夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
11月の審査結果発表
兼題「冬凪」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
冬凪やボード置き場にまよひ蜂
大久保加州
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夏井いつき先生より
風が強く吹き、海が荒れることの多い冬。そんな中にも、風がおさまり波が穏やかになる日もあります。それが「冬凪」。分類としては天文の季語になります。
上五「冬凪や」は、嗚呼なんとも気持ちの良い冬凪の日だなあ、という詠嘆です。中七「ボード置き場」の「ボード」は、サーフボードだと読みました。季語に含まれる「凪」の一字の印象が、海を思わせるからでしょうか。
「冬凪」の日ですから、海は平らか。サーフィンには向かない今日の海です。手入れでもするかと、ボード置き場に近づいたのでしょうか。「まよひ蜂」が、ボード置き場の方へ飛んでいくのを見つけたのかもしれません。
勿論、季重なりですが、主たる季語は「冬凪」。弱々しい冬の蜂も、その陽気に誘われて飛んできたのでしょう。「ボード置き場」にいる「まよひ蜂」を描くことで、季語「冬凪」を表現。季語の位置づけが明確で、季重なりのお手本のような一句です。
冬凪の手放す船へ撒く神酒
妹のりこ
まさに今日が、船を手放す日。「冬凪」の日射しは、これまでの感謝の気持ちのように「手放す船」を包んでいます。船へ撒く神酒に、船主の気持ちが滲みます。平らかな海も、船を労るかのようです。
冬凪やざりざり滾る塩の釜
樫の木
冬の風が吹き荒れる浜での製塩は過酷ですが、今日は「冬凪」。海水を煮ている「塩の釜」の滾る様子を「ざりざり」と表現したのが巧いですね。塩の濃い臭い、手触りなど、五感を刺激するオノマトペです。
冬凪の匂いでモスラいいヤツで
一斤染乃
「冬凪の匂い」を感覚的に捉えようとしたとたん、飛び込んでくるのが「モスラいいヤツで」という変化球。「モスラ」は巨大な蛾。たしかに平和を愛する冬凪のような心をもった怪獣かも、と妙に納得(笑)。
冬凪いで鰓の名残りの耳かしら
シュリ
穏やかな「冬凪」の日は、自分の耳が「鰓の名残り」のように思えてくるのです。「凪」の一字がもたらす海への郷愁でしょうか。鰓の名残の耳には、遠い海の咆哮がかすかに聞こえてくるのかもしれません。
冬凪や手のひらは平らではない
葉村直
嗚呼、気持ちのよい「冬凪」の日だよと、何気なく己の掌を眺めているのです。「手のひら」というが「平らではない」よ、という小さな気づき。しげしげと眺める掌は、今日の海のような穏やかさです。
冬凪の空はからからして青い大津美
冬凪ぎぬ綱に巻かるる烏賊の足あ・うん
冬凪やピッチカートのチェロ弾み愛華沙羅
冬凪やあの黒松まで泉佐野相沢薫
冬凪の掘削の音響きけり愛燦燦
冬凪の湾白々と工場群あいむ李景
冬凪や鞄にくたびれた辞表青井えのこ
冬凪や満艦飾の旗を読む青井晴空
先に死ぬ兎のぬくみ冬凪いで青川紅藤子
冬凪や一人を護送する二人蒼空蒼子
冬凪に帰り支度のセロ弾きは青田奈央
冬凪や海に月への橋架かり青砥転典
冬凪やいったん預けてある涙青に桃々@いつき組俳句迷子の会
冬凪や何か忘れたような今日あおのめ
退職の後もワイシャツ冬の凪蒼鳩薫
冬凪やベテルギウスの赫々と赤尾てるぐ(旧まがりしっぽ)
冬凪は照魔鏡君が映った赤馬福助
冬凪や漬け物なれたか倉の中acari
冬凪の無音やうみのまったいら秋白ネリネ
冬凪やエンジン臭はいつまでも昭谷
冬凪の夜の広さをおそれけり秋野茜
冬凪や建網いそぐ伝馬船秋山らいさく
冬凪やモルヒネ効いて眠る父あさいふみよ
冬凪や津波到達点の黙朝雲列
冬凪や胡麻の香むわり小豆島朝月沙都子
浜へ撒く辛めの酒や冬凪ぎぬ字土街海
冬凪や人力飛行機の軌跡あさぬま雅王
モノクロの冬凪げる波すり寄せり淺野紫桜
冬凪を丘から見てる車椅子麻場育子
冬凪ぎてずんと浮力を無くす空芦幸
冬凪やどんと留まる雲の海葦屋蛙城
冬凪を背に朝粥の加賀屋かな梓弓
冬の凪人を集めて暮れにけり阿曽遊有
冬凪や抜錨の音高らかに愛宕平九郎
冬凪や鬢付け匂ふ博多の夜あたしは斜楽
片目なる銀貨の天使冬凪ぎて足立智美
冬凪や港に停戦の夕べあたなごっち
冬凪に魚籠をたづさへ老教師あつちやん
冬凪やガントリークレーンぎぎぎat花結い
冬凪ややうやう取れし子の内定渥美謝蕗牛
冬凪や工場夜景に人の影あなうさぎ
懐メロはサビ凍凪のツーリング阿部八富利
冬凪や背に傷もつ兎抱く天風月日
冬凪や元寇殲滅碑にハートあまぐり
冬凪や友の死を告ぐ友の声雨戸ゆらら
冬凪に臨む駅舎の待ち合わせあまねくみぞれ
冬凪へ溶かしてしまふ父の骨あまぶー
冬凪やターキーの骨煮出す夜網野れいこ
冬凪のピークは三時頃でせうあみま
冬凪や抗がん剤を始める日雨李
冬凪の底をひりひり錆びるもの綾竹あんどれ
冬凪やシュレディンガーの猫達者荒井類
冬凪の湾は全面滑走可あらかわすすむ
冬凪や一時帰宅の車窓より新多
冬凪や菜に塩まぶす昼の暇蛙里
冬凪や瞼に霰粒腫ころりありあり
冬凪や空へ息するコンビナート有本仁政
冬凪は余計なことを思い出す在在空空
殉教の忌や冬凪の波止にひとりアロイジオ
冬凪や「漂流ポスト」の返信アンサトウ
冬凪や河口の流れ躊躇わず安寿
冬凪や海神のかく大いびき安春
冬凪や離職票異議有りに〇飯村祐知子
冬凪や父の骨めく貝を拾ふいかちゃん
二両編成終点は冬凪ぎて池之端モルト
冬凪や漁師のお婆の味噌煮込池ノ村路
海鳴りを星の聲とす冬凪ぎてイサク
冬凪の西にひかりの小さき罅いさな歌鈴
冬凪を囲ふガラスといふ流体石井一草
冬凪の島の部活のスーザフォン石井茶爺
心音を再生冬凪の赤子へ石垣
冬凪やポーズボタンの色褪て石崎京子
冬凪や竿に当たりの無くて暇石塚彩楓
冬凪焦れてER搬入口の朝石の上にもケロリン
冬凪に百億年の星集い石間毅史
冬凪や妻の機嫌のビバルディー磯野昭仁
栞挿すかがよふものに冬の凪石上あまね
冬凪や正方形に切るガーゼ板柿せっか
冬凪やオープンカーに載せた杖いたまきし
冬凪や深き火口へ熱気球市川隆一
冬凪や全ての届出し終へてゐてふ@QLD句会
真夜中の海に天あり冬の凪樹魔瑠
冬凪や波を失ひ海無力一久恵
冬凪に融けるオカリナ四分音符一秋子
冬凪の底に錆びつく特攻機伊藤亜美子
冬凪や懸命すぎた母許し伊藤どらやき
冬凪やどうせ怒られるんだから伊藤正規
冬凪やひそかに嫁を卒業す伊藤柚良
冬凪や琳派のごとく夕陽染む伊藤れいこ
冬凪や島の埠頭に箱ひとつ伊藤小熊猫
犬吠えて主の舟と冬の凪糸川ラッコ
冬凪の窓枠に砂宿一人伊ナイトあさか
冬凪の水平線に船が乗る稲垣良一
冬凪や重機の崩す飛砂の山井中ひよこ号
冬凪や硯の陸にある湿り伊奈川富真乃
冬凪や貝に生まれてみたけれどいなだはまち
冬凪や猫の看取りについて問ふ稲畑とりこ
冬凪やかごに雑魚の血赤茶けて居並小
冬凪や異國奇譚の輪の中へ犬山裕之
冬凪や音なく進む沖の船井上れんげ
冬凪へ英語スピーチ練ずる子井納蒼求
冬凪やがらんだう奥の歌ごゑゐのかたゆきを
冬凪や頓服薬の空袋井原冴
冬凪や手紙したためたる夕井原昇
防潮林抜け冬凪の太平洋いまいやすのり
島影の一つは遠く冬の凪井松慈悦
冬凪や踏切越しの相模湾今乃武椪
冬凪や明日も乗り放題切符伊予吟会宵嵐
冬凪や歩幅の狭き靴の跡伊予素数
検温の朝冬凪の光くる伊代ちゃんの娘2
冬凪やひとりぼっちの展望台彩人色
冬凪を物足りなくも思う暮れいわさちかこ
色淡きミュシャの吐息や冬凪ぎぬ岩清水彩香
冬凪をクラリネットの音の真直ぐ磐田小
冬凪や図面片手に故障車へ上田ちゃーりー
冬凪やイヤホンに聞く英会話上原淳子
沈黙の君冬凪の熟れゆけりうからうから
トロ箱のはみ出る尾びれ冬凪げるうさぎさん
冬凪や島ごとに抱く天主堂うさぎまんじゅう
冬凪の海へためらいなく犬は宇佐美好子
冬凪の歩道白杖の音近し宇田の月兎
冬凪へ大桟橋を離れけり内田こと
歯舞色丹国後択捉冬凪に浮き内本惠美子
冬凪や離島の嫁の待つおむつ卯月紫乃
トロ箱に薄く凝りたる冬の凪靫草子
冬凪や今朝津軽野は雲ひとつ卯波まり
耳鳴りの底冬凪の遠鴎海野あを
冬凪や千年前の海潮音うみのすな
冬凪や通院中の日曜日海葡萄
子を預け冬凪の空吸うてをり梅野めい
冬凪や王墓は千年前のまま浦野紗知
はんなりと菜の陽に干され冬の凪うらら茉瑠
冬凪や癌は消えたと医師の言う麗し
冬凪や投函口の口への字吽田のう
冬凪や抱ふる吾子のあしのうら詠頃
冬凪のバンドネオンの音微か江川月丸
冬の凪たおやかな言葉の墓標蝦夷野ごうがしゃ
冬凪をカムイの悠々たる翼蝦夷やなぎ
冬凪や影絵上映開催す越後縮緬
冬凪や隠し事無き漁師町越冬こあら@QLD句会
冬凪や光は濡らすペンギンを絵十
冬凪の不法移民のゴムボート笑姫天臼
冬凪や老舗ホテルの万国旗朶美子
解禁を逃れ冬凪海の道M・李子
冬凪の罵詈雑言貝に聞かれ絵夢衷子
冬凪や猫桟橋に長くなるえりいも
お隣の猫と懇意に冬凪げりえりべり
冬凪や喪服の群れに三姉妹縁穐律
冬凪やせんせはただ今往診中遠藤千草
冬凪や人それぞれに水平線遠藤一治
冬凪や悩める若手と缶コーヒー遠藤波留
冬凪や黒タンカーの四辺形旺上林加
父の居た島を指さす冬の凪おおい芙美子
冬凪やテスト終わりのスターバックス大江鈴
冬凪や強面のゐる検問所大岡秋
冬凪のあれはマネキンだとばかり大黒とむとむ
白き水脈やがて光へ冬の凪大越マーガレット
冬凪や納得しないけど許す大小田忍
冬凪や貨物船から波届く大嶋宏治
里帰りして冬凪の夫婦岩大塚恵美子
揺れ甘美なる冬凪の真珠筏大槻税悦
白竜の眠るがごとし冬の凪大野喬
冬凪やリフトで食べるチョコレート大谷一鶴
冬凪や音割れの定時放送大山和水
凍凪よ喪服は強くなるために大和田美信
冬凪や島への橋にやゝ起伏可笑式
冬凪の浜辺足音ひとり分おかだ卯月
冬凪や耳鳴り残る右の耳緒方朋子
冬凪や粟島までの月の道岡田雅喜
明暗の灯光寒凪を滑る小川さゆみ
冬凪や伊勢より神の投げし岩小川しめじ
密漁の噂の出処冬の凪小川野雪兎
冬凪や地球の鱗めく光小川都
冬凪の窪みに靴を濡らしけりおきいふ
散骨は冬凪の日のあのあたりオキザリス
ジッポの火三角冬凪は四角沖原イヲ
冬凪や陽高く漁港からっぽおだむべ
冬凪や波郷の海へ外国船越智ぷちまり
冬凪ぎて命の数ほどのひかり越智空子
冬凪をむくりこくりと鬼がくるおでめ
冬凪や錆びた自転車走らせて音のあ子
耳鳴りは冷たき痛み冬凪す音羽実朱夏
人魚もう帰り着きしか冬凪ぎぬ音羽凜
冬凪や膨らみはじめたる鼓膜おんちゃん。
冬凪や切麻残る地鎮跡かいぐりかいぐり
冬凪や肩書きはなく私です快晴ノセカイ
冬凪よ怒号なんて聞きたくない械冬弱虫
冬凪やテニスコートの弛む網海峯企鵝
冬凪をつと踏みはずす入り日かな火炎幸彦
冬凪やイカ干す店も静かなりカオス
冬凪ぎて玻璃滑りゐる遊覧船垣岡凡才
冬凪に砂は居前を正したり風花美絵
冬凪や聞こえぬ方も血の通ふ加座みつほ
冬凪や半紙五枚目墨する音鹿嶌純子
冬凪の底の平家へ放生す華胥醒子
冬凪や仏頂面で渡る橋風早杏
冬凪を海を制せしやうに嗅ぐ片岡六子
浜道をゆけば菩提寺冬の凪加田紗智
冬凪は何隠すらむ環指うづく片山蒼心
冬凪げり母の紬の仕付け解く花鳥風猫
冬凪やあら汁を炊く日曜日桂田 和京
冬凪の青は遥かな場所にある花伝
母の骨いずこに隠す冬の凪加藤麗未
冬凪や縁切り絵馬の真黒なるかなえの
冬凪に唇の血の匂いだけ仮名鶫
冬凪や父は鉄砲磨きをり金子あや女
冬凪やキールを晒す廃漁船かねつき走流
冬凪や工場の「金」の大看板花星壱和
ゆるき坂ゆるりと下り冬凪へ釜眞手打ち蕎麦
冬凪や四十五度の漁師風呂神谷たくみ
冬凪や一泊のみの里帰り紙谷杳子
冬凪や我ら砂像の如く立ち亀田荒太
飛ぶ鳥のスローモーション冬凪げり亀田かつおぶし
冬凪や滴下数へる鎮痛剤亀の
冬凪や家族不在の日々に慣れ亀山逸子
冬凪やがっつり焼べる浜の薪亀山酔田
タラップの軋み泣きそう冬の凪花紋
冬凪や祖父より年上のジャンク加良太知
折鶴は冬凪の息吹き入れぬ狩谷わぐう
冬凪の浜に干上がる深海魚川越羽流
冬凪や遅々と進まぬ子の縁談川崎ルル
冬凪の沖島老婆の三輪車川村湖雪
冬凪や明日は逢へぬ人とゐる河村静葩
薄ら日の冬凪へ押す車椅子川村ひろの
冬凪やマントラ唱ふ声止まず川村昌子
冬凪やあれは逢瀬の跡かしら閑々鶏
冬凪や天狗山から缶を蹴る看板のピン
冬凪や田霧姫舞ふ裳のしづか閑酉
冬凪や砂の満ちたる虚貝喜祝音
冬凪や社に朱き和蝋燭キートスばんじょうし
冬凪の浦賀水道今日も密季々諧々
冬凪の汀にルート2の終り岸来夢
冬凪や朝はクルトンくるくると季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
冬凪とは昏し練炭の追憶北川颯
冬凪やカップ麺したたかに誤嚥北藤詩旦
冬凪やモーリタニアの蛸の壺北村崇雄
冬凪や真摯に生きて漫才師北村季凛
冬凪や再就職の男の背貴田雄介
冬凪げる海は憂えり我もまた狐雨
冬凪やテトラポッドの長き影きなこもち
冬凪や鼓膜しつとり匂ひけり城内幸江
神宮の森冬凪へ零すみづきのえのき
冬凪いで海の目玉のあたりかな木野桂樹
冬凪やセロ弾きの指やはらかに木原トモ
冬凪のロープの弛む係留船きべし
冬凪いで岩場をズズと這う何か木ぼこやしき
冬凪やカウンターテナーの静謐木村かわせみ
冬凪や立神拝む戻り船木村隆夫
冬凪よ消化しきれぬ有休よ木村となえーる
冬凪や失せし錨を探し当て木村波平
寒凪や立入禁止なる埠頭Q&A
冬凪のラヂオに混ざる朝鮮語Qさん
冬凪や鳶にしばしの暇出すきゅうせき
冬凪やここはお日様通る道京野秋水
冬凪やひかりに微かなる浮力杏乃みずな
冬凪やクレーン船の吊る夕日清瀬朱磨
冬凪や隣に体育座りして霧島ちかこ
冬凪へ翳して食べる島のピザギル
冬凪や母より細き父の食菫久
冬凪や母に黒々した目眩ぐ
爆撃の匂いかすかに冬の凪くぅ
富士山は甲斐か駿河か冬の凪久我恒子
冬凪の沖に島影明日も晴れ葛谷猫日和
冬凪に蠍座低し暗き海楠田草堂
冬凪や月煌々と座礁船工藤遊子
陸酔いはかるく冬凪きらめきぬ久保田凡
冬凪や声を失くした鳥つがふくま鶉
冬凪や小さき貝は涙壺熊谷温古
冬凪や鳶の憩へる澪標倉岡富士子
空の青統べ冬凪となりにけり倉木はじめ
打ちあがる魚てふ冬の凪の壊死眩む凡
冬凪や軽トラの碧疾走す栗田すずさん
冬凪や朔日餠を喰うてをり栗の坊楚材
冬凪や期待外れの日本海空流峰山
冬凪や名の長き鳥水面刺す久留里61
冬凪やふたりの間に缶コーヒー黒瀬三保緑
冬凪や職辞し朝の砂温し黒田@しろい
夫婦岩最後の旅の冬凪ぎぬ桂子
冬凪や本日海警未確認鯨野
星が生まれた日にもこんな冬凪恵勇
冬凪や拾う一円玉に疵けーい〇
冬凪や貝の亡骸埋もる浜家古谷硯翠
祖母といふ欠けゆくうつは冬の凪げばげば
冬凪の骨踏むやしくじりの音謙久
冬凪や指摘事項は百を超え研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
冬凪や白き裸身の弁財天剣橋こじ
冬凪やサハリンの墓見ゆるかに小池令香
冬凪げる色濃き海よ三陸よこいぬ
冬凪の藍の翳りは深くしてコウ
冬凪をトランペットのくすぐれり剛海
ぺらぺらの空港浮いて冬凪げり公木正
ミサイルは落ちた無傷な冬凪よ紅紫あやめ
ふぢつぼの嗤ふ浮標や冬の凪幸田柝の音
冬凪やひとつこひとり会はぬ島香田ちり
冬凪の軍艦島てふ砂時計古賀
冬凪や産気づきたる島の嫁小笹いのり
冬凪や七里ヶ浜の貝ひとつ小嶋芦舟
温めますかと冬凪の売店木染湧水
権禰宜の袴みづ色冬凪ぬ小だいふく
冬凪や雑踏のノイズを抜けぬ虎堂吟雅
彼の髪の香よ冬凪の渡し船後藤周平
冬凪ぎにひとつ探すや言の葉を後藤方丈
冬凪や志功仏画の目の大き後藤三梅
グライダーあんなに高く冬の凪古都鈴
冬凪や入院前のジン辛し粉山
冬凪やひび入るやうに舟はゆくこのねこのこ
冬凪や技官の記す海苔日誌このみ杏仁
冬凪や揚げパン香るキッチン車小林昇
冬凪の生まれ故郷に散骨すこひつじ@QLD句会
冬凪や移動スーパー乗せた船小藤たみよ
冬凪や校門前の献花台駒村タクト
冬凪や二日と持たず吸うタバコ子安一也
冬凪に惚けたやうなヨット干すGONZA
冬凪の一個だけあるカップ麺今藤明
冬凪や星のこぼるる岬ありさいたま水夢
ミサイルの飛び込む海の冬凪ぎぬ齋藤杏子
冬凪にだまされアヒルボートに乗る宰夏海
穴のあくレッスンバッグ冬凪ぎるさ乙女龍千よ
冬凪の反対側は猫である酒井おかわり
冬凪や海は私に添い寝せり酒井春棋
冬凪や離婚届のしわ伸ばす坂上一秀
冬凪や望遠鏡に座礁船さかえ八八六
冬凪や急ぐ男のひとり言坂口いちお
冬凪や反すれど惹きあふ磁石坐花酔月
冬凪に足場解きゆく大鳥居坂まきか
冬凪や貝は無骨な扇形さくさく作物
ギムレットのライムは掠めるだけ冬凪櫻井紫乃
冬凪や片割ればかりのイヤリング櫻井りこ
冬凪よ弾の痛みを赦せるか桜鯛みわ
冬凪やお腹すかせた雲ひとつさくら悠日
冬凪や十年前のブロマイド迫久鯨
からころと竹輪工場や冬凪ぎぬ雑魚寝
冬凪やフェリーは神の島へ行きさざなみ葉
冬凪や待つ猫のいて薪を割る砂舟
冬凪や朝のクロワッサンさくり紗千子
冬凪や放りなげたる雑魚二匹さち今宵
冬凪やちよいと座りて押し車さとう菓子
冬凪や夜の生命維持装置佐藤志祐
中国語満載の船冬の凪さとうナッツ
冬凪や財布に梛の葉忍ばせて佐藤佳子
冬凪の水兵握るハーモニカ里すみか
冬凪や浜辺の墓の死産の名佐渡の爺
冬凪やさっき産まれた島の青里山子
喉奥のかすかな死臭冬の凪真井とうか
冬凪の鳥は夥しき休符錆田水遊
半島のマグマの記憶冬凪げりさふぁい庵
入船をたたへるやうに冬凪げるさぶり
冬凪の果へ投げ込む我の青さむしん
冬凪や海知らぬまま猫は逝き紗羅ささら
冬凪やママとマンマを聞き分けてさるぼぼ@チーム天地夢遥
冬凪の海より低き村に住み澤田郁子
冬凪や礼拝堂の如静かさわだ佳芳
冬凪や生きる『手帳』を申請す沢拓庵
冬凪の片瀬西浜東浜澤野敏樹
マトリョーシカどんどん小さくなる冬凪山海和紀
冬凪や半覚醒の鱶の群三月兎
散骨を許す冬凪海の神三休
冬凪の千里浜赤きイタリア車三水低オサム
冬凪や天売焼尻影の美し三泊みなと
冬凪や根治に触れぬ医師の声紫瑛
冬凪を漁場へ甘めの卵焼き潮風の台所
冬凪や足場に垂るる命綱塩沢桂子
凍凪の博物館となりし船潮見悠
怒り飲み込めず冬凪は重たい四季春茶子
凍凪や領空低く哨戒機じつみのかた
冬凪や平和の地図は未完成実本礼
冬凪の一便で往く島調査篠雪
冬凪の海をカロンと命名す渋谷晶
冬凪の海を眺めてひよこ豆渋谷背馬
冬凪の満ち潮滾る塩釜は島田あんず
冬凪やvは息継ぎする印嶋田奈緒
凍凪や睡眠薬が苦すぎる嶋村らぴ
冬凪やぴきんぴきんと偏頭痛清水祥月
冬凪の日面日裏伸子張清水容子
赤牛の糞放る湯気や冬の凪清水明美
冬凪や東京湾は川の果て清水縞午
冬凪や草木明るき紀三井寺清水 三雲
冬凪にひび割れはしる汽笛かな志村狂愚
ミサイルは通過冬凪聳え立つ下丼月光
冬凪や漁港のおっかあのうどん芍薬@独逸
床磨くマドロス冬凪の鼻歌じゃすみん
冬凪やサーフボードの黒漆沙那夏
冬凪やあとは子犬の引取手砂楽梨
壱岐マラソンラスト直線の寒凪朱胡江
黒海は晴れ機雷原は冬凪寿松
冬凪の静か腹よりスンと浮く獣羅
冬凪や魔法瓶からルイボスティ順之介@QLD句会
冬凪や針引き抜けば穴閉じる常幸龍BCAD
冬凪や二人はコーヒーしか見ない庄司しづく
冬凪や「生きる」と砂に書いてみる白猫のあくび
冬凪の燿に辷る佐渡汽船白プロキオン
冬凪やさくさく剥がすスクレーパー白よだか
冬凪の突堤海の果てはグレー神宮寺るい
冬凪やキリストめく船長の髭ジン・ケンジ
どっちみち冬凪終わるまでのこと新城典午
冬凪ぎて俘虜の日黙す伯父逝けり新濃健
冬凪や補陀落渡海日和なり深幽
冬凪のさざ波星へ続きけりさいたま水夢
冬凪の踏んだら怒りさうな端すいよう
冬凪や四日遅れの週刊誌瑞陽庵
手の甲にワセリンの角冬凪げり水曜日生まれ
たをやかに鳩ゐて冬凪の瓦礫すがりとおる
冬凪や仁右衛門島の手漕ぎ舟杉浦あきけん
冬凪の常に列島揺れてをり杉田梅香
冬凪や無人灯台無音なり杉田ひらさこ
冬凪や落ちて届かぬ星ふたつ涼風亜湖
冬凪やカーペンターズの幻聴鈴木暮戯
豆を挽く明けきらぬ空は冬凪鈴木もま
寒凪や鯛の甲の持ち重り鈴木由紀子
冬凪や転がりやすきものに恋鈴木由里子
冬凪やベビーカステラ分け合うて鈴木麗門
冬凪や航跡長き日本海鈴子
冬凪や船尾に記す子の名前清白真冬
ウエットスーツ冬凪の電子煙草鈴野蒼爽
冬凪や砂文字だけの秘密ごと素敵な晃くん
吸引を抜きたる喉や冬凪げる主藤充子
冬凪やかもめ原子炉の真上砂山恵子
冬凪の崩れ始めて匂ふ砂すりいぴい
冬凪の岸壁「休工」の立て看晴好雨独
冬凪や木喰仏のノミの痕せいしゅう
冬凪よ男子宿して見る夢よ瀬央ありさ
冬凪や廃止桟橋曳かれゆきseki@いつき組広ブロ俳句部
冬凪のオイルコンパス愚直なり世良日守
寒凪やセブンスターを根元まで素空
冬凪や重く帰還す浚渫船外鴨南菊
冬凪や押してしまひし降車ボタン空豆魚
冬凪や骸の鳥の羽健かぞんぬ
泰然自若なり冬凪の管制塔たーとるQ
冬凪や木更津に待つオスプレイ泰山
われら冬凪の船団かもしれず帝釈鴫
冬凪や水平線にりゅうこつ座太平楽太郎
今日の冬凪は光たちの請願平良嘉列乙
マトリョーシカの最後は「希望」冬の凪高尾里甫
残されしマウスピースや冬凪ぎぬ高木音弥
冬凪や仕掛け絵本のやうな雲高田祥聖
冬凪や去年は君の居た隣高嶺遠
冬凪や火葬待つ間のお茶の味高橋朝絵
冬凪を副流煙のテリトリー高橋寅次
寒凪や烏賊だらしなく吊るしをる高橋なつ
冬凪や身を乗り出して見る奈落高橋ままマリン
冬凪やマゼラン船の砂時計たかみたかみ
冬凪や松林図屏風の余白滝上珠加
ポイントを銀河へ冬凪の列車滝川橋
冬凪や君の覚えたての手話をたきるか
みちのくや寒凪を日が登るなり多喰身・デラックス
鬼祀る島の和太鼓冬の凪武田豹悟
冬凪にぎょうさん干されひかる鰭竹田むべ
この船にして良かつたと冬の凪たけろー
冬凪や弛み引き寄せ舫い解く多胡蘆秋
冬凪ぐやまつの初産十一歳多事
冬凪や死者も佇む大鳥居黄昏文鎮@いつき組広ブロ俳句部
冬凪や寂し過ぎても愛せないただ地蔵
冬凪や抗うつ剤は空の色多々良海月
冬凪やあの娘黙って島を出たダック
冬凪や人魚の恋の唄静か立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部
冬凪やミサイルは通過したもよう立部笑子
冬凪や酒ばかり減る磯の釣り谷本真理子
調停は二か月先に冬凪ぎぬ田畑整
冬凪にわたしの芯のまるみゆく玉木たまね
低画質の雲ゆく冬凪の空母玉庭正章
冬凪や遠きところに子らの声たまのねこ
冬凪やキッチンカーは烏賊を焼きたむらせつこ
物忘れしたかの如き冬の凪田村モトエ
冬凪や島ヘ歩いて行けさうな田村利平
冬凪や返せるものは何もないだんがらり
晴天や身投げ日和の冬の凪ダンサU-KI
冬凪や胎内エコーは蜜柑色丹波らる
冬凪の係柱に掛け単語帳千代 之人
空返事して冬凪の車窓かな彫刻刀
給水のランナー真昼の冬凪長楽健司
冬凪やコンビナートに清き炎月石幸
冬凪や塩害実験所の無人月岡方円
冬凪や立ち寄つてみる己が墓辻内美枝子
冬凪やオムツの横のウルトラマン辻野 花
冬凪の汽笛まじわる出潮かな対馬清波
冬凪やまだ逆さまの砂時計つちのこ
冬凪の窓や殴るによき灰皿ツナ好
海底からネジ冬凪のローソク岩津幡GEE
冬凪をおもちやのやうに貨物船露草うづら
冬凪にべつとりと日の掠れ丁鼻トゥエルブ
冬凪や油が浮いた海重し哲庵
冬凪の遠州灘を一歩踏み哲山(山田哲也)
冬凪の水映し出す知らない私手毬まりこ
冬凪や密航船の着いたらし寺尾当卯
冬凪や常夜灯越しの星空輝由里
冬凪や今日のミサイル落下位置電柱
冬凪や沖には叔父のさっぱ船でんでん琴女
冬凪や流木は骸のかたち天陽ゆう
冬凪やプルトニウムの半減期天六草太郎
冬凪や吐いた言葉の消えぬ街土井あくび
戦闘機飛び去り冬凪の気配どいつ薔芭
冬凪や太郎たずぬる乙の影トウ甘藻
冬凪や浜のボードにアイツの名東京堕天使
冬凪や尖れるものの美しきとかき星
冬凪や今朝の時報の通りよき時まる
冬凪や村練り歩く鬼太鼓ときめき人
冬凪や前触れの無きさやうなら常磐はぜ
冬凪や戦渦に欠けしマリア像どくだみ茶
冬凪やはみでた尾鰭は三日月形戸口のふっこ
人食いのマントヒヒ冬凪に寝るどこにでもいる田中
冬凪や隣りの島の山羊が鳴くとしなり
冬凪や漁具を囲んで馬鹿話十津川ポロ
冬凪や笹掻き薄く薄く薄く殿村則子
鉄鯨ならべ冬凪横須賀港戸部紅屑
盲目の羊のやうに冬凪ぎぬトポル
冬凪の黙 地震速報不穏とまや
冬凪に歌はば回れ風力塔斗三木童
骨つぼのまるみ冬凪ろうたける富山の露玉
冬凪や草食む馬の影長しとよ
水切りの砂浜失せて冬の凪豐田雄二郎
冬凪やギターの弦にある窪み鳥田政宗
冬凪や機甲師団は野営中豚々舎休庵
冬凪や命日は半年前かとんぶりっこ
冬凪や半分こするたこせんべいとんぼ
冬凪ぎて右脛痣は海のいろ内藤羊皐
冬凪のきらきら桜島はうとうと直
冬凪を吉日として入籍すなおじい
凍凪や石とび波紋とび波紋直美羽YC
冬凪の海を見ているずる休み中岡秀次
冬凪やテトラポットの墓標めく中里凜
冬凪や二枚にわたる処方箋永田千春
冬凪や荒れに荒れたる夕のセリ中鉢矢的
せん妄の母のカレーや冬凪ぎぬ中村すじこ
冬凪や蟹穴で聴く波の音なかむら凧人
子の部屋の空の本棚冬の凪凪ゆみこ
組合の選挙は明日冬凪ぎぬ夏草はむ
冬凪や元船眠る七百年夏湖乃
もつと濁ればいいのに冬凪なんて夏雨ちや
尨犬の終のこえ冬凪のおと七草木香
冬凪や手箕に溢れし櫟の葉七国独楽男
空つぽがいい冬凪のサルベージ七瀬ゆきこ
冬凪に去りし夫の眼鏡ふく七森わらび
継ぐものの無き舟に乗り冬凪へ菜々乃あや
冬凪やうすら青なる今日の月浪速の蟹造
冬凪の端にかすかな鉛色名前のあるネコ
冬凪や血抜きのナイフ研ぐ浜辺なみ夢めも
冬凪や裾のなびかぬ龍馬像奈良素数
冬凪眩し欠席に引く二重線西川由野
冬凪や会いたき人はみな死人西爽子
鐡熔かす街はジャム色冬の凪西田月旦
冬凪や砂積む船の傾いて西村小市
冬凪のふちへ波紋のふれ反射二重格子
鳴き砂は仔犬のごとし冬凪ぎぬにゃん
冬凪や紙ストローの口あたり仁和田永
ウバザメの呑む冬凪の二千屯暖井むゆき
冬凪や積荷は紅と絹と酒沼沢さとみ
冬凪や赤子あやすは子の仕事野地垂木
黒船の影も黒船冬の凪野点さわ
冬凪やバスはゆさゆさ吊り橋を野ばら
ステロイド2ミリ減薬冬凪げり野原蛍草
冬凪やCT検査小腫あり野間薫陶
冬凪や先客のないドッグランはくたい
冬凪のしじま町屋は犇めきぬはぐれ杤餅
冬凪の向こううっすら我が領土波止浜てる
冬凪に鴉つまらなさうに鳴く長谷機械児
冬凪や海底火山噴火前葉月郁斗
冬凪や言うなら今しかないって顔八田昌代
彼奴には負けてやりなよと冬凪花咲明日香
半島を象るルート冬の凪花南天あん
寒凪や高音域のハーモニカはなぶさあきら
冬凪やカメオの女神横向きで英ルナ
冬凪や赤い眼をした怪魚の死はのん
冬凪に抱かれくすり笑う貝羽馬愚朗
冬凪や灯台守の手弁当原水仙
冬凪や釧路の朝は勝手丼原島ちび助
冬凪ぎてかっぱえびせん待つカモメ原田民久
寒凪や町道場に滾るこゑ巴里乃嬬
はらいそはある冬凪の雲のうえ播磨陽子
冬凪の鉄橋たらこ色のキハ晴田そわか
破天荒の父ゆるしけり冬の凪晴菜ひろ
冬凪やなんのきなしのプロポーズ春野びおら
冬凪へ吐く大声の帰らざるはれまふよう
冬凪の底はトラフの活断層樋口滑瓢
文字が乱れた冬凪もう終わりかひでやん
冬凪へ捨てそこなひし涙かな日向こるり
冬凪や厠残りし津波跡ひなた和佳
冬凪や根詰めし身の弛むままひな扶美子
結髪のほつれ冬凪くづれ初む比々き
冬凪や収骨室のゆるき黙ヒマラヤ杉
冬凪や駅長室のキセル客ヒマラヤで平謝り
太陽のピースばらばら冬の凪比良田トルコ石
冬凪や土鍋の粥が炊けました平林政子
冬凪や泣くために踏む浜の砂平本魚水
冬凪やたちまち晴れて能登の海昼寝
冬凪や食堂どこも定休日広木登一
冬凪を描こうとしてる目の必死広瀬康
冬凪や君に聶くラの調べ広ブロ&新蕎麦俳@摂田屋酵道
冬凪や専科入校は船便びんごおもて
冬凪や手術日前の観光地フージー
冬凪や鋼板錆びし造船所風慈音
冬凪の向かうに確と核軍備深町明
爪を切る独り寒凪の縁側深蒸し茶
冬凪や傷を隠して大人になる深谷健
冬凪や海は鴎の還る場所ふくじん
冬凪を泣きのギターのビブラート福良ちどり
冬凪や光の粒はきっと君袋小路 綴乃
冬凪や明石大門に光跳ぬ藤井眞おん
冬凪や滑走路めく防波堤藤色葉菜
冬凪や釣り船見ゆる露天風呂藤丘ひな子
冬凪ぎて伸ぶる胸鎖乳突筋藤倉密子
眉山はうすあをき影冬の凪ふじこ
冬凪やちゃぷんちゃぷんと鷲の糞藤咲大地
冬凪にお喋りな助手席のサボテン藤田ゆきまち
冬凪の砂に書く歪んだイニシャル藤永桂月
冬凪やデッキで開く中也の詩藤原涼
鴎つがひたる冬凪の烏帽子岩藤雪陽
冬凪や神話の浜の潮を汲む布野一学
スーパーは隣の島や冬の凪冬のおこじょ
冬凪や制服のまま来る海辺冬野とも
渡船待ついつもの面子冬凪よ古川しあん
冬凪や蒼くけものの名の星座古瀬まさあき
処方箋手に冬凪の五メートルふるてい
冬凪や私も神の庭にゐた碧西里
冬凪や今月が産み月だつたペトロア
冬凪や一曲とばしたらサティへなけん
冬凪の湾は弧状ぞ空さびし茫々
冬凪や臍に轟く機関室星月さやか
冬凪やまとめ買いする紙おむつ干しのいも子
冬凪や遺骨でつくる砂時計星野はいかい
冬凪や薬の効いてゐるあひだほしの有紀
冬凪や新車の匂いもうしない細野めろん
冬凪やあの人も肺が弱かったポップアップ
冬凪や喧嘩ばかりをしてた恋堀卓
冬凪や湾へ傾るる湯のけむり堀隼人
冬凪や鳥の波紋のそこここに堀邦翔
冬凪や種子島より木を運ぶ梵庸子
冬凪や脈動小さき船の底まこ@いつき組広ブロ俳句部
やがて死ぬ消ゴムの角冬凪ぎぬまこちふる
冬凪のホテルの朝のクロワッサン増山銀桜
ふゆ凪よ僕はフリーターじゃダメか魔星蟲ダークネスライザーI世
冬凪や残るテープを握る人町田勢
冬凪や外から拝む屋敷神松岡重子
冬凪や翳すシーグラスの丸み抹茶子
冬凪のくちびるに眠りをわけて真冬峰
冬凪や鳩と目の合う展望風呂真宮マミ
冬凪や去る者だけの埠頭ありまやみこ恭
冬凪や埋墓のある瀬戸の島まりい@木ノ芽
冬凪や星を終へたる衝撃波慢鱚
冬凪やパンゲアを指す羅針盤まんぷく
冬凪や舌先伸ばすかに岬みい
ぜんぶ嫌最北端は冬凪いで三浦にゃじろう
冬凪や伊勢湾の抱く船いくつ三重野とりとり
冬凪や退学届出した朝澪那本気子
冬凪や馬券に敗者の指の痕帝菜
冬凪とマルゲリータと一人席三茶F
冬凪の窓へ通過のアナウンス岬ぷるうと
凍凪やボイスレコーダーの静音水鏡新
冬凪や三歩にひとつ杖の跡水須ぽっぽ
冬凪や遅れて開くETCMR.KIKYO
冬凪や振り子時計の鐘狂ひ巳智みちる
冬凪や砂に書く人走る人みちむらまりな
冬凪を少し具合のいい母とみづちみわ
冬凪に黄泉の匂いが少しだけ光峯霏々
冬凪や産土神へ白き橋満る
下の子の本音の声や冬凪げるみつれしづく
冬凪げりやっと火のつくメンソールミテイナリコ
冬凪やずつと体温計鳴らず港のパン屋
冬凪や豊玉姫のおちちあめ美村羽奏
島暮らし始まる朝や冬凪げるみやかわけい子
ガトリング砲小さくて冬凪ぎて宮坂暢介
冬凪や長英江戸を戞々とみやざき白水
冬凪やバテレン墓の白き丘宮武濱女
冬凪や今日のシーグラスを拾う宮原みかん
冬凪や戻り来たれる亀の骨宮部里美
冬凪や神棚にアザラシの骨みやま千樹
冬凪の赤子のやうな寝息かな宮本モンヌ
木星の瞬きゆるむ冬の凪未来に詩を編む
冬凪のうちに相続一抜けたみわ吉
5000キロ泳げば我が家か冬凪よ三輪白米
冬凪や鯨の歌うレクイエム夢雨似夜
冬凪はサクマドロップすもも味麦のパパ
冬凪や一番星を侍らせて椋本望生
冬凪よボールぽつんと体育館無弦奏
冬凪や水面の底は活断層村上の百合女
冬凪へ紙飛行機の白き風村瀬っち
冬凪や取り壊す日の古銭湯むらのたんぽぽ
旅の間のくつろぎに似て冬の凪室依子
冬凪やとろりとろりと片瀬浜目黒千代惠
冬凪や百葉箱に昏き口元野おぺら
冬凪や昨日と違ふ漁師鍋momo
冬凪やしんと猫の目の水晶体百瀬つきか
冬凪や置き竿のままさつま揚げ百瀬はな
冬凪いでへにょりとマックポテトかな桃園ユキチ
冬凪や自筆遺言三通目ももたもも
金箔に滲む人影冬凪げる森佳三
冬凪や買い食いのコロッケひとつもりたきみ
冬凪やガレットのよな錆を掃き森田祥子
冬凪や弾むパルス音の会話森太郎
冬凪や尻切れとんぼの悲しみ森中ことり
冬凪や梯に古稀の水先人杜まお実
ブルースのような遠吠え冬の凪森山博士
冬凪や骨壷膝に帰りけり諸岡萌黄
針先を落とす冬凪第四楽章もろ智行
冬凪やもの言わぬ君言えぬ我焼津昌彦庵
冬凪の黙心理士の紅き爪山羊座の千賀子
寒凪の港の風はガラス張り安井コスモス
冬凪のコンビニパトカーの昼餉安田伝助
一人寝る冬凪の味はジンに似て野生の栗
冬凪や波音宿る焙煎所簗瀬玲子
冬凪よ原発銀座の明日は矢橋
冬凪や砂を巻き上ぐ車椅子八幡風花
クレーンの鈍く切抜く冬の凪山内彩月
冬凪の厨からヴィオロンの和音山河穂香
火を囲む磯の女ら冬凪げる山川腎茶
冬凪や眼帯を外して仰ぐ山口絢子
冬凪や新入りの打つ楔音山口たまみ
冬凪やつんとしづかに天狼星やまさきゆみ
じわじわと殺意すいとられ凍凪山田蚯蚓
冬凪ぎて何も起こらぬ日の不安山田喜則
簡単なことではない冬凪になる山野花子
冬凪や防人の歌詠める島山野麓
冬凪や今日は鯨が来るという山村楓
失ひ切つて冬凪といふ行止り山本先生
フォーク聴く冬凪の能登朝市場山本たか祥
寒凪や紙一枚で終わる日々唯果
冬凪のベースソロだけ聴きたいの結壱隆月
冬凪やオカリナの音は雲抜けて遊羽女
冬凪ぎて網干す島を見はるかす遊泉
冬凪のやがて無音となる心有野安津
冬凪や一番風呂に集結す雪ノ下青観
冬凪の番屋にとぐろの魚網かな宙美
冬凪や仕事かけもつ母のタバコゆめの常盤
冬凪やテープに交じる君のこえ陽花天
カルストの千古の海を冬凪げり羊似妃
冬凪の星に塗れて独りかな横縞
冬凪や五匹の猫の漁師小屋吉岡幸一
切り株は一人になれる冬の凪芳川川
冬凪のカチリのど飴噛み割れり吉野川
冬凪や巨大船押すタグボート四葉の苦労婆
寒凪やくるくる回る干し魚余田酒梨
冬凪や剥がせば海の蠢きぬ楽花生
冬凪や夕日を載せた貨物船らりっく
冬凪の埠頭イージス艦の黙柳絮
冬凪や熊手せわしく土埃麗詩
冬凪や明後日までの休薬期蓮花麻耶
冬凪の余震に軋む漁師小屋若井柳児
冬凪の那智に那智黒拾ひけり若林雛げし
冬凪や元さん今日も出漁す海神瑠珂
冬凪や戻る漁師の十字切る亘航希
冬凪や漁船占拠の猫のひげ笑笑うさぎ
冬凪やコーラ持つ指濡れており五つ星
船べりのこごまる猫や冬の凪今林義和
冬凪やたぽんと小さき波寄する五郎八
冬凪や埠頭の隅の猫だまり銀長だぬき
冬凪のゲイトブリッジ開く音幸水
冬凪や休職期間はあと二日だがし菓子
冬凪や断層巡る遊覧船夏目坦
冬凪やバイクの背で告げしことEarly Bird
冬凪や一家勢揃いのお通夜藍田落星
冬凪ぎてフルートを手に楽譜繰る葵かほる
冬凪や令和四年の精密検査青海也緒
冬凪の命を奪い叫ぶ牝赤松鴨
冬凪や人魚一炊に憧る空地ヶ有
サイレンが冬凪の上鳴り響く空家ままごと
冬凪に爪の一枚剥がれ落つ朝倉カグラ
冬凪やラジオから君の好きな歌明後日めぐみ
冬凪やナースコールの鳴らぬ夜あさひ
冬凪に草木もホットするだんべ明日良い天気
冬凪や乳房含みて吾子寝落ち渥美こぶこ
言いかけた言葉を仕舞う冬の凪数多未完
冬凪を待つ間に腹をこしらえてあまどかに
冬凪や「また来いっちゃ」の声微かアマリリスと夢
冬凪に蠢く手足病みにけりあらら
冬凪や酒場の隅の釣り自慢有本としを
冬凪に並び島の児竿たらす淡湖千樹
水面の襞々も消えて冬凪飯田淳子
冬凪や吃音の紡ぐ一音いくたドロップ
冬凪や島は墓守の家族のみいくみっ句
冬凪やじゃんけんぽんで鬼となる池田悦子
冬凪や逆に廊下が揺れてる感池田華族
冬凪や稲佐の浜に神来たる池田由美
冬凪や模試の結果はB判定いしいるぴなす
冬凪と束の間競う三輪車石岡女依
冬凪の破綻待つ息をひそめて石垣エリザ
逸品の流木探す冬凪に石塚碧葉
冬凪を我がものとして二羽が舞う石本美津
冬凪や子が宣言の志望校いちご一会
冬凪に天魚愛でたる月灯一軒家
冬凪や寺の鐘の音長くなりイマスノリコ
和賀江島鳥の群がり冬の凪今西知巳
冬凪や揺りかごの嬰よく眠る岩木順
冬凪ぐ海に臥す8の無限大いわきりかつじ
百隻が陛下迎える冬凪に植田かず子
冬凪や父亡くなりて5年過ぎ上野眞理
寒凪や渺茫草原も被う上原まり
人文字の50の朗らか冬凪うた歌妙
湾封鎖解除待つ小麦粉と冬凪宇田建
冬凪の朝や閉じ忘れのラジオ宇野翔月
天草の沖行く帆船冬凪ぎぬ梅尾幸雪
冬凪にaikoのブレス残りけり梅木若葉
冬凪や深夜テレビをただ眺め梅鶏
冬凪やポンポンポンと漁場目指す大阪駿馬
冬凪にたどる階段山の宮大村真仙
冬凪や大往生の祖母の笑み岡由紀阿希
冬凪や離婚の決意かたき吾子岡井風紋
釣竿の撓み冬凪へ吸はせておかげでさんぽ
冬凪や夫婦茶碗の欠ける音岡田恵美子
冬凪へ喫水深き貨物船近江菫花
冬凪や外国船の喫水線岡塚敬芳
冬凪ぎて波止釣りびとの背にぬくみオカメインコ
冬凪は神のお通り何か来る丘るみこ
冬凪や母焼く煙真っ直ぐに小川天鵲
冬凪や呵々大笑の寂聴尼荻原湧
がんサロンの午後の談笑冬の凪奥寺窈子
冬凪や踊り疲れた波萎える奥の昼行燈
冬凪に東雲の音渡りくる小椋チル
冬凪に偽りのない青を見るおこそとの
冬凪の弟の頬大人びておさだ澄恵
冬凪や妣への不満竿を振る乙華散
冬凪やにぎるははのてやはらかしおひい
冬凪や「きぼう」くっきり遠ざかるおぼろ月
冬凪や視界いっぱい水平線沢瀉
冬凪やかぼすポン酢の丸ラベル海音寺ジョー
冬凪の待合室は古代色海瀬安紀子
車窓には寒凪描く絵の豊か梶浦正子
凍凪や波鎮まりて時止まる勝瀬啓衛門
冬凪や喪中はがきを出し終わりかつたろー。
足跡の上に足跡冬の凪桂子涼子
冬凪や嫁ぐ娘に祝い唄カバ先生
冬凪の浜辺に坐する海扇カラハ
冬凪にころりころりと松原や川辺移山公
冬凪や稲佐の浜に神来たる玉雲
太陽の稚児のびちびち冬凪ぎてくずもち鹿之助
冬凪や亡霊のごと軍艦島紅さやか
冬凪や航跡一つ地平越ゆ桑原和博
黒きヴィオラの絵奏する冬の凪くんちんさま
戦場に届く武器あり冬の凪健央介
冬凪や浦賀水道米空母ケンG
冬凪や年に一度の五連休恋瀬川三緒
冬凪の果て戦場に繋がりて古烏さや
冬凪や歩道さくさく三拍子小久保ゆた夏
冬凪や友には赤のトリアージこけぽて丸
冬凪やぷかりぷかりとビットコイン小町瑞泉
冬凪や私の席だった場所から駒野繭
冬凪や家出していた三毛戻る小山晃
冬凪やドッグラン有る道の駅五葉松子
冬凪や午後休診のクリニックコンフィ
冬凪や家族皆寝た後の夜さかたちえこ
冬凪や地球は丸いと入り日言う坂本千代子
冬凪の母の瞳に父の在りさくやこのはな
冬凪やかがやいていし顔参じさくら亜紀女
冬凪よ貴方と手を繋ぎたかった櫻井こむぎ
去る人の足跡探し冬凪に桜華姫
冬凪やつまの家出もナンチャナイ桜姫5
冬凪や十字連なり島灯桜よし榮
冬凪や崩れた鉄路復旧へ佐藤均
冬凪や動かぬ雲の散歩道里海太郎
冬凪や道の花びらひろう朝澤真澄
冬凪ぎて愛憎の愛勝るなり澤田紫
冬凪や明日あの客来る日だな山月
冬凪て畔刈り草を焼す刹那塩の司厨長
冬凪や告白の前目をそらす字坊人造
北条義時戦略練る冬凪珠桜女絢未来
魁気圧されて止むを得ず冬の凪種種番外
冬凪や重力という力ありじゅん
いつにない汝の声色や冬の凪正念亭若知古
冬凪の出帆ひとりぼっちで大きなからだ白井佐登志
冬凪や父の提げたる鉄火巻白玉みぞれ
冬凪やさかむけ弄る女医独り四郎高綱
外泊の癌の知友と冬凪を鈴白菜実
冬凪て醤油の香立つ小豆島静江
虫の図鑑にこはき頁ぞ冬の凪せり坊
冬凪や先祖の墓の塩洗う惣兵衛
冬凪や水平線はロシア領そうり
冬凪や水平線へ夕日触れそまり
冬凪やぶるると用を足す胎児染井つぐみ
冬凪や明日は出来る逆上がり染野まさこ
冬凪や東京湾に富士の影大
冬凪や術後の母は微睡みて田上コウ
冬凪や葉加瀬太郎の弓走る高山佳風
冬凪や一本の道海を走る瀧本敦子
冬凪やシニア大会のスマッシュたくじょ
冬凪や我が子異国の子と遊ぶ竹内一二
冬凪や城に舌打ちの信長竹内菊香
冬凪て猫と犬連れ寺参り竹下明宏
冬凪の顔映る水砕く顔立石神流
冬凪や眠れ眠れと波揺れる田中紺青
冬凪や波止の鳥の羽乾く谷口 あきこ
相席のホテルの朝餉冬の凪谷町百合乃
冬凪や手巾に潤み靡く楽譜や田上智佳士
冬凪ぐやシャッター音を花嫁へ千ヶ崎未海
冬凪や大きく息を吐いて逝く千歳みち乃
冬凪を奏でてみたらジムノペディ月待 小石
冬凪や内緒話の絶えぬ夜柘植雅一
冬凪や昆虫食の試食会津々うらら
地球儀の半分平和冬凪げり綱川羽音
冬凪や木魚高らか上げ法事ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
冬凪へ鳥油断する時間かな鶴富士
冬凪げりぐっと近づく北海道天童光宏
冬凪や海鮮屋台の煙固し鳥羽ししまる
階段の踊り場のごと冬凪よ冨川 友香理
冬凪や期待はづれの人魚像中十七波
冬凪や朝日に向けて水切りし中嶋緑庵
冬凪は海のほほえみ波えくぼ西尾照常
冬凪や店の品書き時価ばかり沼宮内かほる
冬凪や夫と建つる生前墓ねぎみそ
かそけさは入水の跡に冬凪に野口雅也
冬凪の1/f烏賊の息乃立喰咽
妻と酌む冬凪の映え消ゆるまで野中苦泉
冬凪や世に染まぬ子に荷を送る野々かおり
冬凪や訛り聞きつつ飛魚竹輪則本久江
石段の老人照らし冬凪ぬ白雨
冬凪のアニメ業界離職率白銀の月
冬凪のハイタッチする姉妹かな白咒と蒸しエビ
冬の凪手術へ向ふ夫の背葉月けゐ
冬凪や神の機嫌はうるはしく蜂鳥子
冬凪や釣果競へる父子の帰路英凡水
冬凪や遠い方のコンビニへ浜けい
冬凪や漁師の嫁御産着干す浜友輔
冬凪や宿の窓から熱海城葉るみ
冬凪や漁協直営道の駅春幸
冬凪の朝や原発再稼働万里の森
冬凪て集合かかる草野球東の山
冬凪やミサイル百発撃ち込まれ東原桜空
逆光の島赤き冬凪に浮く比企野朋詠
七十路の知己の新著や冬凪げる美竹花蘭
冬凪や今一度海にほひたり日吉とみ菜
冬凪や外湯巡りの宿の下駄ふくじろう
冬凪や剪定ばさみ買う余命福田みやき
冬凪や小さき棚田の跡無数福ネコ
高卒認定目指す三十路や冬凪るふくろう悠々
冬凪やきっと最後のじゃあまたね藤田咲
冬凪やどこにも行かぬ軍艦島藤田康子
煮凝を食ろうて迷い込む冬凪船橋こまこ
冬凪や飛び降りの痕さする君風友
冬凪や海賊船の着く港べびぽん
冬凪や瀬戸の海原鏡張り芳明
冬凪や湊のおかん笑ひ満つ墨純
冬凪のなづる飛び石九十九湾星乃ぽっち
冬凪や朝餉の吾子の箸使い凡句楽直
冬凪や無職の夫の髪を切る凡々
冬凪やシテ跨ぎゆく石舞台前田冬水
冬凪や娘と読む「赤毛のアン」茉叶
冬凪や母の背中に負ったまま眞熊
冬凪ぎて曳き波のゆく水鏡眞さ野
冬凪や最初はグーにチョキを出すまさを
冬凪ぎの似合う白髪の二人なり松浦宣子
冬凪や口は達者な九十路松岡玲子
冬凪や航跡雲は島に落つ松田慶一
冬凪に一点鎖線の水平線松本俊彦
冬凪のよくよく梳かす髪ゆたかまめばと
冬凪に岩礁透けて古代めき澪つくし
冬凪や古希の夫婦となつてゐし三崎扁舟
冬凪や昔の友と熱き茶を三島瀬波
冬凪や月食後大人びる月美月舞桜
冬凪や生の褒美は死なりけり水無月葉子
冬凪やここが地球の芯である宮井そら
冬凪や鳶鳴く浜でオカリナを見屋桜花
冬凪や補聴器外し耳掃除雅乃珠晃
冬凪や打ち上げを待つロケットとミラベル
冬凪のけふは年金給付の日みらんだぶぅ
冬凪のゆったり起立投げし浮子ムーンさだこ
冬凪の白銀の海つぶらなる向原てつ
たまゆらの翼安らう冬凪よむねあかどり
冬凪の丘まで達す海のいろ紫小寿々
冬凪や旅ゆく神の足並みか村先ときの介
冬凪や海猫の群れ映す海村のあんず
冬凪や従兄危篤の文字電話恵のママ
煎餅の穴へ冬凪閉じ込める本村なつみ
冬凪に内なる恋慕読まれたし樅山楓
冬凪や球皮引っ張る強き腕桃井ゆらら
冬凪やあすに忌明けの寿し処百瀬一兎
冬凪や寝たきり妻の痰切れて森佳月
冬凪の水面へばりつく夕陽森日美香
冬凪に母の無い子の歌流る森 毬子
冬凪や焚場の今は海の中森海まのわ
蟹の絵のバス冬凪に沿うて来しもりさわ
冬凪やどの動画にも夫の声森の水車
冬凪や庭に大蒜猫は来ず八木実
冬凪や日出ずる国にさす光やずさん
冬凪や関釜フェリーは滑るごと山川たゆ
尾長らの喧嘩飛び去り冬凪ぎぬ山口一青
貝の世の大事や冬凪を走る山下古竹
冬凪や慟哭後の吾の放心山育ち
冬凪や舟屋の柱陰細り山田季聴
冬凪や七曜始めの朝であり山田啓子
冬凪や畳めば小さきエコバッグ山田蹴人
冬凪や紺の海から昇る佐渡やまだ童子
冬凪や騎手の鞭待つ最後尾山田はち
冬凪や退院祝う三分粥やまな未
至る地にガタつき無くて冬の凪山本晃
朝ぼらけ冬凪にころり哺乳瓶結城熊雄
波音は星の寝息か冬凪ぎぬ柚木みゆき
冬凪の沈むピアノに音よ降れゆうた
冬凪や株価の上がる裏投資宥光
冬凪や力を抜けと遠き声雪音
冬凪に水の石切りずっと行けゆるランナー
碧天の清き寂しさ冬の凪陽子
冬凪や孫の肌着を手で洗う横田信一
冬凪や会社は軍隊にあらず吉川拓真
犬吠えて罅入りたる冬の凪吉田郁
冬凪の水平線まで祖母の庭吉武茂る
冬凪や棺の中のお母ん吉田びふう
冬凪や「こんにちは」と詐欺師来る吉田わさび
冬凪や仮退院の父の顔よみちとせ
冬凪や信徒減りゆく母教会ラーラ
退院の荷造り冬凪の窓下梨音
忽然と幽霊船や冬凪げり理佳
冬凪や競りの手やりの男衆ルージュ
冬凪のすなほなさまをこつあげす煉獄佐保子
冬凪いで貼り絵の如し鯛の浦連雀
七十路の婚姻届冬の凪六地蔵と狛犬
冬凪や海を抱えて走り込み和光
冬凪や音なき音の底見えずわたなべすずしろ
冬凪や外から拭う窓ガラスわたなべいびぃ
冬凪や鳥居の先に光降る渡辺香野
冬凪や元伊勢の星座がきえた渡辺桃蓮
冬凪の八丈島へ出航す渡辺陽子
冬凪や一色留めし地平線渡邉わかな
冬凪や独り津軽で「じゃない感」321ちいに
冬凪に卵黄の夕陽溶け落ちるANGEL
冬凪や米寿の父の祝い膳あいあい亭みけ子
黒瓦どれも光りて冬の凪藍野絣
冬凪や午後に荒れるは浜の常間岳夫
憧れし客船の波寄する冬凪逢來応來
冬凪といへど小舟は揺れて恋青井季節
冬凪の朝辞令書を受け取りぬ青居 舞
江の島のとんび舞い降り寒の凪大竹八重子
冬凪や友待つ異国ひとり旅赤尾ふたば
家裁への書類ととのひ冬の凪茜むらさき
冬凪や彼を追うのはもうやめるあかめちゃん
冬凪や大丈夫よと嘘を言うあかり
冬凪や3日新甫の前の晩惟久里
冬凪や夜泣き二度目のミルクティー秋永月光
発射の報冬凪の空ただ青く秋野萱
冬凪の解散前夜となりにけり秋野しら露
冬凪や恐るおそると浜へゆく秋代
冬凪の波かき乱すI.C.B.Mアクエリアスの水
冬凪を眺める吾は貝になる芥茶古美
冬凪や母の繰り言耳朶を打つあくび指南
冬凪や音なき音に耳澄ます淺井翠
冬凪や歯抜けのジェンガ押す速度朝霧七海
注目をされぬ自由よ冬の凪あさのとびら
冬凪や迫りし曇天へ駆ける朝日雫
ざわざわとせる心冬凪よきたれ亜紗舞那
冬凪に星の王子のやってきてアシツノカラ
冬凪や風待つ船旗の知らぬ振り飛鳥井薫
羽やすめ大空に向く冬凪よあすなろの幸
冬凪やお釜の蓋を細き湯気トウ甘藻
冬凪に優しきギャルの通る声新子熊耳
キミが淹れたココア沁み入る冬凪アツシ
冬凪にトロイメライの指くぐり天晴鈍ぞ孤
冬凪や天を写して鴨渡る跡部榮喜
冬凪やイージス艦の乗りごこち姉あね猫
冬凪やたおやかな波光をりあねもねワンオ
冬凪やハイブリッドのペダルぐいっ雨霧彦@木ノ芽
冬凪の空を見ている過去は過去雨降りお月さん
冬凪や漁師を継ぐと告ぐる朝荒一葉
水平線も雲に滲みて冬凪荒木俊充
冬凪や波間漂ふ星の影荒木豊
冬凪やわれのこころの似たるかな荒星笑石
喰はれ尽く月寒凪の海のうへありいかな
冬凪いでデッキ華やぐ直島行阿波オードリー
冬凪や疼く体の恋断ちぬ杏っ子
冬凪や泡沫のリハーモナイズ飯沼深生
糸垂らす我ら冬凪にタプンと飯村ヤーキン
冬凪のドローン我れ名パイロット飯村ヤーキン
冬凪に別れを決めて砂払うイカロス
冬凪にプカリ漂う葉巻の香粋庵仁空
冬凪や引き際しづか波しづか生野薫
冬凪や心ひとつさだまらず池内ねこバアバ
冬凪や猫の背伸びす魚見台池田桐人
冬凪やあの日の瓦礫残る浜池之端昇雲
冬凪や刑事ドラマの崖っぷち石井彩音
冬凪いで一直線に日の沈む石井秀一
冬凪がいつまで続くと空見上げ石川明世
冬凪や君の記憶に手を振りぬ石川初子
冬凪の心をひとつ抱えてる石橋千佳子
冬凪や光の道に凧憩み石原直子
冬凪や河原の鴉点を生む石原花野
冬凪や怒濤の後の風の音泉恵風
冬凪や浚渫船の黒き影和泉攷
冬凪や波間に曙光見出しつ伊泉不洋
電車から眺む冬凪光る朝遺跡納期
冬凪や貝殻ひとつ砕く手よいその松茸
冬凪のレース後続の息遣い市川りす
冬凪に海猫の声昼寝せむいつかある日
冬凪や今がチャンスとプロポーズいっちゃん法師
制服を正すや冬凪の鏡井出奈津美
冬凪の竿の穂先に白き富士伊藤薫
冬凪ぎて砂にブルーのガラス玉伊藤節子
冬凪や海をやさしく抱く山伊藤順女
冬凪や瀬戸内の島灯り見え伊藤節子
冬凪に遠く消えいる友の声稲葉 こいち
冬凪の光はすでにスマホなか稲葉雀子
冬凪や夕陽に染まる露天風呂井上幸子
冬凪や萎れし花も蘇り今井みどり
観覧車軋んで回って冬の凪今井モコ
冬凪ぎてぴたりと魚信途絶えたる岩田勇
冬凪や釣果を誇る父笑顔いわつよ8
窓越しに宝石箱の冬凪や上田文一
冬凪や外泊許可の車窓からうさぎと
音も無く佇んでゐる冬凪や丑十八夜書ク
冬凪の海へゆったり佐渡汽船うちだまみ
冬凪に航跡ひとつ描きけり海口竿富
冬凪や離婚きりだすタイミング梅里和代
冬凪の浜闊歩する人馬かなS・葉子
冬凪いで猫の額をさすりをり榎風子
冬凪や愛犬好きな浜散歩えみばば
冬凪を乱さず羽生結弦跳ぶ遠藤玲奈
冬凪やミサイルの飛ぶ空ありぬ円美々
冬凪やギブスに動き固定され櫻月風香
冬凪の櫓をこぐ祖父のたれる糸大井照彦
冬凪や鈍行列車駅に着くオオイヌノフグリ
冬凪の朝高層階の窓開け放つ大越総
冬凪や遠くにぽっかり青き空大島一声
冬凪にシャッターチャンス水鏡大島薄
冬凪や大漁よりも夫の無事大谷如水
冬凪やただただ遠くを見てる人大野美波
冬凪や膝抱き独り桂浜大原妃
ずる休み冬凪眺め握り飯大原雪
冬凪や娘と喧嘩助け舟丘小町
冬凪や拳ふりあげ去る少女岡崎蹊
冬凪や波はしばらく微睡めり岡田明子
冬凪や息子は職にありつけし岡田瑛琳
魚跳ね冬凪こわす大漁旗岡田ぴか
しがみつく虫が飛び立つ冬凪におがたみか
冬凪やコート脱ぎし兼六園岡本
冬凪や君はひととき黙り込み岡山小鞠
冬凪や庭に電飾する親子沖らくだ@QLD句会
冬凪や帰る漁船の朝の影奥田早苗
冬凪やノーサイドとはいかぬ恋小倉あんこ
寒凪や下駄からからと古希の帰路村田裕子
東尋坊冬凪に立つ自撮り棒小栗福祥
ランタンの炎も憩う冬凪よおざきさちよ
冬凪やディーゼルの音近づきぬ小沢史
冬凪だ今だ舟出だ櫂を挿せお散歩じいじ
冬凪や露天風呂入るガン湯治お品まり
冬凪ぎてプリン明日より無菌室音館由佳
冬凪や風呂の湯揺する心の臓落句言
冬凪を踊るが様に老散歩小野ぼけろうじん
冬凪や窓は全開九十九折小林昇
冬凪や消え残りたる岩の華帯壱
冬凪や子のお迎えに駆けてゆく織音
味噌汁に十二の野菜冬の凪海堂一花
冬凪をジェット音南へ西へ灰頭徨鴉
冬凪やまた来なさいと車窓よりかえるL
冬凪の陋居三和土に下駄二足案山子@いつき組広ブロ俳句部
冬凪に苦き茶旨し午後3時梶浦和子
冬凪や季節の煮物うましかなかじまとしこ
冬凪て漁父の口元緩む朝花純
冬凪にサラサラと砂山くずし片岡龍一
冬凪や和諧勧める天の声桂葉子
鳥飛びてただ二人いる冬凪や加藤暖
冬凪や釣果なくとも糸垂らし加藤雄三
冬凪や踏切る跳箱着地立つ叶田屋
冬凪や「ひざ掛けどうぞ」テラス席金田由香
冬凪の海岸線を手をつなぎかぬまっこ
冬凪の日溜り歩く帰り道金子真美
冬凪や黙の給食真っ盛り神谷米子
凍凪や海岸道路に追想す亀井汀風
冬凪の瀬戸内海は平和なり亀田稇
屋久杉と雨を見つめる冬凪鴨野白葱
冬凪に渋谷ハイタッチの喧騒かもめ
冬凪にモアイ巨像の響きかな加山シンゴ
冬凪ぎて告白のタイミング来る加裕子
冬凪と夕陽眺むる待合所川端芙弥
冬凪に大船浮かぶ博多の津川辺柿食人
冬凪や外国船か幻かカワムラ一重
冬凪や一人居の庭に真っ赤な花樺久美
冬凪や疑心暗鬼になる天気漢方十七錠
冬凪のかりそめの恋ほのかなり紀杏里
冬凪やゆるりと参ろう紙ヒコーキ木口まり子
ジャイキリの歓喜冬凪を切り裂く岸本元世
冬凪に紫煙くゆらす老漁師酒暮
冬凪や何度も読み返す手紙北大路京介
春待たず異国へ帰る冬凪を規田素乃子
冬凪や親子喧嘩に水入る木寺仙游
昨日荒れし海冬凪に安らげり木原洋子
逼るサンフラワー冬凪の波止場木村かおり
冬凪やトロ箱満杯セリの声木村修芳
冬凪や砂の彫刻鏝さばき鳩礼
冬凪や涙を湛え眠る吾子紀友梨
冬凪やサップのパドルにも波紋清鱒
心持ち冬凪の日に終活す桐山榮壽
冬凪やひとかたまりの海として銀溟さきのすけ
やさしいをこわいと覚ゆ冬凪ぎぬ銀紙
冬凪の下にトンネル声と渡る銀髪作務衣
冬凪は油断禁物明日凍てる草道久幸
冬凪やチャンスボールを見逃して工藤雨読
雨止みて冬凪の夜酒五合國枝瞬山
冬凪や奇岩の上に松一本國吉敦子
冬凪よ伊予の母から訃報聞くぐりぐら京子
冬凪とノッティング・ヒルのブラウニー栗子
弾逸れて冬凪深き鰍沢来ヶ谷雪
坂道の冬凪をゆく添えぬまま黒川裕介
移動販売車待つ冬なぎの午後桑田栞
冬凪や光きらきら夕日かな月昭
冬凪へ腹を映して一番機紫雲英
冬凪の束の間の時離陸するけんさん
冬凪や共に歩みし友去りて郷りん
冬凪や繰り返し聴くラブソング柑たちばな
冬凪て揺れも音なき北の窓康寿
冬凪にルアー見切らる埠頭かな宏楽
傷痕にひととき優し冬凪げる幸織奈
冬凪やとび跳ねる海老賀寿祝いコケコッコー
冬凪やホットミルクの甘き湯気ココヨシ
スタジアムの快音かなた冬凪ぎぬ小杉泰文
冬凪やきみのほっぺも塩の味来冬邦子
冬凪やユーミンの歌を聴いている小鳥乃鈴音
冬凪や両手に余るランドセル虎八花乙
冬凪の静寂やぶる雷鳴が小林巌
冬凪の波打ち際の音の微か小林のりこ
冬凪にちろちろ燃える陽熱しこまたれぶー
冬凪に遊ぶはカモメひとり見るこむぎ
冬凪や点滅青に立ち止まる小山秀行
冬凪や忘れることの難しさ西條晶夫
冬凪のひすい海岸さまよへば埼玉の巫女
冬凪や見つめて黙る影二つさいとうすすむ
二度目のデート入道崎は冬凪さおきち
冬凪の忘れ置かれし身の軽さ榊昭広
寒凪よ流さるる魚良き南下坂島魁文
冬凪や舫の舟の軋む音坂田雪華
沖眺む老いし漁師や冬の凪坂田雪華
冬凪や目映い海に鳶の声櫻井弘子
冬凪や西日の粒子おちこちに笹弓
冬凪に怒り納めてお茶を飲むさざんか
冬凪やきらりと眩し瀬戸の海佐竹草流
冬凪やあずかり知らぬ風の向き砂月みれい
冬凪のひなたよちよち歩きかなさっち
冬凪や生活運ぶ定期船薩摩じったくい
冬凪に包丁研いて待つ釣果佐藤しのぶ
冬凪や水面きららか魚市場佐藤俊
寒凪や離職者データ分析す佐藤レアレア
冬凪の前浜の先国後島三角山子
冬凪に八の字の波流れ行く斬九郎
冬凪を切り裂くフェリー佐渡ヶ島三尺 玉子
冬凪やこんな日もある吾の余生塩原香子
冬凪の鏡を飛ぶは北の使者しかの光爺
冬凪や降ろせど居座る膝の猫四季彩
冬凪やこまい手のえさ鹿の島じきばのミヨシ
瞳閉じ耳を澄ませば冬の凪詩寿湖
冬凪や辞めると決めた日の匂ひ紫檀豆蔵
冬凪とてその果てに荒れるが海七葉
冬凪や鍔迫り合いに充つる声篠崎彰
冬凪や三十年目のペンライト柴桜子
冬凪の浜で語らう鴎二羽芝G
冬凪やおやつタイムを待つイルカ柴森爽
冬凪や歩数伸ばして万歩計しぶ亭
冬凪にやっと休めて介護の手島じい子
冬凪は臆せず夜のウォーキング縞子勾苑
冬凪に降り来し天使の梯子かな島田一容
冬凪のヤコブの梯子目に眩し釋愚拙
冬凪の成木の先にひとふたつ釋北城
冬凪や乳飲み子寝付く午前二時秋月てまり
冬凪や釣果なくとも海楽し秀耕
冬凪や津軽の宴千畳敷柊ニ
冬凪や浜辺で風を待つ彼ら朱康君
冬凪や壱岐の猿岩悠然とじゅんこ
冬凪の埋め立て地にて太極拳じょいふるとしちゃん
冬凪や我を飲み込む喪失感祥雲
冬凪は映画の海を想わせてショートケーキ
冬凪の紀伊水道や万華鏡白井百合子
冬凪やハングル映える朽ちた船信州のあっくん
冬凪や歩道に一葉忘れ物森牧亭遊好
冬凪や建築現場ティータイム酔軒
冬凪を深呼吸して独り占め水蜜桃
冬凪を撮りてスマホに閉じ込める杉浦真子
冬凪の三浦岬や海の濃く杉尾芭蕉
冬凪や抜きつ抜かれつ猫二匹杉本果ら
冬凪や碇沈める音を聞く杉柳才
冬凪に山門の仁王ひと呼吸鈴木静子
冬凪の波を送りて婆渡れ鈴木福子
冬凪や期試験の迫り来る諏訪次郎
寒凪や網繕いて背ふたつ青児
冬凪の海平らかに果てしなき勢田清
解体しひととき更地冬凪や星夢光風
冬凪やマラソンのわき喪に急ぐ清瑶
冬凪やにぎり寿司売る鮮魚店瀬尾白果
恋砕け冬凪の岸をいま離る瀬紀
冬凪や背すじをのばし息一つ関根洋子
吾子たちの世話のやく寒凪日和瀬野広純
冬凪や手紙を入れたガラス瓶千@いつき組広ブロ俳句部
冬凪や時空を超えし船の旅そうま純香
日々冬凪水面に映る我が幸せそしじみえこ
喧嘩して見上げた空は冬凪に園蜩
冬凪や三年ぶりの九十九里空
冬凪の夕暮れ時のとびつくら宙まあみん
冬凪よ妖精っぽい私かなそれいゆ
郷愁の漂着ごみや冬の凪孫太
冬凪や今がチャンスとペダルこぐ駄詩
冬凪や佐渡へ流さる能楽師大ちはる
冬凪や海と空のあわい消え平たか子
賞与減る冬凪の午後ケセラセラ高上ちやこ
冬凪や帰りの船を待つ子供高橋基
冬凪ぎてすずめ休むは塀の上高橋紀代子
冬凪やテトラポットの日の当たり高橋ひろみこ
冬凪の連絡船や澪長し高見正樹
冬凪ぎよ生徒ら入試終えるまでは高山夕灯
冬凪をひとすぢの水尾入り日燃ゆ竹口ゆうこ
戻りざま小船尾を引け冬凪をたすく
凍凪や毛布に集うさくらねこ鶴群
冬凪ぎて軍艦島に上陸す糺ノ森柊
冬凪の漁村港に船一艘唯飛唯游
冬凪やほしがいのちに祈る時立川茜
冬凪や富士そばのカレー南蛮太刀盗人
冬凪や無声映画を見るやうに橘萌香
冬凪の静かを割いて吾子の声田鶴子
冬凪やテトラポッドの殻露わたていし隆松
冬凪や浜はかつての古戦場蓼科嘉
冬凪の入り江時間の滞り田中勲
冬凪や客の表情やわらげり田中ようちゃん
冬凪やひととき止まるタバコかな田中善美
冬凪や歩みをとめてチャイム聴くたなばたともこ
冬凪や炊き出しを待つ人の列谷卓生
冬凪や病癒えし娘窓を開け谷相
冬凪や頬にしっとり手を触れて谷口美奈子
冬凪やヤコブの梯子こんじきに旅女
冬凪や伊豆七島の見える宿玉井令子
冬凪と赤ちゃんの大泣き長しタマゴもたっぷりハムサンド
冬凪や岬の上の異人墓地たま走哉
冬凪や小樽港へと貨物船玉響雷子
冬凪や流木焚いて暖を取るダメ夫
引き潮の川底あらわ冬の凪知恵さん
冬なぎや防風林の息づかい竹庵
冬凪や手持ち無沙汰のパドリングちくりん
冬凪や龍馬像のブーツ見るちっちのきも
聞香の満ちて終わりに見ゆ冬凪智同美月
冬凪にぬうっと頭海驢かな千鳥城@広ブロ俳句部カナダ支部
冬凪やホームの母を明日見舞う千葉睦女
冬凪の遠し車内の二人黙千風もふ
冬凪を一撃したる尾びれ哉ちゃあき
冬凪よスーツケースの足軽く千夜美笑夢
冬凪や空と見合ひてめで合へり澄心静慮
冬凪にカップラーメン啜りをり塚本隆二
冬凪や叫ぶバカヤローもイマイチつきのひと
冬凪や爆音果てなき戦闘の月見里ふく
冬凪に嫁ぎし我も昆布拾い辻瑛美
在りし日の友の笑顔や冬凪に辻本四季鳥
冬凪にチーズケーキの如き艶土屋ひこぼし
冬凪の対馬や蒙古襲来す土谷海郷
冬凪や瀬戸内海に船ゆらり椿律
座るのはとらやの包み冬凪よ露口全速
冬凪や予約しようか悩む母デイジーキャンディー
冬凪やご無沙汰気味の父母の墓寧陪禰
冬凪が招く不幸を忘れまい手嶋錦流
冬凪て水面の金銀生まれけり徹光よし季
冬凪や三匹の猫船を待つてつねこ
冬凪の眠りを覚ます魚信かなてまり
冬凪や船水平の海の外苳
冬凪に航跡まぶし出船見ゆ峠南門
去るならば砲音と行け冬凪よ東野律
冬凪に母から届くにしん漬け道見りつこ
冬凪や無口な君と僕と海遠峰熊野
冬凪や自分を緩め解きほぐし時小町
目の前のいのちの電話冬凪げりとき坊
冬凪や陽射し手かざし鳥の影徳庵
梨泰院の冬凪ぐ朝にタイマーの音床の間々
冬凪やむく犬の尾のピンと立ち杼けいこ
冬凪や猫の涙もとどまりぬ土手かぼちゃん
寒凪にディキャンプのテント咲く富田松夫
冬凪やプラマイゼロの交際費富野香衣
冬凪や還暦過ぎの同窓会登盛満
東尋坊冬凪ぐちゃりJアラート鳥元優子
怠重のワクチン冬凪のキラリ内藤未来仁
冬凪や盆石の海静かなり内藤由子
冬凪や豚カツの衣サクサクなかかよ
冬凪に沈む陽ながめセザンヌか中嶋 和久
冬凪や痛み薄らぐ日となりぬ中島圭子
冬凪やサーフボードの甲羅干し中島走吟
冬凪の生簀に河豚は沈みけり中島隆
空に鳶ゆるり旋回冬の凪中嶋敏子
冬凪やチャコの海岸口ずさみ中島葉月
冬凪に響く足音一人分中西歌子
冬凪や雲の切間を切る鳶中原柊ニ
冬凪に中平保志立ちてをり中平保志
冬凪の富山湾には幸満ちて中村こゆき
冬凪やパラグライダーティタイム中村あつこ
形見なるボトルシップや冬の凪中山由
冬凪のポンデン見つめ若き漁夫那須のお漬物
冬凪を堪らずぴちゃと跳ねた魚夏雲ブン太
冬凪や変わらぬ日々を今日明日夏空なみ
冬凪の浜に時計を失いぬ夏椿咲く
冬凪ぎや庭に葉っぱの山ひとつ夏野あおのり
シャッター静め冬凪見ゆる月夏目十貫
冬凪や「ご飯よ」と隣りの隣り菜々の花畑
冬凪ぎて石切り遠くまで跳ねよ⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
冬凪のきらり離婚を決めし日よ名計宗幸
冬凪の海の彼方に煙立つ楢猫
年老いてこれも良きかな冬凪の南全星びぼ
冬凪や歩いてパン屋まで五分新美妙子
冬凪や在宅なれど白髪染めにいやのる
冬凪の航跡消えぬ壇の浦西の京あんこ
冬凪やガールズバーに行く漁師西村棗
警策の感触かすか冬の凪新田ダミアナ
冬凪に遠国波濤垣間見るにのまえはじめ
身籠りて響く心音冬の凪二和田躬江
冬凪や天王星の蝕さるる庭野環石
冬凪やはしゃぐ幼子にじむ汗ねがみともみ
冬凪よ続いておくれ筏酔い猫辻みいにゃん
冬凪に明日へと血汐ととのへり根々雅水
冬凪げる船やでかめの握り飯ノアノア
冬凪や寄せ返す波にまどろむ埜水
冬凪や生まれたままの夕日落つノセミコ
冬凪に未来や語る吾と妻野中泰風
冬凪や郷土史書架の窓の外海苔和
冬凪に玉浮きぽやんとして消ゆ羽織茶屋
冬凪やちょこっと割ってルビーチョコ白庵
冬凪や兵士つかの間目を閉じるはごろも856
冬凪ぎて露天の湯けむり波静か橋爪利志美
冬凪や遠心力に浮く干物橋本こはく
古稀過ぎて早一年か冬の凪馬笑
冬凪や千早乱れぬ波の道芭蕉布
冬凪や波に漂ふ鳥あまた蓮見玲
冬凪やかつて震洋秘せし洞長谷川水素
冬凪の単身笑い鍋くらう長谷島 弘安
冬凪や吾の影側に従へて八九テン
冬凪や餌団子落とし覗く底パッキンマン
オカリナの音柔らかし冬凪や初野文子
冬凪や写真の後に騒ぐ子ら花内淳開
果てのある夫の吐息や冬の凪花岡淑子
冬凪に船上の鍋掻く杓文字花弘
冬凪や行李にひなた犬眠る花咲みさき
冬凪や忘れたきひと行き違ふ花和音
冬凪はこころ変えないために見る羽沖
冬凪やドリルの解答燃やす父ぱぷりかまめ
冬凪の知林ヶ島に初あんよ浜崎ナオト
冬凪へ宙へ自転車回転す林省造
冬凪にあの日の無念今もなお原厚子
冬凪や彼の人遠く灰の空原善枝
きみ去りて冬凪の海光りをりぱらん
冬凪や流木の刀振り回す子らharu.k
冬凪や砂の指よりこぼれ落つharu_sumomo
あの島が父のふるさと冬の凪 春海のたり
冬凪やひとり竿立て時すごすはるる
冬凪やフライドポテト狙ふ鳶HNKAGA
冬凪やお見送りする家のかど榛名ピグモン
冬凪やアイアンショット届くまでひーちゃんw
新しき魚道探せと冬凪に東津村 流坊
冬凪や六甲の山静寂東山たかこ
冬凪や子を抱く父の下がる眉光源爺
冬凪げる集積所には鴉二羽ひぐちいちおう(一応)
冬凪やゆるり3分茶葉ひらく樋口ひろみ
冬凪の砂に流木白く果つ菱田芋天
冬凪や真珠母貝に眠りをりひすい風香
冬凪の天橋立船の線向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
冬凪いで無音却って身震い緋夢灯
冬凪や知らないほうがよかったの姫川ひすい
冬凪の穏やかな海傷癒しひめりんご
冬凪や老いた夫婦の阿吽かな日向大海
湘南の沖ゆく船や冬の凪平井千恵子
冬凪や焼き貝にほふ浜の市平井由里子
冬凪や病床ゆ見ゆ雲愉し平岡梅
会合の司会果せて冬の凪平岡花泉
出航の誘惑めくや冬凪す比良山
冬凪よどうかこのまま村は静か廣重
冬凪や精密機械なる身体広島立葵
冬凪に並ぶじゃこ天は揚げたてひろ夢
冬凪や昔の日々の浮かび来る琵琶京子
寒凪を衝いて買いゆくバンルージュ風泉
冬凪や富士の高嶺は銀世界FUFU
冬凪や釣果を語る男たち福川敏機
冬凪や不知火海にレクイエム福田公明
眦上げ的射る童冬凪や福弓
冬凪や思考停止の二分間藤井かすみそう
冬凪のデッキ賑はふ飛ぶ鴎藤川鴎叫
冬凪や白波ひそめぼうずなり藤川哲生
冬凪に侘し船出や汽笛鳴る藤川雅子
冬凪ぎや途中下車したのは多度津藤れんぎょう
冬凪やふたりでお茶を嫁姑藤原訓子
現れて消えてUFO冬凪に藤原素粒子
冬凪や晴海に聳える鉄キリン双葉@あさ葉会
冬凪といえど海鵜の声響く古澤久良
冬凪に夕日とバイク肴かなヘッドホン
自転車の近づく音や冬凪のほうすい
ほんものの冬凪見ゆるディズニーシー北欧小町
冬凪や皆既月食かひま見るほこ
冬凪とまったりすごす膝の猫星雅綺羅璃
冬凪やモルヒネ誘ふ癌末期甫舟
冬凪の夫の手さする看取りかな細川小春
冬凪や鳥も車もこれからもポト
冬凪や口には甘きドロップス堀川卓郎
冬凪に落つる涙は一つだけ堀籠美雪
冬凪や手術を終えて眠る母凡狸子
冬凪に速度超過の我ひとり舞白祖父登
湯を入れて待つ冬凪の二分半前田麺
冬凪や君の口から「ホテル」とは!正岡丹ん
冬凪や心音響く初キッス雅蔵
冬凪を切り裂き船の遠ざかり松井酔呆
凍凪や港教会鐘が泣く松尾祇敲
海老船が冬凪の中帰りきぬ松尾美郷
冬凪の鳶が輪を描く空の碧松尾老圃
冬凪や心の隅に空き作り松川梅子
マラソンの一群過ぎて冬凪に松平武史
おだやかな日々を願へば冬の凪まつとしきかわ
冬凪やてるてる坊主のゆれぬ日松野蘭
冬凪や外湯巡りの下駄の音ふくじろう
冬凪やコロナの後は消費税松本千春
冬凪のスルメ焼くだるま五能線松本裕子
海鳴りの止みて悲しき冬凪に松本牧子
冬凪にトンビも寛ぐ防波堤茉莉花
冬凪や万感胸にお遍路へ招き幸運
洗車して冬凪の間に水やりもまほろば菊池
冬凪て船の帆高し月の浦瑪麗
冬凪や海光紅くひろがりて真理庵
冬凪や寝付きし孫の足の裏まるにの子
冬凪や定置網へと叔父の船丸山隆子
冬凪の海もういちど見てみたし三浦ゆりこ
冬凪も荒波もなき防波堤三日月なな子
冬凪に終日アガサ読み耽り三上栞
何もないそう感じて怖い冬凪は三粂ニ乙
冬凪やここぞと誘い網垂らすMrふじやん。
冬凪やバスの窓から日本海水谷豊海
冬凪で臥所の姉に光射す水乃江辰
夜を刻む振り子時計や冬の凪水野ややすみさん
冬凪のシートベルトは着けたまま三田忠彦
冬凪や東北の村うっすらと光子
冬凪や西日に坐する鑑真像南方日午
冬凪や黒きサーファー二三人皆川徳翁
冬凪や水面に浮かぶ浮子赤し湊かずゆき
冬凪や海女の声する小屋の中みなみはな
冬凪や船出す人の声高く美山つぐみ
漁終えて塩にぎり食う冬凪や宮村寿摩子
一滴の墨の広がり冬凪ぎぬ宮村土々
冬凪に満ちて欠けたる星の業妙
冬凪の停車駅みなスマホ中霧想衿
冬凪や闘病に勝つより和解睦月くらげ
冬凪やメレンゲはまだ三分立て暝想華
冬凪やもう少しだけ君を待つ茂木りん
冬凪や骨を震わす流行歌杢いう子
冬凪や足指にぎる青に黄に木曜日
冬凪の宇野港暮るる船の影モコ
冬凪や漁村の墓を荒らすモノ望月ゆう
冬凪や書店閉店の激震望月朔
冬凪の浜に残れる風の跡桃香
ママチャリと共に風切る冬凪よもり葵
冬凪や母と子の影溶け合ひぬ森茂子
荒くれの男の眠り冬の凪杜乃しずか
冬凪の闇に広がる鐘六つ八重葉
冬凪や波立つ前の素の姿薬膳容子
やや傾ぐラバーポールや冬の凪安田栞
冬凪や姉妹そろって庭そうじ痩女
冬凪や無言でバス待つ僕と君柳井るい
ダミ声の歌漏れ聞こゆ冬凪よ柳川耀一朗
冬凪の後の猛攻ゴール前柳荷無花果
冬凪や後期高齢誰が言う耶麻
冬凪や思いは遥かなる戦野山口 笑骨
冬凪の空にとどきし太鼓なり山口香子
冬凪や年は取れども海を釣る山口雀昭
冬凪も一家団欒猿団子山口秀樹
寒凪や銚釐左右に酌み交ひて山崎かよ
冬凪や見上げる空はそこはかと山田文妙
冬凪て女将鼻唄漁舟待つ大和杜
冬凪や釣竿の先揺れ止まぬ山辺道児
冬凪や皺の手猫に魚一尾山本裕之
冬凪や君忘却の彼方へと山本蓮子
逆らえぬものに逆らう冬の凪山吉白米
冬凪や海も我が家も縁があるやらや
冬凪の砂浜波のカルテットヤン子
冬凪や問答無用母来る優木ごまヲ
冬凪や傷つくことさへなくなりぬユ綺
リール落つ冬凪の陽よ子の背なに柚子こしょう
冬凪や新婦の母になるメイクゆすらご
冬凪やガラガラまわし一等賞ゆづさくら
冬凪や遠く近くに時計の音柚木啓
珈琲に浮かぶマシュマロ冬の凪夢見昼顔
冬の凪待つというたに岩陰に湯屋ゆうや
遠き日の約束よぎる冬の凪陽のばぁば
冬凪に鳥の落とした魚一尾夜香
冬凪へ垂直落下五秒前横浜J子
冬凪の漁解禁の活気かな横山雑煮
冬凪や母の名を呼ぶ「しげちゃん」と横山ひろこ
冬凪や年金貰い買出しに吉哉郎
冬凪の溝のザリガニ様子見によしぎわへい
ひと時の冬凪もあり日本海好子
冬の凪楽しいことだけ綴りおり吉田蝸牛子
冬凪て蒼白き空深き海よした山月
冬凪や沖の沖まで静かなり吉藤愛里子
冬凪の鳴り石の浜に立ち尽くす楽和音
結果出て少し息つく冬凪か蘭丸
冬凪や記憶は記憶に執着すリーガル海苔助
冬凪の艶彼方の地のミサイルリコピン
冬凪に静けさ浸る胸騒ぎ流星
冬凪ぎて打たれ撃たれてまだ気鬱流流
冬凪の水面の銀に朱ひとすじルーミイ
冬凪や初孫つれて墓参り玲雄成
冬凪や語らい長し二人連蓮風
冬凪や蕎麦屋の香りそそられるロザリオ巌
冬凪や魚眼レンズの見る世界ろまねす子
冬凪の向こうミサイルの雨降るわかなけん
冬凪や煎餅進む一夜漬けわきのっぽ
冬凪に枯れ枝手折り歩く路渡辺ヤスコ
目の前にいるのに言えず冬凪よ和の光子
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
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●俳号のお願い二つ
①俳号には苗字を!似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。
②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
●俳句の正しい表記とは?
- 冬凪の 東西南北 天地人ギザギザ仮面
- 冬の凪 マルチプレイは 心病み鈴木隆史
- 冬凪よ 遠くに見ゆる 鳥の群れ立川春風
- 冬凪よ 神の緩めし 試練かなはむれピノ子
- 「龍宮の使い」来訪 冬の凪あじさい卓
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●兼題とは
- 寒い朝温かいのは昼だけだ#りなりな
- 寒潮や 父の手荒れて 漁船帰る聖山
- 在宅勤務の家外は冬風齋藤鉄模写
- 冬の虹禿頭拭きし時間かな与田鍵
- 冬空の星見て想う愛し人柳風亭清三
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は「冬凪」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●見間違えた?
- 飛騨の市冬瓜武骨にでんと居る空木眠兎
- 遠い祖母しゅんでない冬瓜煮佐や
- 冬瓜を梅肉でなく餡かけで華樹
うーむ……「冬凪」と「冬瓜」をうっかり見間違えたということか。あわてん坊の三人。
- まったりと冬凩やひとり鍋聞亭圭輔
「凪」と「凩」を見間違えたか? 残念。次回の兼題こそはお間違えのないように。
●前回の兼題
- 仏壇に毎日飾る草の花木下桃白
- 名前なき草の花の凛として布野悠乃
「草の花」は前回の兼題。〆切を確認の上、ご投句くださいね。
●季重なり
- 雪虫や冬凪げる空に揺蕩う石若丸
- 冬凪や庭の枯れ木の安らかさ伊藤足
- 冬凪や悴む右手のまめぶ汁久保陽平
- 冬凪や白重なりて山茶花幸内悦夫
- 桜貝ひろう冬凪のたがそれ立花かおる
- さえずりが電線に並ぶ冬凪ぎや山崎鈴子
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「冬凪」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●文字化け
- 冬凪や?も酔わず嬉しかろふる雲
- 冬凪や?に並ぶ鳩一羽毛利尚人
文字化けは、不可抗力ではあります。推測できる時もあるのですが、この二句は……分からないなあ。
●入力ミス
- 胎内の心音たしか冬凪ぎる植木彩由
入力ミス、誤字脱字はよくあります。送信ボタンを押す前の、最後の確認を習慣にしましょう。文字化けは不可抗力に近いけど、文字化けしそうな字を予測できるかも。
●悩ましい……
- 冬凪の芦ノ湖にガス海賊船上野徹
「冬凪」は天文の季語なので、湖の光景を詠むことがダメとはいいませんが、「ガス」は霧のことだろうから……季重なり?
- 冬凪や慎みなき銀皿の腸つくも果音
銀色の皿に何かの腸が慎みなく盛られている……??? とは、どういう光景なのでしょう……。
- 冬凪やハイウェイに立つ草プリマ美乎梛
草がプリマのよう?? という比喩は、一体どんな光景を描こうとしたのか……。以上、悩ましい三句でした。
●季語深耕
風が強く吹き、海は荒れることの多い冬。そんな中にも、風がおさまり波が穏やかになる日もあります。
「冬凪」は天文の季語です。海の様子として詠んでいる句が多かったですね。
傍題には、「寒凪」「凍凪」があります。「冬凪いで」「冬凪げり」「冬の凪」など歳時記に例句が掲載されているものは可としました。- 凪壊して雲崩す風静かにうふふ
- 風凪や演歌のこぶしこだまする林田リコ
- 風紋の巾の不思議を問う夕凪今村 ひとみ
- 夕凪や地底に呼ばる心地して大山小袖
- 夕凪に想いをはせたラブレターお寺なでしこ
- 沈黙の波間一息夕凪か長洲雪華
「夕凪」の句が二五句ありました。「夕凪」は、夏の天文の季語ですよ。再確認しておきましょう。
●季語を比喩に使う。
- 上る煙冬凪のような空の先へvivi
- 襲いくる腰の痛みは冬凪のごと笠江茂子
- 冬凪のごと闘病の祖母の笑み鈴木リク
- 人生の冬凪頃か古希の坂本間美知子
確かに「冬凪」は入っていますが、季語を比喩に使うと、季語としての力が弱まってしまうことは覚えておきましょう。
●類句例
- 冬凪や猫大あくび日向ぼこあいあい亭みけ子
- 冬凪や魚河岸の隅猫あくび朝雲列
- 冬凪の桟橋猫の大あくび池之端モルト
- 冬凪いで波止場の猫が欠伸せし加藤雄三
- 冬凪の波止に黒猫欠伸する茫々
なぜか、猫の句が多かった! 六六句もありました。「冬凪」という季語と相性が良すぎるということかなあ。
- 冬凪や切絵のごとき砕氷船じゃすみん
- 冬凪や切り絵のやうな貨物船冬のおこじょ
- 冬凪やミズダコ回る洗濯機井中ひよこ号
- 冬凪や蛸洗いたる洗濯機杜まお実
このような類句例を、データとして自分の中に蓄積していくことも、凡人の沼を回避する具体的な方策です。
あけましておめでとうございます!11月の兼題「冬凪」の結果発表でございます。今月も夏井先生からの「今月のアドバイス」は必見です。21年11月の兼題「冬の海」は、暗く冷たく厳しい海のイメージでしたが、「冬凪」のような、寒いながらもつかの間ほっと息をつける海もあるんですね。1月の兼題「春待つ」もふるってご応募ください。