぐはし秋の暮縞子勾苑
姪っ子と同居決めた日秋の暮島じい子
秋の夕暮エコラリアまたエコラリア島田雪灯
完売の札いまいまし秋の暮れ清水明美
ただいまと言う人もなし秋の暮清水ぽっぽ
祖妣の革鞄濃くなり秋の暮れ清水美沙
一抹のわびしさ誘う秋の暮清水容子
枯れ井戸に泉聲の無し秋の暮志村紀昭
人も魔も知らず逢ひをり秋の暮霜川このみ
秋の暮背中押したる遠き鐘霜月詩扇
事故現場黙祷捧ぐ秋の暮霜月ふう
片恋と帰路被るバス秋の暮下丼月光
ちらほらと薄暮に灯る秋の暮釋北城
ランナーの信号は赤秋の暮慈庵風
手鍋下げもつ煮買い行く秋の暮れ秀耕
病棟の灯や赤門に秋の暮秋芳
秋の暮足跡の無い浜みつむ種種番外
浮かび来る星と後悔秋の暮シュリ
かたかたと雨戸降りゆく秋の夕じょいふるとしちゃん
大日輪ともにいきたや秋の暮正見
お知らせですパンザマストに秋の暮正念亭若知古
歩道橋一段跳ばし秋の暮白石美月
居眠りを咎めし人なし秋の暮しろくも
秋の暮のびにのびたる影の消ゆ白猫のあくび
一列にてるてる坊主秋の暮深仲夏
秋の暮てかる水面とダムの静末広野暢一
ソロ活の古書店二階秋の暮すがのあき
いろは坂追いかけてくる秋の暮杉浦あきけん
秋の暮れ二本の反射たすき揺れ杉浦真子
手の甲に土は香りて秋の暮杉岡ライカ
秋の暮シルバーカーにレジ袋杉尾芭蕉
秋の暮波の余韻に浸れたら杉沢藍
壁打ちのテニスボーイに秋の暮杉田梅香
ボリュームを落とす苫屋の秋の暮涼風亜湖
屋根の上カラスが歩く秋の暮鈴木里羅久
図書館の本を両手に秋の暮れ鈴子
色いろいろ腑におちてゆく秋の暮鈴野冬遊
まだ終はらぬインストールや秋の暮砂山恵子
秋の暮かご一杯にペタル漕ぎ数哩
新人戦敗退に秋夕の風須磨ひろみ
秋の暮老漢不意によろけたり晴好雨独
タイマーの調節3回秋の暮清香優
秋の暮リードを少し手繰り寄せせいしゅう
閉店の大型スーパー秋の暮清仁
もう見えぬ君乗せたバス秋の暮青峰桔梗丘
読み上げて百人一首秋の暮星夢光風
野を満たし我をみたせよ秋の暮瀬紀
旅帰りポストを覗く秋の暮seki@いつき組広ブロ俳句部
あちこちの遊具に錆や秋の暮せとみのこ
これからは帰りは一人秋の暮泉幸
寂しくてつい居酒屋へ秋の暮草堂Q幸
窮屈な喧嘩はやめた秋の暮惣兵衛
秋の暮過去も未来も今ここにそしじみえこ
やかん吹く甲高き音秋の暮外鴨南菊
コスプレに子供もはしゃぐ秋の暮邨虚空
通学路カレーの匂う秋の暮駄詩
虚ろひの影の迫りて秋の暮大康
空一面茜に染まる秋の暮大ちはる
読み終えし百年の孤独秋の暮れ平たか子
すんと立つ亜子と手繋ぎ秋の暮高上ちやこ
終着のバス待つ足あと秋の暮高田佳典
秋の暮庭来た猿に缶たたくたかandひろ
ずっとあるブリキのバケツ秋の暮高橋花紋
遠くで鐘影も消えてく秋の暮高橋紀代子
秋の暮図書館の窓仄かなり高橋ひろみこ
秋の暮迎えの親を待つ子の輪高橋ままマリン
秋の暮バス待ちの列うねうねと高橋光加
模擬店の値札貼り終え秋の暮田上コウ
石段を上る老脚秋の暮高見正樹
単純な遊具ばかりや秋の暮卓鐘
しんといふ音の聞こゆる秋の暮竹内不撚
出汁を取る手を止め嗅ぎぬ秋の暮武翁
尾翼灯の消えゆくテラス秋の暮たけぐち遊子
配達の青年いそぐ秋の暮タケザワサトシ
仕舞屋の低き軒先秋の暮竹田むべ
秋の暮孫と笑顔で時を紡ぐ武山和彦
算盤の弾けばミスる秋の暮たけろー
秋の暮そぞろに南京町歩く駄犬@藻の霊
名刹の土塀巡りて秋の暮多胡蘆秋
秋の暮鴉見送る風見鶏太之方もり子
おじさんの振る棒ひかる秋の暮たすく
本開く先へ先へと秋の暮祐紀杏里
甘味噌に今日は決定秋の暮ただ地蔵
もうちょっと友との時間秋の暮立花かおる
谷底の里墨色に秋の暮たていし隆松
独り居の手持ちぶさたや秋の暮蓼科嘉
ばいばいの爪の虹色秋の暮田中勲
川端に鍬洗いをり秋の暮田中ようちゃん
あれこれとまた積み残し秋の暮たなばたともこ
秋の暮相槌で決まるコースかな田辺ささのは
推しの歌リピ延々と秋の暮谷相
逝きし人しきりに偲ぶ秋の暮れ谷口あき子
日に五便バス逆光に秋の暮谷町百合乃
秋の暮紫煙をくゆる風の音田上智佳士
山の陰一足早く秋の暮田畑せーたん
遊び来し娘の帰りゆく秋の暮tabei白芙蓉
秋の暮狙うはダイヤモンド富士玉井令子
秋の暮迦陵頻伽の声が舞う玉響海月
故郷やあてなく歩く秋の暮田村モトエ
秋の暮また三年の内視鏡鱈瑞々
秋の暮星に手届くはずなのにだんがらり
問五だけ白紙のままで秋の暮団地のジャッキー・チェン
秋の暮了見だけはアウトローチームニシキゴイ太刀盗人
秋の暮ドヴォルザークと羅国の香智同美月
止まりたる電波時計や秋の暮ちょうさん
秋の暮じょんがら節の撥捌き千和にの
二時間のフォークソングや秋の暮つーじい
秋の暮友は旅立ち我ひとり司蓮風
坂登る母の背揺れる秋の暮塚本隆二
友の文じんわりほぐれ秋の暮槻島雫
病む妻のかたはらに添う秋の暮月城龍二
秋の暮ワニの形の雲消えるツキミサキ
秋の暮電話ボックス仄明かり月見里ふく
秋の暮出たドロップはハッカ味月夜田しー太
秋の暮はためく日々に肌抱え月夜案山子
最後まで看れずにごめん秋の暮つくも果音
秋の暮三匹の猫待つ我が家辻ホナ
秋の暮たまさかに来る子らの声辻美佐夫
下町や焙煎香る秋の暮辻本四季鳥
秋の暮外食せむと妻誘ふ辻栄春
校庭に足跡あまた秋の暮つちや郷里
よくはやる店のパーキング秋の暮つついぐれちゃん
踏切や魔の赤々と秋の暮津幡GEE
ただいまの声聞きたくて秋の暮れつぶ金
ラスボラの屍つまむ秋の暮坪山紘士
秋の暮文集あせて破られて鶴小なみ
掃き清め参道静か秋の暮手嶋錦流
まっくらの通夜の道行く秋の暮哲山(山田哲也)
彗星の尾の伸びてゆく秋の暮てつねこ
薄味の病院食や秋の暮寺尾当卯
夫婦して片づけ出来ぬ秋の暮テレシア
かくれんぼ鬼先帰り秋の暮れ典雅
秋の暮れ空き地の土管野球帽電気石
マヨ買い忘れ引き返す秋の暮てん子
夫婦喧嘩してあとは静かな秋の暮天山郷
秋の暮プレイリストを共有す土井あくび
トロイメライ母へ駆け出す秋の暮苳
街路樹や光集める秋の暮東海雨丸
お迎えの遅いと泣く子秋の暮東森あけば
雨音をそっと束ねて秋の暮時か
待ちながらスマホの鳴らぬ秋の暮時小町
急ぐ背に暗闇の幕秋の暮徳庵
秋の暮れツマミわけあう吾と猫ととこやまよもこ
あやまちはだれだつてある秋の暮どすこい早川
とぼとぼと犬が河原を秋の暮十津川ポロ
秋夕や天使の梯子しまなみへどゞこ
塾待ちの車列また伸ぶ秋の暮となりの天然水
秋の暮まちまち向いた譜面台戸根由紀
先生の車をレノン秋の暮とはち李音
餅投げの当たりくじ無し秋の暮冨川友香理
秋の暮ざわざわとする森の奥登盛満
明日こそは電話するらむ秋の暮友@雪割豆
実のなりて滅びの予感秋の暮とよ
遠ざかる汽車を眺める秋の暮豊岡重翁
ししゃも焼きちぢむ背中と秋の暮虎川とら
秋の暮ポッケの中の二百円豚々舎休庵
秋の暮バスタオルまだ湿ってるとんぶりっこ
豆腐屋のらっぱパープー秋の暮内藤由子
秋の暮遠のく景色は虫の数naoki
ガード下苔も色付く秋の暮なか鹿の子
さらさらと消えていくのは秋の暮なかかよ
ためいきの猫に移りぬ秋の暮中里凜
手をつなぎ親子の絆秋の暮中澤孝雄
銃規制やる気なき国秋の暮中島走吟
校庭で最後のノックや秋の暮中島葉月
農機具のカバーの縒れや秋の暮永田千春
秋の暮影長く伸び家路かな中谷愛
透く風や秋の暮際流るるをおさしゅー
秋の暮どこより早し山間部仲間英与
後ろ手に曲がる背伸ばし秋の暮仲操
飛球追い掛け合う声や秋の暮中村こゆき
秋の暮未練まるめて淡路駅中山由
秋の暮細長き影帰り道流れ星
夢覚めてなお夢に漂う秋の暮七五三五三
秋の暮目的もなく街に出て那須のお漬物
秋の暮手のぬくもりをありがとうnothing
秋の暮静かに沈む鳥の影なおぱぱ
秋の暮森へ沈んでゆく鴉夏椿咲く
秋夕や急ぐ鴉の影落とす木村波平
御朱印や閉門迫る秋の暮夏目坦
手ぬぐいは麻の葉もよう秋の暮ななかまど
七十を訪ねる遠慮秋の暮菜々の花畑
秋の暮娘(こ)が来てくれて帰りけり生天目テツ子
五枚目は湖面に富士や秋の暮奈良岡歩
断捨離に一喜一憂秋の暮ナンカラ牛眠
父の仕草思ひ出しては秋の暮南全星びぼ
LEDらんぷ呼吸(いき)する秋の暮西尾至雲
秋の暮路地に聞こゆる手毬唄西尾照常
手の甲の数多の染みや秋の暮西村小市
ひかり死に光生まれる秋の暮二重格子
退職の延期の通知秋の暮入道まりこ
ゆびきりのさよならまたね秋の暮二和田美枝子
沈黙の三者面談秋の暮沼宮内かほる
秋の暮破れたままのコタツカバーねがみともみ
落日や釣瓶は果てど秋の暮猫塚れおん
軒下にタオル一枚秋の暮猫辻みいにゃん
設問者の気持ち答えよ秋の暮野井みこ
害獣もジビエとなりし秋の暮農鳥岳夫
回る秒針ひたひたと秋の暮野口雅也
秋の暮桿細胞のふるへだす乃咲カヌレ
秋の暮コロッケ十円玉三つ野地垂木
叢は裸となりて秋の暮埜水
拓郎の「流星」聴くや秋の暮野瀬博興
勉強もスポーツもだめ秋の暮野点さわ
先頭は肉屋のコロッケ秋の暮野々かおり
手水鉢夕陽沈めて秋の暮ののクラブ
合唱部テノール響く秋の暮野の小花
ランプの灯ほろ酔いジャズで秋の暮野原一草
公園のポツンとボール秋の暮則本久江
下校時にライト点灯秋の暮華衣
自動的整列乗車秋の暮白山一花
車庫扉閉め振り返る秋の暮橋爪利志美
雨降りや猫が膝乗る秋の暮橋野こくう
かくれんぼ一人残った秋の暮波止浜てる
秋の暮寝起きの祖母が時間問う初野文子
やまなみに赤いぬくもり秋の暮花笠きく
秋の暮あれは猫バスかもしれぬ花咲明日香
秋の暮せきたてられて陽が沈む華花開く
何となく今日はレンジで秋の暮花山微風
ついに閉店の貼り紙秋の暮パピヨン
杉の葉で風呂焚き付けて秋の暮はむこ
星々の出づるも近し秋の暮葉森木霊
秋の暮喫茶の隅の友の声早川令子
長病みにいちるののぞみ秋の暮林梅子
ゲバ文字がこんな処に秋の暮林省造
生り物の色しまひゆく秋の暮林田リコ
ご褒美はセブンコーヒー秋の暮林美典
列車待つホームの端に秋の暮原島ちび助
国王の飛ばすランタン秋の暮原田くろなつ
ピンク色のびんばふ濯いで秋の暮れ御成山
山襞の翳りの深き秋の暮原野乃衣
秋の暮マンション群の灯に急かる原善枝
今日もまた腹脂増える秋の暮針子のねこ
軒先を滴り落つる秋の暮haru_sumomo
人波に紛れし家路秋の暮はるるん1号
秋の暮犬の散歩に集ふ人伴田至誠
淋しいと言わずまたねと秋の暮パンドラみかん
歯にひつくフロランタンも秋の暮万里の森
秋の暮残業無いのに帰路暗しひーちゃんw
黒板のカースト制度秋の暮柊琴乃
遠太鼓最後ひと打ち秋の暮東山たかこ
更新の終わらぬままに秋の暮匹田小春花
エンディングノート書き足す秋の暮樋口ひろみ
なんかって口癖まねる秋の暮ピコリス
早足で習字教室秋の暮ひと粒の種
尻すぼみ話の先や秋の暮れひな扶美子
新幹線「乗りたくない」と秋の暮向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
立ち止まる懐かしき風秋の暮ひまわりと碧い月
一人旅町中華食む秋の暮ひめのつばき
土だんご転がる坂よ秋の暮平岡梅
店先の売れ残り花秋の暮平松一
秋の暮公園のそば歌ひつつ平本文
にごり湯を入れて小窓に秋の暮昼寝
秋の暮もう帰ろうよ影法師ひろ里
秋の暮単身寮に灯まばら広島あーやあーや
たなさきに「春夏冬中」秋の暮れ廣田惣太郎
輪回しの少女に遊ぶ秋の暮弘友於泥
電話切りやはり独りの秋の暮広野光
老木消ゆ整地の済みぬ秋の暮琵琶京子
秋の暮母の口癖資格取れびんごおもて
何もかも不要になりし秋の暮FUFU
タワマンも見渡す限り秋の暮深澤健
香ほのか頭上を仰ぐ秋の暮深蒸し茶
秋の暮日を遣るだけと母の言ひ福井桔梗
秋の暮友へのLINE既読なく福川敏機
良き縁も奇縁もありて秋の暮ふくじん
再値上げ刺身の細さよ秋の暮福弓
物干しにぼっちの靴下秋の暮ふさ女
長電話八方塞ぎの秋の暮藤川哲生
居酒屋のいっぱいの酒秋の暮藤川雅子
秋の暮明日も晴天農作業藤沢・マグネット
母の呼ぶ声にいちぬけ秋の暮藤澤みちお
百代を追うて行人秋の暮藤白真語
秋の暮制限かかる立ち話藤本だいふく
ワイン酒場バラード歌ふ秋の暮藤本仁士
「さよなら」と言えぬ横顔秋の暮フタバ凛
秋の暮嗚呼親友の三回忌二見歌蓮
道が濡れ雲間に光秋の暮敷知遠江守
温めし牛乳の泡秋の暮船橋こまこ
捨て置ける椀の飯粒秋の暮ふにふにヤンマー
うつむいて歩く鴉や秋の暮冬乃子
西空に明星見るや秋の暮れ古澤久良
古本に栞を挟み秋の暮古道具
次に向け心ざわざわ秋の暮ヘッドホン
場所踏みのシャギリ掛け声秋の暮鳳凰美蓮
秋の暮れ地車しまいひと休み宝松苑
黒髪や首筋の風秋の暮暮戯
数式の解に埋もれ秋の暮ほしぞらアルデバラン
秋の暮渋滞の列王蟲めく干しのいも子
形見分けの服地はタフタ秋の暮星詩乃すぴか
秋の暮砂場にままごとのお椀ほしの有紀
階段にラムネ一粒秋の暮ほしのり
傷心に当たり付きガム秋の暮母墨@藻の霊
図書室の塵光りをり秋の暮細葉海蘭
本当はちょっと寂しい秋の暮菩提寺太郎
塾帰り彗星探す秋の暮ほたる純子
お迎えに走りに走る秋の暮凡々
秋の暮暮れるばかりで飽きは無し本間滋之
秋の暮夕餉支度の母をふと本間美知子
LINEにて友の通夜知る秋の暮凡狸子
秋夕に下向く我へチョコレート舞矢愛
御子達や母の静謐秋の暮前澤まき
波の音や夢のまにまに秋の暮雅蔵
秋の暮れ句にも腹にもいい景色町家の日々輝
バラードが距離を縮める秋の暮松井貴代
秋の暮土手の渋滞始まりし松井英雄
被災地の児等の縄跳び秋の暮松井政典
秋の暮錦江湾に写る空松浦宣子
ハモニカの響き懐かし秋の暮松浦姫りんご
跡継ぎの庭木手入れや秋の暮松岡重子
秋の暮娘からのメール誕生日松尾老圃
秋の暮れ一品加えて手短に松沢ふじ
秋の暮バス停ひとつ我の時間松島美絵
日を重ね歳を重ねて秋の暮まつとしきかわ
ひとり居のテレビはうつろ秋の暮松永好子
秋の暮買い物かごにヨーグルト松野蘭
秋の暮夕方便のバス点す松本厚史
通り雨虫も隠れて秋の暮松本牧子
新番組ラジオの馴じむ秋の暮松山のとまと
無重力ふとした自由秋の暮れ的場白梛
雨戸閉め時計代わりの秋の暮まやみこ恭
秋の暮鍋大小を並べたり瑪麗
ばあちゃんと空を見上げて秋の暮まりい木ノ芽
アパートの鍵穴探す秋の暮丸山隆子
ふるさとは城のある街秋の暮丸山よし子
出口とは入り口なりし秋の暮まんぷく
菜園に家陰迫る秋の暮美衣珠
秋の暮すぐ暗くなり心細し三浦ゆりこ
秋の暮足伸ばすには遠き人三上栞
もうすこし富士見ていたき秋の暮れみかりん65号
想い出を捨てて拾って秋の暮みかん成人
病室のカーテン閉じる秋の暮水谷未佳
秋の暮ライブ前日ストレッチ水タマリ
一軒の本屋の閉じる秋の暮三田忠彦
チャルメラの声透き通る秋の暮三日余子・いつき組広ブロ俳句部
隠れんぼ呼ぶ声遠く秋の暮光月野うさぎ
秋の暮高原駆けるTao太鼓ミツの会
妣の庭に遊ぶ風の音(ね)秋の暮光森やこ
故郷の声聞こえたり秋の暮緑区のへこ
何月と痴呆の母は秋の暮ミナガワトモヒロ
秋の暮ねぐらへ急ぐカラス二羽湊かずゆき
ラッパ手に頬が膨らむ秋の暮港のパン屋
子ら帰すチャイム早まる秋の暮峰木一紀
秋の暮かくれんぼした給水塔嶺乃森夜亜舎
ミルクティーため息溶かす秋の暮宮城海月
籐椅子に祖父の残り香秋の暮都乃あざみ
秋夕や気球の灯る川沿ひは宮下ぼしゅん
秋の暮子の手を引いて急ぎ足美山つぐみ
秋の暮ページ繰る手が少し急く深山柚仁
慟哭に親友の影秋の暮妙
手ぬぐひを椅子の背に掛け秋の暮眠兎
誰がために虫けらすくふ秋の暮夢雨似夜
また一つ増える薬よ秋の暮無弦奏
秋の暮早く見つけてかくれんぼむじか
勤め上げ助手席花束秋の暮ムシ・ミカミ
サイレンの近づいて去る秋の暮睦月くらげ
部活帰り三角チョコパイ秋の暮無月さよ
夫ありし残る歩行器秋の暮村のあんず
路地裏のパン屋の醸す秋の暮むらのたんぽぽ
名優の笑顔寂しき秋の暮室依子
洒落込んだネイル剥ぎたき秋の夕暝想華
パトカーのサイレンの音秋の暮れ恵のママ
波の音遠く母遠く秋の暮目黒智子
秋の暮沈む夕陽に親子鳥本橋理音
秋の暮遊びは途中帰り道元村幸月
別れびと恋しく慕う秋の暮樅山楓
街燈の吾の影うすし秋の暮桃香
秋の暮忘れ去られた鞠ひとつ森薫
秋の暮値引き惣菜肴とす森上はな
秋の暮南を目指す宇宙船森きやつか
裏切りの我にやさしき秋の暮森重聲
妻のゐぬ家にも来る秋の暮森嶋ししく
蛍光灯点滅激し秋の暮もりたきみ
声残し飛んでゆく鳥秋の暮森中ことり
断捨離の部屋の広さや秋の夕暮森の水車
誰の声振り返る子の秋の暮森茉那
遊び疲れし吾子負ぶう秋の暮れ諸岡萌黄
古希迎え田畑の風や秋の暮れ焼津昌彦庵
年老いて尿意が近い秋の暮八木実
一人呑み一つ年取る秋の暮柳生利恵子
秋の暮小路を急ぐ耕うん機安元進太郎
訃報欄身をふりかえる秋の暮痩女
聞き及ぶ投票率や秋の暮やつがねすわこ
秋の暮うちに来るかと子猫抱き柳井るい
サーファーの真白き足裏秋の暮八幡風花
姉たちの笑顔恋しき秋の暮れ山内泉
自転車のミラーに映る秋の暮山岡寅次郎
ビル風を思い知る街秋の暮山川腎茶
裏道の三毛すり寄りし秋の暮山川たゆ
秋の暮十年日記読みかへす山口絢子
秋の暮晴れ間少しの水浅葱山口香子
子らの頬透けて見えるや秋の暮山口笑骨
友去りて土間の翳りよ秋の暮れ山口愛
石蹴れば川にぽとんと秋の暮山崎佳世
切れかけの蛍光灯と秋の暮山崎力
古稀過ぎてなほ母恋し秋の暮れ山育ち
秋の暮シミシワニキビメイク浮く山田一予
女湯に糸雨と湯気あり秋の暮山田啓子
飯茶碗ひとつ流しに秋の暮やまだ童子
秋の暮夕餉の支度早くなり山田はつみ
秋の暮時よ止まれや夕日手に山博山
待ち人来ず四十路前の秋の暮山彦一水
急ぎ足買い物は鍋秋の暮やまもとのり。
見違えし美しき人秋の暮山本葉舟
焼けながら濃紫に秋の暮山本蓮子
秋の暮音楽隊の巡査長山姥和
(大山のぶ代さんへ)四次元ポケット残して秋の暮を飛ぶU-KIfromJuicyJam
えり立てて野の道急ぐ秋の暮れゆうK
秋の暮ままごとのござ残されて雪子
犬逝きし褪せた首輪や秋の暮ゆず柴
犬抱き見送る影や秋のくれ宙美
秋の暮北前船と客船と夢一成
足止まる色鮮やかな秋の暮夜香
秋の暮君へのLINE既読待つ横須賀うらが
愛猫の荼毘から二十日秋の暮横田信一
野良犬の鳴き声一つ秋の暮よしぎわへい
今月でパート辞めるの秋の暮吉田蝸牛
新しい部署へ挨拶秋の暮吉田かのこ
秋の暮ツーストライク球が来て吉田ルイ
絶叫のエゴと化しゆく秋の暮吉野川
秋の暮韓国ドラマの完結すYoshimin空
鮮血の匂ひの残る秋の暮余田酒梨
秋の暮空は橙迷う旅辣油酒
グランドを整備のナイン秋の暮楽和音
輪郭の溶けゆく大樹秋の暮ルーミイ
今風の車走らせ秋の暮わきのっぽ
駅前の[オマケするよ]と秋の暮和光
秋の暮白内障の手術終えわたなべすずしろ
鳥を模す壁画の団地秋の暮渡辺桃蓮
釣人の立つ影深く秋の暮渡邉花
ビニールのハウスの破れ秋の暮渡邉心水(渡邉竹庵を改めます)
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
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◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
◆ひとことアドバイス
●俳句の正しい表記とは?
秋の暮 けむり立ち込む 峡の村阿曽遊有
吹く風が 肩を抜けてく 秋の暮甘栗
秋の暮 静かに染まる 山の端まる
玉響に 懐う人あり 秋の暮三日月月洞
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●兼題とは
ちちろ道 揺れる背中に ぬくい母たろうすけの餌
いわし雲あかね色なる夢の帰途岩清水鰯
秋しぐれ無言歌の響き天昇る小柴美音
赤とんぼひのき舞台へ吾子猛るゴロゴロ
青蜜柑採る有明海に入日出藍
宵月や溢るる杯は恋い焦がれ森和希
秋落暉亡母の齢追い越せり森宮野原
じゃあまたと子どもの声ぞ秋の声羽馬愚朗
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「秋の暮」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●季重なり
蔓引けばむかごほろほろ秋の暮上原まり
柿二つ甘味を感じる秋の暮れきと3
大根の間引き楽しむ秋の暮幸内悦夫
夕星の在る空寒き秋の暮笹野浜木綿
冬支度こたつ取り出す秋の暮中嶋緑庵
静寂と真っ赤な夕焼秋の暮野の菫
秋の暮さば雲ぬぐうクレーン車甫舟
秋の暮姉妹そろいて月見酒松尾美郷
秋の暮胸のさみしさ落葉よせ恵美恵
日の暮れに隙間風吹く秋の暮やずさん
秋の暮長き夜に聴くドビッシー吉富孝則
リバイバルうたた寝寒し秋の暮楽俳
赤信号映し銀杏や秋の暮甲斐ももみ
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「秋の暮」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●秋の暮・暮の秋
秋も暮れぼんやり浮かぶ背番号小山祐治
濡れ釘あり錆びし日去り秋暮れぬ坂島魁文
同じ秋暮るるや武田父子の像辻基倫子
「暮の秋」は、秋という季節の暮(終わり)のこと。「秋の暮」とは意味の違う季語です。これら三句は、「暮の秋」の意味で使われているのではないかと思いました。
だいだいの深みますかな秋の暮れ オンアイス
「橙」だと季語になりますが、「橙色」だと季語にはなりません。が、夕暮れの空の変化をこんなふうに表現する句は、かなりあります。「秋の暮」の空を再度観察して、描写の精度をあげましょう。
●句としては成立しているのですが……
靴の山アウシュビッツに秋の暮 伊藤節子
衝撃的な光景です。が、「アウシュビッツ」と「靴の山」を取り合わせた句は、これまでにもかなり見てきました。「アウシュビッツ」と書かずして分かるような「靴の山」の描写に挑んで頂きたいと思います。
●今回選外となったものは……
自句に対して、最も甘い理解者が作者自身です。自分では、ちゃんと表現できているつもりでも、読者にとっては大変不親切な句が多々ありました。
イマイチ意味が読み取れない、あるいは曖昧な句。一つの単語に意味が多数あるため、読みが確定し難い句。入力ミスなのか意図的なのか、判断に迷う句等など。
出来上がった句を少し寝かせ、時間をおいてから、客観的な目で最後の推敲をすることをオススメします。
お待たせしました!10月の兼題「秋の暮」の結果発表でございます。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。「秋の暮」といえば、『枕草子』にも「秋は、夕暮」と始まる文があります。日本人は千年前から秋の暮にしみじみしていたのだと思うと、なんだか面白いですね。
12月の兼題「雪催い」もふるってご応募ください。少し早いですが、今年もたくさんの投句をありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いいたします。