夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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9月の兼題

「石榴」

6月の審査結果発表

兼題「短夜」

 お待たせしました!6月の兼題「短夜」の結果発表でございます。今月も夏井先生からのアドバイスは必見です。秋の「夜長」は聞いたことがありましたが、夏は「短夜」と言うんですね。「可惜夜」に近い精神性なのでしょうか。夏の長くて暑い日中をぐったりしながら過ごすだけではなく、夜に名前をつけて惜しみ、味わう姿勢が優美だなと思いました。 8月の兼題「墓参」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
ウチにくれ短夜の捨てちまふ子は

蜘蛛野澄香

夏井いつき先生より

 兼題「短夜」から、この名句を思い出した人もいたようです。「短夜や乳ぜり泣く児を須可捨焉乎 竹下しづの女」 中七「乳ぜり泣く児(ちぜりなくこ)」は乳を欲しがり泣く子を意味し、下五「須可捨焉乎」は「すべからくすつべきか」という反語の意味の漢文調。これを「すてつちまをか」と読ませる大胆不敵な句なのです。
 これを本歌取りした掲出句は、一気に現代へとワープします。中々子宝に恵まれず不妊治療をしているのでしょうか。病気や不慮の事故で我が子を亡くしたのかもしれません。更に、昨今の虐待事件も心をよぎります。短夜にイライラして己の子を死なせてしまうような親がいる。そんなことをするぐらいならば、「ウチにくれ」という口語の叫びが、読み手の胸を抉ります。

地
短夜の瞼を持たぬ魚たち

川越羽流

 夜の水槽の熱帯魚を想像しました。中七下五は魚の生態をそのまま書いてあるだけなのに、「短夜の」と限定されたとたん、詩が発生する面白さ。瞼を持つ人間もまた、眠れぬ眼を見開いて「短夜」の闇の中に揺蕩っているのかもしれません。

短夜や夢の尾鰭は痒くつて

赤尾実果

「短夜」と「夢」の取り合わせは二百句ほどありましたが、「夢の尾鰭」という比喩、「痒くつて」という虚の皮膚感へ展開したアイデアに独自性がありました。「短夜」の浮遊感めいた感覚をこんなふうに表現できるのだなあと感心します。

半円を水車は短夜にさらし

葉村直

 粉を挽くための水車小屋を思いました。この「水車」は、夜は動いてないのでしょう。水車の半円は水に浸かり、残りの半円は乾いている。「短夜にさらし」で一気に詩となっていく言葉のメカニズム。やがて短い夜が終われば、再び働き始める水車です。

母にまだ影ある短夜の廊下

花南天あん

 介護を必要としている「母」なのでしょう。「短夜」に何度もトイレに行く母か、うろうろと徘徊する母か。ふと、「母にまだ影ある」と感じとってしまった子の、何と切実な哀しみでしょう。「短夜」ともなればその思いも更に。

短夜を散つて映画の血はきれい

RUSTY=HISOKA

「短夜」「映画」の句も多かったのですが、表現が秀逸。「短夜を散つて」とは何が? と思った瞬間「映画の血」とたたみかけてくる静かな迫力。その「血」を「きれい」と描写する着地が、惜しむべき「短夜」を印象づけて見事です。

人
  • 短夜のインコちりちり鈴突く小林のりこ

  • ロシア語の乾杯短夜をうたふ剣橋こじ

  • 短夜へ貝は砂金を吐いている酒井おかわり

  • あの山は姥捨だらうか、短夜いかちゃん

  • わたくしを夢で殺して明け急ぐ植木彩由

  • 短夜のいうれい足首のうすらけーい〇

  • 短夜の湖へと亀を捨てにゆくぞんぬ

  • 短夜の灰皿院試まで三日芦幸

  • 短夜をまた豪勢に脚が攣る越智空子

  • 短夜のブルース珈琲が酸つぱい清水縞午

  • 短夜のしりとりゆびきりのやうで髙田祥聖

  • 短夜やフェンスめく原稿用紙高橋寅次

  • 短夜や粗相のうさぎ退かす足ふるてい

  • 短夜や瞼はいちばん薄い皮膚星詩乃すぴか

  • 短夜や陣痛の波二分おきあ・うん

  • 短夜へナイフをふかく深く刺すEarlyBird

  • 短夜や線やはらかに女の形相生三楽

  • 短夜や寝釈迦の動く気配して愛燦燦

  • 短夜のストッキングの縮みかた青井えのこ

  • 短夜や登りつめたるコースター青井季節

  • 短夜や勝鬨橋は開かぬまま葵そら

  • 短夜や手漕ぎポンプの水の音青井晴空

  • えづく背を撫で短夜の裡にゐる青木りんどう

  • 短夜に開く動画の艶話蒼空蒼子

  • 短夜のソワレに投げる独白は青田奈央

  • 短夜や闇に啼く鳥名を知らずあおのめ

  • 短夜や机上の文具定位置に蒼鳩薫

  • 短夜や家には二人しかおらず青水桃々@俳句迷子の会

  • 短夜や失恋明けの須磨源氏青村秋入

  • 母宛ての葉書に一句明易し赤尾てるぐ

  • 短夜や遊び足りなさそうな猫赤富士マニア

  • 短夜を崩れをるAVの塔赤馬福助

  • 短夜やキュポラ猛りし町工場赤目作

  • 短夜や緊急入院の大窓愛柑

  • 短夜の托卵のごと羽根枕明惟久里

  • 短夜の夢は余りて雲と化す秋野しら露

  • 明易し戻り来し船の名を読む秋星子

  • 厠立てば鳶の鳴き声明易し秋山らいさく

  • 短夜はどしゃどしゃどしゃと雨に明く芥川春骨

  • 短夜やせずに久しい木のポーズ芥茶古美

  • 短夜や『体位変換』ベル響くあくび指南

  • 短夜や悪夢ひとつで白む空朝雲列

  • 短夜や大きくなりたいトックリ椰子麻場育子

  • 短夜や旅行鞄の鍵無くしあじさい卓

  • 短夜をちちと舌打ち付喪神葦屋蛙城

  • 短夜や影を慕いてギムレットあすなろの邦

  • 明易し夫の目蓋にほくろかな藍創千悠子

  • 短夜や萎み初めたる水ヨーヨー足立智美

  • 灯にバイク集まる短夜は白いあたなごっち

  • 名画座のホラー五本立て短夜at花結い

  • 短夜や夢一つ見る こともなく  跡部榮喜

  • カーテン薄し短夜の銃撃戦あなうさぎ

  • 明易し浪人生の無精髭我孫子もふもふ

  • 短夜やカラオケ怠く清算す阿部八富利

  • 短夜や付箋百枚目の地図帳あまぐり

  • 短夜や自販機補充缶の音雨戸ゆらら

  • 短夜の踏切の警報の音天鳥そら

  • 破れ破れの亡母の日記繰る短夜雨乙女

  • 短夜の母の電話の繰り言よ雨李

  • 短夜をビーズの穴に拾ひけり綾竹あんどれ

  • 短夜やシーラカンスの進化論綾竹ろびん

  • 短夜や夢に立つ人みな無口荒一葉

  • 隣りの静寂ながいながい短夜あらかわすすむ

  • 短夜の夢に弟の声聞けず荒木ゆうな

  • 短夜や尖った爪に瑠璃をぬり在在空空

  • 神鶏の声に目覚むる短夜なり淡湖千優

  • しづの女の歌ふ短夜の子守歌アンサトウ

  • 息ひそめ短夜の森きしむ音飯田淳子

  • 短夜や満車満室椋の駅飯沼深生

  • 短夜やサワーグラスの泡の筋五十嵐真人

  • 短夜の珊瑚一斉産卵す郁松松ちゃん

  • 短夜の風に落つ青き実のこと池田悦子

  • 短夜や着替への速き旅衣池田桐人

  • 短夜や軋む線路の旅枕池之端昇雲

  • 喉歌は短夜をかく棚びけり池之端モルト

  • 牛頭馬頭の湧く歌舞伎町夜のつまるイサク

  • 病院の計器は0並ぶ短夜石垣ようせい

  • 短夜や機嫌そこねし電子機器石田ひつじ雲

  • 短夜の読み切り本の厚さかな石塚碧葉

  • 短夜を百人分のいり卵石塚彩楓

  • 緩和ケア病棟短夜の手紙石の上にもケロリン

  • 琉球の昔語りや短夜に石村香代子

  • 短夜や母に添い寝のあと幾日石本美津

  • 短夜や最後のピースの沈降和泉攷

  • 短夜やセージ焚く部屋がらんだう石上あまね

  • 短夜や幽かに揺るる避雷針いその松茸

  • 短夜をきれいな鳥の声きれい板柿せっか

  • 短夜を海とおしゃべりする灯台いたまき芯

  • 明け急ぐ緑の紙への印掠れ一井かおり

  • 短夜やいつでもひっつける背中市川卯月

  • 送迎を終え短夜に米を研ぐ無花果邪無

  • 短夜や知覧の宿の薄明かりいつかある日

  • モニターの電子音短夜の心音一久恵

  • 短夜や厨に残る迷迭香 一秋子

  • 明早しものみな菫色に染まり五つ星

  • コンビニに居場所見つける短夜かな伊藤亜美子

  • 短夜や「る」から始まる言葉攻め伊藤映雪

  • 短夜や墨の香みつる筆すさび伊藤節子

  • 短夜を残務整理や産休入る伊藤柚良

  • 短夜の可燃物になりに行く糸川ラッコ

  • 亡き夫との逢瀬はたのし明早し伊奈川富真乃

  • 短夜の熱引き受ける輪転機稲畑とりこ

  • 短夜やシールドマシン操作室  いなほせどり

  • 短夜や四角き部屋に素寒貧居並小

  • 短夜や螺鈿細工の雨の街井上鈴野

  • 深爪に小さき熱ある短夜かな井納蒼求

  • 清張を五ページ残す短夜かないまいやすのり

  • 鼎談は難し短夜は青し伊予吟会宵嵐

  • 短夜の紐で束ねる紐の束いりこのにゃらつめ

  • 短夜や手札はスペードの女王岩木順

  • 短夜やマルガリータは三杯目岩清水彩香

  • 短夜にバイト先つぶれてゐたり磐田小

  • 短夜に戦さを締めるひとり酒イワンモ

  • 短夜や今日何もかも早送り植田かず子

  • 短夜の騙されさうな詐欺メール上原淳子

  • 波に掬はるる短夜のポラリス上本みのり

  • 短夜や荷風の下駄の音を読む鵜飼ままり

  • 短夜のマティーニ一杯分の恋うからうから

  • 塗られゆく嘘短夜がひび割れる宇佐美好子

  • ポータブルトイレの影や明易し靫草子

  • 短夜や雨に膨るる半規管卯之町空

  • 短夜や東京タワー今低し海口竿富

  • 学校へは行かぬ短夜のソリテア海野青

  • 短夜や深夜ラジオのヘイジュード梅尾幸雪

  • 短夜や空の実家の湿気布団梅里和代

  • 短夜やラストライブのアンコール梅田三五

  • 短夜や七歳風の色を塗るうめやえのきだけ

  • 短夜や点滴押して過ぐる音麗し

  • 短夜をむさぼる仔牛のなよ足吽田のう

  • 短夜の緑インクの別れ文江川月丸

  • ウロバッグ三割ほどの短夜かな江口朔太郎

  • 太陽の匂ふや短夜の枕蝦夷やなぎ

  • 明易しやがて遺品となる眼鏡越冬こあら@QLD句会

  • 明易し近くに止まる救急車絵十

  • 短夜逝く美しき闇田に堕ちて榎美紗

  • 短夜や心肺停止の心電図朶美子

  • 短夜の始まる果てを延びる夕絵夢衷子

  • 短夜や夕餉酸つぱいポテトサラダ旺上林加

  • 眠れぬを眠らぬとせむ短夜はおおい芙南

  • 短夜を寝がへる夫の盆の窪大岩摩利

  • 短夜や阿川泰子に針下ろす大久保一水

  • 短夜や遠いサイレン風ぬるし大越総

  • 短夜や六人雑魚寝六畳間大嶋宏治

  • 短夜や双子は同じ夢を見て大津美

  • 短夜や倍速で聴くテーマ曲大谷一鶴

  • 短夜やバス待つ間に単語帳大家港一

  • 短夜や鍵盤ひとつづつ磨く大和田美信

  • 短夜の壁をキネマの影踊るおかげでさんぽ

  • 短夜やとほき汽笛の旅支度可笑式

  • 短夜や片方なくて夫婦箸おかだ卯月

  • 短夜や空は瑠璃色星とどむオカメインコ

  • ひくミルの音苦しげな短夜かな小川さゆみ

  • 短夜や寝物語の結末は小川しめじ

  • 短夜の薄き乳房の黒子かな小川天鵲

  • 連絡船ざこ寝の窓の明易し小川都

  • にんげんのすつぴんのこゑ明易しおきいふう

  • 短夜のこむらをあやしつつうつつオキザリス

  • 短夜や栞の位置は最終章沖庭乃剛也

  • 大団円まで短夜を読み通す沖らくだ@QLD句会

  • 短夜や取材音声起こす文字おこそとの

  • 短夜や切れたままなるチャイの茶葉小島やよひ

  • 短夜や点滴のまだ残りおり小田毬藻

  • 短夜の廊下の湿り青臭しおだむべ

  • 短夜を子守唄めく「Peace」の香落句言

  • 短夜や棺の横へ珈琲はおでめ

  • 明易や橋桁細き沈下橋音羽凜

  • 短夜や長編に挑む起承転御成山

  • 短夜や膝にたたみし旅支度おひい

  • 短夜や葬儀の仕方決めかねて折口一大

  • 短夜の眠剤白し床白しおんちゃん。

  • ドローンの羽音は止まず明け易し海音寺ジョー

  • 酩酊をゆるしてほしい短夜よ械冬弱虫

  • 短夜の枕ばかりが定まらず香依蒼

  • 短夜や産声甘き三人目加賀くちこ

  • 短夜に星の瞬き遠く聞く影夢者

  • 短夜やまた母さんが泣く絵本風早杏

  • 短夜を噛んで休学届に印加座みつほ

  • 短夜や遺影に話す今日のこと梶浦正子

  • 短夜の柱に怖い顔探すかしくらゆう

  • 短夜やスマホの点る二等室樫の木

  • 短夜や韓国ドラマ早送り鹿嶌純子

  • もて余す慚愧ざらざら明け易し華胥醒子

  • 短夜の雨音夢の淵に入る風薫子

  • 明早しペールギュントの空は青花鳥風猫

  • 短夜をルル三錠の効きはじめ桂もふもふ

  • 短夜や糸目揃える爪の先桂葉子

  • 短夜の寝返り慣れちまつた気胸かときち

  • 短夜や耳たぼにピアッサーの穴仮名鶫

  • 短夜や夫は二階へ吾は下へかぬまっこ@木ノ芽

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  • 短夜の加速度αを求めよ干天の慈雨

  • 短夜やスマホ忍ばせ談話室岸壁の龍崎爺

  • 短夜や風うすいろに酔ひ飽けり閑酉

  • 短夜の受話器を通夜の日取りかな喜祝音

  • 短夜の端を切り取る茶臼岳岸野草太郎

  • 短夜を統べるベルガモットの香岸来夢

  • 短夜や足で引き寄す抱き枕北川茜月

  • 短夜を水のはたらくマンホール北藤詩旦

  • 短夜や職務質問今日二度目ギックリ輪投げ

  • 短夜やいだきし夢の痩せてくる木寺仙游

  • 短夜のチキンラーメン齧りおり着流きるお

  • 短夜の夢は耳から漏れだして城内幸江

  • 短夜やまた砂時計の反転木下桃白

  • 短夜を毎夜三行しか読めぬ木ぼこやしき

  • 短夜や母住む離れ灯は消えず木村修芳

  • 短夜や海のむこうで星墜ちて木村信哉

  • 短夜や夢の妻には声は無し木村弩凡

  • 短夜に口重き子の恋を知る木元紫瑛

  • 短夜や生まれ来る子の肌着縫ふ久えむ茜咲

  • 短夜や軍用犬柩に星条旗きゆうもん@木の芽

  • 短夜の雨音借りて飲むワイン杏花雨

  • 妻と寝て短夜髪を崩さざる京野秋水

  • 短夜やみちのくの酒澄み切つて杏乃みずな

  • 短夜を落つるプリンによき歪み霧賀内蔵

  • 短夜やフリーハンドの周期表ギル

  • 短夜や始発待つより歩いちゃえ菫久

  • 短夜や看護の母へ握り飯久我恒子

  • 短夜や耳から覚める祖母の家久信田史夫

  • LINEしづか借りパク七日目の短夜草臥れ男

  • 短夜やココナッツまだ匂う肌くつのした子

  • 短夜や呼び鈴に覚むる仮眠室 久保田凡

  • 短夜や宿の障子の水明かり熊谷温古

  • 短夜の丁番軋む三面鏡紅三季

  • 短夜や母にメイクをする予習曇ゆら

  • 短夜のシャッター街がつまんない倉岡富士子

  • 短夜の雨に薄荷の匂ふかな眩む凡

  • 右眼なき短夜のジグソーパズル栗田すずさん

  • 言の葉に質量のあり明易し久留里61

  • 短夜を余すことなきふたりかな愚老

  • 短夜や誰が地軸を傾けた黒田安人

  • 短夜やコンビニ寄らず帰る道桑田栞

  • 短夜や濁流眺む河鹿の間くんちんさま

  • 無理数といふ短夜の硝子ペンげばげば

  • 短夜やまだ湿りある水墨画健央介

  • 短夜の龜の散歩のカーブミラー紫雲英

  • 短夜やシフト帰りの実習生ケンG

  • 短夜や集中治療室明かし小池令香

  • 短夜の宿直に繰る資格本公木正

  • 腹の子の蹴る短夜のコンサート紅紫あやめ

  • チョコレート会社の株を売る短夜幸田梓弓

  • 短夜や亀の聴覚どこにあるこうだ知沙

  • 短夜に黒鍵光り集めたりごーくん

  • 短夜をとはに蝕むエアポムプ古賀

  • 短夜は点滴一万二千滴古烏さや

  • 短夜や歯茎に埋まる永久歯小笹いのり

  • 短夜やクルス一基の展望所小嶋芦舟

  • 銀鼠の夢短夜に目醒めけり小杉泰文

  • 短夜の撫づれば舐めて返す猫小園夢子

  • 短夜や栞に風神雷神図木染湧水

  • 夜勤明けの街角ピアノ明易し後藤周平

  • 明早し山小屋はまだ雲の中来冬邦子

  • まだ続く野球談義と短夜と古都鈴

  • 非通知の時刻謎めく短夜かなこのみ杏仁

  • 薬包で千羽鶴折る短夜かな駒村タクト

  • 短夜や耳朶に幽けき熱残し小南子

  • 自転車に乗れたと動画来る短夜小山晃

  • 短夜や針も振り子も疾走す小山秀行

  • 短夜の薬疹首を馳上がるこんのゆうき

  • 短夜や母の歩みはぽたぽたと今葉月

  • 短夜やオフィス街に将門塚さいたま水夢

  • 短夜や父の文殻捨て難し彩汀

  • 短夜や夢のつづきを書く日記齋藤桃杏

  • 竹べらの撓みやわらか明易しさおきち

  • 屋根裏の音の正体明易しさ乙女龍チヨ

  • 短夜や地球を斜にしたのだれさかえ八八六

  • 短夜やトッポジージョはタップ踏む坂田雪華

  • 短夜や母の呼吸を見るだけの坂野ひでこ

  • 短夜やまた書き直す悔やみ状坂まきか

  • 短夜の恍惚電子書籍の棚坂本雪桃

  • 短夜や湯の熱残るドラム缶さくさく作物

  • 短夜や約しき義母の形見分け櫻井こむぎ

  • 短夜にローン40年の話櫻井弘子

  • 短夜の帷を裁ちぬ鳥のこゑ桜鯛みわ

  • 短夜に幻視すイカロスの飛翔桜月夜

  • 短夜や慣れぬ添ひ寝にある疲れ桜華姫

  • 短夜の襁褓授乳襁褓授乳さくら悠日

  • 短夜やサーカス小屋の薄灯り雑魚寝

  • 短夜やキャメルランプの猩々緋 佐々木佳芳

  • 弔いの短夜明けて洗い物笹桐陽介

  • 何者にもあらぬ身しづか短夜笹靖子

  • 口つきしメロディ離れぬ短夜かなさざれいし

  • 短夜や代署数多の手術前さち今宵

  • 短夜の新幹線で喪をひとり佐藤志祐

  • 母の眼が閉ぢぬふるさとは短夜佐藤儒艮

  • 短夜やささやく愛を省かれて佐藤綉綉

  • 短夜や月は表の顔保つさとう昌石

  • 短夜やLEGO積み上げる積み上げるさとう隆明

  • ハート明滅明け易き夜を血圧計さとうナッツ

  • 短夜やいちご白書が終わらない佐藤ゆま(歯科衛生子改め)

  • 寝返りに抗う尾骨明易し佐藤レアレア

  • 短夜や大号泣の一部始終里山子

  • 短夜や薬仕分ける旅用意さぶり

  • 短夜の寝返り持てあますギプス彷徨ういろは

  • 短夜や夢とラジオの混じりあふさむしん

  • 短夜の歌人のまろき鼻濁音紗羅ささら

  • 短夜やドードーに会ふ航海記  さるぼぼ17

  • 短夜の足趾の爪を足掻く熱沢井如伽

  • 短夜や歯形の残るケークサレ沢胡桃

  • 退職の意思ゆらゆらと明易し澤田紫

  • 短夜やいびきシールはあと二枚澤野敏樹

  • 短夜に貌なき人の夢をまた三月兎

  • 短夜やただ吊り下げてゐる翅に山月

  • 錠剤の切れた短夜殴る壁珊瑚霧

  • 短夜やB寝台に盛る話塩の司厨長

  • 虫飛んで今日も平たき短夜かな四季彩

  • 短夜をちりちり熟す数学書四條たんし

  • 短夜や夢の境は何処なり紫月

  • 短夜や足下に日付変更線じつみのかた

  • 短夜に散居村の深い呼吸篠雪

  • 短夜やホシ分からぬまま栞挿す柴桜子

  • 短夜をかへるはだしのシンデレラ渋谷晶

  • 明易の風呂迫り来る南部富士しぼりはf22

  • 短夜もしんと酸素を産む樹冠島田あんず

  • 短夜の星を掬ひし湖幽かしまのなまえ

  • 短夜や道路工事の投光器清水祥月

  • 短夜やただ呼吸器の作動せる下村修

  • 短夜や栞を開けてなぞる頁釋北城

  • 短夜や乳飲まぬ児の目爛々芍薬

  • 短夜や咳き込む君の骨細しじゃすみん

  • サイフォンに映る五十路や明易し洒落神戸

  • 短夜やたうたうと貴種流離譚しゃれこうべの妻

  • サーカスの天幕短夜をたたむ十月小萩

  • 短夜の眠たき鐘や子規の庭柊二

  • 短夜は枡にこぼれてくゐと呑む酒天わーい

  • 短夜やチャックが甘くなつているシュリ

  • 短夜に母現はれて経を読む正見

  • 短夜やまぶたのやうな地平線常幸龍BCAD

  • レポートの考察を終ふ明易しジョージア

  • 短夜の火薬は尽きて闇に群れ白井佐登志

  • 短夜や時効日のバツは極太白沢ポピー

  • 短夜の幾度も0にする秤白玉みぞれ

  • 解剖のページ進まぬ短夜かな四郎高綱

  • 短夜を巡る天球儀の埃白プロキオン

  • つはものの螺旋を閉じる短夜なり白よだか

  • 短夜や犬の変調記す頁神宮寺るい

  • 短夜の粗熱を取るタイカレージン・ケンジ

  • 病棟の廊下は長し明易し新城典午

  • 篠笛のラから始まる短夜かな水蜜桃

  • 短夜の目覚めYouTubeは無限水曜日うまれ

  • 短夜や絹の冷え持つ女ゐてすがりとおる

  • 短夜の青きマニキュアはみ出しぬ杉浦真子

  • 短夜や恐ろしきほど窪む眼杉尾芭蕉

  • 短夜や高熱の子の息づかひ杉沢藍

  • 短夜のradioに甘きアンルイス杉田梅香

  • 短夜や下手人定かならぬ間に杉本果ら

  • 短夜や閉じて仏壇歎異抄杉柳才

  • 短夜や眠りこぼれぬやうに盃鈴木由紀子

  • LPの二曲目の傷撫で短夜鈴白菜実

  • 短夜や猫のレンタル始めました清白真冬

  • 短夜やコルク軋ますファドの店鈴野蒼爽

  • 短夜や棚田に揺れし二百の灯(ひ)素敵な晃くん

  • 短夜や子宮たゆたふ波の音主藤充子

  • 明早し最後の一紙ポスト入れ数哩

  • 短夜や聞き取り辛き二倍速須磨ひろみ

  • 短夜の夢終わりたり傍に妻青児

  • 短夜を白夜に繋ぐ長電話瀬央ありさ

  • 無韻詩にとじこめ君と短夜を瀬紀

  • 短夜や婿に酌する柩守りseki@いつき組広ブロ俳句部

  • 短夜やあしたは母のお葬式そうねマイカ

  • 短夜や短波の拾ふ国の数そうり

  • 雨音の短夜家のこと楽しそしじみえこ

  • 短夜をはみ出す雨やブロワー吹く外鴨南菊

  • 短夜や指栞して聴く鼓動そまり

  • 短夜や瑠璃の絵の具の封を開け

  • 短夜やティッシュ舐めればほの甘し平良嘉列乙

  • 短夜や一打席目はフォアボール高岡春雪

  • 短夜やハザードランプ顔濡らす高瀬小唄

  • 短夜や昨日の酒のうまかりし高橋基人

  • 振り向かぬ妣を追ふ夢明易し高橋ままマリン

  • 短夜や発つ鳥影にカフカ伏せ高橋洋子

  • 短夜は長し昼間の言葉悔い田上コウ

  • 短夜のやりたきことのこぽこぽとたかみたかみ、いつき組広ブロ俳句部

  • コスプレの厚底短夜を闊歩高山佳風

  • 短夜の錠剤半分の効果滝上珠加

  • (沖縄慰霊の日)明易のうみふところや杭を打つ滝川橋

  • 何度めのリテイク短夜の端役たきるか

  • 短夜のアイドルがみな同じ顔多喰身・デラックス

  • 短夜やセッションよりのワイン会たけぐち遊子

  • 短夜や卑弥呼はすでに石に立つ武田豹悟

  • 短夜や君の凹みの羽根枕竹田むべ

  • 短夜やジェンガ崩れて拾ふまでたけろー

  • 短夜やユーミン聴きすぎて不眠多数野麻仁男

  • 短夜や水面に指の書くる名はただ地蔵

  • 短夜はフランス映画の憂鬱糺ノ森柊

  • 短夜や在りし日の母の繕いただの山登家

  • 臨終の猫を囲んで明易し多々良海月

  • 短夜や点字図書の背ひとさすり立川茜

  • 短夜のカレーに託す明日かな橘朔

  • 短夜の僥倖進駐軍より龍𠮷

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  • 短夜や歎異抄読む夜もすがらharu.k

  • 目を覚まし短夜のあさ二度寝する春風

  • 着信のなくてひとまず明易しはれまふよう

  • 短夜や朝の散歩も早くなり伴田聡

  • 寝た筈の吾子と目が合う短夜よパンドラみかん

  • 短夜や短波ラジオの外国語HNKAGA

  • 短夜のサイレンの音殊更にピアニシモ

  • 短夜を逆恨みする忍び逢いひーちゃんw

  • 雨頻りかなしい夢の短夜や東山たかこ

  • 短夜や食パンの切り口斜め比企野朋詠

  • 1クール分の短夜アニメーションひでやん

  • 短夜や真犯人は明日の章一石劣

  • 短夜や明日の始発で帰るきみ日向こるり

  • 短夜や彼の地往復した夢路ひな扶美子

  • 短夜や軒の雀も起きたらしヒマラヤ杉

  • 短夜や時間惜しみてみだれ髪向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部

  • 短夜や冷めた靴音あなたの香ひまわりと碧い月

  • 短夜にビジートーンを聞いてゐる姫川ひすい

  • 短夜やお開き告げるクラス会ひめのつばき

  • 短夜に積み上げた本無駄になりひめりんご

  • 短夜やハモニカ吹いた父のこと日吉とみ菜

  • 短夜に誰かの日記読む至福平岡梅

  • 病得て短夜抱きて浅き夢平岡花泉

  • 短夜や終電のゆく音とおくひらた彩雲

  • 短夜の絶滅危惧種老いにけり平原陽子

  • 短夜や通勤列車で足す眠り平松一

  • 短夜や廃棄雑誌の品定め比良山

  • 短夜や乗客層の若きこと平山仄海

  • 短夜の肩の向こうに白む山昼寝

  • 明易し昨夜の手紙読み返す広島立葵

  • 短夜の譜面へ記すフェルマータ広瀬康

  • 短夜や絆創膏を貼り替えるひろ夢

  • 短夜や朝帰りし日昔あり琵琶京子

  • 短夜に上手く溶けない粉ミルクフージー

  • みじか夜の夢は窓辺にコマ落とし風泉

  • 短夜や脳(なずき)休ませ出力へFUFU

  • 短夜や音楽はノー勉で寝る深町宏

  • 短夜や手術日迎う午前四時深蒸し茶

  • 短夜にもう一度会おう朝が明くまでふぐち

  • 短夜や寝ばなに騒ぐ鳥の声福弓

  • 短夜や君と明日まで抱き合おうふくろう悠々

  • 短夜の過ぎるにまかせ爪を切る藤井京子

  • 短夜や朝まで続くマウス音藤井眞みこ

  • 短夜は過ぐ帯直す隙も無く藤岡美波

  • 短夜に大忙しの救急車藤川鴎叫

  • 短夜のフェードアウトのラブソングふじこ

  • 短夜の怪談や花摘めぬ嫁   藤田忠久

  • 門限厳守短夜の父の文字藤原涼

  • 短夜やジャンヌが牢で見た光伏見レッサーレッサー

  • 短夜や酒量が増えた夢の中藤本だいふく

  • 短夜や露とたとえし辞世ありフタバ凛

  • 短夜や寝返りできぬ五十肩二見歌蓮

  • 短夜に太鼓の遠音鍋の豆船橋こまこ

  • 短夜の未だ濡れている葉を撮るや古澤久良

  • 短夜はドラキュアのよな逢瀬かな古庄萬里

  • 息子一家出て留守番の短夜(たんや)かな古谷芳明

  • 短夜に枕濡らして空仰ぐヘッドホン

  • コロナ明け友との宴短夜よベニヤサン

  • 導入剤むさぼり食って短夜果つべびぽん

  • 短夜や庭で新聞茶の香り鳳凰美蓮

  • 短夜や夢と現実重なりて望月

  • 短夜や流れず落つる星ひとつ峰晶

  • 短夜やまだまだ酒が抜けてない宝松苑

  • 短夜や足を枕に眠る猫房総たまちゃん

  • ショートする思考回路の短夜よ墨純

  • 短夜やかわたれ時に床に就くぼくのはね

  • 短夜にいのち色こき翁面ほこ

  • 短夜や多変数関数とけてゆき星雅綺羅璃

  • 短夜の呼吸すこやか犬の腹星鴉乃雪

  • さんざめく渋谷臨界の短夜ほしぞらアルデバラン

  • 乳飲み子がほああと泣いて短夜かな星野ぐりこ

  • 短夜の喉駆け抜けるざるうどん細川鮪目

  • 貴方とは結ばれないの明早し堀籠美雪

  • 短夜や故郷は静かすぎ不眠堀卓

  • 短夜に煙草一服空見上ぐ本気のめんそ

  • 短夜や農夫の顔の黒光り本間美知子

  • 短夜や止まぬ踊りに解かぬ指舞矢愛

  • 遠ざかる路地の口笛沁む短夜前田冬水

  • 読み終えてサイレン消えて短夜かな正男が四季

  • 短夜や五十グラムのトミカ愛正岡田治

  • 短夜やなんやかんやで飲みに行こ雅蔵

  • 短夜や遠くなりゆく妻の腕眞さ野

  • 短夜に泳ぐ光をPOSTする増山銀桜

  • 短夜が逢瀬の刻を甘くする町家の日々輝

  • 短夜のラジオ朗読耳に置く松井くろ

  • 短夜や宴の後の缶並び松井酔呆

  • 短夜や寝そびれて聴く鳥の声松井貴代

  • 短夜かな深夜ドラマで朝来る松井英雄

  • 明け易し豆金柑の芽を愛づる   松岡重子

  • 短夜や胡蝶の夢の覚めやらず松岡玲子

  • 湖凪ぎて煌めく朝日明易し松尾祇敲

  • 短夜の夢引っ張りて八十路こえ松尾美郷

  • 短夜に亡き妻語る声を聞く松尾老圃

  • 探偵の不法侵入明易し松坂コウ

  • 短夜や読まずじまいを並べ替え松沢ふじ

  • 短夜や父と母だけ眼裏に松平武史

  • 短夜や枕新たに誕生日松田寛生

  • 短夜や次第に変へて空の色まつとしきかわ

  • 短夜やすうっと出てゆく夫の船松永好子

  • 短夜や会社仲間と三次会松野蘭

  • 短夜や雨戸一枚閉め忘る松本厚史

  • 短夜や始発電車の疲れ顔松本俊彦

  • 短夜のためいき虚ろ待ちぼうけ松本牧子

  • 短夜や夫が玄関開ける音松山のとまと

  • 短夜を知らぬ外灯錆照らす的場白梛

  • 短夜を妻は出張ひとり飯真宮マミ

  • 短夜や昔語りに写真添え豆福樹子

  • 短夜や母の寝息とラヂオ聴くまやみこ恭

  • 熱湯を満たして短夜待つ三分黛素らん

  • 短夜や明日の目覚めを信じつつ真理庵

  • 絹衣掛けて短夜ひと眠り丸山佳子

  • 仮眠なき小児救急明早し澪那本気子

  • 物想ふ短夜寝息の煩わしみかん成人

  • 句を得たる夢の続きや明け易し神酒猫

  • 短夜や寝てくれぬ母焦る吾三茶F

  • 短夜や荷造りしつつ語る友水差しポット

  • 短夜や目覚まし前の烏のカーMR.KIKYO

  • 短夜の長さ短かさ楽しめり三田忠彦

  • 短夜のあける鶏舎の喧しさみちむらまりな

  • 短夜や池一面のサガリバナ美津うつわ

  • 短夜や白き法被の紺の紋満生あをね

  • 短夜や葵の上に思い馳せ光月野うさぎ

  • 短夜や終わりなき旅軌道船美月舞桜

  • 短夜の天空を割くTAO太鼓ミツの会

  • 短夜にバジル伸びつつ香りゐるみつれしづく

  • 短夜に夢二本立て明ける空緑区のへこ

  • 短夜の元気ハツラツ草野球ミナガワトモヒロ

  • 短夜や話し足りない同窓会湊かずゆき

  • 短夜の渇欲ジョジョの石仮面   漫画…みのけんた

  • 短夜や明日の糊代淡きもの三群梛乃

  • 短夜や灯り要らずの朝支度見屋桜花

  • 短夜や宙へ誘なう物語みやかわけい子

  • 短夜やあこのひたいに手をあたる宮城海月

  • 床に寝て博物館の明易しみやざき白水

  • 短夜に拭えぬ二里の疲れかな宮下ぼしゅん

  • 短夜やホテルのドアの音重き宮武濱女

  • 嫁ぐ娘と話せば尽きぬ短夜や美山つぐみ

  • 短夜に白むまで読む物語深山柚仁

  • 短夜を彷徨うか単騎バイク音宮村寿摩子

  • 短夜の手のぬくもりを忘るまじ夢雨似夜

  • 短夜や裏鉄の音の遠ざかるムーンさだこ

  • 短夜や延長足らぬ貸出し本武小川寿歩

  • 短夜やまぶたを透かす薄明かり霧想衿

  • 短夜やコントロールのきかぬ夢睦月くらげ

  • 明早しちょっとお掃除しちゃおうか村先ときの介

  • 短夜や薬草うかべ癒し風呂恵美笑

  • 短夜をからから駆けるハムスターめりっさ

  • 短夜恋う募る想いよ星ららら樅山楓

  • 短夜や「枕草子」めくる指百瀬つきか

  • 短夜や施設の父と長電話森上はな

  • 短夜や老いたる織江いかに生く森佳月

  • 短夜や心不全の吾つま寝顔森嶋ししく

  • 食後のチャイ短夜をぴりり甘く森中ことり

  • 短夜や殺人犯は意外にも森日美香

  • 短夜の恨めしきほどの欠伸かな森茉那

  • 「いいね」押し「いいね」押されて夜のつまるもりやま博士

  • 短夜や親子丼なり鮭いくら八木実

  • 短夜や柏手響く神社かな矢車草

  • ひと差し指短夜をスクロールする弥栄弐庫

  • 短夜のミシンの音の速きかな矢澤かなえ

  • 短夜や右目忘れるアイシャドウ矢澤瞳杏

  • 短夜や猫は漁港へ歩き出し野州てんまり

  • 短夜に陽残香注ぐ茶づけかな安元進太郎

  • 短夜の遮光カーテンほの青し痩女

  • まどろみに短夜の鶏情けなし八手薫

  • 短夜やぐずる子を抱きベランダへ柳井るい

  • 短夜を遊び横寝の針鼠簗瀬美嘉

  • あれこれと心めぐらす短夜かな山内泉

  • 短夜にもれ聞こえ来るカノンかな山内文野

  • 短夜に猛るカラスも仔を撫でて山内悠生

  • 短夜の点滴僅かボタン押す山尾政弘

  • 短夜や変わらぬ時の片隅に山川充

  • 短夜を寝ずのごとくに鷺立てり山口絢子

  • 短夜や夢の厨に母の居て山口一青

  • 短夜や賛成もせず反対も山口雀昭

  • 短夜や床つく吾子と戯れし山口笑骨

  • 短夜や沖に幽かな船灯り山崎かよ

  • 輝かし曜変天目短夜に山下弥生

  • 短夜や枕に頁捲る音やまだ童子

  • 短夜や元コンビニの駐車場山田はち

  • 短夜や子の背草木の如く伸び山田はつみ

  • 金つぎの光りうすまり明易し山田蚯蚓

  • 短夜やためらい破って三杯目大和杜

  • 短夜や歌い尽くした子守唄やまな未

  • あの本をポチるか否か短夜に山野花子

  • 短夜や肴は想い出独り酔うやまもとのり。

  • 短夜に躊躇う酒や右左山本八

  • 短夜は侘し言う父の過ぎし日々山本葉舟

  • 終われない韓国ドラマ明け易し山本蓮子

  • 短夜やバスのカーテン越しに海山姥和

  • 短夜を仮眠たゆたふ仮死のごと柚木みゆき

  • 短夜に戸を開け鳴く鹿追いはらう夕映水面丸

  • それぞれに会うて別るる短夜かな柚子こしょう

  • 短夜や老の眠りに鳥の声柚木啓

  • 寝苦しや闇に寝返り明け易し宙美

  • 短夜に弾く指先愛し日々   愛しき?夢一成

  • 短夜や朝刊照らす常夜灯夢散人

  • 不夜城の夜明烏よ明易しユリノイロ

  • 短夜を囲むベツドや祖母の息陽光樹

  • 短夜の光きらりと流るる髪  夜香

  • 短夜も明けず続くか吾子の熱横井あらか

  • 短夜の子のさりさりと首を掻く横縞

  • 短夜や君と電車に夢で乗り横田信一

  • 堰き止めよ漆黒の宙短夜は横浜順風

  • 短夜やYEBISUビールのYの泡横浜J子

  • 短夜や二つのグラス空かぬまま横辺理

  • 短夜や止まった町に陽が昇るよしぎわへい

  • 短夜やタイマー切れて目が覚める吉田かのこ

  • 明易や巡礼出ずる鈴の音吉田春代

  • 短夜やみじかき夢に君を見る吉富孝則

  • 短夜や猫と映画を見る眼四つ吉成小骨

  • 短夜に合う曲選ぶ夜行バス吉藤愛里子

  • 短夜に付かぬ既読を確認すよしみち

  • 短夜や寝る夜のあらず宵つ張りYoshimin空

  • 短夜や俗事の話し僧といてよぶこどり

  • 短夜や延々つづく針の音よみ、ちとせ

  • 短夜にはじける笑顔罪の味食う4色ボールペン

  • 短夜や階下の義母の鼾止む楽和音

  • 短夜や過去しか知らぬ魂よリーガル海苔助

  • 短夜の茶事や銅鑼打つ窓に風六星菴

  • 動脈の硬さだけ知る短夜は流流

  • 短夜や友と終活談議なりルージュ

  • 短夜や妻亡く惑う茶碗酒麗詩

  • 短夜に歌詞心刺す羊文学   連雀

  • 短夜の朝目覚めれば猫の顔わかなけん

  • 短夜の息子待ちつつ船を漕ぎわきのっぽ

  • 短夜やこっそり去りし君が部屋海神瑠珂

  • 短夜に捨てた座椅子をまた拾いわたなべいびぃ

  • 短夜の更けゆく音に閉じる本わたなべすずしろ

  • 閉ぢし目の天窓白く明易し渡邉花

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●表記

  • 短夜 長い夜より 好きかもしれない匿名希望
  • 短夜に 十二時過ぎの 三角関数ギザギザ仮面

 五七五の間を空けないで、一行に縦書きにするのが、俳句の正しい表記です。ネット選句欄の横書きは、泣く泣く許容しております。


●兼題なし

  • 灯り夜に濡れ身を寄せて梅雨の月緑山ハル

 本選句欄は、毎回季語が出題されています。兼題を確認して、再度挑戦してくださいね。


●季重なり

  • 涼風も刹那に流れ短夜や会田美嗣
  • 短夜の暑さ凌ぎて明くる朝家古谷硯翠
  • 短夜に浴衣とラムネ風涼み桜餅愛好家
  • 短夜開け涼しきうちに田畑行き野崎文明
  • 短夜やトマト丸ごと頬張りて竹内一風
  • 短夜やラジオの声と虫の声焼津昌彦庵
  • 朝顔の開花目覚まし短夜だなしげ3

「季重なり」は、やってはいけないタブーではありませんが、ウルトラ技です。まずは、一句一季語からコツコツ練習していきましょう。


  • 短夜や天地伝ふ鹿児のこゑ匹田小春花

 この「鹿児」は、地名なのでしょうか、鹿の仔ならば、季重なりということにはなります。


●切字の重なり

  • 短夜や小便したる寝言かな藤川雅子
  • 短夜や起きて冷たい寝間着かなみかりん65号

「や」「かな」「けり」などの切字が、一句に複数入ると、感動の焦点がブレてしまいます。どちらかの切字を外して、整えなおしてみましょう。


●今ひとつ意図が……

  • 短夜や卒寿の祖父に先二つ来ヶ谷雪

 下五「先二つ」がどういう意味なのか、解釈を悩みました。


  • 短夜やツとシに泣いて父の来る堀川絵奈

 小学生の書き取りの練習でしょうか。だと仮定した時、「短夜」という季語でよいのかどうか。短夜とはいえ、一晩中カタカナの練習をしている?


  • 短夜や針のなずらふ溝を音無弦奏

 動詞は「なずらふ」(準じる、真似る)で良いのでしょうか? もしや「撫づ」の意味でしょうか?


●今回の選外について

 今回の兼題「短夜」はそもそも「夜」ですから、「短夜」という夜の状況を詠んでいるにもかかわらず、夕暮れや朝の時間が混在しているのは、基本的に無理があります。(句の内容や状況によって許容できるものもあります)
 更に、「短き夜」という使い方も、五音にしたいがための苦肉の策かと。
 もう一つ気になったのは、下五を「短夜や」とおさめた句がかなりあったことです。ダメというわけではないのですが、バランスかが取りにくい型なので、かなりの確率で失敗します。
 内容に見合った型や調べを工夫する。この一点は常に肝に銘じておきましょう。

 毎回のことではありますが、誤字脱字・変換ミス等の句が、目につきます。送信ボタンを押す前に、再度見直すことも習慣づけましょう。

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9月の兼題

「石榴」

過去の審査結果

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