夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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12月の兼題

「雪催い」

9月の審査結果発表

兼題「石榴」

 お待たせしました!9月の兼題「石榴」の結果発表でございます。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。割った石榴の鮮やかさに神秘性や不気味さ、不穏さを感じたり、石榴そのものにある異国情緒を描き出したりするような句が多いなと感じました。11月の兼題「千鳥」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
あちらからはこちらが邪教石榴の実

元野おぺら

夏井いつき先生より

 ペルシア辺りの原産地からヨーロッパや中国へ広まっていったとされる石榴榴は、各宗教の神話にもでてくるほど、古代から食用されてきた果実です。
 一読、昨今の社会情勢を言い得ている一句だと、と目にとまりました。信仰の自由は守られるべき当然の権利ですが、それが紛争の引き金になってくると、世界は混迷を極めていきます。どちらもが、自分たちこそ正しい信仰を持っていると主張し合うのですから。「あちらからはこちらが邪教」という言葉は、事実でありつつ、分かり合おうとしない人類の永遠の呪文のようにも聞こえます。
 信仰のみならず、人々の分断が進んでいる世界。神々の代々から生き残ってきた「石榴の実」は、そんな人類をケラケラと嗤うかのように、赤い種をこぼします。

地
実石榴やイラン国旗に剣と月

沼野大統領

「イラン国旗」は、緑・白・赤と三分割された真ん中、白の中央部に一本の剣と四つの三日月があしらわれています。「実石榴」と「イラン国旗」、モノとモノとのストレートな取り合わせですが、深い歴史が背後にぬっと立ち上がってくるかのような作品。

セザンヌのザクロのやうな石榴もぐ

遠峰熊野

 美術の教科書で見たことのある『ザクロと洋梨のあるショウガ壺』を思い出しました。赤というよりはオレンジがかった絵の「ザクロ」に対して、自分が捥いでいる実物は「石榴」。表記の上での工夫が、句想を支えています。

地母神の口腥し石榴食ぶ

葦屋蛙城

「地母神」とは「ちぼしん」「じぼしん」と読み、大地の生命力や生産力が神格化されたもの。その女神に対して「口腥し」とはなんとリアルな感知でしょう。食べる度に、その幻想を生々しくさせるのが「石榴」という果実の本質なのでしょう。

火竜でも生まれるかしら石榴買う

弥栄弐庫

「石榴」の独特な赤、粒粒が見え隠れする割れ目。見ていると確かに、何かが「生まれる」のかもと思わせます。「火竜でも生まれるかしら」という想像の楽しさ。「買う」の一語も賑やかな市場を連想させて効果的です。

踏み潰す石榴ざくざくロンリネス

相生三楽

 今回の投句の中には、「石榴」と「無花果」が混乱している? と思わせるものもあったのですが、この中七「ざくざく」は明らかに「石榴」ですね。「石榴ざくざく」と韻を踏み「ロンリネス」へと展開する調べが、若き日の感傷に触れてくるかのようで。

人
  • 酸っぱさと痛さは似てる石榴もぐアンサトウ

  • 実石榴や卵子貯めねば子は産めぬ赤尾双葉

  • わたくしは優しき柘榴剥いてみよ足立智美

  • 生ぬるき石榴はヒトになる途中綾竹あんどれ

  • 実柘榴やドグラマグラが終わらない綾竹ろびん

  • 石榴の実僕の内耳が膿んでいる東京堕天使

  • 貴人ワタクシ笑ひて石榴買ひ落すいかちゃん

  • 石榴剥く太陽丘が生ぬるいイサク

  • ゐないよりゐるのしづけさ石榴食ふたけろー

  • 潰される柘榴神などいないんだ半熟かさぶた

  • 銃創を譬ふ軍医の指す石榴HNKAGA

  • 罪状は石榴を美しく食べた広瀬康

  • 讃美歌を歌うな石榴食う口でべびぽん

  • 石榴爆ぜるや地球儀にソ連の名RUSTY=HISOKA

  • 石榴笑ふペルーの木乃伊叫びをり大久保加州

  • 石榴囓る粒のたいさう賑やかで北村崇雄

  • 柘榴食べ秘密共有してをりぬEarlyBird

  • 石榴あり生家はここにあったんだ相沢薫

  • 手のひらに日の透けている柘榴かな愛燦燦

  • 石榴酸い母はぼくより兄が好き青井えのこ

  • 本閉じて入日の窓の柘榴かな青井晴空

  • 石榴ざくろ耳の形はきれいなの青居舞

  • 実柘榴やはなから駄目な戀だった蒼空蒼子

  • 柘榴が弾けて旧友の馴れ馴れしさ青空豆千代

  • 裸婦像に石榴ぶつけてくるなんて青田奈央

  • 「山門不幸」の庭爆ぜる柘榴よ青野すみれ

  • 嘘つきの吾を褒めそやし石榴食うあおのめ

  • 火にくべて柘榴の皮の悶えかな蒼鳩薫

  • 喧騒に柘榴はじけて鄙の空青松紫雲英

  • 口づけの乾く石榴の実をまわせ青水桃々(俳句迷子の会)

  • 竹林も家もなくなり石榴垂る赤尾てるぐ

  • 石榴爆ず脳に萎縮の兆しありあかねぺん銀

  • 太陽の最期石榴の爆ぜ崩れ赤富士マニア

  • 実石榴や村の人なら埋めました赤馬福助

  • 柘榴より淋しい音の韻きけり赤間学

  • 実石榴や欲を煮詰めた色ざらり赤目作

  • 傷深き地球の上の柘榴かな赤尾実果

  • 窯たきの火入れの祈願石榴の実愛柑

  • なぐり書きの「私有地」ぱっかんと石榴明惟久里

  • 柘榴の食べ方むづかし赤いつぶつぶ聰子

  • 木炭の詰まりし爪や石榴食ふ空地ヶ有

  • 黄昏の色を深くし石榴の実あきちゃんはようせい

  • 鬼の首飾りのごとき大柘榴秋野茜

  • 実石榴やお前のいない世界ここ秋星子

  • 柘榴もぐ隣家の嫁の白い指空き家ままごと

  • 割れ目から宇宙が見える石榴かな芥茶古美

  • 覗かれる事にも慣れし割れ柘榴あくび指南

  • 牝の目で割れた柘榴を差し出され淺井翠

  • 夕日をひとつずつ詰め込んだ石榴朝雲列

  • 虐待のニュースや石榴生のまま朝方静流

  • 9条を写す課題や石榴爆ず朝霧さら

  • 夢日記書き終へ石榴ぱつくりと明後日めぐみ

  • 核デブリざくざく石榴弾けさうあさのとびら

  • みづに浮くざくろ沈んでゐる石榴芦幸

  • 柘榴の実今は心底笑えないあじさい卓

  • 神々の愛した柘榴超酸っぱあすなろの邦

  • 石榴苦したくさん嘘をついたから藍創千悠子

  • 実石榴や党首決定二秒前あたなごっち

  • 石榴熟るやつの笑顔は嘘くさいat花結い

  • 家系図に鬼の文字あり柘榴の実あなうさぎ

  • 子の哀れ柘榴に嘘は通じずに我孫子もふもふ

  • ピアソラの破調弾けり石榴の実我孫婆

  • 泪して晴れ晴れしたる石榴かな阿部八富利

  • 石榴爆ぜ上目づかひの鴉かな天風月日

  • 裂け柘榴ウソつく夫の耳動くあまぐり

  • 魂を吸い取るか石榴ぱっくり雨戸ゆらら

  • 庭の木の石榴実りて仲人来天鳥そら

  • 石榴熟れゆく吃逆の治まらずあまぶー

  • 石榴噛む君と太陽八雲立つ天海楓

  • ぼろぼろとほぐされ石榴転生すあみま

  • 二冊目はアガサ深夜に割る石榴雨乙女

  • お日様と雨で満タン石榴爆ず雨李

  • 太陽の子であり孫である柘榴あらい

  • リンパ液吸いたるやうに石榴喰むあらかわすすむ

  • 石榴爆ぜ宙の高さに負けたのか在在空空

  • 鬼の子とお手玉遊び柘榴かな安春

  • 伐採の柘榴の鮮血見えぬかな杏っ子

  • シャンデリアゆらり石榴とカルヴァドス飯塚煮込

  • 腹の業はじけて赫き石榴かな飯沼深生

  • かごめかごめうしろで石榴喰ふはだれ飯村祐知子

  • 柘榴の実時に命は軽すぎる家守らびすけ

  • 絵仏師の炎の贄や柘榴爆ず五十嵐真人

  • 石榴食む女あられもなき口に猪狩鳳保

  • 死ぬ勇気無いから生きる石榴割るいくたドロップ

  • いじめたき石榴きゆむきゆむ爆発す生野薫

  • 鬱憤の溜まるはらわた石榴の実郁松松ちゃん

  • 見られごろなる実柘榴の割れ具合池内ときこ

  • 細胞のひとつはがしてざくろ剥く池田悦子

  • 口開けし柘榴や割れるぞ割れるぞと池田桐人

  • 肝癌のごとく石榴の肥立ちをり池之端モルト

  • 冥界へ縛る柘榴の実の四粒伊沢華純

  • つかれた脚じつとじつと見石榴ぐしゃ石井真由美

  • ざくろ爆ず嘘の塊爆ずごとく石塚碧葉

  • 柘榴裂く言霊てふは恐ろしい石塚彩楓

  • 駱駝らに揺られてきたか石榴裂く石堂多分

  • 石榴割る一つ溢れる吾の昨日石原しょう

  • 病室を出て泣く人のあり柘榴の実石原由女

  • 胎内の赫の記憶や柘榴食む泉晶子

  • 星座表真似て置きたる石榴の実和泉攷

  • 人肉を喰うな石榴割れてゐるいずみ令香

  • 夜半一人かたき石榴の種をはく遺跡納期

  • マン・レイの余韻に石榴爆ぜにけり石上あまね

  • 実柘榴や父に扶けの言葉なしいその松茸

  • ばりばりと割つて石榴のガレ場めく板柿せっか

  • 口笛のかたちで柘榴吸って吐くいたまき芯

  • 石榴の実ぎしぎしと鳴る百の赤一井かおり

  • 聖母子の手と手に柘榴裂けたまま市川りす

  • 庭の朝はクレッシェンド石榴の実市原為参

  • 若き肉体の発露柘榴赤しいつかある日

  • 企みのもろもろ実石榴赤黒き一久恵

  • 秘め事を枝から嗤う柘榴かな一秋子

  • 実石榴や全て晒してこそ大人一愼

  • 石榴ポロポロ指にたましひのかほり一杯狸

  • いままさに割れんと笑ふ柘榴かな伊都

  • 石榴酸し職歴欄のがらんだう伊藤映雪

  • 石榴割るためらひ傷の残れる手伊藤恵美

  • 夜の花鋪店番は歯をむく柘榴伊藤順女

  • マシンガン充填された柘榴の種伊藤テト

  • 実柘榴の密吾の胎の虚伊藤小熊猫

  • 人体の真赤なところ柘榴の実糸川ラッコ

  • 夜を吸ふひやりと重き石榴かないとへん製作所

  • カウベルや爆ぜる柘榴のゆうらゆら伊ナイトあさか

  • 人ごみのユダ虚ろなり裂け石榴伊奈川富真乃

  • とても割れぬ叱り過ぎたる夜の石榴稲畑とりこ

  • 人類の月に立った日石榴割る居並小

  • すぐ折れてしまう手の爪柘榴割る井上鈴野

  • この恋を終えると決める石榴割る井納蒼求

  • 拳より心臓は大きめ石榴井原昇

  • 実石榴や遠い記憶の落下点いまいみどり

  • 十字架のやうな切り込み石榴割る伊予吟会宵嵐

  • 見つかって鬼と柘榴を跨ぎ出る伊予素数

  • 石榴ほおばる冥界の落とし穴伊代ちゃんの娘2

  • 柘榴まだ私の中にある悪夢いりこのにゃらつめ

  • 石榴喰む冥界の日の始まりか岩清水彩香

  • 別れたとまた姉の言ふ石榴かな磐田小

  • 石榴熟れ裂かれ穿られ吐(ほ)きだされ岩森春宇

  • 青春を確かめるため割る石榴イワンモ

  • 逃げて逃げて逃げる夢ざくろ熟れるインドアみどり

  • エルドラド笑う漢は石榴食むうえともこ

  • 星々のしづくぎつしり石榴かな上原淳子

  • 別荘の実柘榴痩せてゆくばかり鵜飼ままり

  • まだちゃんと泣けない夜や柘榴爆ずうからうから

  • 考よまだ母連れてくな石榴裂く宇佐美好子

  • 石榴もぐ恋は呪いのごとき色うすい木蓮

  • フラスコへ管から噴火して石榴うた歌妙

  • 傾ぐ家の丑寅戌亥に柘榴の実内本惠美子

  • 昼前のドアホン石榴と回覧板うつぎゆこ

  • いつまでも割れぬ柘榴や三回忌宇都宮駿介

  • その一塊を母は離さず石榴の地靫草子

  • 掌に石榴泪は乾かない卯之町空

  • 石榴裂け朝の光を屈折す海口竿富

  • 実石榴のたわわに揺れて独りかな海野青

  • 子の泣きて寝てまた泣きて石榴爆ずうみのすな

  • 子を宿す子宮の震え石榴の実梅里和代

  • 司書室に忍ばせておく柘榴かなうめやえのきだけ

  • 感傷や石榴は腹にたまらない浦野紗知

  • 石榴熟す抗がん剤はひとつ減り麗し

  • 私の中の饐える柘榴が凄む吽田のう

  • 死ぬ夢をみたのカリリと柘榴噛む江川月丸

  • 石榴お食べとおじさんの薄い笑み江口朔太郎

  • 楽園を追放された手の柘榴蝦夷野ごうがしゃ

  • 実石榴や火山性微動増加中蝦夷やなぎ

  • 柘榴揺れ苗字残らぬ家系かな絵十

  • 石榴喰む身の置きどころ無き夕べ江戸きりこ

  • ぱっくりと口開け石榴の覚悟なりえのき絵巻

  • この人と捻じれ転がる日々柘榴榎美紗

  • やつちやんの逝つて十年石榴の実朶美子

  • 言っては駄目言わぬが楽と石榴粒絵夢衷子

  • 耐えかねて壁に擲つ柘榴の実えらいぞ、はるかちゃん!

  • 密やかや石榴の罅のなかの色えりべり

  • フェラーリの出庫遮る石榴かな円錐角膜

  • 実石榴や紅毛碧眼の媼旺上林加

  • 素描画に微かな歪み割柘榴近江菫花

  • 臨月の出臍や石榴熟す音おおい芙南

  • 傘閉ぢて石榴見上げる初潮の日大岩摩利

  • ジャンプで獲った柘榴の旨い訳大江戸小紋

  • 無伴奏柘榴搾りて耳澄ます大越総

  • 日当たりの過ぎて褪せたる石榴かな大塚恵美子

  • 血縁を切りたくてなお喰う柘榴大野美波

  • 柘榴食うこの世あの世と行き来して大道真波

  • 俎板に無限の傷や石榴の実大和田美信

  • 柘榴食み罪深き舌悔ひにけり岡井稀音

  • 石榴のくち曙色にひらく空おかげでさんぽ

  • 欲望の指が穿る柘榴かな可笑式

  • 柘榴食むひとり取り残されてゐるおかだ卯月

  • さあここへと先に腰掛け石榴割る岡田瑛琳

  • 今年は切ると言った石榴の実のたわわ岡田きなこ

  • 手のひらに心の重さ石榴もぐ岡田ひろ子

  • 柘榴爆ぜ聖書に赤きヘブライ語岡田雅喜

  • 石榴ぼろぼろ実家に姥を捨ててきた男鹿中熊兎

  • 石榴手に狼少女育ったか岡村理江

  • 実ざくろや内緒で祈る子だくさんオカメインコ

  • 教卓の殴り書と石榴の実小川さゆみ

  • 君の癖数へ石榴の実を食めり小川しめじ

  • 胸を噛む火宅の過去や柘榴噛む小川天鵲

  • ていねいに暮らすのやめた石榴割る小川野雪兎

  • 芯の紅こぼして石榴かるくなる小川都

  • 老人が怒る石榴の下の吾をおきいふ

  • 手の平にどくんどくんと石榴の実オキザリス

  • 柘榴裂く吾を裂きすすむ内視鏡沖庭乃剛也

  • 針千本丸のみしたい日の石榴荻原湧

  • 癇癪の爆ぜて石榴のおさまらぬおこそとの

  • 生者死者ざくりと分かつ柘榴かな十猪

  • 寧ろ実に毒ありさうな柘榴かな小島やよひ

  • 手造りの祠の前の柘榴かな小田ビオラ

  • 風に寂ぶ石榴夕日がざらつきぬおだむべ

  • ひとさらいくるよ柘榴の実わらうよ越智空子

  • 実石榴や息子が口を閉じた夜おでめ

  • 冥界は斯くの如しか石榴割る音羽凜

  • 昨夜まで黙秘の柘榴落つるなり御成山

  • 「武蔵」積む中学生や石榴食うぉ村椅子(志村肇)

  • 石榴割れ癌細胞の零れ出づ折口一大

  • 地に臥した柘榴飛び交う星の死よ械冬弱虫

  • 実石榴や煙草の男何を待つ海峯企鵝

  • 記憶てふ臓器ありせば石榴の実火炎幸彦

  • ろうそくは未だ燃えている柘榴落つ角志賀

  • 石榴割るフェリーの時間もうすぐよ風花美絵

  • 日曜が嫌ひで好きで柘榴割る霞山旅

  • 義母の庭石榴の割れ目から本音かしくらゆう

  • 断層の上に原発石榴熟る樫の木

  • まだ曇天続きまだ割れぬ石榴鹿嶌純子

  • 吾よりも石榴爆発もう赦す華胥醒子

  • 通夜式のちいさき灯り石榴の実梶原菫

  • 民草の無力石もて石榴打つ亀田荒太

  • 石榴喰う独り更年期の火照り風薫子

  • 末つ子の理屈ほろほろ石榴撫づ片岡六子

  • じやんけんに勝つて石榴のひと齧り加田紗智

  • 石榴爆ぜ清王朝は崩壊す帷子砂舟

  • 頓服を手放せなくて石榴かなひだまりえりか

  • 石榴落つ青き衣のマリア像桂子涼子

  • 友だちになる直前の実ざくろよ桂もふもふ

  • 溜め込んだ悋気渋みの増す石榴桂葉子

  • 肺胞はざくろのかたち石榴吸ふ月東ソコラ

  • 懺悔終へ朝清々し石榴の実加藤水玉

  • 柘榴噛む君に虚言は似合わない加藤麗未

  • 石榴裂くめりめりと裂く明日時効かときち

  • 腹の子が求めし柘榴もらい受け金澤孝子

  • 讃美歌の透き通る朝ザクロの実叶田屋

  • 外科医めくナイフ捌きや石榴の実仮名鶫

  • 石榴爆づ墓誌に赤字の吾が名あり金子泰山

  • 実石榴に隠しおほせぬ野心かな釜眞手打ち蕎麦

  • 柘榴裂く踏み絵踏まんとその信者花蜜伊ゆ

  • 割れ石榴奔放な血は妹が継ぎ神長誉夫

  • 実石榴の骨吐くごとく種を吐く紙谷杳子

  • 我老いし古里柘榴はちきれる亀井汀風

  • 石榴食む子宮喪失せり朝よ   亀岡恵夢

  • 二冊目の十年日記石榴食む亀子てん

  • テーブルに石榴今は発火寸前亀山逸子

  • 石榴割る月で数へて母を看て亀山酔田

  • 実石榴や鞄一つの旅終わる鴨の里

  • 石榴食うシルクロードの空の果てかもめ

  • どす黒い石榴胃に穴開いてたで花紋

  • 柘榴屠る昼また乳房張りくる加裕子

  • 柘榴熟れ床のこぼるる白き嘘刈屋まさを

  • 悪態は流血のごと石榴の実川越羽流

  • 陽光の上澄み吸ひて石榴の実翡翠工房

  • 小石割る石榴のような不信かな翡翠時雨

  • 学童を終えて柘榴は破れにけり川辺世界遺産の居候

  • 石榴怖し騙し絵のごとだくだくと干天の慈雨

  • 大割れも小割れも石榴日和かな閑酉

  • 不規則に裂けて暴るる石榴かなkey

  • 幾度も自画像殺めけり石榴喜祝音

  • 陽の射すや石榴の割れる音のする菊池克己

  • 月蝕は緋色に欠けぬ石榴割る岸来夢

  • 忘れたい記憶ばかりや石榴割る北大路京介

  • 髑髏日露石榴こぼれてあらあら北藤詩旦

  • 転職はせぬ石榴ぼろぼろ剥がすきつネつき@Vtuber

  • 石榴熟れ荒れ始めたる叔母の庭木寺仙游

  • 実柘榴のころがつてゐる次長席着流きるお

  • つなぐ手のぬくみよ石榴の沈黙木下桃白

  • オーナーは夜遊び石榴熟るる庭木ぼこやしき

  • 実柘榴の弾けて一郷動き出す木村隆夫

  • ブツブツと呪文飛び出す石榴かな木元紫瑛

  • 晩婚の姉と離婚の吾と柘榴Q&A

  • 柘榴蹴る友はあの子と手を繋ぐ河村静葩

  • 坂道の石榴豊作災害来カワムラ一重

  • 声帯の無き喉硬し石榴の夜川村ひろの

  • 天恵の雫の満つる柘榴かな川本宗利

  • 三者面談庭の石榴酸っぱい久えむ茜咲

  • 骨壺に父納む日の石榴の紅よきゅうもん@木の芽

  • ざくろ爆ぜ一粒ごとに昔あり鳩礼

  • 海風や画材の石榴ぶら下げて杏乃みずな

  • 逆光のつぶてと成りて実石榴は霧賀内蔵

  • 大石榴もぐや奥歯をたしかむるギル

  • 沈黙はいま微笑みへ柘榴熟る菫久

  • 柘榴の実不妊治療のもどかしさ近未来

  • 柘榴爆ず吾の怒りは封印すくぅ

  • 柘榴落つ子宮なき身の軽きこと句々奈

  • 柘榴に棘我が血のなんとどす黒きくさ

  • 腫物もわが身の一部熟れ柘榴久信田史夫

  • 健康な臓器はどこだ柘榴喰うくすみ輝く

  • 石榴口あけた空みあげ口あけたくちなしの香

  • 実柘榴の裂けて宇宙が生まれた日くつのした子

  • 石榴売る貌はカフカスサハリン島國本秀山

  • 石榴割れ無住寺院へ陽を集む久保田凡

  • 実柘榴や首を絶たれしマリア像熊谷温古

  • 作業着の父の土産の石榴かな紅三季

  • 少年のうなじの傷や柘榴に陽蜘蛛野澄香

  • 柘榴落ついつか地球も瞬くよ曇ゆら

  • 段畑のざくろに泣きにゆく母よ倉岡富士子

  • みづからを出たがつてゐる石榴かな眩む凡

  • 石榴つぶつぶ五女の名はトメ栗田すずさん

  • ヒラメキは石榴が割れたそのあとに空流峰山

  • 耳石動き石榴の実ぐるぐる紅し久留里61

  • 石榴はむ子らの納得出来ぬ顔黒瀬三保緑

  • 石榴もぎ旨いと我の掌へ黒猫さとみ

  • 割れ柘榴腫瘍マーカー精検に桑田栞

  • 欧州よガザよザクロは割れているけーい〇

  • 少年法改正ざくろ赫黒しげばげば

  • 石榴裂けひとつひとつにひとの顔健央介

  • 石榴爆ぜたり手に硬き子宮の腫れ謙久

  • 石榴裂ける生まれる前の記憶かなケンG

  • 柘榴は錬金術師の気まぐれ研知句詩@いつき組広ブロ俳句部

  • 石榴甘し遺跡は海を背にくずれ剣橋こじ

  • ざくろざくろ死ぬにも才能がいる公木正

  • 石榴かち割れよ離婚の話せよ紅紫あやめ

  • あやまちと誰が決めるの石榴の実幸田柝の音

  • 情念の爆弾石榴手に持ってこうだ知沙

  • 想い果て石榴は硬し君遠し郷りん

  • すふやうな石榴かみつくよな石榴古賀

  • 騾馬の砂埃荷車に石榴古烏さや

  • 赤黒く裂けた悪態石榴かなこきん

  • 石榴はじけたお見合い断られた小笹いのり

  • 紀ノ川のゆるき流れや石榴の実小嶋芦舟

  • 手のひらの石榴ひゞきて太鼓去る小杉泰文

  • 眠るまでをんなのままの柘榴かな小園夢子

  • 本開く儀式柘榴を割る儀式木染湧水

  • 親離れ出来ぬ子なりき石榴生るコダマヒデキ

  • トランプはジョーカーざっくりと石榴虎堂吟雅

  • 新札の梅子ふくよか石榴食む後藤三梅

  • 故郷の柘榴鮮やか時の果て小鳥コ

  • 石榴齧る母さんなんて大嫌い古都鈴

  • スルタンの指の貴石と石榴の実粉山

  • 悪阻の日の指さき紅し石榴食むこのみ杏仁

  • 実石榴や降車一人の一両車小林昇

  • 堪忍の緒が切れしごと柘榴裂くこひつじ@QLD句会

  • アラビアを我が物として石榴割るこま爺

  • 実石榴や子はちきちきとおりん打つ駒村タクト

  • 誰も手に取らぬ石榴や外は雨小南子

  • 骨壺に割れし石榴を供えけり小望月あうる

  • 母一人子一人柘榴の中昏しGONZA

  • 石榴爆ぜる胎児は外を知りたがるコンフィ

  • さんざんに割れて石榴の美しき彩汀

  • グラナダの落日の音石榴落つ齋藤桃杏

  • 石榴には濁音と透き通る赤宰夏海

  • ピアス開く少年柘榴熟れたがるさかえ八八六

  • 実石榴や本家へきつと嫁が来る坂口いちお

  • 恐竜のたまごみたいに柘榴熟れさかたちえこ

  • 石榴三つ食う今夜山姥になる坂野ひでこ

  • 嫁はんは年上なんや石榴噛む坂まきか

  • 落ちている石榴公営団地の灯坂本雪桃

  • 反抗期口は開かぬ柘榴は爆ず咲まこ

  • 石榴にキャタツ青空ごと手折るさくら亜紀女

  • 石榴熟れちあきなおみのファドを聴く櫻井こむぎ

  • 石榴裂けたとて墓場まで持って行く櫻井弘子

  • 石榴たぶ夢に片足浸かりつつ桜鯛みわ

  • 石榴の割れ目死が生が生まれけり雑魚寝

  • 腹を割り阿呆となりし石榴かな笹木好里

  • 柘榴割るきのふの嘘のたちのぼる笹靖子

  • 曇り空つぶやきそうな石榴の実佐藤かき

  • 実柘榴や跡継ぎ産まる茶の宗家佐藤恒治

  • 帰還困難区域の石榴実りけり佐藤茂之

  • 入院の近づいてくる石榴かな佐藤志祐

  • 柘榴採る組を絶縁されましてさとう隆明

  • 実ざくろはさみしがりやの人嫌ひさとうナッツ

  • 福音の午後を光れり柘榴の実佐藤ゆま(歯科衛生子改め)

  • 分かたれてなほ犇ける石榴かな佐藤レアレア

  • 独り居の無音石榴の赤一つ里こごみ

  • 石榴投げつけてお世話になりました里山子

  • 地軸いつ歪んだか右手に石榴錆田水遊

  • 柘榴の実企みひとつ否ふたつさぶり

  • 七日目のガーゼ交換柘榴の実彷徨ういろは

  • キャンパスの石榴こつそり皆こつそりさむしん

  • 石榴食む心臓石化しはじむるさるぼぼ17

  • 遠汽笛歯を軋ませて柘榴食む沢井如伽

  • 柘榴や何処かでポイントが溜っている沢拓庵◎いつき組カーリング部

  • メールには妊娠の字や柘榴熟る沢田恵子

  • 石榴割る母は気づかぬ子の悪事澤田紫

  • 深呼吸し易くなりて石榴爆ず沢山葵

  • 専業主婦そんなに駄目か石榴喰う三角山子

  • 柘榴爆づアルハンブラの石畳三月兎

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  • 実石榴や異国の如き六本木塩沢桂子

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  • 瓦礫また瓦礫に柘榴また柘榴横浜J子

  • 独りゆく石榴の朱には交わらず横浜順風

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  • 石榴割れ零れた言葉の深き傷吉田蝸牛

  • この村の双子はみんな石榴から吉武茂る

  • 大人じゃないわたし柘榴をまたこぼす吉田ルイ

  • 後出しのグーは柘榴であいこでしょ吉野川

  • 我が身割る痛みの色か熟れ石榴吉藤愛里子

  • 石榴熟るマグマの潜む活火山余田酒梨

  • 女子寮に派閥はありて柘榴爆ず楽花生

  • 更年期の過ちと謝す石榴神らん丸

  • 十戒の絶壁の海石榴かなリーガル海苔助

  • 街どこも段差ばかりよ柘榴熟る理佳おさらぎ

  • 今日よりは母の国籍柘榴食む柳絮

  • 里は豊穣我が家は石榴たわわ涼えつろう

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  • 角丸くひんやりと撫で実ざくろよたすく

  • 病床の窓の外には石榴かな祐紀杏里

  • 神話では「地獄の果実」柘榴うまし糺ノ森柊

  • 石塀を穿ちて石榴ここにあり多田知代子

  • 石榴の実赤く皮まで赤くあり立花かおる

  • 蒼天に笑い上がるや石榴爆ずたていし隆松

  • 赤らみも恥ぢらふ乙女石榴なり田中勝

  • 実柘榴や吾を親にす子の笑顔田中ようちゃん

  • 石榴の実一粒づつの光ありたなべ早梅

  • ときめきにときめく我柘榴割れ谷相

  • 柘榴の実赤き血潮の青春も谷口美奈子

  • 石榴割る次は帝王切開す谷本真理子

  • 隕石の伝わる池畔石榴揺る田畑せーたん

  • 柘榴笑う赫き千の歯盛り上げて玉響雷子

  • 母語る石榴の美味い疎開の地鱈瑞々

  • 海臨む庭の石榴や轆轤引く竹庵

  • 通学路の柘榴エデンの実より甘智同美月

  • 山狭の献上の道黒柘榴千鳥城・いつき組広ブロ俳句部カナダ支部

  • 一粒の柘榴のかたち窄む口つーじい

  • 柘榴割り一粒ひとつ味のよさ司蓮風

  • 合鍵をポイとどぶ捨て柘榴噛む塚本隆二

  • ひっそりと石榴熟してルビー婚槻島雫

  • 柘榴爆ぜ左右対称の小顔月城龍二

  • 町裏で石榴貪る我落ちた月夜案山子

  • こそげとる石榴の肉の痛々し津島野イリス

  • 石がきの石榴かほるや雨後の朝辻美佐夫

  • 口開く愚痴溢れ落つ石榴の実辻本四季鳥

  • 石榴熟る初恋ひとつことひらくつついぐれちゃん

  • 車椅子散歩コースの石榴揺れ津幡GEE

  • 石榴ざくろ孫八人の集ふ居間坪田恭壱

  • 頂上で柘榴ほおばり我大将手嶋錦流

  • 泣きやまぬ乳呑児あやす柘榴の実哲庵

  • ポロポロと涙こぼれて柘榴剥くてつねこ

  • 解体と決まる実家の石榴食ぶ寺尾当卯

  • そのままでいいと嘯く柘榴かな寺元綾乃

  • 紅唇や石榴喰うたか鬼子母神てん子

  • 画布の朱のルビーになれぬ石榴かな天山郷

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  • 餓鬼大将は寺の子石榴赤々どくだみ茶

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  • 柘榴割れ朱の滴り風吹いて流れ星

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  • 朝の雨静か柘榴の割れる音夏椿咲く

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  • 音も無くひびの入りて柘榴の実生天目テツ子

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  • 仏壇に柘榴供えて不幸詫び   もしや「不孝」では…ひめりんご

  • 実石榴や三年ぶりに引くルージュ平井由里子

  • 戦時下に柘榴のピンク噛みしめる平岡花泉

  • 大きなる石榴両手に異国の人昼寝

  • 実ざくろや沓脱石に紅き下駄浩子赤城おろし

  • デッサンを終へて弾けし柘榴喰ふ広島あーやあーや

  • ソロモンの宮殿飾る数多の石榴広島立葵

  • 更地待ち渋墨の家石榴爆ず広野光

  • 吾子涙石榴の実ごと怒り見せ   「実のごとく」?琵琶京子

  • 腹を割り本音話さむ柘榴の実琵琶湖亀

  • 園庭の隅の石榴を眺むる子布衣野

  • 実柘榴や逢摩時に口を開けFUFU

  • 妊活や石榴の裂け目卵子見ゆ深澤健

  • 卓上はセザンヌ風に石榴かな深蒸し茶

  • ペルシャなる姫も吾も食む石榴かな福井桔梗

  • 傷口に唾塗りし祖母石榴の朱福川敏機

  • 割れたまま柘榴の小道生家跡福田みやき

  • 豪雨の日小さきルビー柘榴散るふくふく

  • 石榴噛む渡せず捨てたラブレター福間薄緑

  • 金婚の宿の濁手石榴かな  白磁の器の絵柄だとしたら微妙福弓

  • おとなりの洗車見守る庭柘榴まろん

  • 幼き日呑んだりしたのは同じ柘榴藤井由庵

  • 割り柘榴両手で包み齧りけり藤丘ひな子

  • 食べどきや深くも割れし柘榴かな藤川鴎叫

  • 売られゆく深く裂けたる柘榴群れ藤川雅子

  • 割れてきた石榴に想う母の顔藤沢・マグネット

  • 血族の途絶えし館石榴熟る藤原涼

  • 烏と吾石榴目当ての無人駅伏見レッサーレッサー

  • 主なき庭たわわに実る石榴かな藤本だいふく

  • 石榴三つポストの上の忘れ物二見歌蓮

  • 石榴割るペルシャの市場紅き汁船橋こまこ

  • 帰り道「家路」聞こえて柘榴かな文月紺色

  • 散歩道今年も柘榴笑ひけり古道具

  • 口立てて四方向きたる石榴かな古谷芳明

  • 初石榴甥がひたすら目を丸くヘッドホン

  • 青空と神話が似合う柘榴かな鳳凰美蓮

  • 石榴むく甘美な誘惑涅槃かな宝松苑

  • 崩れる岩の如く柘榴ぽろぽろ暮戯

  • ガハハハと笑いだしそうなワレザクロ星雅綺羅璃

  • 石榴ばっくり明智小五郎の出番  乱歩の「柘榴」を踏まえて?ほしのり

  • 裏庭で私を見てる柘榴達星まよる

  • 石榴爆ぜ流涎拭う鬼子母神母墨

  • 柘榴爆ず母さん私行ってくるポップアップ

  • 結納の終わりて柘榴乗るサラダ堀川絵奈

  • 食べたいと石榴は知らぬ母の事堀籠美雪

  • 石榴食い頬に広がる甘酸っぱ本気のめんそ

  • 外国人は苦手柘榴の実は硬い本郷てい

  • 生々し紅きつぶつぶ石榴の美本間美知子

  • 煩ひの無き独り身へ柘榴の実前田冬水

  • 脳天まで登り詰めるか柘榴真喜王

  • 石榴喰ふ君の一言狂気かな雅蔵

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  • 食べたことあるのかダリは石榴の実増山銀桜

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  • ひとしずく水辺の波と柘榴かな松尾美郷

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  • 美しさ秘めてごつごつ石榴の実松風花純

  • 枝先の地に触れそうな石榴かな松平武史

  • 流行り目はぶちぶち裂ける石榴の実   結膜炎?まっちゃこ良々

  • 宝石と見せて口にす柘榴かなまつとしきかわ

  • 石榴熟れ亡夫と分けあい喰みし日も松永好子

  • 一年に一度柘榴をくれる叔母松野蘭

  • 記憶なく記録もなしの石榴かな松原隆雄

  • 三日目の解熱の夜の柘榴かな松本厚史

  • 石榴まではいはい残り二メートル松本俊彦

  • おもたげに赤き柘榴の四つに割れ松本牧子

  • 人跡が抉る石榴にボクを見た的場白梛

  • 来年は石榴に背伸びで届くかなママビギナー

  • 石榴の実手紙を残し去る彼女真宮マミ

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  • 兵俑を見守る古都の石榴かな瑪麗

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  • おほかみに成れず柘榴は咆哮すまんぷく

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  • 柘榴の実ぎっしり詰まり重くなり三浦ゆりこ

  • 恐れ入る右手に柘榴持つ善女三上景子

  • 石榴熟れ粒の重みや撓む枝神酒猫

  • カンバスに卓子に同じ柘榴熟れ三雲萠永

  • 破天荒な息子の巣立ち柘榴かな水上康男

  • 裏山の囲う鉄線柘榴かな水谷未佳

  • 母を待つ石榴の下でけんけんぱ水タマリ

  • まよひ児の泣く石榴下鬼子母神みちお

  • 石榴たわわウォーキングの新コースみちむらまりな

  • アラジンよ「石榴に変えて手榴弾」美津うつわ

  • 熟石榴夕陽の紅こめ艶やかに光月野うさぎ

  • 柘榴下げおしゃべり好きな義姉の来てみづたま

  • 石榴とはルビーの種があるらしいミツの会

  • おままごとルビーごはんに石榴かな光森早苗

  • 投げつけし離婚届や柘榴食ぶ満る

  • 石榴食む子供の顔は吸血鬼緑区のへこ

  • いにしえの薬用効かす実の石榴ミナガワトモヒロ

  • 石榴食う指先赤く染まりけり湊かずゆき

  • 実石榴や石田さんちは子沢山みなみはな

  • 本当を弾けさせてと哭く柘榴峯島妙

  • 星形の切れ目の奥に石榴の血嶺乃森夜亜舎

  • 不器用にはじける柘榴哀しかりみやかわけい子

  • 粒ひとつひとつに石榴息づいて深山柚仁

  • 実柘榴の割れて見つめる逮夜かな宮本モンヌ

  • 熟すほど石榴のいびつ白磁器に

  • 石榴食ひ黄泉比良坂(よもつひらさか)うらめしきむじか

  • 割れ目より外をうかがう石榴の実霧想衿

  • 柘榴まるごとかじろうとする園児かな睦月くらげ

  • 羨望の古代女王や石榴の実むねあかどり

  • 柘榴喰むほとばしりたる命かな村上の百合女

  • あの場所でいつも見ていた石榴の実村のあんず

  • 隣人の寡夫より石榴手折りおりむらのたんぽぽ

  • 薬指弾けた柘榴輝いて恵のママ

  • 実石榴や弾けて顔を出し笑ってら恵美笑

  • また双子ざくろ生る庭さんざめく目黒智子

  • 還暦にしてオールかよ石榴の実めでかや

  • 救急の父の入院石榴汁   石榴の果汁…?毛利尚人

  • 子に貰ふ石榴飾るや保健室  子=生徒?茂木りん

  • 実柘榴や子らの帰りを待つ日暮れ望月ゆう

  • 見上げれば柘榴の乙女微笑まれ元村幸月

  • 石榴とや読み仮名知りし幸運ぶ樅山楓

  • 洋館のエステサロンの石榴熟れ百瀬はな

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  • 石榴裂け世間の不満聞いてやる森佳月

  • ぷちぶちと肉のようなる柘榴かな森嶋ししく

  • 村落の夜灯たらふく裂け柘榴森太郎

  • 内臓を曝け出すぱこんと柘榴森ともよ

  • 木登り手伸ばしたる石榴あと少し森茉那

  • ルビー婚柘榴飾りし我が夫よ諸岡萌黄

  • 鬼子母神石榴喰うたか嘴の紅もろ智行

  • 背を丸めきゅるり柘榴を穿る姉山羊座の千賀子

  • 柘榴の実逆さに登る滑り台八木実

  • 石榴割れぽろり本音が剥き出され矢車草

  • 庭の子ら顔すぼめおり石榴かな矢澤かなえ

  • 柘榴摘む医者の娘の細き指矢澤瞳杏

  • 朝散歩ざくろ狛犬口開けてやつがねすわこ

  • 烏啄む石榴や古戦場八手薫

  • 石榴熟る増大し私の腫瘍柳井るい

  • 柘榴たわたわ夕日と石の鬼子母神八幡風花

  • 石榴の実割って眺める赤眩し山内泉

  • 我もまた鬼子母神だわ石榴食う山内文野

  • 日々たわわ隣の石榴頂く日山内美紀

  • 奈良の旅子規よ喰ふたか石榴の実山尾政弘

  • 何もかも残念無念石榴食む山川腎茶

  • 三歳児柘榴食う祖母じっとみつめ山口アロハ

  • 犬吠ゆる塀から覗く柘榴あり山口香子

  • 石榴割れ鬼にも似たし大怖い山口雀昭

  • 実柘榴や二つ違ひの三姉妹山崎かよ

  • 気前よく石榴を分つ餓鬼大将山崎力

  • そっくりよざっくりざくろあれみたい山崎のら

  • 子種減り旨き柘榴も知らぬ今山田季聴

  • お日様のレプリカみたい石榴の実山田啓子

  • 初めての写真機覗く石榴の実やまだ童子

  • 釈迦牟尼の拳の如き石榴なり山田はち

  • ヨガの木のポーズで見入る柘榴かなやまな未

  • あのときはこれしかなかった石榴の実山野花子

  • 高枝の柘榴パックリ赫々とやまもとのり。

  • サイレンの止まぬ救急聞く柘榴山本八

  • 女児帰る西洋館の石榴の実山本美奈友

  • 柘榴色絵の具の色に欲しかりし山本葉舟

  • 開けた口柘榴に重ね祝い酒やまやま

  • たわわなる石榴の枝へ結う御籤山姥和

  • 赤い実のこぼれて石榴花模様ゆう

  • 柘榴見て宝石だねと児微笑む雪しおり

  • 切り札は赤き薬と石榴の実ゆず柴

  • 軍艦巻きに盛られそうなる石榴の実柚木啓

  • 紀州旅稀有な石榴に小躍りす夢一成

  • グラナダよ赤き石榴のカクテルよ陽光樹

  • 「旬お食べ」石榴ひとつぶ子の口へ夜香

  • 赤い歯と柘榴を嫌う母と祖母横須賀うらが

  • 人類よ戦争やめて石榴食え横田信一

  • 子守社に石榴ありとて児ら騒ぐよしぎわへい

  • 箱一つ持って新部署柘榴かな吉田かのこ

  • 柘榴はぜ空に散らばる星になる吉田春代

  • きれかったね石榴を据えて爪眺む吉名月

  • キャンバスに塗り込めし赤柘榴なりよしみち

  • 石榴の実少しためらい口ふくむ吉満乃苗

  • 喰ふてみろと言わむばかりの石榴かなYoshimin空

  • 日本猿石榴むさぼり食い荒らす四葉の苦労婆

  • おとうとはママのおなかに石榴かなよみ、ちとせ

  • 遠目より夥しきや石榴の実楽和音

  • 赤組の子らマスゲーム石榴の実璃子

  • 柘榴熟れ分家の孫は八人目リコピン

  • 異国にて渋さひとしおザクロ噛む

  • 石榴粒珊瑚の二連の数珠を買うルージュ

  • 石榴一つ光こぼれる赤が澄む瑠璃ホコリ

  • 父好む仏間にでんと石榴の実麗詩

  • 石榴の実若きし頃の恋の味  「若き頃」?「若かりし頃」?わきのっぽ

  • ペルセポネの帰宅を告げる石榴かな渡辺香野

  • 実ざくろの皮剥く指は真黒にわたなべすずしろ

  • 差し出した不貞の証拠柘榴の実渡辺桃蓮

  • 皮割れば石榴の粒の瑞々し渡辺陽子

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

◆俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
 俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。


◆ひとことアドバイス


●俳句の正しい表記とは?

  • 目には毒 垣根越え来る 割れ柘榴松永佳子

「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●季重なり

  • 颱風にもまれて遊ぶ石榴かなほこ

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。
 まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「石榴」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。


●兼題とは

  • 甘い香あなたの髪が果実のよう春風

  • 空仰ぎ思わずぶどうつかむ孫松田加代子

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「石榴」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。


  • 課題の字ざくろと読めず愚かしい高木俊郎

 確かに「ざくろ」ではありますが、これを季語と捉えるのは少々無理がありそうです。


●季語「石榴」が比喩に

  • 母怒鳴る我の心は石榴かな伊東海芋

  • ここからは柘榴のごとく散り散りにたなばたともこ

  • 石榴ほどのわだかまり君は元カノふくろう悠々

  • 君となら石榴のような恋がいいみなづき光緒

 季語を比喩に使うと、季語としての鮮度は落ちます。 


●確かに「石榴」とはあるが……

  • 子に問われ読んで聞かせる石榴かな丹波さおり

 鬼子母神でしょうか、ギリシャ神話でしょうか。お話の中の「石榴」となると季語としての鮮度は落ちます。


  • 気まぐれに柘榴ジュース買う駅舎桐山榮壽

  • 初めての石榴ジュースだ大人気分小畠あかり

  • 柘榴のジュース給湯室の噂内藤未来仁

 収穫した石榴をジュースにするのなら有りだと思いますが、製品となっている石榴ジュースは、ちょっと微妙……。


●花石榴は夏の季語

  • 責任の所在も知らず花石榴小仲翠太

  • 母になる前の母知る柘榴花吉成小骨

「花石榴」は、夏の季語になります。花と実は別々の季語です。


●「石榴忌」は……

  • 柘榴忌のカフェでトリック談義かなかめよかめ

「石榴忌」は江戸川乱歩の忌日です。七月二十八日なので、季節も違いますね。


●ちょっと句の読みに悩みました……

  • 旅に病みをんな玄奘裂く石榴acari

 女玄奘とは? 小説かドラマなのでしょうか?


  • 実石榴や手の届かないひとひかり岡山小鞠

 下五「ひとひかり」は、人? 一?


  • 石榴盗る悪餓鬼らせる粒勘定落句言

「悪餓鬼らせる」とは、「悪餓鬼等」「せる」?


  • 柘榴食むメソポタミアは腹の中木口まり子

 古くからメソポタミアで栽培されていたというから、それを踏まえての句かもしれませんが、下五「~は腹の中」は?


  • その名をば武器に取られしザクロかな霜川このみ

「石榴」に名前を取られた武器って、何だろう?


  • 祖母の文枠からはみ出し柘榴かな不器用河童

 絵手紙という意味でしょうか…? 絵に描かれた季語は、季語としての鮮度が落ちます。


  • 赤ちゃんが下り物になる柘榴割る前田昂平

 流産したという意味…??


  • 石榴実や祖父はおいこれ警察官メディックス千里

 祖父は「おいこれ」と威張る警察官だった、という意味? 「石榴実」という言い方も気になります。


  • 月経のやうなものゐまだ柘榴剥く宮部里美

「~ものゐ」? 「ゐまだ」? 「未だ」だとすれば仮名遣いは「いまだ」ですが。


 出来上がった句は、少し時間をおいて見直してみましょう。客観的に自分の句を読み直してみると、意味の伝わり難い部分に気付くことがあります。

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12月の兼題

「雪催い」

過去の審査結果

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