夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
9月の審査結果発表
兼題「石榴」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
あちらからはこちらが邪教石榴の実
元野おぺら
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夏井いつき先生より
ペルシア辺りの原産地からヨーロッパや中国へ広まっていったとされる石榴榴は、各宗教の神話にもでてくるほど、古代から食用されてきた果実です。
一読、昨今の社会情勢を言い得ている一句だと、と目にとまりました。信仰の自由は守られるべき当然の権利ですが、それが紛争の引き金になってくると、世界は混迷を極めていきます。どちらもが、自分たちこそ正しい信仰を持っていると主張し合うのですから。「あちらからはこちらが邪教」という言葉は、事実でありつつ、分かり合おうとしない人類の永遠の呪文のようにも聞こえます。
信仰のみならず、人々の分断が進んでいる世界。神々の代々から生き残ってきた「石榴の実」は、そんな人類をケラケラと嗤うかのように、赤い種をこぼします。
実石榴やイラン国旗に剣と月
沼野大統領
「イラン国旗」は、緑・白・赤と三分割された真ん中、白の中央部に一本の剣と四つの三日月があしらわれています。「実石榴」と「イラン国旗」、モノとモノとのストレートな取り合わせですが、深い歴史が背後にぬっと立ち上がってくるかのような作品。
セザンヌのザクロのやうな石榴もぐ
遠峰熊野
美術の教科書で見たことのある『ザクロと洋梨のあるショウガ壺』を思い出しました。赤というよりはオレンジがかった絵の「ザクロ」に対して、自分が捥いでいる実物は「石榴」。表記の上での工夫が、句想を支えています。
地母神の口腥し石榴食ぶ
葦屋蛙城
「地母神」とは「ちぼしん」「じぼしん」と読み、大地の生命力や生産力が神格化されたもの。その女神に対して「口腥し」とはなんとリアルな感知でしょう。食べる度に、その幻想を生々しくさせるのが「石榴」という果実の本質なのでしょう。
火竜でも生まれるかしら石榴買う
弥栄弐庫
「石榴」の独特な赤、粒粒が見え隠れする割れ目。見ていると確かに、何かが「生まれる」のかもと思わせます。「火竜でも生まれるかしら」という想像の楽しさ。「買う」の一語も賑やかな市場を連想させて効果的です。
踏み潰す石榴ざくざくロンリネス
相生三楽
今回の投句の中には、「石榴」と「無花果」が混乱している? と思わせるものもあったのですが、この中七「ざくざく」は明らかに「石榴」ですね。「石榴ざくざく」と韻を踏み「ロンリネス」へと展開する調べが、若き日の感傷に触れてくるかのようで。
酸っぱさと痛さは似てる石榴もぐアンサトウ
実石榴や卵子貯めねば子は産めぬ赤尾双葉
わたくしは優しき柘榴剥いてみよ足立智美
生ぬるき石榴はヒトになる途中綾竹あんどれ
実柘榴やドグラマグラが終わらない綾竹ろびん
石榴の実僕の内耳が膿んでいる東京堕天使
貴人ワタクシ笑ひて石榴買ひ落すいかちゃん
石榴剥く太陽丘が生ぬるいイサク
ゐないよりゐるのしづけさ石榴食ふたけろー
潰される柘榴神などいないんだ半熟かさぶた
銃創を譬ふ軍医の指す石榴HNKAGA
罪状は石榴を美しく食べた広瀬康
讃美歌を歌うな石榴食う口でべびぽん
石榴爆ぜるや地球儀にソ連の名RUSTY=HISOKA
石榴笑ふペルーの木乃伊叫びをり大久保加州
石榴囓る粒のたいさう賑やかで北村崇雄
柘榴食べ秘密共有してをりぬEarlyBird
石榴あり生家はここにあったんだ相沢薫
手のひらに日の透けている柘榴かな愛燦燦
石榴酸い母はぼくより兄が好き青井えのこ
本閉じて入日の窓の柘榴かな青井晴空
石榴ざくろ耳の形はきれいなの青居舞
実柘榴やはなから駄目な戀だった蒼空蒼子
柘榴が弾けて旧友の馴れ馴れしさ青空豆千代
裸婦像に石榴ぶつけてくるなんて青田奈央
「山門不幸」の庭爆ぜる柘榴よ青野すみれ
嘘つきの吾を褒めそやし石榴食うあおのめ
火にくべて柘榴の皮の悶えかな蒼鳩薫
喧騒に柘榴はじけて鄙の空青松紫雲英
口づけの乾く石榴の実をまわせ青水桃々(俳句迷子の会)
竹林も家もなくなり石榴垂る赤尾てるぐ
石榴爆ず脳に萎縮の兆しありあかねぺん銀
太陽の最期石榴の爆ぜ崩れ赤富士マニア
実石榴や村の人なら埋めました赤馬福助
柘榴より淋しい音の韻きけり赤間学
実石榴や欲を煮詰めた色ざらり赤目作
傷深き地球の上の柘榴かな赤尾実果
窯たきの火入れの祈願石榴の実愛柑
なぐり書きの「私有地」ぱっかんと石榴明惟久里
柘榴の食べ方むづかし赤いつぶつぶ聰子
木炭の詰まりし爪や石榴食ふ空地ヶ有
黄昏の色を深くし石榴の実あきちゃんはようせい
鬼の首飾りのごとき大柘榴秋野茜
実石榴やお前のいない世界ここ秋星子
柘榴もぐ隣家の嫁の白い指空き家ままごと
割れ目から宇宙が見える石榴かな芥茶古美
覗かれる事にも慣れし割れ柘榴あくび指南
牝の目で割れた柘榴を差し出され淺井翠
夕日をひとつずつ詰め込んだ石榴朝雲列
虐待のニュースや石榴生のまま朝方静流
9条を写す課題や石榴爆ず朝霧さら
夢日記書き終へ石榴ぱつくりと明後日めぐみ
核デブリざくざく石榴弾けさうあさのとびら
みづに浮くざくろ沈んでゐる石榴芦幸
柘榴の実今は心底笑えないあじさい卓
神々の愛した柘榴超酸っぱあすなろの邦
石榴苦したくさん嘘をついたから藍創千悠子
実石榴や党首決定二秒前あたなごっち
石榴熟るやつの笑顔は嘘くさいat花結い
家系図に鬼の文字あり柘榴の実あなうさぎ
子の哀れ柘榴に嘘は通じずに我孫子もふもふ
ピアソラの破調弾けり石榴の実我孫婆
泪して晴れ晴れしたる石榴かな阿部八富利
石榴爆ぜ上目づかひの鴉かな天風月日
裂け柘榴ウソつく夫の耳動くあまぐり
魂を吸い取るか石榴ぱっくり雨戸ゆらら
庭の木の石榴実りて仲人来天鳥そら
石榴熟れゆく吃逆の治まらずあまぶー
石榴噛む君と太陽八雲立つ天海楓
ぼろぼろとほぐされ石榴転生すあみま
二冊目はアガサ深夜に割る石榴雨乙女
お日様と雨で満タン石榴爆ず雨李
太陽の子であり孫である柘榴あらい
リンパ液吸いたるやうに石榴喰むあらかわすすむ
石榴爆ぜ宙の高さに負けたのか在在空空
鬼の子とお手玉遊び柘榴かな安春
伐採の柘榴の鮮血見えぬかな杏っ子
シャンデリアゆらり石榴とカルヴァドス飯塚煮込
腹の業はじけて赫き石榴かな飯沼深生
かごめかごめうしろで石榴喰ふはだれ飯村祐知子
柘榴の実時に命は軽すぎる家守らびすけ
絵仏師の炎の贄や柘榴爆ず五十嵐真人
石榴食む女あられもなき口に猪狩鳳保
死ぬ勇気無いから生きる石榴割るいくたドロップ
いじめたき石榴きゆむきゆむ爆発す生野薫
鬱憤の溜まるはらわた石榴の実郁松松ちゃん
見られごろなる実柘榴の割れ具合池内ときこ
細胞のひとつはがしてざくろ剥く池田悦子
口開けし柘榴や割れるぞ割れるぞと池田桐人
肝癌のごとく石榴の肥立ちをり池之端モルト
冥界へ縛る柘榴の実の四粒伊沢華純
つかれた脚じつとじつと見石榴ぐしゃ石井真由美
ざくろ爆ず嘘の塊爆ずごとく石塚碧葉
柘榴裂く言霊てふは恐ろしい石塚彩楓
駱駝らに揺られてきたか石榴裂く石堂多分
石榴割る一つ溢れる吾の昨日石原しょう
病室を出て泣く人のあり柘榴の実石原由女
胎内の赫の記憶や柘榴食む泉晶子
星座表真似て置きたる石榴の実和泉攷
人肉を喰うな石榴割れてゐるいずみ令香
夜半一人かたき石榴の種をはく遺跡納期
マン・レイの余韻に石榴爆ぜにけり石上あまね
実柘榴や父に扶けの言葉なしいその松茸
ばりばりと割つて石榴のガレ場めく板柿せっか
口笛のかたちで柘榴吸って吐くいたまき芯
石榴の実ぎしぎしと鳴る百の赤一井かおり
聖母子の手と手に柘榴裂けたまま市川りす
庭の朝はクレッシェンド石榴の実市原為参
若き肉体の発露柘榴赤しいつかある日
企みのもろもろ実石榴赤黒き一久恵
秘め事を枝から嗤う柘榴かな一秋子
実石榴や全て晒してこそ大人一愼
石榴ポロポロ指にたましひのかほり一杯狸
いままさに割れんと笑ふ柘榴かな伊都
石榴酸し職歴欄のがらんだう伊藤映雪
石榴割るためらひ傷の残れる手伊藤恵美
夜の花鋪店番は歯をむく柘榴伊藤順女
マシンガン充填された柘榴の種伊藤テト
実柘榴の密吾の胎の虚伊藤小熊猫
人体の真赤なところ柘榴の実糸川ラッコ
夜を吸ふひやりと重き石榴かないとへん製作所
カウベルや爆ぜる柘榴のゆうらゆら伊ナイトあさか
人ごみのユダ虚ろなり裂け石榴伊奈川富真乃
とても割れぬ叱り過ぎたる夜の石榴稲畑とりこ
人類の月に立った日石榴割る居並小
すぐ折れてしまう手の爪柘榴割る井上鈴野
この恋を終えると決める石榴割る井納蒼求
拳より心臓は大きめ石榴井原昇
実石榴や遠い記憶の落下点いまいみどり
十字架のやうな切り込み石榴割る伊予吟会宵嵐
見つかって鬼と柘榴を跨ぎ出る伊予素数
石榴ほおばる冥界の落とし穴伊代ちゃんの娘2
柘榴まだ私の中にある悪夢いりこのにゃらつめ
石榴喰む冥界の日の始まりか岩清水彩香
別れたとまた姉の言ふ石榴かな磐田小
石榴熟れ裂かれ穿られ吐(ほ)きだされ岩森春宇
青春を確かめるため割る石榴イワンモ
逃げて逃げて逃げる夢ざくろ熟れるインドアみどり
エルドラド笑う漢は石榴食むうえともこ
星々のしづくぎつしり石榴かな上原淳子
別荘の実柘榴痩せてゆくばかり鵜飼ままり
まだちゃんと泣けない夜や柘榴爆ずうからうから
考よまだ母連れてくな石榴裂く宇佐美好子
石榴もぐ恋は呪いのごとき色うすい木蓮
フラスコへ管から噴火して石榴うた歌妙
傾ぐ家の丑寅戌亥に柘榴の実内本惠美子
昼前のドアホン石榴と回覧板うつぎゆこ
いつまでも割れぬ柘榴や三回忌宇都宮駿介
その一塊を母は離さず石榴の地靫草子
掌に石榴泪は乾かない卯之町空
石榴裂け朝の光を屈折す海口竿富
実石榴のたわわに揺れて独りかな海野青
子の泣きて寝てまた泣きて石榴爆ずうみのすな
子を宿す子宮の震え石榴の実梅里和代
司書室に忍ばせておく柘榴かなうめやえのきだけ
感傷や石榴は腹にたまらない浦野紗知
石榴熟す抗がん剤はひとつ減り麗し
私の中の饐える柘榴が凄む吽田のう
死ぬ夢をみたのカリリと柘榴噛む江川月丸
石榴お食べとおじさんの薄い笑み江口朔太郎
楽園を追放された手の柘榴蝦夷野ごうがしゃ
実石榴や火山性微動増加中蝦夷やなぎ
柘榴揺れ苗字残らぬ家系かな絵十
石榴喰む身の置きどころ無き夕べ江戸きりこ
ぱっくりと口開け石榴の覚悟なりえのき絵巻
この人と捻じれ転がる日々柘榴榎美紗
やつちやんの逝つて十年石榴の実朶美子
言っては駄目言わぬが楽と石榴粒絵夢衷子
耐えかねて壁に擲つ柘榴の実えらいぞ、はるかちゃん!
密やかや石榴の罅のなかの色えりべり
フェラーリの出庫遮る石榴かな円錐角膜
実石榴や紅毛碧眼の媼旺上林加
素描画に微かな歪み割柘榴近江菫花
臨月の出臍や石榴熟す音おおい芙南
傘閉ぢて石榴見上げる初潮の日大岩摩利
ジャンプで獲った柘榴の旨い訳大江戸小紋
無伴奏柘榴搾りて耳澄ます大越総
日当たりの過ぎて褪せたる石榴かな大塚恵美子
血縁を切りたくてなお喰う柘榴大野美波
柘榴食うこの世あの世と行き来して大道真波
俎板に無限の傷や石榴の実大和田美信
柘榴食み罪深き舌悔ひにけり岡井稀音
石榴のくち曙色にひらく空おかげでさんぽ
欲望の指が穿る柘榴かな可笑式
柘榴食むひとり取り残されてゐるおかだ卯月
さあここへと先に腰掛け石榴割る岡田瑛琳
今年は切ると言った石榴の実のたわわ岡田きなこ
手のひらに心の重さ石榴もぐ岡田ひろ子
柘榴爆ぜ聖書に赤きヘブライ語岡田雅喜
石榴ぼろぼろ実家に姥を捨ててきた男鹿中熊兎
石榴手に狼少女育ったか岡村理江
実ざくろや内緒で祈る子だくさんオカメインコ
教卓の殴り書と石榴の実小川さゆみ
君の癖数へ石榴の実を食めり小川しめじ
胸を噛む火宅の過去や柘榴噛む小川天鵲
ていねいに暮らすのやめた石榴割る小川野雪兎
芯の紅こぼして石榴かるくなる小川都
老人が怒る石榴の下の吾をおきいふ
手の平にどくんどくんと石榴の実オキザリス
柘榴裂く吾を裂きすすむ内視鏡沖庭乃剛也
針千本丸のみしたい日の石榴荻原湧
癇癪の爆ぜて石榴のおさまらぬおこそとの
生者死者ざくりと分かつ柘榴かな十猪
寧ろ実に毒ありさうな柘榴かな小島やよひ
手造りの祠の前の柘榴かな小田ビオラ
風に寂ぶ石榴夕日がざらつきぬおだむべ
ひとさらいくるよ柘榴の実わらうよ越智空子
実石榴や息子が口を閉じた夜おでめ
冥界は斯くの如しか石榴割る音羽凜
昨夜まで黙秘の柘榴落つるなり御成山
「武蔵」積む中学生や石榴食うぉ村椅子(志村肇)
石榴割れ癌細胞の零れ出づ折口一大
地に臥した柘榴飛び交う星の死よ械冬弱虫
実石榴や煙草の男何を待つ海峯企鵝
記憶てふ臓器ありせば石榴の実火炎幸彦
ろうそくは未だ燃えている柘榴落つ角志賀
石榴割るフェリーの時間もうすぐよ風花美絵
日曜が嫌ひで好きで柘榴割る霞山旅
義母の庭石榴の割れ目から本音かしくらゆう
断層の上に原発石榴熟る樫の木
まだ曇天続きまだ割れぬ石榴鹿嶌純子
吾よりも石榴爆発もう赦す華胥醒子
通夜式のちいさき灯り石榴の実梶原菫
民草の無力石もて石榴打つ亀田荒太
石榴喰う独り更年期の火照り風薫子
末つ子の理屈ほろほろ石榴撫づ片岡六子
じやんけんに勝つて石榴のひと齧り加田紗智
石榴爆ぜ清王朝は崩壊す帷子砂舟
頓服を手放せなくて石榴かなひだまりえりか
石榴落つ青き衣のマリア像桂子涼子
友だちになる直前の実ざくろよ桂もふもふ
溜め込んだ悋気渋みの増す石榴桂葉子
肺胞はざくろのかたち石榴吸ふ月東ソコラ
懺悔終へ朝清々し石榴の実加藤水玉
柘榴噛む君に虚言は似合わない加藤麗未
石榴裂くめりめりと裂く明日時効かときち
腹の子が求めし柘榴もらい受け金澤孝子
讃美歌の透き通る朝ザクロの実叶田屋
外科医めくナイフ捌きや石榴の実仮名鶫
石榴爆づ墓誌に赤字の吾が名あり金子泰山
実石榴に隠しおほせぬ野心かな釜眞手打ち蕎麦
柘榴裂く踏み絵踏まんとその信者花蜜伊ゆ
割れ石榴奔放な血は妹が継ぎ神長誉夫
実石榴の骨吐くごとく種を吐く紙谷杳子
我老いし古里柘榴はちきれる亀井汀風
石榴食む子宮喪失せり朝よ 亀岡恵夢
二冊目の十年日記石榴食む亀子てん
テーブルに石榴今は発火寸前亀山逸子
石榴割る月で数へて母を看て亀山酔田
実石榴や鞄一つの旅終わる鴨の里
石榴食うシルクロードの空の果てかもめ
どす黒い石榴胃に穴開いてたで花紋
柘榴屠る昼また乳房張りくる加裕子
柘榴熟れ床のこぼるる白き嘘刈屋まさを
悪態は流血のごと石榴の実川越羽流
陽光の上澄み吸ひて石榴の実翡翠工房
小石割る石榴のような不信かな翡翠時雨
学童を終えて柘榴は破れにけり川辺世界遺産の居候
石榴怖し騙し絵のごとだくだくと干天の慈雨
大割れも小割れも石榴日和かな閑酉
不規則に裂けて暴るる石榴かなkey
幾度も自画像殺めけり石榴喜祝音
陽の射すや石榴の割れる音のする菊池克己
月蝕は緋色に欠けぬ石榴割る岸来夢
忘れたい記憶ばかりや石榴割る北大路京介
髑髏日露石榴こぼれてあらあら北藤詩旦
転職はせぬ石榴ぼろぼろ剥がすきつネつき@Vtuber
石榴熟れ荒れ始めたる叔母の庭木寺仙游
実柘榴のころがつてゐる次長席着流きるお
つなぐ手のぬくみよ石榴の沈黙木下桃白
オーナーは夜遊び石榴熟るる庭木ぼこやしき
実柘榴の弾けて一郷動き出す木村隆夫
ブツブツと呪文飛び出す石榴かな木元紫瑛
晩婚の姉と離婚の吾と柘榴Q&A
柘榴蹴る友はあの子と手を繋ぐ河村静葩
坂道の石榴豊作災害来カワムラ一重
声帯の無き喉硬し石榴の夜川村ひろの
天恵の雫の満つる柘榴かな川本宗利
三者面談庭の石榴酸っぱい久えむ茜咲
骨壺に父納む日の石榴の紅よきゅうもん@木の芽
ざくろ爆ぜ一粒ごとに昔あり鳩礼
海風や画材の石榴ぶら下げて杏乃みずな
逆光のつぶてと成りて実石榴は霧賀内蔵
大石榴もぐや奥歯をたしかむるギル
沈黙はいま微笑みへ柘榴熟る菫久
柘榴の実不妊治療のもどかしさ近未来
柘榴爆ず吾の怒りは封印すくぅ
柘榴落つ子宮なき身の軽きこと句々奈
柘榴に棘我が血のなんとどす黒きくさ
腫物もわが身の一部熟れ柘榴久信田史夫
健康な臓器はどこだ柘榴喰うくすみ輝く
石榴口あけた空みあげ口あけたくちなしの香
実柘榴の裂けて宇宙が生まれた日くつのした子
石榴売る貌はカフカスサハリン島國本秀山
石榴割れ無住寺院へ陽を集む久保田凡
実柘榴や首を絶たれしマリア像熊谷温古
作業着の父の土産の石榴かな紅三季
少年のうなじの傷や柘榴に陽蜘蛛野澄香
柘榴落ついつか地球も瞬くよ曇ゆら
段畑のざくろに泣きにゆく母よ倉岡富士子
みづからを出たがつてゐる石榴かな眩む凡
石榴つぶつぶ五女の名はトメ栗田すずさん
ヒラメキは石榴が割れたそのあとに空流峰山
耳石動き石榴の実ぐるぐる紅し久留里61
石榴はむ子らの納得出来ぬ顔黒瀬三保緑
石榴もぎ旨いと我の掌へ黒猫さとみ
割れ柘榴腫瘍マーカー精検に桑田栞
欧州よガザよザクロは割れているけーい〇
少年法改正ざくろ赫黒しげばげば
石榴裂けひとつひとつにひとの顔健央介
石榴爆ぜたり手に硬き子宮の腫れ謙久
石榴裂ける生まれる前の記憶かなケンG
柘榴は錬金術師の気まぐれ研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
石榴甘し遺跡は海を背にくずれ剣橋こじ
ざくろざくろ死ぬにも才能がいる公木正
石榴かち割れよ離婚の話せよ紅紫あやめ
あやまちと誰が決めるの石榴の実幸田柝の音
情念の爆弾石榴手に持ってこうだ知沙
想い果て石榴は硬し君遠し郷りん
すふやうな石榴かみつくよな石榴古賀
騾馬の砂埃荷車に石榴古烏さや
赤黒く裂けた悪態石榴かなこきん
石榴はじけたお見合い断られた小笹いのり
紀ノ川のゆるき流れや石榴の実小嶋芦舟
手のひらの石榴ひゞきて太鼓去る小杉泰文
眠るまでをんなのままの柘榴かな小園夢子
本開く儀式柘榴を割る儀式木染湧水
親離れ出来ぬ子なりき石榴生るコダマヒデキ
トランプはジョーカーざっくりと石榴虎堂吟雅
新札の梅子ふくよか石榴食む後藤三梅
故郷の柘榴鮮やか時の果て小鳥コ
石榴齧る母さんなんて大嫌い古都鈴
スルタンの指の貴石と石榴の実粉山
悪阻の日の指さき紅し石榴食むこのみ杏仁
実石榴や降車一人の一両車小林昇
堪忍の緒が切れしごと柘榴裂くこひつじ@QLD句会
アラビアを我が物として石榴割るこま爺
実石榴や子はちきちきとおりん打つ駒村タクト
誰も手に取らぬ石榴や外は雨小南子
骨壺に割れし石榴を供えけり小望月あうる
母一人子一人柘榴の中昏しGONZA
石榴爆ぜる胎児は外を知りたがるコンフィ
さんざんに割れて石榴の美しき彩汀
グラナダの落日の音石榴落つ齋藤桃杏
石榴には濁音と透き通る赤宰夏海
ピアス開く少年柘榴熟れたがるさかえ八八六
実石榴や本家へきつと嫁が来る坂口いちお
恐竜のたまごみたいに柘榴熟れさかたちえこ
石榴三つ食う今夜山姥になる坂野ひでこ
嫁はんは年上なんや石榴噛む坂まきか
落ちている石榴公営団地の灯坂本雪桃
反抗期口は開かぬ柘榴は爆ず咲まこ
石榴にキャタツ青空ごと手折るさくら亜紀女
石榴熟れちあきなおみのファドを聴く櫻井こむぎ
石榴裂けたとて墓場まで持って行く櫻井弘子
石榴たぶ夢に片足浸かりつつ桜鯛みわ
石榴の割れ目死が生が生まれけり雑魚寝
腹を割り阿呆となりし石榴かな笹木好里
柘榴割るきのふの嘘のたちのぼる笹靖子
曇り空つぶやきそうな石榴の実佐藤かき
実柘榴や跡継ぎ産まる茶の宗家佐藤恒治
帰還困難区域の石榴実りけり佐藤茂之
入院の近づいてくる石榴かな佐藤志祐
柘榴採る組を絶縁されましてさとう隆明
実ざくろはさみしがりやの人嫌ひさとうナッツ
福音の午後を光れり柘榴の実佐藤ゆま(歯科衛生子改め)
分かたれてなほ犇ける石榴かな佐藤レアレア
独り居の無音石榴の赤一つ里こごみ
石榴投げつけてお世話になりました里山子
地軸いつ歪んだか右手に石榴錆田水遊
柘榴の実企みひとつ否ふたつさぶり
七日目のガーゼ交換柘榴の実彷徨ういろは
キャンパスの石榴こつそり皆こつそりさむしん
石榴食む心臓石化しはじむるさるぼぼ17
遠汽笛歯を軋ませて柘榴食む沢井如伽
柘榴や何処かでポイントが溜っている沢拓庵◎いつき組カーリング部
メールには妊娠の字や柘榴熟る沢田恵子
石榴割る母は気づかぬ子の悪事澤田紫
深呼吸し易くなりて石榴爆ず沢山葵
専業主婦そんなに駄目か石榴喰う三角山子
柘榴爆づアルハンブラの石畳三月兎
柘榴赫し人殺したき夜の風三尺玉子
実石榴や異国の如き六本木塩沢桂子
誰も悪くない石榴の実熟れず塩原香子
実柘榴に日の当たりおり帯祝じつみのかた
石榴割る病名知らぬふりをして信濃のあっくん
アフガンの石榴しづかに腐食する篠原雨子
柘榴割り香るひとつは猫の息篠原美眠悟
憧れし石榴よ裏切りの味よ篠雪
裂け目より冥界覗く石榴かなしばのおはる
石榴買う旦那不倫をしたみたい芝歩愛美
ざくろ吸ふ吸ふかなしみの果てるまで渋谷晶
石榴もぐビジャブの若き数学者島田あんず
石榴爆ぜあまきしこりの乳房もぐ島田雪灯
隠し事のバレて石榴の爆ぜにけり島田ユミ子
妣の石榴やうやう熟し父と食む清水明美
石榴食へつまらんことは空に吐け清水縞午
鉄塔のサイレンの猛け石榴裂け清水祥月
噛みつけばおいといいそな柘榴の実清水ぽっぽ
曇天に光源として喰へ柘榴清水三雲
石榴はぜ陽を噛みゐるや紅深し清水容子
石榴喰う乳飲み子の父探す祖母霜月詩扇
裂目打つ雨よ脈打ち石榴揺る霜月シナ
実柘榴や朱きはらわた零しける下村修
ざくろの実弾け本音の出口なしじゃすみん
上靴のまま帰る道石榴摘む砂楽梨
幽けき灯の厨に留守居柘榴かな慈庵風
月の血を吸つて赫赫割石榴十月小萩
ジェラシーを吸って柘榴の殷からん朱胡江
あの時がめくれ出す柘榴の朱色種種番外
結晶の採取ぽろっと石榴の顆シュリ
実石榴のみしみし空を戒める常幸龍BCAD
石榴赫し原告として目覚む朝白沢ポピー
石榴喰みカンバスに色叩きつけ不知飛鳥
母国語を封じ石榴を分かち合う白玉みぞれ
柘榴落つスカイツリーを食らう雲四郎高綱
聞き飽きた言ひぐさ石榴熟れすぎて白猫のあくび
魍魎の前世の香らし石榴熟る白プロキオン
賽の河原へ石榴捧げよ地蔵白よだか
殉教の坂へと石榴落ちにけりジン・ケンジ
ひかり飛ぶ石榴忘れかけた匂い新城典午
そのかみは破瓜や石榴の種を吐くすがりとおる
ざくろざくろ吹出さうな顔をして杉尾芭蕉
石榴爆づ妻と別れるなんて嘘杉沢藍
実石榴やこれがバッハのアヴェ・マリア杉本果ら
実石榴やキャッチボールは素手と素手杉柳才
石榴の実割れて涙の乾く朝涼風亜湖
赤土の砦の乾きざくろ垂る鈴木由紀子
中東は戦火石榴の実を搾る鈴子
わが母は子の魂を食む石榴食む鈴白菜実
指の血豆ときれいな石榴の粒鈴野蒼爽
実柘榴をみづは清らに暴きけり主藤充子
柘榴爆ず夫(つま)要介護5判定静江
頁めくる音石榴の割れる音青峰桔梗丘
臨月の窓に数へる柘榴かな瀬央ありさ
くだけ散る恋かき集め石榴熟る瀬紀
種子吐けば愚痴まぢりたる石榴哉摂田屋酵道
石榴赤し母の介護疲れのひと息瀬野広純
デザートは石榴瘡蓋肘にあり泉幸
柘榴の実父のげんこつの記憶全美
実石榴や子の名を忘れた母に会う惣兵衛
実石榴や「あなたの街へ引っ越す」とそうま純香
実柘榴や日本に百の活火山そうり
実石榴や最後は拙い嘘でしたそまり
神殿に屋根なかりけり柘榴置くぞんぬ
実柘榴や偽書の印鑑滲みをりたーとるQ
石榴の実殺し合うよな赤と白大康
あの庭の柘榴盗めば勇者なりたいらんど風人
義母は良い母は悪いと言ふ柘榴高岡春雪
実柘榴や性善説の本閉じるだがし菓子
ざくろ食ふ汝のなづきか確かめず高田祥聖
石榴吸ふ座敷にはかに広きかな鷹取碧村
石榴噛み離婚届にサインする高辺知子
むつむつと夜をはじける石榴かな高橋花紋
傍に「人間失格」石榴の実たかはし千百
子育てをやり直したし石榴の実高橋ひろみこ
石榴割く地球の自爆しさうな日たかみたかみ・いつき組広ブロ俳句部
石榴裂くホテル行ったか行かないか高山佳風
君の眼の吾を向きたらず裂け石榴滝上珠加
脛白きおんな柘榴を食べこぼしたきるか
石榴爆ず子の貧困は目に見えずたけぐち遊子
崩れゆく地球や石榴割れるやう武田豹悟
雲ひとつ置ける蒼天石榴の実竹田むべ
半旗垂る街に石榴の割るる音多数野麻仁男
割れざくろ赤ひいふうみい届かぬただ地蔵
富士山の微動石榴の実は噴火ただの山登家
湖も石榴も光溜めてゐる多々良海月
実石榴や黙々と読む課題図書だっく
実柘榴や悪阻の朝の唾液腺立田鯊夢・いつき組広ブロ俳句部
石榴喰ふ一つづつ消ゆ吾の秘密蓼科嘉
石榴なる不安昨日と同じ朝田中勲
横浜の船見る丘の石榴の木田中知宏
石榴の実まほろば坂をゆく妊婦田中みどり
柘榴以上柘榴未満の君と俺田辺ささのは
夕日の赤うちに閉じ込むざくろの実谷口あき子
実石榴やレコンキスタを君知るや谷町百合乃
石榴の実酸いも甘いも吹き捨てる田上大輔
占いは小吉石榴割れてをり田畑整
目の中に石榴をとりし母の陰tabei白芙蓉
ししわきの荒み柘榴の血の満ちて玉家屋
祖母にだけ見ゆる少年割石榴玉木たまね
保健室前の柘榴の実を潰すたまのねこ
眼球に石榴爆ぜりて針を刺す玉響海月
卓袱台に無数の傷や石榴の実田村ヒロミ
石榴吸ふ歯がある内は噛みもして田村利平
七回忌柘榴の呼気をもて余す丹波らる
実石榴や諦念といふ甘き麻痺千夏乃ありあり
油絵のにほふアトリエ柘榴の実ちくりん
極東にて女となりし石榴かな千歳みち乃
石榴摘む爆発前の宇宙なり千葉右白
ゼンマイの切れて壊るる石榴かなちゃあき
実柘榴や緋色の龍の生殖器彫刻刀
畳の間熟れし石榴と智恵子抄ちょうさん
子返しの図の女の眼石榴爆ず千代之人
実柘榴を油絵具の闇に置く月岡方円
ぎつしりとぼんなう秘すや夜の石榴月待小石
赤い目がじゅわりと見てる石榴の実ツキミサキ
農転の手続き道端の石榴月見里ふく
ざくろざくろママはホントのママじゃない月夜田しー太
昏睡の手に熱のあり割れ石榴つくばよはく
東京は海だつたらし石榴の実つくも果音
お師匠さんの柘榴甘けれ酸っぱけれ辻内美枝子
還暦の恋は柘榴の味がする辻瑛炎
石榴裂け甲斐が峯鳴ける風の鞭辻基倫子
闇よりの柘榴割れるを独り聞く辻栄春
人の世の偵察として生る石榴つちや郷里
実石榴や肉を万引きする女津々うらら
同性が好きかもしれぬ石榴もぐ綱川羽音
密室や柘榴くちびるよりも赤ツナ好
石榴割れ海のプレートまた沈む椿泰文
実石榴や二階廊下の意見箱罪一
キセルばれるかとおもつた石榴の実ツユマメ広ブロ俳句部
裂けざくろ叩けば骨のおと真つ赤鶴小なみ
置き手紙抑えし実石榴の未熟丁鼻トゥエルブ
石榴裂け檳榔子黒藍微か哲山(山田哲也)
みつるくんちのこわい木は笑む石榴徹光よし季
仲直りまだ出来んのか柘榴の実テレシア
姉さん女房また柘榴食つてはる天雅
濡れ衣や柘榴ふつふつぬるぬるとでんでん琴女
実石榴の裂け目蹉跌の青き口天童光宏
少年に少し届かぬ割れ石榴天王谷一
脈をうつ石榴は心臓の重さ天陽ゆう
柘榴爆ず日本はさても地震多し土井あくび
ざくろざくざく舌にたねざらざらざらどいつ薔芭
実石榴や孵化する粒の目が怖い苳
真言のやうな寝言や柘榴の実トウ甘藻
郷愁のように柘榴が舌を刺すとかき星
比良坂の鬼と宴や石榴熟るときめき人
青痣の内なる熱や石榴熟る常磐はぜ
石榴割れ山風のいよいよ強し徳庵
実石榴に風の指痕のほろ苦きDr.でぶ
柘榴とふ恋の現在進行形どすこい早川
軒先の忌中紙や石榴の実爆ぜ杼景子
少女さて樹にまたがりて柘榴食むどゞこ
焚口の塞がれてをり石榴の実となりの天然水
灯に透かす実石榴夏目雅子の忌戸部紅屑
赤く膿む月や柘榴の滴りぬ苫野とまや
ざくろ今朝爆ぜる四十路の反抗期冨川友香理
石榴裂く地獄の蓋を開くるごと斗三木童
乳房へと血は流れ柘榴弾ける富野香衣
柘榴いま割れて鼓動をのぞかせり戸村友美
石榴食う君の来なかった夜更け登盛満
割石榴毒親だったかもしれぬ友@雪割豆
石榴搾ればあやまちの赫赫と富山の露玉
たわわなる柘榴よ母の危篤の報内藤清瑤
石榴割る祠濡れゐる屋敷神内藤羊皐
実石榴や入相時の恍惚と内藤由子
石榴割れる星の崩壊するごとく中岡秀次
口元が石榴まみれのだっこかな仲川暁実
実石榴や女の旬は五十路より中里凜
石榴真赤きつと誰かが怒つてる中島走吟
合掌は手放す印や石榴爆ず永田千春
非常食と並び明るき石榴かな中十七波
聖教新聞に包まれてゐる石榴かな中原柊ニ
石榴割る逝きたる人の並ぶごと中村あつこ
縄文のビーナスの腹石榴の実中村すじこ
ひとつづつ石榴置かるるヨガマット中村想吉
石榴の実噛んで喧嘩の古き傷なかむら凧人
柘榴取り出し寂しさを確かむる梨山碧
道化師の唇赤き石榴かな那須のお漬物
柘榴の実道化の肩を揉んでやる夏風かをる
二人目を急かす姑ざくろの実夏草はむ
石榴割る乳房なくとも子宮なくとも夏雨ちや
通りゃんせ石榴の実ひとつ弾けたる夏目りる
実柘榴やたしかに君のゐた記憶ななかまど
きらきらと石榴だれとも交じらない七瀬ゆきこ
石榴裂く京都言葉の疎ましく7パパ・いつき組広ブロ俳句部
実柘榴や乱歩の道化師の不穏名計宗幸
多産系豚は胴長石榴の実名前のあるネコ
るびい色こぼして歩く石榴売り奈良岡歩
失ひし家財一切ざくろ割る奈良素数
石榴割る子無き女の爪長し成松聡美
実石榴やかつと目を剥く忿怒形西川由野
実石榴や海に泳ぎし前世あり西郡うり
石榴はぜ魔女は森に帰りたる西こでまり
陰口を明るく語る石榴の実西田月旦
石榴割る錠剤を割る夜の更ける新田ダミアナ
子宮てふさびしき錘石榴の実にゃん
百の眼の赤し柘榴の干割れをり仁和田永
涙ぽろぽろろ石榴ぽろぽろろん庭野環石
ゴッホでなくブルースでもなく石榴猫ふぐ
超新星爆発一粒の石榴ねこむらさきご
実柘榴や思い出したる月経痛根々雅水
柘榴抱く積怨色に注意あり農鳥岳夫
蟻ごと石榴かぶる唇の蟻野口雅也
ボッティチェッリ石榴に心房描き加ふ乃咲カヌレ
描くための石榴あかるく腐らせてノセミコ
ひだりてに石榴みぎてに手榴弾野点さわ
石榴爆ず数式の解ひらめきぬ野原蛍草
石榴爆ぜ呪い解けたる姫の足野村齋藤
夕映えや石榴二つの文机則本久江
吾に残る卵あと千個柘榴吸うのんぬもんぬめぐ
心室の寓意の石榴膿んでおり白庵
貪った柘榴木の傍不発弾波止浜てる
をんなやめない雫のやうに石榴熟る蓮井理久
漢来てむんずとつかみ石榴裂く羽住博之
アザーンや車体は石榴もて沈む長谷川水素
ヴァニタスの髑髏と石榴けたけたと長谷機械児
石榴はじけ透析の跡はや1000回長谷島弘安
手のひらを器に石榴動けない八田昌代
石榴の実艶やか吾は更年期初野文子
散らかして種散らかして石榴喰ふ花咲明日香
すぐばれる嘘の溢れし石榴かな花咲春
寂しさの結晶赤し柘榴の実花南天あん
はじけさうな石榴はじける追憶花はな
やわらかく裂ける石榴の赤怖いはなぶさあきら
絵に留めん弾けし顔の石榴の実英凡水
許すと決めた石榴一粒噛んで花豆
実柘榴や少女の放つ手榴弾花見鳥
きみだけを探す校庭柘榴赤し花山微風
今朝踏んだ石榴や親知らずズキン馬風木瓜子
夭逝の遺影柘榴の無愛想ぱぷりかまめ
聞こえるは亡国の声石榴食む浜友輔
異界へと裂ける通学路の柘榴はむこ
停電や実石榴吸ふを皆やめず葉村直
夕日射す街の路傍の石榴かな葉森木霊
柘榴割れ病の身などもう要らぬ林梅子
石榴食むこころのしこりぷつぷつと原水仙
女の私柘榴の腑を貪る針子のねこ
実柘榴や第五福竜丸古りて巴里乃嬬
石榴爆ぜ涙の如き箒星晴田そわか
柘榴噛む耀う過去を噛むやうに春海のたり
太陽の終はりのやうな石榴もぐはれまふよう
山国の足湯柘榴の空は蒼半ズボンおじいさん
石榴裂く熟れたこころを割るやうに万里の森
実柘榴や娘こじらす反抗期ピアニシモ
石榴裂く笑いが湧き上がってくる柊琴乃
実石榴や不妊治療の予定表東田一鮎
柘榴爆ぜ奈落に潜むイカロスの羽根匹田小春花
血豆めく石榴啜れば犬歯のび樋口滑瓢
落とされて赤い叫びの石榴かなピコリス
辞めたいと娘の電話石榴食む菱田芋天
すつぴんの女演じて柘榴食むひすい風香
実石榴や父には父の思ひありヒッチ俳句
紅の石榴波斯(ペルシャ)の砂塵めくひでやん
子の終に綺羅の零るる爆ぜ石榴陽
しやぶつては吐く実石榴のみことのり比々き
三面の手配犯死す石榴の実141番
柘榴落つ流産あとの乳の張り日吉とみ菜
ガザの瓦礫熟れし石榴の実もあらむ平井千恵子
柘榴打つ過去を折檻するごとく平岡梅
ぽろぽろと剥がす偽善と柘榴かな平野芍薬
祖父の土地境界あたりで石榴割る平野純平
スケッチや石榴机上で弾けたり平松一
石榴が割れた優等生はもうやめる平本魚水
井戸端の実柘榴ぺちやくちやぺちやくちや比良山
柘榴にはなれない人を愛せない広木登一
柘榴赤し夫は嫌いで好きな人廣重
しづかなる月が柘榴を裂いてゐる広島じょーかーず
柘榴ほおばりて海に連射する廣田惣太郎
忘れた頃に痛む傷あと柘榴ひろ夢
石榴落つ一気呵成のエピローグ飛羽玲子
石榴熟る転校生は都会の子フージー
石榴食み逢魔時を欺かん風慈音
熟れ柘榴灯してガレのランプかな風泉
石榴裂く君は大成するだろう深谷健
実柘榴や嘗ての罪は澱となりふくじん
石榴熟れしまい忘れたねこの舌福ネコ
甘いよとアンダースロー君へ石榴藤井かすみそう
子離れが下手で石榴が酸っぱくてふじこ
出産の兆しか柘榴爆ぜ落ちる藤咲大地
母になれぬ朱肉に沈む石榴かな藤里玲咲
さかむけは親不孝とか石榴割く藤白真語
石榴裂く吾の卵巣に手を当てる藤永桂月
柘榴開くとこか魔法の城の問藤本仁士
石榴の実産む産まないは吾が決める藤原訓子
母の愛問うてもぎ取る石榴かなフタバ凛
三男の快癒の家の柘榴かなふにふにヤンマー
鉄臭き毒味の匙よ柘榴熟れふみづきちやこ
幸せな家の柘榴の実のたわわ冬島直
柘榴割れ焚きつけられた恋心古澤久良
石榴裂け妻の代わりに毒を吐く古庄萬里
実石榴の破れてあつけらかんと空古瀬まさあき
青空を柘榴の微熱喋りだす豊後のすもも
傷跡憂し妲己のごとく石榴喰ふ碧西里
見破れる嘘ばかりなり割石榴ペトロア
クレーター見ゆるごと月石榴落つ峰晶
ぺるしあの乙女るびいの石榴食む房総とらママ
くじゅと食み狙い定めて吐く石榴ほうちゃん
みりみりとかなしみ裂けて石榴の実黒子
実ざくろや真白き鳩のモザイク画星鴉乃雪
さうやつて石榴のごとく嗤ひたるほしぞらアルデバラン
振れば分かる石榴に巣食う大伽藍星田羽沖
石榴吸ふまた滞る月のもの星月彩也華
余命てふ幸せのあり柘榴割る干しのいも子
石榴の実赦されるまであと千年星詩乃すぴか
排卵日の三重丸や石榴赤しほしの有紀
実柘榴や介護の檻のしまる音甫舟
実石榴や海へ還れぬ霊の群細川鮪目
地母神に捧ぐる贄ぞ落ち柘榴細葉海蘭
アトリエの静かに朽ちてゆく石榴堀卓
亀の墓割れし石榴の血色濃き堀隼人
実石榴や友の便りに第三子堀邦翔
柘榴割れ歪な怒り赫々と舞矢愛
柘榴爆ぜ遠くに見ゆる火砕流牧場の朝
凱旋の径に石榴の爆ぜにけり槇原九月
石榴さけ世界のいくさ無音なり牧茉侖
傷心の食感ざくろの咀しゃく音まこと七夕
実柘榴や沖の太夫も島嶼へ来正岡田治
瑠璃色の柘榴数えてあぁひとり町家の日々輝
石榴はぜ生命の核が透けている松浦姫りんご
坂の途に石榴をひとつ配備した松岡拓司
無い子には泣かで寂しき石榴かな松岡玲子
主なき家をにぎわえり朱石榴松沢ふじ
石榴熟れ初恋のひと母になる松田寛生
またぼとり糞する軍馬石榴の地黛素らん
割石榴ワクチンの夜の火照りかなまるごとハテナ
実石榴や腹に宿りしファラオの血三浦海栗
爆弾をすべて柘榴にして配る澪那本気子
音飛びの古いレコード柘榴の実三日月なな子
星噛んだごとく石榴の粒爆ぜて帝菜
継母の血を切る音や柘榴爆ぜ三上栞
青空の光を吸いしざくろかなみかりん65号
太陽に翳して石榴日の匂いみかん成人
裂け柘榴バックヤードの重文仏三茶F
クリムトに耽る夜更けの柘榴の実三崎扁舟
わが裡に沈む夢あり柘榴の実水須ぽっぽ
舐めてみた落ちた石榴や通学路MR.KIKYO
石榴割る吾に流るる血を愛す水巻リカ
石榴の木ある家石榴は食べない三隅涙
実柘榴の病みたるごとく熟れゐたる三田忠彦
二万席の古代劇場石榴の実満生あをね
たわわなる石榴あかあか暗渠果つみづちみわ
相槌打ちつつ石榴の実ほぐしきるみつれしづく
子の遺すざくろが核であつたなら南方日午
夫の目に誰れの角膜石榴の実源早苗
石榴爆ず庭に転がるBB弾美村羽奏
哀憐の熟れて豊潤石榴かな三群梛乃
懸想する姉のよこがほ石榴喰む宮井そら
かくれんぼ石榴握って息ひそめ見屋桜花
打ち落すな石榴も君の手も痛い宮川令
柘榴すくいて月なし夜宮城海月
隠しごと明かせばひらく石榴かな宮坂暢介
石榴裂け野に弟は殺められみやざき白水
人殺せさうな図録や石榴破る宮下ぼしゅん
ぬかるみへ落つや娼家の石榴の実宮武濱女
隕石を祀る社の石榴かなみやま千樹
甘かろう赤い石榴に裏切られ美山つぐみ
余命見守る日々紅く固き石榴宮村寿摩子
五十円アップの時給石榴裂くみらんだぶぅ
石榴裂けこの星のもつ朱いもの夢雨似夜
髪切って染めて面接柘榴の実ムーンさだこ
石榴食ふ猿の石榴を拾ふ猿麦のパパ
肉体はこゝろの器石榴食む麦野光・いつき組広ブロ俳句部
ドリアンはをとこ石榴は天邪鬼椋本望生
実石榴は三つテレピン油の匂ひ無弦奏
実柘榴や手のひらに吾の腫瘍載る紫小寿々
反抗期の石榴食う背は揺れてをり暝想華
金曜の溜息柘榴へ混ぜておくめりっさ
舌の石榴の感覚の取れなくて望月朔
実柘榴や嫉妬の粒のふつふつとmomo
月中の転校生や石榴の実もも
石榴割れまだ停戦の気配なし桃香
石榴爆ぜきつて王権神授説百瀬一兎
脈拍に乱れの多き夜の石榴桃園ユキチ
この家も老老介護石榴の実森中ことり
反対に噛みつきさうに石榴開く森の水車
張り裂けんばかりの恋と石榴かな森野恵
石榴打ち落すかんたんに人離る森葉豆
柘榴食む契りを断ち切るやうに食む森日美香
大御所の楽屋へ届く石榴かな杜まお実
実柘榴に吾の後悔の百八つ森毬子
裁かれぬ罪よ心臓の石榴よ森萌有
遅すぎる恋なんてない石榴の実もりやま博士
複眼で俺を見つめる柘榴かなモロチンスキー
今朝までは慎ましかつた石榴かな野州てんまり
石榴割る一粒ずつを褒めてやり安田伝助
往年の拳は石榴甘じょっぱく安元進太郎
執心の透け見えるなり石榴の赤痩女
柘榴の実裂けて夕暮れ怖ろしき山内彩月
実柘榴のにやりくすりと裏表山河穂香
妬みなど踏み潰しけり石榴の実山口絢子
石榴喰ふ母九十の乳房垂れ山口愛
鎮魂の石榴は紅い星を吐くやまさきゆみ
おーい柘榴きみは夜どおし歌うのか山里うしを
鶏の首持つ祖母や石榴の木山下義人
持つてけと僧の差し出す大柘榴やませみ
山姥の土産熟れたる柘榴なり山育ち
たまゆらの恥じらひ見ゆる石榴の実山田翔子
初めての石榴と小さな恋は酸い山田はつみ
スプンから生き生き崩れざくろの実山田蚯蚓
石榴裂け記憶の襞に狼狽えし大和杜
実石榴を夜の鏡へひけらかす山本先生
石榴もう生まれ変わつていいだらうやまもと葉美
剥がさぬよう恋の瘡蓋柘榴の実山本蓮子
秘密には必の字二つ柘榴の実柚木みゆき
マグマ持つ地球の真中石榴の実宥光
実柘榴や土偶の乳房豊かなり雪子
爆ぜるもの柘榴ひとつであればよし雪音
モスタルの拳か石榴旅の吾に柚子こしょう
実石榴やいっぱいの愚痴聞いて欲しゆすらご
石榴の実嘘のつきかた習ひし日湯屋ゆうや
石榴食む母の手静脈は青しユリノイロ
画の暗き仏蘭西映画石榴かな陽花天
饒舌なをんなが裂いてゐる石榴羊似妃
千々の目の詰まるが如き石榴かな横井あらか
瓦礫また瓦礫に柘榴また柘榴横浜J子
独りゆく石榴の朱には交わらず横浜順風
殴られし頬の疼きと熱石榴横山雑煮
乱立の総裁選挙柘榴爆ず横山道男
石榴割れ零れた言葉の深き傷吉田蝸牛
この村の双子はみんな石榴から吉武茂る
大人じゃないわたし柘榴をまたこぼす吉田ルイ
後出しのグーは柘榴であいこでしょ吉野川
我が身割る痛みの色か熟れ石榴吉藤愛里子
石榴熟るマグマの潜む活火山余田酒梨
女子寮に派閥はありて柘榴爆ず楽花生
更年期の過ちと謝す石榴神らん丸
十戒の絶壁の海石榴かなリーガル海苔助
街どこも段差ばかりよ柘榴熟る理佳おさらぎ
今日よりは母の国籍柘榴食む柳絮
里は豊穣我が家は石榴たわわ涼えつろう
親指へ集めるちから石榴割るルーミイ
石榴破れたり亦一人いきそこねたか烈稚詠
石榴割る国はとっくに潰れてる連雀
ざくろ割るひとつの臓器開くごと朗子
摩りきれた碑文ごんごんと柘榴ろまねす子
実柘榴や遠い親戚がやって来たわかなけん
石榴買ふ婚姻届の保証人若林くくな
石榴切る手にしわしわのハジチかな 沖縄の女性の刺青わぎゃん
絵の具の赤より真っ赤な石榴かな和光
転校生石榴が割れるまで泣くな山葵わさび
この怒り如何にすべきや石榴割る海神瑠珂
文鳥と交互につまむ石榴かなわたなべいびぃ
裂け出でて悋気のやうな石榴かな渡部克三度
実石榴や答えは我が心にあり渡邉わかな
柘榴ざくざくゴシップの溢れ出す亘航希
鬼の息潜めるをんな石榴喰ふ笑笑うさぎ
はみ出した素顔の地球石榴の実鶴富士
カルデラや地球も石榴やもしれぬ立石神流
「ご自由に」門の段ボールにざくろいわさちかこ
悪ガキの「面」入りて木端の石榴宇田の月兎
三十路の子再就職や石榴溢る内田こと
何時までも貰い手の無き石榴かな空木眠兎
半割れの石榴の凹み夫婦かな宇野翔月
気持ち良き音させて割れ石榴かな大嶋宏治
口に含む期待外れの石榴の実大竹八重子
石榴の実母の宝石箱の中小川紅子
実ざくろやホルマリンには漱石がおぼろ月
石榴吸うのらねこのごとほしがりて風早杏
青空に実柘榴ゐたさうな裂け目花鳥風猫
秘めごとのありて輝く石榴かな亀崎波
心臓も石榴も赤し黒しかな亀田かつおぶし
乳房取りし友に実柘榴泣き笑い草野紫陽花
柘榴熟る閉経を子に言えぬまま草臥れ男
更年期知らぬ間に終え石榴かな國吉敦子
石榴食む怒り心頭けすごとく源氏物語
石榴食ふ黄泉より帰せぬ旨さかなさかい癒香
子産みし翌朝に眺む割れ柘榴榮紅
石榴割る昨日の喧嘩ほとぼり冷めぬ佐藤やもこ
柘榴の木囲む旧家は四姉妹塩風しーたん
石榴の木には枝毛弄る娼婦紫藪
石榴喰ふ吾子の前歯は抜けてをりseki@いつき組広ブロ俳句部
あちこちの撓る柘榴の味知らず戸口のふつこ
皮を割る宝探しの石榴の実どこにでもいる田中
実石榴や予報信じて傘持たず夏目坦
石榴の実はじけて種は自由の身南全星びぼ
石榴囓る夜叉女の真似す姉怖し沼沢さとみ
柘榴熟る隣家の主白寿とか馬笑
われ先に赤さ弾ける石榴かな花咲めだ香
石榴裂け理性保てるわけもなし花彼岸
死別して柘榴裂けたる如き身よ花水木
オペシーンに独りいちやもん石榴剥く花和音
石榴裂けよくぞ食う気になれたもの平山仄海
未熟なる石榴投擲大喧嘩舟端玉
ざくろ掠めるひとりふたりさんにん松本こっこ
柘榴の実はじけて定期健診へmayu
実ざくろや余命月かず指を折る宙美
還暦や石榴の美味を知らぬままあいあい亭みけこ
甘酸っぱさ人生同値石榴かな会田美嗣
実石榴やペルシャへつづく色を染め藍野絣
ザクロの実思った以上の栄養素逢花菜子
学童の傘の的なり熟れ石榴あ・うん
実石榴や少年の日々大人びて青井季節
鍵開けて教卓にごろり柘榴の実青砥転典
排卵日多産の柘榴苦々しあかり
廃屋に裂けておちゆく石榴かな昭谷
荒野にて石榴恋しい流浪民秋月あさひ
君に会うための口紅石榴の実秋野しら露
大正は遠くなりけり実石榴よアクエリアスの水
思い出のフォークダンスや石榴食む浅井カバ先生
柘榴割りザクロの道のグラナダへ亜佐々木小鉄
石榴の実爆ぜて都電の鬼子母神あさぬま雅王
馬鹿笑ひするが如くに柘榴爆ぜ淺野紫桜
帰りたし祖母と石榴のありし家浅乃み雪
一粒の赤い汁飛ぶ石榴かな麻場育子
体操着柘榴の染みが残りけり朝日雫
初開き柘榴粒々宝石箱亜紗舞那
我が老いに若き血注ぎ給え柘榴飛鳥井薫
熟石榴地中海のルビー空蒼く明日に翔ぶ会
号砲に紛れ弾ける柘榴の実愛宕平九郎
食べ易き方に進化をせぬ石榴あたしは斜楽
乳飲み児を思いて解す柘榴かなアツシ
割れるまで口尖らせて柘榴かな渥美こぶこ
汚れたる皮で守りし石榴かな渥美謝蕗牛
石榴の実口尖らせ世を嘆く跡部榮喜
朱色の柘榴あったと人差し指アニマル可秘跳
腹立たし日の締めとして石榴喰ふあねもねワンオ
石榴食う姿がまるで食人鬼あまどかに
堂々と空家で熟す石榴かなアマリリスと夢
枕元母に七粒石榴の実アムゼルえりこ
活劇に握る石榴や紙芝居雨霧彦(木ノ芽)
友去りぬいつも貰いし柘榴かな雨降りお月さん
言いたきこと有りや店先の柘榴あややDC
種飛ばし柘榴で遊ぶ子沢山あらあらかしこ
石榴食ふ先入観を吹っ飛ばせ荒木響
太陽のパワー溜めゐる緋の石榴荒木ゆうな
朝練の少林寺拳石榴裂け蛙里
胸中は不安ばかりや石榴熟る有本としを
実石榴やお隣さんは四世帯淡湖千優
塀の上石榴見上げて吠える犬安城汐
石榴割る高発色の赤真珠飯田淳子
柘榴の実学校帰りの道標飯塚うらら
どう食うの?柘榴持つ夫匙?フォーク?粋庵仁空
立ち位置がビミョーな石榴うちにある池田華族
古民家の庭に石榴やひとり旅池田炭
実石榴や御朱印叶わぬ留守の寺池之端昇雲
うつむいて口笛吹くよ石榴かな伊澤遥佳
庭の石榴今年一つは食べてみる石井久次
石榴剥く夜半の名残りや黄色き手石岡女依
石榴三つ四つ透かしブロックの向こう石垣エリザ
女子の美の願い叶える石榴かな石川明世
引越しの朝を狙って落つ石榴石川巴里
有りし日の遊び疲れし石榴かな石坂可汰史
赤色の惹きてまどわす柘榴かな石田ひつじ雲
若返る石榴の家はもう更地石田ひろみ
たとえるな石榴は石榴我もまた石の上にもケロリン
実柘榴や久になつかし里訛り石原花野
生き方はもつと不器用柘榴喰む石村香代子
柘榴まであと一センチの背伸びかな石本美津
石榴割る赤い実口に渋い顔泉恵風
石榴ごと口を開けたる阿呆かないたおみき
柘榴まだかたくむすんで開かざる市川卯月
分解し果肉これだけ柘榴の実いちご一会
悲しみを残し旅立つ手に柘榴無花果邪無
いつ開くザクロの固い皮弾けいちばほうすい
赤き実の弾ける音か石榴とは五つ星
石榴食めばシルクロードの風香る伊藤亜美子
割腹の葉書溢るる石榴かな伊藤薫
ざっくりと柘榴さけその実ほおばる伊藤節子
形相の首が如くに石榴かな伊藤正規
目が笑うザクロサラダや舌をまく伊藤ゆめ安
実柘榴や写真の姉のおちょぼ口伊藤柚良
外つ国の石榴の黙や並べられ井中ひよこ号
石榴種数える我はアホといふイナホセドリ
実石榴は大笑いしてぶらさがり井上幸子
巨人のごと石榴の粒をほおばりぬ猪子石ニンニン
その昔住みし借家に石榴の実いまいやすのり
透きとおる紅をのぞかせ柘榴の実井松慈悦
柘榴の実はしゃぐ子供ら待ち侘びる今西ともき
リュックから石榴取り出し得意顔今乃武椪
柘榴割れる地底への入口の如今村ひとみ
石榴一粒道化師の涙めく妹のりこ
少女期の記憶ありあり柘榴食む岩木順
柘榴にも柘榴の意思が叫びたし岩佐りこ
画布の朱は恋の迷ひか柘榴の実岩橋夕紀
美しき妊婦の隣石榴割る植木彩由
いつ割れるつやつや冷たき柘榴かな植田かず子
柘榴食ふ安達ケ原の鬼婆あ上野徹心
初めての投資とザクロえぐみ微々上野眞理
外来の石榴は笑まず拳なり上原まり
口とがらせぷいと横向く青柘榴氏家久美
人喰ひの鬼女笑ふごと柘榴熟る梅朶こいぬ
薄皮に残る石榴の規律性梅田三五
石榴の実ルビーの城のお姫様S・葉子
故郷の訛り石榴と口硬し越後縮緬
秘め事もあっけらかんと裂け柘榴越前岬
離れ難し一つ二つこぼれ石榴かな越佳
初恋も柘榴の味も遠くなり越中之助
石榴あじ還暦すぎてまだ知らぬえのき筆丸
黒光りの泥団子へと石榴落ち榎本咲
石榴割るこぼれたルビー指先に榎本奈
柘榴ざくろ石女の吾のほおばる実笑姫天臼
雑草で古びた塀に石榴ありえみくれ
転任地庭のざくろに迎えらる遠藤千草
タピオカの次は石榴がマイブーム遠藤玲奈
鈴なりの柘榴魅せられ盗もうか円美々
痴呆病む母に手渡す柘榴かな大久保一水
石榴の実グロテスクなまでに裂けし大越マーガレット
唆りしも期待裏切る柘榴かな大阪駿馬
迷ひこむ路地に口あけ待つ柘榴大澤眞
恋に落ち石榴の赤に涙せり大島勤
石榴熟れミムラ夫人の育児術 ムーミン?太田怒忘
独り居の逢魔が時の柘榴かな大津美
手土産にジャム一瓶分の柘榴もぐおおにしまこと
石榴裂け式部の詠の赤き筆大野喬
垣根越し弾ける石榴二つ三つ大原妃
更年期柘榴食べ過ぎ腹下し大原雪
日に二粒盗む柘榴はルビー色大谷一鶴
掌に柘榴聖母子像の伏目かな大矢香津
胃カメラに暴かれしこと石榴爆ず岡井風紋
宝石と縁なき我が身石榴食むおかえさき
割れ目より美貌の種の石榴かな岡崎佐紅
石榴の実画材でポーズ五つ六つ岡崎未知
歯の抜けた口を見せる児割れ石榴岡田一竿
提灯を灯すがごとく柘榴の木岡田恵美子
塀越しに柘榴赤々舌を出し岡塚敬芳
井戸端に石榴があった無き生家岡村恵子
石榴熟れ二十歳の吾と彼旅立ちぬ岡本
種しゃぶるびんびん飛ばす熟石榴丘るみこ
柘榴熟るいつもの味噌汁嫁ぐ朝岡れいこ
食べるところなかった幼い日の柘榴沖らくだ@QLD句会
実柘榴や「無罪勝利」に六十年小倉あんこ
一杯の珈琲分かつ石榴かなお好み焼きモダン
素人の絵心そそる柘榴の実お品まり
朝帰り妻は黙って石榴割り小田毬藻
鬼子母神柘榴喰みきて慈母となり尾田みのる子
やけくそに蹴った石榴ぞルビー舞う小野ぼけろうじん
今は亡き祖母の庭先石榴の木十八番屋さつき
雨粒のはじける音や石榴の実おひい
柘榴喰みくしゃみをひとつ子犬かな大日方柚竹
君思ふ我が脳ひとつ柘榴かなおんあいす
石榴熟る分娩室の包まれし海桜
石榴の実喫水線の見える丘 喫水線でいいのだろうか…?海音寺ジョー
柘榴くれたおばちゃんの手だけ覚えてる海堂一花
廃墟ビル門にグシャリと石榴なり甲斐ももみ
実柘榴やじいじの膝で聞く話香依蒼
実石榴や出してはしまう宝箱柿本苧麻
柘榴の実秘密隠して知らぬ顔影夢者
石榴はぜこっち向いてよ独り言笠谷タカコ
血潮流る人とはなんぞ柘榴食む風花まゆみ
幾千のルビーの眩し石榴割れ梶浦和子
吸い甘い人生は謎石榴かな梶浦正子
食べごろを石榴笑って知らせけり和
追い風に転職決心熟れざくろ風かおる
青空に近く見えたる柘榴の実片岡明
若返る本当かなと石榴喰む片岡景子
石榴熟れ遠くなり行く人の声片岡擢石
空き家なる義実家の裏石榴熟れかつたろー。
願い込め食す綺麗な石榴の実可児真由美
他人の子を叱れる父や石榴割るかねつき走流
石榴の実摘み艶めく妻の爪神島六男
舞踏会夜な夜な舞つて柘榴かな神谷たくみ
割れぬ柘榴己が開いて見せましょう神谷米子
社宅跡採る人も無し石榴の実亀田みのる
行き詰まる油絵に盛る石榴の実かもね
不器用に裂くる石榴や朝帰り狩谷わぐう
甘酸っぱい頃もあったと石榴の実河上摩子
石榴の実パカッと割れて少宇宙川崎ルル
叶わずやいつか隣の柘榴食ふ川瀬観夏
石榴食む悪女美魔女の座談会川端芙弥
石榴爆ず臨時総会ふた晩目川村湖雪
待ちわびし主船乗り柘榴の実邯鄲
母さんと石榴の熟すの待った日々樺久美
二時間目柘榴数えた保健室岸壁の龍崎爺
反抗期うまく掬えぬザクロかな季川詩音
唾液腺緩む石榴のしたり顔如月ゆう
白き犬に引かれザクロ踏む朝季紫子
実柘榴喰む四時間めの顕微鏡岸本元世
石榴裂け建物裂けるウクライナ酒暮
柘榴の一粒満員電車の吾季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
石榴食む嫁入りまへの姉妹かな喜多丘一路
一粒の石榴愛しむ娘の手北川茜月
投稿が載った佳作だ柘榴の實北柴潤
宝石を散らすかのよに石榴はぜ北乃大地
枝先に揺れる柘榴や灯りめく北の星
石榴割るをんな真顔でぬっと出す 出す?貴田雄介
石榴の実居場所は祖母の台所城内幸江
青空に朱をひけらかす石榴かなきべし
町工場の塀向こうの石榴かな木村かわせみ
柘榴の実穿り喰った餓鬼いずこ木村修芳
欠席とつれない返事石榴割る木村信哉
ぎらぎらと悪そうな笑み割石榴木村となえーる
店主不在なり石材店の石榴木村弩凡
里山や色とりどりの石榴かな木村波平
人の味知らねど赤き石榴食む木村弘美
大口の石榴が笑ふ子等のこゑQさん
徹夜の麦と兵隊柘榴噛む 火野葦平の小説?京野秋水
叔父の彫る柘榴の丸盆に柘榴清鱒
石榴割れホラーチックな赤い色喜楽胤
晩鐘の尼寺柘榴の実揺れる霧澄渡
柘榴は硝子細工妖しを秘める銀長だぬき
威さずもいずれ口割る石榴かな鯨之
池のほとり桃源郷の柘榴かな楠田草堂
気をつけろ噛むぞと指示す石榴狩りくずもち鹿之助
二歩後ろ歩く少年石榴ゆれくぼたみどらー
玄関にビニール袋の石榴かな蔵豊政
柘榴かな色の憧れダイヤ級ぐりぐら京子
地に堕ちて石榴は手榴弾と爆ず愚老
割れた実が我嘲笑う石榴かな黒田良@しろい
子の味と祖母が脅かし柘榴だす黒ばあや
石榴落つ願い崩れるデブリかなくんちんさま
枝揺らし拳重ねて石榴かな慶唯
石榴なる命の基を吐き出さむ家古谷硯翠
実石榴や転べど泣かぬ子の細胞月下檸檬
唇を切りたく石榴口開き紫雲英
青春は紅き石榴の実なりけりケント
酣の井戸端会議石榴開く恋瀬川三緒
誰の為石榴弾けて色を増す輝雲彩
爆ぜ石榴ヒトに迎合せぬ地球剛海
年上がキスを促す石榴の香河国老・末廣
昨日より心も重き石榴かな柑たちばな
老人車押すかご中の割れ柘榴康寿
母方の血は左利き石榴喰ふ幸田梓弓
待ち合いの鼻すする音ざくろかな幸内悦夫l
千一夜読みて食べたき石榴かな宏楽
石榴の実裂けて思い出詰まるごとごーくん
喰うてみい言わんばかりなはぜ柘榴ココヨシ
鳥つつき割れて輝く石榴の実五色園豊美
母去ぬ生家にたわわ柘榴かな越乃杏
助産所の朝陽へ摘みたての柘榴こてぬぐい
胸の内明かせとばかり石榴の実後藤周平
あの門の空き家に石榴たわたわと後藤方丈
チラシ敷き柘榴ごろりと売られけり後藤真昼
一粒ずつ姉と分け合う石榴の実来冬邦子
柘榴持ち実の溢れない5秒間小林共捺哉読
二十歳にも衰えのあり石榴食む小林俊輔
血肉めく柘榴をサラダにするをとこ小林脱太郎
実柘榴の甘酸っぱい香鳥を呼ぶ小林澄精
石榴の実器用に抓む母の指小林のりこ
出戻りの姉の齧りし石榴かな小藤たみよ
柘榴割れJ.S.バッハ聴くマチネ駒形さかつ
石榴の香若き維新の国に満ち小湊八雲
思い切り呵呵呵と笑へ割れ石榴こむぎ
口説いても靡かぬ女ざくろの実小山晃
待ち受けの石榴半割ハート形小山秀行
古き写真こなごなにして石榴食む小山まきに
手をかけし小さき盆栽姫石榴碁練者
ぷつぷつやコロリとひとつ柘榴食べコロンのママ
石榴持てワタシ日本語ワカリマセン今藤明
大阪の街尋(と)め回る石榴かなこんのゆうき
サスペンス石榴の色に染まる指西條晶夫
実柘榴や少年ただ今変声期さいたま水夢
こだま号石榴食べつつ六時間齋藤鉄模写
メラビアン見た目たがはず石榴かなさえずりケンタ
石榴爆ず門の閉じたる助産院さおきち
あれもこれもパラパラなのか柘榴の実さ乙女龍チヨ
実石榴の弾けて貴女はもう居ない酒井春棋
空気に触れあかになりゆく柘榴かな坂上一秀
濡れ藁は脆く石榴も腹割れぬ坂島魁文
ザクロ手にラファエル前派美女ばかり坂田誠太郎
夫逝きて慣れぬ老いのみ石榴落つ坂田雪華
四方から画材の石榴を探求す坂本千代子
食べれない見てみぬふりの柘榴なり相良まさと
良き知らせ双子授かり石榴かな桜華姫
柘榴噛む赤子の味は知らねども桜姫5
宝石の採掘体験柘榴の実さくら悠日
黙々と石榴を割りし昼下がり佐々木佳芳
石榴割れ穴開けるほど報せ読む笹桐陽介
人生に思い出数多石榴の実さざれいし
石榴の実ルビーの如しそっと置くさざんか
情念は静かに満つる熟れ石榴さちコアラ
オアシスに蒼き瞳や石榴食む砂月みれい
おさなごのひと粒つまむざくろかなさっち
柘榴の実ためらう顔がほころんで薩摩じったくい
放課後や棘も気にせず石榴もぐ佐藤公
柘榴吸ふ産めぬ子宮をもてあまし佐藤儒艮
互いのシャツにシミ残し石榴食む佐藤俊
真実と嘘入り混じる割れ石榴さとう昌石
石榴落つ二十三士の斬首の碑佐藤浩章
これみよがしに赤剥き出して柘榴佐藤佳子
貰い来し石榴を卓に並べけりさふじわよ
電話口に初恋のひと石榴かなさやじゅん
三度目は柘榴裂けたり道迷ひ紗羅ささら
隣家(となりや)の崩れゆくなり石榴の実紗藍愛
町歩き歴史に浸る柘榴ありさわだ佳芳
先生とセックスしたい柘榴爆ず山月
待つ恋や柘榴ひと粒ゆびに添え珊瑚霧
煙草屋の小窓に石榴ボーンボーン三水低オサム
柘榴は遠慮する祖父は帰還兵塩の司厨長
ざくろとふルビ持ち紅玉(ルビー)持つ石榴鹿澄
石榴噛む初恋の君今何処しかの光爺
実柘榴のワイン色なる愛しき夜四季彩
ジャングルジムを乙女子空へ手に柘榴志きの香凛
あおぉい空みどり風吹く石榴哉じきばのミヨシ
空き家です蜜の匂いや割れ柘榴じじょう庵一口
石榴の実残る時間の愛ほしく紫檀豆蔵
独身の寂しさつのる柘榴かな紫月
あの子食ぶ石榴の紅の試食かな実本礼
知覚過敏の歯に挟まりし石榴柴桜子
石榴裂く人まだ降りる発車ベルしぼりはf22
石榴の実五十年後も尖り口調縞子勾苑
割れ石榴病名告ぐる女医眩し霜月ふう
彼女亡き朝石榴入りヨーグルト下丼月光
教会の煉瓦に溶けるごと柘榴沙那夏
入口に石榴のアーチあるお宅写俳亭みの
母の手に咲みす柘榴や子らも笑み柊二@冨美夛
実石榴や誰にも言えぬことのあり柊瞳子
実石榴や結婚記念日は昨日秋芳
実柘榴や女心はわからない樹海ソース
爆石榴嘆きぶつけるフラメンコじゅんこ
ある時は石榴をもぎるマダムの手順之介@QLD句会
ああ言へばかう言ふ娘石榴食ふじょいふるとしちゃん
実石榴や鬼に聞きたし人の味正見
割れかけし実柘榴小村の昼下がり庄司芳彦
拗ねた児や口尖らせて割る柘榴正念亭若知古
柘榴切り赤血球が煮えたぎる祥野雅子
石榴踏み実こぼるる土に刺青白井佐登志
おさまらぬホットフラッシュ石榴取る白石美月
民宿の夕餉にふたつ石榴の実白井百合子
血走った目を光らせる割れ石榴白川譽
届けども手折らん恋や石榴の実 手折らぬ? 手折らん?白梵字
喪家ひとり留守番の叔母石榴食む神宮寺るい
覗きこむ万華鏡の如石榴かな深仲夏
柘榴割れ娘に娘鬼子母系真藤乙華散
柘榴食み渋き記憶の或るを知る真堂美木
石榴熟れ我も爆ぜ時転職す新濃健
忘れむと石榴を食へど苦かりき西瓜頭
ウエルカムフルーツにちょこんと石榴水蜜桃
果肉は赤・紅・朱くころん石榴末広野暢一
ざくろ割れ友の顔あり里の空杉浦あきけん
卓袱台にこぼれる石榴祖母の家杉浦真子
オアシスに螺髪のブッダと石榴の実杉岡ライカ
還暦のレディぞくぞく柘榴かな鈴木秋紫
子を殴る母の手赤く石榴割れ鈴野冬遊
ばあちゃんのひ・み・つ土手下のチビ石榴素敵な晃くん
つらき時笑ってしまえ柘榴の実砂山恵子
空青しはじけた石榴ふたつみつ数哩
酒蔵の洗い唄聞く柘榴の実須磨ひろみ
不条理に怒り心頭割れ柘榴晴好雨独
中庭に落ちたる柘榴食べにけり清香優
石榴喰む溢れし果汁夕陽染め青児
石榴蒸れエゴンシーレの画集観るせいしゅう
石榴の実伝染る誘惑ほうける吾星夢光風
満ち満ちの柘榴はじけて好き日かな瀬戸ティーダ
石榴もぐ毒盛る人の爪の赤千・いつき組広ブロ俳句部
馬駆けるシルクロードや石榴熟る草夕感じ
石榴の粒削ぎ落としてき浸む唾液添野純
石榴の内臓を掻き出す銀の皿外鴨南菊
実柘榴や裏山にある秘密基地そぼろ
ゆわゆわと石榴旧家の門構え空豆魚
ブラウスに染みぬき忙しザクロ朱邨虚空
バス停の道中に見るたわわの柘榴駄詩
今日からは思うがままぞ石榴爆ぜ大
柘榴喰む人肉齧りつく如く大ちはる
十日間燃えしカルタゴ石榴爆ず平良嘉列乙
天空に大口あける柘榴かな平たか子
柘榴の実透ける向こうの愛しき子高伊あいす
石榴攪拌いのちの色を喰らう高上ちやこ
産院の庭たわわなる柘榴かな高木音弥
鈍色をすずろに見上ぐ柘榴かな高瀬小唄
落ち石榴軽トラ避けて走り去りたかandひろ
石榴喰む数百粒の悔いを喰む高嶺遠
若き木々げんこつはいつか石榴実に 実石榴に…?高橋紀代子
日向なる実石榴重くあたたかく高橋ままマリン
盗人になりたや無人駅柘榴高旗三紀子
御旅所の柘榴掠めし鬼ごつこ高原としなり
大地震え人去りてなお石榴笑む田上コウ
里帰り爆ぜし石榴の粒甘し高見正樹
見世物小屋開くや石榴の口赫く滝川橋
この涙ガンと知り得る石榴かな竹内一風
ペルシャから来たりし石榴鬼笑う武翁
ロシア人さけび柘榴をまた落とすタケザワサトシ
滑り台登りて紅き割石榴駄犬
柘榴熟れ覗く朱の色水晶宮多胡蘆秋
石榴もぐ白き手の甲傷の痕太之方もり子
角丸くひんやりと撫で実ざくろよたすく
病床の窓の外には石榴かな祐紀杏里
神話では「地獄の果実」柘榴うまし糺ノ森柊
石塀を穿ちて石榴ここにあり多田知代子
石榴の実赤く皮まで赤くあり立花かおる
蒼天に笑い上がるや石榴爆ずたていし隆松
赤らみも恥ぢらふ乙女石榴なり田中勝
実柘榴や吾を親にす子の笑顔田中ようちゃん
石榴の実一粒づつの光ありたなべ早梅
ときめきにときめく我柘榴割れ谷相
柘榴の実赤き血潮の青春も谷口美奈子
石榴割る次は帝王切開す谷本真理子
隕石の伝わる池畔石榴揺る田畑せーたん
柘榴笑う赫き千の歯盛り上げて玉響雷子
母語る石榴の美味い疎開の地鱈瑞々
海臨む庭の石榴や轆轤引く竹庵
通学路の柘榴エデンの実より甘智同美月
山狭の献上の道黒柘榴千鳥城・いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
一粒の柘榴のかたち窄む口つーじい
柘榴割り一粒ひとつ味のよさ司蓮風
合鍵をポイとどぶ捨て柘榴噛む塚本隆二
ひっそりと石榴熟してルビー婚槻島雫
柘榴爆ぜ左右対称の小顔月城龍二
町裏で石榴貪る我落ちた月夜案山子
こそげとる石榴の肉の痛々し津島野イリス
石がきの石榴かほるや雨後の朝辻美佐夫
口開く愚痴溢れ落つ石榴の実辻本四季鳥
石榴熟る初恋ひとつことひらくつついぐれちゃん
車椅子散歩コースの石榴揺れ津幡GEE
石榴ざくろ孫八人の集ふ居間坪田恭壱
頂上で柘榴ほおばり我大将手嶋錦流
泣きやまぬ乳呑児あやす柘榴の実哲庵
ポロポロと涙こぼれて柘榴剥くてつねこ
解体と決まる実家の石榴食ぶ寺尾当卯
そのままでいいと嘯く柘榴かな寺元綾乃
紅唇や石榴喰うたか鬼子母神てん子
画布の朱のルビーになれぬ石榴かな天山郷
限界を破るがごとく柘榴裂け時小町
餓鬼大将は寺の子石榴赤々どくだみ茶
石榴は 赤い実だ匿名希望
鳥喰らう煩き婆の柘榴の実とこやまよもこ
柘榴裂く般若の面の顔をして十津川ポロ
母と吾のささくれ映えて割る柘榴となりの天然石
ミキサーに石榴の深紅より深く戸根由紀
サイの鎧にんげん味閉じこめザクロ熟す冨川きよこ
石榴割る統廃合の幼稚園とよ
青空がとてもお似合ひ柘榴の実豊岡重翁
Mリーグ開幕に落つ石榴かな鳥田政宗
潼関駅一枝の柘榴売る少女豚々舎休庵
一つ欲し通りすがりの石榴の実とんぼ
辛抱の多き定めか柘榴の実なか鹿の子
食べ方はこれでいいのか石榴の実なかかよ
石榴の実熟して手に取る手も老いて中澤孝雄
石榴割く若き女優の赤い爪中島葉月
石榴の実陽に透けてみる赤き玉中嶋緑庵
ショーウィドー備前の皿と石榴二個仲間英与
石榴の実笑ひ転げて欠伸して仲操
みんなしてこっち見ている石榴の目中村明日香
風受けてよじれよじれの木の柘榴中村こゆき
石榴触る食べ方知らず来し方も中山由
柘榴割れ朱の滴り風吹いて流れ星
石榴割れつぶつぶ口と手を染めし七五三五三
酸っぱ味も分け合い遊ぶ日の石榴夏雲ブン太
朝の雨静か柘榴の割れる音夏椿咲く
なまぐさきものごと知らず石榴食むなびい
音も無くひびの入りて柘榴の実生天目テツ子
いらいらの蓄積したる石榴かなにいやのる
この恋は酸っぱいだけの石榴の実にえ茉莉花
ウインナのタコの陳列ざくろの実西尾至雲
実柘榴や笑顔えがおのお食い初め西尾照常
節くれの指は母に似石榴の実西野和香
発禁の書物の魅力柘榴の実西村小市
石榴裂け零れる一粒は宇宙二重格子
石榴食う宝石商の父の指二十八
柘榴吸う老婆の家に猫五匹二城ひかる
甘き水孕む粒百割れ柘榴入道まりこ
フォークソング似合う夕暮れの柘榴の木二和田躬江
口開けて阿呆になりし石榴かな布村柚子
柘榴割け無口な子ども通る径沼宮内かほる
ケンケンパ空との間に石榴かなねがみともみ
子と石榴我は鬼子母となりぬるか猫塚れおん
冠をつけて大小柘榴の実猫辻みいにゃん
柘榴怖し赤き万歯を持つ小鬼猫またぎ早弓
石榴こぼる初めてを知る子の瞳野地垂木
石榴揺れブルトーザーに炸裂す埜水
ザクロの実グラナダに舞ふフラメンコ野瀬博興
君攫う冥界神よ石榴指す野中泰風
君呉れし石榴の重みの確かさよののクラブ
棘あれど喉の渇きに石榴もぐ野の小花
車窓より見ゆる教会柘榴生る野の菫
柘榴熟れ誰とも口をきかない日野ばら
石榴のつぶつぶ数える眠れぬ夜野原一草
道端の柘榴に祈る子宝を野山めぐ
手に石榴赤子しっかり宮参り徘徊狂人
いつ獲るか見上ぐ夕べの柘榴かな白雨
叩いたりほぐして沈む石榴の実白山一花
柘榴爆ぜ生臭き性曝け出しはごろも856
カルタゴの石榴は赤きやその花は実は橋爪利志美
初体験甘酸っぱさの柘榴なり橋野虎空
乳色の壁に石榴は懺悔せし橋本有太津
石榴食み彼の世で笑ふ祖父思ふ蓮見玲
石榴裂く鬼女に哀しき鬼無里かな畑中幸利
寺町の柘榴の庭や鬼子母神畑美穂
石榴買う不妊治療の三回目葉月庵郁斗
石榴割る妻の紅でも出せぬ艶葉月けゐ
身柘榴の色褪せし酒妣遺す花岡淑子
石榴食み飛び出す目玉何を見る花笠きく
石榴落つ地球は重き命なり花弘
蔓伸びる谷間の陰に石榴かな華花開く
隠し持つ宝石露わ石榴の実羽馬愚朗
引っ越しの日の朝庭の柘榴の木 ちょっと微妙かも?パピヨン
実石榴や緋色の涙こぼれそう林田リコ
「怒ってるのかな」石榴真っ赤っ赤原島ちび助
地雷には皆柘榴の実つかふべし原田民久
赤い実で誘えど毒持つ柘榴かな原善枝
実柘榴はどこか髑髏を思わせり春あおい
柘榴の実日ごとに割れて除く赤い目haru.k
人間の味片腹痛い石榴春爺
吾の手届かぬ光芒の石榴かなharu_sumomo
刺したのは人ではなくて石榴の実 春野ぷりん
一言を飲み込む妻の手に石榴葉るみ
裂け石榴ついばむ鳥よ届けなむはるるん1号
近寄りて手にしてみたき石榴かな伴田至誠
母が語り部怪しい果実石榴ひーちゃんw
柘榴爆ぜ我が煩悩と同じ数東の山
石榴割く吾の指ガーネットきらり東原桜空
悪女めく蟲惑の艶の柘榴かな東山たかこ
実の熟れて緋色占めゆく割れ石榴ひぐちいちおう(一応)
モヤモヤを吹っ飛ばしたり柘榴爆ず髭撫子
爆ぜ石榴亡母は子に背を向けて食み美竹花蘭
鬼婆になつた気分で割る石榴一石劣
泣き顔を見られてしまった実石榴にひと粒の種
恋歌や石榴の粒へグラニュー糖日向こるり
とめどなくあふれる本音石榴の実ヒマラヤ杉
石榴切るどこが食べれる実だろうかヒマラヤで平謝り
禁断のカニバリズムぞ石榴食む向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
縁側で手のひら柘榴ほうばって 原句ママひまわりと碧い月
バザールの朝早かりし柘榴の実姫川ひすい
鬼までも虜にしたる石榴かなひめのつばき
仏壇に柘榴供えて不幸詫び もしや「不孝」では…ひめりんご
実石榴や三年ぶりに引くルージュ平井由里子
戦時下に柘榴のピンク噛みしめる平岡花泉
大きなる石榴両手に異国の人昼寝
実ざくろや沓脱石に紅き下駄浩子赤城おろし
デッサンを終へて弾けし柘榴喰ふ広島あーやあーや
ソロモンの宮殿飾る数多の石榴広島立葵
更地待ち渋墨の家石榴爆ず広野光
吾子涙石榴の実ごと怒り見せ 「実のごとく」?琵琶京子
腹を割り本音話さむ柘榴の実琵琶湖亀
園庭の隅の石榴を眺むる子布衣野
実柘榴や逢摩時に口を開けFUFU
妊活や石榴の裂け目卵子見ゆ深澤健
卓上はセザンヌ風に石榴かな深蒸し茶
ペルシャなる姫も吾も食む石榴かな福井桔梗
傷口に唾塗りし祖母石榴の朱福川敏機
割れたまま柘榴の小道生家跡福田みやき
豪雨の日小さきルビー柘榴散るふくふく
石榴噛む渡せず捨てたラブレター福間薄緑
金婚の宿の濁手石榴かな 白磁の器の絵柄だとしたら微妙福弓
おとなりの洗車見守る庭柘榴まろん
幼き日呑んだりしたのは同じ柘榴藤井由庵
割り柘榴両手で包み齧りけり藤丘ひな子
食べどきや深くも割れし柘榴かな藤川鴎叫
売られゆく深く裂けたる柘榴群れ藤川雅子
割れてきた石榴に想う母の顔藤沢・マグネット
血族の途絶えし館石榴熟る藤原涼
烏と吾石榴目当ての無人駅伏見レッサーレッサー
主なき庭たわわに実る石榴かな藤本だいふく
石榴三つポストの上の忘れ物二見歌蓮
石榴割るペルシャの市場紅き汁船橋こまこ
帰り道「家路」聞こえて柘榴かな文月紺色
散歩道今年も柘榴笑ひけり古道具
口立てて四方向きたる石榴かな古谷芳明
初石榴甥がひたすら目を丸くヘッドホン
青空と神話が似合う柘榴かな鳳凰美蓮
石榴むく甘美な誘惑涅槃かな宝松苑
崩れる岩の如く柘榴ぽろぽろ暮戯
ガハハハと笑いだしそうなワレザクロ星雅綺羅璃
石榴ばっくり明智小五郎の出番 乱歩の「柘榴」を踏まえて?ほしのり
裏庭で私を見てる柘榴達星まよる
石榴爆ぜ流涎拭う鬼子母神母墨
柘榴爆ず母さん私行ってくるポップアップ
結納の終わりて柘榴乗るサラダ堀川絵奈
食べたいと石榴は知らぬ母の事堀籠美雪
石榴食い頬に広がる甘酸っぱ本気のめんそ
外国人は苦手柘榴の実は硬い本郷てい
生々し紅きつぶつぶ石榴の美本間美知子
煩ひの無き独り身へ柘榴の実前田冬水
脳天まで登り詰めるか柘榴真喜王
石榴喰ふ君の一言狂気かな雅蔵
石榴かな父の目めくる納棺師眞さ野
食べたことあるのかダリは石榴の実増山銀桜
石榴爆ぜ細胞分裂の途中町田勢
石榴裂け生への未練笑いけり松井酔呆
更年期乱調の身に石榴かな松井貴代
柘榴の実ぎっしり子孫埋ってる松井英雄
真っ赤色騙され柘榴酸うい顔松浦宣子
実柘榴や晩鐘とおく夕陽落ち松尾祇敲
ひとしずく水辺の波と柘榴かな松尾美郷
西域の婚礼祝う割れ石榴松尾老圃
美しさ秘めてごつごつ石榴の実松風花純
枝先の地に触れそうな石榴かな松平武史
流行り目はぶちぶち裂ける石榴の実 結膜炎?まっちゃこ良々
宝石と見せて口にす柘榴かなまつとしきかわ
石榴熟れ亡夫と分けあい喰みし日も松永好子
一年に一度柘榴をくれる叔母松野蘭
記憶なく記録もなしの石榴かな松原隆雄
三日目の解熱の夜の柘榴かな松本厚史
石榴まではいはい残り二メートル松本俊彦
おもたげに赤き柘榴の四つに割れ松本牧子
人跡が抉る石榴にボクを見た的場白梛
来年は石榴に背伸びで届くかなママビギナー
石榴の実手紙を残し去る彼女真宮マミ
遠い日や石榴目当てに祖母の庭まやみこ恭
兵俑を見守る古都の石榴かな瑪麗
北西のちちははの寝間石榴の実毬雨水佳
柘榴熟れ最後の家族旅行かな真理庵
柘榴には不思議な力皆笑うまりい木ノ芽
口閉じて物言いたげな石榴かなまるにの子
血は紅し枕辺に置く石榴の実丸山隆子
おほかみに成れず柘榴は咆哮すまんぷく
柘榴割れ現る粒こわごわ食ふ美衣珠
柘榴の実ぎっしり詰まり重くなり三浦ゆりこ
恐れ入る右手に柘榴持つ善女三上景子
石榴熟れ粒の重みや撓む枝神酒猫
カンバスに卓子に同じ柘榴熟れ三雲萠永
破天荒な息子の巣立ち柘榴かな水上康男
裏山の囲う鉄線柘榴かな水谷未佳
母を待つ石榴の下でけんけんぱ水タマリ
まよひ児の泣く石榴下鬼子母神みちお
石榴たわわウォーキングの新コースみちむらまりな
アラジンよ「石榴に変えて手榴弾」美津うつわ
熟石榴夕陽の紅こめ艶やかに光月野うさぎ
柘榴下げおしゃべり好きな義姉の来てみづたま
石榴とはルビーの種があるらしいミツの会
おままごとルビーごはんに石榴かな光森早苗
投げつけし離婚届や柘榴食ぶ満る
石榴食む子供の顔は吸血鬼緑区のへこ
いにしえの薬用効かす実の石榴ミナガワトモヒロ
石榴食う指先赤く染まりけり湊かずゆき
実石榴や石田さんちは子沢山みなみはな
本当を弾けさせてと哭く柘榴峯島妙
星形の切れ目の奥に石榴の血嶺乃森夜亜舎
不器用にはじける柘榴哀しかりみやかわけい子
粒ひとつひとつに石榴息づいて深山柚仁
実柘榴の割れて見つめる逮夜かな宮本モンヌ
熟すほど石榴のいびつ白磁器に妙
石榴食ひ黄泉比良坂(よもつひらさか)うらめしきむじか
割れ目より外をうかがう石榴の実霧想衿
柘榴まるごとかじろうとする園児かな睦月くらげ
羨望の古代女王や石榴の実むねあかどり
柘榴喰むほとばしりたる命かな村上の百合女
あの場所でいつも見ていた石榴の実村のあんず
隣人の寡夫より石榴手折りおりむらのたんぽぽ
薬指弾けた柘榴輝いて恵のママ
実石榴や弾けて顔を出し笑ってら恵美笑
また双子ざくろ生る庭さんざめく目黒智子
還暦にしてオールかよ石榴の実めでかや
救急の父の入院石榴汁 石榴の果汁…?毛利尚人
子に貰ふ石榴飾るや保健室 子=生徒?茂木りん
実柘榴や子らの帰りを待つ日暮れ望月ゆう
見上げれば柘榴の乙女微笑まれ元村幸月
石榴とや読み仮名知りし幸運ぶ樅山楓
洋館のエステサロンの石榴熟れ百瀬はな
人を喰ふ鬼の涙や石榴の実森薫
月足りて子いぬ六ぴき石榴爆ず森上はな
石榴裂け世間の不満聞いてやる森佳月
ぷちぶちと肉のようなる柘榴かな森嶋ししく
村落の夜灯たらふく裂け柘榴森太郎
内臓を曝け出すぱこんと柘榴森ともよ
木登り手伸ばしたる石榴あと少し森茉那
ルビー婚柘榴飾りし我が夫よ諸岡萌黄
鬼子母神石榴喰うたか嘴の紅もろ智行
背を丸めきゅるり柘榴を穿る姉山羊座の千賀子
柘榴の実逆さに登る滑り台八木実
石榴割れぽろり本音が剥き出され矢車草
庭の子ら顔すぼめおり石榴かな矢澤かなえ
柘榴摘む医者の娘の細き指矢澤瞳杏
朝散歩ざくろ狛犬口開けてやつがねすわこ
烏啄む石榴や古戦場八手薫
石榴熟る増大し私の腫瘍柳井るい
柘榴たわたわ夕日と石の鬼子母神八幡風花
石榴の実割って眺める赤眩し山内泉
我もまた鬼子母神だわ石榴食う山内文野
日々たわわ隣の石榴頂く日山内美紀
奈良の旅子規よ喰ふたか石榴の実山尾政弘
何もかも残念無念石榴食む山川腎茶
三歳児柘榴食う祖母じっとみつめ山口アロハ
犬吠ゆる塀から覗く柘榴あり山口香子
石榴割れ鬼にも似たし大怖い山口雀昭
実柘榴や二つ違ひの三姉妹山崎かよ
気前よく石榴を分つ餓鬼大将山崎力
そっくりよざっくりざくろあれみたい山崎のら
子種減り旨き柘榴も知らぬ今山田季聴
お日様のレプリカみたい石榴の実山田啓子
初めての写真機覗く石榴の実やまだ童子
釈迦牟尼の拳の如き石榴なり山田はち
ヨガの木のポーズで見入る柘榴かなやまな未
あのときはこれしかなかった石榴の実山野花子
高枝の柘榴パックリ赫々とやまもとのり。
サイレンの止まぬ救急聞く柘榴山本八
女児帰る西洋館の石榴の実山本美奈友
柘榴色絵の具の色に欲しかりし山本葉舟
開けた口柘榴に重ね祝い酒やまやま
たわわなる石榴の枝へ結う御籤山姥和
赤い実のこぼれて石榴花模様ゆう
柘榴見て宝石だねと児微笑む雪しおり
切り札は赤き薬と石榴の実ゆず柴
軍艦巻きに盛られそうなる石榴の実柚木啓
紀州旅稀有な石榴に小躍りす夢一成
グラナダよ赤き石榴のカクテルよ陽光樹
「旬お食べ」石榴ひとつぶ子の口へ夜香
赤い歯と柘榴を嫌う母と祖母横須賀うらが
人類よ戦争やめて石榴食え横田信一
子守社に石榴ありとて児ら騒ぐよしぎわへい
箱一つ持って新部署柘榴かな吉田かのこ
柘榴はぜ空に散らばる星になる吉田春代
きれかったね石榴を据えて爪眺む吉名月
キャンバスに塗り込めし赤柘榴なりよしみち
石榴の実少しためらい口ふくむ吉満乃苗
喰ふてみろと言わむばかりの石榴かなYoshimin空
日本猿石榴むさぼり食い荒らす四葉の苦労婆
おとうとはママのおなかに石榴かなよみ、ちとせ
遠目より夥しきや石榴の実楽和音
赤組の子らマスゲーム石榴の実璃子
柘榴熟れ分家の孫は八人目リコピン
異国にて渋さひとしおザクロ噛む凛
石榴粒珊瑚の二連の数珠を買うルージュ
石榴一つ光こぼれる赤が澄む瑠璃ホコリ
父好む仏間にでんと石榴の実麗詩
石榴の実若きし頃の恋の味 「若き頃」?「若かりし頃」?わきのっぽ
ペルセポネの帰宅を告げる石榴かな渡辺香野
実ざくろの皮剥く指は真黒にわたなべすずしろ
差し出した不貞の証拠柘榴の実渡辺桃蓮
皮割れば石榴の粒の瑞々し渡辺陽子
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
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◆俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。
◆ひとことアドバイス
●俳句の正しい表記とは?
目には毒 垣根越え来る 割れ柘榴松永佳子
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●季重なり
颱風にもまれて遊ぶ石榴かなほこ
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。
まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「石榴」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●兼題とは
甘い香あなたの髪が果実のよう春風
空仰ぎ思わずぶどうつかむ孫松田加代子
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「石榴」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
課題の字ざくろと読めず愚かしい高木俊郎
確かに「ざくろ」ではありますが、これを季語と捉えるのは少々無理がありそうです。
●季語「石榴」が比喩に
母怒鳴る我の心は石榴かな伊東海芋
ここからは柘榴のごとく散り散りにたなばたともこ
石榴ほどのわだかまり君は元カノふくろう悠々
君となら石榴のような恋がいいみなづき光緒
季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。
●確かに「石榴」とはあるが……
子に問われ読んで聞かせる石榴かな丹波さおり
鬼子母神でしょうか、ギリシャ神話でしょうか。お話の中の「石榴」となると季語としての鮮度は落ちます。
気まぐれに柘榴ジュース買う駅舎桐山榮壽
初めての石榴ジュースだ大人気分小畠あかり
柘榴のジュース給湯室の噂内藤未来仁
収穫した石榴をジュースにするのなら有りだと思いますが、製品となっている石榴ジュースは、ちょっと微妙……。
●花石榴は夏の季語
責任の所在も知らず花石榴小仲翠太
母になる前の母知る柘榴花吉成小骨
「花石榴」は、夏の季語になります。花と実は別々の季語です。
●「石榴忌」は……
柘榴忌のカフェでトリック談義かなかめよかめ
「石榴忌」は江戸川乱歩の忌日です。七月二十八日なので、季節も違いますね。
●ちょっと句の読みに悩みました……
旅に病みをんな玄奘裂く石榴acari
女玄奘とは? 小説かドラマなのでしょうか?
実石榴や手の届かないひとひかり岡山小鞠
下五「ひとひかり」は、人? 一?
石榴盗る悪餓鬼らせる粒勘定落句言
「悪餓鬼らせる」とは、「悪餓鬼等」「せる」?
柘榴食むメソポタミアは腹の中木口まり子
古くからメソポタミアで栽培されていたというから、それを踏まえての句かもしれませんが、下五「~は腹の中」は?
その名をば武器に取られしザクロかな霜川このみ
「石榴」に名前を取られた武器って、何だろう?
祖母の文枠からはみ出し柘榴かな不器用河童
絵手紙という意味でしょうか…? 絵に描かれた季語は、季語としての鮮度が落ちます。
赤ちゃんが下り物になる柘榴割る前田昂平
流産したという意味…??
石榴実や祖父はおいこれ警察官メディックス千里
祖父は「おいこれ」と威張る警察官だった、という意味? 「石榴実」という言い方も気になります。
月経のやうなものゐまだ柘榴剥く宮部里美
「~ものゐ」? 「ゐまだ」? 「未だ」だとすれば仮名遣いは「いまだ」ですが。
出来上がった句は、少し時間をおいて見直してみましょう。客観的に自分の句を読み直してみると、意味の伝わり難い部分に気付くことがあります。
お待たせしました!9月の兼題「石榴」の結果発表でございます。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。割った石榴の鮮やかさに神秘性や不気味さ、不穏さを感じたり、石榴そのものにある異国情緒を描き出したりするような句が多いなと感じました。11月の兼題「千鳥」もふるってご応募ください。(編集部より)