夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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9月の兼題

「石榴」

10月の審査結果発表

兼題「時雨」

初冬から仲冬にかけて晴れたり降ったりする局地的な通り雨。

10月の兼題『時雨』は2806句もの投句をいただきました。毎月投句いただき、本当にありがとうございます。
次回11月の兼題は「クリスマス」、皆さまの投句、お待ちしております。今月も夏井先生より、投稿についての注意事項をいただきましたので、投稿をされる方は「今月のアドバイス」を必ずお読みください(編集部)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
令和元年皇居時雨れてございます

凪太

夏井いつき先生より

「令和元年」を迎えた私たちは、ありとあらゆることを「令和初の○○ですね」と言祝いできました。新しい御代に居合わせる偶然を喜んでまいりました。作者は「令和元年」の「皇居」の前に佇んでいるのでしょうか。高いビルの上から「皇居」の杜を走りゆく「時雨」のさまを眺めているのでしょうか。「皇居時雨れてございます」は、勿論「令和元年」現在の様子を述べる言葉ではありますが、いつか語られるに違いない侍従の回想録のような響きにも感じられました。季語「時雨」の持つ伝統的な美意識が、そんな連想を我が脳裏にもたらしたのかもしれません。作者の脳裏に記憶され続ける「令和元年」の「時雨」の映像。静かで美しいひかりの時雨です。

地
遥かまで暗き時雨の滑走路

ふるてい

 降ったりやんだりする「時雨」を、広い光景で捉えるなら「滑走路」は打って付けの現場。「遙かまで暗き」は、単純にして明確な描写です。離陸直前の機窓でしょうか。雨の様相は刻々と変わって。

山頂を天狗の走る時雨かな

じゃすみん

 「山頂を天狗の走る」という虚の世界が、山肌を走る「時雨」の映像に重なります。今日はやけに天狗さまがお山を走る日じゃなと、囲炉裏端で爺さんが語っているかのような味わいが一句の魅力。

洗ひ場に猪の頭ごろとしぐれけり

RUSTY

 「猪」は秋の季語ですが、一句の主役は「しぐれ」。時雨がくる度に、「洗ひ場」に「ごろ」と転がされている「頭」が濡れ、血が少しずつ流れていくのでしょう。これもまた猪と時雨の実相です。

時雨るるや校歌幽き保健室

古瀬まさあき

 「時雨るるや」と上五で強調した後、中七「幽き(かそけき)」の一語の位置が巧い一句です。「校歌」がかすかに聞こえてくる「保健室」にいる作者の心身の様相もまた、幽く揺れているかのよう。

時雨るゝや音楽室のバッハこわい

多喰身・デラックス

 同じく「時雨るゝや」で始まり、同じ学校ネタなのに全く違った展開。「音楽室」の壁に張り巡らされた作曲家たちの肖像画の中で「バッハ」が一番怖い顔をしてるのでしょう。愉快でリアルな一句。

人
  • しぐるるやのつぺらばうのゐる鏡とかき星

  • 鋼鉄の塔より塔へ時雨けりとかき星

  • 村時雨闇より御神木いつぽん古瀬まさあき

  • 束の間のひかりは軽し夕時雨古瀬まさあき

  • あをあをと夢の切れはし朝時雨にゃん

  • 時雨寒けつねうどんの旨い店にゃん

  • しぐるるや罅の入たる磨硝子ほろろ。

  • 言の葉はみづとなりけり小夜時雨ほろろ。

  • 五反田の時雨や傘無き客を引く伊予吟会宵嵐

  • 時雨来て羽根の生えたる餃子かな伊予吟会宵嵐

  • 白線を越えたがる爪先に時雨潤目の鰯

  • カート・コバーンは五月蝿いし短いし時雨潤目の鰯

  • 朝刊に小さく吾の名片時雨ふるてい

  • 捨て猫の舐める時雨の溜まり水ふるてい

  • 鉄瓶のひゅんひゅん急かす夕時雨じゃすみん

  • 小夜時雨喉に貼りつくオブラートじゃすみん

  • 着ぐるみの脱ぎ捨てられてゐる時雨多喰身・デラックス

  • 時雨るゝやプレパラートの小さき泡多喰身・デラックス

  • しぐれ来ていよいよ遠野物語森青萄

  • 袖みえて指うつくしや小夜時雨森青萄

  • しぐるるやみな横顔の禽ばかり清島久門

  • しぐるるや茶房に海図大舵輪清島久門

  • 竹定規から匂いはじめる時雨かなさとけん

  • 点滴の間隔しづかなる時雨さとけん

  • 氷山のやうな都心の時雨れけりすりいぴい

  • 朝刊はれもんの匂ひ時雨寒すりいぴい

  • 葬時雨添い寝の父の夜が白むM.李子

  • 流行りものの傘に明るく時雨をりM.李子

  • 軒で待つ西の明るい片時雨sakura a.

  • 時雨るるや土産の黒糖砕きゐるsakura a.

  • レコードの針のとびとび時雨かなあまの太郎

  • しづかに眠る象の背中や小夜時雨あまの太郎

  • 少年は手ぶら時雨の無人駅いかちゃん

  • 消しゴムで消せぬ学歴しぐるる夜いかちゃん

  • セロ弾きを訪ねておいで小夜時雨いさな歌鈴

  • 謗言は時雨の色に包まれていさな歌鈴

  • 空のいろ決めかねてゐる夕しぐれいなだはまち

  • しくるるや外せる用は後まはしいなだはまち

  • 歩道橋わたり時雨とすれちがふかねつき走流

  • 夕時雨だれも登らぬ貯水槽かねつき走流

  • やはらかき拒絶のことば小夜時雨

  • しぐるるや錠剤溶けて空のいろ

  • 人魚の骨仄かに黒くなり時雨ぐでたまご

  • 朝時雨サルサソースの蓋が固いぐでたまご

  • 花の二区走者時雨を抜き来たるくりでん

  • スクラムの背を打ち鳴らす時雨かなくりでん

  • しぐるるや舌にボーロはほろほろとクロエ

  • 試験官一瞥したる初時雨クロエ

  • 赤錆の覆う船舶夕時雨けーい○

  • 空港の時雨れてシーフードドリアけーい○

  • 夕時雨お好み焼きを抱き帰るシュリ

  • 時雨るるや屈折率の違う恋シュリ

  • 稜線を少しくづして時雨かなちゃうりん

  • 変拍子ほどの時雨に遭っているちゃうりん

  • 泣きじゃくっていたこと時雨だったことときこ

  • 太陽の塔の時雨を受くかたちときこ

  • 慇懃なされど検問夕時雨としなり

  • 奈良時雨イオンモールは満車なりとしなり

  • 定めをりスタバにしぐれ眺む席トポル

  • しぐるゝや石畳にショコラ屋の灯トポル

  • 時雨るるやツンとわさびの海苔茶漬ぬらりひょん

  • 東京は谷多きまち片時雨ぬらりひょん

  • しぐるるや鞄の底の請求書みかりん

  • 横たはる犬に躓く小夜時雨みかりん

  • 時雨るや絹の端切れを縫ふ仕事るりぼうし

  • 時雨るや漆の刷毛の走りたるるりぼうし

  • しぐるるや眠るが如く千曲川葦たかし

  • にしん蕎麦空けて北山時雨かな葦たかし

  • 公園はしぐれ土管の子宮めく一斤染乃

  • 信楽のざらと土の香たつ時雨一斤染乃

  • 時雨たる幾何学の街はブルーグレイ加裕子

  • 還りたる猫は時雨の匂いして加裕子

  • 戸隠に迷う時雨になぶられつ花屋

  • 絶縁の手紙を時雨から守る花屋

  • 早舟の舳先に待つや沖時雨海口あめちゃん

  • 朝時雨観音崎に走る潮海口あめちゃん

  • あの子犬もう半額に夕時雨樫の木

  • 朝時雨話さぬままに転校す樫の木

  • 無音なる車窓の街の時雨たり亀田荒太

  • 八両編成一号車より時雨へと亀田荒太

  • 信長もゴッホも鬼か片時雨久我恒子

  • しぐるるやショーウィンドウに我が疲れ久我恒子

  • 離婚届パリパリ広げれば時雨宮部里美

  • 生れたての猫の声する小夜時雨宮部里美

  • 「…ばいいのに」語尾消さぬまま時雨去る玉響雷子

  • ビーズ選る指の縺れや小夜時雨玉響雷子

  • 時雨るるや墓はしづかに立つてをり玉木たまね

  • 時雨るるや歳をとらない古書店街玉木たまね

  • 祈る手の静脈やはらかに時雨古田秀

  • 夕時雨降霊会の始まりぬ古田秀

  • ドラえもんの涙どこから片時雨五月闇

  • 木工ボンドの指に絡むや小夜時雨五月闇

  • 傘たたむ音痛さうな時雨かな高橋なつ

  • しぐるるや茶碗の数が人の数高橋なつ

  • 時雨るるや火影ほんのり貸本屋高沢草々

  • 朝時雨火起こしは長女の仕事高沢草々

  • 花席はへの十二番京時雨彩楓(さいふう)

  • しぐれきらきら烏丸四条西入る彩楓(さいふう)

  • しぐるるや声しか知らぬ歯科医の手山名凌霄

  • しびしび時雨こぼこぼおこぼ先斗町山名凌霄

  • 覗いても見えない穴を夕時雨七瀬ゆきこ

  • 月が尖るから時雨が細いから七瀬ゆきこ

  • 教授宅の老犬鳴かぬ小夜時雨若井柳児

  • エスプレッソ苦し時雨のカフェ・グレコ若井柳児

  • 時雨寒ぐい呑の表面張力崩れ宵猫

  • 曾祖母の嫁入りミシン片時雨宵猫

  • マウンテンゴリラ憂鬱時雨寒小川めぐる

  • 小夜時雨大樹に星のささめごと小川めぐる

  • 凸凹をでこぼこ歩く夕時雨小池令香

  • よぢれだす涙のふくろ片時雨小池令香

  • しぐるるや傘に妬心を隠し持ち小南子

  • バチバチと爆ぜるカデンツァしぐれけり小南子

  • 時雨です其(そ)に喜べる飼ひ猫です小林陸人

  • 猫も人も時雨の中を帰りけり小林陸人

  • 前職の源泉届く時雨かな松山帖句

  • 朝時雨シナモンロール焼けました松山帖句

  • 時雨るやボタン一個で風呂が沸く上原淳子

  • コーヒーを待つ相席や片時雨上原淳子

  • 粉薬のどに残りて小夜時雨常幸龍BCAD

  • 夕時雨家族といえば兄だった常幸龍BCAD

  • 時雨るるや神戸元町産後ヨガ西村小市

  • 片時雨移動スーパーやって来る西村小市

  • 時雨るるや今日排卵日と妻が言ふ青海也緒

  • 朝しぐれ本当にまだ産めるのか青海也緒

  • 鮮やかに吐血時雨の昼下り赤橋渡

  • 髪を掃く床屋は無言時雨寒赤橋渡

  • ポケットに詩片押し込む片時雨蒼奏

  • 差し出したことばを叩く夕時雨蒼奏

  • 小夜しぐれ街から色を消して明日村上敏子

  • 咽で噛む饂飩一気に片時雨村上敏子

  • さびしさは遅効性なる時雨かな多々良海月

  • 時雨寒まぶせば踊る鰹節多々良海月

  • そらどれふぁそらみれしらそしぐれしぐれ沢拓庵

  • 掌に時雨のはじめ拾ひけり沢拓庵

  • オペ終わる窓は時雨に濡れてをり池之端モルト

  • 時雨るるや勝利馬(かちうま)湯気を纏わせて池之端モルト

  • 一駅を乗り過ごしたる時雨かな中岡秀次

  • 夙川の松の葉匂ふ時雨かな中岡秀次

  • しぐるるや沖の灯台寂しがる宙のふう

  • しぐるるやLP盤の針の音宙のふう

  • 妊娠検査薬はプラス外は時雨田川彩

  • シロナガスクジラの眠る時雨かな田川彩

  • ガス灯のけぶる銀座や夕時雨田村利平

  • 大仏は動じぬ時雨程度では田村利平

  • しぐるるや豆屋の軒の立ち話渡辺陽子

  • ビル三棟解体進む夕時雨渡辺陽子

  • 時雨るるを並ぶ祇園の蕎麦屋かな都乃あざみ

  • 夕時雨愛してるって聞く車内都乃あざみ

  • 山神の癇癪のごと時雨かな土井探花

  • メルカリで指輪売つちまへば時雨土井探花

  • しぐぐるや父の遺品に柳鏝内藤羊皐

  • 貸倉庫迄の小路をしぐれけり内藤羊皐

  • 鳥栖過ぎて新鳥栖までの時雨かな楢山孝明

  • 夕時雨こつくりさんを呼んだまま楢山孝明

  • 夕時雨拾ったのは墓石の欠片南風の記憶

  • この声は知らぬ子時雨のかくれんぼ南風の記憶

  • 朝時雨天然酵母パン工房南方日午

  • しぐるゝや古書に残りしキリル文字南方日午

  • 逆走の救急車へと時雨れけり播磨陽子

  • クランケとなりし一日の片時雨播磨陽子

  • しぐれたる町の祠の五円玉背馬

  • 警察はずっと時雨の中に立ち背馬

  • 電柱の貼り紙の猫打つ時雨梅嶋紫

  • ベビーカーの内から時雨蹴り飛ばす梅嶋紫

  • 夜時雨や咀嚼の響くひとり飯梅木若葉

  • 傘の柄の熱に戸惑う時雨かな梅木若葉

  • 夕時雨母の電話の語気強し八幡風花

  • 時雨るるや飴噛み砕くほどの事八幡風花

  • 地下鉄の口は矩形にしぐれけり板柿せっか

  • 昼の灯のぽぽと時雨の人造湖板柿せっか

  • 家ぬちに時雨宿りの声を聴く比々き

  • トンネルを出て時雨へと入る電車比々き

  • 声交す時雨の厠老と老比良山

  • 考える人は猫背や片時雨富野香衣

  • 時雨るるや睫毛重たき修道女富野香衣

  • 海技士の叩く電鍵さよしぐれ北村崇雄

  • 出来立ての弁当提げて片時雨北村崇雄

  • しぐるるや隣の客は縮れ麺北野きのこ

  • 夕時雨みなは授業が分かるらし北野きのこ

  • コンビニの狭き庇や小夜時雨椋本望生

  • 傘掴む感情線や片時雨椋本望生

  • しぐるるや錦市場をひやかして野ばら

  • 母の髪しづかに梳くや朝時雨野ばら

  • ナトリウムランプを帰る時雨かな有本仁政

  • 綾取のやうに鉄塔しぐれけり有本仁政

  • 夕時雨計りの麺は二人分葉るみ

  • 母の手に載せる偽薬や夕時雨葉るみ

  • 時雨寒昨日もしてたその話鈴木(や)

  • 村時雨誰も使わぬ集会所鈴木(や)

  • 小鳥屋の時雨小さき羽熱れ鈴木由紀子

  • おはようもおかへりもなき時雨かな鈴木由紀子

  • 古書店の夢二にシート夕時雨鈴木麗門

  • しぐるるや麻雀のまだ一人来ぬ鈴木麗門

  • 時雨るるや内科医が目を合わさない凪太

  • 隠れ里ほろぶあかるさ朝時雨RUSTY

  • しぐぐるや弾かぬピアノの音がなるmomo

  • 初時雨モンマルトルの白き塔あきのひなた

  • 古の戦士は駆ける駆ける時雨あさふろ

  • コーヒーと録画整理と夕時雨あざみ

  • 時雨寒ウッドデッキの黒き染みあさ奏

  • 鶴を折る細き指さき北時雨あつちやん

  • 夕時雨あと三十ページの暇もらうあまぐり

  • 夕時雨甘辛き香の惣菜屋あまぶー

  • しぐるるや紅殻塗りの甘味処いまいやすのり

  • 時雨るるや山の木立に紗をかけていろをふくむや

  • すれ違い列車時雨を連れて来しうさぎまんじゅう

  • 時雨なり僕は頼れる副部長うどまじゅ

  • カフェ独りスウィングドアに時雨くるうめがさそう

  • しぐるるや夕餉の豆腐買ひに出るオカメインコ

  • 夕時雨盲導犬の余生かなおくにち木実

  • 小夜時雨腕の猫の耳ふるふるおんちゃん。

  • 母の鞄存外軽し夕時雨カインド

  • 夕時雨技能実習生帰るかつたろー。

  • C棟のフラスコ越しに初時雨きなこもち

  • 軒先に古書香り立つ時雨かなくま鶉

  • ラジオから不正のニュース時雨寒クロまま

  • 本船の食事は美味し片時雨サイコロ帝釈天

  • 「はこびあめ」君呟く外は時雨たく

  • 塩っぱめの煮付けあたため運び雨さきのすけ

  • しぐるるや点字ブロックきゆつと鳴くさとう菓子

  • 時雨止む砂場も遊具もぼくのものさなぎ

  • 燃えぬゴミひとつ残れる時雨かなさるぼぼ

  • 小夜時雨中折れ帽の指の跡じょいふるとしちゃん

  • 時雨へと階段上がる鰓閉じるせり坊

  • 時雨るるや猫甘噛みをやめぬ指テツコ

  • ドイツ語の歌詞にカナ振る時雨かなてまり

  • 妣へ手紙出したい時雨を見てゐればてんてこ麻衣

  • 時雨の色若き魁夷の白カンバスときめき人

  • 夕時雨降車のボタン点りけりとしまる

  • 時雨るるや癖毛自由にしてあげるなごやいろり

  • 時刻むゼンマイ絡まる小夜時雨ねがみともみ

  • 抽斗の匂い甘やか小夜時雨のど飴

  • 配膳待つ介護食堂夕時雨パッキンマン

  • 時雨寒おすべらかしへ銀の糸はなあかり

  • 止まりたる水飲み鳥や夕時雨はまのはの

  • 「志望校厳しいですね」時雨聞くはむ

  • 時雨れろ時雨れろお前のことは知ってるぞひでやん

  • 放課後の時雨れて解きぬバックハグひなたか小春

  • 孤独にはあらず時雨に聴き入る夜ふじこ

  • しぐるるや包丁塚の苔青しべびぽん

  • 掃除機のなかは竜巻時雨やむまこちふる

  • 100円の傘を握りて時雨かなまりい@

  • 黒塀の露地に猫ゐる朝時雨みやかわけい子

  • 猿の声蒼き時雨の動物園みやこわすれ

  • 木場は時雨雪岱の傘と逢ふやうなみやざき白水

  • 東京や最後の時雨はあたたかしみわ吉

  • 時雨るゝや三鷹で聞いた京言葉メイ子

  • 残業の締めにセコムをかけ時雨ももたもも

  • 水飴のきらめきの如片時雨ヤヒロ

  • 夕時雨蒼き島々現るるゆすらご

  • 局前のポスト開函片時雨よしざね弓

  • 時雨寒夜中に夫の爪を切るよにし陽子

  • ほの甘き卵焼きかな夕時雨ラーラ

  • 時雨寒偶さか解けしパズルかなわかなけん

  • 時雨るるや誰も座らぬ椅子二脚ゐるす

  • 北山の時雨の際に立ちにけり愛燦燦

  • しぐるるや夜行列車のラストラン葵新吾

  • 時雨るゝやラ・カンパネラを弾く十指安宅麻由子

  • 時雨るるやカレーの匂ふ本の街伊藤順女

  • 片時雨あの青空の下に行く宇佐美好子

  • 他人見ては泣く子やまだ止まぬ時雨浦文乃

  • 上京の時雨にしてはぬるき風永谷部流

  • 東海道五十三次々時雨横浜J子

  • 三条を時雨の音よ明るさよ可笑式

  • 小夜しぐれ一円切手はるはがき夏雨ちや

  • しぐるゝや紙風船に深き息果蓏

  • 時雨るるや松江堀川鷺しぶき花岡淑子

  • ニセモノの指輪キラキラ小夜時雨花咲明日香

  • 介護ベッドの脚跡四つ夕時雨花南天

  • 雨垂れは時雨の気持ちがよめない花紋

  • 翻る白衣うつくし夕時雨海老名吟

  • スコーン焼く窓打つ時雨まだ時雨笠原理香

  • 片恋や時雨眺める純喫茶甘平

  • カピパラもキリンもサイも時雨をり閑々鳥

  • 時雨るるや法廷教室の灯しのみ季凛

  • 片しぐれ水平線に日の名残り紀泰

  • 二時間待つ0番ホームの時雨かな紀朋

  • 叡山は時雨心地や里の家亀山酔田

  • しぐれしぐれきれいなあめのことなのね吉田結希(6才)

  • 失恋をした日は時雨がようけ降る漁港

  • 村時雨琵琶湖に霞む竹生島玉井令子

  • 夕時雨銀座のサンドイッチマン桑島幹

  • アラザンをケーキに振ればしぐれけり薫子(におこ)

  • 時雨るるや牛タンほろろと焼けるころ月の砂漠★★

  • 好きだといふ時雨のごとく君はいふ源氏物語

  • 多賀城址幾年月の時雨かな古史朗

  • 夕時雨やけに失せ物多き今日古都鈴

  • 不夜城に薫る時雨と巻きタバコ吾輩はペンである

  • 時雨るるや筆談病床窓の外後藤久

  • 片時雨ガイドと駆ける酒の街甲山

  • 赤レンガ倉の弾痕片時雨紅さやか

  • 消しゴムの屑の粗密や時雨寒綱長井ハツオ

  • 良寛堂の中にシャトルや夕時雨高橋寅次

  • 気まぐれに返す挨拶夕時雨高田祥聖

  • 診察台足袋ほとびける夕時雨克巳@夜のサングラス

  • 朝時雨さて免停の後始末今田哲和

  • しぐるるやブルーシートの多き町根本葉音

  • 時雨ナリココラデ酌ミ交ワセウ友ヨ佐藤花伎

  • しぐるるや水少なめに捏ねる粉砂舟

  • 思春期の子らの不機嫌初時雨斎藤数

  • 時雨るるや蕎麦屋に列ぶ陶たぬき斎乃雪

  • 要介護2は1の次時雨寒坂まきか

  • しぐれ聴く境内に飛ぶ中国語榊昭広

  • やり過ごす時雨コンビニのコーヒー三茶F

  • 和瓦を漆に塗り上ぐ小夜時雨山﨑瑠美

  • 老眼にダリの世界よ片時雨山沖阿月子

  • 夕時雨ハシビロコウが一羽立つ山女魚

  • 叢時雨ダンプに震ふ地蔵堂山太狼

  • シーツずばばと取込む気合村時雨山内彩月

  • 二杯目の紅茶は苦し小夜時雨獅子蕩児

  • 豆腐売り「フ」の音残し時雨来る紫瑛

  • 小夜時雨屋根のリズムと針仕事詩扇

  • 月時雨オールディーズに針落とす次郎の飼い主

  • 饗宴や時雨の警ら仁王立ち篠崎彰

  • しぐるるや始発列車に吠える犬紗智

  • 靴紐の結び目直す時雨かな蛇井めたる

  • 小夜時雨吉幾三を電リクす珠桜女絢未来

  • 時雨かな硝子に映る我猫背寿松

  • 小夜時雨ゆるりと下る神楽坂秋月なおと

  • 負けねこを抱いて時雨の帰り道緒方しんこ

  • 尾道の町は迷路や片時雨小鞠

  • ゴム伸びて尻出るパジャマ朝時雨小笹いのり

  • ホスピスの部屋に時雨は届かざり小川天鵲

  • 月球儀に潜むタテ穴小夜時雨小倉あんこ

  • ガス燈のほのほあらふや小夜時雨小殿原あきえ

  • 名画座のポスター朽ちて夕時雨松田文子

  • 村時雨猿猪防ぐ電気柵松尾義弘

  • ばあちゃんの自転車来る来る来る時雨焼田美智世

  • ゴールまで3キロの文字時雨寒上野眞理

  • 夕時雨美空ひばりを口ずさむ城内幸江

  • 独り居や時雨はショパンと共鳴す植田かず子

  • 夜の湖へ曜変天目めく時雨色葉二穂

  • 終活の指輪残りて夕時雨新美妙子

  • 校舎よりソプラノ甘き時雨かな森都

  • 小夜時雨縦列歪む教習所真宮マミ

  • 時雨るるや霊峰のふち金の色真繍

  • 時雨夜を綴る楽器を買ひにけり仁和田永

  • ジャズの音に時雨の粒も彩度増す水玉

  • 恋文の返事待つ日の時雨かな水夢

  • 時雨るるや橋の向かひの屋台の灯杉浦あきけん

  • 松風や袖に時雨るる法隆寺清水容子

  • 伊勢路への尾灯消えゆく夕時雨清水祥月

  • しぐるるや猪口にほこりの浮く夜半西藤智

  • ツンドラの故郷は時雨深く寝る西條恭子

  • 大学の解剖慰霊時雨るるや青い月

  • 叡山は日向の匂ひ片時雨石井茶爺

  • 時雨るるや台湾屋台で紹興酒石垣エリザ

  • 時雨るゝや火車の轍の黒々と赤い彗星の捨楽

  • 老犬の時雨に探す死にどころ倉岡富士子

  • 全集の最後に遺書や小夜時雨倉木はじめ

  • 空の影ひと絞りせる時雨かな多事

  • 小夜時雨お産のしばし静寂よ大山こすみ

  • しぐるるや腹部エコーの深呼吸大小田忍

  • わが町に知らぬ道あり夕時雨大庭慈温

  • 日録に時雨とだけの車中泊大和田美信

  • 夕しぐれ入社二年の辞意を聴く鷹野みどり

  • しぐれ来る首ふり立てて嘶くや知足

  • しぐるるや寂しき町に歩み入る池田功

  • しぐるるや懐かぬ猫に餌をやり中山月波

  • 辰鼓楼の刻を告ぐるや時雨るるや中西柚子

  • 時雨止み刈安色の夕の空衷子

  • 神さへも時雨るる熊野古道かな鳥越暁

  • 時雨るるやポストに文の落ちる音辻が花

  • 信濃路や土の色して時雨来る渡辺みちこ

  • 西陣の続く機音夕時雨渡辺牛二

  • 父を嗅ぐ車内夕時雨の車窓渡邉一輝

  • 片しぐれ地に国境のある如く渡邉竹庵

  • ジュジュジュンと雀ダミ声朝時雨土屋雅修

  • 朝時雨眼を血走らせ雄鶏鳴く土田耕平

  • 小夜時雨老犬の眼はやさしやさし藤井信弘

  • 時雨寒昼は社食のカレーそば藤原訓子

  • しぐるるや螺鈿紫檀五弦琵琶藤色葉菜

  • 御堂筋時雨れて人の途切れざる藤田康子

  • 会話なき四人病室夕時雨奈良素数

  • しぐるるや阿闍梨餅食ふアーケード日午

  • 時雨口に受けて歩けば君笑まふ楠田草堂

  • 時雨るるや母のシャンソンすぐうううー二鬼酒

  • 教科書の子規に黒髪時雨来る尼島里志

  • 時雨るるや一人聴いてるボブ・ディラン馬笑

  • 闇?神(くらおかみのかみ)の気配や村時雨白よだか

  • 時雨るるや早緒に返す櫓のしぶき白雨

  • 時雨落つ躾の痣の新しき白瀬いりこ

  • 籾殻を焼く煙呑み時雨来る菱田芋天

  • 時雨るるや湯けむりに立つ夢千代像百合乃

  • 五秒後の時雨に向かうオートバイ浜野洋志

  • 新しき肌着に名札小夜時雨富山の露玉

  • トランプの顔横時雨の電飾版風泉

  • 時雨来る待合室の杖の音風峰

  • 時雨きてダンスビートの曲に替え福井三水低

  • 時雨るるや盆地の底に京言葉福良ちどり

  • せんねん灸すゑて時雨るるゆふべかな平本魚水

  • 愛犬の死因は不明時雨かな片栗子

  • 夕時雨伝言に返事はなくて北原早春

  • 時雨るるや法廷教室のみ灯し北村季凛

  • 捨てられし時雨の記憶膝の猫牧野敏信

  • ナナハンのライトさえぎる時雨かな盆暮れ正ガッツ

  • 友くれしカップ麺啜る時雨かな麻場育子

  • 時雨は銀鼠いっときの喧騒麻生恵澄

  • ディオールの紅眺むるや秋時雨満る

  • 覗色残る西端片時雨眠睡花

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  • 古都奈良の思い出に添う時雨かな谷口あきこ

  • お日様に時雨が来ては嫁入りぜ谷中薫氏

  • 朝時雨コーヒーを手に猫膝に谷本真理子

  • 片時雨吹き撒かせよ鼓笛隊池愛子

  • 夕暮れ泣き吾子越しに見る時雨かな池上敬子

  • 夕時雨白線が灯す赤信号竹一

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  • 夕まじか時雨浸み込む庭の芝八木実

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  • 時雨やみ黒く光りし露地の夜琵琶京子

  • 母見舞う涙の顔に夕時雨美山つぐみ

  • 夕時雨上がり香立つアスファルト美翠

  • 時雨上がるローストビーフ焼き上がる浜けい

  • 山陰の時雨気まぐれ恋破れ浜ちゃん

  • とりどりの家路を急ぐ時雨傘風花まゆみ

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  • 影法師天橋立小夜時雨福泉

  • しぐるるや隣の樋は修理中文月さな女

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  • 残されし人生の日や時雨来る北大路京介

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  • 退職の荷は重きかな夕時雨蓑田和明

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  • 小夜時雨ラストライヴの帰り道明田句仁子

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  • 時雨かなさすかささんかさらのかさ木村かすみ

  • 時雨寒成長痛に泣く孫や木村かわせみ

  • 時雨来る昨日のカレー食べてみる木村時子

  • 片時雨花街の屋根きらきらり木村修芳

  • 知らぬ人相傘さそう夕時雨木村波平

  • 介護終え帰路の吾が眼に夕時雨野中泰風

  • 時雨寒もらいし犬にレインちゃん野木編

  • 少年のグラスの中の片時雨矢野利昌

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  • 待ちぼうけの冷めたコーヒー時雨かな雄山卓女

  • しぐるゝ夜燗は二本とせがまれる葉月けゐ

  • 歳重ね喜怒哀楽の時雨かな葉路

  • 宴のあと芸妓の肩に小夜時雨里惠子

  • 店先に立つ息浅し夕時雨龍季

  • 相合傘胸打つ時雨のトレモロ玲凛

  • 朝時雨肺も湿るや渡月橋麗し

  • 小夜しぐれ乳房の痛み破顔の絵文字蓮花麻耶

  • 跨線橋レール光って夕時雨連雀

  • 小夜時雨名句を友と共感す鷲野の菊

  • 片時雨碍子に並び耐へる鳥暝想華

  • ことことと時雨れるたびのスープかな楡野ふみ

  • 余命などわかってたまるか時雨来る櫻井弘子

  • 時雨降るゴドーは今日も来ないまま涅槃girl

  • 深呼吸立ちこぎ続く時雨坂澤真澄

  • スーパーでつまらぬ買い物時雨けり澪つくし

  • 夕時雨帰れませんが進みます祺埜箕來

  • アロマの香やさしき夜に時雨かな齋藤杏子

  • 論敵も思いやる人小夜時雨齋藤むつはな

  • 時雨るるか少々急ぎ踏むペダル齋藤富美代

  • 積みたての土嚢の白さ時雨打つ籠居子

  • しぐるるや涙乾かぬまま眠り蓼科川奈

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号には苗字を!

〇俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて、姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。よろしくご協力ください。


◆ひとことアドバイス

●俳句の正しい表記とは?

  • 時雨寒 子と足踏みし 待つ園バスあーかー
  • てるてる坊主 吾子は眠りて 小夜時雨まこ
  • 「好きじゃない」人とも談笑 冬時雨りんご
  • 半グレも   軒下入る  秋時雨斎藤猛
  • 紅をひく  君失う女や  しぐれれば山谷拙文
  • 交差点 傘の花の波 夕時雨山本幸
  • 夕時雨 味噌汁の鍋 温める紫江
  • 犬小屋に 猫まんまるや 夕時雨星野茜
  • 豆を煎る  淋しき女  しぐれれば拙文
  • びっしょりと 心を濡らす 愚痴しぐれ竹安修二
  • 耐え抜けよ 時雨に烟る 吾の心田川さくら
  • 時雨つつ ポケットの飴 渡し場へ服部ゆうな
  • 待ちわびる 揺れるヒールの 赤時雨和進

○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪

  • 夕時雨
    酒場の愚痴に
    かき消されかわいなおき
  • 往く兄を
    止めれぬ我と時雨は
    無力ミツヤ
  • 時雨かな
    お仕立て上がり
    袷せ着る花織水香
  • 時雨時
    スズメや子らと
    雨やどり犬飼茶太丸
  • 奥歯噛み
    時雨に渡した
    きみの笑み菅原千秋
  • 母の愚痴
    時雨が少し
    かき消して渡辺一重
  • 煌めく日差し
    水やりの手に
    時雨かな任人
  • 時雨駅
    父の車みつけ
    うれし博多通子
  • 顔叩き
    負けぬわ時雨よ
    父の病室(もと)樋上直美

○テレビの俳句番組では、三行書きにする場合が多いのですが、あれはテレビの画面が四角なので、そのような書き方をしているだけです。重ねていいますが「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが正しい書き方です。


●一句一季語から練習

  • 布団干し出かけりゃ時雨ああ無情笠江茂子
  • 刈り終えたひこばえの田に時雨ふる髙橋理佳子
  • 朝時雨白馬から虹プレゼント山本康
  • 冬野菜植えて一服しぐれ待つ秋代
  • 咳続きふわりとはおり外時雨大本千恵子
  • 時雨やみ令和を祝して虹かかる桃葉琴乃
  • 腕擦る夫汗吹く私雪時雨真田真澄
  • 自虐的な夏に空は時雨れたくなったのか唯沢遥

○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。

  • 時雨るるや窓辺で休む綿の虫小鷺

○「綿の虫」は「綿虫」のことでしょうか。「綿虫」とすると季重なりになりますが、「綿の虫」という書き方はちょっと中途半端。綿虫と雨の句にすることも可能ですから、推敲してみましょう。


●兼題とは

  • 嵐すぎ青空の下(もと)泥りんごume
  • 鉄拳覆る機械の鮮血風吹けば名無し

○今回の兼題は「時雨」です。兼題を詠み込むのが、本サイトのたった一つのルールです。

  • 時雨煮の白滝の甘さ飯三杯もしもし
  • 時雨煮の優しさ懐かし家の宴酔敦京

○この二句には確かに「時雨」という字が入っていますが、「時雨煮」はちょっと違うなあ。本サイトでは、毎回季語を兼題として出題しています。兼題を季語として使っている句をお寄せ下さい。

  • 秋時雨鈴鹿を超える二人旅山本ふじ子
  • 遺伝子は地蔵となりて露時雨夢見昼顔

○「秋時雨」「露時雨」は秋の季語です。

  • お題見て浮かばぬ俳句に心しぐれり美由子

○気持ちは分かるが、ファイト!(笑)


●季語深耕

○「初時雨」の句も沢山届きました。

  • 初しぐれ京のまちやの紅(あか)のれんおひい
  • 母の手にあやとりの橋初時雨AKI
  • 傘で聴くラ・カンパネラ初時雨ANGEL
  • 初時雨訃報に既読つかぬ夜クラウド坂の上
  • ピアニカの袋を探す初しぐれみなと
  • 初時雨心せかるる家路かなやったん
  • 初時雨小瓶に詰めたシーグラス茜空子
  • 忘れ傘やっと見つけし初時雨菊原八重
  • 子マンモス毛ほやほやと初時雨佐藤千枝
  • ふるさとは危険水域初しぐれ三河五郎
  • 初時雨おニューの傘に雫映え柴山今日子
  • 「なごり雪」のコード進行初時雨峻井
  • 初時雨歩き通しの京の宿大原妃
  • 夕刊のわずかな湿り初時雨田村伊都
  • 初時雨黒土の香に佇むや登久光
  • 初時雨わが子のお頭あせのにおい日野王子
  • サルベージ船戻る波止場の初しぐれ梅里和代
  • 君が耳無防備すぎる初時雨馬場東風
  • 病棟の窓に流れる初時雨矢野茂樹
  • 初時雨手をはなし子はビルの中立山枯楓

○「初時雨」を「時雨」の傍題にしている歳時記や季寄せもあるようですが、「初時雨」とはその年初めて降る時雨を指します。「初」の一字の味わいを考える時、やはり「時雨」とは詠み分けたいものだなと考える次第です。その本意の違いについて考えてみるのも、また季語深耕の作業です。

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9月の兼題

「石榴」

過去の審査結果

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