夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
8月の審査結果発表
兼題「蜩」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
家具に布かけ蜩の家を出る
おきいふ
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夏井いつき先生より
仮に、上五に「蜩や」と置き、中七下五を「家具に布かけ家を出る」としても、大まかな意味は変わりません。が、一句の味わいはずいぶん違ってきます。それは、掲出句の「蜩の家」という表現そのものが、詩語として結球しているからです。
古い洋館のような「家」を思いました。高原の別荘でしょうか、故郷の生家でしょうか。家具に布をかけているのは誰でしょう。夏の間、避暑のために滞在していた息子でしょうか。父母の遺品を整理するために訪れていた娘でしょうか。はたまた、家具付きでの売却が決まった最後の日の、家族たちかもしれません。
埃を避けるための白い布を、使い込んだ艶のある家具一つ一つに掛けていきます。重い扉を開け、玄関を出ると、蜩の声。「蜩の家」とは、かなかなの声に包まれる家であり、秋の凋落を思わせる家でもあります。
ゆふぐれのうはずみとして蜩は
にゃん
「蜩」の声って「ゆふぐれのうはずみ」みたいですねと囁かれると、思わず頷きます。「うはずみ」とは、夕暮れの空のきんいろであり、夕暮れという時間の感触であり。切れのない下五の余韻もまたしみじみと。
ひぐらしや上澄みのよな欲である
七瀬ゆきこ
同じく「上澄み」との取り合わせ。生臭い欲はすっかり失せて、今は「上澄み」のような「欲」があるだけだよ、という呟き。「ひぐらし」の声もまた美しい上澄みのように、遥かから遙かへと響きわたっていきます。
かなかなにぶんかいされてゆくわたし
紙谷杳子
法師蝉ではなく、ましてや油蝉やみんみん蝉でもない、「かなかな」は、「わたし」を「ぶんかい」していくような声なのだ、という把握に強い共感を覚えました。「されてゆく」という漂うような感覚の詩的リアリティ。
蜩や今度はきっと良い学校
瀬央ありさ
一学期の最初は頑張ったけれど、やはり学校に行けなくなったのです。夏休みを経ての二学期。「今度はきっと良い学校」という願いの向こうに、残酷な現実が垣間見えるのは、「蜩」の切ない鳴き声のせいでしょうか。
かなかなの國みづの國なゐの國
RUSTY=HISOKA
「かなかな」の声を、美しいと感じとるのは日本人ならではの感覚だという話を聞きかじったことがあります。まさに、「かなかな」と「みづ」と「なゐ(地震)」の国である日本。美しさの背後にある怖ろしさが、ひたひたと迫ってくるかのような作品です。
蜩や研ぐほどに水濁りゆき樫の木
蜩に濡れて漏電する孤独古賀
かなかながやめば復縁しませんかげばげば
蜩のこゑもいつしよくたに洗ふ池内ときこ
蜩や父母の諍ふ家を抜け伊藤恵美
蜩や右より昏き左耳あやせゆうま
墨堤の蜩われは呑んだくれ明惟久里
蜩よ吾の死因はなんだった細川鮪目
蜩や死にたい母に新たな癌岬ぷるうと
神の場所とはひぐらしの最奥部ふるてい
哀調どころか明け方の蜩菱田芋天
蜩や月をこすったときの音二重格子
蜩や辞めていいかと泣く電話なか鹿の子
かなかなやどんな家にもある住所多喰身・デラックス
かなかなの病室おかん泣いてたな平良嘉列乙
かなかなやたましひにたましひのきず渋谷晶
蜩や宿のポットの湯はぬるめ里すみか
蜩や戦ぎたがつてゐる献花恵勇
蜩に痛覚奪はれたやうなギル
馬術部やかなかなの馬場均しをるキートスばんじょうし
不採用六十二歳蜩聞く今村ひとみ
かなかなてふ呪ひたのし離職せん山本先生
蜩は百会より受く米をとぐ七森わらび
ひぐらしやこの大波は布哇から相沢薫
蜩や東京タワーが燃えてゐる藍野絣
欠席にさらりと○や夕ひぐらしあいむ李景
かなかなやスクールバッグに塩素の香青井えのこ
蜩の森をうつつは遠のけり蒼月子
蜩や鎮守の森という器青井晴空
かなかなやまず胎動にゆるぶ朝青居舞
蜩や不発弾処理のサイレン蒼空蒼子
蜩や呼吸するたび錆びてゆく青田奈央
蜩が鼓膜の奥で鈴をふるあおのめ
蜩やまなこ澄みたる老神父蒼鳩薫
かなかなやこまい字はよう見えんがよう青水桃々@いつき組俳句迷子の会
かなかなや駄菓子屋といふ冒険へ赤尾双葉
蜩や泣きながらただ千六本茜咲
蜩や猫の骨壺膝に乗せ赤富士マニア
蜩や藁人形は奥の奥赤馬福助
蜩や太鼓で知らせる紙芝居acari
蜩や今夜仕上がるお出かけ着あかり
落下せり夕日に打たれひぐらしは秋白ネリネ
蜩や延長戦を勝利する昭谷
絶交の時効ひぐらし憩う夕空地ヶ有
蜩や樹海の奥の朽ちた縄秋野茜
蜩やカーブミラーに夕日満つ秋野しら露
かなかなや針穴へ糸二度三度秋山らいさく
蜩や焦げた飯ごうめしも良しアクエリアスの水
蜩や実家じまいの荷積み終えあくび指南
ひぐらしやわたしが先に醒めるとは淺井翠
蜩や山頂郵便局閉鎖朝雲列
バトンパス失敗かなかなの家路朝霧さら
かなかなや借りつぱなしの智恵子抄朝月沙都子
蜩や手紙の束の琥珀色明後日めぐみ
蜩や児童館まではあった鍵字土街海
蜩や財布は何度見てもカラあさのとびら
蜩や戻れぬ町の山の陰麻場育子
蜩や検査終わりし発電所朝日雫
蜩や紙巻きオルゴールはしづか芦幸
蜩や俄雨来る匂ひしてあじさい卓
蜩や吾子に胎内記憶なくあじさいパスタ
ひぐらしや樹間四角く夕さるる葦屋蛙城
ひっこしはにわにかなかなくるおうち藍創千悠子
さなきだに長き石段夕ひぐらし足立智美
蜩の微かに五合目は間(あわひ)あたなごっち
蜩の乾いた聲に月呼ばれアツシ
ひぐらしや一行増えた処方せんat花結い
蜩はいつもハ音がずれていく天晴鈍ぞ孤
蜩や人工林はひと疎む渥美謝蕗牛
蜩に樹海の木霊震へけりあなうさぎ
蜩や此の山で聾となりましたあなたを知りたい
機織の手止めれば蜩近しあねもねワンヲ
車窓閉じて祖母とかなかな遠くなる阿部八富利
かなかなに狐の面をはづしけり天風月日
ひぐらしや秘色にしめる祈念像あまぶー
蜩にチリリと痛む心かなアマリリスと夢
蜩や今日の一曲ビートルズ網野れいこ
蜩や民宿今もあの坂にあみま
かなかなや運指もつるる七拍子雨乙女
蜩や五右衛門風呂の熱すぎて彩香
ひぐらしや湖水しづかに星を待つ綾竹あんどれ
ひぐらしや有線からの反戦歌綾竹ろびん
蜩の声いづくかの被爆音綾波まこと
ひぐらしの今日を離さぬ夕陽かな荒一葉
かなかなや末の子加賀へ嫁ぐ朝新多
「な」の音の抜けてゆくかなかなの刻ありいかな
蜩や義経堂を抜ける風有本としを
蜩や長い廊下を修行僧淡湖千優
「レ・ミゼラブル」閉ぢ蜩の中へ今アンサトウ
蜩や九鬼水軍の錆びし銛安春
かなかなかなかなつひにひとつの波濤かな飯村祐知子
かなかなかなかな自販機はすぐ黙るいかちゃん
蜩の翅の狭間の狭き明日粋田化石
蜩や十円もらふお手伝い生野薫
かなかなや見つけてくれぬかくれんぼ池田桐人
蜩やひとり鉋を研ぐ大工池之端モルト
かなかなやあかるくかはくあがたの地イサク
蜩や石めく乳房熱を持ちいさな歌鈴
蜩や柱時計の錆びた螺子いしいるぴなす
蜩や断食明けてゴミ拾い石岡女依
ひぐらしや「ここは何処か」と杖の人石垣エリザ
母逝きてなおかなかなの降り注ぐ石川巴里
蜩や掻きあと残る漆の木石田ひつじ雲
蜩や清音つかむ母は臥し石塚碧葉
蜩や切手シートにグラシン紙石塚彩楓
ひぐらしや昔のままに庭暮るる石原花野
蜩や胃腸丸薬また数え石村香代子
蜩や千の聲から父の聲泉晶子
蜩の翅翼にはカナカ・ナの楽譜泉水あやめ
蜩や鉄路の果に都会あり和泉攷
ぽつねんと蜩の声あびている遺跡納期
蜩や腸を取り出すメスの錆び磯野昭仁
小説は羽田にて果てかなかなかな石上あまね
蜩やおくやみ欄に恩師の名いその松茸
ひぐらしの仮寓に飾るヴァイオリン板柿せっか
蜩や子のでたらめな絵描き歌いたまき芯
蜩が合図看板表にす一井かおり
蜩や佐渡の伯父伯母すでに亡く市川卯月
蜩や寮見届けてひなの駅市川りす
蜩に癌の告知を受け流すいつかある日
蜩や今日は二度干す介護シーツ一久恵
蜩がまだかと問うてくる約束五つ星
闘いを終え蜩の声を聴く一歩千金
蜩が鳴いた二重跳びできた井出奈津美
蜩や糺の森に結うみくじ伊藤亜美子
ひぐらしや考(ちち)と黒子の位置同じ伊藤映雪
さよならと幾度もいふよかなかなは伊藤順女
蜩は鳴くがツライと言ってない伊藤テト
蜩を友と感じる日曜日伊藤なおじい
蜩や道の彼方の野辺送り伊藤正規
蜩の穴の深きや戻らぬに伊藤柚良
蜩や歯医者の麻酔残りをり伊藤れいこ
バスは日に二便蜩鳴く頃に伊藤小熊猫
蜩の湖北へ波の矢鱈縞糸川ラッコ
蜩や共に退職顕微鏡伊ナイトあさか
民宿はよろづやを兼ね夕かなかな井中ひよこ号
ひぐらしやあの一球を悔いてゐる伊奈川富真乃
蜩に曳かれて回る車椅子稲葉雀子
蜩や天明墓の文字斑いなほせどり
蜩の国に吸い込まれてもいい伊縫音々
蜩や臥してひねもす餓ゑをり犬山裕之
蜩や腕に痺れのある目覚め井納蒼求
蜩の降る母と聴く母の予後井原昇
蜩や村に一つの古戦場いまいやすのり
蜩や空家四角の土地となり井松慈悦
蜩や人魚の肉の不老不死妹のりこ
蜩や此の散策は旅である伊予吟会宵嵐
今日か命か選べってひぐらし鳴く伊代ちゃんの娘2
蜩が鳴くまで居るね「あぁ」と父彩人色
蜩や神楽の鈴に頭垂れ五郎八
根の國の母よははよと蜩のいわきりかつじ
蜩はひらがなで鳴く耳の底いわさちかこ
蜩や水呑む父の喉仏岩清水彩香
蜩の声里山の膨らみぬ岩田勇
蜩や舟に湖面の破れ無く磐田小
小包を解けばかなかな訛りたる植木彩由
蜩の小径抜ければ妾宅うえともこ
漣のふっとみな熄むかなかなかな上野徹
エンジンを止め蜩のなかに居る上原淳子
蜩や農夫水路に鍬洗ふ植村弘
ひぐらしや烏啄む骸あり魚氷橙
蜩の捕まえられてがががな゛じっ宇佐美好子
蜩の波動に空はひかりだすうた歌妙
蜩や箱ごと捨てる古写真宇田の月兎
かなかなや明日から遠い国に住む内田こと
蜩や拾えばオモチャ動き出し内本惠美子
蜩や一人の夜の万葉集空木眠兎
蜩を前頭葉に飼つてゐる靫草子
ひぐらしや「帰寮せり」とのLINEの来卯波まり
ひぐらしひぐらしぐらしらししししし宇野翔月
ひぐらしや祖母の待つ家まだ遠く卯之町空
かなかなやさういへばけふ泣いてない海野青
蜩や補助輪外す最後の日うみのすな
蜩や父の余命を告ぐる医師梅里和代
蜩や二年三年他所者と梅朶こいぬ
下ばかり向く子ひぐらし鳴くまでは梅野めい
蜩や駅弁二個目の休憩所梅原もずく
ひぐらしや最寄りのコンビニ隣町うめやえのきだけ
かなかなの森燃えた千年の森燃えた浦野紗知
かなかなや初老のため息の匂い粳ヤン
かなかな鳴くこの家譲渡の判を押す麗し
かなかなや電力メーターはおもい吽田のう
ひぐらしの翅うすあをく夜を待ちぬ詠頃
かなかなやこれは聞こえる方のせみ江口朔太郎
蜩や黒い誰かが回覧板S・葉子
かなかなやこの慟哭もいつか死ぬ蝦夷野ごうがしゃ
蜩に囲まれ怖くなりし夕蝦夷やなぎ
蜩や繊くなりたる髪洗ふ絵十
蜩の放課後君は来なかった海老名吟
かなかなや過去消す音のシュレッダー笑姫天臼
逆光に鳴く蜩の翅は玻璃えりべり
蜩も空の青さに尻込みし遠藤倫
蜩や母の衣類を積みゆけり旺上林加
保健室うつ伏せに聞く蜩よおおい芙南
かなかなを振り払ひ振りほどく坂大岩摩利
眼を閉じて蜩聞けば森は海大久保加州
蜩に井戸は大口あけてゐる大黒とむとむ
蜩や過疎の村にも寺一つ大越マーガレット
雨過ぎて蜩の音残りけり大嶋宏治
蜩や帰りの遅き使ひの子大谷如水
蜩や娘下宿へ送る駅太田鵯
蜩の駅やまさかの立ち往生大塚恵美子
蜩やさっちゃんの苗字思い出す大槻正敏
かなかなや値引き弁当今晩も大谷一鶴
蜩よ手ぶらの姉を待つ坂よ大和田美信
かなかなの神社に祖母が迎えに来岡井稀音
蜩や吾の鼓動を確認すおかえさき
かなかなや土地の人らとゐる食堂おかげでさんぽ
蜩やみづにうつしみある如し可笑式
蜩や雨戸立てろと母の声岡田雅喜
うたた寝の耳にひぐらし雨にほふオカメインコ
足早に去る雲水や夕ひぐらし岡山小鞠
蜩の宿針をSP盤へ小川さゆみ
蜩や寝覚めにはるか海の音小川しめじ
かなかなに老いの立ち話はまだら小川天鵲
蜩の降りゆく肺の深さかな小川野棕櫚
蜩の声伝え打つ指点字小川野雪兎
蜩や背ないつぱいにむづかる子小川都
ひぐらしやトラムの軋む旧市街オキザリス
蜩のくにのみやこはここですか沖原イヲ
かなかなの聲枯井戸を崩れゆく荻原湧
シードルの消えゆく泡や夕蜩小倉あんこ
ブルースのように蜩息を継ぎ遅狐歩
蜩や犬と静かに座す夕べ尾田みのる子
かなかなや土より闇のにほひたつ越智空子
蜩や作り直せと義母のいふおでめ
日ぐらしや天守閣てふがらんだう音羽凜
蜩や机に向かふ膝こぞうおひい
蜩や私の中に無い私おんちゃん。
蜩や母へ貧弱な声援快晴ノセカイ
かなかなの最後のかなを聴きそびる海峯企鵝
振り返る森蜩に閉ざさるる火炎幸彦
日暮や移住に少々悔いあれどカオス
かなかなや乳含む子の片えくぼ加賀くちこ
少年の自転車速し夕蜩案山子@いつき組広ブロ俳句部
蜩や人せり出して川のうへ化骨
蜩や形見の皿の欠けてをり笠谷タカコ
蜩よ生家は疾うにそこにない風花まゆみ
蜩や線香わすれ名もわすれ風花美絵
蜩やぽぽぽぽと風呂の煙突風早杏
蜩のここより笑はなくてよい加座みつほ
蜩のさみしさ説明書に一行霞山旅
かなかなの声すくひ呑む山の水華胥醒子
蜩に沾ちて神廟なほ高し片岡六子
蜩や墓山仰ぐ一貫校加田紗智
蜩やあまりに長き飛行機雲帷子砂舟
蜩や紅茶に洋酒垂らすころ片山蒼心
蜩や夜は十六拍子で進みゆく花鳥風猫
蜩や妻の居ぬ日のカップ麺かつたろー。
かなかなの止んで夕べの重くなる桂もふもふ
蜩や水面に音の波開くひだまりえりか
蜩や世界はこれから暮れてゆく桂子涼子
蜩やどこに入れよう句読点桂葉子
蜩や音の雫のこぼれくる花伝
鎮魂歌ひぐらし知るか知らざるか加藤水玉
ひぐらしの憂ひ吸ひ込むあかね雲仮名鶫
かなかなやみづかね色の声明師かぬまっこ@木ノ芽
蜩やクリーニングに出す喪服金子泰山
かなかなや最後の牛を売る朝(あした)花星壱和
蜩や杣小屋の屋根抜け落ちて釜眞手打ち蕎麦
蜩や東京ばな奈開けようか神島六男
蜩ややっと気づきし千日手神長誉夫
蜩や父の死に目に会いにゆく神谷たくみ
左眼に異物蜩鳴き止まず亀田荒太
一山の蜩鳴くを諦めづ亀田かつおぶし
蜩の鳴く蕎麦屋にて酌みにけり亀山酔田
朝練の蜩の中ペダル踏む鴨の里
矯正五年目遠くなる蜩花紋
かなかなの染みるごと部屋翳りゆく加裕子
ひぐらしや「またね」に嘘の匂ひ濃く加良太知
ひぐらしやピアス片方滑り落ちかりかり久助
蜩や生家の屋根にある落暉かりそめのビギン
蜩やゼリー冷たき検診車刈屋まさを
蜩や逆さに立てるマヨネーズ川越羽流
どうぶつの展示は終わり夕蜩川代つ傘
ひぐらしの山のかたちに鳴きにけり翡翠工房
蜩や僧の誦経の声低し川鍋暢子
かなかなが鳴きて火入れたピザの生地川辺世界遺産の居候
蜩や赤いカプセルまた五錠川村湖雪
蜩や聴覚は満身にある川村ひろの
蜩や親子げんかの受話器おく川村昌子
蜩や砂に塗れた甘露飴閑々鶏
蜩や鬼未だ来ぬかくれんぼ邯鄲
かなかなや届かぬ母の左耳神無月みと
蜩の発条ほどくやうに鳴き勘八
蜩や建築主は他所の人看板のピン
蜩や須佐之男孤坐の夕惑ひ閑酉
蜩や手首を閉ざしたるギプス喜祝音
日暮やるるぶの地図に開き癖器官
蜩や煙の絶えぬ登り窯季々諧々
蜩や影は楕円に伸びたがる岸来夢
かなかなやオニになったし帰ろかな季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
蜩や夏生の詩集音読す喜多柚月
蜩や悪い知らせを聞きたがる北大路京介
蜩や棒で川突く消防隊北里有李
蜩や暗渠へ向かう水に魚北野きのこ
蜩や森の向こうは美術館北野都留
かなかなだ病める母から声聞こゆ北の星
かなかなやひびいりさうに玻璃のはね北藤詩旦
夕蜩切れかけの産科のネオン北村崇雄
蜩や宵越しの金持たぬ夫貴田雄介
かなかなや蕎麦のかまぼこ透けている着流きるお
かなかなや発掘の刷毛乾きゆくきなこもち
蜩と無垢な遊びを覚えをり城内幸江
蜩や言葉の棘をピッと抜く木下桃白
詩のごとく降る蜩や夕日坂木原洋子
蜩や父母の戒名うろ覚えきべし
矛を収めしか蜩早や鳴けり木ぼこやしき
蜩や針箱探す針仕事木村隆夫
蜩や職員室に呼び出され木村となえーる
蜩や縁切り寺の深き山木元紫瑛
蜩や一山越えれば出雲弁Qさん
蜩や黒曜石の出づる村鳩礼
蜩や母のに似ない味噌汁を紀友梨
また物忘れ蜩が啼いてゐる京野秋水
かなかなをとほく明けゆく礼拝堂杏乃みずな
蜩や日の斑の震ふ切通し清瀬朱磨
蜩や表札当面ガムテープ銀紙
蜩や昨日の森で鳴いてをり菫久
神木の蜩厳罰の署名くぅ
背骨が立たない時ほど蜩やかましくクウシンサイ
蜩やキャプテンばかり叱られる空想
かなしみは針の冷たさかなかなかな久我恒子
骨上げや気が付けば蜩の中鯨之
かなかなやかえらなかあちゃんおこってるくずもち鹿之助
蜩やお悔やみ欄に顔見知り工藤悠久
蜩の鳴く日遠距離切符買う窪田睡鯨
蜩や法事終わりに聞く説法久保田凡
がらんどうの胸に蜩止まりけりくま鶉
かなかなや山河に沈む空の青熊谷温古
蜩や孫の命日知らせをり紅三季
蜩やきのふより些と老けしこゑ雲城詞葵
ひぐらしと子と残酷な遊びかな蜘蛛野澄香
蜩の翅みづよりも素直なる曇ゆら
蜩にまぎれて夜泣き石がまた倉岡富士子
蜩の笑ひひとりで人知れず倉木葉いわう
蜩の斜陽に濁るホルマリン倉木はじめ
かなかな止む木箱のやうな宵来る眩む凡
蜩や梯子の夫の靴の泥栗田すずさん
タワマンの影は蜩の森までくるみだんご
かなかなや看護日誌に子のあだ名久留里61
蜩や余命三月の父の喉紅さやか
水打ちて撥ねて蜩甲高く黒田良@しろい
蜩や流動食の銀の匙桂子
蜩が鳴く頃のヒロシマけーい〇
蜩の予期せぬ森に沈みけり家古谷硯翠
ここまでは追って来るまい夕蜩健央介
ひぐらしの湯舟さみしきふくらはぎ謙久
かなかなの鳴き止みて後、夢二死すケンG
かなかなの最後の一字落ちてやむ剣橋こじ
蜩やうつすら見えし詰みの筋剛海
蜩やピアスの穴を塞ぎつつ紅紫あやめ
蜩や片方だけのコンバース幸田梓弓
ひぐらしや焙烙の熾ちろちろと幸内悦夫
墨色の移ろい蜩鳴ける間にごーくん
かなかなのこゑのふかみに秘仏かな郡山の白圭
蜩や院長急死の診療所小笹いのり
全山を包む蜩切通し小嶋芦舟
かなかなや母の着物を解き初む木染湧水
かなかなや寝転んで書く果たし状小だいふく
蜩や谷戸の擂鉢を満たしぬ虎堂吟雅
蜩や経読む僧の咳ひとつ後藤三梅
かなかなかな湯浴は灯り点けぬまま古都鈴
蜩や献体未だ戻らざりこのみ杏仁
蜩や髪乾かずに大食堂虎八花乙
かなかなや路傍の供花は朽ちてをり小藤たみよ
蜩や若き尼僧に唱和せりこま
蜩や新聞受けに三日分駒村タクト
一万五千歩ひぐらしの山彷徨へり小山晃
かなかなや出雲の奥に鉄の神GONZA
蜩の滝音ぞ我も了と成す権田童よしこ
蜩の残響図書室の森今藤明
日ぐらしを薄めれば心音となるコンフィ
蜩の輪唱森は深い深いサイコロピエロ
蜩の住むこの星の半回転西條晶夫
ひぐらしの揺らす吊橋雲白しさいたま水夢
蜩や久女の墓の供華饐えて彩汀
蜩や露店に残るブリキ猫齋藤桃杏
蜩や夕餉の前のひと仕事さいとうすすむ
売切御免ひぐらしの直売所さおきち
蜩やダメ出し多き対策書さ乙女龍チヨ
蜩の翅に昭和の僕の地図酒井おかわり
蜩のかなに寂しさなかりけり酒井春棋
蜩やバンドネオンのよくしなるさかえ八八六
灯を点さで蜩に身を委ね切る榊昭広
かなかなや七票足らぬ町議選坐花酔月
蜩の声の彼方は星を生み坂田貞雄
蜩や父の覚めれば飯を炊く坂野ひでこ
蜩の井戸端に研ぐ今日の鎌坂まきか
蜩や買い物籠と母の腕咲美マキ
かなかなや音飛ぶ映画鑑賞会咲まこ
蜩の塊りて残照深しさくら亜紀女
蜩や軋む廃線のアーチ橋櫻井こむぎ
かなかなや死にゆく猫の家に待つ櫻井紫乃
かなかなや夕日に吊るす弓道着桜鯛みわ
蜩や薪で沸かした湯に沈み桜月あい
ひぐらしやにこよん今朝も並ぶ列桜姫5
蜩やささくれ千切る帰りみちさざなみ葉
ひぐらしや半世紀前のかたおもひさっち
蜩や準優勝の一報来佐藤志祐
かなかなは秘色の水輪朝ひろがる佐藤儒艮
かなかなの翻訳さるる日も間近佐藤綉綉
蜩も秒針も一瞬止まるさとう昌石
蜩や独りほぐせる耳の壺さとうナッツ
かなかなに切字の響きありにけりさとうゆうき
蜩や櫓の音きしむ八幡堀佐藤佳子
蜩を鳴らして樹皮の真つ黒き佐藤レアレア
蜩や部活帰りの握り飯里こごみ
難聴の友のピアスへと蜩さとマル
かなかなのちからうすれてふるさとは里山子
蜩やトタンは雨に沿ひて錆ぶ錆田水遊
かなかなや既に古酒開け微酔なりさぶり
蜩や夕日の色の母の声彷徨ういろは
ひぐらしや明日の朝餉は茶粥にしよ紗羅ささら
かなかなや音なく川は人を呑むさるぼぼ@チーム天地夢遥
蜩に左耳から透き通る澤田紫
かなかなかねのそのひぐらしのひぐらしの沢拓庵@いつき組カーリング部
かなかなの夕闇に収まりきらず山海和紀
稜線の日を喰うて蜩鳴けり三月兎
蜩が忘れた罪の底で鳴く珊瑚霧
蜩は涙恥骨に沁みる沁みる三尺玉子
出港のひぐらし帰港のひぐらし三水低オサム
かなかなや奥ほの暗き自転車店潮風の台所
猫草をかなかな鳴いて供へけり歯科衛生子
相続は物別れひぐらしの居間志きの香凛
蜩よ合わせちょるなあ提琴にじきばのミヨシ
蜩や消化試合の外野席獅子蕩児
蜩や吐き出す痰のうすみどり四條たんし
蜩や先妻の座す家族葬じつみのかた
蜩や終活帳はまだ真白信濃のあっくん
庭の子の一人少なし夕蜩篠原雨子
蜩のまだ鳴き止まぬ夫手術篠雪
センサー作動す早朝の蜩柴桜子
蜩や施設退く荷の箱は三つ島崎ゆうこ
聲にいろあらば蜩の月白島田あんず
蜩や精進落しはいりこ出汁しまのなまえ
蜩や祖父の御襁褓は五十円嶋村らぴ
蜩や墨池の汀かはきをり清水縞午
ひぐらしや訂正印にうそはなき清水三雲
ひぐらしや妻は早々風呂に入り志村狂愚
蜩の声を踏まぬように歩く霜月詩扇
ひぐらしや下船の島に弁財天霜月ふう
ひぐらしや干物だらけの宅急便芍薬@独逸
蜩の森の錆びつつ廃炉尖るじゃすみん
うたた寝の副音声のかなかなかな砂楽梨
蜩を酌み交わしてる羅漢像十月小萩
廃校舎歪むかなかなの幾重よ朱胡江
蜩や線香はしずかに尽きる秋雪
切なさを知り蜩を捕らぬ子に秋芳
蜩の駅やティッシュを配る父樹海ソース
日暮や百貨店閉鎖の知らせ珠桜女絢未来
蜩やへら絞る師のひねた指種種番外
かなかなや月砥ぐ人に薄き翅シュリ
蜩や住職さまはお達者かじゅんこ
蜩やくつろぎて居るふくらはぎ順之介@QLD句会
蜩や洗ひ直しのカレー釜じょいふるとしちゃん
ひぐらしのこゑ冷やしあふみづとみづ常幸龍BCAD
茅蜩や同じ姓持つ十一戸庄司芳彦
隠れ鬼残されて蜩るるる正念亭若知古
蜩や優しい綺麗なお茶を飲むショートケーキ
かなかなと呪い唱えてリルケ読む白河夜船
祭禮の杜のひぐらし雲遠ししろくも
かなかなや三台並ぶライン引白プロキオン
黄昏のカレーを冷ますかなかなかな白よだか
かなかなの声のみ残す神隠しジン・ケンジ
蜩や記憶の底へ軋む斧新城典午
蜩鳴けり江戸城を異邦人新濃健
かなかなと湧きてはカナカナと沈む新花水木
蜩や検査着の薄青を脱ぐ深幽
左折して蜩の国入りしかな杉尾芭蕉
蜩やミシリと抜けた奥歯二本杉田梅香
蜩やおくどさん前火除け札杉本果ら
ひぐらしや迷子は帰る家のあり鈴木由紀子
かなかなや度胸試しの淵今は鈴白菜実
かなかなやかたむく影の乳母車鈴野蒼爽
五匹目の蜩掃除婦が帰る鈴野冬遊
ひぐらしや棒のごと寝る施術台主藤充子
蜩の背は黒々と山の雨巣守たまご
ひぐらしや揺るる大地の国に棲みすりいぴい
蜩や夕日が今日を振り返る諏訪次郎
蜩や朝一番の水旨し静江
蜩の鳴く夕暮れは死の臭ひ青児
ひぐらしの休符を聴きて調弦す晴風
蜩や誰かが言ったまた明日青峰桔梗丘
遠蜩戦火逃れて水を嗅ぐ瀬紀
蜩や子の持ってくる石石石せとみのこ
かなかなや五十日目の遺失物世良日守
蜩やお看取りをせし空き居室そうり
送れぬ荷物に埋もれて蜩外鴨南菊
指切りへかなかなの声母の声そまり
かなかなや碁石を洗う音静か染野まさこ
蜩や猫の火葬車到着す空豆魚
司書に起こされてひぐらしとは幽かぞんぬ
ひぐらしや吾はおそらく村八分たーとるQ
蜩の頃少し大人になりき大
蜩や日射しの痛き通学路太閤検地郎
蜩や妣の如くに唄ふけふ大ちはる
かなかなの八分音符も暮れゆけり太平楽太郎
蜩やインクのにじむ遺言状平たか子
ひぐらしを聴けば体も透けるようたいらんど風人
蜩や墓場へつづく冥き道高岡春幸
先斗町通ひぐらし東入高尾里甫
蜩やリハビリ棟に続く道高木音弥
かなかなや古墳跡地の小学校だがし菓子
蜩や風の鱗として瘡蓋髙田祥聖
かなかなとひろがる黄金の同心円鷹取碧村
蜩やズボンはどれも寸足らず高嶺遠
蜩や母の姉さんまだ二十歳高橋ひろみこ
かなかなの風や寝落ちの奥座敷高橋ままマリン
ひぐらしやひとり居同士長電話高橋光加
ひぐらしや六十余年寡婦としてたかみたかみ
火葬場の森に蜩車列過ぐ高見正樹
蜩や路肩ダンプの下げた窓高山佳風
蜩や父の荷物を代わる帰路高山夕灯
ひぐらしのうねりあまねし露天の湯滝川橋
暁のかなかなや赤本閉じる卓女
蜩や三日月はいま空の色卓鐘
蜩や読経は地より湧き出づるたけぐち遊子
蜩やトレモロ習う指遣い多胡蘆秋
かなかなとさらに光は透きてゆくたすく
かなかなや一枚捲る回顧録祐紀杏里
蜩を聞いてるうちに覚めた恋多数野麻仁男
蜩独唱インド犀の角のごとくただ地蔵
蜩や今日で閉鎖の駐在所多々良海月
恋も死もかなの二文字かなかな鳴くだっく
蜩や一人がよいと母は言ふ立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部
蜩やぼくだけ円周率が3立石神流
蜩や帰り支度の山の家蓼科嘉
蜩が鳴く愛してもいない故郷立部笑子
蜩や少し風受け老詩人田中美蟲角
蜩や昭和の残る小湊線田中ようちゃん
かなかなや被曝のマリア語り継ぐ谷口詠美
蜩や電池が切れかかっておる谷本真理子
蜩やそろばん塾を辞めたくて玉家屋
蜩やロッカー式の納骨堂玉井令子
蜩を聞く蜩を踏み潰し玉木たまね
蜩や実家へのバス廃線すたまのねこ
かなかなやリヤカーに乗る帰り道玉響雷子
かなかなを聞く東京と付く村に田村ヒロミ
蜩や焼骨光る緑の斑樽熊だん
蜩と何かが呻く林かなダンサーU-KI
トランクに頬杖かなかなうるさい千夏乃ありあり
火葬場の風に転がりて蜩ちくりん
蜩の透く金星の濁る頃千歳みち乃
ひぐらしが鳴いて効かないサプリ飲む青星ふみる
かなかなや指の包丁傷癒えてちゃあき
かなかなの途切れ剣士の面の音千代之人
蜩さざめくシーソーの塗装剥げ彫刻刀
蜩やゆつくり冷むる登り窯月石幸
かなかなにひん曲げられし峠かな月岡方円
ひぐらしのこゑ透明な五秒間月待小石
蜩や部活はとうに終えたはず月夜田しー太
ひぐらしや枯れぬ供花たゞ寂しくてつくも果音
蜩の音は碧色鼠色つちのこ
かなかなや片足鳥居なお熱しつちや海郷
かなかなは月のひかりの環をなぞり津々うらら
かなかなの止めば合鍵返す頃ツナ好
一人バント練習ひぐらしの校舎坪山紘士
蜩の橋を人影伸び来たる露草うづら
ひぐらしや鉈の鞘には真田紐ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
かなかなと今日の人殺しのニュース丁鼻トゥエルブ
蜩や何処かで星が寿命終ゆてつねこ
蜩や三国志あと十頁輝由里
蜩や悪態ついていいですか天雅
蜩や母は故郷へ移住する電柱
蜩やそろばんの玉かるすぎてでんでん琴女
かなかなに着くやふるさと寝台車天童光宏
かなかなの満ちて寺小屋めいた塾天陽ゆう
かなかなや一人の母を頼みます土井あくび
日暮しの中に迷いて谷中墓地どいつ薔芭
蜩や空の部室に陽の匂ふ藤白月
蜩や隣家ひつそり越してつた遠峰熊野
かなかなの満ちては引いて奥の院とかき星
松葉杖は重し蜩鳴き止まず時まる
かなかなやまた姉だけが叱られて常磐はぜ
蜩の腹の空洞の哉哉どこにでもいる田中
蜩のこゑ耳鳴りにあらがひてとしなり
蜩や火葬場までの村の道十津川ポロ
日が暮れて蜩残る力あり土手かぼちゃん
もういぃかい蜩蜩まぁだだよどゞこ
蜩や夕陽の見えぬ谷の里となりの天然水
二十時間手術蜩まで覚ゆ戸部紅屑
夕蜩鳴くや養育費の話苫野とまや
黙祷の一分間よかなかなよ冨川友香理
見送りはかなかなの音留学す友@雪割豆
蜩の鳴いて螺髪の左巻き登盛満
蜩や肩甲骨をはがす指富山の露玉
蜩ややつと五周の百度石豊岡重翁
蜩や妻と二人のタジン鍋豚々舎休庵
ひぐらしや無縁仏の鎮もれるとんぼ
かなかなや飯盒の焦げこそぐ匙内藤清揺
蜩や従姉は浅き嘘を吐く内藤羊皐
かなかなや船岡山は殯の地中岡秀次
母さんを捜す放送夕かなかな中里凜
蜩や川で溺れた子のうわさ中嶋京子
蜩や父は湖国の七男坊中島走吟
蜩や肌にひやつと腕時計永田千春
かなかなは笑ひ聲なりあつかんべえ中原柊ニ
蜩や布の手帳は海の色中平保志
蜩や棘ある言葉聞き流し仲間英与
蜩やお隣さんは施設へと中村あつこ
蜩や夕暮色の剥がれゆく中村すじこ
かなかなやクリーニング屋も廃業中山由
蜩や幾度反す砂時計凪ゆみこ
蜩にドラム缶風呂追い焚きすなしむらなし
蜩や水切り石の消失点夏雲ブン太
喪服のままにかなかなを浴びにゆく夏椿咲く
建てつけの悪き生家や遠蜩夏埜さゆり女
蜩や戦時遺跡の防空壕夏目坦
かなかなや米研ぐ爪は欠けていて夏雨ちや
遠投のボールや蜩の中へ菜々乃あや
蜩や介護車両の行き違う名前のあるネコ
蜩\や文箱に古き通知表奈良素数
蜩やぬるめの風呂を沸かしたりにいやのる
蜩や湖に虚実の日の触れて西川由野
かなかなや供花は芯まで渇ききる西田月旦
蜩や樹齢千年目の目眩螺原トモ
蜩や沢飛石を磨く人西村小市
かなかなが陽の傷口に沁みている仁和田永
蜩や身動きならぬ手術後庭野環石
城壁に翳ひぐらしの声きれい沼宮内かほる
ひぐらしや訛の柔き県境沼沢さとみ
広島へ長崎へ蜩一樹ずつ沼野大統領
鏡台の抽斗の奥遠ひぐらしねぎみそ
ビル群にかなかなの降る日比谷かなネコ?
蜩や不在通知が二件あり猫辻みいにゃん
蜩はゆりかご退行するわたし猫ふぐ
蜩や観察用の鉢朽ちてノアノア
蜩や廊下の床はまだぬるい野井みこ
蜩や名字が違う父が来る濃厚エッグタルト
蜩に此岸彼岸のオッド・アイ野口雅也
啄木のゐさうな窓よ蜩よ野地垂木
かなかなや少年だけが持つ音波ノセミコ
蜩や返す声なき「もういいかい」乃立喰烟
ドリームボックス稼動ひぐらしのこえ野点さわ
蜩や棘ある小指搏動す野中苦泉
蜩はレのフラットで私はラ野々かおり
蜩や絵描きになりたかつた父野ばら
かなかなや器械が助く夫の鼓動野原蛍草
陽に濡れて蜩の求愛の翅登りびと
木魚止み蜩奏づドの#白庵
蜩や十六羅漢の色褪せし白雨
かなかなや親父も苦しいのだろうはぐれ杤餅
蜩の止まず吸入薬の赤橋本こはく
蜩や母の使いし椅子ひとつ馬笑
傍聴席にかなかなかなと遠く聞く長谷川鰹
蜩に耐へきれず夜を早産すはせがわ水素
蜩やそこに御座すは山の神葉月庵郁斗
火葬場の火の落とされてかなかなと葉月けゐ
枕草子読み解くかなかなの真昼はっしー
かなかなの糸を辿って行く野道八田昌代
ペン先の硬きへ蜩の潤み羽奈あかり
かなかなや灯明点る間を分かち花岡淑子
かなかなやメトロノームは動かない花弘
蜩や生まれたかつた子の微声花咲明日香
蜩や叱られにいく校長室花南天
日暮や地球の今が悲しくて花はな
かなかなやさかな煮詰むる火のかげんはなぶさあきら
蜩や痛いと言はぬ生を父英ルナ
蜩に生後三日のこぶし上ぐ花豆
蜩や浮腫のとれぬ父の足花見鳥
合唱とならず蜩の矜持はむこ
島の子指すひぐらしといふ方位かな葉村直
かなかなや四方にだれかの死後の風林山千港
かなかなや今日は家出をやめておく原水仙
かなかなを八階で聞くぬるい風原善枝
蜩や朝の湖にほそき水脈巴里乃嬬
蜩や希釈されゆくけふのわざ播磨陽子
蜩やぷつりと切れた廃線路晴田そわか
蜩や蛇口で洗う膝小僧春野ぷりん
蜩や耳遠き背を追いかける葉るみ
蜩や鰊御殿は主なき春海のたり
朝まだき枕をかなかなの波紋はんばぁぐ
火葬場に叔母と私と蜩と万里の森
かなかなや骨を拾った帰り道ピアニシモ
ひぐらしや机の中の彼のペン東田一鮎
蜩や雨戸を閉める母の腕東原桜空
かなかなやわるぐちいってしまったひ久野しろ
雑木にも言ひ分あらむ蜩よ美竹花蘭
案ずるな蜩にもよき日はあつた一石劣
蜩や空の色なるカルデラ湖日向こるり
蜩やポスター跡の白痛いひなた和佳
蜩のなんとさみしき求婚歌比々き
ひぐらしや森の湿りは透きとほりヒマラヤ杉
かなかなや仮設トイレの撤去跡ヒマラヤで平謝り
十一時間労働終の蜩向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
蜩や父の炊事のおぼつかな姫川ひすい
蜩よ空の深さを試したり日吉とみ菜
ひぐらしや朝煙立つ窯の村平井千恵子
日暮やあと一針の糸通す平井由里子
蜩の腹淋しさと共振す平岡梅
かなかなや空ぬけぬけと暮れてゆく比良田トルコ石
蜩や二つ隣も空き部屋に平野孤舟
蜩や終の棲家のてっぺんに平林政子
先生の説教かなかなの廊下平本魚水
蜩が鳴けば夕日のゆるむ螺子広木登一
蜩や生かされている不思議ふと廣重
蜩のこゑのかたちのつづら折り広瀬康
蜩や頁(ページ)なみうつ参考書廣田惣太郎
蜩やバゲット五本窯へいま広ブロ&新蕎麦@摂田屋酵道
蜩やいつまで続く手の痺れひろ夢
蜩の声したたれる峡の底風慈音
かなかなや我の煮豆を父母が食む風民
叩かるゝまで蜩を聞きゐたり深町明
蜩のやまぬ比良坂ひとりかなふくじん
かなかなを吸つて石垣は風化す福田匠翔
ひぐらしはさざ波のごとねこ看取る福ネコ
蜩や隣も仏花枯れてをり武幻琵離吾
ひぐらしや見学の最後の施設藤井かすみそう
風の尾の巻いて蜩遠ざかる藤井眞おん
観覧車は明日への車輪かなかなかな藤色葉菜
蜩の挽歌のやがて蒼き闇ふじこ
蜩鳴くや暁のおむつ替え藤咲大地
蜩の絹を焦がしたやうな声藤白真語
蜩や母のミシンに油さす藤永桂月
蜩や遺品整理は夕餉まで藤原涼
蜩や手を振る母の空元気藤本だいふく
蜩の鳴くころ鍵っ子帰るころ二見歌蓮
蜩のうわさ話は琥珀色船橋こまこ
ひぐらしやしなののみずのかれそうで舟端玉
ひぐらしや十字路のドライフラワー風友
かなかなや烏も風も淋しがる冬島直
かなかなの沁みの抜けないままでいる冬のおこじょ
かなかなや片言の恋文掲げ冬野とも
心中の湖よひぐらし重ね合ふ古瀬まさあき
蜩や墓石の赤い名をけずり古道具
蜩や炊き出し班は位置につけ風路観徒宮崎
蜩や線路は飴色に錆びて碧西里
あを透ける朝やかなかな境内にペトロア
蜩が鳴くから注射怖くないべびぽん
ひぐらしと離婚届を待つ役場べべべけべべべ
聴こえない我が耳に泣け蜩や鬼灯子
かなかなの澱にひとりや栞挿す北欧小町
蜩や湖底へ影の先は消え黒子
蜩の森に音階あつめおり星影りこ
蜩や風のかたちの雲は黄に星鴉乃雪
蜩の鳴き居る処こころと云う星田羽沖
かなかなや渡り廊下の譜面台星月彩也華
常足に神馬は蜩の奥へ星詩乃すぴか
かなかなやエンディングノートの余白星野はいかい
かなかなや拘束衣着る父やせてほしの有紀
蜩の声追ふ声や花時計甫舟
蜩よナビがこの道ゆけと言うポップアップ
蜩が扁桃腺に張りつく夜ぽて巻
山頂へ至りかなかなだけになる堀江むすぶ
蜩や肩にずしりと祖母の棺堀邦翔
蜩や暗き厨の里はるか本間美知子
途切れたる蜩待てり手酌酒前田冬水
蜩や模試会場の掛け時計茉叶
蜩や祝いにしめる雌一羽正岡丹ん
ひぐらしや灯すあかりのみな閑か町田勢
蜩や思ふやうには描けぬまま松浦貴子
かなかなと脳のあちこち点滅す松尾アガパンサス
蜩や膝の負傷は明日の糧松風花純
蜩や船板塀に海の跡松田慶一
蜩の鳴いて日暮にフェルマータまつとしきかわ
頬こけし父よとどろくかなかなよ松野蘭
蜩や昔の話はじまるぞ松本俊彦
蜩の鳴きつぐ解体の生家松本裕子
蜩が疲れに寂しさ上乗せすまほろば菊池
遠蜩身に覚えない請求書真宮マミ
蜩や鳴くほど湖のすきとおるまめばと
蜩や父の栞を見つけをりまやみこ恭
蜩や指先は消去にタッチ瑪麗
蜩や河辺で薪を拾う父毬雨水佳
蜩や工作に塗る青絵の具まりい@木ノ芽
蜩や吾子に含むる乳痒し丸山隆子
ひぐらしや徘徊の背中だきしめるまんぷく
かなかなや缶けりの声遠のけりみい
早朝の神木青き蜩や美衣珠
ひぐらしや乾ききったる雑魚のたも三浦海栗
この村でかなかなだけがすきだった三浦にゃじろう
蜩や護摩焚きあげて身の軽し澪つくし
蜩の鳴き声止まぬこぎん刺し三日月なな子
蜩やまだあどけなき小手、面、面帝菜
かなかなやデパス要らずのきのふけふ三上栞
ひぐらしや粉の薬のきゅいと鳴る水須ぽっぽ
蜩や母待つ二人静かなり水谷佳未
ひぐらしやジャム壜洗ひ瓶にする三隅涙
蜩や白楽天に村夜あり三田忠彦
蜩と一番風呂の長湯かなみちむらまりな
蜩や干上がる土へくねるホース美月舞桜
蜩のひかり一言主の杜みづちみわ
蜩の風ほとおりを清くする満る
跳ね上げてゆく蔀戸や遠ひぐらしみつれしづく
蜩や佛の胎に鋳繰り跡南方日午
蜩のかなを忘るる闇やがて看做しみず
蜩や夫をさがす妻の聲南風草々
かなかなや洞窟は今酒蔵にみなみはな
蜩や夫の戯言叱りをりみなもとさなえ
ひぐらしやびいどろのかけらはかるい美村羽奏
かなかなを聞いているだけ泣いてない宮井そら
蜩や茶碗と箸を卓袱台へ見屋桜花
蜩や帰京の荷物置く座敷みやかわけい子
蜩と米津玄師を聞く薄暮宮川令
蜩や部活終わりの上り坂梅の木千恵美
全速の白鳥ボートかなかなへ宮坂暢介
蜩や銅鐸にある流水紋みやざき白水
蜩や紙芝居屋についてゆく宮武濱女
蜩や空き家にとほす夕の風宮部里美
かなかなの満ちてゆくなり坐禅会みやま千樹
蜩や抗がん治療二クール目宮村土々
蜩や点滴針に沈む夕
ひぐらしや夫に教はる厨ごとみらんだぶぅ
蜩や疎遠の母に会うべきか三輪白米
指の棘ひとつひとつへとひぐらしミンコフスキー
蜩や父の8ミリ映写会夢雨似夜
蜩や明日とは今日の一続き麦のパパ
蜩やロジンも土へ還りゆく麦野光@いつき組広ブロ俳句部
蜩や厠の外に子を待たせ椋本望生
蜩の声を濾過する己が翅無弦奏
蜩に追われて落ちる夕日かな霧想衿
蜩の声や宇宙はこんな音睦月くらげ
蜩や血豆のにじむ逆上がり村瀬ふみや(村瀬っち)
蜩と飛べない鳥の幸はなにむらのたんぽぽ
バスケの試合終えて蜩の帰路村松登音
蜩は過去から来てるやも知れずめでかや
蜩や神木の幣ゆれそむる茂木りん
蜩や夕陽を受くる江戸切子モコ
かなかなは鍵郷愁は穴だらけ元野おぺら
蜩に秒針すこし苛立って本村なつみ
蜩の声おしなべて相聞歌もふもふ
蜩や午後の微熱の治まらず桃香
かなかなを浴びつつココアシガレット百瀬一兎
かなかなや落として気づく脆き物百瀬はな
蜩や白磁の蛇の金の傷桃園ユキチ
蜩や古井のなほもみづたたふももたもも
蜩や秘色裾野へ流れだす森毬子
かなかなやノートの隅にぱらぱら絵森海まのわ
かなかなや体育館の鍵をしめ森佳三
蜩や好きじゃない奴の留学モリコリゴリ
かなかなの声のみ残る座敷かな森茂子
蜩や無人直売製材所もりたきみ
かなかなやベンチにぽつり課題図書森中ことり
蜩や向かひの山の近づきて森の水車
蜩や燻るままの身上書杜まお実
無口のままの君がいて蜩もりやま博士
蜩や引きずる足は不慮の事故諸岡萌黄
蜩や火照る蹠で道着干すもろ智行
かなかなの呪文に産まるる朝日かなモンヌ組宮本モンヌ46
蜩や読経の声と相和して焼津昌彦庵
薄片の翡翠抱くてふ蜩よ山羊座の千賀子
蜩や乾かぬ背中包まれり矢澤瞳杏
蜩一斉今日一番の魚信野州てんまり
夕暮れに蜩遠く愛車売る安田伝助
あの頃の兄のおんぶよ蜩よ簗瀬玲子
かなかなや車椅子錆ぶ庫裡の裏八幡風花
蜩や古き蛇口の星の形山内彩月
蜩や草木塔も影を引き山河穂香
蜩や恋の捨て場所探すよう山川腎茶
哀しうて蜩ばかり聞こえけり山川たゆ
日暮やゆつくりと薄紙を剥ぐ山口絢子
かなかなに母を残してバスに乗る山口一青
ソファーで眠る父蜩は鳴く鳴く鳴くヤマコー
蜩や金属めいてゆく夕日やまさきゆみ
余の指に蜩しがみついてゐて山里うしを
顔沈めひぐらし迫る洗面器山田季聴
蜩を掃いて胃もたれうずきけり山田蚯蚓
蜩に気づいた今日の余白かなやまな未
蜩や小鍋でちゃちゃと小さき菜山野麓
蜩やイヤフォン外す停留所山本たか祥
お言葉の放送遺族の蜩山本八
蜩や城の巨石と対峙せし山本裕之
廃坑の社宅を掃いて夕蜩山本美奈友
冥界のことづて持ちて蜩は唯果
蜩や堀端に挿す竿深し柚木みゆき
身の内に棲む蜩の鳴く夜かな遊羽女
夕蜩でんちざんりようあとひとつ有野安津
蜩や火葬の終る窓の雲宥光
かなかなの森に六つの古墳ありユ綺
多分埋められるこのひぐらしの森に雪井苑生
透明な球体ひぐらしの森は雪音
かなかなや赤銅色の町を呼ぶゆすらご
蜩の声は日差を縫い来たり柚木啓
かなかなや誰にも言えぬことのあり宙美
かなかなや足踏みミシン途切れなく夢見昼顔
蜩やうんと遠くを受験する湯屋ゆうや
蜩や今日の仕事を今日終える緩木あんず
かなかなや心の書棚語りあふ陽花天
蜩や父にあり少年の耳陽光樹
日暮や別るる人と会ふ日比谷羊似妃
蜩や足場は空に届かない横縞
蜩よ竹馬の友は健やかか横田信一
蜩や木札が鍵の下足入れ横山雑煮
蜩やレンジ待つ間のひと眠り吉岡幸一
蜩や五十年目の日が暮れて吉武茂る
蜩や子規球場の延長戦吉田わさび
蜩や温泉卵待つ野沢吉藤愛里子
蜩や母の膀胱イチリットル四葉の苦労婆
湧き水の如くかなかな木霊して余田酒梨
蜩や軒を貫く芯柱よぶこどり
境内の蜩一竹の如しよみ、ちとせ
かなかなや鳴きゃあ尾張のうつけもの雷紋
蜩や口を湿らす九度三分楽和音
木造校舎教室余りかなかな来楽花生
蜩に紛れ裏木戸抜けし母らん丸
蜩や神曲の悲しみに似てリーガル海苔助
ひぐらしや剥落の痂皮かさかさと理佳おさらぎ
蜩や鎌持つ腕は軽やかにリコピン
かなかなやしみじみ腹のへる夕べ柳絮
蜩や富士より戻り金剛杖良俗倭人
蜩や幼子経を覚えたりルージュ
蜩や吊り橋渡り切らざりきルーミイ
爺さんの山どうするのかなかなかな烈稚詠
蜩の波動しみゆく盆の窪蓮花麻耶
蜩かと今日初めての己が声朗子
登頂組を待つて二時間ひぐらしとろまねす子
蜩や坂を上れば異人館わかなけん
蜩の公園いつもの椅子に手紙若和志歩
蜩や十日続けて雨降らず海神瑠珂
今日の陽は死んでしまったよかなかな渡辺香野
かなかなのなきやむかぜのやはらかさ亘航希
埋められし井戸へ蜩ひとしきり笑笑うさぎ
ひぐらしのこゑ降る御廟生身供あ・うん
蜩や永代供養にしろといふEarlyBird
かなかなや保呂酔閉店したらしいあさいふみよ
ひぐらしや御岳の山の古き宿伊藤節子
留守番のかなかな止んで見る時計伊予素数
蜩の途切れとぎれに無言館奥田早苗
蜩や経皮鎮痛消炎剤狩谷わぐう
蜩や父の柩に小さき窓竹田むべ
集中講義の画面蜩が代返智同美月
火を起こし日暮し鳴けばウヰスキー大和杜
かなかなはボーイソプラノ聖堂の森間岳夫
蜩や死にたいが枕詞の電話鳴るあいのびふう
蜩や鯛のアラ煮をまだつつくあまぐり
蜩啼く実家片付け終わらず雨戸ゆらら
ひぐらしや初産の指五本なり雨霧彦@木ノ芽
ドイツにはいないの?あの声が蜩あややD.C
古池にまだ青龍はいるか日暮在在空空
鳴き納め知らず蜩を想う植田かず子
かなかなや母並ぶ移動スーパー上本みのり
登り窯の炎蜩と競いけり海口竿富
蜩や名残の煙いとこ逝き大越総
永らへて蜩の姿忘れけり岡田明子
蜩や伯母の戦争語られりおかだ卯月
蜩や故郷廻る案内人岡田恵美子
蜩やあいりんの街赤く染む小川夏霖
蜩やいずこに流る峰の雲奥寺窈子
村歌舞伎蜩のこゑ止まりけりおこそとの
蜩や夕闇早し箱根山小田毬藻
かなかなに寝てかなかなに起きまほし落句言
海風と山風止んで蜩歌う小野ぼけろうじん
蜩や胸に手100年前の澱かいぐりかいぐり
蜩と悪しきわらべが輪唱す械冬弱虫
蜩や逢魔が時に鳴かずとも海堂一花
ぶらんこが舞えば蜩ちょいと止むかしくらゆう
茜空織るごと蜩の輪唱風薫子
雲は昇龍めきて蜩空へ如月ゆう
蜩や白虎の腹の縞の数岸本元世
かなかなのバトンを渡すやうに鳴く喜多丘一路
蜩や警策響く永平寺酒暮
蜩や体温うつるイヤーカフ木野桂樹
蜩や大の字に寝る奥座敷國吉敦子
蜩やこころ穴あく音色かな康寿
カナカナの止んで閉じたり時刻表ココヨシ
蜩や痺れも愛し腕枕粉山
ヒグラシや地軸はズレていないか桜月夜
蜩鳴く狩りをした我が猫の帰る足音幸子
蜩やかいせぬ爺の薩摩弁さち今宵
蜩や山門出るとにじむ汗薩摩じったくい
蜩や森深き地に兄戦死佐藤恒治
蜩や床几に夫の待つタオル柊二
蜩や迎えに考がやってきた秋星子
風がゆく蜩のこえのせながら昭和かぐや
蜩や今日三度目手に軟膏四郎高綱
蜩や文箱へ仕舞う宝物神宮寺るい
かなかなと「採れたて野菜」に抜ける風瑞々
蜩や白蓮歌ふ四万の湯杉浦あきけん
蜩の喋るごとくや東慶寺大康
蜩やちゃん付け呼びの従兄喜寿谷相
蜩や閉店多い温泉街田畑整
大仏の背負ひぬ山の夕蜩田村ヒロミ
蜩や日暮れを待たずひとっ風呂田村利平
蜩や寺の読経に相和せずダメ夫
かなかながかなかなをよぶかなかなと丹波らる
蜩の翅は天衣の切れ端か綱川羽音
蜩の死ややられつ子の広き手翼つばさ
蜩やさてぬか床の泥あそび苳
蜩や腹引き締まる太鼓橋トウ甘藻
黄泉通ず卑弥呼の鏡かなかなとときめき人
蜩や二軒隣の二胡の音Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
かなかなや明日は学校行こうかなどくだみ茶
蜩はおとな法師蝉はこども戸根由紀
蜩や背伸びし覗くカレー鍋中十七波
蜩や目さます頬に畳の目中嶋奈緒子
蜩や遺影の夫は微笑みてななかまど
かなかなや子は吾をめざし走り来て名計宗幸
猫逃げる夕蜩の山の中西郡うり
かなかなやひとり豆腐を買ひにけり布村柚子
かなかなの駄洒落かなしき夕べかな長谷機械児
蜩や末日に浮かぶ完ひと字畑美穂
かなかなの屍の血はまだ微熱ありてぱぷりかまめ
かなかなの奥駈道や地図を閉づ林省造
蜩へ「うまくいったよ」逆上り原田民久
蜩は城址に沁み透る晩鐘比企野朋詠
蜩や母の寝所の秘密箱樋口滑瓢
蜩や我に黄昏迫りくる樋口ひろみ
蜩をやすらぎと受く日の来たりひな扶美子
嬌声の杜よ蜩のいくさ場よ深蒸し茶
蜩と探り入れ合うしじまかな福川敏機
蜩や皮膚見透かせぬ逆さ水福田みやき
ひぐらしや空調服の柔ら音真喜王
もういいかい蜩も一緒にふりむいて町屋の日々輝
蜩や会津鉄道は浅草へ松井くろ
感情が濡れ落ちて蜩の声真冬峰
蜩も嗤っておくれ偽妊娠澪那本気子
蜩やペットカートのファン外す雅乃珠晃
夫の発作おさまりカナカナの鳴く村のあんず
かなかなや枕恋しいかくれんぼメレンゲたこ焼き
蜩や色紙に並ぶお疲れ様毛利尚人
蝉蝉蝉せみセみせミセ、蜩杜若友哉@はなばた俳句会
家出して迎へを待つ子かなかなと山本光代
蜩や母と喧嘩の泣き笑いらりっく
蜩や部活帰りの「さしすせそ」和光
墓参りこの蜩は何代目中嶋緑庵
蜩やラジオ体操最後の日ANGEL
蜩や木立に響く声哀しあいあい亭みけ子
蜩や喉を潤すいとまなく愛燦燦
蜩を四畳半へ貢ぐ野良藍田夜
網戸から蜩の声響く夕逢花菜子
蜩の鳴きていちだん静かなり青井季節
圧し潰す蜩の声小さき吾を大竹八重子
蜩や杖つく母の影長しあお山まみ子
蜩や置いてけぼりの滑り台赤尾実果
かなかなを抜けて別居の新天地愛柑
腹空いた蜩鳴くよ帰宅せよ了朗
蜩よ宿題残り四百字敬子
お守りにはムリ抜けがらの蜩秋星
蜩か野天の風呂にひとりおり空き家ままごと
今年の蜩止まぬアンコール浅葱鴨葱
蜩や介護し易き和犬をりあさきまほろ
かなかなとなかなかなかぬ蜩のあさぬま雅王
蜩や老いの身癒す湯に浸る浅野玲峰
蜩は都市へと帰る支度笛亜紗舞那
蜩や伸びし影追う童かな飛鳥井薫
蜩や薬王院の水の行あすなろの邦
蜩や川の流れとハーモニーあすなろの幸
蜩や朝な夕なの膳に聞く阿曽遊有
片付けの終わらぬ休暇ひぐらしか麻生ツナ子
ダム放流絵葉書の端にかなかなと新子熊耳
蜩や真白し紙垂の御神木渥美こぶこ
蜩の山路母郷吾を引き跡部榮喜
蜩やガラガラの羽田空港アニマル可秘跳
蜩や虚しき沙汰をびりびりに天川滴翠
蜩の声に牽かれて苔の道数多未完
蜩よ人は戦を止められぬあまどかに
蜩の声染みわたる看取りの日雨李
蜩なく夕闇の帰途おつかれさん文子
カナカナや寡黙な人の一人言あらあらかしこ
蜩の声改修の資料館あらい
蜩をエレクトーンで弾きました荒井類
どれほども蜩泣きてまだ戦あらかわすすむ
かなかなと寄り添ひくるる夕べかな荒木ゆうな
蜩や背を揃えおり夫の本蛙里
蜩や短き家出終わりけり肖草
蜩や留守居の子らのみな無口杏っ子
蜩や赤い夕陽に叫ぶ僕アンドレア・クイント
蜩や風に混ざる読経の如飯田淳子
蜩をなに鳥の声と母の問う飯田むつみ
登山バス発車メロディは蜩飯沼深生
ひぐらしの涙か甲子園の土飯沼比呂倫
ひぐらしや余り素麺茹でようかイカロス
かなかなに釣られて知らぬ小道行くいくたドロップ
かなかなや漢字ドリルはあと二行郁松松ちゃん
蜩の声まだ遠し令和かな池内ねこばあば
蜩やさてと腰上げ一人飯池田悦子
腹くちて蜩狙う童かな池田華族
蜩や切なさ募る初恋の池田炭
母置いて蜩に身を委ね帰る池ノ村路
蜩や一筆書きの風呂掃除石垣
蜩の声黄昏を染めにけり石垣葉星
ひぐらしの寂しく響く田舎道いしかわあきよ
かなかなや近づく妻の誕生日石川明
宵闇に蜩響き足早く石川公司
蜩がこだまする寺我一人石庫要
かなかなかなようやく姿見つけたり石崎京子
蜩や辿り着けない夢の路地石堂多聞
蜩や支度あらかた子らの飯石の上にもケロリン
蜩や簾に置きし命あり石原しょう
蜩も我も地球に抱かれて石本美津
蜩の声飲み込んで先へ先へ和泉明月子
かなかなや主を探しに裏の山泉恵風
山崩れ人々泣きて蜩いずみ節子
蜩の響く山の端黄泉の道伊泉不洋
かなかなも宿のもてなし下駄を履くいちご一会
蜩に今日は慰められていて無花果邪無
夫去り蜩の声隅々にいちばほうすい
ひぐらしや使われなかった旅鞄一宮ルミ
歳かさねかなかな幽かな周波数樹魔瑠
蜩の止みて静けさ増殖す一秋子
かなかながピタリ止まるや切り通し伊藤薫
過疎の郷蜩の声遠くなり伊那寛太
蜩の北窓ばかり好みたり居並小
蜩や空家となりし亡母の家井上幸子
蜩のあおる道草手をつなぐ井上鈴野
日が昇り泣けば鳴き止む蜩や井上右彩
蜩や洗濯たたむヨガマット井上れんげ
蜩やチェインストークの呼吸音猪子石ニンニン
蜩よ日暮れ早くす技ありや今八十六
日暮しや人は変われる者と知る今井みどり
棚田より流れ降り来る蜩の夕イマスノリコ
蜩や書いては破る恋の歌今乃武椪
窓開ける父の面影蜩の谷ミントティー
夕ひぐらし後姿の人を追う岩木順
蜩や在りし猫の毛窓の桟岩永桃美
蜩の声真似てみる杉林イワンモ
蜩や命全部の響きかな上田幸広
ひぐらしが鳴くを合図に窓を開け上田めぐみ
新人の退職間近ひぐらしや上野眞理
蜩の声のみ耳に陽の名残り上原まり
かなかなや財布拾わなきやよかつたうからうから
蜩やテロで亡くした友想ふうすむらさき
蜩は生あたたかい夜を呼ぶうちだまみ
宿題のはねはらいとめ蜩やうつぎゆこ
蜩の子規庵注ぐ灯かな梅尾幸雪
蜩も人肌恋し焦がれ泣き梅村沙阿弥
蜩の声におされて父帰る浦田学
蜩の暮らしのリズム祖父の家江川月丸
ガラス越し鳴く蜩の逢瀬かな越後縮緬
ひぐらしの懺悔吸い込む遠き文恵猫
友見舞う蜩の中バスを待つ榎本奈
蜩や寺の木の上森の中えみばば
一帯の蜩の音に呑まれゆき絵夢衷子
蜩や夢から醒めずに居たいだけえりいも
蜩の泣かぬスーパームーンの朝縁穐律
蜩や機関車トーマス忘れもの遠藤千草
五回コールドに蜩の慰め遠藤玲奈
蜩や臭い少なしパッカー車淡海なおあき
蜩やリアへ積込む車椅子近江菫花
蜩や透る風音ふと寂し大江戸小紋
川遊び蜩鳴いて家路かな大阪駿馬
蜩の声の乱れる焔魔堂大澤眞
蜩の公園覆う大合唱大島一声
かなかなや浴室窓の縦格子大津美
父さんが寝ていたベット蜩よ大野美波
追憶や蜩の声母想う大原妃
窓を開け蜩を背に旅支度大原雪
蜩も牛の角突き「よした」と云う大渕航
蜩や旅立あんた猫パンチ大道真波
蜩や始業の合図告げている大家港一
蜩や2本の杖に身を預け大山小袖
ひぐらしや重ね問ひする老母の背に岡井風紋
この星の天地有情の蜩や岡崎未知
休暇果てその蜩の嗤ひ聲岡崎佐紅
蜩にまどろみの夕置き手紙岡田瑛琳
しばらくは耳すませたし蜩の一声岡田宗華
蜩ひぐらし告げる者なき命日を緒方朋子
蜩を真似てはゆれるランドセル岡田ぴか
蜩は童呼び呼び森奥へ岡塚敬芳
ひぐらしと暮らしたふるさと父母眠る岡眞弓
蜩遠ざかりさあ夕餉支度岡本
蜩やほっとする声誰を呼ぶ丘るみこ
蜩やコンビニ弁当ひとり旅岡れいこ
蜩や伏して待ちたる散歩犬沖らくだ@QLD句会
蜩や膝の擦り傷「ゴハンだよ」小栗福祥
蜩もその日暮らしも今日を生くひろ子
蜩や病室ふいに森となり小沢史
古稀旅行蜩聞こゆ湯に浸かりお品まり
蜩や父の生い立ち語る母小島やよひ
蜩や土蔵は朽ちて母ひとり小田ビオラ
団地老ゆ公園も老ゆ蜩やおだむべ
蜩や父の帽子のつば浅く音のあ子
かなかなと物寂しさをアテに呑む十八番屋さつき
かなかなや横隔膜の浮き沈みおぼろ月
蜩や庭木さがせど声ばかり小山田之介
美術館出てかなかなとかなかなとかえるゑる
かはたれの蜩鳴きし駅舎かな垣岡凡才
蜩が心に棲むは少年の影夢者
カナカナに早く帰れと急かされて笠江茂子
短かきを只ひたすらに蜩唄う梶浦正子
蜩や遠くから呼ぶ母の声鹿嶌純子
蜩の声重なりて道遠し片岡明
蜩はこの老脚を笑ふなり片桐洋
蜩の声に誘われ暗がりへ葛飾シトロン
蜩や残る宿題網の中勝瀬啓衛門
ひぐらしや白Tシャツのヨレにけり叶田屋
蜩や独居の庭の誕生日金子あや女
かなかなを聞き手伝いし祖母の畑兼子さとみ
玻璃越しに蜩の声ヴェポラッブかねつき走流
蜩や花いっぱいの手水鉢カバ先生
暮なずむ夕刊バイク蜩来神谷米子
ひぐらしや野を越えてゆく鈴の音亀井汀風
蜩や宿題終わる気がしない亀子てん
蜩や傘寿の耳に届く朝亀田稇
蜩に今日の断捨離ここまでと亀山逸子
蜩や芭蕉をたどる旅に出るかもめ
蜩に柏手ひとつ杜のこゑ加山シンゴ
蜩やチェロのバラードすいこまれ川端芙弥
蜩や見送る君の動かぬ手河村静葩
蜩や死にゆくときに鳴いていたカワムラ一重
蜩や孫去るホーム能登の波岸壁の龍崎爺
蜩や口笛スキップ土手小路木口まり子
蜩が止むを知らずに家に着くきざみしそ
蜩や刻緩やかに老いの夕北川茜月
ひぐらしの鳴くに我が身帰路に着く帰宅部めんそ
蜩や朝な夕なに母偲ぶ北乃薫衣草
蜩やベンチプレスの重さ下げギックリ輪投げ
蜩に語りかけたる夕まぐれ木寺仙游
蜩や夕空弾くギターの音木下美樹枝
蜩とラヴェルのボレロ聴きにけり木村かわせみ
停車ごと蜩を聞く伯備線木村修芳
蜩や土より湧きて土に落つ木村波平
ひぐらしの鳴くよ引き篭もりの日々よQ&A
蜩や窓枠ひびく朝まだき清鱒
眠れぬ夜蜩の声より焦る霧土人
蜩一つ足はあおてん風が止む銀長だぬき
蜩よ人見知りの我住めぬ村銀髪作務衣
死んだふりひっくりかえりカナカナか久木田紀子
蜩の森戦災児枯れ木を拾う楠田草堂
蜩の今際の際の微笑かな工藤雨読
蜩の鳴きやみ後のしじまかな熊本与志朗
蜩や父の一服日の終わりぐりぐら京子
厳島届け蜩ラスト飛行栗子
蜩の声降りしきる祖父の家クリスマスローズ
獣道消えた故郷蜩や来ヶ谷雪
ゆうるりと流るる時と蜩と空流峰山
蜩や耳をつんざく街宣車愚老
蜩の鳴く庭手入す母一人黒瀬三保緑
どうせなら蜩の声待ちわびる黒猫さとみ
ひぐらしとローカル線待つ無人駅桑田栞
山路きて蜩の音や杉木立桑原和博
蜩や背をさする手のあたたかきくんちんさま
蜩や雨音越しにデッキチェア慶唯
ひぐらしや遠ざかっていく無人駅元喜@木ノ芽
軽井沢蜩のゐて猫もゐて紫雲英
かなかなと吾呼ぶ母の七回忌源氏物語
蜩のこと番頭に聞く夕の宿小池令香
蜩や腹に一物持てぬ質恋瀬川三緒
蜩にピアスのゆくえ聞いてみるコウ
鬱蒼と空一ミリに蜩や郷りん
かなかなの水や空気に似るほどに公木正
蜩や露天に浸かる昼下がり恒産恒心
蜩や猫も私も立ち止まる柑たちばな
ひぐらしや逢瀬の露の名残かな江翡
蜩や干支の御守護の鈴の鳴るこうやこう
蜩の止みてカレーの匂ひけり宏楽
日暮れひぐらし妖かしを呼び覚まし古烏さや
バス待ちに蜩報じる時刻かなこきん
子らの声去りて蜩沁む朝や越乃杏
蜩や平和のラッパ豆腐売り小杉泰文
蜩やぽつりぽつりと天気雨小園夢子
蜩や二学期初日に電車は止まるこちょすけ
蜩やカンテラ灯る露天風呂来冬邦子
蜩に背中押される帰り道後藤光秀
蜩の止みて懺悔を誘ふ闇後藤周平
会社帰り蜩の声耳洗う後藤昼間
ひと恋ひて蜩哭くや吉野山後藤方丈
蜩や恋敗れ今は一人小林共捺哉読
蜩の急くや下山のバス来る小林昇
蜩や淡い記憶の色濃くなり小林のりこ
軒先手で力尽きたか蜩や小林弥生
蜩や産医師異国と暗唱すこひつじ@QLD句会
蜩やともかく今日のつつがなくこま爺
追分のひぐらし人を誘い込み小湊八雲
蜩と彼女を連れて子は帰省こむぎ
蜩や響く声聞き散髪屋コロンのママ
別れの日じぃじの肩に蜩も西條恭子
湯上りに瀬音ひぐらし後れ髪埼玉の巫女
山奥の日帰り温泉蜩や齋藤鉄模写
蜩や保温の出来ぬ炊飯器齋藤方南
かなかなや橋の下なる棄児たちに斉藤立夏
蜩や老いの背中に沁み渡る酒井癒香
蜩のかすかなるかな青い空榮秋代
鳴かぬらし蜩楽日知らぬかな坂島魁文
ひぐらしや下駄とビーサン出る涙さかたちえこ
惨憺たる被災の様よ蜩や坂本千代子
眠れない眠れない蜩なんて聞こえないさくさく作物25
ひぐらしや木についているせみの音さくらくん
蜩の声ひびく朝母は逝く桜華姫
蜩やRock魂問いて四つに打つ桜よし榮
日暮や五章入れる吾の手記迫久鯨
ひぐらしの止みて通話の再開す笹靖子
蜩の声悲しくて夕の暮れ笹イボ太郎女
何処より蜩一声夕支度佐々木佳芳
蜩のラブコール宵は吸い込む笹乃弓
まどろみて蜩の声遠くなりさざんか
蜩や夕餉のしたく急かされる砂月みれい
蜩や母を待ちわび泣き寝入るサッサゆきまる
蜩や昔の男の背中押す佐藤しのぶ
蜩や爆音響く野外フェス佐藤俊
いたいけやデクレッシェンドの蜩佐藤浩章
蜩をBGMに僧はゆく佐藤羅人
かなかなと朝の坂道をひとりさむしん
夭折の友の命日初蜩さやじゅん
蜩の声途切れたりオスプレイ紗藍愛
ひぐらしの二文字しりとり重ねたる沢井如伽
かなかなや奥蓼科のフルコース沢胡桃
蜩や若かりし日のミュージックさわだ佳芳
蜩と突き返された論文と澤田捨楽
蜩やタイブレークで母校負け澤野敏樹
連敗の日ハム憂う蜩よ三角山子
蜩や泣き腫らし子の「おかあさん」山月
かなかなや異国の如き大使館塩沢桂子
蜩と一番星に仕舞う鍬塩の司厨長
蜩やあるがままの日過しをり塩原香子
意気地なし我を笑うかひぐらしよしかの光爺
かなかなや家路をせかす夕日背に四季彩
蜩やちょうど骨まで染みぬ音四季春茶子
蜩やカレーが香る帰り道しげとしつくし
瞑想や土の匂ひと蜩と紫檀豆蔵
君を待つ蜩鳴りし赤鳥居東雲筆鋒
かなかなやかなかなかなと今日を過ぐしぶ亭
蜩の叱責の声足を掻く字坊人造
蜩や千切りの音廚よりしぼりはf22
蜩にスイッチ押され切なくて島じい子
着ぐるみや窓開け耳に蜩の縞子勾苑
蜩やアーチどぎつい中古車店嶋田奈緒
ひぐらしや先祖みんなでかまびすし島田ユミ子
母の数珠借り蜩と経を読む清水明美
蜩に明日も晴れよと艫繋ぐ清水猿虎
蜩や忙しせはしの厨人清水容子
蜩の邪魔名を連呼選挙カー下丼月光
蜩や破れマルチに沁みる水釋北城
蜩やさざめき消えし客間にて沙那夏
かなかなやジョルジュスーラの点描画写俳亭みの
蜩や川風やさし散歩道寿松
蜩や映画館出で生に入り庄司しづく
蜩は蹴ったボールのその先に白井佐登志
蜩の声に急かされたまご焼く白井百合子
道ならぬ恋よ荒れ寺の蜩よ白猫のあくび
蜩の疑問符ステキ謎が好き真藤乙華
蜩や豆腐売りをば伴いて森牧亭遊好
終演の拍子木のごと蜩は水きんくⅡ
座禅僧岩窟閑か蜩や酔軒
雨あがり蝉の輪唱にかなかな水蜜桃
かなかなの音の消ゆる頃夫帰路へ瑞陽庵
蜩や山城の跡見た帰り杉浦真子
杣道を往けば行くほど蜩の声杉岡ライカ
蜩のまなこの先は鉄格子杉柳才
蜩のリズムに負けじ薬味切る涼風亜湖
蜩やリハビリ室の優等生鈴木秋紫
蜩や一回きりの日曜日鈴木暮戯
蜩やくるくる変わる空模様鈴子
かなかなやお迎えのチャリまだ見えず清白真冬
親知らず抜けて墓前へひぐらしや素敵な晃くん
蜩や季節の変はるひかりうけ砂山恵子
少女弾くピアノ強弱夕蜩晴好雨独
蜩に誘われ一人五合庵せいしゅう
かなかなの諷経止みて夕瀬音seki@いつき組広ブロ俳句部
蜩や白紙のままの感想文瀬戸ティーダ
蜩や儚き命夢を託す瀬野広純
蜩や雑木林の苔寒き海星葛
蜩のぴたり止まって決勝打千@いつき組広ブロ俳句部
擦りむいた膝に母を呼び蜩ZENMI
蜩に誘い出されし村の墓所惣兵衛
蜩や古里はなれ七十年そうま純香
蜩やさまよふ脳をなだめたり草夕感じ
朝の蜩大阪の街したる汗そしじみえこ
蜩やエアコンのない六甲の宿駄詩
蜩が鳴くから西に探す星高井大督
かなかなに包まれる午後の縁側高上ちやこ
くゆれども蜩の鳴き夜をおこす高瀬小唄
小田焼(おんだやき)火入れ蜩加勢してたか&ひろ
かなかなとただかなかなと鳴きにけり高橋基人
蜩の鳴けばぴんと立つ吾の膝高橋久恵
風吹いて蜩の声遠ざける高橋紀代子
蜩や僧侶の読経終はりたる高橋寅次
蜩やテレビが誘ふわが眠り高橋なつ
空欄に背中を押すは蜩か田上コウ
蜩や部活帰りの長話滝上珠加
蜩や夜通し歩いた先は湖たきるか
蜩や髀肉を喞つ瞬間(とき)のなし武田豹悟
蜩や地獄絵の前灯さるる竹八郎
シンプルにかなかながかなかな鳴いたたけろー
丘陵をくだるにつれて蜩が龍𠮷
蜩に耳澄ます宵君を待つ田鶴子
竹籠の蜩鳴かず日が沈み龍義
蜩や閑さ震う杜の道たていし隆松
かなかなと林の先のねぐらかな田中明美
「げんまん」とひぐらしの橋夕暮れて田中勲
かなかなのなかなかな音をかなでけり田中紺青
蜩や試験終了五分前田中みちよ
蜩やクラスのみんなに会いたいぞたなばたともこ
蜩に聞き耳立てて夕支度たなべ早梅
蜩の雨に打たれる石谷家谷卓生
ひぐらしや火灯す刻の早まりて谷口あき子
あの日さえひぐらし鳴いて日は暮れた谷口美奈子
明けぬれば蜩鳴いて暮れるなほ谷町百合乃
ひぐらしや母業三十年嗚呼たばたなおみ
午後六時蜩残し神社出るタマゴもたっぷりハムサンド
蜩や心空なる身に沁みる玉響海月
蜩が大樹一本我が物と田村モトエ
蜩や晩の薬味を決めかねるチームニシキゴイ太刀盗人
蜩とともに寝起きの病み上がり竹庵
蜩や雨後の境内夕日色千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
蜩や妹背の墓の通い路に千葉睦女
蜩や速報はまたミサイルかちょうさん
蜩や黄昏時に愁い鳴き司蓮風
台所蜩の声義母と聞く槻島雫
蜩や叱られてゐる二三人月城龍二
かなかなと連休最後のまどろみに月見里ふく
蜩よおやじと同じ歳になり辻瑛炎
蜩や歩のルーティン急かされて辻美佐夫
蜩の声に聴き入る宵の酒辻栄春
蜩をレクイエムとし友逝きぬ辻内美枝子
蜩や二万の溺死報届く辻野花
蜩や雨乞いの神に頼りたる辻本四季鳥
ひぐらしや夕暮れに肘笠雨連れてつついぐれちゃん
洞爺湖にて今年初めての蜩椿律
蜩や一人夕餉の豆腐買う津幡GEE
蜩や終はりし恋は土の中鶴富士
蜩やたばこ屋さんのお手伝いデイジーキャンディー
蜩の鳴く声久し街あかり手嶋錦流
蜩や落武者どもを匿ひし哲庵
蜩や遠き日の父裏山へ哲山(山田哲也)
かなかなのタクトを振るは長女なり徹光よし季
かなかなの由布院次の列車待つ寺尾当卯
蜩や庭に穴掘り墓標さす輝陽
にわか雨過ぎてひぐらし三声あり峠南門
蜩や孫が帰りて我も独り東森あけば
蜩や今日はまつすぐ帰りますとき坊
蜩や夜具に潜りし音色かな徳庵
蜩の林の庵分譲中独星
日暮の天龍美林深き空戸口のふっこ
蜩に目覚めしばらく空眺め常夏はわわ
かなかなのかすか川湯の露天風呂杼けいこ
蜩や墓に乾けるちさき生飯とはち李音
かなかなよ私はわたし一歩ずつ冨川きよこ
蜩の鎮守の鳥居片結び斗三木童
かなかなとガムシロップのもやもやと戸村友美
蜩や枝打ちのなき杉林とよ
蜩や小さき足あと浮く廊下豊橋ばあば和子
長いのは嫁の噺か蜩か鳥田政宗
蜩も息を忘れるクロスボレー内藤未来仁
谷根千の露地ひぐらしの声と行く内藤由子
蜩や一途に迫りくる響きなかかよ
また明日里の蜩空渡り中澤孝雄
蜩の季節の移り知らせなり中嶋和久
かなかなと連なる山の麓かな中島葉月
蜩の峡の瀬音を押し流す中島圭子
かなかなの這ひて舗道をよぎりゆく中嶋敏子
蜩に伸びる影の長さ知る永友ミィラ
蜩や鎮守の森の長い影中なかやん
蜩が寄り添う声や無言館中村こゆき
妻逝きし宙にかなかな止めどなくなかむら凧人
蜩や法事で集う子らの声中村雪之丞
蜩の森影さわぎ日が暮れる流れ星
言論弾圧蜩が喘いでる新蕎麦句会・凪太
断捨離に蜩の声かん高く那須のお漬物
寂しさはかなかなかなと空へ溶け夏草はむ
全山を占む蜩に詰め寄られ夏湖乃
蜩やどこへ向かわん次の道夏空なみ
陽性のわれ蜩の声悲し夏野あおのり
お茶だけの恋ひぐらしとともに去りななお
木漏れ日の穴は蜩空けにけり⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
ミルク飲めず残されて蜩鳴く浪速の蟹造
まだ空の蒼さを知らぬ蜩よ爲田一九
蜩が鳴けばあきらめまた明日南全星びぼ
蜩やオーガンジーを身に纏いにえ茉莉花
蜩やレコードエンドの繰り返し西尾至雲
蜩に明日の命の在りか問ふ西尾照常
蜩や露天風呂まで三十分二十八
蜩や暦通りは少数派二城ひかる
蜩やならびてなくにからからと西脇美香
蜩のまばらな拍手退院す新田ダミアナ
蜩や一本見つけてパチパチジュッねがみともみ
山深き蒼き蜩慰霊の碑猫またぎ早弓
蜩や問題集は最終項根々雅水
蜩や公園に来て一人居る埜水
鎮守の森よ蜩の声覆う野中泰風
かなかなに我望郷の念止まずのの倶楽部
蜩の羽の向こうに葉が光る野原一草
蜩やボール蹴りけりまた明日則本久江
蜩やボロボロ剥げる化けの皮白山一花
蜩や開店前の百貨店はくたい
蜩や鳴く毎に空高くなりはごろも856
かなかなの木の下通り郷里去る橋野虎空
蜩のベースに読経重なりて橋本有太津
かなかなと鳴く声を聞く病処かな蓮見玲
蜩や癌告知の帰路妻と聞く長谷島弘安
蜩や包丁止めて聞きをリぬ蜂鳥子
蜩や遺骨となりし父抱く初野文子
かなかなをもっと聞きたく窓開ける花岡浩美
蜩や土産ばなしも聞き終へて花咲めだ香
喧騒の外に蜩けふも生く英凡水
かなかなの彼方に雲と祖母のゑみ花和音
蜩や短調を鳴くクラヴィーヤはのん
蜩や反戦の声上げにけり羽馬愚朗
午後の居間がらんと我と蜩と浜けい
人生を下る坂道蜩や浜友輔
蜩や出席ハンコ貰う朝原島ちび助
蜩やその声合図に風呂沸かす原野乃衣
空を切るかなかなの声茜空ぱらん
日落ちて堀の奥よりひぐらしの声haru.k
蜩や釣りびと魚を提げ帰る春あおい
鎌倉を眼下に蜩の夕べharu_sumomo
蜩や小さなパーの手の合掌晴菜ひろ
墓碑の香蜩の鈴交じりゆくはるるん1号
かなかなの歌よあの子の魂よ半ズボンおじいさん
蜩よ吾子求むるは十連ガチャパンドラみかん
蜩のオノマトペなる重力波HNKAGA
蜩の紅のそら風呂上がり榛名ピグモン
蜩やすぎゆくときを教えくれピアノおじさん
蜩や季節は移り去る心ひーちゃんw
蜩が鳴く夕暮れや田舎道東野萌雪
蜩や僧侶静々閉門す東の山
古民家に若人住むと蜩や東山たかこ
蜩や背の鈴連れて山くだる匹田小春花
蜩やとつぷり更けるけふに啼きひぐちいちおう(一応)
蜩を合図に施錠飼育小屋火車キッチンカー
蜩の羽翳る空に黄金色翡翠詩憶
蜩と原稿用紙千の文字ひすい風香
蜩の幽邃に鳴き初むる朝ひでやん
ひぐらしの声は遠くになりにけり英行
見つけたと子ども蜩逃げろ逃げろひと粒の種
蜩や夢と現の真ん中で妃可
蜩の声を聞きつつ日記書きひめりんご
蜩や被爆柳の揺れと鳴く平岡花泉
かなかなや夕餉を急かす吾子四人平松一
かなかなやまだ鳴いてない白き空平本文
日暮しや急ぐママチャリ託児所へ比良山
旅の膳寝転んで待つ蜩と久保田由利子
蜩や畳しっとり谷底の宿昼寝
来し方の幻影の如遠ひぐらし浩子赤城おろし
かなかなや越えられぬ妣の器用さを広島立葵
コミュバスや蜩なきてやってくる琵琶京子
蜩やその日暮らしよ我もまた琵琶湖のおばさん
蜩や廃業決めた海の家フージー
耳鳴りに蜩の来て夕支度風泉
はかなげな蜩の声世の無常FUFU
背景をモノクロにして蜩鳴く福井桔梗
雨後に際立つ蜩と交信す福前彩芽
沈香の仏間に沁みて蜩や福弓
蜩やもう充分に生きたかなふくろう悠々
蜩やテント張り終え吊りランプ藤丘ひな子
蜩の声をくぐりてゆくひと日藤川雅子
蜩や無言で二人山下りる伏見レッサーレッサー
妻逝きて蜩の鳴く夕暮れよ藤原訓子
喪服吊る実家の鴨居ひぐらしや古川しあん
蜩やマジックアワー独り占め古澤久良
蜩や重ねた日々も瞬く間ヘッドホン
蜩や定年間近どう生きる鳳凰美蓮
鍬洗う背に蜩の声ひびき望月
蜩やスーパームーン重なりて房総とらママ
蜩よ不明者の安否知らせよほうちゃん
かなかな~あわせ息はくおもひはく墨純
蜩の声浮き沈むジャズ喫茶ほこ
ひぐらしの声の形に時を知り星勲
蜩も我の耳奥に住まいおり星雅綺羅璃
蜩や朽ちた柄杓の掛かる寺牡丹ゆり
蜩や目覚めて独り生きている堀卓
蜩よ孫らを連れて行かないで堀籠美雪
庭の蜩とテレビの法師蝉堀隼人
ひぐらしや買い物中の妻のTELポンタロウ
高原の蜩周波数高く凡々
かなかなや朝に夕べにとつおいつ凡狸子
蜩や夕餉支度の灯を点す前田龍志
蜩や仕上げに味噌を入れるだけまこ@いつき組広ブロ俳句部
カナカナと熱波増幅通勤路眞熊
拝殿に篝火闇からカナカナ正男が四季
かなかなのなかなか鳴かぬ鐘の中雅蔵
蜩や増殖し続けるアプリ眞さ野
十六分音符の調べかなかなと増山銀桜
蜩や爺も宿題ありと言う松井酔呆
蜩をララバイにしてうたた寝や松井貴代
蜩の鳴いて輩旅に立つ松岡玲子
蜩に赤子何故泣く貰い乳松尾祇敲
ひぐらしや古里有りて楽と聞き松尾美郷
ひぐらしや空澄むように拡がれり松沢ふじ
蜩や住めば真秀ろば鄙なれど松平武史
蜩やツァラーストラは語りだす松高法彦
立ち枯れの木に蜩の苦の余韻まっちゃこ良々
蜩やつれづれ託つすさび書松本文月
蜩や遠くに聞きて飯支度松本牧子
蜩を愛する吾は引きこもりまどけい
ひぐらしや忘れたことば思い出すmayu
かなかなやただぼんやりと今日も過ぎ眞里
蜩や冷水しみる歯の痛み真理庵
カナカナカナ実家へ続く箱根路(みち)まる恵
集まれば鈴振るやうに蜩はまるにの子
何となく悲しげに鳴く蜩は三浦ゆりこ
蜩や断捨離未だ捗らず三木崇弘
影ふたつ蜩と鼓動BGM美乎梛
かなかなやもうお帰りと森の鈴(りん)三茶F
蜩やどきどきしつつ投函す三崎扁舟
蜩やトンネルの先の光へ三島瀬波
蜩やけふの手当と帰る道水越千里
蜩や宿題残す日曜日MR.KIKYO
蜩やヤッケの湿り冷気帯び巳智みちる
シロフォンのやうなかなかなひとりごと満生あをね
蜩の美しき声に歩をとめぬ光月野うさぎ
ひぐらしを遠くに聞いて父が逝くミツの会
かなかな齧り付くVUCAの時代にミテイナリコ
裏山の蜩雨を誘いおり水上ルイボス茶
胸に沁むカナカナの声山閑か皆川徳翁
蜩や日々の暮らしは苦しけり皆川知洋
蜩や下校のチャイム子ら駆ける湊かずゆき
賑わいし青石畳の蜩よみのり甘子
君のいた日々よ蜩もう鳴くな都乃あざみ
鳴かないかなかなコーヒーはアイスで都忘れの音
蜩や姿見たさに忍び足美山つぐみ
蜩や夕餉仕度の窓に降る宮村寿摩子
蜩や儚き声は空高くむねあかどり
飛び立ちて蜩明日もここで会おう村上の百合女
かなかなや夜半の静かな鉄工所紫小寿々
カタカタにかなかな混ざり時を見る村先ときの介
蜩の声は祖の地に繋がりぬ室依子
蜩や友の手紙を三度読み暝想華
蜩や今寝た赤児起こすなよ恵のママ
かなかなや喪服に汗にまといつき目黒智子
日暮やひざのいたみと同調し目黒千代惠
かなかなと宿の下駄の音夫婦旅望月ゆう
仰向けの蜩脚を閉じてゐて望月朔
蜩や秋田を捨ててもう二年望月未知男
蜩の命果て降る手を合わせ元村幸月
われひとり蜩まねるわれひとり本山喜喜
蜩や日々に異なる顔を見せ樅山楓
かなかなや追憶の波押し寄せてmomo
蜩や夫事故起こす夕まぐれ百瀬つきか
蜩や漢提げたるマイバッグ森佳月
蜩の壱万匹の無言かなもりさわ
多元宇宙へ蜩の木に回りこむ森太郎
独りです蜩今日も鳴いてます杜乃しずか
蜩の響き静とし瞼閉じ森茉那
かなかなに覚めればひとり庭灯籠八重葉
蜩や何故腹は減る横臥の身八木羊
蜩に終わり告げられ帰途の道八木実
蜩の泣き声寂し母逝きぬ矢車草
残響に酔う暇なく鳴く蜩安元進太郎
蜩や今年は母がいないのに痩女
引き出しの醤油跡ひぐらしの音簗瀬美嘉
蜩や今日も一日終わったやのかよこ
夕暮れに蜩の声吸い込まれ山内泉
かなかなや中まで聞こゆ映画館山口笑骨
蜩は夜明けを待たじ逝きにけり山口雀昭
蜩やおでこに傷痕二センチ山口たまみ
ひぐらしはひたなきになく風止まん山口愛
蜩や風が余命を慈しむ山崎かよ
蜩澄み夕餉の仕度終える妻山崎鈴子
蜩や右脳に残る幼き日山育ち
蜩や病院付き添ふ私の旅山田啓子
蜩や階段に堕つ腹を見た哲山(山田哲也)
蜩や塾行く前に弾くピアノやまだ童子
蜩や腹震わせる杉の陰山田はち
蜩や自転車で切る風の先山田はつみ
ひぐらしや遠く幼き森の道山田文妙
三年ぶりの露天風呂の蜩山彦一水
蜩の声染み入るや老いの胸山辺道児
蜩や待合室は空になる山本康
蜩や空いてる席は4人掛けやまやま
ウクライナウクライナと鳴く蜩や山吉白米
蜩や家に帰らぬ子が二人ヤン子
番が居ない蜩がかなかなと泣いている雪兎
蜩や会いたき人へ片便り雪子
蜩やあの日の着物骨と化す柚子こしょう
日暮らしやお腹をだして寝る子どもゆづさくら
かなかなや忘れし恋を思い出し宙美
今日も無事ただそれだけが蜩よ由美かおる
ひぐらしや燻る紫炎のまた独りユリノイロ
蜩やバス待つ君は饒舌にゆりのゆき
蜩や百万馬力の風そよぐゆるランナー
蜩の鳴き糸垂れる朝の川陽介山
閉店貼り座り込む我日暮や夜香
かなかなにノイズキャンセルされてをり横浜J子
蜩の鳴かない街に住んでをり横山くみ
かなかなや沖縄からの星の砂吉川拓真
ひぐらしの声に合わせて墓掃除よしぎわへい
蜩や来ぬ人を待つ墓ありて吉田蝸牛
蜩やまゆ毛も消えてああ八十路よしだばあば
かなかなや娘たこ焼きクルクルと吉野川
蜩や我が行いに疑問形吉満乃苗
蜩に応援されて出来し夕餉Yoshimin空
終齢の蜩おおふ白き玉流流
蜩の声ひそまりて立つ夕べ鈴玲
浜風やかなかな連れに部屋の窓麗詩
蜩や子どもでさえもしみじみと連雀
蜩の歓声空へ甲子園わきのっぽ
夕暮れの蜩の声カレーの香わたなべすずしろ
蜩や砂場に小さき靴の跡渡邉花
蜩や染む靴擦れの迷い道わたなべいびぃ
蜩や揃ひ息継ぎまた唱和渡辺陽子
今朝もまた正しく鳴くよかなかなと渡邉わかな
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
●俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。
●俳句の正しい表記とは?
- 蜩や 雲真っ二つの お箸置きギザギザ仮面
- 蜩の音 言葉なき夕の 寂しさよ盆暮れ正ガッツ
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●季重なり
- 蜩に急かされている夏休み石井秀一
- 蜩が鳴くもう終わる夏休み草道久幸
- 蜩やブルグミュラーだけの夏さわこ
- ひぐらしの鳴く声消ゆる夏休み瀬馬田真佐一郎
- 蜩と少年時代夏終わる富田涯現
- 都心にてひぐらし合唱盛夏かなひろいこころ
- ひぐらしや長い夏休みが終わるふくいく
- 朝明の蜩のこゑ秋の音ぼくのはね
- 夕空に蜩ひびく残暑かな桧扇さと子
- 蜩と暑さを凌ぐ中継点梅鶏
- 蜩や避暑地帰りに聞く声よ大本千恵子
- 蜩や涼の幕間つなぐ鳴きののぴぃ
- 蜩の鳴き声渡る青田かな珠草
- 蜩の声湧き上がる入道雲竹下明宏
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「ひぐらし」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●兼題とは
- 涼を喰う赤い西瓜の種を取り力丸太郎
- 喜びと福をもたらす鯛御膳お寺なでしこ
- 夕暮れや 一人さみしく 暮れていく谷川房雄
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「蜩」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●魚偏?
- 鯛こうてレシピ定まぬ秋の夕坂田雪華
うっかり思い込んでしまったか……。
●これはアニメのタイトル?
- 『ひぐらしの鳴く頃に』観る午前四時渋井丸タクオ
小説やアニメのタイトルになると、季語としての鮮度が落ちる場合があります。
●「蝉」の一種ではあるが
- 仰向けの蝉掃き取ればぢぢと鳴く小山秀行
- 微睡みに沈みゆくなり蝉時雨陽
- 鳴かぬせみ手の平ぬくもりに晩夏川辺のひまわり
「蜩」と「蝉」は、それぞれ独立した季語として歳時記に載っています。ちなみに、「蜩」は秋の季語。「蝉」は夏の季語です。
お待たせしました!8月「蜩」の結果発表でございます。今月も夏井先生のアドバイスは必読です。蜩は鳴き声こそなじみ深いですが、他の蝉とどう区別して詠むものなのか……と皆さんの投句を興味深く拝読しました。10月「後の月」も奮ってご応募ください!