夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
6月の審査結果発表
兼題「短夜」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
ウチにくれ短夜の捨てちまふ子は
蜘蛛野澄香
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夏井いつき先生より
兼題「短夜」から、この名句を思い出した人もいたようです。「短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎 竹下しづの女」 中七「乳ぜり泣く児(ちぜりなくこ)」は乳を欲しがり泣く子を意味し、下五「須可捨焉乎」は「すべからくすつべきか」という反語の意味の漢文調。これを「すてつちまをか」と読ませる大胆不敵な句なのです。
これを本歌取りした掲出句は、一気に現代へとワープします。中々子宝に恵まれず不妊治療をしているのでしょうか。病気や不慮の事故で我が子を亡くしたのかもしれません。更に、昨今の虐待事件も心をよぎります。短夜にイライラして己の子を死なせてしまうような親がいる。そんなことをするぐらいならば、「ウチにくれ」という口語の叫びが、読み手の胸を抉ります。
短夜の瞼を持たぬ魚たち
川越羽流
夜の水槽の熱帯魚を想像しました。中七下五は魚の生態をそのまま書いてあるだけなのに、「短夜の」と限定されたとたん、詩が発生する面白さ。瞼を持つ人間もまた、眠れぬ眼を見開いて「短夜」の闇の中に揺蕩っているのかもしれません。
短夜や夢の尾鰭は痒くつて
赤尾実果
「短夜」と「夢」の取り合わせは二百句ほどありましたが、「夢の尾鰭」という比喩、「痒くつて」という虚の皮膚感へ展開したアイデアに独自性がありました。「短夜」の浮遊感めいた感覚をこんなふうに表現できるのだなあと感心します。
半円を水車は短夜にさらし
葉村直
粉を挽くための水車小屋を思いました。この「水車」は、夜は動いてないのでしょう。水車の半円は水に浸かり、残りの半円は乾いている。「短夜にさらし」で一気に詩となっていく言葉のメカニズム。やがて短い夜が終われば、再び働き始める水車です。
母にまだ影ある短夜の廊下
花南天あん
介護を必要としている「母」なのでしょう。「短夜」に何度もトイレに行く母か、うろうろと徘徊する母か。ふと、「母にまだ影ある」と感じとってしまった子の、何と切実な哀しみでしょう。「短夜」ともなればその思いも更に。
短夜を散つて映画の血はきれい
RUSTY=HISOKA
「短夜」「映画」の句も多かったのですが、表現が秀逸。「短夜を散つて」とは何が? と思った瞬間「映画の血」とたたみかけてくる静かな迫力。その「血」を「きれい」と描写する着地が、惜しむべき「短夜」を印象づけて見事です。
短夜のインコちりちり鈴突く小林のりこ
ロシア語の乾杯短夜をうたふ剣橋こじ
短夜へ貝は砂金を吐いている酒井おかわり
あの山は姥捨だらうか、短夜いかちゃん
わたくしを夢で殺して明け急ぐ植木彩由
短夜のいうれい足首のうすらけーい〇
短夜の湖へと亀を捨てにゆくぞんぬ
短夜の灰皿院試まで三日芦幸
短夜をまた豪勢に脚が攣る越智空子
短夜のブルース珈琲が酸つぱい清水縞午
短夜のしりとりゆびきりのやうで髙田祥聖
短夜やフェンスめく原稿用紙高橋寅次
短夜や粗相のうさぎ退かす足ふるてい
短夜や瞼はいちばん薄い皮膚星詩乃すぴか
短夜や陣痛の波二分おきあ・うん
短夜へナイフをふかく深く刺すEarlyBird
短夜や線やはらかに女の形相生三楽
短夜や寝釈迦の動く気配して愛燦燦
短夜のストッキングの縮みかた青井えのこ
短夜や登りつめたるコースター青井季節
短夜や勝鬨橋は開かぬまま葵そら
短夜や手漕ぎポンプの水の音青井晴空
えづく背を撫で短夜の裡にゐる青木りんどう
短夜に開く動画の艶話蒼空蒼子
短夜のソワレに投げる独白は青田奈央
短夜や闇に啼く鳥名を知らずあおのめ
短夜や机上の文具定位置に蒼鳩薫
短夜や家には二人しかおらず青水桃々@俳句迷子の会
短夜や失恋明けの須磨源氏青村秋入
母宛ての葉書に一句明易し赤尾てるぐ
短夜や遊び足りなさそうな猫赤富士マニア
短夜を崩れをるAVの塔赤馬福助
短夜やキュポラ猛りし町工場赤目作
短夜や緊急入院の大窓愛柑
短夜の托卵のごと羽根枕明惟久里
短夜の夢は余りて雲と化す秋野しら露
明易し戻り来し船の名を読む秋星子
厠立てば鳶の鳴き声明易し秋山らいさく
短夜はどしゃどしゃどしゃと雨に明く芥川春骨
短夜やせずに久しい木のポーズ芥茶古美
短夜や『体位変換』ベル響くあくび指南
短夜や悪夢ひとつで白む空朝雲列
短夜や大きくなりたいトックリ椰子麻場育子
短夜や旅行鞄の鍵無くしあじさい卓
短夜をちちと舌打ち付喪神葦屋蛙城
短夜や影を慕いてギムレットあすなろの邦
明易し夫の目蓋にほくろかな藍創千悠子
短夜や萎み初めたる水ヨーヨー足立智美
灯にバイク集まる短夜は白いあたなごっち
名画座のホラー五本立て短夜at花結い
短夜や夢一つ見る こともなく 跡部榮喜
カーテン薄し短夜の銃撃戦あなうさぎ
明易し浪人生の無精髭我孫子もふもふ
短夜やカラオケ怠く清算す阿部八富利
短夜や付箋百枚目の地図帳あまぐり
短夜や自販機補充缶の音雨戸ゆらら
短夜の踏切の警報の音天鳥そら
破れ破れの亡母の日記繰る短夜雨乙女
短夜の母の電話の繰り言よ雨李
短夜をビーズの穴に拾ひけり綾竹あんどれ
短夜やシーラカンスの進化論綾竹ろびん
短夜や夢に立つ人みな無口荒一葉
隣りの静寂ながいながい短夜あらかわすすむ
短夜の夢に弟の声聞けず荒木ゆうな
短夜や尖った爪に瑠璃をぬり在在空空
神鶏の声に目覚むる短夜なり淡湖千優
しづの女の歌ふ短夜の子守歌アンサトウ
息ひそめ短夜の森きしむ音飯田淳子
短夜や満車満室椋の駅飯沼深生
短夜やサワーグラスの泡の筋五十嵐真人
短夜の珊瑚一斉産卵す郁松松ちゃん
短夜の風に落つ青き実のこと池田悦子
短夜や着替への速き旅衣池田桐人
短夜や軋む線路の旅枕池之端昇雲
喉歌は短夜をかく棚びけり池之端モルト
牛頭馬頭の湧く歌舞伎町夜のつまるイサク
病院の計器は0並ぶ短夜石垣ようせい
短夜や機嫌そこねし電子機器石田ひつじ雲
短夜の読み切り本の厚さかな石塚碧葉
短夜を百人分のいり卵石塚彩楓
緩和ケア病棟短夜の手紙石の上にもケロリン
琉球の昔語りや短夜に石村香代子
短夜や母に添い寝のあと幾日石本美津
短夜や最後のピースの沈降和泉攷
短夜やセージ焚く部屋がらんだう石上あまね
短夜や幽かに揺るる避雷針いその松茸
短夜をきれいな鳥の声きれい板柿せっか
短夜を海とおしゃべりする灯台いたまき芯
明け急ぐ緑の紙への印掠れ一井かおり
短夜やいつでもひっつける背中市川卯月
送迎を終え短夜に米を研ぐ無花果邪無
短夜や知覧の宿の薄明かりいつかある日
モニターの電子音短夜の心音一久恵
短夜や厨に残る迷迭香 一秋子
明早しものみな菫色に染まり五つ星
コンビニに居場所見つける短夜かな伊藤亜美子
短夜や「る」から始まる言葉攻め伊藤映雪
短夜や墨の香みつる筆すさび伊藤節子
短夜を残務整理や産休入る伊藤柚良
短夜の可燃物になりに行く糸川ラッコ
亡き夫との逢瀬はたのし明早し伊奈川富真乃
短夜の熱引き受ける輪転機稲畑とりこ
短夜やシールドマシン操作室 いなほせどり
短夜や四角き部屋に素寒貧居並小
短夜や螺鈿細工の雨の街井上鈴野
深爪に小さき熱ある短夜かな井納蒼求
清張を五ページ残す短夜かないまいやすのり
鼎談は難し短夜は青し伊予吟会宵嵐
短夜の紐で束ねる紐の束いりこのにゃらつめ
短夜や手札はスペードの女王岩木順
短夜やマルガリータは三杯目岩清水彩香
短夜にバイト先つぶれてゐたり磐田小
短夜に戦さを締めるひとり酒イワンモ
短夜や今日何もかも早送り植田かず子
短夜の騙されさうな詐欺メール上原淳子
波に掬はるる短夜のポラリス上本みのり
短夜や荷風の下駄の音を読む鵜飼ままり
短夜のマティーニ一杯分の恋うからうから
塗られゆく嘘短夜がひび割れる宇佐美好子
ポータブルトイレの影や明易し靫草子
短夜や雨に膨るる半規管卯之町空
短夜や東京タワー今低し海口竿富
学校へは行かぬ短夜のソリテア海野青
短夜や深夜ラジオのヘイジュード梅尾幸雪
短夜や空の実家の湿気布団梅里和代
短夜やラストライブのアンコール梅田三五
短夜や七歳風の色を塗るうめやえのきだけ
短夜や点滴押して過ぐる音麗し
短夜をむさぼる仔牛のなよ足吽田のう
短夜の緑インクの別れ文江川月丸
ウロバッグ三割ほどの短夜かな江口朔太郎
太陽の匂ふや短夜の枕蝦夷やなぎ
明易しやがて遺品となる眼鏡越冬こあら@QLD句会
明易し近くに止まる救急車絵十
短夜逝く美しき闇田に堕ちて榎美紗
短夜や心肺停止の心電図朶美子
短夜の始まる果てを延びる夕絵夢衷子
短夜や夕餉酸つぱいポテトサラダ旺上林加
眠れぬを眠らぬとせむ短夜はおおい芙南
短夜を寝がへる夫の盆の窪大岩摩利
短夜や阿川泰子に針下ろす大久保一水
短夜や遠いサイレン風ぬるし大越総
短夜や六人雑魚寝六畳間大嶋宏治
短夜や双子は同じ夢を見て大津美
短夜や倍速で聴くテーマ曲大谷一鶴
短夜やバス待つ間に単語帳大家港一
短夜や鍵盤ひとつづつ磨く大和田美信
短夜の壁をキネマの影踊るおかげでさんぽ
短夜やとほき汽笛の旅支度可笑式
短夜や片方なくて夫婦箸おかだ卯月
短夜や空は瑠璃色星とどむオカメインコ
ひくミルの音苦しげな短夜かな小川さゆみ
短夜や寝物語の結末は小川しめじ
短夜の薄き乳房の黒子かな小川天鵲
連絡船ざこ寝の窓の明易し小川都
にんげんのすつぴんのこゑ明易しおきいふう
短夜のこむらをあやしつつうつつオキザリス
短夜や栞の位置は最終章沖庭乃剛也
大団円まで短夜を読み通す沖らくだ@QLD句会
短夜や取材音声起こす文字おこそとの
短夜や切れたままなるチャイの茶葉小島やよひ
短夜や点滴のまだ残りおり小田毬藻
短夜の廊下の湿り青臭しおだむべ
短夜を子守唄めく「Peace」の香落句言
短夜や棺の横へ珈琲はおでめ
明易や橋桁細き沈下橋音羽凜
短夜や長編に挑む起承転御成山
短夜や膝にたたみし旅支度おひい
短夜や葬儀の仕方決めかねて折口一大
短夜の眠剤白し床白しおんちゃん。
ドローンの羽音は止まず明け易し海音寺ジョー
酩酊をゆるしてほしい短夜よ械冬弱虫
短夜の枕ばかりが定まらず香依蒼
短夜や産声甘き三人目加賀くちこ
短夜に星の瞬き遠く聞く影夢者
短夜やまた母さんが泣く絵本風早杏
短夜を噛んで休学届に印加座みつほ
短夜や遺影に話す今日のこと梶浦正子
短夜の柱に怖い顔探すかしくらゆう
短夜やスマホの点る二等室樫の木
短夜や韓国ドラマ早送り鹿嶌純子
もて余す慚愧ざらざら明け易し華胥醒子
短夜の雨音夢の淵に入る風薫子
明早しペールギュントの空は青花鳥風猫
短夜をルル三錠の効きはじめ桂もふもふ
短夜や糸目揃える爪の先桂葉子
短夜の寝返り慣れちまつた気胸かときち
短夜や耳たぼにピアッサーの穴仮名鶫
短夜や夫は二階へ吾は下へかぬまっこ@木ノ芽
短夜の薄くなりたる頭蓋骨加能雅臣
短夜や膝に命の尽きる猫花星壱和
短夜じゃ日々のかさぶた乾かない神長誉夫
短夜やぷつと針おくレコード盤紙谷杳子
金借りてからが博打や明け易し亀田荒太
短夜や誰も知らない海がある亀田かつおぶし
短夜やマンモスのいた波の音亀山酔田
短夜や過去にふたつの忘れ物かもめ
短夜をストリッパーは無欠勤花紋
短夜の硝子の雲の沈みけり刈屋まさを
容態を連絡しては明易し狩谷わぐう
短夜の枕の熱のわだかまり河上摩子
短夜の折鶴百羽散らばりぬ翡翠工房
短夜に常世を探る独り酒翡翠時雨
右ひだり耳浴十分夜のつまる川村湖雪
口笛を吹けば鬼来る短夜かな河村静葩
短夜を駆けて夜汽車の幻聴かカワムラ一重
短夜の星芒が射す右の義手川村ひろの
短夜の加速度αを求めよ干天の慈雨
短夜やスマホ忍ばせ談話室岸壁の龍崎爺
短夜や風うすいろに酔ひ飽けり閑酉
短夜の受話器を通夜の日取りかな喜祝音
短夜の端を切り取る茶臼岳岸野草太郎
短夜を統べるベルガモットの香岸来夢
短夜や足で引き寄す抱き枕北川茜月
短夜を水のはたらくマンホール北藤詩旦
短夜や職務質問今日二度目ギックリ輪投げ
短夜やいだきし夢の痩せてくる木寺仙游
短夜のチキンラーメン齧りおり着流きるお
短夜の夢は耳から漏れだして城内幸江
短夜やまた砂時計の反転木下桃白
短夜を毎夜三行しか読めぬ木ぼこやしき
短夜や母住む離れ灯は消えず木村修芳
短夜や海のむこうで星墜ちて木村信哉
短夜や夢の妻には声は無し木村弩凡
短夜に口重き子の恋を知る木元紫瑛
短夜や生まれ来る子の肌着縫ふ久えむ茜咲
短夜や軍用犬柩に星条旗きゆうもん@木の芽
短夜の雨音借りて飲むワイン杏花雨
妻と寝て短夜髪を崩さざる京野秋水
短夜やみちのくの酒澄み切つて杏乃みずな
短夜を落つるプリンによき歪み霧賀内蔵
短夜やフリーハンドの周期表ギル
短夜や始発待つより歩いちゃえ菫久
短夜や看護の母へ握り飯久我恒子
短夜や耳から覚める祖母の家久信田史夫
LINEしづか借りパク七日目の短夜草臥れ男
短夜やココナッツまだ匂う肌くつのした子
短夜や呼び鈴に覚むる仮眠室 久保田凡
短夜や宿の障子の水明かり熊谷温古
短夜の丁番軋む三面鏡紅三季
短夜や母にメイクをする予習曇ゆら
短夜のシャッター街がつまんない倉岡富士子
短夜の雨に薄荷の匂ふかな眩む凡
右眼なき短夜のジグソーパズル栗田すずさん
言の葉に質量のあり明易し久留里61
短夜を余すことなきふたりかな愚老
短夜や誰が地軸を傾けた黒田安人
短夜やコンビニ寄らず帰る道桑田栞
短夜や濁流眺む河鹿の間くんちんさま
無理数といふ短夜の硝子ペンげばげば
短夜やまだ湿りある水墨画健央介
短夜の龜の散歩のカーブミラー紫雲英
短夜やシフト帰りの実習生ケンG
短夜や集中治療室明かし小池令香
短夜の宿直に繰る資格本公木正
腹の子の蹴る短夜のコンサート紅紫あやめ
チョコレート会社の株を売る短夜幸田梓弓
短夜や亀の聴覚どこにあるこうだ知沙
短夜に黒鍵光り集めたりごーくん
短夜をとはに蝕むエアポムプ古賀
短夜は点滴一万二千滴古烏さや
短夜や歯茎に埋まる永久歯小笹いのり
短夜やクルス一基の展望所小嶋芦舟
銀鼠の夢短夜に目醒めけり小杉泰文
短夜の撫づれば舐めて返す猫小園夢子
短夜や栞に風神雷神図木染湧水
夜勤明けの街角ピアノ明易し後藤周平
明早し山小屋はまだ雲の中来冬邦子
まだ続く野球談義と短夜と古都鈴
非通知の時刻謎めく短夜かなこのみ杏仁
薬包で千羽鶴折る短夜かな駒村タクト
短夜や耳朶に幽けき熱残し小南子
自転車に乗れたと動画来る短夜小山晃
短夜や針も振り子も疾走す小山秀行
短夜の薬疹首を馳上がるこんのゆうき
短夜や母の歩みはぽたぽたと今葉月
短夜やオフィス街に将門塚さいたま水夢
短夜や父の文殻捨て難し彩汀
短夜や夢のつづきを書く日記齋藤桃杏
竹べらの撓みやわらか明易しさおきち
屋根裏の音の正体明易しさ乙女龍チヨ
短夜や地球を斜にしたのだれさかえ八八六
短夜やトッポジージョはタップ踏む坂田雪華
短夜や母の呼吸を見るだけの坂野ひでこ
短夜やまた書き直す悔やみ状坂まきか
短夜の恍惚電子書籍の棚坂本雪桃
短夜や湯の熱残るドラム缶さくさく作物
短夜や約しき義母の形見分け櫻井こむぎ
短夜にローン40年の話櫻井弘子
短夜の帷を裁ちぬ鳥のこゑ桜鯛みわ
短夜に幻視すイカロスの飛翔桜月夜
短夜や慣れぬ添ひ寝にある疲れ桜華姫
短夜の襁褓授乳襁褓授乳さくら悠日
短夜やサーカス小屋の薄灯り雑魚寝
短夜やキャメルランプの猩々緋 佐々木佳芳
弔いの短夜明けて洗い物笹桐陽介
何者にもあらぬ身しづか短夜笹靖子
口つきしメロディ離れぬ短夜かなさざれいし
短夜や代署数多の手術前さち今宵
短夜の新幹線で喪をひとり佐藤志祐
母の眼が閉ぢぬふるさとは短夜佐藤儒艮
短夜やささやく愛を省かれて佐藤綉綉
短夜や月は表の顔保つさとう昌石
短夜やLEGO積み上げる積み上げるさとう隆明
ハート明滅明け易き夜を血圧計さとうナッツ
短夜やいちご白書が終わらない佐藤ゆま(歯科衛生子改め)
寝返りに抗う尾骨明易し佐藤レアレア
短夜や大号泣の一部始終里山子
短夜や薬仕分ける旅用意さぶり
短夜の寝返り持てあますギプス彷徨ういろは
短夜や夢とラジオの混じりあふさむしん
短夜の歌人のまろき鼻濁音紗羅ささら
短夜やドードーに会ふ航海記 さるぼぼ17
短夜の足趾の爪を足掻く熱沢井如伽
短夜や歯形の残るケークサレ沢胡桃
退職の意思ゆらゆらと明易し澤田紫
短夜やいびきシールはあと二枚澤野敏樹
短夜に貌なき人の夢をまた三月兎
短夜やただ吊り下げてゐる翅に山月
錠剤の切れた短夜殴る壁珊瑚霧
短夜やB寝台に盛る話塩の司厨長
虫飛んで今日も平たき短夜かな四季彩
短夜をちりちり熟す数学書四條たんし
短夜や夢の境は何処なり紫月
短夜や足下に日付変更線じつみのかた
短夜に散居村の深い呼吸篠雪
短夜やホシ分からぬまま栞挿す柴桜子
短夜をかへるはだしのシンデレラ渋谷晶
明易の風呂迫り来る南部富士しぼりはf22
短夜もしんと酸素を産む樹冠島田あんず
短夜の星を掬ひし湖幽かしまのなまえ
短夜や道路工事の投光器清水祥月
短夜やただ呼吸器の作動せる下村修
短夜や栞を開けてなぞる頁釋北城
短夜や乳飲まぬ児の目爛々芍薬
短夜や咳き込む君の骨細しじゃすみん
サイフォンに映る五十路や明易し洒落神戸
短夜やたうたうと貴種流離譚しゃれこうべの妻
サーカスの天幕短夜をたたむ十月小萩
短夜の眠たき鐘や子規の庭柊二
短夜は枡にこぼれてくゐと呑む酒天わーい
短夜やチャックが甘くなつているシュリ
短夜に母現はれて経を読む正見
短夜やまぶたのやうな地平線常幸龍BCAD
レポートの考察を終ふ明易しジョージア
短夜の火薬は尽きて闇に群れ白井佐登志
短夜や時効日のバツは極太白沢ポピー
短夜の幾度も0にする秤白玉みぞれ
解剖のページ進まぬ短夜かな四郎高綱
短夜を巡る天球儀の埃白プロキオン
つはものの螺旋を閉じる短夜なり白よだか
短夜や犬の変調記す頁神宮寺るい
短夜の粗熱を取るタイカレージン・ケンジ
病棟の廊下は長し明易し新城典午
篠笛のラから始まる短夜かな水蜜桃
短夜の目覚めYouTubeは無限水曜日うまれ
短夜や絹の冷え持つ女ゐてすがりとおる
短夜の青きマニキュアはみ出しぬ杉浦真子
短夜や恐ろしきほど窪む眼杉尾芭蕉
短夜や高熱の子の息づかひ杉沢藍
短夜のradioに甘きアンルイス杉田梅香
短夜や下手人定かならぬ間に杉本果ら
短夜や閉じて仏壇歎異抄杉柳才
短夜や眠りこぼれぬやうに盃鈴木由紀子
LPの二曲目の傷撫で短夜鈴白菜実
短夜や猫のレンタル始めました清白真冬
短夜やコルク軋ますファドの店鈴野蒼爽
短夜や棚田に揺れし二百の灯(ひ)素敵な晃くん
短夜や子宮たゆたふ波の音主藤充子
明早し最後の一紙ポスト入れ数哩
短夜や聞き取り辛き二倍速須磨ひろみ
短夜の夢終わりたり傍に妻青児
短夜を白夜に繋ぐ長電話瀬央ありさ
無韻詩にとじこめ君と短夜を瀬紀
短夜や婿に酌する柩守りseki@いつき組広ブロ俳句部
短夜やあしたは母のお葬式そうねマイカ
短夜や短波の拾ふ国の数そうり
雨音の短夜家のこと楽しそしじみえこ
短夜をはみ出す雨やブロワー吹く外鴨南菊
短夜や指栞して聴く鼓動そまり
短夜や瑠璃の絵の具の封を開け大
短夜やティッシュ舐めればほの甘し平良嘉列乙
短夜や一打席目はフォアボール高岡春雪
短夜やハザードランプ顔濡らす高瀬小唄
短夜や昨日の酒のうまかりし高橋基人
振り向かぬ妣を追ふ夢明易し高橋ままマリン
短夜や発つ鳥影にカフカ伏せ高橋洋子
短夜は長し昼間の言葉悔い田上コウ
短夜のやりたきことのこぽこぽとたかみたかみ、いつき組広ブロ俳句部
コスプレの厚底短夜を闊歩高山佳風
短夜の錠剤半分の効果滝上珠加
(沖縄慰霊の日)明易のうみふところや杭を打つ滝川橋
何度めのリテイク短夜の端役たきるか
短夜のアイドルがみな同じ顔多喰身・デラックス
短夜やセッションよりのワイン会たけぐち遊子
短夜や卑弥呼はすでに石に立つ武田豹悟
短夜や君の凹みの羽根枕竹田むべ
短夜やジェンガ崩れて拾ふまでたけろー
短夜やユーミン聴きすぎて不眠多数野麻仁男
短夜や水面に指の書くる名はただ地蔵
短夜はフランス映画の憂鬱糺ノ森柊
短夜や在りし日の母の繕いただの山登家
臨終の猫を囲んで明易し多々良海月
短夜や点字図書の背ひとさすり立川茜
短夜のカレーに託す明日かな橘朔
短夜の僥倖進駐軍より龍𠮷
髭剃れば君は出て行く明易しだっく
短夜や君とシーツの深き谷立田鯊夢・いつき組広ブロ俳句部
もっきりをすする一滴まで短夜立石神流
短夜やしとね離るる音寂したていし隆松
短夜や朝餉の貝はまだ眠る蓼科嘉
短夜や登校できぬ子の寝息谷相
シャンパンの溢るるごとき短夜かな谷本真理子
短夜やラット受注のファクシミリ田畑整
閉じ込める微熱短夜のジャングルジム玉家屋
短夜や眠れぬといふ自由時間玉木たまね
短夜や伯父の自伝の百頁玉響雷子
短夜や蒼きボトルに淡く酔ひ田村ヒロミ
指し掛けのチェスや短夜の寮室田村利平
短夜は猫の胴体より長しだんがらり
短夜や光秀呵々と絶命す丹波らる
短夜や六分間のゆでたまごチームニシキゴイ太刀盗人
短夜や鰐にいちばん似合ふ星千夏乃ありあり
マルクスを語る短夜の四畳半竹庵
短夜やそろふは喪主と同じ姓ちくりん
短夜の山小屋トイレ二百円千歳みち乃
短夜や子に躓いて行く厠ちゃあき
歳時記の「短夜」短夜に照らしけり彫刻刀
短夜や入籍前の吾子と酒ちょうさん
短夜や忘我の母の顎呼吸千代之人
短夜や法事終りて妻と我月城龍二
短夜や呂色に溶けてしまひたし月待小石
まだ聞けていないことがある短夜ツキミサキ
短夜の二人互いを呼び足らず月夜田しー太
短夜や金継ぎの皿あと二枚つくばよはく
短夜の己と話す父さびしつくも果音
山小屋の大きおにぎり明早し辻井一路
短夜や日本人形髪黒し辻内美枝子
短夜に君の声だけ刺さる雨辻かなみ
短夜を一音鳴らぬオルゴール津島野イリス
短夜を葉巻と共に過ごしけりつちや郷里
サンオイル仄か短夜のコンビニ津々うらら
短夜しとしと臍の緒はどこかしらツナ好
短夜や法治国家の空の色椿泰文
短夜や勝てないままの七並べ津幡GEE
短夜は水の匂いのありがとうつぶ金
音量は最大短夜を歩く坪田恭壱
短夜のLINEに産声の熱れ坪山紘士
短夜や踊りだしそな摩天楼ツユマメ/いつき組広ブロ俳句部
明易し月はとつくに寝ています鶴富士
短夜や駱駝の夢は空を飛ぶ哲庵
短夜の闇を収めて出す封書テツコ
明易し妹泊まりて母のこと徹光よし季
短夜やガイドブックに河童橋てつねこ
短夜の街はペラペラ製図板電柱
短夜の星のひとつは砂金へとでんでん琴女
明易や百歳目指す媼の足天童光宏
短夜や病の蒲団青白し天王谷一
鉄橋は長し短夜の寝台車天陽ゆう
病む耳の底からめまい明易し苳
短夜や愛の手紙を読むラヂオトウ甘藻
短夜の寝息や戦士たりし夫渡海灯子
短夜をダリの時計が逃げてゆくとかき星
短夜にちょっと男として揺れる時小町
短夜にくるりと花の香の自転時まる
短夜や狂骨嗤ふ古き井戸ときめき人
短夜をまた煮沸せる哺乳瓶常磐はぜ
短夜の明けて頭痛の波間かな徳庵
短夜やラジオは明日も晴れと言ふDr.でぶ
明易のトラバーチンや歩きたく戸口のふつこ
短夜や夢また夢を数珠繋ぎどこにでもいる田中
短夜や函の点棒あたらしくとしなり
短夜を睡れぬ耳鳴りが止まぬどすこい早川
短夜やくちびるテールランプいろどゞこ
ポケットのレシート短夜の記録となりの天然樹
短夜を吊られモビールの貝殻となりの天然水
短夜や座長憤怒の総ざらへ戸部紅屑
短夜のカクテル星の名前なり苫野とまや
指先に閉じ切れぬ本短夜かな斗三木童
右乳に埋もるる赤子明易し富野香衣
短夜や栞代わりの直定規友@雪割豆
短夜の保線工事の火花美し富山の露玉
短夜のパソコン囲碁の棋譜並べとよ
明易や月の雫を吸う鴉とんぼ
短夜や歯科の麻酔の名残りあり内藤清瑤
短夜の雫止まらぬ蛇口かな内藤羊皐
朱の入りし師の返信や明易し中里凜
短夜や美声の経の届きたる中嶋京子
短夜の出口としてのドーナッツ永嶋夜久
短夜や忿怒の緩む仁王像永田千春
短夜や大往生の寝ずの番中十七波
日野山の鴉が決めし短夜かな中原柊ニ
短夜や膝に一筋手術痕仲間英与
短夜の端っこに啼く烏かな中村すじこ
短夜の動かぬ父の髭痛し中村雪之丞
短夜やおりんに献灯ぐわんぐわん夏風かをる
ハイボール空け短夜を回遊す夏草はむ
短夜の河馬の水垢離耳四つ夏雲ブン太
短夜を折鶴残り三十羽夏椿咲く
短夜のシャツ借り深き眠りかな夏埜さゆり女
短夜や結願を待つ朱印帳夏目坦
短夜や昔昔の指輪のはなし夏雨ちや
短夜や再生不可のDVDななかまど
短夜やファーブル少年の微熱七瀬ゆきこ
短夜や路線図めいた管外す⑦パパ・いつき組広ブロ俳句部
短夜を魯迅通ひし書店にてなびい
短夜の出口の雨の城ヶ島名前のあるネコ
吸引と体位交換明易し奈良素数
短夜の夫の実家の欄間かなにいやのる
短夜や熱ある吾子は腕の中にえ茉莉花
短夜やねむる手段の尽きはてて西尾至雲
緑児のおくびは短夜を醸し西川由野
短夜の産道抜けて寿限無寿限無西田月旦
現役の頃の夢見る短夜かな西村小市
短夜や指導案書く実習生西村棗
短夜のハミング低きジムノペディ二城ひかる
短夜を明日はお骨になる人とにゃん
短夜や龍馬の京を奔る奔る入道まりこ
短夜や角の取れたる箏の爪仁和田永
短夜のハンドル星をふりきつて暖井むゆき
短夜の米洗ふ水匂ひけり布村柚子
明易し硝子の靴に尺当てて沼野大統領
短夜のせめて尻でも光ればな猫ふぐ
影絵めく貨物列車の曳く短夜猫またぎ早弓
短夜や目も合わさずの鏡の吾根々雅水
短夜はロミオに嘘をつかせたり農鳥岳夫
短夜のLINEに「きれい」月貼らる野口雅也
短夜の未遂に終はる手紙かな野地垂木
短夜や宇治川の警報聞こゆ埜水
短夜に孕みし詩は孵せないノセミコ
短夜を覚めて思案は朝の菜野原蛍草
短夜の一幕に死すオペラ歌手白庵
筆ペンの辞表滲んで明易しはぐれ杤餅
短夜や濡れ髪に闇溶かし込むはごろも856
短夜と嘆く柔手に手を添える橋野虎空
短夜に立てたシューズが乾くまで橋本有太津
短夜やストローの噛み跡白し橋本こはく
短夜やちあきの唄に飲み過ぎて馬笑
マンボウがひとつ吃逆明易し蓮井理久
愛、革命、自死、短夜の襤褸ソファー長谷川水素
短夜の夢に「#続編希望」タグ長谷機械児
短夜や明日は知らない月の貌畑美穂
短夜やワンメーターの恋話葉月庵郁斗
短夜や時計の裏は忙しい八田昌代
短夜や追い打ちの地震警報服部義一
短夜の雨をうとうと魚となり羽奈あかり
短夜や凪面にほとぼる銀の月花彼岸
短夜や湖畔に集ひJAZZの風はなぶさあきら
短夜の時差を気づかひつつ喋り英凡水
短夜や九号線を爆走花豆
短夜や詩魂留まることなかれ花水木
助手席に喪服短夜を走る花見鳥
短夜や吉に転じた蜘蛛の這うパピヨン
逆縁の柩美し明易しぱぷりかまめ
短夜や保線作業の急ぎ笛浜友輔
短夜や文一つだにしたためず林田リコ
短夜やナースに仮眠時間無し原島ちび助
短夜や出来損ないの嗚咽洩る原野乃衣
明易し歌ひ痴れたる渋谷路地巴里乃嬬
短夜や宇宙船には丸き窓春あおい
短夜や君と揃ひの星座盤haru_sumomo
短夜の小さき棺へ星の影晴田そわか
短夜や違ふところで笑ふ父春野ぷりん
短夜や昨日カピバラ逃げた町葉るみ
短夜の都会へ主翼傾げたり春海のたり
短夜や引き算解いて問題集はるる
短夜や入院前の旅支度はるるん1号
嗚咽かき消す鈍色の短夜かな半熟かさぶた
短夜の酒場にウクレレの余韻半ズボンおじいさん
利用者を見送るだらう短夜かな万里の森
休暇願のLINE短夜の新幹線東田一鮎
短夜を廃業前の銭湯へ東の山
辛勝の余韻短夜のモヒート東原桜空
短夜や明けて姉待つ能登の海ひぐちいちおう(一応)
短夜の何度もかよふドリンクバー樋口滑瓢
学び舎の灯り短夜の採点火車キッチンカー
短夜の明けて墓石は細長し髭撫子
短夜や麻酔は聴覚から覚めるピコリス
ペンだこを揉み短夜に緬茹でる菱田芋天
短夜の砕けし夢の砂子かなひすい風香
アザーンの小節伸びらか明易し美竹花蘭
短夜や調律甘き駅ピアノひなた和佳
蝶々さんの本名はツル明早し比々き
吉野家のやはらかな椅子明早しヒマラヤで平謝り
せめぎ合い藍は茜に明け早し平井千恵子
短夜や巡る運河の風甘し平井由里子
短夜のホテル抽斗には聖書平本魚水
短夜や路上ライブに足止めて浩子赤城おろし
享年の多寡は大事か短夜や廣重
短夜や返す合鍵のみ鳴りぬ広島じょーかーず
短夜や光さす仮寝のしとね廣田惣太郎
短夜の煮沸の布巾泡ふつり広野光
短夜よさゞなみ湧くる蕎麦殻枕広ブロ&新蕎麦・摂田屋酵道
明早し森のかをりを風に解き風慈音
近隣と違ふ新聞明早し深町明
短夜や仔の寝息また聞きに行く福井桔梗
短夜や安定剤と空薫と福前彩芽
短夜のサファイア色に尽きんとすふくじん
短夜に置き忘れたることば褪せ福ネコ
短夜や隧道のをんなの白さ福間薄緑
短夜や母看る姉の電話また福良ちどり
短夜に語らふ夢のうすつぺら藤井かすみそう
短夜や出口違えば別の街藤丘ひな子
短夜や期限切れクーポンくしゃり藤咲大地
アンコール聴かず短夜の最終便藤里玲咲
短夜や鈍器のやうなマスターキー藤白真語
短夜や未以子は二十歳詩を叫ぶ舟端玉
短夜の置きどころなき手足かなふにふにヤンマー
短夜や何もしないを存分にふみづきちゃこ
短夜や君の上腕二頭筋風友
引き算をストップさせるや短夜の夢古川しげ子
短夜や音をたてずに旅支度古道具
短夜のレモン絞り器てふ突起碧西里
短夜や嘘の連絡先交換ペトロア
短夜やエンドロールに夫の名ペン銀
シェイクスピアは半ばにて明く短夜房総とらママ
短夜や数多色変え薬膳茶ほうちゃん
決戦に負け短夜の始発駅暮戯
刈りたての短夜の髪の刺さる指黒子
短夜や楠の北限この辺り星田羽沖
短夜のコンビニ二割引のパン星月彩也華
短夜の難波ディスコのベース音ほしの有紀
短夜の降下レバーをためらわず甫舟
短夜や抱く電話のなまぬるし細葉海蘭
短夜や叫びつづけば子の生まるるポップアップ
短夜や結末を知る夢の中堀隼人
コーランの大音量ぞ明易し堀邦翔
短夜や耳を澄まして墨を磨る凡狸子
短夜や牧の帳を群れ羊牧場の朝
短夜や便箋の罫は群青槇原九月
みどりごのねいき短夜によきリズム牧茉侖
不機嫌な十代短夜のブルーまこと七夕
短夜や明くる窓なき四畳半町田勢
どこへ着地したのか短夜の夢松浦姫りんご
短夜や乾く間のなき髪の匂松風花純
短夜や獨逸の友の既読あり瑪麗
短夜や水騒がしき山の家毬雨水佳
短夜や付添いベッド折畳むまるにの子
短夜や旅行最終日のアザーン丸山隆子
明け易しダイナワシントンのブレスまんぷく
透きとほる短夜の果てをしらす船三浦海栗
短夜に青インク吸うガラスペン三日月なな子
猫の尻ぽんぽん短夜のリズム帝菜
短夜や本と鬘は貸さぬ主義三上栞
短夜を眠らぬドアの閉開音岬ぷるうと
短夜やまた書き直す絶交状三崎扁舟
短夜や暗き待合手術室水谷未佳
平泳ぎ三かきほどか短夜は巳智みちる
短夜やひとり将棋の駒の音みづたま
詩に至る祈りよ短夜のモスクみづちみわ
喘息の発作短夜の窓硝子満る
短夜をきゆつと閉めたる蛇口かな南方日午
短夜の光の棺となる盥水瀬曜
短夜や格子戸匂う海野宿 みなみはな
たこ焼きを食ふ短夜のアーケード源早苗
短夜の終はりを掃いてゆく強雨宮井そら
きしりゔぃんと短夜の琵琶途切れつつ宮川令
でんぷんのり短夜の封筒を閉づ宮坂暢介
短夜の手櫛に絡む白髪かな宮部里美
短夜や夜泣き子抱いて立つ地球みやま千樹
母は子を子は犬包む短夜かな宮本モンヌ
したたかな悪夢退く短夜ぞ妙
短夜の延髄に入る蕎麦殻よみらんだぶぅ
短夜のカルテを走るペンの音三輪白米
平らなる短夜に紅を淡くさす麦野光・いつき組広ブロ俳句部
短夜や月の裏見る高いびき椋本望生
短夜の底光りする能舞台むねあかどり
短夜や密なる木々の吐息かぐ村上の百合女
短夜やすつぱき嘘と厚めのハム紫小寿々
短夜や暗きを待ちて弾くフーガむらのたんぽぽ
短夜や犯人逮捕の速報暝想華
短夜や忘れし薬飲みに起き恵のママ
短夜や母のはにかむ動画閉ず目黒智子
短夜や遺言直す筆すすまずメディックス千里
短夜やボーカルのなきジャズトリオ茂木りん
短夜やなほ埋まりゆく予定表望月朔
シャガールの丘短夜の苦き底本村なつみ
短夜の遺影ことりと音を立てmomo
短夜や更新中のプログラム桃香
短夜や四つ忘るる身内の名百瀬一兎
短夜の短波ラジオのヒンディー語百瀬はな
短夜やビーズを摘むピンセット桃園ユキチ
日曜日に短夜がうずくまっているもりさわ
短夜や隣家の食器洗ふ音もりたきみ
人外とすれちがう短夜の風森太郎
短夜の長き散歩や北の国森ともよ
短夜の風音に髪うねらせて森葉豆
短夜や父にもありし肺の影杜まお実
秒針の刃物めく音明易し森毬子
短夜やロミオの毒は一人分森萌有
短夜の真っ暗闇の露天風呂諸岡萌黄
短夜の露天風呂いつできた痣もろ智行
短夜やテーブルに立つ付け睫山羊座の千賀子
沈黙の短夜スタッフ休憩所安田伝助
短夜やナースコールはメヌエット八幡風花
短夜や六方全書の常盤色山内彩月
短夜の知覧少年の抜け殻山川腎茶
短夜や銭の話は又今度山川たゆ
短夜や足場の骨も雨ざらし山口愛
みじかよの寝息微かに羽化始まる山崎鈴子
短夜や一つ手前で降りやうか山崎力
短夜をつままれてゐる羽薄し山里うしを
短夜や温き便座とひとり言山下義人
短夜の短き影と行く舗道山田翔子
短夜や安い命を演ずる夜山田秀男
アスファルト均すローラー明易し山野麓
短夜や転職 土日とまで打ち山本先生
短夜や今日のからだをぶらさげてやまもと葉美
短夜の寄合決めることもなし山本美奈友
短夜やシャンパングラスに生るる泡宥光
短夜や不意に娘の恋を知り雪子
希薄なる短夜の闇やみづを飲む雪音
短夜をうつろな犬は鳴き明かすゆず柴
短夜の鼠の開けた穴昏しゆすらご
分娩の後の空腹明易し湯屋ゆうや
短夜の昔語りの添い寝かな緩木あんず
短夜の病棟本を貸し借りす陽花天
短夜や不意に子が問ふ吾の齢羊似妃
豆腐屋の丸きかんばせ明易し横山雑煮
短夜や湯浴みを終えて迷う帰路横山道男
短夜の星を摘みつつ家路かな吉田蝸牛
短夜の夢から覚める夢ばかり吉武茂る
短夜をまたひと重ね漆塗り吉野川
短夜の五百羅漢の違ふ顔四葉の苦労婆
実家は更地短夜のかくれんぼ楽花生
短夜やあれは空音と言ひ包むらん丸
荷車のきしきし大路ゆく短夜理佳おさらぎ
短夜の明くる光の象牙色 リコピン
短夜の犠飛や高々最終回柳絮
短夜やつるりと触れし臀と臀良俗倭人
明易き徹夜の大学祭屋台ルーミイ
短夜や噛み合ひ甘きあばら骨烈稚詠
短夜や余命生きたか減ったのか朗子
短夜や寝袋ならべ四畳半ろまねす子
初七日の手酌短夜まだ明けぬ若和志歩
短夜は走り出したくなる匂い若林かな
短夜や遺影の父はなかなかだ若林くくな
短夜や子の寝たあとのショート映画渡部克三度
短夜や猫に短き鍵しっぽ渡辺香野
短夜やハングル文字でさようなら渡辺桃蓮
何か言いかけ消ゆる母明易し渡邉わかな
短夜や今は喋らぬテディベア亘航希
短夜の週末婚の夕餉かな笑笑うさぎ
短夜のフラッシュバックの薄明りあいのびふう
短夜やルスティカーナを夫と聴くアイリス道子
マイスリー半錠に割り短夜へ青居舞
短夜やシーリングファンのかたかたかた赤坂みずか
短夜をイルカのごとく眠りをりあまぶー
ライブ配信短夜のトゥーランドット雨霧彦(木ノ芽)
短夜に拭ふペディキュアさんざめき泉水あやめ
短夜や千日回峰行の杖猪子石ニンニン
足裏に精油三滴塗る短夜海月のあさ
短夜やザムザめく子も捨てられぬ岡山小鞠
短夜や「しあわせな王子」の不幸風花まゆみ
短夜の電気羊の悪夢かな 神島六男
短夜の野尻湖にをり野の匂ひ坂口いちお
水槽にかすかな揺れや明易し塩沢桂子
短夜やだいだらぼうの背は白し正念亭若知古
短夜をウミウシめいた人の波高井大督
短夜や気圧の谷の風強したかはし千百
短夜やきみどり太る偽鱗茎 中岡秀次
アイデアに短夜画家のエスキースメレンゲたこ焼き
短夜や角のパン屋のほのあかりやまさきゆみ
短夜や夢の続きはまた明日藤原訓子
明易や夢の続きはまた明日豊岡重翁
短夜や夢のつづきを見たき朝池田炭
短夜に夢の続きをもう少しおがたみか
短夜や夢の続きを見せもせず 円美々
短夜や点滴はゆるやかに落つ帷子砂舟
点滴ののんびり落ちて明易し石川明
1000ピースのパズル没頭の短夜(市原)為参
短夜に鏡のウロコと向き合うあかり
トテチテタゑらくおもちゃの短夜よあなたを知りたい
短夜や言葉巧みな占い師いつき組補欠とくち
積ん読の「ぼんくら」伏せる短夜や岩佐りこ
明易しトムの笑ふネタあれこれうた歌妙
短夜や天下国家が口をつき内本惠美子
短夜や「のぞみ」のドアの閉まりけり岡邦俊
短夜の新婚らしき隣かな神谷たくみ
綱引ねばるねばる短夜の目覚め神谷米子
荒事や隈取る短夜の廊下北村崇雄
凋落が隣に巣くう短夜の輝河国老・末廣
空箱の宝物手に短夜を郷りん
短夜の僕は出来ない逆上がり今藤明
明け易し朝練の声響く空さかい癒香
短夜や添え乳にそえ手小さきことさくら亜紀女
短夜に母の御襁褓尻を浮かす全美
短夜や箱に寝るにはまだ早い惣兵衛
短夜をめくる振り子時計の音千•広ブロ俳句部
短夜や山の端すーと立ち上がるソフィ
短夜や傾げた星の夜待たれ槻島雫
短夜の彼女の白髪共白髪中澤孝雄
短夜や奥の細道那須まで七森わらび
短夜や腕枕のなか茶々逝きて 浪速の蟹造
短夜や吾子の鼻汁吸えぬ我名計宗幸
短夜やずしりと温き夫の腕乃咲カヌレ
短夜のやっちゃやっちゃと競りの声畑中幸利
短夜や五円玉棘に押し当て 福田みやき
短夜のふたりしりとりラ行抜き松岡拓司
短夜や羊代わりの妖術書まっちゃこ良々
短夜の入り口真つ赤な紅しょうが松本こっこ
短夜や徐福の謎の気にかかるまりい木ノ芽
短夜に作り置きする煮物かな美衣珠
短夜やラジオ深夜便途中まで三浦ゆりこ
短夜や寝言にわが名叫ばれて水須ぽっぽ
短夜や阿弥陀籤で決める相手三隅涙
欠伸欠伸短夜に聴く長噺山育ち
短夜や垂るる蛇口の時刻む山田季聴
短夜や孫てふものを抱きし夢山田啓子
明易し乗り損ねたる宝船余田酒梨
瞬かぬ短夜の星よ鐘が鳴るあいあい亭みけこ
短夜をもう破る鴉の一声相沢薫
こんなにも龍に願ひて短夜か會田理奈
短夜や朝刊ぽとりバイク去る藍野絣
君が筆進み給ふや夜のつまる逢來応來
短夜や沈黙の本の長きこと蒼月子
短夜に浮かぶ小舟やテープ投げ青空豆千代
短夜や空ひかり曳く「きぼう」青砥転典
短夜やミルクも乳も飲まぬ子と赤尾双葉
短夜や鳴く鳥夜に賑はひてacari
短夜や徹萬勝ちて夜も明ける昭谷
羽撃や独り寝の窓明易し空地ヶ有
短夜や明けて機上の人となる秋月あさひ
短夜を語り明かして朝風呂に空き家ままごと
苦手な洋裁短夜のミシンがけアクエリアスの水
短夜に独りユーミン祭り淺井翠
短夜の前も後ろもプロ野球あさぬま雅王
絶叫のフレディ短夜を生きた あさのとびら
短夜の夢さへ会はぬ恩師かな浅乃み雪
短夜や君のスマホに時刻表朝日雫
明易し絶滅危急季語探る阿曽遊有
みじかよは波に揺られて星仰ぐアツシ
明易しファミレス籠り打つ浪漫渥美こぶこ
タイマーの切れし短夜ほの昏く渥美謝蕗牛
短夜やテレ東かけて関連図アニマル可秘跳
短夜や支度は明日に回しけりあねもねワンオ
短夜に机に向かう子の背中あまどかに
短夜や夜の名残は月の影天海楓
残業を終え短夜の皇居ランあみま
短夜に書きあぐねたるラブレター雨降りお月さん
結界の向こうは刹那夜のつまるあらあらかしこ
短夜やホラーゲームはCエンドあらい
短夜で寝返り100まで数えてたあらいゆう
短夜に光射し初む朽ちし窓蛙里
明易しはや看護士の動きあり有本としを
短夜のネオンテトラの大欠伸安春
短夜や路傍の石も年半ば杏っ子
短夜や夢いい所三度醒め飯沼比呂倫
どつくんと脈打つ速さ短夜なり生野薫
短夜に起こしにかかる甘き物池田華族
短夜や三倍速で見る動画池谷勝利
短夜や海賊たちは出航す伊沢華純
薄桃の母の靴下明易し伊澤遥佳
明早し混む前の道ビュンと行く石井久次
短夜や願いがひとつ叶う夢石岡女依
短夜や新宿駅歌舞伎町口石垣エリザ
短夜のうちに帰ってきて頂戴石川巴里
短夜のウインクしてる星の君石島希望
寝つかれず「パンセ」開きし短夜に石堂多分
満ち潮に砂浜濡れて短夜かな石原しょう
短夜や亡夫と逢瀬を切れ刻む石原花野
関門海峡の短夜やまぬ汽笛かな泉晶子
短夜や恋人たちの泣き笑い泉恵風
短夜の揺るるカーテン夢現いずみ節子
短夜のシーツのしわに残る夢遺跡納期
カーテンが短夜知らす妹の部屋いちご一会
時忘れ話し込んでた短夜をいちばほうすい
短夜を翔けめぐりたるニーチェかな一愼
くるくる踊る羽虫も地球も短夜一杯狸
短夜や眠る父親まだ温し伊都
君偲び短夜ゆえに眠られず伊藤悦子
短夜の列をなしたる消防車伊藤恵美
短夜や母の寝の息旅の明け伊藤薫
短夜や老いたる猫をみとりけり 伊藤順女
短夜に鳴らすアラーム彼の元へ伊藤テト
短夜や国旗校旗は揚げたまま伊藤なおじい
踏ん切りのつかぬ短夜卓に紙伊藤正規
短夜や推敲重ね詠めぬまま伊藤ゆめ安
短夜やラジコの耳は眠りをり伊藤れいこ
短夜やテスト計画表は計画伊藤小熊猫
短夜や辿った幼き日淡くいとへん製作所
短夜の隣寝返る野宿かな伊ナイトあさか
短夜や急に障れる首のタグ井中ひよこ号
短夜は川辺の光まばらなり伊那寛太
短夜の赤子対面匂い立つ稲所恵
短夜の短編二冊老いの友稲葉雀子
短夜や香木かほる枕もと井上幸子
短夜や定時巡回の看護師井原昇
短夜や雨リズム良しト短調いまいみどり
ラヂオから昭和ポップス明易し井松慈悦
短夜や想いを負いて置くグラス今乃武椪
短夜や枕の横の老眼鏡今林義和
短夜や恋の模様もあと一章今村ひとみ
短夜や若き競り人朗々と妹のりこ
短夜へ滲み入るごと万華鏡伊予素数
短夜や幸と不幸をもてあそぶ伊代ちゃんの娘2
短夜を裂き行くごとき航空機いわさちかこ
短夜よ恋の予感の長電話ウィステリア
短夜やまだ頬杖のカシニョールうえともこ
短夜や配牌宜し引きも良し上野徹
もう会えぬ人と二次会する短夜上野眞理
短夜の青き夜光や温度計上原まり
短夜やサイレンの来て遠のけり内田こと
人間になろう短夜の試着室空木眠兎
五回裏短夜を裂くホームランうつぎゆこ
ではB君にする貴女の明易し宇野翔月
短夜の明けて見知らぬ顔の街うみのすな
短夜のポツポツ来たる通夜の客梅朶こいぬ
短夜を共に旅する亡き人と梅鶏
短夜の推しが女とはしゃぐ夢梅野めい
星図にはあまたのいのち短夜なり浦野紗知
短夜や貰いし野菜調理終えS・葉子
短夜やチェックアウトは午前五時蝦夷野ごうがしゃ
短夜や四つ葉栞の文庫本越後縮緬
短夜や早出を競う農作業越中之助
短夜や仕事終えても着る野良着えのき絵巻
短夜のあさき眠りにからす鳴くえのき筆丸
短夜に事故報告を入力し榎本奈
短夜やシェークスピアの野外劇笑姫天臼
短夜や母と語りていとしきなりえみくれ
短夜やとりとめもなき長電話えりべり
短夜に妄想のあわい夢うつつ江蓮蒼月
短夜や続々出港漁り船遠藤千草
読み返しライン短文短夜なり遠藤倫
短夜に未だ飛び込めぬペンギン遠藤玲奈
短夜で寝不足なんだが子は踊る扇原寛一郎
短夜の腕の点滴緩徐なり近江菫花
短夜やあなたはあなた我は我大石聡美
裏窓の消し忘れたる灯や短夜大久保加州
短夜や産声あまた深空へと大越マーガレット
短夜や少し寂し気ギターの音大阪駿馬
夢に母来れど短夜立ち話大澤眞
短夜に惜しむ今見た夢のあと大島一声
短夜やまだ火をつけぬお香有り大竹八重子
コンビニの前短夜のミルクティー太田怒忘
短夜や窓の白みに本を閉づ大谷如水
趣味多き短夜に置く老眼鏡大塚恵美子
短夜や振込みもdoneFAXも大友さち
短夜に病室の外眺めては大野純子
短夜や三毛猫タマは人見知り大野喬
短夜や黙って黙ってくしゃみする大野美波
短夜や通い始める映画館大原雪
短夜の聞いてあげたい日の事よ大本千恵子
短夜や横行闊歩の父看取る岡井風紋
夫と子の帰宅重なり明易し岡井稀音
短夜や朝刊カタと届きけりおかえさき
短夜の絶えぬ川音の子守歌岡崎佐紅
短夜を更に短く西馬音内 岡崎未知
短夜をヤングケアラー夢をみる岡田ひろ子
短夜や親に言えない朝帰り岡田一竿
短夜のセンサーライト走る猫岡田瑛琳
来ぬ人を待つ身に長し短夜よ岡田恵美子
子が泣きて短夜包む乳の香は岡塚敬芳
短夜やまんじりともせず始発聞く岡村恵子
短夜や夫のコーヒー日日早し岡本
短夜に想い更けるや寝る間なし丘るみこ
倍速で見る短夜のゾンビ小川野雪兎
短夜にペットの鶏は瞬けりおきゆきお
短夜の酒池肉林を歌舞伎町荻原湧
短夜や最終章を聞き逃し奥寺窈子
短夜や漁に出る背を見送りて小倉あんこ
短夜や夫の寝顔を垣間見るお品まり
短夜や携帯を伏せフェリー旅遅狐
短夜やボサノバ流るるお好み屋尾田みのる子
明早し新聞配達CARは赤小野ぼけろうじん
短夜の夢に涙す亡き祖母へ十八番屋さつき
父亡きを忘るる母や明け易しおぼろ月
呑みだせば朝日短夜の罠小山田之介
山の精短夜の宴鬱々と海堂一花
短夜の川の字の脚跨ぎゆく海峯企鵝
短夜や広き空き家に鳥の声甲斐ももみ
飲み足りぬこと談論の短夜は火炎幸彦
明易し貨物列車の連結器案山子@いつき組広ブロ俳句部
短夜や唄ふ慰霊の屋嘉節を笠谷タカコ
短夜や鉛筆の芯削りをり風花美絵
短夜に睡眠薬と白酒を 傘張り浪人
ラジカセのナツメロ誘う短夜かな梶浦和子
短夜や線状降水帯ニュースかじまとしこ
短夜や返事書けないままの文梶原菫
法律をかいくぐりたき短夜かなKAZU
戦争記録映画観て短夜忘れ粕谷聰子
短夜やアップテンポで針廻す風かおる
短夜や本のしおりもそのままに片岡明
短夜や白衣のままの仮眠室加田紗智
短夜や韓流ドラマは最終話かつたろー。
眠ってはならぬ短夜の恋なればひだまりえりか
短夜の雨ウィーンのピアノの音桂子涼子
短夜や残業終えど児は眠る加藤水玉
短夜に語りあいたい古き友金澤孝子
短夜のメールを書いて消して書く叶田屋
短夜のあの世で笑う君の夢金森マユ
短夜も明けても泣くのかこの赤子可児真由美
短夜や長く鳴りたる介護ブザー金子泰山
ただ嘆く君のいない短夜で金子ピクチャー煌生
解散の報せ短夜の跨線橋かねつき走流
明易や雨戸閉まらぬ四畳半釜眞手打ち蕎麦
短夜の声よく通る再配達花蜜伊ゆ
短夜やギムレット手に窓の浜亀井汀風
明け易し走る足音鳥の声亀岡恵夢
短夜やいよいよ新聞やめよかな亀子てん
明早し期末テストの一夜漬け亀崎波
短夜や鳥鳴く声す午前四時亀田稇
短夜の推しのライブの熱く果て亀山逸子
短夜や膝の痛みと共寝する加裕子
短夜や吉川線のびつしりと 加良太知
短夜や強行の池田屋事件咖哩亭章之輔
短夜や外は甘き雨の降り川崎ルル
短夜の寝さうな子と目が合い笑ふ川瀬観夏
短夜に漢字ノートを一頁川端芙弥
短夜は異国の友と近くなり川辺世界遺産の居候
短夜を嘆く謳歌の頃遠し神無月みと
短夜や余命いくばく気の締まる樺久美
短夜やお笑いライブの帰り道看板のピン
明易にエアコンタイマー切れし夢key
短夜に私の心置いてかれ季川詩音
短夜や志ん朝で聴く「明烏」季々諧々
短夜や赤い目玉が昇りくる木口まり子
短夜をぼやき漫才聴くラジオ如月ゆう
短夜や雨降る音に父母浮かぶ岸野孝彦
短夜の驟雨に心ざわざわと岸本元世
短夜や鉢巻き締める老漁師酒暮
短夜や逝く母の息為し終わる季切少楽・いつき組広ブロ俳句部
短夜やピザ配達の改造車北大路京介
短夜の丑三つ時の妻寝言喜多丘一路
短夜の眠り補う音楽会北乃大地
短夜や弱りゆく猫を抱いて北の星
短夜や恋はいつでも片思ひ貴田雄介
短夜やずつと子どものアニメキヤラきつネつき
短夜や幼子抱え夜行バス木下昇吾
短夜や隣の夫のバイク音きべし
短夜や空海展の余韻なお木村かわせみ
短夜の自由に入つて良い温泉木村隆夫
短夜や広げたままのヨガマット木村となえーる
短夜の空に火球かミサイルか木村弘美
短夜のバーに流るるビートルズQ&A
短夜や筋肉痛のふくらはぎQさん
短夜や髪の乾きと白衿と鳩礼
短夜を猫に起こされ夢足らず喜楽胤
短夜や烏と犬と救急車霧澄渡
短夜や隣の空き地揉める猫桐山榮壽
短夜に積読本の山減らず銀長だぬき
災害派遣短夜をひた走るくぅ
短夜や階下の猫の運動会草野紫陽花
短夜や過去のあやまち夢に見る草道久幸
短夜や勤行の母寝足りぬ子鯨之
短夜や海へ飛び立つ鳶の鳴く楠田草堂
一度きり重なるシフト短夜かなくずもち鹿之助
ハイウェイのここから朝ぞ短夜國本秀山
短夜に母の詩吟の朗々と國吉敦子
短夜に水洗の音響きけり窪野文子
短夜の夜更かし趣味のチョークアートぐりぐら京子
短夜や夫婦喧嘩の後始末空流峰山
短夜やロマンス縁なし一人旅黒瀬三保緑
白球を打ちて短夜待つ薄暮黒田良@しろい
短夜の夜明けに滲む白花弁黒猫さとみ
妻でなく母でない我短夜に黒ばあや
亡き妻の文を眺むる短夜や桑田さなえ
短夜や星と一緒に待ちぼうけ慶唯
短夜や遅れ知りたる恩師の死月下檸檬
短夜や眠れぬ夜のごろ寝かな月昭
短夜の空気を纏う腕と足げんきいっぱい
湯治の湯ゆきずりに語らふ短夜謙久
短夜や離婚の決意猫に問う源氏物語
短夜や隙間時間のアルバイト恋瀬川三緒
短夜や独り書を読み朝となり輝雲彩
短夜やスキップできない広告剛海
むさぼりて読みし短夜鳥の声康寿
短夜やスパット通過ストライク幸内悦夫
短夜や馴染あふるる閉店日宏楽
短夜や明けて指ぬきはずす母こきん
短夜や夢のうたげの儚きやココヨシ
短夜や逝きし子抱く夢の中(うち)越乃杏
短夜やペットボトルの過冷却虎堂吟雅
全頁小説読み切り短夜明く後藤真昼
短夜や中島みゆきの別れ歌後藤三梅
短夜やアラフォー干すは蜂蜜酒粉山
短夜や江の島行きの発車ベル小林昇
短夜や我が人生も折り返し小林澄精
短夜に残業した朝空白し小林弥生
短夜や最終回を三回目小藤たみよ
たそがれに退社してよりの短夜駒川義輝
短夜やネオン残して街の顔こま爺
短夜や朝は銃を取る兵士小湊八雲
短夜の夢に出るは笑みの母こむぎ
短夜や座敷の猫も欠伸する碁練者
短夜の江戸川乱歩短編集GONZA
短夜のフランスパンのクープかなコンフィ
断捨離はみれん遅々として短夜西條晶夫
短夜や年中無休拉麺屋酒井春棋
まぼろしの救援去って明易し榊昭広
手ぞ抜かづ短夜か染みつかぬ袖坂島魁文
短夜や開いたままの「草枕」さかたちえこ
短夜やドラマは劇的逆転を坂本千代子
短夜の飯炊く母の髪みだれ相良まさと
短夜のディナーショー幕夢のごと咲まこ
短夜にスマホで手繰るいみな源空桜井りこ
短夜や出社するのは四時間後佐倉英華
短夜や寝巻のままで庭に出る桜姫5
短夜の怪談話一人消え近未来
短夜のまだ夢の中目覚めたりさざんか
短夜くるパリから響くスパイクの音幸子
短夜や薄き布団を蹴り落とす砂月みれい
短夜やジョギングコース馴染み増え薩摩じったくい
短夜や手ぶら復習記憶術佐藤かりんこ
短夜やガイドブックを読み返し佐藤公
短夜や順延とするこのシーン佐藤茂之
短夜に終着駅で始発待つ佐藤俊
銀婚の震災ホテル明易し佐藤浩章
赤子泣く短夜に苦笑ひせむ佐藤佳子
短夜や坐禅開始の銅鑼響く里こごみ
短夜のコーヒーミルを挽く楽士錆田水遊
夢に来し亡夫語るや明易しさふじわよ
短夜や寝床に入れば朝刊来さやじゅん
短夜の明けて実家を出る日なり紗藍愛
短夜や間に合わぬとて陽は待たぬさわだ佳芳
誘眠剤飲めず短夜ほど夜更かし沢拓庵◎いつき組カーリング部
短夜やみじかいヨガと雨の音沢田恵子
短夜や短波放送音絞り沢山葵
短夜や『ベルばら』は断頭台まで三角山子
短夜や月の満ち欠け弧のゆるみ三休
短夜のアボカドすいと真つ二つ三尺玉子
短夜にスッスッストン電気浮き三水低オサム
短夜や枕の下の推しの彼四王司
短夜や野良着の乾く間もなくに塩風しーたん
短夜や吾は素直に年重ね塩原香子
短夜や逝きたる母と問答すしかの光爺
短夜や期末テストの迫り来る志きの香凛
短夜やもとらんことをおらばれんじきばのミヨシ
短夜の悪夢断ち切る俳句かなじじょう庵一口
短夜や読書の中の飛行中紫檀豆蔵
短夜や夢の復習い(さらい)は途切れけり実本礼
友の訃報や短夜の旅支度信濃のあっくん
短夜や寝かせてくれぬオウンゴール芝歩愛美
悲恋の短夜熱唱の口パク縞子勾苑
短夜に母の脚揉むゆっくりと島じい子
眠剤を断つ短夜の挑戦島田ユミ子
短夜のオンザロックは酔ひがたし清水容子
短夜やはしゃぎ過ぎたる日々のあとしみず楽翠
明け易やコトリと届く瓶牛乳霜川このみ
談春の語りの余韻満つ短夜霜月詩扇
短夜の寝癖に目立つ白髪かな霜月ふう
短夜はすぐ竜王戦探り合い下丼月光
短夜や栞を挟む本の山沙那夏
短夜やパンはゆつくり成熟す砂楽梨
短夜のニュータウン制服の子ら朱胡江
短夜やキルトのごとくつなぐ夢柊瞳子
短夜に素顔のピエロ見る夢は秋芳
短夜や振れど出てこぬマヨネーズ樹海ソース
短夜や数独パズルもう一問じゅんこ
濡れ傘を土間に広げて短夜かな順之介@QLD句会
短夜やポトスの先に膨るる水じょいふるとしちゃん
短夜やいまだ解からぬ真犯人庄司芳彦
漆黒の響くピアノの短夜に昭和かぐや
短夜の膝の痛みに目が覚める白井百合子
短夜を裂いて飛び去り尾長鳥不知飛鳥
短夜やねむけ眼の旅の朝白梵字
短夜や牛丼喰らふ午前四時シルマ☆
短夜や妻の咳音ひざの猫しろくも
短夜やバラスト均す保線員白猫のあくび
短夜に刻む雨音夢うつつしんなが新月
平和なりしか短夜の雑魚寝旅新濃健
うつつなり短夜の夢となりの掌(て)翠月
短夜の空へ飛び立て風見鶏末広野暢一
短夜の昭和の歌や深夜便杉浦あきけん
短夜の夢魔じっとりとゲリラ雨杉岡ライカ
幽光の円舞だまし川の短夜涼風亜湖
短夜にいつか遇いたい亡き父よ鈴木季良恵
短夜や考えるより寝付きよく鈴子
短夜の青の瞬間鎮まる気すずしず
未練から愛へは行けぬ短夜は鈴野冬遊
短夜のくるりと回す月球儀砂山恵子
短夜や老犬床(ゆか)に「犬」の字に静江
短夜のむずむず続くふくらはぎ晴好雨独
ラジオ聴く老犬介護明易しせいしゅう
短夜の雨の横浜独り傘青峰桔梗丘
短夜や荒屋に衣の擦れあひて瀬戸ティーダ
短夜の孫娘と弟の会話弾む瀬野広純
短夜の硝子の靴は今何処泉幸
短夜や納言のめでる闇と雨そうま純香
天窓の星を数えて明易し草夕感じ
沿線のデシベルは七短夜にそぼろ
短夜のテスト勉強範囲未だ染井亀野
短夜や愚かな我よ忍び泣く宙まあみん
短夜や肉割れ跡は淡藤色空豆魚
短夜や北の大地の初出社駄詩
ひとりきり短夜の人生ゲームたーとるQ
短夜に踊る踊るや幼子等大康
短夜や救急車待つフロントマン太閤検地郎
短夜や小さき畑に又行かん大ちはる
短夜や囲碁の勝敗日をまたぎ平たか子
短夜のなごりの夢は大人びてたいらんど風人
耳栓よ頼む山小屋の短夜高上ちやこ
短夜のページ繰る指のかさつき高木音弥
短夜の明けゆく窓に影の鳥髙田佳典
短夜や絵本グッズが出番待つたか&ひろ
短夜やカレーライスの焦げ落ちぬ高辺知子
我が憂うは子か我か短夜高嶺遠
短夜やCM長きユーチューブ高橋ひろみこ
短夜の明ける兆や開く窓高見正樹
短夜のカラオケ五曲ほど歌ふタケザワサトシ
短夜や深夜ラジオのエンディング多胡蘆秋
短夜や君の寝顔の仄かなり太之方もり子
短夜に川面を残す群れあかりたすく
短夜や老親連れてあたふたと祐紀杏里
短夜の明け待ちかねつ米寿どち多田知代子
短夜や朝告げ鳥の恨めしき立花かおる
短夜やメールの返事まだしない田中紺青
短夜や明日戻る娘(こ)の寝顔みる田中暢一
短夜や友に絵手紙したためる田中ようちゃん
会いたくて短夜さえも億光年たなばたともこ
短夜に外すことなき腕時計たなべ流水
短夜のジャズのライブやミントの香たなべ早梅
短夜に病の友と長電話谷口あき子
短夜の映画「沈黙」闇長く谷町百合乃
短夜や薄皮のごと時めくる田上大輔
短夜に熊鈴鳴らす配達員田畑せーたん
短夜やつぼみ開くをにらみ待つtabei白芙蓉
短夜や始発電車を待つホーム玉井令子
短夜や十年日記読み耽るたむらせつこ
短夜や柏手を打ち清々し田村モトエ
明易しぼんやり目が合う隣家の猫鱈瑞々
短夜やドライアイスと祖母の遺体ダンサーU-KI
カーテンのひだの濃淡短夜かな千鳥城・いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
短夜やアロマの海に漂いて千葉睦女
全て知り前向く短夜従妹逝く千夜美笑夢
短夜や早起きしたく夢をみる司蓮風
短夜や長編本どっぷりと塚本英範
短夜やぺこぺこ下げる受話器前塚本隆二
短夜のやがて駅舎へ吸はれゆく月岡方円
みじか夜や風に吹かれて君想う月のひかり
短夜やそれでも君の夢を見る月見里ふく
短夜に忘れた夢が通せんぼ月夜案山子
短夜の公園ベンチに撃沈す辻瑛炎
短夜や本を閉じれば丑三つ時辻ホナ
短夜に針音数ふ時長し辻美佐夫
短夜を笠置シヅ子を口ずさむ辻本四季鳥
短夜や天井の節あちこちに辻栄春
短夜や特製ジュース二人してつついぐれちゃん
トランプのブランクカード明易し綱川羽音
短夜やメガネ取るなりいま何時ツユマメ末っ子/いつき組広ブロ俳句部
短夜やシンクに残る食器たちデイジーキャンディー
「黄金餅」食う二つ目に夜のつまる丁鼻トゥエルブ
短夜の寺の静寂我独手嶋錦流
短夜や鴉の叫び危機伝へ哲山(山田哲也)
短夜や辞書の「aardvark」に線 出目似鱚
短夜の突貫工事まだ終はらぬ寺尾当卯
短夜のフランス革命十八巻寺田哲夫
短夜や茜に染めしショートカット典雅
短夜や「れんくん」二人産まれたり天雅
短夜も長し人待ちのネトフリてん子
短夜や3時間毎100cc 土井あくび
一冊の春樹で明ける短夜かなどいつ薔芭
短夜の湯船から見る景色かな東行
短夜や旅行鞄のぎゅうぎゅうとどくだみ茶
短夜や駅のホームを猫二匹杼けいこ
短夜や金庫破りの気の弱り十津川ポロ
短夜やもんじゃ評した銀座線となりの天然石
短夜や退職後初旅プラン戸根由紀
短夜を朝急かしたる場転へととみお
短夜のトーチの残像無限大冨川友香理
短夜をカクテルにして呑み尽くす登盛満
短夜のアフレコ台詞は早口鳥田政宗
短夜や鉄階段を降りる靴豚々舎休庵
短夜や明けゆく湖の波しづか内藤由子
遠き寺へ人形供養短夜来楠央
短夜に背伸びして越す柱傷naoki
短夜に自転車を漕ぐ家はすぐなかかよ
短夜や貨物列車で会いに来て仲川暁実
短夜や大谷すでにホームラン中島走吟
短夜や父の点滴また終わる中島葉月
短夜や勉強時間も不足がち中嶋緑庵
短夜に眠気とれずにまた眠る中村暁代
短夜の戦後を語る余生かな中村あつこ
短夜にサイレン響く胸疼く中村こゆき
短夜の夜伽の線香崩れ落つなかむら凧人
短夜や母のことばとハッカ喰む中山由
短夜や未完のドールハウスなほ凪ゆみこ
みじか夜や薄きも濃きも妙義山名草
短夜の淡き光で母眠る七五三五三
短夜やジグソーの鶴千ピース那須のお漬物
保護猫と鼓動重ねて短夜や奈津潤子
短夜やアンソロジーは奥付へ七草柚希
短夜やもう故郷に父母は無く生天目テツ子
短夜や友のコップに愚痴はとけ奈良風子
火遊びの短夜水面には祖父母菜類ゆいな
短夜や遠の島影くっきりと南全星びぼ
短夜や読了したるミステリー西尾照常
短夜や朝刊カタンたたたたた西郡うり
短夜の座りて眠る夜泣き子と西こでまり
子の帰り待つて短夜うたた寝を西野和香
短夜はトイレットペーパーの長さ二重格子
短夜の子らの寝息とハムスター二十八
カーテンの隙間の細く明易し新田ダミアナ
短夜や平和の祈り千羽鶴二和田躬江
短夜やページの角を折りて閉づ庭野環石
短夜やステンドガラスから目覚め沼宮内かほる
短夜の絶交やめる短夜に沼沢さとみ
短夜はかすかな声の主探すねがみともみ
短夜や明日の課題にから騒ぎ猫辻みいにゃん
センサーを遮る猫と短夜かなノアノア
短夜やゴールデン街友の声野瀬博興
黒服の喧嘩なお短夜の澱野点さわ
短夜にミルク求めて稚児や泣く野中泰風
短夜や手水鉢の跳ね忙しのの倶楽部
短夜や歩行器の母ガタゴトと野の小花
短夜に心の弾む明日あり野の菫
短夜の地下鉄アート飛び跳ねて野ばら
短夜や黄泉比良坂想い越え野原一草
短夜や来し方語る古き友則本久江
短夜の寝覚めやすきを欲したる白雨
短夜や職質拒否の謎の人白山一花
短夜や明日の越し方見定めり橋爪利志美
がん告知短夜惜しむ陽は昇る波止浜てる
短夜や夢を劈く鶏の声蓮見玲
短夜に漱石読みて夢枕長谷島弘安
五六羽の鴉短夜のごみ置場葉月けゐ
短夜や話せなかった悩み事初野文子
明易や犬と漫歩の雨あがり花岡淑子
途切れ途切れたる短夜のラジオかな花咲めだ香
短夜のショパンのワルツ掠れゆく花はな
短夜や新曲暗譜明日までと華花開く
短夜や取り柄は返事だけと言ふ英ルナ
短夜の猫より目覚む鞆の浦花和音
短夜や地蔵ほの白立ち並ぶはね花
短夜に嘆く少子化物価高羽馬愚朗
短夜や一息に読む「富士日記」はむこ
短夜や明けの珈琲葉が光る葉森木霊
短夜やしづかに閉づる古日記 林省造
翌晩の献立悩む短夜かな林めぐみ
短夜の肌の湿りや夜風撫づ原水仙
短夜や夢の語りはまだ序章原田民久
短夜や烏はまるで母の声原善枝
短夜や歎異抄読む夜もすがらharu.k
目を覚まし短夜のあさ二度寝する春風
着信のなくてひとまず明易しはれまふよう
短夜や朝の散歩も早くなり伴田聡
寝た筈の吾子と目が合う短夜よパンドラみかん
短夜や短波ラジオの外国語HNKAGA
短夜のサイレンの音殊更にピアニシモ
短夜を逆恨みする忍び逢いひーちゃんw
雨頻りかなしい夢の短夜や東山たかこ
短夜や食パンの切り口斜め比企野朋詠
1クール分の短夜アニメーションひでやん
短夜や真犯人は明日の章一石劣
短夜や明日の始発で帰るきみ日向こるり
短夜や彼の地往復した夢路ひな扶美子
短夜や軒の雀も起きたらしヒマラヤ杉
短夜や時間惜しみてみだれ髪向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
短夜や冷めた靴音あなたの香ひまわりと碧い月
短夜にビジートーンを聞いてゐる姫川ひすい
短夜やお開き告げるクラス会ひめのつばき
短夜に積み上げた本無駄になりひめりんご
短夜やハモニカ吹いた父のこと日吉とみ菜
短夜に誰かの日記読む至福平岡梅
病得て短夜抱きて浅き夢平岡花泉
短夜や終電のゆく音とおくひらた彩雲
短夜の絶滅危惧種老いにけり平原陽子
短夜や通勤列車で足す眠り平松一
短夜や廃棄雑誌の品定め比良山
短夜や乗客層の若きこと平山仄海
短夜の肩の向こうに白む山昼寝
明易し昨夜の手紙読み返す広島立葵
短夜の譜面へ記すフェルマータ広瀬康
短夜や絆創膏を貼り替えるひろ夢
短夜や朝帰りし日昔あり琵琶京子
短夜に上手く溶けない粉ミルクフージー
みじか夜の夢は窓辺にコマ落とし風泉
短夜や脳(なずき)休ませ出力へFUFU
短夜や音楽はノー勉で寝る深町宏
短夜や手術日迎う午前四時深蒸し茶
短夜にもう一度会おう朝が明くまでふぐち
短夜や寝ばなに騒ぐ鳥の声福弓
短夜や君と明日まで抱き合おうふくろう悠々
短夜の過ぎるにまかせ爪を切る藤井京子
短夜や朝まで続くマウス音藤井眞みこ
短夜は過ぐ帯直す隙も無く藤岡美波
短夜に大忙しの救急車藤川鴎叫
短夜のフェードアウトのラブソングふじこ
短夜の怪談や花摘めぬ嫁 藤田忠久
門限厳守短夜の父の文字藤原涼
短夜やジャンヌが牢で見た光伏見レッサーレッサー
短夜や酒量が増えた夢の中藤本だいふく
短夜や露とたとえし辞世ありフタバ凛
短夜や寝返りできぬ五十肩二見歌蓮
短夜に太鼓の遠音鍋の豆船橋こまこ
短夜の未だ濡れている葉を撮るや古澤久良
短夜はドラキュアのよな逢瀬かな古庄萬里
息子一家出て留守番の短夜(たんや)かな古谷芳明
短夜に枕濡らして空仰ぐヘッドホン
コロナ明け友との宴短夜よベニヤサン
導入剤むさぼり食って短夜果つべびぽん
短夜や庭で新聞茶の香り鳳凰美蓮
短夜や夢と現実重なりて望月
短夜や流れず落つる星ひとつ峰晶
短夜やまだまだ酒が抜けてない宝松苑
短夜や足を枕に眠る猫房総たまちゃん
ショートする思考回路の短夜よ墨純
短夜やかわたれ時に床に就くぼくのはね
短夜にいのち色こき翁面ほこ
短夜や多変数関数とけてゆき星雅綺羅璃
短夜の呼吸すこやか犬の腹星鴉乃雪
さんざめく渋谷臨界の短夜ほしぞらアルデバラン
乳飲み子がほああと泣いて短夜かな星野ぐりこ
短夜の喉駆け抜けるざるうどん細川鮪目
貴方とは結ばれないの明早し堀籠美雪
短夜や故郷は静かすぎ不眠堀卓
短夜に煙草一服空見上ぐ本気のめんそ
短夜や農夫の顔の黒光り本間美知子
短夜や止まぬ踊りに解かぬ指舞矢愛
遠ざかる路地の口笛沁む短夜前田冬水
読み終えてサイレン消えて短夜かな正男が四季
短夜や五十グラムのトミカ愛正岡田治
短夜やなんやかんやで飲みに行こ雅蔵
短夜や遠くなりゆく妻の腕眞さ野
短夜に泳ぐ光をPOSTする増山銀桜
短夜が逢瀬の刻を甘くする町家の日々輝
短夜のラジオ朗読耳に置く松井くろ
短夜や宴の後の缶並び松井酔呆
短夜や寝そびれて聴く鳥の声松井貴代
短夜かな深夜ドラマで朝来る松井英雄
明け易し豆金柑の芽を愛づる 松岡重子
短夜や胡蝶の夢の覚めやらず松岡玲子
湖凪ぎて煌めく朝日明易し松尾祇敲
短夜の夢引っ張りて八十路こえ松尾美郷
短夜に亡き妻語る声を聞く松尾老圃
探偵の不法侵入明易し松坂コウ
短夜や読まずじまいを並べ替え松沢ふじ
短夜や父と母だけ眼裏に松平武史
短夜や枕新たに誕生日松田寛生
短夜や次第に変へて空の色まつとしきかわ
短夜やすうっと出てゆく夫の船松永好子
短夜や会社仲間と三次会松野蘭
短夜や雨戸一枚閉め忘る松本厚史
短夜や始発電車の疲れ顔松本俊彦
短夜のためいき虚ろ待ちぼうけ松本牧子
短夜や夫が玄関開ける音松山のとまと
短夜を知らぬ外灯錆照らす的場白梛
短夜を妻は出張ひとり飯真宮マミ
短夜や昔語りに写真添え豆福樹子
短夜や母の寝息とラヂオ聴くまやみこ恭
熱湯を満たして短夜待つ三分黛素らん
短夜や明日の目覚めを信じつつ真理庵
絹衣掛けて短夜ひと眠り丸山佳子
仮眠なき小児救急明早し澪那本気子
物想ふ短夜寝息の煩わしみかん成人
句を得たる夢の続きや明け易し神酒猫
短夜や寝てくれぬ母焦る吾三茶F
短夜や荷造りしつつ語る友水差しポット
短夜や目覚まし前の烏のカーMR.KIKYO
短夜の長さ短かさ楽しめり三田忠彦
短夜のあける鶏舎の喧しさみちむらまりな
短夜や池一面のサガリバナ美津うつわ
短夜や白き法被の紺の紋満生あをね
短夜や葵の上に思い馳せ光月野うさぎ
短夜や終わりなき旅軌道船美月舞桜
短夜の天空を割くTAO太鼓ミツの会
短夜にバジル伸びつつ香りゐるみつれしづく
短夜に夢二本立て明ける空緑区のへこ
短夜の元気ハツラツ草野球ミナガワトモヒロ
短夜や話し足りない同窓会湊かずゆき
短夜の渇欲ジョジョの石仮面 漫画…みのけんた
短夜や明日の糊代淡きもの三群梛乃
短夜や灯り要らずの朝支度見屋桜花
短夜や宙へ誘なう物語みやかわけい子
短夜やあこのひたいに手をあたる宮城海月
床に寝て博物館の明易しみやざき白水
短夜に拭えぬ二里の疲れかな宮下ぼしゅん
短夜やホテルのドアの音重き宮武濱女
嫁ぐ娘と話せば尽きぬ短夜や美山つぐみ
短夜に白むまで読む物語深山柚仁
短夜を彷徨うか単騎バイク音宮村寿摩子
短夜の手のぬくもりを忘るまじ夢雨似夜
短夜や裏鉄の音の遠ざかるムーンさだこ
短夜や延長足らぬ貸出し本武小川寿歩
短夜やまぶたを透かす薄明かり霧想衿
短夜やコントロールのきかぬ夢睦月くらげ
明早しちょっとお掃除しちゃおうか村先ときの介
短夜や薬草うかべ癒し風呂恵美笑
短夜をからから駆けるハムスターめりっさ
短夜恋う募る想いよ星ららら樅山楓
短夜や「枕草子」めくる指百瀬つきか
短夜や施設の父と長電話森上はな
短夜や老いたる織江いかに生く森佳月
短夜や心不全の吾つま寝顔森嶋ししく
食後のチャイ短夜をぴりり甘く森中ことり
短夜や殺人犯は意外にも森日美香
短夜の恨めしきほどの欠伸かな森茉那
「いいね」押し「いいね」押されて夜のつまるもりやま博士
短夜や親子丼なり鮭いくら八木実
短夜や柏手響く神社かな矢車草
ひと差し指短夜をスクロールする弥栄弐庫
短夜のミシンの音の速きかな矢澤かなえ
短夜や右目忘れるアイシャドウ矢澤瞳杏
短夜や猫は漁港へ歩き出し野州てんまり
短夜に陽残香注ぐ茶づけかな安元進太郎
短夜の遮光カーテンほの青し痩女
まどろみに短夜の鶏情けなし八手薫
短夜やぐずる子を抱きベランダへ柳井るい
短夜を遊び横寝の針鼠簗瀬美嘉
あれこれと心めぐらす短夜かな山内泉
短夜にもれ聞こえ来るカノンかな山内文野
短夜に猛るカラスも仔を撫でて山内悠生
短夜の点滴僅かボタン押す山尾政弘
短夜や変わらぬ時の片隅に山川充
短夜を寝ずのごとくに鷺立てり山口絢子
短夜や夢の厨に母の居て山口一青
短夜や賛成もせず反対も山口雀昭
短夜や床つく吾子と戯れし山口笑骨
短夜や沖に幽かな船灯り山崎かよ
輝かし曜変天目短夜に山下弥生
短夜や枕に頁捲る音やまだ童子
短夜や元コンビニの駐車場山田はち
短夜や子の背草木の如く伸び山田はつみ
金つぎの光りうすまり明易し山田蚯蚓
短夜やためらい破って三杯目大和杜
短夜や歌い尽くした子守唄やまな未
あの本をポチるか否か短夜に山野花子
短夜や肴は想い出独り酔うやまもとのり。
短夜に躊躇う酒や右左山本八
短夜は侘し言う父の過ぎし日々山本葉舟
終われない韓国ドラマ明け易し山本蓮子
短夜やバスのカーテン越しに海山姥和
短夜を仮眠たゆたふ仮死のごと柚木みゆき
短夜に戸を開け鳴く鹿追いはらう夕映水面丸
それぞれに会うて別るる短夜かな柚子こしょう
短夜や老の眠りに鳥の声柚木啓
寝苦しや闇に寝返り明け易し宙美
短夜に弾く指先愛し日々 愛しき?夢一成
短夜や朝刊照らす常夜灯夢散人
不夜城の夜明烏よ明易しユリノイロ
短夜を囲むベツドや祖母の息陽光樹
短夜の光きらりと流るる髪 夜香
短夜も明けず続くか吾子の熱横井あらか
短夜の子のさりさりと首を掻く横縞
短夜や君と電車に夢で乗り横田信一
堰き止めよ漆黒の宙短夜は横浜順風
短夜やYEBISUビールのYの泡横浜J子
短夜や二つのグラス空かぬまま横辺理
短夜や止まった町に陽が昇るよしぎわへい
短夜やタイマー切れて目が覚める吉田かのこ
明易や巡礼出ずる鈴の音吉田春代
短夜やみじかき夢に君を見る吉富孝則
短夜や猫と映画を見る眼四つ吉成小骨
短夜に合う曲選ぶ夜行バス吉藤愛里子
短夜に付かぬ既読を確認すよしみち
短夜や寝る夜のあらず宵つ張りYoshimin空
短夜や俗事の話し僧といてよぶこどり
短夜や延々つづく針の音よみ、ちとせ
短夜にはじける笑顔罪の味食う4色ボールペン
短夜や階下の義母の鼾止む楽和音
短夜や過去しか知らぬ魂よリーガル海苔助
短夜の茶事や銅鑼打つ窓に風六星菴
動脈の硬さだけ知る短夜は流流
短夜や友と終活談議なりルージュ
短夜や妻亡く惑う茶碗酒麗詩
短夜に歌詞心刺す羊文学 連雀
短夜の朝目覚めれば猫の顔わかなけん
短夜の息子待ちつつ船を漕ぎわきのっぽ
短夜やこっそり去りし君が部屋海神瑠珂
短夜に捨てた座椅子をまた拾いわたなべいびぃ
短夜の更けゆく音に閉じる本わたなべすずしろ
閉ぢし目の天窓白く明易し渡邉花
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
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●表記
- 短夜 長い夜より 好きかもしれない匿名希望
- 短夜に 十二時過ぎの 三角関数ギザギザ仮面
五七五の間を空けないで、一行に縦書きにするのが、俳句の正しい表記です。ネット選句欄の横書きは、泣く泣く許容しております。
●兼題なし
- 灯り夜に濡れ身を寄せて梅雨の月緑山ハル
本選句欄は、毎回季語が出題されています。兼題を確認して、再度挑戦してくださいね。
●季重なり
- 涼風も刹那に流れ短夜や会田美嗣
- 短夜の暑さ凌ぎて明くる朝家古谷硯翠
- 短夜に浴衣とラムネ風涼み桜餅愛好家
- 短夜開け涼しきうちに田畑行き野崎文明
- 短夜やトマト丸ごと頬張りて竹内一風
- 短夜やラジオの声と虫の声焼津昌彦庵
- 朝顔の開花目覚まし短夜だなしげ3
「季重なり」は、やってはいけないタブーではありませんが、ウルトラ技です。まずは、一句一季語からコツコツ練習していきましょう。
- 短夜や天地伝ふ鹿児のこゑ匹田小春花
この「鹿児」は、地名なのでしょうか、鹿の仔ならば、季重なりということにはなります。
●切字の重なり
- 短夜や小便したる寝言かな藤川雅子
- 短夜や起きて冷たい寝間着かなみかりん65号
「や」「かな」「けり」などの切字が、一句に複数入ると、感動の焦点がブレてしまいます。どちらかの切字を外して、整えなおしてみましょう。
●今ひとつ意図が……
- 短夜や卒寿の祖父に先二つ来ヶ谷雪
下五「先二つ」がどういう意味なのか、解釈を悩みました。
- 短夜やツとシに泣いて父の来る堀川絵奈
小学生の書き取りの練習でしょうか。だと仮定した時、「短夜」という季語でよいのかどうか。短夜とはいえ、一晩中カタカナの練習をしている?
- 短夜や針のなずらふ溝を音無弦奏
動詞は「なずらふ」(準じる、真似る)で良いのでしょうか? もしや「撫づ」の意味でしょうか?
●今回の選外について
今回の兼題「短夜」はそもそも「夜」ですから、「短夜」という夜の状況を詠んでいるにもかかわらず、夕暮れや朝の時間が混在しているのは、基本的に無理があります。(句の内容や状況によって許容できるものもあります)
更に、「短き夜」という使い方も、五音にしたいがための苦肉の策かと。
もう一つ気になったのは、下五を「短夜や」とおさめた句がかなりあったことです。ダメというわけではないのですが、バランスかが取りにくい型なので、かなりの確率で失敗します。
内容に見合った型や調べを工夫する。この一点は常に肝に銘じておきましょう。
毎回のことではありますが、誤字脱字・変換ミス等の句が、目につきます。送信ボタンを押す前に、再度見直すことも習慣づけましょう。
お待たせしました!6月の兼題「短夜」の結果発表でございます。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。秋の「夜長」は聞いたことがありましたが、夏は「短夜」と言うんですね。「可惜夜」に近い精神性なのでしょうか。夏の長くて暑い日中をぐったりしながら過ごすだけではなく、夜に名前をつけて惜しみ、味わう姿勢が優美だなと思いました。 8月の兼題「墓参」もふるってご応募ください。(編集部より)