夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
3月の審査結果発表
兼題「遅日」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
風景になつて遅日の磯に居る
小川天鵲
-
夏井いつき先生より
「遅日」は時候の季語です。意味としては「日永」に似ていますが、お日さまが傾いていくのが遅くなってきたという点に本意の軸足があります。 「風景になつて~居る」という叙述は、自分あるいは自分を含む人々と解釈しました。家族や友人と楽しむ春の磯遊びでしょうか。潮の引いた磯の潮だまりを覗きこんだり、貝を採ったり、磯巾着を突いてみたり、一緒にお弁当を食べたり。ひょっとすると、春の愁いを心に「遅日の磯」に一人佇んでいるのかもしれません。まるで自分自身が「風景になつて」いるかのようにという把握が、映像を持たない時候の季語「遅日」を映像として表現しています。第三者の目になって捉えた視点を大いに誉めたい作品です。
海鳴りのやうに遅日の音叉はも
ほろろ。
他の季節にも音叉は鳴らしますが、「遅日の音叉」は殊に「海鳴りのやう」であるよと感じとった一句。「~はも」は感動や詠嘆を表す連語。音によってしみじみと「遅日」を味わっているのです。
遅日とはマリービスケットの甘み
横縞
時候の季語「遅日」を味覚に喩えた作品。大正時代終わりから愛されてきた「マリービスケット」の優しい「甘み」は、いかにも春らしい味わい。三時のおやつが終わっても日の入りにはまだ少し。
病室に遅日明るし稼ぎたし
山田喜則
「病室」で迎える「遅日」。いかにも明るい春ですが、いつまでここに……という焦りも生まれ始めます。下五「稼ぎたし」が、昨今のコロナの現状も含め、切実な呟きとして読み手の心に響きます。
けふ無職となりて遅日の隅田川
可笑式
「けふ無職」の類想はあるのですが、後半の映像がさりげなく巧い作品。無職でなかった昨日の隅田川、そして今日の隅田川。必要以上の感慨を述べず、季語と地名を信じる。これが俳句の力です。
退部してとつぴんぱらりの遅日かな
斉藤立夏
「とつぴんぱらり」は秋田地方で昔話などを締めくくる言葉。中高生の部活を思いましたが、社会人のクラブチーム等でもよいでしょう。下五「遅日かな」の詠嘆まで、絶妙なバランスの一句です。
鰐の眼は遅日の膜に濡れてゐるいかちゃん
遅日とはスーダラ節のことである山本先生
遅き日やレジャーランドの錆びついて常幸龍BCAD
石鹸がくずれ遅日の女子トイレ南風の記憶
コピー機の飽きずに紙を吐く遅日足立智美
サービス残業の印字ガチャン遅日が歪むいさな歌鈴
恋文を古書ごと買ひし遅日かな石井一草
名水を汲みて遅日のタンク二個小川都
きょうりゅうのしっぽのつけね縫う遅日ギル
アザラシのぷひと遅日にひらく鼻ぐ
サイレンけたたまし遅日の消防車秋鹿水本
ジャングルジムのてっぺんの空遅日愛燦燦
遅き日の朱肉の蓋を開けてやるあいだほ
回旋塔錆のにほひや夕永し藍野絣
雨音にまだ力ある遅日かな葵新吾
はなちゃんと遅日の上野動物園青い月
遅き日や揉め事絶えぬおうちごっこ蒼空蒼子
真白なる遅日の軍手外しけり赤松諦現
ぼくの脳まだゆっくり腐り遅日赤馬福助
絵はがきはきみへ遅日のちひろ展明惟久里
瘡蓋を剥がし損ずる遅日過ぐ秋沙美洋
眩しさを掴む遅日のルアーかな秋さやか
錠薬の粒ひかりをる遅日かな秋吉康
ハシビロコウの欠伸のびやか遅日かなあさきまほろ
夕波に崩さるる城遅日かなあさぎいろ
献血を終へて遅日の目の乾き朝月沙都子
殴る蹴る殴る遅日のサンドバッグあずお
繊弱やかな魚を追う魚を追う遅日あたなごっち
常温でいける酒訊く遅日かなあべ積雲
遅日かな寺の蝋燭やや青しあまぐり
手風琴蛇腹伸び切る遅日かな雨戸ゆらら
北国の遅日受け続けるサーブあみま
うたた寝や遅日の貌の半死めく雨子
かばの舎に遅日喰みたる音ぶわり綾竹あんどれ
遅き日や職業欄は旅人と新多
餡を炊く木杓子ゆるく遅日かな蛙里
並びゐる鸚鵡に餌付けする遅日アロイジオ
サーファーの茶髪遅日の由比ヶ浜アン
昔話聞き書き編んでいる遅日飯田淳子
川底の遅日の石はつつかれて飯村祐知子
遅日なり墓地に聞こえしハーモニカ粋庵仁空
千年のひかり遅日の礼拝堂郁松松ちゃん
羽ほしき遅日の肩甲骨痒し池内ときこ
破顔して悼むにちょうどよき遅日池田水遊
親方の鋸は遅日を挽きにけり池之端モルト
金曜の遅日の風の琥珀色イサク
ボロボロの赤本片す遅日かないしいるぴなす
影踏みの声遠ざかる遅日かな石岡女依
暮遅し焼肉店のハッカ飴石垣
採血のゆっくりみちる遅日かな石川聡
夕空に金の星ある遅日かな石塚彩楓
洗濯物の皺に遅日の愁いあり石橋海翔
調律の狂へる遅き日のピアノ石原由女
「もう」と言い「まだ」と答えるこの遅日遺跡納期
型紙の丸まっている遅日かな磯野昭仁
聞き取れぬ語尾にうなづく遅日かな板柿せっか
公園の将棋盤閉じ遅日かないたまきし
君といる鼓動はがゆい遅日かな市川りす
大作の砂場トンネル遅日かな一番ぶろ
淡墨の埴輪の杜の遅日かないつかある日
蛇口より膨らむ雫割れ遅日斎乃雪
キャンバスにてらてらと遅日の厚み一斤染乃
つひたての心許なき遅日かないづみ紫香
磨りガラス遅日の粒子塗りたくるいづみのあ
父と子の化石発掘待つ遅日伊藤亜美子
「哀愁」は二本立てで観た遅日伊藤れいこ
モノラルのジャズ遅日の老舗喫茶店井中ひよこ号
遅き日の路地をビー玉影かろし伊奈川富真乃
店しまふ前の八百屋のこゑ遅日いなだはまち
牛百頭数へ数へて遅日かないまいやすのり
我が足と思えぬギブス春日遅々今井淑子
竜頭巻く遅日の映画館を出て妹のりこ
暮れかぬる立ち飲み阪神の帽子伊予吟会宵嵐
もて余すたすきの長き遅日かな入江幸子
遅日かな石のベンチの温き夕いろどり五島
断捨離の写真眺むる遅日かな五郎八
復刊のちびくろさんぼ買ふ遅日色葉二穂
赤青のヒヨコ見せられゐて遅日ウィヤイ未樹
墓じまい酒酌み交わす遅日かなういろ丑
消防団くるくるホース伸び遅日上野眞理
膝に置く防災袋暮れかぬる上原淳子
遠富士の蒼さ増しゆく遅日かなうさぎさん
コラーゲン多き骨付煮る遅日うさぎまんじゅう
自転車は軽し遅日の冒険譚歌い鳥
遅日なるようやく鮮やかなる孔雀うどまじゅ
登り窯勢いを増す遅日かな海口竿富
思ひ出を燃やす遅日の一斗缶海野碧
遅き日よ不法投棄の家電消ゆ梅里和代
「同意しますか」までが遅日の契約文浦文乃
赤城嶺はまだ雲抱いてゐる遅日浦野紗知
客の来ぬ店に座りて遅日かな麗し
抜歯跡に血餅固まる遅日映画館で値切る
漱石の遺稿の匂ふ遅日かな朶美子
ハルは柴犬遅日の譲渡会M・李子
砂粒をズボンの裾に遲日の子えんかず
処方箋五枚の薬遅日かな近江菫花
入港の父と遅日の一番風呂おおい芙美子
遅日とはアコーディオンの多重音大紀直家
長尻の常連はんの喪や遅日大黒とむとむ
叱られて棒で字を書く遅日かな大阪駿馬
先生の横顔へ遅日のひかり大津美
暮遅し空港で買ふちんすこう大庭慈温
砂噛んで波の引きゆく遅日かな大村真仙
スリッパに内股の癖ある遅日大和田美信
雨音はピアニッシモに夕永し魚返みりん
山の湯につかりだぶだぶ遅日かな岡﨑宙夏
沖を行く子舟の見えて遅日かな岡田明子
猫の忌に猫会ひに来る遅日かな岡田雅喜
びんの底カラメル残り遅日かな小川さゆみ
墨堤に手風琴鳴る遅日かな小川野棕櫚
漣に放つ恋文暮れかぬる小川めぐる
恐竜の歯並びきれい遅日光おきいふ
杖のさき遅日の影の寄り添うて奥田早苗
列車より手合はす相馬の海遅日奥寺窈子
遅日の海誰のものでもない地球小倉あんこ
ぶち猫がボスや遅日の船だまりおぐら徳
竜頭巻くムーンフェイズも遅日かな小栗福祥
浸水の線を見上げる遅日かなおこそとの
クリークのまっすぐ光る遅日かなオサカナクッション
風来坊遅日の無人駅に立つ小田慶喜
遅き日を木彫りの龍の眼は戯け越智空子
輪まわしのきんいろ空へ落つ遅日お天気娘
遅日やさしい草しずかに抜きつつ音人妙歌
急患の腕ぶら下がる遅日かな小野睦
汽水湖がやけにうるさい遅日かな海音寺ジョー
遅き日や立木のような街路灯甲斐紫雲
「は」はなんで「わ」と読むのだろ子と遅日海瀬安紀子
雨粒の根元見へたる遅日かな海峯企鵝
テキパキのパキがポキンと折れ遅日火炎猿
テキーラのかをり遅日のマリアッチ影山らてん
堤から天守見えてる遅日かなかこ
遅日の椅子積まれ今日より空店舗樫の木
遅日なり高値のついた初版本和舟豆
猫の毛のぬるき匂ひの遅日かな加世堂魯幸
残り湯を啜る遅日の洗濯機かつたろー。
「住職の手作りスープカリー」遅日克巳@夜のサングラス
へその緒の先へと続く遅日かな花伝
不忍池の花鳥にあそぶ遅日かな門未知子
筆ペンの墨補いて遅日なるかとの巳
怪獣として倒されてなお遅日仮名鶫
病室の花瓶の澱となる遅日かむろ坂喜奈子
引退に重き遅日のジムのドア亀田荒太
ハシビロコウ眼が左向く遅日かな亀田かつおぶし
ポスターの旅は楽しげ駅遅日亀山酔田
遅き日をゆっくり泣いていいんだよ花紋
刺繍針裏に表に遅日かな加裕子
遅き日や追試用ドリルの白さ加良太知
黒猫は流線型となりて遅日狩谷和寓
五枚目の給食袋縫う遅日河原つばめ
寄せる波数えて過ぎし遅日かな河村静葩
再放送同じところで泣く遅日閑々鶏
飼犬の眉で応ふる遅日かな勘八
水上のたわむ遅日の摩天楼喜祝音
象岩のまだよく見える遅日かな季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
カラムーチョ遅日を疼く鼻のにきび北川そうあ
すれ違う荷台の馬の目や遅日北野きのこ
遅日のレジ確か単4だつたよな北藤詩旦
旅客機や遅き日の展望デツキ北村崇雄
押しピンのひとつ遅日の掲示板きなこもち
逆光の遅日の鳥を捉へけり祺埜箕來
波を待つサーファー空を見て遅日城内幸江
白杖の人ふと仰ぐ陽や遅日木ぼこやしき
キャッチボールおまけの五球遅日かな木村となえーる
心経の遅日列なす禅の寺京野秋水
マネキンの首真後ろに向き遅日清島久門
暮れかねるおつとめ品の文字の赤久我恒子
たこ焼きのたこ掘り出してみる遅日草野あかね丸
遅日なり高鳥山から鉄拐山へ楠田草堂
召喚魔法三回間違えて遅日ぐでたまご
米とぎのみづの和らかなる遅日くま鶉
「どこでもベープ」腰に遅日の畑へゆく倉岡富士子
はじめから懐かぬ羊追ふ遅日倉木葉いわう
迷ひたくなつて遅日の知らぬ道倉木はじめ
街灯にもたれ遅日のアコーディオン倉嶋志乃
うたた寝のうさぎ薄目の遅日かなくるみ今日子
粛々と物故の欄にゐる遅日薫夏
時折のトロンボーンの音遅日くんちんさま
遅き日に舞い上がる砂ビルの街景清華
特養の書類抱えている遅日けーい〇
ふくよかに遅日の河馬の咀嚼かなケレン味太郎
春日遅々海に胎動ありぬべし健央介
鎮魂の浜に遅日の汐満ちるケンG
輪郭の溶ける遅日や摩天楼研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
旅先のバスルームにゐる遅日かな兼珍
遅き日やギリシャ映画の長回し公木正
擂り鉢の豆腐とろとろ遅日かな幸田柝の音
うすぐらき遅日の風呂にとけるひれ古賀
横向きの親知らず抜歯す遅日こけぽて丸
スリーメン百本決める遅日なり小笹いのり
遺された着物広げる遅日かなこずむす
自転車も影も遅日の路地曲がる木染湧水
多磨墓地に母と迷いて遅日かな来冬邦子
遅日なる街ガス燈の閑さうな小殿原あきえ
色あせた表紙遅日の接骨院古都鈴
里山の遅日を息吹なまぐさし小林たえ
早退すうがひ薬は遅日のあを駒水一生
ゴムボート白にさざめく遅日かな小山祐治
巻貝の蓋積み上がる遅日かなGONZA
乗り越しの差額を払ふ遅日哉今藤明
遅き日の鬼ごつこいつまでも鬼今野淳風
漱石の猫集まりし寺遅日齋藤杏子
円清に溶けて半透明の月遅日齋藤むつは
廃線跡のソーラーパネル遅日かな早乙女龍千代
母の忌に拡ぐ遅日の日記帳榊昭広
やじろべえ遅日の影を揺らしをり榊原ゆか
遅日に抱く父の骨まだほんのり坂まきか
検査終え遅日の家の明るさよさくやこのはな
はなでのむちじつのぞうがみずをのむさくら(4才)
遅日のまなざし街路樹の瞬きさくら亜紀女
チョコレート工場仄匂う遅日雑魚寝
前立腺癌放置す我が遅日砂舟
陰干しの薬草匂ふ遅日かな紗智
空き缶の泥鰌逃げだす遅日かなさとう菓子
ぞろぞろと回診の来る遅日かな佐藤志祐
一筋の鬢付けの香の過ぎ遅日佐藤儒艮
グアテマラ豆から挽いて遅日かな佐藤美追
赤点の境界線にゐて遅日さとけん
遅日てふワインの澱の如きもの真井とうか
化石めく吾の足爪を切る遅日さぶり
遅き日の床の木目の動かざるさむしん
ちちははの会話ちぐはぐなり遅日澤田紫
麒麟らのゆるり遅日の側対歩沢拓庵
ダムは雨小さき列車のゆく遅日澤村DAZZA
産休の教師鶏買ふ遅日かな山太狼
水戸藩の江戸へ十里の遅日かな紫瑛
砂時計返しつつ遅日の電話茂る
問題児二名遅日の牛丼屋獅子蕩児
たずね人保護の無線やふと遅日芝野麦茶
夢殿の遲日に放る月白きしぼりはf22
引き出しの正露丸嗅ぐ遅日かな島田あんず
けふ三本目のひかうきぐも遅日嶋田奈緒
朱富士を愛でる遅日のサボタージュ清水縞午
太鼓橋反り上がり佳き遅日なり清水三雲
あのうちは赤児の匂ひ遅日かな芍薬
暮遅し洗えばひかる搾乳缶じゃすみん
キャンドルの芯まっさらの遅日かな沙那夏
背の順を崩す本棚遅日かな砂楽梨
がんもどき揚がり遅日の地球かなシュリ
パエリアのページの折り目遅日かなじょいふるとしちゃん
鍬上げて腕の余力遅日かな笙女
標本の鱗粉渇く遅日かなジョビジョバ
縫い針に絡めとられて遅日かなしらふゆき
ポマードを盛りて遅日の導師かな白プロキオン
いつ還す遅日へ洞窟(ガマ)の御霊らを白よだか
湧水の味やはらかき遅日かな真繍
教え子と分からぬ恩師訪ふ遅日新濃健
宿帳の無職にレ点遅日かなしんぷる
遅日なり青木ヶ原に音を聞く水花
選挙カー島を巡りて遅日かな水夢
時計屋の独り言ちしてゐる遅日すがりとおる
遅き日やたたみの上に風のかげ杉浦あきけん
遅日かなローズマリーの踏まるる香鈴木由紀子
御神樹のめくれし皮の香や遅日鈴ノ樹
折り紙の皺を重ねて遅日かな主藤充子
ご褒美のなあんも無くて遅日かなすぴか
水面から遅日のカバが鼻を出すすみれ(9才)
遅日なるわたしのなかをゆくさかなすりいぴい
君を待つ遅日や書架を回遊しせいしゅう
干拓の遅日クレーン頸を折る清波
夕長しピアノ調律師の小指瀬戸ティーダ
吊り革から遅日の街を一望す蒼奏
万歩計腰に遅日の古本屋そうり
アンケート答えあぐねて居り遅日曽我真理子
痛さうな遅日の指にFコード染井つぐみ
まんぼうの空を眺める遅日かな宙のふう
遅日くつくつ小鍋で煮込む常備菜高橋無垢
遅き日の路地に明るき匂ひあり滝川橋
河童らと相撲取りたる遅日かな竹内寧子
ぼくの犬散歩のおかわり夕長したけうちおうすけ
ひとすぢの入日へ向かふ雲遅日竹口ゆうこ
渾身の「じゃあな」遅日のグラウンド竹八郎
ゴミ箱に遅日の反故を溢れしめ多々良海月
発熱のまどろみ続く遅日かな立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部
波立てぬやうに沈みし遅日の湯辰野史会
みづへみづかさなり遅日紀のみぎは田中木江
米を研ぐ水のゆるびて遅日かな谷町百合乃
遅日とはゴルファー描く放物線谷本真理子
ストローにタピオカつまる遅日かな玉木たまね
すこやかに空縮まつてゆく遅日玉庭マサアキ
盤上の山くずしたる遅日かなたむらせつこ
痺れたる足に遅日の法話かな田村利平
特急の列車通過の風遅日田本莞奈
手元まで戻らぬヨーヨーのごと遅日丹波らる
地球儀の上の遅日の小さき島ちゃうりん
遅日かな踊り子号のラストランちょび
ハードルのあらかた横になり遅日ツカビッチ
傘立てに母の杖ある遅日かな月館まりも
一日の余白はショパン遅日なりつきのひと
虎刈りの合わせ鏡や暮遅し辻内美枝子
股ぐらに猫棲まわせる遅日かな辻が花
街灯の首に遅日のコンセントツナ好
旅遅日北ウイングのソーキそば露草うづら
硬き音つづく遅日のホッケー場ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
信号の緑を青と遅日なりツユマメ末っ子9歳@いつき組広ブロ俳句部
無理しても合わせたい遅日の歩幅テツコ
鉄棒に触れてひとりの遅日かな鉄猫
八台のハーレー続く遅日かなてまり
申請の行列歪む遅日かな電柱
遅き日や仏足石の中卍天陽ゆう
知事室にやうやう灯火遅日かなドイツばば
風やさし遅日の海へ散骨す東京堕天使
奈良町の遅日銭湯桶の音遠峰熊野
駅を出る人に顔ある遅日かなとかき星
真打ちの下げを待ちたる遅日かなDr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
バスを待つ遅日錆びたる時刻表戸部紅屑
イーゼルの影折れ易き遅日かなトポル
遅き日や孵化するやうな胼胝の皮トマト使いめりるりら
レギュラーの発表を待つ遅日かな富野香衣
ふやかせた母の爪切る遅日かな富山の露玉
千ベロの昼酒廻る遅日かな豊川顕
テレビ観る遅日の第五控室とりこ
犯罪者顔した喫煙者の遅日鳥田政宗
水底に日射し凝れる遅日かな内藤羊皐
自販機の釣銭探るひと遅日直木葉子
病院の長椅子硬き遅日かな中岡秀次
種火ひとつ残る山寺暮遅し中島走吟
射的屋の前に一叢遅日かな中島圭子
百均の美容液買ふ遅日かな中瀬すみっこ
空っぽの香典開く遅日かな中鉢矢的
遅日なるロボット掃除機行ったままなかむら凧人
崩し字の和歌と闘ふ遅日かななごやいろり
乱歩読む遅日のコインランドリー夏野あゆね
ぺらぺらのハムカツ揚げる遅日かな夏雨ちや
遅日とは息の抜き方最初はぐー七瀬ゆきこ
亀を飼ふ盥たゆたひ遅日かな浪速の蟹造
暮れかねてちよこれいとの何処まで奈良素数
また出会ふ遅日の移動図書館に西原みどり
「まだいたの」影ひっつけた子ら遅日尼島里志
遅日かなジャングルジムは子の砦にゃん
のつたりと肺魚の歩きめく遅日仁和田永
心地よく花鋏鳴る遅日かなねぎみそ
買春の出っ腹どぷどぷと遅日ののr
夕長し象を流るる雨に色登りびと
遅日のアルバイト夕日と交代のシフト羽織茶屋
転勤の町巡りたる遅日かな白雨
自販機のうどんを平らげて遅日はぐれ杤餅
落選のポスター剥がしゐる遅日馬祥
遅き日や五右衛門風呂の薪の音長谷川小春
応援の振り覚え切る遅日かな長谷川ろんろん
植木鉢に猫の納まる遅日かな畑田ほずみ
布団には遅日のしみてふ匂いありはっしー
春日遅々堆肥まみれのさなぎ羽化花岡淑子
オニはまだ遅日のカンを踏んでおり花結い
禁煙の張り紙黄ばむ遅日かなぱぷりかまめ
母といる遅日をテレビショッピングはむ
遅日一人ベッドの右を空ける癖林里美
火のにほひ遅日の崖に佇めば早田駒斗
シンブルへ針の音しづかパリ遅日巴里乃嬬
母去りて畳む遅日の段ボール播磨陽子
末災地の訓練映す遅日かな葉るみ
サビキ釣り疑似餌生き生きして遅日HNKAGA
嫁して住む里の遅日や明日香めく東山たかこ
地球の自転ゆるぶ遅日の花時計樋口滑瓢
遅き日の老猫やがて喋りだす土方雪駄
すすり泣く釜で遅日の飯を炊く菱田芋天
デモがありマラソンがあり遅日ありひっそり静か
二人引くトンボの重き遅日かなひでやん
カセットテープの余韻遅日の畳一重
だんごむしじゅうたいしてるねちじつかなひなた息子
洗ひ場に美しき背浮かぶ遅日かなひなた和佳
鈎針に掬ひ遅日を編み込みぬ比々き
橋に立ち橋を見ている遅日かな平原陽子
居残りの英語暗唱聞く遅日平本魚水
家事の間に履歴書をかく遅日かな平本さち
遅き日や郵便受けのビラビラビラ比良山
ヤンキーのバイクを吹かす土手遅日広木登一
暮かぬる猫の鎮座すキーボード風花
原子炉へ濤寄せし日も遅日なり風慈音
鏡台に一人遊びの子や遅日ふくじん
再配達音声案内遅日かな福田みやき
羽衣を置き忘れたる浜遅日福ネコ
サウナ室残る遅日の砂時計福良ちどり
流行歌かすか遅日のとんかつ屋藤色葉菜
鴇色の遅日の餃子百のひだ藤田ゆきまち
筆洗のだんだん濁るごと遅日藤雪陽
海岸に秘密基地あるとふ遅日文女
縁側に祖母のマニキュア塗る遅日文月さな女
夕長しEP盤の「HeyJude」冬のおこじょ
吾の遅日ほごの画仙紙たたみけり古川シアン
遅日よりはじまる龍を討つ神話古瀬まさあき
手庇にトンボロ細りゆく遅日古田秀
小さき傷つけて遅日のレンタカーふるてい
遅日かな空き巣注意の回覧板ペトロア
ラジオ只今サチモ遅日のレンタカー紅ズワイガニ海老美
遅き日を碁敵正座崩しけり茫々
遅き日運ぶ顧客情報500箱星月さやか
はちみつの伸びて落ちたる遅日かな星野秋雪
娘より恋匂ひたつ遅日かなほしの有紀
職探し遅日の首都の飛行船星善之
消防に半旗風もなき遅日ポップアップ
選挙カー遠くで連呼する遅日堀卓
婚礼の順を待ちゐる遅日かな梵多
図書館の見慣れぬ棚を遅日かな凡々
ハイドンに夕陽差し込む遅日かな曲がりしっぽ
保護猫の寝息に誘われる遅日牧野敏信
牛すじはとろ火カフカを読む遅日まこ@いつき組広ブロ俳句部
ぷくぷくと遅日の水へ伸びる舌松井くろ
金比羅の遅日の段の七八五松高法彦性
春巻きの海老透きとほる遅日かな松本裕子
さんずいの漢字はいくつ夕長し真冬峰
遅き日の龍神様の鈴の音まりい@
遅き日や菌糸が伸びる土の中丸山隆子
きみの詩のいつまであをし暮れかぬるまんぷく
一頭が追い越す遅日のメリーゴーランド三浦にゃじろう
未使用の子宮さよなら言ふ遅日三茶
窓越しのフラスコ光る遅日なり美翠
コピー機の込んでしまふも遅日なり光子
オーボエの長き旋律暮れかぬるみつれしづく
少しかほ好きになる遅日の鏡南方日午
白熊の肉球黒き遅日かなみなと
半欠けの消しゴム丸くなり遅日港のパン屋
暮遅し鍵のこはれてゐる部室水面叩
厨にも遅日のひかりこぼれ入るみやかわけい子
遅き日やメタセコイアの影蒼しみやこわすれ
腰板のあたたか色や路地遅日みやざき白水
掛時計遅日のねぢを巻きにけり宮武濱女
遅日なりをとこもすなる抱つこ紐宮部里美
うたゝ寝の夢に漱石遅日かな宮村土々
胎教に良いという曲遅日かな宮本象三
甚平鮫仰ぎ観られる遅日かな眠兎
半周を残し遅日のストレッチ椋本望生
からつぽのみち恐ろしき遅日かな向原かは
遅日はた漫画の源氏なら解るむべ
夕飯の後に余白の遅日かなむゆき
ロケットの弧のよな子の声聞く遅日もつこ
暮遅し君からもらうアメジスト百瀬結花
遅日かなインコに教ゆる桃太郎百理有
精米機の糠掃き寄する遅日かなもりたきみ
顎までも病名もらふ遅日かな森の水車
暮れかぬる木曾の地酒のさくら色森山博士
あそべあそべいしがきしばふ遅日なり痩女
交番を覗けば暗くなほ遅日ヤヒロ
書込みをたどる遅日の古本屋山内彩月
平成の三四郎逝く遅日かな山川腎茶
駄菓子屋に入りきらない子や遅日山口一青
交番の死亡者「1」となり遅日やまぐちこう司
路地裏を弾む噂も去り遅日山口たまみ
スパイクの穴を均すや暮遅し山﨑勝久
人影のけざやかにして遅日かな山科美穂
水牛のあばらの汚れ夕永し山田蹴人
古雑誌いちいち展く遅日かな山名凌霄
しづしづと憎まれ口の遅日かな結壱隆
シーグラス海を湛へてゆく遅日柚木みゆき
お砂場の遅日に棒も倒れたか遊呟
遅日なる手酌の父の喉ぼとけ幽顕庵西彷斎
母の忌の供花に遅日の光なほ雪井苑生
遅き日や一面白となるオセロ雪華きなこ
無影の遅日ヴィヴァルディに耳鳴りゆずりは
遅日ごと縫い目大きくなる母はゆりこ
十時十分ばかり時計屋の遅日羊似妃
遅日による確率変動の余波横浜J子
幾たびもパンダの転びたる遅日吉川拓真
おひさまはまだねむくない遅日かなヨシキングセイバー
ママはきょうおそばんかしらちじつかな吉田結希
ビリケンを撫でて消毒暮遅し葦たかし
底引きの揃ひて帰る遅日かなよしのはるか
龍安寺遅日の庭を飽きるまで吉藤愛里子
病む猫のまなじり拭ふ遅日かなRUSTY=HISOKA
カットバンもう干乾びて遅日かな楽花生
きのふより坂のみじかき遅日かな瑠璃茉莉
遅日はたぶん布袋尊のような顔るんやみ
転勤の娘のいない部屋遅日連雀
どこまでも堆肥のにおい遅日かな籠居子
遅日にて蜜も油も濁り澄め楼胡
知恵の輪をほぐしほぐされ遅日かな六手
当て所なき遅日妻の椅子に座るわかなけん
遅き日の三途の水位ふくらはぎ若葉一家
病棟の母は遅日を知るだろか若林千影
象の耳たたんで終わる遅日かな若宮直美
掬ふたび揺るる遅日の胡麻プリン渡邉一輝
空白の介護日誌を閉ず遅日渡邉わかな
朝粥を温め直す遅日かな侘介
閉園のゴリラと睨み合ふ遅日石井茶爺
健診の帰り遅日のあんみつ屋彩人色
ゆで卵いくつも剥いている遅日岩木順
ゆっくりと瞬く猫の遅日かなうすけ
校了に遅日の光弱まりぬ大槻正敏
遅き日やカッパドキアの飛行船⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
撮り鉄の目当ての電車来ぬ遅日名計宗幸
七日目の隔離病棟夕長し千里一歩
遅日かな古き案内の「雑魚場あり」上原まり
海風の素肌を誘ふ遅日かな叶黄不動
干し網に海風ばかりの遅日かな神長誉夫
遅日かな砂山ひとつ公園に閑蛙
山寺の鴟尾光あり遅日かな木村修芳
遅日なる小江戸川越時の鐘Qさん
遅日なる心音たしか里海の小池令香
隠し事つい打ち明ける遅日かな小山晃
やきとりの気配さみしき遅日かなさくら
さて近道の裏道をゆく遅日篠雪
ラッパの音脱力し遅日かな柴桜子
また百年眠る蕾に遅日かな瀬尾ありさ
幾重もの空めくりめくりて遅日かな惣兵衛
砥部焼きの梅に色来る遅日かなそまり
品川の迷子となりし遅日かな千鳥城@広ブロ俳句部カナダ支部
風船ガム風に弾かる遅日かな千風もふ
気が向けば女のもとへ遅日かな哲山
補助輪をはずし遅日の親子かなでんでん琴女
雲紡ぐ山頭火の書遅日かなときめき人
恐竜の肌の手触り遅日かな独星
音は無し遅日をすべる鳶の影平井麦春
子に送る品選りていて夕長し平井由里子
百歳と目標にして遅日かなまこも
坂道の漕ぐをゆるめて遅日かな紫小寿々
ちくちくと運針のびて遅日かな暝想華
条幅の墨色鈍く遅日光霜月詩扇
遅日なり帰宅は一駅手前からANGEL
格子戸の染め抜き暖簾暮遅しあ・うん
遅日にはおめでとうが良く似合うあいあい亭みけ子
家族LINE絵文字を選ぶ遅日かな藍川莉子
ピクルスを並べ眺むる遅日かな藍淑伶
呼び込みの看板下げたまま遅日あいだなつこ
遅き日や西側の窓磨きをり間むつみ
遅き日の橋わたる電車音軽く あいり姉
パステルの行き交う京の遅日かな葵かほる
逝くいのち遅日の庭に見守りてあおいなつはやて
米を研ぐ音リズミカル遅日かな青井晴空
何故こうも片付け去るや遅日なり青空若葉
をちこちに光子波うつ遅日かな青田奈央
部活動見学飽きて遅日なり青に桃々
暗渠てふ言葉出てこぬ遅日かな蒼鳩薫
卒論終え気づく遅日や明日は晴れ青紫りら
遅日とて君来ぬ日暮れ山の端よ蒼來応來
暮遅しいつまで昼とおもうかな赤子沢赤子
欄干の「手なが」遅日に耀けりacari
荷ほどきの手を止め気づく遅日かなあかり
川辺ゆく久し散歩の遅日かな秋
引分けの高校野球遅日かな昭谷
名作を好きと言えない遅日なりあきののかなた
遅日かな庭師の夫の一番風呂あきみ
野良仕事あの線までと遅日なり秋代
エコバッグ5枚繕う遅日かなあくび指南
いやそれは人間じゃないって遅日あさいふみよ
吾子去りし部屋影染み返り遅日朝雲列
遅日いま空襲の慰霊碑静か朝からカルボナーラ
石鹸を溶かした如き遅日の空あさぎけんいち
古刹にて秋波を送るああ遅日浅野俊也
ひとり寝の塵の積もつてゆく遅日あさのとびら
放課後の声遠ざかる遅日かな麻場育子
夫氏よ遅日に気づくテレワーク亜紗舞那
狭きアパート母を待つ子の遅日あじさいパスタ
遅き日に慣れぬは手持ち無沙汰かな明日良い天気
パンクした自転車押せば遅日かなあじょあ
遅日は円周率の法則かな網代
珈琲のゆっくり冷める遅日かなあずき
遅日なり父母待つ田道のにぎり飯あそぼ葉
ご飯だと我が子呼ぶ声風遅日跡部榮喜
君と遅日映画十本分の恋あ夏風かをる
人気薄の差し切り勝ちす遅日かな赤羽跳
街砂塵に白し籠る遅日sakuraa.
ドッキリか補欠合格遅日かな阿部はぴこ
呼びたれば昼ご飯かと母遅日あまぶー
友の顔なお明かし帰路遅日かな雨宮右京
子が一人塾へ駆け行く遅日かなあやや
つなぐ手を入れるポッケのなき遅日あらせもんじ
病棟を出れば遅日の空青くあらら
遅日なら鯉の塗り絵がはしゃいでる松岡幸子
子らが呼ぶ遅日芝生のテレワークありい
三年生消えて遅日の電車かな有本仁政
亡き祖父の煙草の香り遅日かな杏樹萌香
老猫と昔話の遅日かな安春
三四郎遅日の訃報に絶句する安樂安策電
遅日なる公園の子ら影長く伊角斎陽
ブランコをあと十回ふやす遅日イカロス
犬待たせ媼が三人遅日かないくみっ句
のんびりと夕げの仕度遅日かな池内ねこバアバ
トラック走限界超える遅日かな池上敬子
遅日なり職人のごとく薬飲む池田華族
遅日の我異空間に迷いをりいけだひさえ
黒い海が街呑む画面 遅日石垣エリザ
入稿し繰り出す街は遅日なり石川巴里
信号待ちコロッケ香る遅日かないしきひさき
我だけに訪れたかの遅日かな石崎京子
遅日かな電灯いらずのリビングや石田恵翠
久しぶり定時退勤ああ遅日石橋千佳子
公園に赤シャベル散る遅日かな石原直子
遅日なり義父の御粥もゆっくりと石本美津
帰り道ちょうちんの灯り遅日知る和泉葵
ゴム段の技さまざまな遅日かな和泉明月子
ソワレ前ベンチでほおばる遅日かな泉子
遅日の仕事終わりただただ帰宅一井蝸牛
前カゴの我が子小躍り暮遅し一の矢はんぺいた
まあだだよもういいよの影遲日一佳
秘め事は似合わぬ遅日コメを研ぐ一秋子
米炊くや煙明るく遅日かな一本槍満滋
遅日の帰路言い訳一歩ずつ重ね井出奈津美
かひなにて乳の香の重さ遅日なり伊藤あんこ
遅き日の包丁研ぎの店仕舞伊藤順女
坂なかば歩み止めたる遅日かな伊藤節子
酔い心ネオンの光遅日かな伊藤ひろし
持てあます買い物袋遅日かな伊藤正子
魚店の主人腕組む遅日かな伊藤小熊猫
遅日のせい殴られ鼻血垂らすのは糸川ラッコ
帰宅する車窓の吾消え遅日見え稲葉こいち
万歩計老いの手のひら遅日しる稲葉雀子
老犬が上手に歩く遅日かな戌亥
今度こそ女の嬰欲し暮遅しゐのかたゆきを
遅き日の夕刊配るバイク音井松慈悦
本丸に立ち影短し遅日かな今西知巳
じれじれと遅日をよぎるISS今村ひとみ
帰り道ゆとり生み出す遅日かないろをふくむや
今更の電飾あせし遅日かな祝氷な子
夕富士を望み土手行く遅日かな伊和佐喜世
公園にバットとポカリ遅日かないわつよ8
散歩道風に吹かれて遅日好しvivi
仰ぐれば遅日の雲は鳩羽色植田かず子
帰り道一駅手前遅日かな上原淳
素振りして三分延ばす遅日かな上村三段
あの角を曲がってみたくなる遅日宇佐美好子
ブルーグレイ遅日急がぬ帰り道ウスキシュウジ
遅日の渋滞アプリの赤い道宇田建
遅日のショーウィンドウ楽器店内田英樹
フラワーシャワー遅日の披露宴内田誠美
ルーティーンはみ出し今日の遅日かな内本惠美子
寄合の菓子食べをへて遅日かな靫草子
遅き日の井戸端談義星ひとつうめがさそう
梢まで見える大樹の遅日かな梅木若葉
お迎えが早くなったね遅日かな梅嶋紫
遅日知る催促されて猫ご飯A・Bonc
ほどけゆく飛行機雲の遅日かな江川月丸
ライン鳴る遅日の夕陽共有し江田綾子
もう二つ先の角まで遅日かな枝豆の花
逆上がりもう少しだと遅日かな越後縮緬
祈り続け東北の海や遅日江藤薫
建替えの粛々と母屋の遅日江藤すをん
遅日履ききらきらの泥駆けし日よ江戸川舟
名ばかりで政策聞こえない遅日江戸川ちゃあこ
二回目の洗濯乾く遅日かなえぬひよこ
血管に文字流れゆく遅日かな海老海老
愛犬と散歩タイムは遅日好きえみばば
九ますの数字に耽る遅日かな江見めいこ
遅き日や義母の呟き聞こえさうな円
締切は早し遅日の打鍵音遠藤百合
割引のシール未だし遅日かな遠藤玲奈
寄り道の祇園裏路地遅日なりおうれん
哀しみに節目などなき遅日かな大熊猫
ウッドチャック遅日の庭を右往左往大恵
シニヨンの練習してる遅日かな大小田忍
車イスの母遅日に憂いめく大嶋メデ
米研ぎの立つ香りして遅日なり大嶋和人
久々の友と語らふ遅日かな大谷如水
寄り道のコンビニで知る遅日かな太田鵯
こぽこぽとサイフォン上下する遅日大槻税悦
風見鶏黙して遅日眺めけり大西加賀
ベランダに独り呑みおる遅日かな大野静香
遅き日や左みて右みてさぁ渡ろう大野美波
十綱橋遅き日暮るる夕映えよ大橋敏子
荷造りに時を忘れて遅日かな大原妃
遅日かな子の声もどる河川敷大原雪
帰り支度したくなくなる旅の遅日大本千恵子
緊急事態宣言徳用焼酎を買う遅日大森大
すっぽりと路地の先入(い)る遅日の陽大山きょうこ
三味線の露地案内の遅日かな大山小袖
渋滞のハンドル軽し遅日かな大山葉
カルチャー出る帰路のまぶしさ遅日かな岡れいこ
メタセコイア空に背伸びす遅日なり岡崎俊子
待ち人の来ぬ浜歩く遅日かなオカダ明子
コンビニの灯り目立たぬ遅日かな緒方朋子
急ぎ帰り取り込む服に遅日の温おがたみか
法事終え遅日の駅はセピア色オカメインコ
断捨離の袋五つ目遅日かなお銀
定刻の鐘やはらかき遅日かなおくにち木実
帰路は右足どり左遅日かな小倉藍朱
十八時のサイレン間延びする遅日おざきさちよ
薄昏の母待つ居間や夕長しおさむ
この会話毎年してる遅日かなおさむらいちゃん
窓を額にあて外を見る遅日小澤ほのか
足どりも軽く居酒屋遅日かなお品まり
手振る君自転車が見え遅日なり尾関みちこ
遅日かな母の満中陰開くる小田和子
読み終えし極夜のルポと遅日かな乙華散
夫との会話やさしく遅日かなお寺なでしこ
花冠編んで並べる子の遅日音のあ子
秒針の時々止まる遅日かな鬼平哀歌真改
母ちゃんを嫌いと拗ねて遅日かな小野茶々
点滴を引きゆく遅日コンビニへおひい
車椅子母の白髪に遅日の陽終わりなき介護
夕餉の香辿る遅日を猫迎え諧真無子
柴犬の梅ちゃん帰途に逢ふ遅日かいぐりかいぐり
日常に空白残る遅日かな快晴ノセカイ
両親を施設に送る遅日かな海碧
薄れゆく鍵っ子の影ぽつり遅日諧真無子
朗らかな児等の声にて知る遅日かえる
涙ほど並ぶ砂だんごの遅日果音
マチネーの後の眩しき遅日かなカオス
隣家からカレーの香り遅日かな馨子
遅日なり防波堤には二三人案山子@いつき組広ブロ俳句部
センベロのまだ酔ひ切れぬ遅日かな篝
またあした幼き遅日夕餉の香柿野宮
腹へった遅日忘れて畑仕事笠江茂子
遅日来る遠い記憶の夕ご飯風花あつこ
けいどろの声遠くまで遅日かな風花まゆみ
上の子が手を引き帰る遅日かな風花美絵
海は青く孤独は怠く遅日また笠原理香
清き君神木に触れ遅日の陽梶浦多見子
晴天もコロナなる故遅日なり加島
縁側の次の一手の遅日なり鹿嶌純子
パドックの馬らまどろむ遅日かな柏原淑子
腹時計鳴きて気付きし遅日なり花純
教授室のカフェ・オレ薄し遅日かな風ヒカル
本閉じて紅茶にミルク遅日かな片栗子
天守閣下から拝む遅日かなかたちゃん@いつき組広ブロ俳句部
放課後の遅日にテニス上達すかたな
番ひ鳥の帰りあぐねる遅日かな可知茶和
夕長しafter5を一万歩花鳥風猫
暦みて遅日とえたり花植える桂
影踏みで独り遊ぶや遅日かな加藤雄三
夕空の雲のゆるりと遅日かなかぬまっこ
妻となり遅日の家庭菜園や金子こはる
雨あがり遅日の街を君の横金子真美
夕長き留守番重たげな秒針かねつき走流
遅き日にグローブ一つ忘れけり金村伸男
抹茶ラテおかわりするも遅日かな金本節子
フラの婆笑顔はじける遅日かな甲山
野球部の声まだ佳境なる遅日釜眞手打ち蕎麦
あと一軒足取り軽き遅日かな神or愛
顔洗い自学に残る遅日かなかみひとえ
もう一局泣きの入る遅日かな紙谷杳子
定宿に夜遅く着く遅日かな亀田稇
一日を雲の流れを見て遅日亀山逸子
麻酔醒め今生きてると遅日かなかもめ
温泉に招く遅日の誕生日加茂亘
病みし妹支え佇む遅日かなカラハ
遅日故寄り道増える帰り道川島妙
スピッツを聴き風が吹く遅日かな川村紀陽子
犬に腹撫でさせらるる遅日かな川村湖雪
遅日なりチャイムの時の変わりおり川村昌子
遅日5時の鐘まだ鬼ごっこカンカン
公園に遅日の遊具揺れ残る邯鄲
遅日の東京もうじき我が家も夜景のパーツ看板のピン
金時の蜜滴りて遅日かなKII
子の足の大きくなるを知る遅日キートスばんじょうし
書道とは余白が大事遅日かな気球乗り
羽根餃子飛べぬがままの遅日かな菊池風峰
山並みを淡く縁どり遅日光木口恭子
面会に少年ジャンプ遅日かな菊池洋勝
遅日とはリビング照らす暖かさ木久仁
みずかがみ遅日が染めた金閣寺木子結雲
遅日なり天地人の麻雀かギザギザ仮面
道端に並ぶランドセルにも遅日妃麻琴
作業着から急いてエプロン遅日かな黄桜かづ奴
入場制限「巣立ちの歌」を聞く遅日岸本元世
新しい辞書に載る言葉や遅日北大路京介
散歩道歩幅整う遅日かな喜多吃音
遅日待ち花や虫急ぎ飛び出せり北野剛
遅き日の時報の鐘や田舎道きた実実花
隠居して悲喜交々の遅日かな北村修
終活のアルバムめくる遅日かな北村礼子
見覚えの着歴放置する遅日きのした小町
自由の身なれど無聊の遅日かな木原洋子
自転車と定期はまっさら遅日かなきみえは公栄
咲き揃う独居の庭遅日かな木村香津枝
山間に祖父の影見ゆ遅日かな木村かわせみ
帰宅する我が影低く遅日かな木村波平
ランニングの掛け声響く遅日かなQ&A
居残りに胸ときめいて遅日かな鳩礼
福島や謎を読み解く遅日なり木葉子
生き物にスイッチ入れる遅日かな教来石
もう一杯鉄観音を淹れ遅日桐野しおり
待合室うたた寝もらい受け遅日季凛
流量の太る小川の縁遅日銀長だぬき
遅き日よ流るる川の声を聞くクウシンサイ
厨ごし報連相の遅日かな空龍
角打ちで疲れとる港の遅日久慈流水
竹垣にズック乾きて遅日かな葛谷猫日和
十八時過ぎ聞こえる子の声遅日かな朽木春加
形見分け母の声して遅日かな國吉敦子
ご飯だよ止まぬ縄跳び遅日かな國吉隆仁
海空も遠しなお君と居て遅日窪田睡鯨
沈黙の会議が長引く遅日かな熊谷まさ
晩酌に遅日透かして「春よ来い」熊野みーぼう
スケボーをあと十すべりする遅日くりきんとん
川べりの響きしラッパの音遅日久瑠圃
藪中に河原への道でき遅日久留里61
泥団子こねて遅日の手の痒し紅さやか
少しだけ髪を切りすぎたの遅日黒沢まる
用水路鯉の賑わう遅日かなクロまま
牛すじをコトコトコトと煮る遅日桑田栞
夕食はみふと眼を庭にやる遅日桑原和博
久々にばら寿司作る遅日かな恵享怜
教練の掛け声だけ響く遅日警察学校あるある(フィクション)
場外へ三角ベース暮遅し紫雲英
うつ病は遅日の中で溶けてゆく源氏物語
嗚呼遅日隣家の爺の風呂の歌鍵盤ポロネーズ
パソコンの猫を退かしつ遅日かなこいそひさと
塾までの5分遅日の『Pretender』こう
遅日かな夕焼け小焼けにまだ遊ぶ子よ弘
遅き日のしづかにつつむ狭庭かな江雲
紫外線気になってくる遅日頃高坂和子
鼾かく猫を眺める遅日かな柑たちばな
あの犬の主と知りたる遅日かな紅茶一杯
地下鉄出口表情変わる遅日かな幸内悦夫
暮遅し母の帰りを待つ背中河野なお
遅日とは子の声ずっと響きたる神戸めぐみ
廃校の窓に遅日の光射す宏楽
遅日かな富士の茜のシルエット小嶋芦舟
真直ぐに生きて遅日の箸を置く小杉泰文
遅日光にかざす傘寿の生命線コスモス
鉄塔の烏浮き立つ遅日かな小だいふく
夕空よ遅日色づく街の色木積
レモンゼリー空に透かして遅日かな小手鞠しおり
「七つの子」夕日に浸みる遅日かな小林のりこ
遅き日や廻らぬ寿司で呷る酒こぶこ
「やめろよ」と背にヒーローの声遅日小薪まりちゃ。
海老蔵の色気にやられ暮れ遅し小松甘夏
遅き日や転がりさうな泥団子小鞠
子等の声はじける公園遅日かなこむぎ
六十路走り始める遅日かな紺谷英司
放課後の初恋みっけ笑む遅日西條晶夫
ひ孫の歯たしかに生えて指遅日西條恭子
遅日なれ都の鳥を待ちかねるさいとうすすむ
公園の遅日の頬に届く鐘斎藤数
朝夕のラジオ体操遅日かな坂口好一
遅日光七色変化桜島さかごん
近的(ちかまと)を外し遅日は音禍ち坂島魁文@回文俳句
草野球の延長戦遅日かなさかたちえこ
靴決めて向かう就活遅日かな坂本千代子
遅日にも家並みくずれ海みゆる相良まさと
飛騨川に水切りの子の遅日かな咲弥あさ奏
海と空溶ける境い目遅日かな櫻井弘子
答弁のそういう中でと遅日なる桜姫5
別れても好きな貴方の遅日かなさくら悠日
帰れない理由遅日のせいにしてさこ
二子玉川の遅日なら富士一番迫久鯨
泥遊び鐘の音忘る遅日かな佐々木邦綱
リードひき遅日に影に足伸びる佐々木幸江
遠まわり口実遅日手をつなごうささきなお
遅日なり分別されしゴミの映えさち
母の手が見える遅日の楽しみ幸子
石ころを蹴りながらゆく子や遅日紗千子
糠床の酸味程好く遅日かな佐藤花伎
暮遅し米研ぐ笊に陽の光佐藤恒治
もどらねばならぬ遅日の台所佐藤綉綉
離れ行く車窓見詰める遅日かな佐藤俊
遅日かな今日は休符の反抗期佐藤千枝
ぐい?みを夕日にかざす遅日かな里海太郎
窓辺にて遅日楽しむしっぽたち佐藤佳子
この坂は遅日のせいだ登れない佐藤里枝子
皆ここに来る訳ありて遅日なり里山子
遅日にはぼっちの良き日素晴らしきさなぎ
もの思いカップの漂白待つ遅日鯖水煮
首都高の遅日パトカーに減速茶和
庭しごと遅日の父の枝ひろい澤真澄
五目飯炊けて隣家へ暮遅し澤田郁子
かくれんぼそろそろ見つけてよ遅日澤野敏樹
米を研ぐ妻の背中へ遅日光しー子
校庭でドヴォルザークを聞く遅日JBB
閉館の合図に惑ふ遅日かな塩沢桂子
海に出る河ゆるゆると遅日かな塩原香子
マスクしてない人を数える遅日鹿は飛びます
「あと2回」ゴーカートを待つや遅日自我を失ったホタルイカ
吾子等まだ草野球して遅日かなしげとし
転居の荷解き遅日のカップ?紫檀豆蔵
猫の影西に東に遅日かな四之宮光里
中津市長湯治は自由よ遅日かな渋谷武士(回文俳句)
外灯ほわり頼りなさげな遅日かな島じい子
お迎えのママと遊べる遅日かな縞午
何処にか大くさめする遅日かな島田金魚子
教室に教授の駄洒落遅日かな島村福太郎
かくれんぼいつまで鬼や遅日なり嶋良二
窓からの風や遅日の風呂みがき清水祥月
落日の斑鳩めぐり塔遅日清水容子
遅日なりライトフライはまだ捕れる下丼月光
ほろ酔ひて蕎麦屋出でしも遅日かな斜楽
タンカーの引き水長し遅日かなしゅういずみ
ポストに陽温もり残る遅日かな秀耕
作業着のテレビ会見遅日哉柊二
地平線光扇子で閉じる遅日秀道
幼らのブランコの音遅日の音じゅこ@トーキング
赤楽を使い自服の遅日かな寿松
寝て遅日あわやかないろ部屋に満つ春骨
還暦の花束届く遅日かな笑詠化
終わり無き井戸端会議遅日かな正覚坊
足元はどこ吹く風や春日遅々湘南太郎
妹と遅日の秘密基地崩す翔龍
草刈り機燃料切れの遅日かなジョン爺
針の穴見えて網縫う遅日の浜白井百合子
弟も家路に遠き遅日かな白沢修
宵のうちカーテンをひく遅日かな白土景子
子等帰るチャイム聞こえし遅日かな紫龍
手押し車の老婆三人遅日かな新開ちえ
職人の仕事はかどる遅日かな慎チャン
珈琲を三杯お替わり遅日かな森牧亭遊好
ピアニカを持ち帰る子ら遅日かなスーパーラッコタイム
カーポートでスモール消す手に遅日の香菅原千秋
遅日の野足下に柴の折るる音菅原敏子
グランドにボール蹴る声遅日かな杉浦真子
鍬の手の衰へ始む遅日かな杉尾芭蕉
千体の千手の観音遅日光杉本果ら
筆を換へ遅日の写経試し書きすぎやん
老いぬれば月日は速く暮れ遅しすずきしほ
手を挙げてノック呼ぶ影遅日かな鈴木直人
サスペンデッドゲームを嫌う遅日かな鈴木(や)
リードZIGZAG犬に引かれる遅日清白真冬
遅日かな遊ぶ鴉の巣はどこぞスズメノエンドウ
遅日知る青き空へと街の鐘素敵な晃くん
鼻歌の交じる遅日の散歩道晴好雨独
浦に立ち腥臭包む夕長し青児
同級生遅日の街の彼方此方に勢田清
ケンケンパわくわく続く遅日なり星夢光風
二の腕の白さ驚く遅日あり世良日守
全米が泣いた映画の熱遅日せり坊
春遅日困ったら入院仙人
昨日より灯りおくれて遅日かな千波佳山
黒板に消し残しあり遅日光蒼求
嫌なこと後まわしする遅日かな早春SOSHUN
旅宿る遅日の窓に新幹線そうま純香
夜陰へと紛れたくなる遅日かな蘇州
木を伐りて影の伸びたる遅日かな杣人
布団干し用足し一服遅日なり染野享子
遅き日に終の棲家を相談す染野まさこ
一軒で終わり遅日の屋台村それいゆ
プチプチを重ねて潰す遅日かなぞんぬ
母帰宅遅日喜びカレー食べ駄詩
遅き日やテーブル軽し新居かな大介
読み耽り足の痺るる遅日かな橙と紫
デパートを出でて遅日の夕支度大門宙美
陽の毛布羽織り布団で寝る遅日たいやきは腹から食べるにゃんこかな
車窓より遅日の山の端白き月平たか子
教員の手のペンの赤濃い遅日平良嘉列乙
主なき社殿に鳥や遅日なり高石たく
山陰線各駅停車遅日哉高岡春幸
キーボードまた打ち間違えて遅日高尾里甫
退院の手続き終えてああ遅日高垣りんどう
尻尾だけ動く遅日の猫の影高木音弥
三世代昔話す遅日かな高瀬枝月
遅日なり白線だけを踏み帰宅高田祥聖
「あと10回」を10回目公園の遅日高嶺遠
後付けのライトがつかぬ遅日なり高橋淳志
遅日いま老いを忘れるとこだつた高橋寅次
歯を削り買物もする遅日かな高橋ひろみこ
初めての道を散歩の遅日かな高橋光加
ツーリング寄り道増える遅日かな高林学
遅日かな川面が燃ゆる草野球高城龍之介
路地遅日「明日またね」の声響く卓女
デジカメに横顔きれいな遅日かな竹一
一度伏せまた続き読む遅日かな多胡蘆秋
晩飯の味薄きよな遅日なり多事
畝立てるひとつ遅日にもうひとつたすく
帰れとて今なき家に遅日かな鶴群
十年の鎮魂鐘に映ゆ遅日唯飛唯游
遅日にて井戸端会議母重役只野花
逆上がり幾度も挑む遅日かな立葵
新しきカーテンは薄くて遅日橘まゆこ
かくれんぼいまだに鬼来ぬ遅日かな立野音思
母見舞ふ帰る車窓の遅日かな蓼科嘉
遅日なり灯りのいらぬ夕六時立山枯楓
九十九代目の遅日の軒の巣のあるじ田中勲
密会の予定狂わす遅日かな田中ひかる
賑わいし遅日の膳や子沢山田中洋子
どこまでも足跡続く浜遅日谷相
夫逝きて遅日世間を持て余し谷口あきこ
夕方の会議はじまる遅日かな田畑整
朝干したタオルそのまま遅日かな玉井令子
面接は刹那自信の無い遅日タマゴもたっぷりハムサンド
饅頭の薄皮甘し遅日かな玉響雷子
温める厨の匂い遅日の子田村モトエ
遅き日の自転車ゆるみパンクせし田本雅子
巡る歌自転車こぐかの遅日智慧の環
大物を遅日頼みに洗い干しちくちく
図書館に遅日の足の向かうなりちっちのきも
食忘れ窓辺で刺繍遅日なり千葉睦女
基礎疾患検査記録見る遅日チャーリー・吉田
ゆるやかな川をゆっくり鷺の遅日衷子
オレンジの五円拾うや遅日かな長寿庵ちくわ
猛ダッシュ門限近き遅日の子珍風伊潤
「何でもない」嘘のはじまり遅日かな月々
星座盤用意して待つ遅日暮れ辻宝樹
いつまでも回し車の鳴る遅日つちのこ
疑った時計に詫びる遅日かな堤善宏
自転車を押して遅日の坂登る津幡GEE
夕長し君思い出すマウンドの粒あんころ
ゆったりと遅日の電話きりもなや津村千鶴子
よその子の歓声残る遅日かな津本晶
降車ボタン押しぬ遅日の終点に鶴つる小なみ
起きますか?花木に語る遅日かな弦巻英理花
宮帰り鳩の影追う遅日かなつわぶきはじめ
母の墓十三年の遅日かなデイジーキャンディー
帰り道マジックアワー暮れ遅しでえくのぼお
トラクターのまたUターンする遅日テン
街中が水中のかげなる遅日天川聖子
お別れの折り紙のメダルの遅日てんてこ麻衣
メリヤスのひと目落ちたる遅日かなdoいつもcoいつも
「一週間は四日」と夫の遅日かな苳
交差点の光チカチカの遅日トウ甘藻
君よ歌え星無き遅日にてこそ東戎
ボール抱きチャイム押す子や暮遅しとき坊
書をさらふ筆先の割れ遅日かな徳庵
血まめの手ひとりさかあがりの遅日どくだみ茶
遅日なりPCえいと切つちまう毒林檎
振りかざす指揮棒の呼気夕長しとしなり
立ち話夕餉支度も遅日かな戸根由紀
トーストのバターゆっくり溶け遅日飛ばぬ鳥
遅き日や部活に美き君の声斗三木童
巡り来て母命日の遅日なり戸村友美
壁打ちのボール跡ある遅日かな友雪割豆
マスク越し花の香なしの遅日かな戸山のみんみん
遅き日は缶けり高く飛んでいけとんぶりっこ
散歩する犬と眼が合ふ遅日かな中里蛙星
モナリザのパズル未完の暮遅し中島葉月
弟のベーゴマ勝負遅日かな中嶋京子
鴨川のゆったり流る遅日かな中嶋敏子
童謡のチャイムのあとの遅日かな中島紀生
ワンの声一周追加の遅日かな長旅結び
病床の父の手握る遅日哉仲田蓮謙
公園をキョロキョロ歩く遅日かな山中岳
恩師去る人事発令遅日かな中中
さんぽ道遠回りしてああ遅日中村こゆき
母の立ち話も長くなる遅日永谷部流
車窓から映える景色の遅日かな中山清充
捻挫して父の背で行く遅日かな中山白蘭
伯仲や遅日の天覧相撲かな新蕎麦句会・凪太
明日は雨デッキ二度塗り遅日かな那須のお漬物
ロッカー前残業くらう遅日かな夏井ぼやき
吊り革に山並み薄き遅日かな夏雲ブン太
チェーン替え軽きペダルの遅日かな夏湖乃
墓じまい決心したる遅日かな菜摘子
部活終へ寄り道誘ふ遅日かな夏目坦
山の端の残光見いる夕長し七森わらび
志ん生とポトフの湯気と遅日かななびぃ
ラテアートくずして飲んでなお遅日名前のあるネコ
鼻先のダンゴムシ丸まり遅日なみ夢めも
遅日なり「智恵子抄」を読み終えぬなんじゃもんじゃ
川沿いを北へ車列のそら遅日新美妙子
公園の子らが帰らぬ遅日かなにいやのる
一人いて遅日の果てを待ちわびる薫子(におこ)
遅日かな数多白波くじうくり西尾至史至雲
ラム・ジュレップ映ゆる遅日のテラス席西川由野
幼子のごとき言い訳遅日かな西澤美智
暮遅しサラミと酒とYouTube西田月旦
番来て狭庭に遊ぶ遅日かな西原さらさ
脳神経外科前信号機は遅日二重格子
遅日いま巣立つ我が子よ戸を閉めりニン肉マン
局部麻酔切れぬ遅日の日暮れまで鵺疾し秋
四時からの再々放送観る遅日沼沢さとみ
おーいとね笑顔の貴方遅日かなねがみともみ
舞い込んだ採用通知遅日かな根々雅水
クラシックギターが燃える遅日かな涅槃girl
友の帰路道草をする遅日かな寝ん猫
長き葬列過ぎゆくを待つ遅日ノアノア
寂しさの先送りする遅日かな野井みこ
休日の往くを惜んでいる遅日野地垂木
叡尊の風来る寺の遅日かな埜水
ゲーム止めぬ子よ遅日の電子音のど飴
遅日の為に太陽や疲れ気味野中泰風
おかわりは自由遅日のアッサムティー野ばら
おちこちに小舟たゆたう遅日かな野原蛍草
さてゴルフ行くか行かぬか暮かぬる野間充
古文書の解せぬ一字や遅日なり則本久江
語るよな風に撫でらる遅日かなはいびす
歯の破片探す遅日もまたマスク白庵
猫の尾と一日遊ぶ遅日かなパクパクパンダ
物干しで日の匂い嬉し遅日かな橋場きみ
ATMまで歩く鼻歌遅日かな橋本恵久子
遠出して遅日の街の屋台かな畑詩音
友に酒誘ふ遅日の指サインパッキンマン
筋肉に溜めた遅日を湯に溶かす八田昌代
帰り道寄り道増える遅日かな初野文子
空泳ぐやう玻璃越しの亀遅日はなあかり
人を避け自然と遊ぶ遅日かな花岡紘一
偲び逢う吾をも隠す雨や遅日華樹
遅日の富士山色を変え写りけり花咲みさき
バス待ちの影伸びてゆく遅日かな花咲明日香
遅日かなもらい欠伸の友も老け花野
遅日の空仏は浄土の色こぼしはなぶさあきら
外と内のあはひの庭や暮れかぬる花屋英利
晩酌の開始躊躇う遅日かな羽馬愚朗
繁忙期遅日に気づかずもう定時馬場勇至
泥警の子らまだ走る遅日かな浜けい
「練習は七時半まで」遅日かな浜崎直人
遅日かな幼な子歌う帰り道原善枝
銀輪の群音瞬時遅日かな原田民久
黄昏に人待つ心遅日なりharu.k
珈琲香る鍼灸院の遅日ハルノ花柊
保母さんと待つ子は外に遅日かなはれまふよう
老猫のテンポで遊んでいる遅日伴お半
影ふみの距離も縮まる遅日かなパンの横笛パリ
箸二膳遅日に想う円居の日ひーたん@いつき組広ブロ俳句
定刻のチャイム鳴る空あぁ遅日ひーちゃんw
荷解きしリモコン探す遅日かな東原桜空
遅日にて鴨川ベンチキス焦らす光源爺
遅日なるばんどう太郎の清流ひぐちいちおう(一応)
紅茶葉もゆるりとひらく遅日かな樋口ひろみ
引っ越しの荷ほどき終えて遅日かな寿屋菊次郎
遅日なり百まで生きる決意するひすい
若き日の母のアルバム見る遅日ヴィッカリー趣乃
モナ・リザと視線が合う気がする遅日緋築
空駘蕩土白くして遅日かなひな子桃青
旅立ちや積もる話の遅日かなひなたのくま
待合せ遅日と思ふおほらかさひな芙美子
逆上がりできるまでやる遅日かな緋乃捨楽
遅日とはこの一時と語る君向日葵@いつき組広ブロ俳句部
ワイン飲み風に吹かれて遅日にはひめりんご
有能そうなペン持ちて遅日かな猫詠たま
迫る開通遅日の舗装工事ひよこねいさん
急かさずに帰せる学童遅日なり飛来英
ドローンの灯遅日の果てを点々と平井千恵子
春日遅々震災跡にネギ直立す平岡花泉
放課後は部活に燃えた遅日かな平坂謙次
もう少し遅日の旅の砂の浜平松一
職を辞し遅日の風呂を楽しみぬ昼寝
下校時もにぎわいのあり遅日かな蛭本喜久枝
終業のベルに繰り出す街遅日ひろき
要らぬこと喋ってしまう遅日かな廣重
スーパーへ自転車取りに行く遅日ひろ夢
夕刊のバイク音急遅日かな琵琶京子
遅日なり窓辺の席のティールーム風香
そこかしこ空き家と見える遅日かな風泉
五線譜を辿り辿りて遅日かな 風紋
つま先のよごれ隠さぬ遅日かな風来
二台目の車拭き上げ遅日かな深町明
四時半によい子のチャイム暮れかぬる深蒸し茶
無口なる姪手を振りし遅日かな福井三水低
逆上がり遅日の校庭拍手なし福川敏機
四十九日終えて悲しみ湧く遅日福月スミレ
縫い針の血の赤き点遅日かな福弓
献杯の声やわらかく遅日かなふくろう悠々
ウジャトの目残す遅日の夕の空藤井泉
鐘の音で我に返り遅日かな藤井聖月
遅き日にかさねの色を愛でる街藤井弘子
遅き日の忘我の息や地蔵彫藤井眞魚
遅き日に発火ま近かき夕陽さす藤川鴎叫
ひたすらに草を食む山羊暮れかぬるふじこ
茶柱の立ちて遅日の座敷かな藤咲大地
部活終へ家路明るき遅日かな藤原訓子
本を手にうつらゆらゆらゆめ遅日双葉@あさ葉会
あて先の文字多かりし遅日かなふとまき
午後三時なにをかせましこの遅日船橋こまこ
暮遅しもう一本の畝立てりふみ
金婚に手繋ぐ父母の遅日かなぷる
あと1回せがみに負ける遅日かなぶるーふぉっくす
平日の夕景撮りし遅日かな古澤久良
遅日の光まだ終わらせぬアンコールヘッドホン
ほろ酔いやコロナ遅日のカウンターベニヤサン
老いるとは満ち足りること遅日光べびぽん
巣立ちゆく大輪華の君達遅日星雅綺羅璃
遅日なり県道沿いのたこ焼き屋干しのいも子
手を繋ぎ帰る遅日のかげぼうし星野ぐりこ
姉の中母を見つくる遅日かな星乃ぽっち
喫茶店五杯めのココアの遅日細川小春
帰り道遅日と知らせしブレーキランプ堀将大
遅日がなんだ5時には呑みたいのだ盆暮れ正ガッツ
老い重ね家事はかどらぬ遅日なり本間美知子
待ち合わせ繋ぎたき手もなお遅日ほんみえみねこ
週刊誌買ひに出かける遅日かな梵庸子
人の来ぬ鴨川遅日うす曇り凡狸子
猫二匹空き地に息ふ遅日かな前田冬水
祝いの合奏練習響く遅日茉叶
遅日とてまたも日没サドンデス真喜王
立ち話家路を急がぬ遅日かな槙由梨子
遅日なる影の長さに虫目覚め眞熊
遅日なり句の推敲が行き止まり正岡恵似子
仕事終え遅日に呑むや赤ら顔眞さ野
人誑しめきて滲むや街遅日雅喜
石けりの石まだ見える遅日かな魔女のひすい
腕時計公園の声遅日知る松井研治
「お疲れ」とプッシュと響く遅日かな松尾直幸
遅日なら図書館帰りに赤毛のアン松岡幸子
さくら猫遅日木陰に欠伸して松尾義弘
残機後軽き足どり遅日かな松島美絵
まだかまだか玄関に立つ母遅日松野蘭
植木鉢入れ忘れたり遅日なり松村貞夫
中庭の遅日のじよろの底の水松山のとまと
夕支度延ぶる小言の遅日かな眞鍋千穂
遅日かな呑気に子亀甲羅干し豆福樹々子
金星を掬ひて遅日やはらかき麻由
風に乗り足音運ぶ遅日かな真理庵
もう一杯珈琲欲しき遅日かな眞理子
準備中遅日の端の屋台酒みい
上り框にて猫撫でる遅日よ三浦真奈美
公園の遊道円木遅日かな三浦ユリコ
最多コロナ感染者数の遅日澪つくし
輪をなして遅日に響け童歌帝菜
自転車のライトをしまう遅日かなみことのりこ
春日遅々練る土轆轤に据えてなお三島瀬波
ライオンの瞳遅日のベビーカー水口りょうゆう
不意の花束や遅日の退院日三筋晴香
白杖の帰路を思いし遅日かな三須多敏
遅日の陽そっと足を入れ湯を浴びる水乃江辰
薬減り遅日寄り道本屋にもみたせつよ
遅き日や本屋で立ち読む旅雑誌みちむらまりな
中央フリーウェイ流して帰る遅日なり美月舞桜
遅き日やカヌレをふたつ求めをり満る
逝きて十年保護犬迎ふる遅日三那子
夕まずめ動かぬ浮や遅日かな湊かずゆき
噴煙も山に残れり旅遅日南阿蘇世
名推理は大詰め遅日の窓辺みはね
そろそろと遅日に押されウォーキングみほめろ@いつき組広ブロ俳句部
紅に染まり遅日の五時チャイム見屋桜花
老体で耕す広さ遅日かな宮階愛子
緊急の手術三件終へ遅日三宅雅子
週五日サッカー少年遅日かなみやこ
立ち話はずむスーパー夕長し都乃あざみ
遅日の散歩遅くなりにし夕餉都忘れ
羽広ぐ孔雀遅日を振り向かぬ宮坂暢介
帰りましょ酷な音色の遅日かな宮澤ごんたろう
暮れ遅き発掘現場に土の山宮澤さっち
子の帰り食卓で待つ遅日かな宮地弓恵
遅日なる追悼の海なお深く宮原みかん
遅日に合わぬ紅映す根古志形雅乃珠晃
もう一回ボールまた蹴る遅日かな美山つぐみ
遅日にて入院中の声を待つ深山涼水
老犬とゆるり土手沿い遅日なる宮村寿摩子
幼な子に戻りし母の咲む遅日みわ吉
球の影ぬくし遅日のアスファルトむうさく
特急やめ鈍行に乗る遅日かな夢雨似夜
遅日には金平糖を撒きたくて麦娘
牛渡る踏切里の遅日かな無弦奏
おおらかや遅日の街は水墨画武者小路敬妙洒脱篤
年毎に差し歯の疼く遅日かな睦月くらげ
散歩待つ犬と目が合い遅日かなむねあかどり
ポケットのキャンディ香る遅日かな村上牛蒡
居残りの教室影伸びる遅日むらのたんぽぽ
遅き日や五時の町内アナウンス村松登音
研ぐ鎌にあと一仕事ある遅日室よりこ
ボサノバの音流れくる遅日かなモコ
遅日なりちょっこしとおくポチと行く本山喜喜
のったりと白波よせる遅日かなmomo
厨にも米研ぐ音す遅日かな桃香
買い忘れたる塩買いに行く遅日ももたもも
シャワー音遅日のベッドで聴きながら森佳月
「自己分析」送信迷う遅日かな杜まお実
暮れ遅しハシビロコウの捕食かな森毬子
白米の残る弁当噛む遅日もりさわ
山の峰眠る入り陽の遅日かな森澤佳乃
パン生地発酵ふつふつ遅日かな森中ことり
早上がり気分で跳ねる遅日かな森野千生
門限を呪いし彼の日よ遅き日よ杜若友哉
しそ巻きに一杯すすむ遅日かな諸岡萌黄
遅日かな鬼子母神社の芝居小屋もろ智行
町工場の湯気しゅうしゅう遅日なりもん@広島
いつもより遠くへ散歩遅日かなやーきん
空の病室に遅日の夕日かなやあみんな、ぼくだよ
明日からはあれこれせむや暮れ遅し焼津昌彦庵
ジーゼルのアイドル音は遅日かな八木実
鶴百羽大中小と折る遅日山羊座の千賀子
谷中墓地のぶらぶらあるき遅日かな安田美智子
都バス乗り都バスで帰る遅日かな幸水
気持ちよく猫が伸びする遅日かな柳井瞳
母の手の「いい子いい子」のごと遅日柳川心一
「大丈夫」と空元気の眼夕長し八幡風花
大あくび口に遅日の風ふくみ山内育代
染め付けの豆皿映える遅日かな山川恵美子
取り忘れし洗濯ものの遅日かな山口要人
喧嘩して帰る家なし遅日かな山口雀昭
生も死もないつぼみ活け遲日かな山崎鈴子
錆猫の錆色褪せぬまま遅日山﨑瑠美
淀川を香に誘われて行く遅日山育ち
余生には暮れ遅し六十五哲山(山田哲也)
灯ろうのあかり待ちいて遅日憂し山田久美子
遅き日や鄙びし宿の若女将山田啓子
目薬の少し溢るる遅日かな山月恍
友一人ハローワークの帰路遅日大和屋としより
「やりたい」を少し残して遅日かなやまな未
友が来て囲碁のみ帰る遅日かな山の弥生
ついついに宿にはぐれる遅日かな山辺道児
草むしり地植えを増やす遅日かな山村晴美
参道の蕾ほっこり遅日かな山本康
遅日の川釣り竿を引く子らの声山本ひろゆき
暗くなるまでには帰ると言った母の遅日山吉白米
ローソファ鯖缶パカリ遅日かな熊耳
顔洗う猫の長々遅日かな遊泉
解除受けつけまのままの遅日かな雪だるま担
遅き日や赤提灯の仄明かり雪音
エジソンの伝記の挿絵遅日かなゆこ
折り返しの医師の電話を待つ遅日ゆすらご
春日遅々耳切れ猫のうづくまる宵猫
遅日の陽遊ぶ子どもに夕月火妖精さん
黒鯉の動くを待ちて日の遅し酔酔
鳥かごに差し込む陽の位置遅日かな夜香
遅き日や夫婦並んで立てる畝横田信一
晩酌に伸びる手躊躇遅日かな吉哉郎
遅日かな突如チャイムは長調によし季
マシュマロの溶ける瞬き遅日當て佳子
二十二時までの勤務や遅日の陽よしざね弓
土も枝も人も匂い初む遅日なりよしもとあけみ
拘りの男料理や暮かぬる余田酒梨
片方の小さき靴下のあり遅日よにし陽子
疲れ果て眠る子の顔遅日かなY・りこ
悠々と機織る伯母よ夕永しラーラ
腹の虫遠慮しがちに鳴く遅日雷紋
遅日でも我没す日は遅からぬ羅蒐
停車場の雀一列暮れかぬる梨音
遅日にて五台の山は灯りいらずりつりつ
澱み飛び越え新記録出す遅日龍季
姑の笑ひ皺かな春日遅々柳絮
小枝踏む遅日の山ぞ鳥の啼く綾風
洗濯を5時に取り込む遅日なり凛
退勤のビルの夕かげ遅日かなルーミイ
紅き実を減して遅日の訪れり黎成
じゃれつけるアムールヒョウの尾や遅日蓮花麻耶
道端の小花愛ほし遅日かなれんげ草
禅寺の小さな滝に遅日の香六谷宏雄山
遅日なりアフター5に夕日は残業杜若友哉
雨上がり更地崩れし遅日かな鷲野の菊
何もかも新しき気のする遅日海神瑠珂
山肌の遅日の夕の薄明かりわたなべすずしろ
遅日とは言うに難し舌足らず渡辺暁美
干し物を忘れてのらり遅日かなわたなべいびぃ
点灯のなきナイターの遅日かな渡邉竹庵
寝室のパキラを二度見して遅日渡邉桃蓮
夕飯はテイクアウトす遅日かな渡邉久晃
夕刊を読みて遅日に所在なく渡辺陽子
奉仕終え遅日の家路明るかり笑笑うさぎ
折りもてし小花遅日の墓参り吾亦紅
酒瓶の細字まで読む遅日かなゐのかたゆきを
軒下のYシャツ白き遅日かな夏井やるき
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
俳号には苗字を!
〇俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。よろしくご協力ください。
●俳句の正しい表記とは?
- 暮れ遅し ゆっくり探す 特売品白つつじ
○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●季重なりとは
- 徒然をつまみにビール遅日かな麻生恵澄
- 遅日卒業生代表挨拶石橋海翔
- 谷戸に湧くクレソンを摘む遅日かな大門宙美
- 辻散るは花か儚なば春遅日坂島魁文@回文俳句
- この遅日桜も戸惑い咲いているまたあ
- 子の丈を西日の影で知る遅日抹茶子
- 野遊びの友と道草遅日かなふく
○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「遅日」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●季重なりというには微妙ですが
- 五時のチャイム冬終わるを知る遅日泡狐
- 油売りコンビニアイス溶け遅日ジキシキ
- 名を知らぬ草を摘みいて遅日かな重本誠子
- 花びらを並べる子を待つ遅日かなちやこ
- とう立ちの花の黄色の遅日なり渚
- 三日月や蒼天高く遅日かな森本みどり
○不自然ではない季重なりはありますが、まずはどれが季語なのかを調べるところから始めましょう。
●兼題とは
- 転勤やこの地離れる別れ霜蒼の海
- 春遅し手書き図面にひそむ癖おぼろ月
- 未来差す春陰の切れ間青い雲剣呑
- 風光る白玉の鳥群れ咲きぬ後藤美貴
- お彼岸の東北へエーデルワイス山田一予
- あっちむいてホイ負けた向こうにランドセルなる岩泉
○今回の兼題は「遅日」です。兼題を詠み込むのが、たった一つのルールです。
●季語深耕
- 水槽に届く遅日のザラメ色石垣
- 刻の鐘遺影に届く遅日かなこずむす
○今回の兼題「遅日」は時候の季語であって、天文の季語ではありません。これら二句は、「届く」という動詞とともに使われていますので、日射しとして詠んでいるのではないかと思われます。
「〇〇の背を這う遅日」「手で遅日を掴む」のような表現もありましたが、これらも時候の季語「遅日」の詠み方としては、気になります。- 遅れ日の優しく聞ゆ寺の鐘中西澄子
○「遅き日」という傍題はありますが、「遅れ日」という使い方には違和感が残ります。
●類想の例
- 豆腐売りのラッパの音や遅日光蒼求
- 豆腐売りのラッパに誘われ遅日かないくみっ句
- 豆腐売りラッパの音も伸ぶ遅日かなつきのひと
○今回、「豆腐売りのラッパ」を何度も聞くことになりました。(苦笑)。
- 遅日=3.141網代
- 3.141592653589793238462643まで憶えて遅日宇田建
○こんな発想ないだろ! と思っても、やはりあることに驚いてしまいます。が、怯むことなく挑んでまいりましょうね。
お待たせしました!3月の兼題「遅日」の結果発表でございます。
今回の投句数はなんと6202句!毎月、俳句生活を盛り上げていただき、本当にありがとうございます。30日の23:59まで4月の兼題「落花」の投句を受け付けておりますので、みなさまの渾身の一句、お待ちしております(編集部より)。