夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
9月の審査結果発表
兼題「月」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
月渡る疫禍の紛争地の白衣
播磨陽子
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夏井いつき先生より
コロナ禍を詠んだ句を沢山寄せられます。詠まないではいられない鬱々たる気持ちにも共感します。が、どうしても出来事や心情に比重が傾き、主役であるべき季語が添え物になる傾向があります。そんな中、この作品に出会ってハッといたしました。
「月渡る」から始まる一句。「月」は深い夜空を悠々と渡っていきます。我が頭上の「月」を見上げたとたん、中七に出現する「疫禍」の一語。二〇二〇年の現状に、一気に心が引き戻されます。
さらに、この句が見事なのは後半の展開です。人と人とが争う「紛争地」にも容赦なく襲いかかる「疫禍」。コロナと闘う「白衣」の医療従事者たち。かの地の「月」は「白衣」を惜しみなく照らします。渡ってゆく「月」が、地上の全てを浄化してくれればと願わないではいられない。美しい月下の、祈りのような「白衣」の白です。
鍵盤の一番右に月の音
鈴木由紀子
「鍵盤の一番右」ですから、最も高い音がでるキーです。まるで石を叩いているような乾いた高い音です。ああ、これは今夜の「月の音」に違いないと思う。黒く大きなピアノへ月光がとどきます。
月明りまぶたで曳いて汲みあげる
蟻馬次朗
「月明かり」をじっと見つめています。その静かな光を我が「まぶた」で「曳」くかのようにゆっくりと瞬きをします。眼球を守る薄い涙の膜はまるで月光を「汲みあげる」かのように潤うのです。
月光に痺れて足はひれのやう
ぐ
「月光」に見とれていたか、「月光」の下で物思いに沈んでいたか。気がつけば「痺れ」た足はまるで「ひれ」のように感じられます。人魚姫の「足」のような痛みに苛まれる「月光」の夜です。
須佐之男のたてがみざうざうと月下
RUSTY=HISOKA
「須佐之男」は天照大神の弟。高天原から追放された乱暴者で八岐大蛇と闘います。その男神の「たてがみ」が「ざうざうと」音を立てそうな「月下」。神話の世界が「ざうざう」と立ち上がります。
東京を逃げ来て月の視野にゐる
倉木はじめ
憧れと希望を抱いて乗り込んだ「東京」だったが、何もかもが思うようにはいかなかった。疲れた。絶望した。逃げ出した。どこまで逃げても「月の視野」にいる無力感にただただ打ちひしがれて。
目薬の苦味のやうに月の底ぐ
月光わななくわたしといふ窓をぐ
魚の目の芯いこじなる月明りぐ
遺品から詩篇六篇月は青潤目の鰯
月が来るだうやら母が乗つてゐる潤目の鰯
月光は涙に似たりにわたずみ潤目の鰯
瞳孔にずっしりと月ふたつある北藤詩旦
カラカラの月の虚勢や負け博打北藤詩旦
馬売つた農地も売つた月赤く北藤詩旦
病者みな月を見上ぐる鉄の園古田秀
骨壺へ骨砕き入れ月に罅古田秀
吊橋の真中に月のそよぎけり古田秀
左目に月ひりついてゐる不眠倉木はじめ
錆びてゆく月の匂ひの観覧車倉木はじめ
月光や蜥蜴ざらりと薄目開く鈴木由紀子
瓶に鳴る白き丸薬夜半の月鈴木由紀子
月が丸くてなんだか塾をサボるいかちゃん
月に干す祖父の紙みたいなパンツいかちゃん
嫌われたことなどないだろう月よ播磨陽子
月光の促すままに手紙書く播磨陽子
月にあくび客待ちタクシーの窓石垣エリザ
地下厨房這い出る駐車場の月石垣エリザ
死にゐたる蟹へ金糸雀色の月古瀬まさあき
月しづか屍の火の一部始終古瀬まさあき
真向ひの古墳より月旅の宿石塚彩楓
月光のひらひら金の砂時計石塚彩楓
月産まる寄せくる波の聴色斎乃雪
指紋拭く眼鏡を月の翳りゆく斎乃雪
月暈や避難袋の銀の皺岩瀬拓哉
イヤホンを解く月下の猫背かな岩瀬拓哉
月をみるまなうらに月のこすまで上原淳子
技能生の自転車の列月のぼる上原淳子
月光に照らされて埃も唄に海老海老
噛み終へたガムを月へと吐き出しぬ海老海老
ぶら下がるポトスの奇形月眩し小野睦
くびれ美しダンサー月を捕るかたち小野睦
俺がかうなつたのはあの月の所為影山らてん
満月やをみなの腹にうみのみづ影山らてん
月は今最終章を開きたり花紋
担架には妊婦と月の重さかな花紋
月光に波の匂ひのパラフィン紙ぐでたまご
月光に上着を畳む調律師ぐでたまご
鎮痛剤は一錠の月で足るさとけん
月の水あふれて海ができましたさとけん
船窓の波間に小さき月を飼ふじゃすみん
ベトナムの月の裏側夜勤明けじゃすみん
月光やつやつや伸びる大蚯蚓ジョビジョバ
素晴らしい月何かが起きるローマジョビジョバ
月がきれい同じ東京かと思ふ白よだか
月光にくるまれ濡葉落ちにけり白よだか
煙草吸ふ時だけ男昼の月すがりとおる
アブサンの月夜ゴッホの耳が飛ぶすがりとおる
月しずか人は戦争おこすから鈴ノ樹
月仰ぐ子の手に明治アポロチョコ鈴ノ樹
月の蝕ふかくえぐれる化石の目高橋無垢
月光の最後の行となりにけり高橋無垢
鍵盤をぽとぽと月の影ほとほと滝川橋
三日月に母は躓くやもしれぬ滝川橋
新月を巡って死者の出る会議たろりずむ
三日月やゆっくりと胃へロキソニンたろりずむ
月落つや一番若き叔父の訃報戸部紅屑
泣かせし友泣かされし友月上る戸部紅屑
フラスコに光の芯や月まどかトマト使いめりるりら
薄給の介護士月の美しきトマト使いめりるりら
独白は毒吐くに似て月さびしにゃん
月の暈小さな猫を埋めにゆくにゃん
獅子の吐く湯に月光の流れをり仁和田永
横顔のナイト月光の盤面仁和田永
月しつとり浜に余熱のやうなもの早田駒斗
月光や知恵の実は火に焦ぐる味早田駒斗
口の無き蚕蛾月夜を飛びゆけり茫々
谿のぼる魚に月の青白し茫々
月光や抱きてつめたき無精卵ほろろ。
心音のさびしき月と思ふなりほろろ。
月光を担保に家を買いましょう松井くろ
病人は多い昼の月はひとつ松井くろ
月の夜の駝鳥は全力疾走松本裕子
月覗く健やかな保護犬の息松本裕子
泣いた月居ればそこから夜になるまんぷく
月影や昭和の煤を払う詩まんぷく
月食べて空いた穴より帰ります三浦にゃじろう
月がいい恋は誰かがすればいい三浦にゃじろう
月真っ裸わたしは嘘のつけぬ性質短夜の月
国々の争う月の所有権短夜の月
月光や採尿バッグの尿に熱山名凌霄
けふもまた月は寡黙で聞き上手山名凌霄
ジャム瓶に歪な月を一夜飼ふいさな歌鈴
恐竜に羽毛と母性月渡るいさな歌鈴
月影や円周率は3の世代あずお
ふとコンパスの針微動月上るあずお
子と落とす自転車の錆月白しアポロ
老人のやり投げ遠く昼の月アポロ
月明や安いイヤホンのジムノペディ足立智美
月光に火傷の指を浸しゐる足立智美
月が昇つた何が変わる淺野紫桜
バラードを下弦の月が歌ひけり淺野紫桜
MOONという響き麗し月上る明田句仁子
月よドビュッシーと清志郎が好き明田句仁子
カーテンを買ひ替へて月美しい葵新吾
バイアグラ二錠財布に入れて月葵新吾
きみの死体よりさらに奇麗な月赤馬福助
三日月が好き首を吊りやすそうだ赤馬福助
月光の調べはハ短アルペジオ安樂安策電
ドビュッシー月の光は睡眠薬安樂安策電
月光や人魚のやうに眠る君郁松松ちゃん
月の蝕サイレン赤く近づけり郁松松ちゃん
深海魚起こさぬやうに月上る池内ときこ
そこの星、月の裏側見えますか池内ときこ
こんな月へなら何本でも空けろ石井一草
月に行きます探さないでください石井一草
眠り来ぬ床頭台に月降りぬ石原由女
降りてゆく月よ誰かの胸の中石原由女
産み終へし吐息や月は天心へ板柿せっか
静かなる月や起伏をたどる指板柿せっか
独り夜は月の兎の居ますよに一太郎ラン坊
さめざめと眺める月の歪みかな一太郎ラン坊
のんのんと月光呑みぬぬぺらぼういづみのあ
月の欠片いただきましたアポロよりいづみのあ
瞬ぎもせず動きけり夜半の月いなだはまち
弦月の行く手にあらば良き日なりいなだはまち
月昇るフォークダンスの曲消えて戌の箸置
月ひとつ淀まぬ水を照らしけり戌の箸置
月の客タワークレーン解体す伊予吟会宵嵐
勝鬨の月もんじゃ焼き焦げてゐる伊予吟会宵嵐
満月やみづ無き海に浮かぶ舟海野碧
月消えよ彼の裏切り見えぬやう海野碧
パスワードこれも違うか月渡る浦文乃
服薬の印記入し月仰ぐ浦文乃
月天心銀座服部時計店朶美子
クラリネットこわれた月光の夜朶美子
月光や含めば溶ける睡眠薬大小田忍
百鬼夜行月下に開く勅使門大小田忍
木の橋をくまなき月の渡りをり大庭慈温
金の目の龍渡り来る月の道大庭慈温
月光が歪崖へと放たれて大和田美信
月光の三面鏡に余力あり大和田美信
ふるさとの瓦礫重たし月軽し可笑式
一万年前の月光核の街可笑式
月さがすときのさびしき鎖骨かなおきいふ
有明の月石棺の丘にありおきいふ
亡父来てをり月光の揺り椅子に樫の木
幻聴や月下の軍靴途切れざる樫の木
月光や更地七十二万坪克巳@うめきた再開発
電線をラからシへと月ゆうるり克巳@夜のサングラス
助走などいらぬ満月のぼる時花伝
月光や投げた仕事をまた拾う花伝
月上るこきりこの唄いざ聞かむ門未知子
太郎と花子の見ている月のうさぎ門未知子
コニヤツクの樽のかをりや宵の月鐘ケ江孝幸
都会の空狭く三日月かつかうよい鐘ケ江孝幸
夜半の月すっぴんのまま出る廊下かねつき走流
亡き父の書斎に月の匂ひかなかねつき走流
階を昇る酔歌や月の客叶黄不動
月の出や足裏見せ合う銀沙浜叶黄不動
ビルの上良きとこに月留め置いてかむろ坂喜奈子
外つ国に身を固くして月夜のバスかむろ坂喜奈子
お月さま一緒にコンビニ行きましょう加裕子
朝空に誤植の如く月浮かぶ加裕子
月の夜に神代杉の香を醒ませ川村湖雪
西の湖の廃船二隻月の暈川村湖雪
帰る月わたしは疾うに失くしたの喜祝音
一切の月下となりぬ水を飲む喜祝音
月の庭猫に噛まれて猫になる北大路京介
巴里の月坂の途中の馬鹿話北大路京介
お姉ちゃんでしょ捩れゆく月の色北川蒼鴉
ハイジのアーベーツェーデー月静か北川蒼鴉
月の道母の理想は樹木葬北野きのこ
月よ今朝切りたる指の持つ熱よ北野きのこ
子供らに叱られていて窓に月城内幸江
月光や本ぎつしりと自習室城内幸江
同意書のチェックあまたや月近し木江
月明るいからやったるぜ眠たいぜ木江
月の舟ハン市場より魚醤の香柝の音
月明るし古墳を囲む埴輪たち柝の音
紋付に月影を当て畳みけり清島久門
満月はやはりあぐらで飲らないと清島久門
鎌倉に鬼を閉じ込めたりし月ギル
月白のホームに永き握手ありギル
オロナミン色の満月われに明日久我恒子
影法師ふまぬ忌日の月夜かな久我恒子
剃刀の替え刃を舌に眠る月くま鶉
月上る総索引に凸ひとつくま鶉
月の色つうと零れて水平線倉嶋志乃
口笛や月のなみだの滲む海倉嶋志乃
瞬いて月に眩暈のするようなけーい〇
トローチの穴より月の風かすかけーい〇
珈琲館月の波動の焙煎香小池令香
龍神の秩父よ赤き月の暈小池令香
月光ぱしやぱしやバク転の少年公木正
月光や郵便受けは銀の箱公木正
我が身にも爪痕ひとつ昼の月小南子
ジムノペディたゆたひて月高まりぬ小南子
ほろ酔ひのそびらにはづむ月あかり今野淳風
保護色を解いて月光浴びている今野淳風
夜半の月徒然草を友として齋藤杏子
月さして音量0のドビッシー齋藤杏子
観覧車乗って月の都めざす斉藤立夏
昼の月 父の涙と犬の死と斉藤立夏
次々と月は子を産む海の底さくやこのはな
満月が扉を開きまた閉じるさくやこのはな
列車ぎゆうぎゆうと軋むアジアに月ささ乃
月光の縒れたところに手を入れぬささ乃
昼の月独りきしめん啜りけり佐藤志祐
月の秋帯が掠れて鳴いてをり佐藤志祐
紹興酒あつあつ路地を月あかあか佐藤儒艮
第三期分譲月の土地しづか佐藤儒艮
古酒開けて頃合よろし月上るさぶり
昼の月老いること他人事(ひとごと)のやうさぶり
月の蝕兄の人たらしはカンペキ沢拓庵
一夜ごと古びていく吾よ月光沢拓庵
豆腐屋の猫と目の合う月の坂紫瑛
杉の秀をゆるりと抜けて月の出る紫瑛
月光に濡れたる象の耳微動しぼりはf22
ゴールデン街ひばりのジャズや夜半の月しぼりはf22
満月やあの星条旗まだあるかシュリ
満月やレバーを引けば開くからシュリ
義手の香の重く今朝は月が近い常幸龍BCAD
月光重く点滴に潤む吾常幸龍BCAD
月上るケネディの夢我の夢新濃健
月光に痺れる四肢を晒したり新濃健
しかられて月光だけの物置にしんぷる
月光の誘いに乗りていろは坂しんぷる
月傾く貸出票は五人待ち主藤充子
無人バス『美術館行き』月夜かな主藤充子
月影や小窓から見る慰安室スローライフ
昼の月入る骨壷作りけりスローライフ
月ざらり錠剤袋よりこぼれ背馬
月光や吐き出されたる骨二つ背馬
秘密とは月にやかんを忘れた件せり坊
交番にラーメンのびる月あかりせり坊
喜寿までは生かしてくれろ月ひとつ惣兵衛
刺す殺す夫婦の間に入る月あかり惣兵衛
月光を挟んで終へる読書かなそうり
井戸の底月の雫の溜まりけりそうり
大き月マッターホルンに酔うてをり宙のふう
寂しがる月に聞かそかトロンボーン宙のふう
地学部の君へ。綺麗でしたか、月高尾里甫
尼の屁と云ふ菓子あまき月明り高尾里甫
月の鏡に伊邪那岐の眼窩かな高田祥聖
私の喉を伝ふ月光よ高田祥聖
磯の月あの柔色で海を引く唯飛唯游
月滲むギンズバーグ判事逝く唯飛唯游
月のぼる路上を百の火炎瓶多々良海月
満月へしづかな浮上メガマウス多々良海月
二の腕は硬くて豊か月上る橘まゆこ
母逝つて月の尻だけ見えてゐる橘まゆこ
訳あっていま月と二人でいます玉木たまね
光らない月の裏には月の過去玉木たまね
さまやうて月にかしづくランプ売り田村利平
先物の取り引き月の分譲地田村利平
物狂いしてプラチナの月あかりちゃうりん
月射して秘密を知っている鸚鵡ちゃうりん
岬行きバスは空っぽ月渡る対馬清波
新月や山は廃れて沈みゆく対馬清波
点描の点は重たし夜々の月でぷちゃん
長江に響く船笛月上るでぷちゃん
月光や地図の全き凪にゐる土井探花
月まどかわたしの影が着るブルカ土井探花
満月や肩甲骨がむず痒し東京堕天使
ブレーメンの夜会は楽し月赤し東京堕天使
海原へ月の落とせる無精卵とかき星
月熟れてやうやく水に還れさうとかき星
三日月や駅の草地にやぎ二匹独星
月光はしんしん蘇鉄はぐねぐね独星
喝采もメロディーもなき夜半の月Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
月の秋ジャングルジムの鈍く浮くDr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
幼子のつむじの美しき月夜とりこ
子の語彙のゆつくり増えてゆく月夜とりこ
肉曳きて砂猫ありく月の蝕内藤羊皐
放埒に月光浴びて象居眠り内藤羊皐
アフリカの肺魚があくびする月夜中岡秀次
バクーなる乙女の塔よ月煌々中岡秀次
月あはし聖母マリアの欠くる鼻中原久遠
失恋や屍のごとき昼の月中原久遠
あの議員お月様から来たらしい新蕎麦句会・凪太
月綺麗すぎてこの虫死んだはず新蕎麦句会・凪太
月に問う「蒼い仔猫を知らないか?」夏雨ちや
月天心嗤ふ猫の舌に棘夏雨ちや
満月のみづ均しうす伽藍堂七瀬ゆきこ
爆音凪ぐ月の痘痕の剥がれ落ち七瀬ゆきこ
月に居り青い地球を詠みにけり⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
バイク咆哮するも月は穏やか⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
上弦の月にて星をすくひたり楢山孝明
きりきりと下弦の月を引き絞り楢山孝明
古傷の硬さ白さや二日月西川由野
有明月いま産声に繋ぎます西川由野
昼の月解剖学の再試験西村小市
首になる月と自分だけの路上西村小市
月下の花屋ブリキバケツに青い花ノコモマ
車窓からはみ出していく山の月ノコモマ
竹箒行方知れずの庭に月野地垂木
ようようと月を味方に繰出しぬ野地垂木
子の名とは短き詩なり月渡る蜂喰擬
まんばうの仮眠てぷてぷ昼の月蜂喰擬
水紋の月へパドルの無音かなはなあかり
鼻唄はチムチムチエリー月に雲はなあかり
夜半の月ここは我が家があった場所花結い
放射線月の骨まで透き通る花結い
ライオンは図鑑の上に立ちて月浜田智恵子
月光や小鍋沸き始めの静か浜田智恵子
月光や龍の卵に透くうろこはむ
見上ぐ人なくとも歌舞伎町に月はむ
月光をたつぷり吸つて軽くなる樋口滑瓢
蛾眉やひらひら天動説の空を樋口滑瓢
あの月はおそらく不眠症である緋乃捨楽
マリンバの響きぽくぽく月上る緋乃捨楽
ヘルメットは父の制帽昼の月比々き
月の出や腹の子腹を蹴りに蹴る比々き
いぢわるをした日芯より月赤く平本魚水
汲み取りのお便所しづか月さやか平本魚水
紺青を乗せしんしんと月の船風慈音
どうしても月の兎が見れません風慈音
月仰ぐけふ怒ることあらざるに福蔵
月の宿男につづき女入る福蔵
月光や水を満たした父の肺福良ちどり
三日月の音や白犀角かざす福良ちどり
月の舟父はいま群青を漕ぐ藤田ゆきまち
母とみた月母ゐるかのやうに月藤田ゆきまち
オアシスの水張りつめたような月ふるてい
月清かハノイの鴨の血のスープふるてい
月きれい試験勉強はあきらめる碧西里
鉤針の縷々とひらめく月さやか碧西里
月光を絹のパジャマで踊ろうよほしの有紀
満月やモビールの鳥一羽増ゆほしの有紀
若冲の虎ぬらりんと月の影曲がりしっぽ
月光を熱源として我踊る曲がりしっぽ
口中のべっこう飴や月清か丸山隆子
すっぽんのふやけた影や夜半の月丸山隆子
月上る先月閉じた遊園地三雲
チャルメラの通り過ぎたる月の暈三雲
受話器のオルゴール月のゐなくなる南方日午
突つ張り棒の緩み役場の窓に月南方日午
月光の染みゆく鍾乳石伸長南風の記憶
太陽の塔の冷たし月の蝕南風の記憶
ぶるーすが月の都の流行りらし水面叩
月わたる神楽坂には火のにほひ水面叩
オーボエのしらべ蜂蜜色の月みやこわすれ
月天心眠る子牛に耳標ありみやこわすれ
増えてゆく三面鏡の中の月宮坂変哲
上弦の月インドラの矢を放て宮坂変哲
月太るこれで何人呑み込んだ宮武濱女
満月や牛は何にも答へざる宮武濱女
月光の魚の骨の透くほどに宮部里美
別れ話してきて月の明るさ宮部里美
古賀メロディーを聞く月を景として椋本望生
落ち合つて夫婦まがひにゆく月光椋本望生
月光や両生類の胎児いま紫小寿々
みづ底に月下の野鯉たをやかに紫小寿々
君の知る月のぬけがら砂に埋め森山博士
裏返す畳の匂い昼の月森山博士
米国の月昇りけり横田基地八木実
蔦踏めば蛇逃げてゆく月あかり八木実
月光や折り続けたる銀の鶴山羊座の千賀子
月光や踏切も汽車も玩具めく山羊座の千賀子
からつぽのとりかごに月とぢこめて夜行
月影や棺の叫びさうな白夜行
プラントの熱き吐息や銀の月山内彩月
月明やわれ透明の深海魚山内彩月
リフティング百を数えて月明かりやまな未
月を置き積み木の街は夜となるやまな未
月の留守番陽を入れて茶を沸かす山本先生
すつぴんの月の真下に立ちにけり山本先生
狂気をば月へあずけて子守唄柚木みゆき
月の秋西京漬の味噌甘し柚木みゆき
月と居てこぷこぷ刻む月の時遊飛@蚊帳のなか
雲疾し富士に錨を下ろす月遊飛@蚊帳のなか
月の鏡海の重油の艶がりぬ雪陽
勇者一向にぢぢの名のあり袖の月雪陽
好奇心が殺した猫に上がる月如矢
月渡る癌告知より十二年如矢
父の背を起こす重みよ夜半の月ゆすらご
月の森にピアノ半分置き忘れゆすらご
胸さわぎ月の光にあてぬやう百合乃
難聴にバーンスタイン月の蝕百合乃
月光の喉を透りてほの甘し横縞
月からの酸素だけで呼吸してゐる横縞
三日月や六甲川を猪下りて葦たかし
月明の実家にごみを片付けぬ葦たかし
月青し納屋に隠るる猫と豚吉行直人
折檻の納屋月光のけたたまし吉行直人
鉄塔が根を伸ばしさう月の丘RUSTY=HISOKA
夕月の小指にさつと消えさうなあいだほ
この一拍待ってシンバル月上る青井晴空
いとこてふ相続人集ふ月夜蒼空蒼子
臥遊にて見しより濃やかな月よ青田奈央
満月や母を呼びゐる二階の子蒼鳩薫
月影や切り絵の魔女の箒浮くacari
月光やほとほとしかる洗濯機明惟久里
山あいの闇をほどいて月渡る秋夕介
溺る月ぶるーぶらっくインク切れあきののかなた
ただ「月!」と哲学をする象がいるあさいふみよ
ブラジャーを外して窓の月明かりあさのとびら
月の影探して角を曲がりけり麻場育子
黒板の祝10さいや昼の月あそぼ葉
米烏賊藻場に集うや今宵満月あたなごっち
昼の月一人0番線に発つsakura a.
少女A月は東に昇りけり天野姫城
眠らない弁当工場に高く月あまぐり
城跡を龍の目玉のやうな月あまぶー
月光に指輪翳して鼻歌よ天宮華月
満月の記憶やジェットコースターあみま
こはがりを夜へ差し出す月の道有本仁政
半月やウェヌスの鏡まっ二つandore
羊水の音らし月の欠ける音飯村祐知子
ぬるりと人魚姫秋月に願う粋庵仁空
満月に奏でるだけで鬼扱い池田華族
澄み渡る月より音符流れ落ついけだひさえ
それぞれの月や寝台車は三時池之端モルト
月明り群の海豚の背の潤ふ石井茶爺
福引の食パン二斤月上る石岡女依
ドビュッシーに乗って月へ旅する石崎京子
ドビュッシーに立ち止まる月下の窓イキイキ生活
月光を吸へば奥歯のうずき出す石原碧村
寝てる間に干すロンパース昼の月一番ぶろ
月の夜や祝いの後の洗い物一佳
月光や土偶は胎土匂わせて一斤染乃
森となる棄てられた街月渡る伊藤亜美子
月光や荷の中で鳴るオルゴール伊藤興味
月夜なり上野の山の暗きこと糸川ラッコ
こんなにも小さき吾を見るな月今村ひとみ
学校へは行かない月を飼ってるんだ妹のりこ
雲に月ふっくらできた目玉焼vivi
通夜の場を離れて一人月に暈上野眞理
一億の商談決まる昼の月うさぎまんじゅう
つるを折るチャイコフスキの月の夜うさぎみさる
宵月の渋滞レシートに三句宇田建
月の秋終始無言の美容院内田英樹
満月とはコンパスで書くもの内本惠美子
来週の薬数ふる月あかりうづら
青白き月下に匂う獣道海口竿富
宵月や歩廊耳鳴る人の波梅木若葉
差し歯四つ洗浄の泡夜半の月梅嶋紫
留袖を脱ぎ捨て月の光かな麗し
月上る吾子に美月と名付けたり江川月丸
月上るシーラカンスは三億年えんかず
月に吠ゆ歌ふ呟く叫ぶ問ふ遠藤玲奈
月さし入れて退屈なハノン弾く近江菫花
月のグラウンドさかあがりの血豆おおい芙美子
まんまるの月りろりろと草の奥大嶋メデ
表札を月が照らして新居かな大槻正敏
真夜中の遠隔講義月きれい大津美
護摩の火や遥けき月へ身を捩じつ小川天鵲
月明や鱗粉光るゆびの先小川野棕櫚
天窓の月に乳飲み子あやしけり小川都
月天心岬に馬の睦み合ふ小川めぐる
月は眩しすぎポテチは砂の味荻原湧
屋上の社銀座の月静か小倉あんこ
月光の影の青さに踏み止む小田慶喜
子ら大人になつて久しき月兎越智空子
月照らす旧きラヂオのノイズかな鬼平哀歌
水筒を干して物産展の月火炎猿
ふるさとは戻れぬところ月を仰ぐ片栗子
月の鏡さっき気づいた誕生日かたちゃん@いつき組広ブロ俳句部
虐待のニュースや帰路の月傾ぐかつたろー。
原始よりうだく月てふ不発弾彼方ひらく
あしながおじさんのやうな影ゆく月夜かなかぬまっこ
二つ目の心臓生まるる月夜かな神or愛
月光に波頭立つ瓦屋根紙谷杳子
月の鏡太陽はまだ映らない亀田かつおぶし
水に入る踝までも月の色亀山酔田
月明かり未だダンディズム消へぬべし嘉門生造
旅なれや機翼の端に月の都果禄
そちらからどう見えますかお月さんカワムラ
段ボールハウス撤去され月光川村ひろの
草原のパオ月光に抱かれて川村昌子
君を待つ月を燻せる水煙草カンガルーのしっぽ
水に浮くコンタクト月閑かなり閑々鶏
月光や美男の仏おわす星邯鄲
三日月の遠く寂しさの形岩のじ
鼻歌をジャズアレンジに月上る木崎善夫
月の秋換金逃す宝くじ北村崇雄
月光やテッポウ柱傾きぬきなこもち
電線の月に過去と未来があり祺埜箕來
夜半の月カートに入れる白髪染め木下桃白
月上る僕と結婚してくださいQ&A
月あかりビルの谷間の古本屋Qさん
剣風の奔る社や月の秋京野秋水
ホテル出て降る月光の無味無臭金のキウイ
原発の海は藍色月祀るぐずみ
耳鳴りの砂漠の如し月夜かな國吉敦子
致死量を越えて月光降り止まぬクラウド坂の上
眠る人働いてゐる人月下倉岡富士子
月光や琥珀の虫の薄き羽くるみだんご
月白の道隻腕の老詩人紅さやか
月光や隠し扉の開きたり佳山@水戸
遠きサイレン坂の上に月古賀
ロートレックの猫が見ている月の蝕来冬邦子
かたち良き厚焼き卵朝の月古都鈴
月光や父の机上の歌誌『塔』に小林陸人
昼の月薄利多売の靴下屋こぶこ
靴擦れの渋谷に月の絆創膏こまたれぶー
人類の最後もきっとこんな月GONZA
月光に透かす宝の地図のしみ今藤明
薩長かなし月明に絵ろうそく在芽里子
眉月を武器に使うかただ泣くか西條晶夫
喫煙の席決められて庭の月西條恭子
CDを三枚聴いて海と月齊藤裕
月の蝕幾可学なんて嫌いだねさいとう若菜
壊してもこわしても月雨上がりさくら悠日
初七日の済んで厨の窓に月さこ
月影や珈琲ぬるく君と会う迫久鯨
今宵の月しあわせは猫の顔して砂舟
眉尻を足して月夜の客となる紗智
月の夜に胡孫眼にぎやかよ幸茜。
平手打ち損ねて気づく月下なりさとう菓子
月光やベートーヴェンと白髪染め佐藤里枝子
三日ぶりの「体調 ○」や月上る真井とうか
なんとなく砂時計返して月夜さむしん
鏡の間に捨て置かれつる月の濃ししかもり
月光や思わず懺悔してしまふ茂る
月光や深紅の予告状ひらり獅子蕩児
放送の迷子見つかり昼の月篠雪
月明にシェフの腕組み写真かな嶋田奈緒
晩餐会月の兎に懸想せる清水容子
清月や余罪吐き出しそうになる沙那夏
レントゲンが写したような昼の月ジャマイカ丼
一服や月は東に手は腰に洒落神戸
月照らすセットのごとき武家屋敷しゅういずみ
月照す泳ぎ覚えた川の面を秀道
炭鉱の血より濃き仲月渡る珠桜女絢未来
カセットの時代の曲を月と聞く寿松
月射して古畳の目浮きあがり笙女
幸福度三十七位夜半の月翔龍
野外フェス退場を待つ月夜かな白藍こはく
床上げし月に相伴する夕餉シリウス
網膜の裏まで白し月一つじん
満月を掠める夜間飛行かな新米子
月光にずぶ濡れとなるブロンズ像水夢
投げ銭をギターケースに月の街鈴木麗門
少年は一輪車乗り月へゆくスッポン
子を宿し月に吸い寄せられてゆくすぴか
月影や火種のほそき外竈すみれ色の涙
月光に晒して第二反抗期すりいぴい
窓開けて月下の波に放つジャズ瀬尾ありさ
ガード下月が見ているネタ合わせ瀬尾白果
右胸の縫目を月に浸しをり世良日守
仕事終へ満月のバス待ちうっとり千家彩香
君の声かすかにふれて夜半の月セントポーリア
青あおと月光ふるる犀の角蒼奏
従弟の白目の青さ夜半の月空野千鶴
遁走の月を探して歌舞伎町高橋淳子
もつきりのふくよかなこぼれや月夜高橋寅次
歯の表裏磨きつつ月仰ぐ髙橋なつ
750ccの君の鼓動よ月渡る卓女
残業や喫煙室の窓に月多喰身・デラックス
夜半の月お酒も煙草もやれぬ歳竹一
月のみなはあびてはたちを生きなほす竹口ゆうこ
月光に音あらば高音域たたらくらげ
ねない子はおにからでんわお月さまたちあおい
月影や母の戦時を聞きそびれ蓼科嘉
心電図再検査の記昼の月田畑尚美
月光をゆるりと回し墨すれり田村伊都
月光のにじ差し込むやクラムボン田本莞奈
月光や黒鍵の影白鍵へ丹波らる
明日という不安雨がやんで月上るチャーリー・吉田
おおかたの席ととのひて月上る月の沙漠★★
月白し語らぬ父のニューギニア辻が花
メデューサの首持ち帰る月夜かなツユマメ末っ子@8歳
ハーレーやシフトダウンをして月下輝久
羽ばたけぬ白い折鶴月の中天陽ゆう
この国の月は日本の月じゃないドイツばば
や、どーもと父が現れ月夜の夢徳田ヨーコ
月渡る鳥葬の郷あかあかしとしなり
月光を絡めるようにバレエの子斗三木童
ガーシュインの旋律月夜の珈琲富野香衣
月明かしキャリーケースを病室へ富山の露玉
みづみづしき子宮を月の贄とせむ直木葉子
宵月や円周率に終わりなき中島葉月
口げんか月、手のひらにのせてみる中嶋京子
夢十夜読了月渡る窓夏雲ブン太
まんまるの月やはたちの子と寿司屋夏 湖乃
月光のやわらかにふる針葉樹七夏すばる
月上る夜空は黒いわけじゃない名前のあるネコ
新駅は更地の真中月天心奈良素数
月光旋舞ムスリムの白い裾薫子(におこ)
漉き和紙をみ空に翳し昼の月沼沢さとみ
月の路地誘うが如くせばまれりねぎみそ
枕元薄荷は二滴月の秋根々雅水
月光を浴びたシーツ明日は雨野井みこ
月影や正面探す志野茶碗野木編
ひと曲がりして月に会うこれも運野原蛍草
耳のよき水に息する月の影登りびと
横顔の年齢不詳月夜かな琲朴
水晶の落ちて鏤む月の底白雨
月重し屋根は二時間我慢するはずきめいこ
車窓より異国の匂ひ昼の月畑詩音
月煌々天窓に貼る宝くじパッキンマン
恋をする必要 月と同じくらい八田昌代
窓の月良寛の書のさらさらと花岡淑子
月影やほどけて香る蒼い髪花咲明日香
挨拶の言葉は月を誉めながら花南天
人類が皆戦友ぞ月の盾花屋英利
合鍵をポストに返し昼の月早山
月上る母の若き字育児帳葉るみ
五日目の点滴越しに月上る東原桜空
月光で舌冷やしたる夜鳴き蕎麦菱田芋天
ほら月がはち切れさうに浮いてくるひでやん
明るき夜おなごは月をみんがええ姫魚
昼の月空が欠伸をしてをりぬ比良山
天ぷらがからりと揚がる月の秋廣重
あの部屋は今も月光のオアシス風紋
月の引力でほどけしネクタイ福井三水低
月影や線路を叩く保線工ふくじん
休日の月ビターチョコレート齧る福月スミレ
子の髪の月の匂いのするようなふくろう悠々
山羊の角竪琴にしてしまふ月藤色葉菜
水あればそこを覗ける月ありし藤田康子
月なんてもう何年も見ていない藤原訓子
月光やICUに響くアラーム双葉
月光や松の撓みの美しきふみ
月影や安アパートの外階段文月さな女
窓の月絡めとりたるカメレオン冬木呑子
橋げたに水の影出づ月煌々ペトロア
前かごに作業着丸め夕月夜弁女
猫二匹遺して逝きぬ月の秋べびぽん
野良猫の名前を決める月夜かな干しのいも
月出づる影に尻尾のなかりけり干しのいも子
社外秘のクリアファイルや銀の月まこちふる
地球より逃げられなくて月の錆びまちこふる
月明かり初めて入るラブホテル星善之
月天心肌に触れくるドビュッシー梵多
南国の滴る果実湿る月まこ@いつき組広ブロ俳句部
月の秋今宵大仏開眼す雅喜
あの月を十四才の友として松山のとまと
磨かれたスパイク並ぶ月の寮真宮マミ
月の秋プレパラートの細胞核三浦真奈美
一点差素振りのやまぬ月夜かな澪つくし
じゃんけんで石段上る月昇る巫女
勤しめるフンコロガシを月明かり三茶F
弦月や別のをとこと逢ってをり岬夕顔
観覧車に月夜を足して別れかな三隅昌山
傘寿から米寿は近し月仰ぐみたせつよ
窓開かぬビジネスホテル月渡るみつれしづく
つくづくと毀れた月をみてをりぬみやかわけい子
窓の月産科当直血をぬぐい三宅雅子
マンションの隙間に嵌りて赤き月三宅剛
兄の居る隔離の島へ月の道都乃あざみ
月の秋樹齢不詳の札光る宮本象三
レトルトの赤飯分ける月夜かなミラベル
ぬくもりも会話の一つ月明かり眠兎
寂しければ買ひたき月よ吾の影よ睦月くらげ
月の道一万歩にはあと百歩暝想華
二重跳び十回出来た夕月夜モコ
月に人立ちて地球を愛でにけり桃香
上弦の月と呼ばれて沈みけり森佳月
月の海甲羅に載せし発信機杜まお実
有明の月下にカブのばっばばば八重葉
月光や術後の髪に固まる血八幡風花
海地獄のあぶくに歪む夜半の月山﨑瑠美
月影やはぐれた猫はよく喋り山科美穂
最初から選びそびれた月夜かな結壱隆月
分かたれし川また逢ふは月の海雪井苑生
月の路地バー山猫は休店日雪華きなこ
病院の廊下に並び月の友よしこ
こうこうこう肉を削りし月の啼く佳子
月はいまかんがえちゅうなんだよね!吉田結希
金婚の君の手に月乗せてみるよにし陽子
月の出や夫と久方ぶりのチェスラーラ
酔ふ息を手の甲で拭く有明の月龍女
雲流れメジャーコードに開く月瑠璃茉莉
月下の森ゆくに口笛ト短調露砂
イエローストーン月を濡らせし間欠泉若井柳児
月光や落ちる百円玉静か和光
旅の月運河は湾曲して流転渡邉一輝
茶の席にペルシャの茶碗月の秋渡邉竹庵
五回目のアザーンけふも月清か渡邉桃蓮
世話焼きの弔問客も帰り月渡邉久晃
窓に月片手に重し広辞苑侘介
お月さまうみのはてからこんばんは八島清麟
母ちゃんがあのお月さん作ったの?ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
おつきさんパパのまくらはめちゃくさいまりな(6歳)
ドビュッシーに旋律授けし夜半の月ANGEL
満月や避難指示地区隈なくてあ・うん
夜半の月お伽噺の終りおり山口花子
補陀落をめざす小舟に月の暈愛燦燦
手を合わす日々変わりゆく月なれど入江幸子
月の道天より一本三保の浜葵 はるか
使わざる母の部屋にも月あかり青い月
一周忌父の部屋から愛でる月あおいなつはやて
鎌を持つ手で涙拭く月夜かな蒼來応來
月の道海は許して舟渡るあかり
夜半の月ガードマンにはザを付けてAKI
月照らす僕をタスマニアの君を秋沙美洋
月はふね月はにく月はわたくし秋さやか
アルバムで妻と語らう満月や昭谷
月光や母の手握り線路道あきみ
夫眠る納骨堂に月上る秋代
足三里灸あと赤く月渡るあくび指南
山ぎわにほぼ満月ののぼりくる浅井和子
月の道かすかに揺れる船首楼朝雲列
月の浜果てぬ波音我一人あさぎけんいち
古刹まえ墓地より見える赤い月浅野俊也
いざこざに見上げし紫黒円満の月亜紗舞那
ホーム端月と終電待つも恋あざみ
この月は吹いても吐いても上の空明日良い天気
月に雁見返り美人ビードロを吹く網代
月白やビニルシートの青き屋根28あずきち
月の道行くや補陀落渡海船畦のすみれ
山ほどの呼び名はあれど月は月麻生恵澄
二度寝から覚めたばかりか昼の月跡部榮喜
月光を粒子と為して路に敷く雨楠
月光の下ただひたすらに爪を切る雨戸ゆらら
鏡湖池の見上げぬ月は円やかに天野呑水
紅水晶月の都の祈りなり朱頂蘭
結ばれぬ宿命らしい夜半の月文女
繊月に琴線触れる遠き恋亜祐莉
月光やレノンの叫びリフレイン荒木豊
夜半の月ビルの谷間にぬっと出るあらら
月上る漆喰壁に降る白銀蛙里
付きまとふ月の鏡やけもの道アン
一本松照らすは和紙のごとき月杏樹萌香
円墳を囲む埴輪や月照らす安春
隅田川古写真に似て月滲む飯田淳子
月をトス木々と雲との球技会 イカロス
月さやか空腹かかへ眠る子らいくみっ句
月照らす植えたばかりの花や木々池愛子
月夜道追われるはわがくつ音か池内ねこバアバ
満月やちさき瞳の中で輝き池上敬子
月光のそそぐ窓辺のドビュッシー池田洋子
月明りシリアの街の瓦礫にも池田郁英
近道の廃線跡よ月明かり池之端昇雲
雨雲を月は転がり渡るかな石ころころころ
月白く見上げてたどる家路かな石田恵翠
やり抜けとアウトプットだと月が云う石原岳
気がつけば月の音(ね)さやか窓の外泉子
月の宵そぞろ歩きの銀座かな遺跡納期
骸抱き化野に入る夕月夜磯野昭仁
胡座して月を両手で持ち上げていたまきし
人去りぬプレハブの上月照りぬ市川りす
椅子持ちて月撮る人に月を褒めいちご一会
あした逝く犬と知らずに月見せぬ一秋子
振り向けば我居なくとも月上る一星
月光に炙り出されしヒステリー井出奈津美
月明かり屋根のシートの青白しito
宇宙船のきらきら遊び月やさし伊藤順女
抱っこして指さす先や月の秋伊藤節子
昼の月久し学舎の赤煉瓦伊藤ひろし
満月を庭のベンチで一人占め伊藤正子
老猫の不穏な寝息月の暈伊藤小熊猫
影ふみの影きえ月も雲の中稲葉こいち
闇深し我より先に月の脚稲葉雀子
月上る異国の歌を歌ふ君戌亥
目に染みる今日の月光掴まんと井上繁
背から見る動かぬ月とにらめっこ猪鷹
ツキ無しと思いは尽きぬ月星の夜いばしん
ほほえみて月のみやこに去りし君イパネマの娘
雨もよひ月の匂ひも遠ざかるいまいやすのり
高齢化の団地にしわぶき月の秋今井淑子
月煌々ビルの灯りの色を変え井松慈悦
月影に離陸の機影追う車窓今西知巳
ため息を月のひかりで充電す彩人色
月出でて演目変わる京の町いろどり五島
まんまるがいいテーブルも夕月も色葉二穂
帰り道月が綺麗ときみが言ういろをふくむや
一万年前にも夫と愛でし月ういろ丑
庭隅に眠るペットに淡き月植田かず子
月の兎餅付きのほか何望む上原郁美
月上る影踏みの子の待ちて跳ね上原まり
夜半の月残り5ページ進まぬ手うさぎさん
のびた影月夜の猫はもののけに卯さきをん
夜半の月かちゃりとオートサンプラー宇佐美好子
月上る肺に痕跡?!B判定内田誠美
砂山に哀歌奏づる昼の月うめがさそう
サルベージ船の旅はひと月月明かり梅里和代
はからずも銀鼠の雲月の棲家A.盆暮れ
月高し縁あり子猫渡り来る江田綾子
ハーベストムーンなどと言うそうな江藤薫
月を突くやうにTX行けり 江藤すをん
老親の荷造り終えて月静か榎本真希子
銀幕のクレジット外は夕月夜江見めいこ
昇天の点滴月の雫のぽつりM・李子
ガガーリンの足跡探し月探査円
スクリーン幌馬車とゆく昼の月遠藤百合
紙より薄くおぼろげにひかる月遠藤愁霞
スープ煮て子の帰り待つ月夜かなおうれん
近眼のこの目にキララ今日の月大門宙美
断層のマンモスの牙くるむ月大槻税悦
月踏んで歩幅狭める家路かな大野静香
兄さんの写真もちだす月光よ大野美波
ひと寝して頭上の月に問うてみる大原妃
月翳りそっとふれるや武骨な手大原雪
停電後扉開ければ昇る月大道真波
桶に見る月の兎やはね踊り大村真仙
澄んだ月次の日占い当たってる大本千恵子
夜半の月テラスに残るグラス2個大山きょうこ
月渡るカタコト聞こゆ列車かな大山こすみ
円滑の妙味示すや月まろし大山小袖
月とペトリコールの門限前おか
月の夜はシャロームの唄泣きて聴く岡美里
「滝連太郎」歌いたくなる月夜かな岡れいこ
水面の月見つめてウキの沈まぬ夜おがたみか
歌ふほど月の兎の落ちゆきておきゆきお
復興の銀杏城や夜半の月奥寺窈子
同じ月仰ぐ隣は別の人おくにち木実
月光に心のひだのそよぎをり奥村俊哉
老けぬ顔お前は良いなと月眺む小栗福祥
野の月や牧草ロール浮かび上がるオサカナクッション
伯父死すのメール点りぬ月の雨小崎順也
切り絵師の技の確かさ月欠けるおざきさちよ
皆が待つ月の兎の薬かな長田ジャポン
コロナ渦の地球を照らす月明しお品まり
月の兎ロケット飛び交う日を案じ尾関みちこ
月光に幻想の世を導かれ尾添ひろ美
三度目の御不浄眠き目夜半の月小田和子
月光や音無き孤独ベートーヴエン小田龍聖
目を細め月下の作業あと少し小田虎賢
丸い月鏡に映るは丸い腹お寺なでしこ
霊安室出て見上ぐ月煌煌音のあ子
農道をダイナモ灯でゆく月夜おばたよう
晩学のテキストひろげ月上るおひい
尾灯行く終点月に行けるはずおぼろ月
月明し四十路の恋でもうけた子海瀬安紀子
薄雲がマスクのごとき秋の月海碧
靴揃え口伝に見ゆる月夜かな果音
事果てて背に一条の月明りカオス
スーパームーンは緋今日の月は銀馨子
残業の駅までの月影ふたつ案山子@いつき組広ブロ俳句部
窓の月ながめ黒猫何思う香川敦子
入相のやわき鐘の音やわき月かこ
盃に満月うかべひとり酒笠江茂子
万人に微笑みかけし三日月や風花あつこ
月明しあなたの生まれたる神秘風花まゆみ
月光に浮かぶ仏塔輝けり風花美絵
月上る休みは休む為にある笠原理香
煌煌と付きはなくとも月夜かな加島
処方箋後ろ手握り昼の月鹿嶌純子
月天心浮かぶ子どもの丸い顔ガジュマル浜口
満月やビルの谷間をはまり落つ柏原淑子
どうしようもなく満月が眩しい加世堂魯幸
満月や親子喧嘩はまだ続く風ヒカル
供は月曲らぬ膝のウォーキング片岡佐知子
ドビッシーで浸る湯の窓に月の秋花鳥風猫
大仏を照らす満月蛍めく桂木右京
名勝負焼き付いた眼に月が照る金子真美
空の青透かしてぺらり昼の月加納かがり
雨戸引く指の幅ほど月の庭 河畔亭
露天風呂そっとのぞくや湯村の月甲山
天窓に瞼が気づく月あかりかほ
有明の月の隣にゆきし人釜眞手打ち蕎麦
早朝の散歩や西の空に月亀田稇
月を見る妻の背中を見てをりぬ亀田荒太
守一の猫微睡むや月浴びて亀山逸子
あてのない旅に似合うや月明かりかもめ
月影や亡き祖父の顔祖母の顔華林灯
項垂れる我が身を包み月上る川添昭則
一人ぼち塾帰りの子月渡る川畑彩
東京の星なき空や月ぽつり河村あさみ
満月に照らされ嘘が狼狽える河村静葩
なみなみと盃満たす月の宴川村昌子
皓皓とすべてを統べて月上る閑蛙
おい月よ家までついてきちゃうのか元治朗
無明なる個と孤のあはひ月上る閑酉
佳い月が出ていますよとLINE来るキートスばんじょうし
月天心北向く赤の航空灯菊池風峰
花眼かな母にまあるく見える月菊池洋勝
月の秋膝にお灸の熱さかな黄桜かづ奴
月上るお開きはまだ誕生日岸本元世
月明り悲しみ深き白き顔酒暮
山々の黒和らげる月あかり季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
畑から野干の吼うる月夜かな喜多吃音
先輩と歩幅合わせる月夜かな北野南瓜
シャンプーを詰め替え湯舟夜半の月きた実実花
夜半の酒月の兎の誕生会木寺仙游
幾たびも仰ぎし月と憶いけり木原洋子
愛猫とふたりで晩酌月高しきみえは公栄
リモートの同窓会や月渡る木村かわせみ
リモートで同じ月見る母とわれ木村修芳
この月も砂漠の月も秋の月きむらときこ
手をつなぐ園児の列に昼の月木村となえーる
巣立ちたる朽ちたベランダ月が来る木村波平
新妻とアラブの砂漠月上る木室哲朗
月光や沖へ沖へと船向かう98
旅立ちや有明月に手を合わす鳩礼
出てみれば下弦の月が部屋灯す木葉
猫が逝く月影長き白き夜教来石
澄む宇宙(そら)や顔をあわせて歩く月㐂代子
月光に誘われ浜辺で砂を踏みキラキラオーラ
ガチャガチャのお目当ては出ず夜半の月銀長だぬき
ぐい呑みに月を満たして差し向かい空龍
食べかけのポップコーンに月明り草野あかね丸
煌々とコンビナートや月高し葛谷猫日和
明月や帰心のペダル影速し楠田草堂
ひとりきり月に起こされ歩く道樟明子
月静かウラBTTBの三曲目朽木春加
迷い道一筋の灯を月の父栗子
シャンプーの香に追い越さるる月の元久留里
月光の鋭き先の黒ピアノクロまま
残業し月とつまみと帰る道桑田栞
防人が居りし小室にうるむ月桑原和博
きららかやのっぺらぼうの月未明薫夏
我と月垂直線に繋がりぬくんちんさま
月光に映るきの葉の影絵劇Kへりくつ
月明かり銅鑼の音響きにじり口月昭
三日月の先に掛け置く天衣紫雲英
痩せ猫の走り去る影路地の月ケンG
月光やつかのま海に身をまかせ源氏物語
パンテオン穴から覗く月を待つ研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
秋の月閃く雲の上に在り鍵盤少年
うす氷浮かぶがごとく昼の月こいそひさと
月明かり帰りし孫を懐かしむ小岩和文
母何処照らしあそばせ月の宿弘
空統べらむ雲したがえて月の秋江雲
薄曇り月の明かりの滲みけり上月ひろし
月上る可愛娘の保証人幸内悦夫
月光の吹き込む生命召す生命河野なお
満月の腹なりポンとひと叩き合屋
ドラキュラの満面の笑み夜半の月古今亭ちくしょう
バス停のベンチでひとり月へ歌小笹いのり
船旅や夫と相見る月の船古史朗
G線に伸ぶる小節月の秋小杉泰文
月上るオランダ坂をかぎしっぽ木染湧水
昼の月砂蹴る猫の湿りたる小だいふく
習い事終えて月との英会話木積
寝巻子は下弦の月に「さみしそう」後藤麻衣子
ビルの上昼間の月はオブラート小林のりこ
月あかり君は努力でできている小薪まりちゃ。
ベートーヴェン二百五十年後の月よ胡麻栞
月光や道過ぐ猫の背の青し小鞠
空席の白いクロスに月光る小味正子
父死す、魂が月へ月へ子安一也
球体を誇示して月は未完成小山晃
月光を映す刃か我が心さいとうすすむ
月青く歌いつ帰路に帰る日々榮秋代
艦上水葬 月光にくるまれて寝る波の中榊昭広
月渡る光る浜辺に蟹歩くさかたちえこ
昼の月スカートで待つ検診車坂まきか
ターナーの描く赤き空三日月ひとり坂本千代子
やわらかに夜道を照らす雨後の月さきまき
月上るくっきり手つなぐ影法師櫻井弘子
月光やインクの滲む古日記さくらっこ
月は一つ影は二つ三つ庭の甕桜姫5
月明かり仙石原に黄金射す佐々木宏
夜半の月背徳に影神の目かささきなお
月明かり心の闇を照らし出し佐々木波響
丸皿にスウプ豊かに月の秋さだとみゆみこ
郵便の自動仕分や朝の月紗千子
月を待つ忘れた頃に見つかる解佐藤花伎
夜半の月離す指隔つ改札佐藤美追
雲切れて龍頭鷁首に揺らぐ月佐藤佳子
まどろむ間空に幽けき昼の月さなぎ
本編よりCMながし秋の月さぬきのにゃんこ
この決断してもかわらず月は出る澤かん
ひとり寝の薄掛け白し月夜かな澤田郁子
半東の差出す茶碗月の蝕三々一
月光を孕み漂ふレジ袋山太狼
やり直す筆を両手に睨む月三ノ宮ねこ
月の兎や今も地球は青いのか紫雲
月上る亡夫の齢忘れけり塩沢桂子
海の宿我が部屋に入る月の道塩原香子
月見えず何もしないで過ぎてゆく汐海さくら
津屋崎の学徒に月や虚砲台篠崎彰
月眺めだんごでも食べたし今日は柴桜子
月渡る遠く朝刊届く音芝野麦茶
ふたりして月待つ膳を拵えて島田あんず
月あかりなびく髪のシルエットしまっかーとにー
埼スタでフラッグ掲げる月の秋島村福太郎
月光に押されて渡る丸太橋嶋良二
涅色につづく砂丘や夜半の月清水祥月
丸付けの山崩し終え月清か霜月詩扇
月夜の爆撃機コロナの死者数下丼月光
ガリレオや月の山谷写生せり斜楽
月乱れ夜空のベン図解いてみる砂楽梨
金星と蜂蜜色の月並ぶじゃりんこ
草千里牛それぞれに月の影秀耕
月あかり射し込む先に枕置き朱沙
古や月夜殊更待つ女綉綉
弾き語る最後のミニコン夜半の月シュルツ
明月や乱視に滲みて大円盤純純
ひっそりと月は動いて屋根の上じょいふるとしちゃん
ごめんねと呟く月に耳澄ます城ヶ崎由岐子
ひとり歩く月明かりさえ眩しくて庄野酢飯
万有の力に任せ月欠ける白石青白
残業の後三日あり夜半の月白井百合子
病床に射す月明かり寝息だけ白沢修
老いし猫歩み秘かに月夜かな白土景子
首吊りを思い止まりし日の月白浜ゆい
押し隠すワニの眼に月の影しらふゆき
「こんにちは」目をそらさるる昼の月新開ちえ
この星の月は一つと答へけり真繍
何故か琥珀なる月に吠えたき森牧亭遊好
月上るましらも酒を仕込むとや酔進
月上る洗濯物を照らす夜水曜
迸る酢橘の香り染み渡る月スカビオサ
留守番を月に頼んで闇篭もり菅原千秋
みちのくの湯の香恋しい月夜かな杉浦あきけん
目の覚めし差し込むひかり月あかり杉浦夏甫
屋根越しに合成写真のごとき月杉浦真子
単線の地平に月の生まれけり杉尾芭
お願いだからこちらを見るな昼の月鈴木(や)
星消えて星条旗なお月の上清白真冬
赤錆の屋根に描きし月ジグソー素敵な晃くん
思い出の月夜さよならとしまえん須藤かをる
夜半の月残響シネマコンサートすみすずき
追憶や父の影踏む月仰ぎ青児
林間の月縦割りに丸くなり清波
羽の音月の鏡や水しぶき星夢光風
潮騒やかがり火迎ふ月の宿そうま純香
月ひとつ有明海に浮かびけり蘇州
月見てるあの子はきっと寂しがりそまり
言語夫指先光る夕月夜空
月光とエンヤの響き夢誘ふそれいゆ
転勤の地「みなみ」の窓に月渡る駄詩
耳たぶに触る幼手や月の舟惰庵
夜道の影気付いて見上げて満月たいやきは腹から食べるにゃんこかな
月明りにゴッホの画本めくりけり平たか子
海静か月に光の道伸びる高石たく
お月さま自己肯定感をくださいな高嶺遠
満月や残業続きの子にライン鷹野みどり
ゆったりと月を眺めて土手を行く高橋基
サインするペンのインクの果てて月高橋実里
真夜中に目覚めて窓に月探す高橋光加
胎内にあるよに眠る夜半の月瀧本敦子
月上る我が波よあなたに届け田口明香
裏側にもうひとりの吾月上る竹内みんて
難病も月光ワイフにゃ敵わない竹安修二
暮れてなほ妖し月下のミュージアム多胡蘆秋
便箋の滲んだインク月上るたじま
浸りゆくペダルゆるめて月の秋たすく
満月や月をとってくれとほしがる孫多田ふみ
父の背で鞍馬天狗にあう月夜たちあおい
見納めや挙式前夜の窓の月橘右近
午前三時だいだいの月眺めやる立山はな子
満月や雲の動きの早きこと田中勝之
灯台のように夜空を守る月田中節子
月明り部屋の中までこぼれゐる田中ようちゃん
月光り耳すませるのは餅つきか田中善美
湯上りの匂うからだに月纒う谷口昭子
ヘンゼルの落とした小石照らす月谷本真理子
五分待ちラーメン食うや秋の月田畑整
夕月やバトミントンの羽白く玉井瑞月
退職の決意をしたり胸の月玉井令子
ババ抜きや右の窓から月上るタマゴもたっぷりハムサンド
バックミラーからサイドミラーへ月玉庭マサアキ
月にまで届く弱音(じゃくおん)ホロヴィッツ玉響雷子
足音の高く響きし帰路の月たむこん
表札は逝きし名ばかり昼の月たむらせつこ
川の月李白ならずも掬いたし田村モトエ
五円玉穴より覗く丸き月田本雅子
石垣に潜む生き物月の夜ちっちのきも
乳白色ガラスの女神月照らす千葉睦女
かぎ尻尾ゆらす背越しに夜半の月千葉もな実
夜半の月静かに寄り添ふ火星かな千風もふ
朗報待つじっと待つ月の蝕ちやこ
月の兎とやり過ごす宵っ張り衷子
飼育小屋つきと無縁な赤目たち月影キョロ
出迎への月に驚く買物後月城花風
こよひ月震へる接吻まもりしか辻内美枝子
忘却や野良の見上げる秋の月土田耕平
満月や明日の献立焼魚津幡GEE
宵月に誰をたずねる鈴の声鶴沢木綿子
月見ても泣けない月日の流れたりティーダ
月の道遊泳のごと足運ぶ出井早智子
月光に太るバニラの蕾かなテツコ
月の窓宇宙を知らぬ猫の影鉄猫
黙々と素振り続ける月下かなてまり
石器手に北京原人月を見るデュフフフヘデュ
想い人月の光を隠しけり寺津豪佐
月丸くネオン街にも声がする寺林凌
裏見せず離れもせず月は静かてんてこ麻衣
満月へ駆けゆく犬の濡れ羽色苳
地歌舞伎の廻り舞台や月上るときめき人
真円の月青白く酔覚める徳
月渡る送電線を潜るよに徳庵
燃え尽きるのにまだ青いのか月よ独奏
つげ櫛の椿油香る月の秋としまる
月鏡我を映してパリンひびとだまゆみ
チェロの音やしみじみ語る夜半の月戸根由紀
頬ゆるむビルの谷間で月見っけとみことみ
去りし人演歌の染むる月夜かな鳥越暁
LINEより手紙綴りし月夜かなとろろ
集えねど見上ぐる空に秋の月奈於美
雨戸繰る合間の逢瀬渡る月永井もとこ
月光やいつも表の顔ばかり中島圭子
月さやかそよ風わたる誕生日中嶋敏子
彫刻の様な顔立ちに月影仲田蓮謙
出窓に置くおもちゃのラッパ月の照る中西柚子
窓の月眺め涙し兵の頃中野富雄
昼の月ミロのヴィーナス腕探す中村一郎座右衛門
月弾むウォーキングの友とする中村こゆき
月下の付合い酒の運の尽きなかむら凧人
月の蝕一人足早になる帰路永谷部流
澄んだ月心に染みていざ行かん中山清充
つくづくと月に見らるる日記かな中山月波
コンビニコーヒー分かつ幸せ月の夜渚
月光に晒す我が身の黒歴史なごやいろり
月上るついてくるなよ俺のそば那須いづみ
都の空襲疎開の子等の月仰ぐ夏目坦
子を負ふて面影橋に月上る浪速の蟹造
一輛の月追ふごとく到着す名計宗幸
月光や猪迷い来てころされて成久巳子
あれがまあ四十万キロ月眺めなんじゃもんじゃ
背を丸め爪弾く弦や月の秋新美妙子
祖母宅の厠をひんやり照らす月にいやのる
月の出や三尸の虫の鉢合わせ二鬼酒
上弦の月のゐる間のかくれんぼ西尾至史
月の夜にうづたかく積む句屑かなにじのすみれこ
美田今あまねき月の光あり西原さらさ
三日月のまだまだ減って行きそうで尼島里志
殊勝なりレーシックした日の月は新田崚真
月愛づる水底の人陸奥の人庭野ちぐさ
赤と黒狭間に浮かぶ白き月ねがみともみ
金色(こんじき)の雫となりて月しずか猫村ラモー
曇天の月や箪笥に瓢箪型糸擦機根津C太
月光の下を相合傘が行く涅槃girl
雲きれて森の影濃し夜半の月眠睡花
空つぽの子宮に月を吸ひ込みて根本葉音
月浴びて無垢の体となりにけり埜水
ゆるゆると一人の月の湯船かなのど飴
ロザリオや月光受けて光りけり野中泰風
鬱病が癒えて気づいた月明りののr
月の雨動物園の鉄格子野ばら
闇夜溶くまろき月いで母に似て延杜
一本道を月と歌うや過疎の町則本久江
車止めため息見上げれば満月橋本恵久子
月白や確かあの辺に鉄棒馬祥
眉月に猫の声する滝見茶屋馬笑
仲直りはプリン買うこと月光るはっかあめ
ゆるやかに稜線あらは月白し葉月けゐ
カンロ飴みたいな月や里帰り初野文子
おいて行く後ろ暗さに寄り添う月明かりはな
月光弾く人の渾身月やさし花おうち
愛犬のお尻見ほほえみ月寂し花岡幸嗣
月だ月ほっと一息ひとり酒花岡紘一
手を繋ぎ振り返り見るお月さま花岡浩美
鉄道響く早足の月の道花咲みさき
月煌々伊吹の山を浮彫りに花野(はなの)
満月はなんも纏っちゃおりゃせんよ羽沖
月影に怯える我が子今だけは馬場勇至
寝ては覚め軋む枕に月渡る浜けい
百通目のご祈祷メール月青しはまのはの
恋愛の小説開く月の秋林めぐみ
クヌギ降る林に低く昼の月原 典子
始発へと急ぐ足音月明り原田民久
スカイツリーうさぎ逃げ出す月の下薔薇真理コ
昔々月の兎を見てた頃原善枝
草揺れて風の向こうに宵の月haru.k
沐浴の少年の肌月に染む春海 凌
月光の縁切寺に詣でゐるハルノ花柊
月明かり乳を飲む子の瞼揺れ晴峯旬草
月のぼる浜辺の白波刀とぐはるる
月昇る側に火星は太刀持ちでHNKAGA
惑星のマンションの尾根月上がるひーちゃんw
下町の東大阪照らす月光源爺
老松を抜きし跡さす月あかりひぐちいちおう(一応)
大仏と何を語るや夜半の月樋口ひろみ
リクエスト深夜放送まどの月ひっそり静か
同じ月眺めているね西東人見則江
照らす先皆平等に月明かり一人ベランダ晩酌
ウイスキー指二本分の月夜かなひなた
戻ったら仲直りしよ月ひかるひなたか小春
もし月が鏡でも無理無言ではひな芙美子
月が三つ四つ点描乱視の妙ビバリベルテ
この人に決めようかなと月に聞くひめりんご
静まりて詰みの一手や月渡る風信子
月光やフィドルに合わせくるくるとひよこ号
明日帰国ダイナー後に月近しひよこねいさん
月の道小舟するりとモルジブや飛来英
月出づり星置き去りて天頂に平松一
メール来て各々の窓さがす月昼寝
ひとり満つバッハのカノン夜半の月蛭本喜久枝
月代や山の端這ひたる送電線ひろき
月より団子人知れず更年期ひろ夢
山の月忘れがたき日々付箋あり琵琶京子
半月や髪すく櫛の手を止めて風香
月影の青き浄土や那米床山風泉
月上る南の稜線さわやかに風来坊
仰ぎみて月の灯りに恋焦がれ深井順子
月取つてくれと泣く子を見る一茶福井水龍子
娘待つサイドミラーの月明かり副田木染
タクシーは無し携帯と月灯り福田みやき
猫が待つ急ぐ家路に月光る福ネコ
既読スルーグラスの雫月清か福弓
涙枯れ今年はひとりで月を観る藤井聖月
我が影を追うて月夜の登坂藤井眞おん
波音や月に静かの海のかげふじこ
ウゾ沁みるチャイナタウンに月渡る船橋こまこ
どこからも池の正面名残月撫品
月見たし原始の人のごとき目でふみくらのな
スラムの少女街の月へと手を伸ばす冬のおこじょ
満月に真夜中の虹浮かぶ滝古澤久良
冴え渡る月夜の下に影二つ古庄秀樹
つき高く山わたる風びょうびょうと平馬
月を見て歯をくいしばりまた明日ヘッドホン
月光や道に猫ありスフィンクス歩亀
しのぶればしのぶほどほどつきのあき星雅綺羅璃
追いかけて追いかけられて月明かり細江隆一
延命を望むか問うて母の月細川小春
月明かり大人の少女が匂い立つ蛍源氏
胸痛い涙は出ない月もないほたる純子
煮崩れたじゃがいも満月のカレー穂積のり子
月満ちて今宵は猫の三回忌保土ちゃん
月の石前回めだま次回なに堀満千男
ギター弾く指先熱き月渡る盆暮れ正ガッツ
テント場の月下に浮かぶ槍ヶ岳香港ひこぞう
カンバスの欠けたる月に伸ばす指ぽんず
コロナ死止まず月如何に見降ろさむ凡々
月の道そおっとそっと影を踏むほんみえみねこ
月上る探すボールはあと一つまあぶる
経響き香立ち昇り月隠る舞子法師
三日月のエッジ黒塗りのエビデンス牧野敏信
あの娘行く月への切符片道でまこと(羽生誠)
夜なべ終え山姥に月あずけ寝る正岡恵似子
振り仰ぎ視線辿れば雲間の月昌哉
宵月やインフィニティプールを泳ぐ眞さ野
満月に振り下ろす竿夜釣り客松尾義弘
朱き月眠れぬ夜と蕁麻疹松島美絵
亀鳴きて兎呼ぶよな池の月松髙法彦
ピアノ閉めおやすみ言う子月光る松村貞夫
月光や内に棲むもの鎮め欲し松本厚史
月光や消えたる街の灯も人もまどん
月明かり頼りに外す洗いシャツ眞鍋千穂
月影にきらめく薬指の星真冬峰
風紋は闇にのまれて月白しままマリン
月光や腰まで伸びる枝毛切るマムシ銀行早乙女
草木染まといて月に帰り行く真理庵
タロットや月に映せる心闇まりい@
コンビナート照らして月明かりかなまじまみいきち
黄金の月をかすめる米軍機三浦ごまこ
防波堤カント説く君月上る三島瀬波
月の染みけふは兎に見えにけり美翠
カモミール香る湯船や月上るみちむらまりな
三日月や後ろめたさに爪の後美月舞桜
弓弾けば月の音色はチェロに似てみつき小夏
月夜には黒松一本客となり光子
シルバニアンファミリーの観る月の顔満る
月光や暮れゆく海の鮮鮮しみなと
月あかり二人の下駄音風呂帰り湊かずゆき
トイレ出てすぐには帰さぬお月様みなみな
陣痛の合間合間に月を追うみはね
負けん気の強い窓の外の月よみほめろ@いつき組広ブロ俳句部
リタイア日肩の荷下りた月夜なり見屋桜花
スタジアムの熱月下に静謐す宮坂暢介
月に歌え技能実習生の寮みやざき白水
離れても君の瞳も同じ月宮地弓恵
帰り道月影続く御堂筋美山つぐみ
満月と芭蕉と曾良と吾が里と深山涼水
小さき悔いあるかなきかの昼の月宮村寿摩子
つきのとや餅つきしている夕暮れの明照彬吾
若き死を悼む術なく仰ぐ月みわ吉
いそいそと団子積み上げ満ちる月三和花子
月しづかひとりの君の手を掴み向原かは
バブーシュの踏む風紋の辿る月武者小路敬妙洒脱篤
混ぜご飯の香蜜柑色の半月むらのたんぽぽ
旅立ちに靴紐固く残る月村辺史公
月渡る竪穴式の住居跡村松登音
許されし無口長所となる月夜もつこ
あらたまのたましひこぼれさうな月モッツァレラえのくし
みかづきみ象のおめめときみがいう本山喜喜
抽斗に仕舞ひたくなる夜半の月momo
月光や横断歩道渡る猫桃子ママ
わが呼吸さへもうるさき月夜かなももたもも
丸く肥え誉められるのは月ばかり桃葉琴乃
月光よ旅立つ君の道照らせモモンガ
月光は瞼通して滲み込みぬ森 毬子
笑おうが泣こうが同じ月上る森 都
宵月や白く浮かんだビルの上森澤佳乃
満月や住宅街にイグアナ森中ことり
天婦羅の匂いの残る月明かり森の水車
満月のスキニーディップ魔女になるもりのまりりん
片恋はおしまい月と待つホーム守宮やもり
月明かり飯場の酒の滲みとほる門前町のり子
月明や栃木の叔父の通夜の席焼津昌彦庵
陣痛や八丈富士にのぼる月八島裕月
あきらめて帰る背中に月こうこう痩女
月下の珊瑚浜島ぞうりの来て柳川心一
たまにしか円くならない丸い月ヤヒロ
月の秋「おおきなあな」と児の云ひて山沖阿月子
厠へと縁側浮かぶ月夜かな山川恵美子
電灯の無い帰途月の満つを知る山川真誠
月明かし寄り添う星の影淡し山川芳明
「お月さまぼくを見てる」と窓辺の児山口一青
母逝きて戦終わりて月渡る山口香子
裏木戸を開けて月を見友を待つ山口雀昭
月光に決断の飛車響きけり山口たまみ
水割りの氷クルルと月光浴山﨑菫久
仰ぎ見る素直になれる秋の月やましろあきこ
哀しみを月の兎と分かち合う山城明子
まるい月砕いて進む雑魚のむれ山育ち
神々し月は正面耳痒し山田啓子
駐車場今夜だけの月のぼる山野花屋さん
「お風呂が沸きました」音声案内秋の月山村楓
月渡る王者の如く鳰の湖山本康
月光や白より白し白鷺城山本弘子
月影や誰も登らぬ武者返し山吉白米
舫舟灯ほのと月の浦遊泉
リモートの飲み早飽きて月見てる雪だるま担
ワイシャツのボタンのほつれ朝の月雪乃
主のゐぬ部屋にも等し夜半の月夢見昼顔
月の兎深夜のナース出勤す欲句歩
橋の上親が嘆くと赤い月夜香
吸ひさしを揉み消しながら燻す月横浜J子
月影に小石投げ入れ黙す君吉哉郎
幾年月や誰のうえにも月ありて吉崎由美
コンクリと月の間で眠れぬ夜よしざね弓
誰も皆自分の月を持ちにけり吉野春夏
うたた寝や豆乳に膜2時の月吉藤愛里子
夜の海石炭のごと光る月夜の一炉
月の兎やいつまで続く家事仕事読獺
月の暈リハビリの父はここに居る来知万郷
マスカラを直す私を見てる月雷紋
たまゆらの湯船の月を掬ひけり梨音
電線という額縁に有明月龍季
空見上げ離れし吾子と結ぶ月隆美
父危篤逗子駅の月煌々と凛
夭夭と月のあらわる町屋かな綸子
遠空の君想う小夜涙月りんママ
ミルクティ渡英二日目窓に月玲子
二人して仰ぐ満月フロントガラス蓮花麻耶
昼の月何故か悪事がバレる気が連雀
全快へ一直線の月光り六手
夜半の月故郷の道照らしおりわかなけん
月だよ!に月だね!と見上げる同じ月若林千影
月愛でる句会開けりテレワーク鷲野の菊
音ひそめ洗濯物を干す月下わたなべいびぃ
月丸し残業終えし駐車場渡辺満代
月光や白き矢放ち君照らす渡辺陽子
一葉落ち水面の月を泣かしけり渡邉わかな
かたりべの伝説響く月の秋笑笑うさぎ
海凪ぐやモーゼも歩く月の道村上旦
ちび蛙門燈の上月を見る横川敬之
もう咲くやしゅうめいぎくに月やさし山崎鈴子
三日月や神の手のみが夜気掴み坂島魁文@回文俳句
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
俳号には苗字を!
〇俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて、姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。よろしくご協力ください。
●俳句の正しい表記とは?
- 月恨み コーヒー感謝す 我は亀うまじろう
- 弓張月 隅田川へと 瞳を吸われベリーベリー
- 格子越し 消し忘れかの 月明かり岡本蜜柑
- お団子を ちょこんと備え 月を待ち月見草
- 雨やんで 月に輝く 水の星甲斐青琉
- 青い月 砂利道に射す 白熱球松下功
- もどりたい 跳ねる兎のすむ お月さま森のしずく
- ソンピョンに 団子月餅 秋の月西村徹郎
- 月に雲 こうべ畏む(かしこむ) 法師の葉西野泰史
- 徹夜明け 同士の月と コーヒーと石井千春
- 我も乗せ 月に向かいし 飛行機や白木依巳
- 月の宴 徳利倒れて 刻を知る板橋徹
- 鎌倉や ひでよし薄月 睨み付け末松鉄雄
○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
- 月仰ぎ
喉冷え
おぼゆ時と綺麗あおむらさき - 中也訳ランボオを手に
月を待つあきらこ - 月満ちた
何を想うか
なんだっけ…あゆ - 雲隠れ
闇に満ちてく
月の華うめすけ - 車まで
彼とではなく
月と行くヒカル - 月見れば
こころを癒す
くすしさんぽちき - 鶴瓶落とし
満月なくても
思い耽る後藤祐哉 - 母の衰え
受け止められず
父の墓御手洗美代 - 「満月だよ」
LINEをくれた
あの人は高田宏香 - 月も見ず
ハンドル握る
塾帰り黒ばあや - 月映す
スマホの闇に
傷多し中川佐千子 - 潮騒に
滑る江ノ電
月大路別所冷泉 - 「会えるかな」
一縷のメール
月細く凉風
○テレビの俳句番組では、三行書きにする場合が多いのですが、あれはテレビの画面が四角なので、そのような書き方をしているだけです。重ねていいますが「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが正しい書き方です。
●一句一季語から練習
- 月影や 蝉の亡骸 彼岸花奥田えりあし
- お月様すすきとだんごまどいかなえみばば
- 空に月探しに出たり野分あと清野康女
○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。
●兼題とは
- 夏の夜犬のマーズのおならの香すみれ
- 演奏会中止の夜に蟋蟀鳴く佐野龍雲
- 虫の音に嬉々と聞き入る燦々とたけ
- もみじ咲く庭つがいの土鳩羽毛と卵西田
- 菅(すが)内閣前にもあったと菅(かん)違い→勘違いにかけ箕輪祐一
○今回の兼題は「月」です。兼題を詠み込むのが、本サイトのたった一つのルールです。
- 真っ暗な 夜道を照らす お友達吉村はるか
○「月」をテーマに詠んでいることは分かりますが、兼題「月」とあれば、その季語を詠み込むのがルールです。
●前月の題?
- 小鳥来る欧州王者は赤い服ノグチダイスケ
○前回の兼題だぜ、ノグチダイスケ、出遅れたか~
●似たような発想をする人はいるのだ!
- 円周率3.14の月田本莞奈
- 名月の円周率も3.14翔龍
○「月」から「円周率」はでてこないだろう!と思いきや、やっぱりいるんだよね、自分と同じこと考える人。俳句では、似たような発想、ほぼ同じ句を「類想類句」と呼びます。俳句はたった十七音ですから「類想類句」は宿命です。自分が思い付くことは、他の誰かも思い付くに違いないと腹を括った上で、5音分いや3音分のオリジナリティ、リアリティを添える工夫を考えてみましょう。
- 弓月を飾る金星イヤリング海口竿富
- 金星のイヤリング下げ月うふふ丸山隆子
○夕暮れの金星と三日月の美しさに、ハッとして生まれた二句だと思います。「イヤリング」のようだという比喩はイケル!と思ったよね。この二句を例にとれば、「飾る」「下げる」は不要。読者はちゃんと読み取ってくれます。となれば、ここで3音節約できます。この3音をどう使うか。ここが、オリジナリティ、リアリティを考える最後のポイントになります。是非、やってみて下さい。
●季語深耕
- 見るほどに見らるるここち名月はトウ甘藻
- 名月や散歩に飽きた犬と見る曽我真理子
- 名月やあちらこちらの分かれ道坪田陽菜
- 名月と干し場で気づく独り者さかきかき
- 名月を軽き筆致で媼の技花野(はなわ)※別の「花野(はなの)」さんがいます
○名月は間違いなく「月」ですが、「名月」はそれ自体が独立した季語になっています。ページ数の少ない歳時記や季寄せでは「月」の傍題として載っている場合もありますが、基本的には独立した季語です。
例えば、「満月」と「名月」の違いって何だろう。なぜ、「名月」が独立した季語になっているのだろうと、考えてみましょう。季語の面白さは、この考察から始まります。さらに・・・- 緞帳の役目を奪うけふの月おさむらいちゃん
- 薄明の空に押印今日の月友雪割豆
- 半熟の食らいつきたきこもち月みことのりこ
- 望月や帰る時には姫とし本間美知子
- 居待月ISSを見守りぬ揺子
- ラテ淹れてカプチーノ淹れ居待月中島紀生
- レジ横のあんまんふんわり後の月峠まさ子
○これら「今日の月」「望月」「小望月」「居待月」「後の月」なども独立した季語。「月」という季語が、三大季語「雪」「月」「花」の一つになっているのは、とても大きな世界を持っているからです。秋の歳時記を開いて、「月」関連の季語を調べてみましょう。
- 本閉じてルテイン飲むや朧月玉繭
- 母寝息窓越しに月冴え冴えと水乃江辰
○「朧月」「月冴ゆ」は、秋の季語ではありません。歳時記を引いて、季節を確認しましょう。
- 月見酒このひとときは至福なる倉形サラ
- 亡き妻の欠点かぞえ月見酒ゆみずくん
○「月」は天文の季語ですが、「月見酒」は人事の季語。「月」から派生する様々な季語が、他のジャンルにも存在します。歳時記をゆっくりと眺めて、月関連の季語に付箋を貼ってみましょう。勉強になりますよ。
「月」という身近な兼題ということもあり、なんと9月は6189句もの投句がありました!過去最多でございます。先々月「5000句超えた!」と、はしゃいでいたのが恥ずかしい。。。
毎月『俳句生活』を盛り上げてくださり、本当にありがとうございます。本日の24時まで受付けておりますので、最後にもう一句、ご投稿お待ちしております(編集部)。