夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
4月の審査結果発表
兼題「蛙」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
蛙鳴く脱皮しさうな月の色
古田秀
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夏井いつき先生より
「蛙」といえば夜の鳴き声を思いますので、「月」と取り合わせられることも多いのです。正岡子規にも「蛙鳴く頃しも小田の月夜かな」などがあります。本来「月」は秋の季語ですが、「蛙」と共に描かれる月は、春の朧な月となります。湿度を含んだ春の闇に浮かぶ月です。「脱皮しさうな」というのですから、ぬめぬめと濡れたような感じかもしれません。「蛙」が鳴く頃なんだよな、こんな月がでるのは……と見上げる月。夜の田水や池の中には、蝌蚪の紐がぬめぬめと沈んでいます。一句は「脱皮しさうな月の色」と見上げる視線で終わりますが、読み終わったとたん、地を覆う闇の底から「蛙」の声が再びわき上がってくる。そんな構造の作品です。
泥蛙へ水垂らしてやる鳴かぬ
としなり
全部足すと十七音になる破調の句。「泥蛙」とは文字通り泥の中にいる蛙。目まで泥に汚れているのかもしれません。「水垂らしてやる」は慈しみか、ただの好奇心か。「鳴かぬ」と言い切って終わるのが、俳人的胆力の表現です。
洗ひ場の手拭硬し蛙飛ぶ
トマト使いめりるりら
神社や寺の手水か、野外の手洗い場か。共用として吊している「手拭」が乾いてごわごわしているのでしょう。「硬し」と言い切ることで、その触感がストレートに伝わってきます。最後に「蛙飛ぶ」と動きを配したのも巧い展開。
蛙鳴く駅のベンチに引出物
トポル
良い意味でのアルアル感、思わず笑ってしまいました。「蛙鳴く」夜の「駅のベンチ」です。下五「引出物」の一語で、忘れていった人物の礼服姿、ほろ酔いの足取り等がありありと見えてきます。「蛙」の声もゲラゲラ笑ってます。
吊るされて喪服つれなし夕蛙
RUSTY
通夜、葬式、初七日と続く一連の葬儀。脱いで「吊されて」いる「喪服」に対して呟く「つれなし」の一語の切なさ。よそよそしく平然とそこに吊されている「喪服」を恨んでも詮無いことだと、「夕蛙」も切々と鳴いているのです。
新橋の雨はひし形夜蛙
宮本象三
「新橋」はビジネス街でもありますが、新橋演舞場や新橋芸者の印象も色濃い地名です。「新橋の雨はひし形」は、実際のカタチというよりは、粋な図柄を思わせる比喩。「夜蛙」の声に交じり三味の音もしてきそうな春雨の夜です。
月痩せて蛙の産みの漲りよ古田秀
雄蛙脚へこへこと昼の水古田秀
干からびぬ場所まで蛙手の中にふるてい
当直医遥かに遠蛙の畦をふるてい
蛙鳴く夜は内臓のごと湿るほろろ。
蛙鳴くさびしき水に遇ひにけりほろろ。
かはづこはるこはるほらそらがこはるぐでたまご
いくじなしいくじなし蛙うるさいぐでたまご
夕蛙納戸は錆の臭ふ基地古瀬まさあき
本栖湖に雨後のうはずみ初蛙古瀬まさあき
夕蛙合わぬ貸借対照表城内幸江
駄菓子屋の奥は真つ暗夕蛙城内幸江
蛙放るや真昼の神隠し常幸龍BCAD
うどん屋の窓に蛙のうらがわ常幸龍BCAD
こども靴洗うシャボンや遠蛙丹波らる
はち切れる寸前で縮む頬蛙丹波らる
知らぬ間に子の口濡れて蛙鳴く内藤羊皐
蛙鳴く工期遅れの貯水槽 内藤羊皐
蛙鳴く水より重きクロロホルム南風の記憶
病棟のソファはざらつく遠蛙南風の記憶
だれも来ないふとん屋にゐて遠蛙いかちゃん
昼蛙床屋でもろた謎の飴いかちゃん
みづ分けて蛙の足のやはらかき平本魚水
耳下腺が硬い蛙を潰したい平本魚水
ふにやくにやとじとりと手の中の蛙あまぶー
尾の残る蛙太古のにほひありあまぶー
蛙鳴く故郷の闇は怖かつたいさな歌鈴
鳴嚢に星を生まんと蛙鳴くいさな歌鈴
泳ぐとき前足小さき蛙かないなだはまち
土蛙餌食搦むる舌一閃いなだはまち
引っ越しの荷を解き残し夕蛙カオス
夕蛙吾の孤独もそれなりにカオス
星空に臍をさがして蛙鳴くかしくらゆう
青汁の苦さひときわ初蛙かしくらゆう
疫禍なり蛙何故鳴く 何故鳴くかねつき走流
夜蛙や村営バスのきっかり来かねつき走流
星消えるたびに蛙は哭くのですぐ
故郷を忌むや蛙の闇にゐてぐ
蛙鳴く誰も居なくなった地球けーい〇
田園を壊さぬように蛙鳴くけーい〇
生臭き声ぎゅんぎゅんと朝蛙じゃすみん
ティッシュにつまむ蛙ぴくりと生臭きじゃすみん
夕蛙一番星を吐き出したシュリ
周波数割当変わる土蛙シュリ
お納戸に金継ぎの茶器遠蛙すがりとおる
傾きゐるクルスの墓や夕蛙すがりとおる
とほかはづ半分昏い水の星すりいぴい
ないはずのかはづのしつぽよく笑ふすりいぴい
散髪の鋏走らす遠蛙そうり
手に乗せて蛙の皮膚の剥がせそうそうり
山際の夕日もたもた初蛙ちゃうりん
黄金色の夢へ蛙の午睡かなちゃうりん
ぱちくりと水がまばたきして蛙とかき星
金星のにほひ蛙のなくにほひとかき星
来し道がそのまま帰路か夕蛙とりこ
バターは売り切れ蛙はうるさいよとりこ
今生は蛙で君に逢いにきたはなあかり
古紙くくる紐ゆるゆると夕蛙はなあかり
痩せ蛙水輪の央に浮いてきたひでやん
妹はかはゆしと言ふ蛙かなひでやん
冗談のやうな献立夕蛙ほしの有紀
太陽はふざけた匂い昼蛙ほしの有紀
エンストの中古ワーゲン遠蛙ぼたんのむら
太宰なら死にたくなるさ夕蛙ぼたんのむら
蛙鳴く朝が迷わず来れるやうまんぷく
仏飯にけふも艶あり夕蛙まんぷく
賄いはいつもチャーハン夕蛙みやこまる
現役の硬券のおと遠蛙みやこまる
遠蛙一人暮らしは三年目みやこわすれ
金星の揺れてほどけて夕蛙みやこわすれ
よその子に生まれたかつた遠蛙葵新吾
南中や水へろへろと蛙田へ葵新吾
夕蛙古墳の下は瀬戸内海葦たかし
履歴書を書き損じたり昼蛙葦たかし
ぴかぴかの殺意園児の蛙踏む安宅麻由子
この蛙腑分するには目が清い安宅麻由子
合宿の留守の息子の蛙かな伊藤興味
ベランダの逃がす蛙や脚温し伊藤興味
蛙鳴く一里先までオレの土地伊予吟会宵嵐
蛙鳴くさほど会ひたき人も無く伊予吟会宵嵐
残像は秘色なり蛙の着地一斤染乃
蛙鳴く闇に記憶の出入口一斤染乃
ホカ弁の袋ぶらぶら昼蛙浦文乃
蛙鳴く家にエコバッグ忘れた浦文乃
愛し合ふ蛙と蛙濡れそぼち横浜J子
ぺったりと冷やっと墓石に蛙横浜J子
話しかけられたるやうに蛙止む可笑式
休業の貼り紙に誤字昼蛙可笑式
初蛙一汁一菜たすプリン花南天
遠蛙流行りの唄はうたへない花南天
後ろ脚少しもつれて初蛙閑々鶏
蛙の死漂っている水に空(くう)に閑々鶏
潰したき衝動のあり手に蛙亀山酔田
首の骨軋んで目覚む朝蛙亀山酔田
噛みさうもない蛙噛みさうもない蟻馬次朗
あけすけな空だ蛙に戻らうか蟻馬次朗
月の裏見た吾蛙として生きる吉行直人
鼻先に蛙あきらかに毒の色吉行直人
ふるさとの洗はれゆくや遠蛙久我恒子
背中とは淋しき荷物昼蛙久我恒子
夜蛙やぢきに父さん迎へに来宮武濱女
夕蛙十人分のカレーかな宮武濱女
夕蛙は一点透視図法で鳴く玉木たまね
殿様蛙さわれなくなったのはいつ?玉木たまね
初蛙出汁の塩梅こんなもん桑島幹
初蛙月影の少し動きぬ桑島幹
畦行く子てんでに跨ぐ蛙かな戸部紅屑
知恵の輪は解けぬ蛙は押合ひぬ戸部紅屑
同じ道歩いてないか夕蛙高橋寅次
芳醇な泥水を言祝ぐ蛙高橋寅次
夜蛙や儲け話がひとつある高橋無垢
父といる夜の甘さよ遠蛙高橋無垢
遠蛙離合電車の来ぬ市駅高尾里甫
遠蛙幽けき渋谷貯留槽高尾里甫
まぼろしの火星のうみよ遠蛙今野淳風
天空に蛙の響きみづの星今野淳風
息絶へた蛙のまなこ黒目がち今野浮儚
制服の子に弱音あり初蛙今野浮儚
てのひらにひんやりと照り昼蛙佐藤儒艮
ぬばたまのかはづの息の匂ふ闇佐藤儒艮
ウイルスの街のっそりと昼蛙砂舟
昼蛙使う当て無き余生有り砂舟
コンビニのあかり蛙の声ばかり彩楓(さいふう)
夕蛙手首まで手を洗ひたり彩楓(さいふう)
と、言うて焦るでもなし蛙の前山田喜則
ホースもてホースを洗ふ夕蛙山田喜則
先生哭きじゃくる祈りめく蛙七瀬ゆきこ
しあわせな蛙しあわせさうな蛙七瀬ゆきこ
ゴミ出しの序でに散歩初蛙寿松
豆腐切る包丁重し夕蛙寿松
玄関に蛙ネクタイ似合いそう潤目の鰯
蛙の声吸うてフレコンバック巨大潤目の鰯
親方と星と一服遠蛙小山晃
連弾の小さき手跳ねる夕蛙小山晃
遠蛙息子四十の恋終はる小池令香
畦蛙呪文をかける吾子ふたり小池令香
首都高に月が昇るよ初蛙松本裕子
啼く蛙ポストに湿った新聞松本裕子
遠蛙簿記三級の問題集上原淳子
蛙居て蛙轢かれて登校日上原淳子
フィヨルドの如き谷戸道夕蛙星埜黴円
酒瓶の転がる下宿遠蛙星埜黴円
朝蛙鋸ひく腕ののびちぢみ石井一草
この星はみどり蛙鳴く蛙鳴く石井一草
二回目の自慰を終えたり遠蛙赤馬福助
遠蛙ぼくの死体を吊るす山赤馬福助
遠蛙ほのかに甘き切手裏雪華きなこ
夕蛙初給料で買ひし肉雪華きなこ
蛙鳴きそむる淫夢のをはりぎは倉木はじめ
潰れたる蛙に小さき骨の見ゆ倉木はじめ
昼蛙ますますぬるき独り酒足立智美
我が破婚げらげら笑ってよ蛙足立智美
夜蛙や新居の床の硬きこと多々良海月
夜蛙のぐいぐい月を押しやらむ多々良海月
二度寝して夕日てらてら赤蛙大西蜜柑
切り抜きを握り床屋へ昼蛙大西蜜柑
助手席に左遷の荷物蛙鳴く大和田美信
蛙鳴く闇が喰はれてゆくやうに大和田美信
缶蹴りの皆はかくれて夕蛙田村利平
蛙鳴き予定の歩数にて帰る田村利平
さみどりや蛙は持たぬあばら骨中岡秀次
この池を乾坤として蛙鳴く中岡秀次
夕蛙鈴鹿山脈けふも晴宙のふう
昼蛙バスリコーダーのF(ファ)が出ない宙のふう
考える蛙の顔やソクラテス椎名貴之
遠蛙片手で片手温める椎名貴之
土蛙媼操るトラクター辻が花
蛙鳴く交尾の終始見てしまふ辻が花
蛙の夜俄かに動くおもちゃ箱天陽ゆう
夕飯のきんぴら匂う遠蛙天陽ゆう
どこまでが病どこまでが夜蛙土井探花
文字の無い国のしあはせ夕蛙土井探花
しまい湯はぬるし蛙のこゑころろ藤色葉菜
天窓に筋肉豊かなる蛙藤色葉菜
遠蛙黒髪のまま逝く母よ藤田ゆきまち
夕蛙いつからぼくは大人かな藤田ゆきまち
夜蛙衛兵の間を通りけり南方日午
仰臥の蛙 通勤は輪転する南方日午
湿りをる熱気交みをる蛙播磨陽子
虹彩の爛々蛙交みをる播磨陽子
殺意の呪あとは蛙の目を一つ白よだか
君もまた蛙の僕を殺すのか白よだか
宿題の終はらぬ夜や遠蛙八幡風花
午前二時寺の客間の遠蛙八幡風花
不揃ひな千人針や夕蛙板柿せっか
遠蛙やはらかすぎる子の枕板柿せっか
オルガンの原理を知つてゐる蛙比々き
あの葉まで蛙の舌の射程距離比々き
花屑にまみれ蛙の目ぱつちり樋口滑瓢
赤んぼに芽吹くちんぽこ初蛙樋口滑瓢
赤蛙年少組に囲まれる風慈音
土蛙年長組に嫌われる風慈音
蛙鳴く男二人の艶話福井三水低
だるまさんがころんだ鳴き出す蛙福井三水低
夕蛙水の瞼を閉じて闇福良ちどり
蛙の夜人は恐怖で進化せり福良ちどり
蛙鳴く洗濯板を返すたび碧西里
遠蛙ラテにゆっくり沈む砂糖碧西里
かはづ入る水面に凹みなかりけり北村崇雄
手の甲で探るポツトの熱かはづ北村崇雄
蛙鳴く再配達の電話鳴る北藤詩旦
夜空よりうるほひ借りし鳴く蛙北藤詩旦
人集ひ出したる仏間遠蛙北野きのこ
早退きや蛙の背の凹と凸北野きのこ
でこぼこのあまい皮膚もつ蛙かな睦月
声となる光の記憶初蛙睦月
筮竹が鳴りて蛙の目の微動木江
夜気ぬるく蛙の喉をふくらます木江
キュッと断つ夜中のシャワー遠蛙野地垂木
胎膜にくるまる地球蛙の眼野地垂木
蛙とぶ地球ひそかに軽き夜鈴木由紀子
夕蛙ミシンの糸のまた切れて鈴木由紀子
すべてが跳ねる蛙とはかぎらない朶美子
からつぽのキリストの墓かわず鳴く朶美子
甲斐甲斐と寂しき国ぞ初蛙茫々
うるむ夜を蛙は青き天へ鳴く茫々
御仏の足先蛙畏まる邯鄲
初めての通学定期遠蛙邯鄲
臍の緒のくすぐつたきに蛙跳ぶとしなり
蛙聞くだけの世界遺産であるトマト使いめりるりら
灯の洩れる病棟黒し蛙鳴くトポル
遠かはず神の系図のごちやごちやとRUSTY
裏の田のばあちゃん死んだ蛙鳴く宮本象三
遠蛙フレデイの本読み聞かすおひい
読み聞かせする父が寝て遠蛙かつたろー。
王となるのはアルビノの蛙かな⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
闇にあり焔のごとく鳴く蛙Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
お薬師の水たゆたひて遠蛙M.李子
嘘つきて蛙の声になりにけりmomo
百回の素振り終えるや遠蛙Q&A
緊急指令蛙を踏まず下校せよあいだほ
夜蛙や寝ころべば空落ちてきさうあきのひなた
夕蛙鼓のように鍋打てばあさふろ
軒下の蛙三十路のひとり飯あざみ
飲み屋へは寄らぬぞ蛙が鳴くからなあたなごっち
クリークは茶色の波紋夕蛙あまぐり
水うまし日に日に蛙膨張すいづみのあ
冷んやりと目覚める蛙月細くいろどり
星浴びて蛙の皮膚の濡れ易きうさぎまんじゅう
遠蛙湖は夜空の続きかなうさぎまんじゅう
遠蛙合コン後のカップ麺えちごひめ実
こみ上ぐるもの蛙にもあるらしやえんどう晩生
雲梯に禁止のテープ昼蛙おおい芙美子
病室の窓に蛙の見舞いありかもめ
雨粒を撫でて占う蛙かなかわいなおき
帰宅して田蛙のうた闇降りるカワムラ
蛙鳴く降り止むまでは帰れないきなこもち
品書きに「オススメ」ばかり鳴く蛙くま鶉
夕蛙対局終わり食べる飯くるみデニッシュ
遠蛙膝を抱えて眠る夜ケンG
水たまへとんでとびこむかわずとんこなつ
オランダの涙割つたか遠蛙サイコロピエロ
遠蛙忘れっちまった望郷ださいとう若菜
遠蛙そんなもんにも泣ける夜さこ
昼蛙カレーライスは6:4さとけん
花びらのごとく冷たき蛙かなしぼりはf22
山の香を運ぶ水路や初蛙シュルツ
古墳まで碁盤の畦の夕蛙ジョビジョバ
小はぜ解き弛みゆく指や夕蛙すぴか
生田の森巫女と歩くや夕蛙スローライフ
天水受く廃都小さきや蛙鳴く せり坊
片栗粉解かすいとまの夕蛙セントポーリア
つれなくも眠き子に鳴く蛙かなそうま純香
目覚ましの珈琲苦し初蛙たむらせつこ
危ふいと栂尾登る蛙かなつたこ
ヲルガンの猫ふんじゃった飛ぶ蛙ツユマメ末っ子@8歳
蛙鳴く千の羅漢のつぶやきぞときめき人
母はまだ鍬持ちゐるか遠蛙としまる
掌にくるむ蛙ひやひやこそばゆさなごやいろり
ひとりしか入れぬ柩遠蛙にゃん
夜蛙や書かねば済まぬ手紙ありねぎみそ
二日分の肉じゃがも煮え夕蛙ハルノ花柊
遠蛙ひとり微熱の続く夜ひなたか小春
妹の嫁いだ家や遠蛙ひろの
蒼天や蛙に今なるところですふくろう悠々
赤坂の坂登りゆく夕蛙べびぽん
部屋ごとに老眼鏡や昼蛙みちむらまりな
母からの長き手紙や遠蛙みやかわけい子
上階の足音ととと夕蛙めめりん
水の香を手繰りて蛙この庭にもつこ
川口の鋳物臭吸ふ夜の蛙ヤヒロ
替え歌の残酷なりし夕蛙よしざね弓
移住者の2トントラック夕蛙ラーラ
山頂にひとつ星あり夕蛙るりぼうし
ひとさまに腰を揉まれて昼蛙ゐるす
裏庭で吸う一服や遠蛙一太郎ラン坊
干からびし蛙飛び越す蛙かな宇田建
千億の地層に蛙一休み遠藤百合
初めての夫の実家遠蛙黄桜かづ奴
蛙なくアネモネ色の日が暮れる岡れいこ
この村にそぐわぬスーツゐて蛙佳山
夜蛙や弔問客の足袋白し夏雨ちや
蛙には聴くということなかりけり火炎猿
底ごもる蛙どよみて闇の濃く花岡淑子
ゆめわらはれゆめやぶれまた夜の蛙花屋英利
かあさんはむかえに来ない夕蛙花伝
お薦めは樋屋奇應丸夜蛙花紋
ハイネケンの瓶艶やかに蛙鳴く海老名吟
世田谷は湧水ゆたか遠蛙馨子
遠蛙とんぷく手元に朝を待つ蛙里
泣けぬ日もあるさ蛙は鳴き続け樫の木
蛙鳴くひざっこぞうの絆創膏干しのいも子
昼の酒残りて暮れて遠蛙輝久
夜蛙目の中にあり金の星亀田勝則
雨を待つ卑弥呼のやうな蛙の目菊池風峰
手の中の蛙の指ぞこそばゆき宮坂暢介
睨みしか固まりゐしか昼蛙宮部里美
遠蛙落つる輸液を数えをり空龍
遠蛙ないてやさしくなれるかな薫夏
払いても払いてもなお遠蛙薫子(におこ)
土よりも少し温くて昼蛙畦のすみれ
いさかいを知るはずもなき蛙かな源氏物語
手に残る肥料の重み夕蛙古都鈴
蛙には愁い百あり胸の湖戸海倫
うしろに蛙ゐて溺れた事あり高橋なつ
籠小さし殿様蛙入れるには高田祥聖
求婚の五匹引き摺る雌蛙克巳@夜のサングラス
地より湧き山に吸わるる遠蛙今井淑子
指先に涙の粒を蛙かな斎藤数
県境を越える一歩や蛙鳴く斎乃雪
夕蛙消えて波紋の来るしじま榊昭広
山蛙啼いて捨て田は日の暮るる咲弥あさ奏
蛙刺し幼き恋のをはりけり笹川酔進
手のひらの蛙の肌の半乾き三浦真奈美
上出来のきんぴらごぼう夕蛙三茶F
生真面目な目ん玉よろし初蛙三泊みなと
夕蛙背なぬらぬらと鳴いてをり山科美穂
眼球を舐めて雲見の蛙かな山踏青時雨@山踏朝朗改め
夜の棘を慰めている蛙かな山内彩月
遠蛙ナースコールの二秒前山本先生
遠かはづ帳簿が合はぬ金足らぬ山名凌霄
蛙鳴き立ち止まること許さるる次郎の飼い主
夜蛙赤本枕にして眠る芝野麦茶
ふやけゆく干椎茸や夕蛙紗千子
病む人の二階の窓に夕蛙蛇井めたる
遠蛙古き手紙のよく燃えて若井柳児
蛙の夜吾は肉まんを解凍し主藤充子
遠蛙闇を拾ひて鳴いてをり秋夕介
夜蛙や脛のムダ毛を剃りあげて秋さやか
如意輪寺静寂閑雅初蛙秋吉孝治
おもひのほか吾と気の合ふ初蛙勝野綾子
初蛙太極拳に集ふ朝小鞠
日の沈む音かき消して蛙かな小川めぐる
手洟かむ山師の足元から蛙小川天鵲
夕蛙鳴き旧り今日はカレーの日小川野棕櫚
「ぐりとぐら」のカステラの香や夕蛙小倉あんこ
悪しき夢蛙にげこと投げらるる小田龍聖
遠蛙遮り露天湯をかぶる小田和子
倒木の交差せる谷戸遠蛙小嶋芦舟
歌と句の入賞通知昼蛙小林陸人
蛙鳴き止む徘徊の赤い靴松井くろ
蛙来て遊んでもらう母の留守松山のとまと
三日月に添う金星や遠蛙松尾義弘
蛙持つ兄とつかずはなれず行く焼田美智世
蛙鳴く日暮れ塾まで遠回り城ヶ崎由岐子
滑り台は喇叭のかたち夕蛙色葉二穂
歌舞伎町の蛙は夜のドブに鳴く森山博士
夕蛙車にもたれJAFを待つ真宮マミ
合宿の夕餉たっぷり遠蛙真繍
こあこあと蛙案内(あない)や友の墓杉本果蓏
留結ぶおめんの紐や夜蛙世良日守
野球部部室にゐるいつもの蛙清島久門
ハイウェイの下は畔道蛙鳴く清白真冬
古紙工場の塀ふつと切れ初蛙西川由野
凱風にも蛙の眼揺らぎたり青田奈央
雨降るや潤む蛙の背に蛙石井茶爺
手に伝ふほどよき湿り初蛙石原由女
透明な蛙の赤き心の臓石崎京子
蛙鳴く留守居の離れ寝返りす千葉睦女
蛙蹴る水輪模様や空揺れて素敵な晃くん
夜歩く風は蛙の温さかな蒼空蒼子
ネオン色の水面へ蛙身を落とす蒼奏
よくしゃべるカフェーの店主昼蛙蒼鳩薫
手に残る後肢の力蛙消ゆ霜月詩扇
メーターは居留守の速さ昼蛙多事
青畳の頬に柔らか昼蛙大小田忍
影引いて一日の終わり遠蛙大槻正敏
水牛の渡る川野辺昼蛙大庭慈温
暗きより一閃冥きへと蛙滝川橋
煮直しの饂飩啜りて昼蛙沢拓庵
苦も楽もなく籠る日蛙ぬるい知念帆意
古沼の主のおんなや大蛙池之端モルト
貼替えしハザードマップ初蛙竹口ゆうこ
水掻きを確かめている蛙かな竹内みんて
遠蛙ロックダウンの巴里は雨中原久遠
夜になりて縫ふ雑巾や遠蛙中西柚子
くすぐったい父の墓石に蛙住む長谷島弘安
割れたさな板五右衛門風呂の昼蛙天野姫城
洗車機の流すほとぼり夕蛙斗三木童
常夜灯鈍く映して赤蛙杜まお実
蛙になる比良山の水の溜り渡辺みちこ
土砂降りの大路を蛙渡りけり渡辺冬生
蛙鳴く眼に金星を宿しつつ渡邉一輝
寺の夜の廊下つめたし蛙鳴く渡邉久晃
初蛙妻と散歩の一万歩渡邉竹庵
今日もまた既読にならず夕蛙都乃あざみ
美しや水掻く蛙の大腿筋土屋雅修
空飛ぶ蛙幻想の未来都市土田耕平
雨の日の蛙 油撒くように轢かれ冬のおこじょ
喉仏なき喉鳴らす蛙かな嶋田奈緒
夜蛙鳴かせてをきて寝るとする藤田康子
雨上がり陽を浴びてプリズムの蛙徳田ヨーコ
いたづらには正坐まどにはかはづ独星
庭に棲むる大き蛙に男の名奈良素数
蛙鳴く床一面に採譜メモ内田英樹
新潟県立蛙管弦楽団や凪太
目覚ましをかけない朝の遠蛙楢山孝明
引力に従いながら飛ぶ蛙入江幸子
喪服干す広き座敷や遠蛙梅木若葉
手の中を暴れる蛙放つ夕白雨
夕蛙遊びつくしたランドセル飯村祐知子
訃報来て夜の底から鳴く蛙樋熊広美
蛙の目低き機影は羽田へと琵琶京子
宅配のレタスから出る蛙かな菱田芋天
この星の水を命に蛙かな百合乃
なかなかに長き舌なり土蛙百瀬結花
夕蛙ぞろり交通安全旗蛭本喜久枝
昼蛙コンビニ閉店のうわさ富山の露玉
行き逢えるまでは気付かず夕蛙富雄
湿原の蛙の涙は青いのか風花まゆみ
シグナルは車窓に消えて遠蛙風泉
本堂の如来坐禅の蛙かな文月さな女
こっそりと田を裏返す初蛙牧野敏信
予報士のような顔した蛙かな抹香
昔むかし貴方が蛙だった頃万喜ミツル
糠漬を刻む夕べや遠蛙蓑田和明
田蛙の寂しきまなこ動かざる椋本望生
田蛙や産婆待たずに妹生まる名計宗幸
蛙跳ぬ時空の隙間入るごとく明田句仁子
遠蛙ふいに訛を聞く感じ茂る
夜蛙や無灯火の自転車をこぐ木下桃白
筑前煮うまく炊けたり夕蛙門未知子
見目のよき蛙泳ぐやビオトープ門前町のり子
泥田に居て泥かぶらない蛙かな野原蛍草
四万十に夜や告げたる遠蛙野中泰風
遠蛙カスタネットに赤と青有本仁政
三菜の一つは煮豆夕蛙柚木みゆき
勘定の十銭合わぬ蛙鳴く遊飛@蚊帳のなか
夕蛙両手に分けるエコバック葉るみ
蛙「この先カーブが連続します」隆月
恋すてふ蛙大きな鼓膜あり瑠璃茉莉
隠れ家は教えぬつもり昼蛙鈴木(や)
今日ときどき明日の風初蛙和光
友が居ない蛙も居ない通学路惑星のかけら
おにぎりの1つはおかか初蛙國吉敦子
うどん屋の行列長し昼蛙洒落神戸
退院はまだ許されず初蛙涅槃girl
電卓にゼロ6つ並んで蛙なくツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
安曇野に道祖神あり夕蛙でぷちゃん
夜蛙よ冷たき線路警報音なかむら凧人
蛙鳴く一人暮らしのテレワークはらぐちゆうこ
浮上せぬ湯舟の身体蛙鳴くももたもも
三方を囲む蛙や水の家ゆすらご
バス去りて蛙千匹われ一人宇佐美好子
オンライン会議長引く遠蛙湖雪
ナフタリン臭つよき夜具蛙なく紅さやか
バス停に古い落書き蛙鳴く森弘行
沸くごとくかわず鳴く夜の水しずか森青萄
焼けあとを弔うごとく夕蛙痩女
親指のささくれ痛たっ遠蛙尼島里志
チンアナゴに生まれ損ねた蛙です抹茶金魚
出勤のアイシャドウ濃し夕蛙梨音
何色に塗つてやらうか赤蛙鈴木麗門
昼蛙不要不急の空青し暝想華
蛙にはいろんな方言呼ばれてる野田あさは
わたしはねカエルはかせになるんだよ野田あやか
鳴き蛙たくさんいててうるさいよ流歌6さい
真夜中のアラーム蛙の鳴き声田本莞奈
かえるたち気持ちいいなと学校に田邉瑠衣
遠蛙昭和のギャグを検索魔坂まきか
いにしえの子ら通りゃんせ蛙鳴く笑笑うさぎ
姿見に蛙の化身老い女西條恭子
蛙子沢山みんなで歌う楽しみも滝川端子
遠蛙数独好きの祖母卆寿鈴木淑葉
ちび蛙男はつらいよもっと啼け.伊藤ひろし
俳人を間違えたかと初蛙AKI
家篭り蛙さえも羨ましANGEL57
坪庭や飼ってもおらぬ蛙鳴くGONZA
赤子泣く声に合わせて泣く蛙haru.k
両手突き何を懇願初蛙Qさん
ブラッシング猫の尾垂れるや夕蛙S.組子
テラテラと二つの世界生く蛙sakuraa.
歌わずも季節は移ろう蛙達vivi
遠景は高速道路田の蛙あきれたホイ
動く雲目で追いながら昼蛙あさぎけんいち
真夜中の蛙鳴く音も子守唄あつこっとん
蛙鳴くあかり無き夜の道しるべあらら
蛙等め不眠の我をあざ笑いイカロス
蛙にも蛙の時間本閉じるイキイキ生活
通学路轢かれ蛙をひとっ飛びいたまきし
夕蛙一人静にやかましいいつも祝日
土塊かなあえかに動く初蛙いまいやすのり
蛙鳴く帰り道にランドセルイルカ
深き夜の闇をのみ込み蛙鳴くいろをふくむや
古井戸の蛙笑ふや夕仕度うさぎの飼い主
電話ボックスを探す井の中の蛙うどまじゅ
水田で蛙鳴く声なつかしいえみばば
桂跳ね水面五線譜となりにけりおうれん
うめたてて耳がさみしい初蛙おがたみか
かまびすし蛙黙るは夜の謎オカメインコ
土塊が蛙と化すや豆畑おざきさちよ
遠蛙パスワード記すメモの場所おぼろ月
棚田はコンサートホール蛙の音お品まり
水やりで蛙跳び出し乙女鬱かたちゃん@いつき組広ブロ俳句部
家暮らし蛙の声とハーモニーカメ
寝つかれず聞く遠蛙太き梁キートスばんじょうし
ウィルスの話題ひひらく蛙かなぐずみ
鍬振るう我に飛びだす蛙かなこつみ
昼蛙カスタネットとフラメンコこぶこ
蒼白き天を映して蛙鳴くさいとうすすむ
曇り空天地真逆の夕蛙さくやこのはな
祝い唄か蛙新築二,三軒さくら亜紀女
足音に瞬時無となる蛙かなさとう菓子
雨蛙飛んだ後では昼の月さなぎ
僧のごと葉に鎮座する蛙かなさぬきのにゃんこ
旅の終わり寝付けぬ耳に遠蛙しゅういずみ
蛙鳴き億光年と交信中じょいふるとしちゃん
夜蛙や相合傘で帰ろうかしらふゆき
昔は触れた蛙今は怖くて触れないシンタローママ
神経すべて死す蛙の産卵かなすいよう
大津波去りし校庭蛙一匹スッポン
聞こえるけ蛙鳴いとる婆コールたじま
跳ねまわり筋肉臭う夕蛙たすく
戦場の二匹の蛙妻と子にタマゴもたっぷりハムサンド
墓守になりしつもりや昼蛙たむこん
近寄れど蛙瞬時に泥波紋ちっちのきも
里山に蛙こだまし心静かちやこ
見つかるまい見つけてみせろと鳴く蛙つる凛々
畔行けば右に左に跳ぶ蛙てまり
好きな人と聴く夜蛙眠れないてんてこ麻衣
庭に四匹どれも色違いの蛙とわずがたり
るるるるる月夜に蛙こっちかななかしまともこ
田に水の満ちて夜蛙恋舞台なんじゃもんじゃ
水際の蛙の瞳に空映るねがみともみ
目が合った草に消えゆく蛙かなのど飴
しばらくは蛙と遊ぶバス乗り場パッキンマン
母の背に乗りて可愛いやちび蛙はな
遠蛙雨の匂いのする夜風はのん
バンドマン夢見て蛙大海へはまのはの
ゆっくりと手放す悩み遠蛙はむ
ぬばたまの夜窓に張りつく蛙声かなハンドタオル
県境の夜の国道遠蛙ひーちゃんw
雨の日の一年生に蛙跳ねひっそり静か
掌は宇宙じゃないぞ初蛙ひな芙美子
故郷が瞼に映る蛙声ひめりんご
蛙ほど心の丈を放てればひろき
部活から蛙の声の帰り道ひろ夢
なんの声よく聞き留めたそは蛙ピンクのさかな
眼を閉ぢて夕蛙聴く独りかなふじこ
残業や終い湯に聞く遠蛙ふみ
喧嘩中二人を癒す夜蛙ヘッドホン
右耳に蛙の輪唱大きめくペトロア
遠蛙ふるさとの季告げるかにポンタ
人絶えて月夜の蛙かまびすしほんみえみねこ
前頭葉に残る疲れや蛙鳴くまぐのりあ@蚊帳のなか
地も水も渡る蛙の誇らしさまこ@いつき組広ブロ俳句部
蛙の目濁った池で涙出てまこと「羽生誠」
クロールの方が楽だよカエル殿マムシ銀行
窓開ける旅の宿には蛙かなまりい@
陶磁器のやうな蛙や蓮の上マンデー久寿男
ディーゼルにゆらり揺られて昼蛙みはね
湯あがりにそよろ風あり遠蛙みやざき白水
暮れ六つやエールに聞ゆ遠蛙みわ吉
雨に濡れ蛙の背中はなめし革モモンガ
胎動も敏しと撫でて夕蛙ゆこ
喧嘩して飛び出す庭に夕蛙わかなけん
人を避け蛙と嘆く池の端わたなべぃびぃ
田舎道巨大な蛙にたじろぎて亜紗舞那
バリトンで呼べば応へる夕蛙愛燦燦
夜蛙心地よきかな四分音符愛野優
夜蛙や偲びて歌う雨の川綾月礼
帰らぬかまだ街にいるかと遠蛙案山子@いつき組広ブロ俳句部
10時間カレー煮込みし夕蛙杏樹萌香
あれ雨が待ってましたと蛙啼き伊藤ひろし
友逝くと聞く夕暮れや遠蛙伊藤亜美子
夕蛙はげますやうに輪唱す伊藤順女
ごめんねの出ぬへの字口蛙鳴く伊藤小熊猫
五百羅漢見つめてをりし蛙の目伊藤節子
蛙鳴く旅立つ友を追う如く遺跡納期
蛙の声を追憶上京十年井出奈津美
引き籠る日々を嗤うや遠蛙井松慈悦
耳澄ます都会の庭に蛙鳴く井上繁
蛙鳴き水面くゆらし月笑う井上早苗
大雨の頭にスーツ土蛙井上哲志
雨あがる倒景の空夕蛙郁楽
昼蛙かしこまる叔父思い出し郁松松ちゃん
土砂降りも我関せずの蛙哉郁陽
夕蛙部屋で微睡む部活後一番ぶろ
手の中に蛙つつみて草むらへ稲垣由貴
怖々と急ぐ夜道の土蛙稲葉こいち
幾年も大谷の蛙鳴かぬなり稲葉雀子
夕蛙人に云うべきことばかり羽沖
ウォーキング始めて知りし初蛙羽馬楢葉
庭先で久闊叙する蛙かな雨波流波
飛び込んだ蛙の姿見たことない卯さきをん
疎開地は米どころ蛙鳴戦争影山嬾
蛙にも矜持ありなん鳴けるとき越智敦子
初蛙いのちのやうなみどりいろ榎本真希子
ここはもと我の住みかと蛙鳴く円
庭石にとのさま蛙酒の友延杜
手足交互歩くや蛙飛ぶやポチ猿猴川のドブネズミ
灯を消せば子守歌なる遠蛙遠藤一治
雨の音蛙の声と苗の緑遠藤愁霞
木の虚より蛙顔出し何眺む塩原香子
蛙鳴く天変地異は知らざりき塩沢桂子
交ってる蛙に蛙がチャチャをする奥ノ木蛍子
都にはもう行けるかと遠蛙岡田
ため池でゲロゲロと鳴く蛙かな加島
深淵より来たるが如く蛙浮く加裕子
蛙鳴く声の転がる棚田かな夏目坦
あのこのくびにかえるのっけておこられた河原つばめ
初蛙今年も主面下げて出た河畔亭
ペタペタと歩く蛙へ道譲る花岡幸嗣
羽音に蛙の姿そこになし花岡浩美
変身し蛙になりし浅間山花岡紘一
蛙鳴く吾子との輪唱耳の奥花咲みさき
雨乞いをするかのごとく蛙鳴く花咲明日香
「ラ・カンパネラ」作曲は君らか夜蛙花鳥風猫
通学路蛙の声を敷き詰めて華林灯
新婚の借り上げ社宅蛙鳴く雅喜
輪唱の終わりが見えぬ遠蛙海口竿富
子蛙ら離れて吟ず輪唱歌海碧
こら蛙池にこんなに集まって笠原理香
いつの間に蛙住み込み植木鉢笠江茂子
夜蛙や新たなる粘液を吐く釜眞手打ち蕎麦
田の土が動いて気づく土蛙甘平
蛙鳴く裏庭辺りカレーの香閑蛙
クラクション蛙のあおり運転か丸山隆子
寝てるのに蛙合戦うるせえな季音句歩
コンクリの庭の蛙に水を遣る季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
背負われた足に跳びつく蛙かな貴志洋史
蛙泣く声をたどれば父母に亀山逸子
マンションのベランダで聴く遠蛙亀田稇
あれほどの蛙の不思議昼にゐぬ亀田荒太
実家の夜密なる蛙の大合唱菊原八重
巣篭もりの蛙や足を持て余す。菊池洋勝
蛙二匹濡れ葉よろしく闇に溶け吉哉郎
ぷくぷくとカエルふくらむみずたまり吉田結希6
コンビニの脇の田圃の夕蛙吉田びふう
手のひらの蛙も我も今生きる吉藤愛里子
ゆるゆるの土ゆるゆると蛙釣り久留里61
初蛙ポチを威嚇す咽喉ぼとけ宮杜都
蛙鳴く俄に息吹く田んぼかな宮村寿摩子
通学路につぶれた蛙素通り朽木春加
岩倉の田んぼの蛙何代目京野秋水
痩せたくて泳ぐかおまえもデブ蛙橋本恵久子
遠耳の夫に蛙と教へられ玉井瑞月
ふくらんだ蛙の頬は水風船玉井令子
つくばいに浸かる蛙の半目かな玉響雷子
校庭は無人蛙の声を聞く玉繭
開会す蛙の五輪ハイジャンプ玉木幸代
鳴く蛙三晩で慣れる里帰り銀のグランマ
大山を通せんぼして鳴く蛙銀長だぬき
暗雲に蛙隠れや涙雨九蓮
母曰く「御馳走だった」赤蛙句滔天
新宿の車道に跳ねる夕蛙空
コロナ怖い怖いと潜る蛙かな空の青と海の碧
緑色隠れたつもり蛙鳴く空茶
逃げ足のまだたどたどし初蛙桑田栞
見る人のなき花園に蛙なき月の輪
天気記号知らぬ蛙の注意報月城花風
蛙にキスしたら叶う願いあり研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
呼び水を運ぶ井戸端蛙跳ね見屋桜花
蛙見て泣いた女児(こ)今は手で掴む原善枝
昼蛙倉庫一匹晴れまだか原田直幹
遠蛙叱られるからもう帰る原田民久
CMの蛙追いかけ底部(てぶ)浚い古いっちゃん
お手製の一汁一菜遠蛙古今亭ちくしょう
初蛙普段話さぬ人の知恵古森海苔
夕闇に田んぼ渡りて遠蛙戸根由紀
蛙鳴く此の一角は未だ荒地午餉
頃合ひを知るがごとくに蛙鳴く光子
蛙鳴く静皿洗い朝を待つ弘
子蛙や磴一段に足かける江見めいこ
オルガンの音と蛙と雨空と江戸川ちゃあこ
初蛙鳴くな跳ぶなよ鳶が舞う江田綾子
門灯で鉢合わせ虫狩る蛙 江藤薫
食う食らう蛙見つめる刹那かな浩二
うだうだと茶する爺婆昼蛙甲山
晴天や蛙がひざまずいている綱長井ハツオ
歩に合わせ蛙飛び込む畦の道荒木豊
巣ごもりて蛙の声の楽しかな香港ひこぞう
コロナへ無音足音へ鳴く蛙高橋久恵
厨の窓蛙来ている兄の家高橋光加
フラれている僕の瞳は蛙の眼高橋毛玉
野外活動カエルの声消す子らの声高石たく
遠蛙ひとり夜更けに米を研ぐ今村ひとみ
夕蛙三方で鳴く1DK今田哲和
うたた寝や蛙の声の心地良さ根々雅水
曇りなき窓に蛙や新校舎佐橋カホル
軽トラに連れて来られし蛙鳴く佐藤あん
帰り道蛙の声援ペダルこぐ佐藤佳子
庭の池去年の蛙の波紋立つ砂楽梨
蛙鳴く澄んだ夜空に父が逝く細江隆一
道塞ぐ烏睨みて飛ぶ蛙細川小春
蛙見て再スタートするスクワット坂本千代子
観天望気カエルのがっしょう傘えらぶ桜姫5
信号待ちペダルにピョコン夜蛙三ノ宮ねこ
蛙鳴く畦消え圏央道走る三浦ごまこ
コロナ来て人恋ふごとく蛙鳴く三隅昌山
昼蛙ステイホームに漫歩かな三隅朗鬼
夜蛙やワイン片手にこもり居て三島瀬波
蛙つやつや純文学の池の中山﨑瑠美
初蛙こわごわ握る小さき手山育ち
我臥せり構わず先に往け蛙山沖阿月子
蛙どもともに聞こうかドビッシー山吉白米
無観客今日も今日とて蛙鳴く山口たまみ
夜蛙かまびすしさと父の酒山口悟郎
晴れた朝湧き水あふれ蛙鳴く山口香子
生きとった躍る心や蛙鳴く山城明子
蛙鳴く恋焦がれるや夜に泣く山川恵美子
一生の静寂蛙の事件簿山川真誠
初蛙円空仏の如く笑む山太狼
家名主蛙がぬわーっと足に触れ山田啓子
城下町蛙の声にしみる夜山辺道児
名も知らぬ野の花愛でる蛙鳴く山本康
喜びの田に水入り蛙かな子雀
とぽとぽと蛙と背なの初孫と市川りす
啼く声と光る波紋や闇蛙紫雲英
水面を揺るがすものに蛙の目紫瑛
夜蛙の褪せる叫びや朝まだき紫小寿々
同じもの見ているはずの昼蛙寺津豪佐
てのひらに小さき鼓動の蛙かな鹿沼湖
舌のばしかっと見開く昼蛙鹿嶌純子
転居した夜は蛙の大合唱篠崎彰
沈黙の受話器の向こう遠蛙篠雪
頭領の太きテノール田の蛙紗智
足止まる路上ライヴや初蛙朱海祥
遠蛙父はだんだん忘れけり朱頂蘭
泣き通す子に耳やさし夜蛙秀はる
手の上で鳴かず飛ばずの昼蛙秀たあ
減反や今やソロのみ蛙鳴く秀耕
妹の背に照らす月夜の蛙の目秀道
一叢の森の古刹の古蛙秋月なおと
蛙なくこの地に嫁ぎ五十年秋代
息止めて受話器の向こう蛙達出井早智子
かなづちの我の師となる蛙かな初野文子
修学旅行も延期の知らせ初蛙渚
蛙千疋おんな候補を応援す緒方信子
コロナ禍の世に目覚めたり初蛙宵猫
ほろ酔ひの鼻唄止まる夕蛙小だいふく
疾走する雲映した蛙の目小磯悠人
荒れる世も川はせせらぎ蛙鳴く小栗福祥
姿なき池のあるじは蛙隊小此木一佳
「カエル跳び」なんて知らずに跳ぶ蛙小笹いのり
逍遥や蛙も吸ひし里わの気小杉泰文
空に星地には星ほど蛙かな小川都
友敏し通話の中の遠蛙小川都
大海を蛙に見せていた息子小田慶喜
まだ軽き目覚めし池の蛙たち小田虎賢
コロナ禍や熱なき池に蛙鳴く小南子
昼蛙葉陰に忍び腕弛し小柳悠子
家籠もる歌に蛙を見つけたり小林のりこ
軒雫波長合はせて鳴く蛙昇雲
一人呑みとなりの庭で蛙鳴く昇弘偲
就寝の声となりゆく蛙かな昭谷
蛙跳ね心は直ぐに幼き日松村貞夫
テレワーク夕陽の庭に蛙かな松島美絵
遠蛙に合わせ佳人のビアニシモ上原麻利
初蛙ほどに小さき我命上野眞理
手のひらにのれば愛しき蛙かな植田かず子
こわごわと蛙のぬめり確かめる新谷ノル
棟上げの祝詞唱ふや蛙鳴く新濃健
稜線の緑だけ濃く遠蛙新美妙子
陽だまりの花を褥と蛙かな森の水車
田起こしに蛙目覚めず土掛ける森英一
鼻っ垂れ蛙が怖いと泣いたっけ森澤佳乃
庭に棲む蛙もいつか飛び立つか深山涼水
泣くことはあらぬ蛙の鳴きゐたり深町明
初蛙ちょこり墓石におともかな真優航千の母
虫を食む蛙は瞬時目口閉じ真理庵
家の中蛙のぼやきも聞こえずか神谷真央
尻尾さがす忍者のかまえ田の蛙神谷米子
蛙さんところ構わず今日も鳴く神谷理佐
蛙鳴く母の旅立ちに唱和する水乃江辰
土蛙恋しくなりぬ青き空水夢
蛙失いし田の畦をし踏みぬ睡鯨子
あはれなり雨のくれ方かはづなく杉浦あきけん
草取りの花壇にぴょこん初蛙杉浦真子
いつ跳ねるかと思わせる蛙かな杉山太郎
蛙跳ぶ義母へと放り投げし吾子瀬尾ありさ
何事も気の持ちようと夕蛙成田こむぎ
お代わりにカレーは空っぽ夜蛙星善之
外来種アメリカ蛙田舎道星夢光風
世の憂ひ笑ふや蛙姦しましく晴好雨独
目ん玉は水に浮かべて遠蛙正岡恵似子
夕蛙靴紐結ぶを口実に正山小種
指揮者居る如し蛙の大合唱正子@いつき組
日本語か中国語かや昼蛙清水容子
グランドの居残り素振り夕蛙清水祥月
小坊主の夢に蠢く朝蛙清波
風あそぶ窓辺に蛙聞く夜かな西原さらさ
雨乞いの蛙日向で天仰ぐ西村あつこっとん
頼もしき蛙コロナを投げ飛ばす西尾至史
蛙鳴く畦のはるかに手ふる祖母西條晶夫
蛙鳴く闇を大きく膨らませ青い月
湛水の月ひと蹴りで割る蛙青井晴空
羅生門棄児の袖に夕蛙青児
庭緑蛙と目が合う休肝日青猫
夜蛙や幼き頃の子守唄石岡女依
足の甲のそり横断トノサマガエル石垣エリザ
水路落ち抗う蛙前を見よ石川八右衛門
何映す畦に二つの蛙の目石田恵翠
畦道や小耳効かせた痩せ蛙石田徳久
父の背のかすかな記憶遠蛙雪井苑生
舌打ちをしてるかのよう蛙鳴く雪豹
永遠のピエロの涙蛙鳴け仙石汀枕
雑草も残しておこう蛙鳴く千鶴姫
蛙鳴く昔話の蛙かも川村昌子
足元の思わずよけるのし蛙泉子
歌声に襲われるかのよの蛙かな浅井誠章
蛙鳴け生きてるうちにたんと鳴け曽我真理子
一升瓶提げてゆく夜の遠蛙倉岡富士子
命日の読経終わりて蛙鳴く惣兵衛
星空に蛙の声や文を書く則本久江
蛙鳴く少年たちの去る頃に村松登音
目の合ひし門番のごと蛙かな村田みもざ
タワーマンション1階に聞く蛙かな多喰身・デラックス
つくばいを渡り飛び交う蛙かな多田ふみ
夜蛙温泉宿の大合唱駄詩
にはたづみに空の青知る初蛙対馬清波
連休なり寝ても起きても蛙の声大橋敏子
夕蛙一瞬和むや偏頭痛大原雪
通夜帰り顔を上げよと鳴く蛙大原妃
蛙鳴くかっぱえびせん放り込む大山こすみ
子を抱きて夕蛙鳴く田を眺む大村真仙
クラスから浮いてる我と遠蛙大津美
うとうとと夕風呂浸り遠蛙大津武彦
初蛙そろそろ腰を上げようか大道真波
明日へ飛べ蛙の合唱響く空大本千恵子
肺硬し呼気生温かく蛙鳴く大野静香
蛙はケロヨン 甘酸っぱい昭和大野由美子
娘はスキップ土産の籠は皆蛙鷹野みどり
手の中の命ぬるめく初蛙卓女
いっせいに鳴き止む蛙その不思議谷口あきこ
猫まんま食ひて宵寝の遠蛙谷本真理子
関守石にちょこんと蛙目を凝らし知足
おばあちゃん家(ち)押しよせる声蛙なり池上敬子
水の音立てて飛び込む蛙かな池田功
遠蛙とと(父)のおひざでゆらゆらり池田洋子
生きてゆく蛙にでもできるのに池田華族
田んぼへり比例するかな蛙歌池内ねこバアバ
田の蛙静寂一瞬闇深し池之端昇雲
ただ闇に鳴き声一つ夜蛙竹一
硝子戸の息整えて蛙かな竹内うめ
蛙跳ね鳴き声聞いて元気出る中山清充
ドラマ見て一人泣く夜の遠蛙中山白蘭
ニンゲンも蛙のように大変身中川ふみひこ
古池を一歩抜け出し夕蛙中島葉月
ひたすらにスケジュール消す夕蛙中島圭子
求愛に似合はぬ響き蛙なく中島走吟
ウイルス戦争柳へ蛙飛び跳ねる中道潮雲
蛙鳴く百鬼夜行は蠢けり昼行燈
着陸す蛙水面の月の海衷子
蛙目に百億光年を微光朝雲列
巻き舌の鳴き声高き昼蛙朝明
放課後の戦利品なり初蛙長谷川ろんろん
地球外生命体は蛙の子天野呑水
使いの子足速くなり夕蛙田村モトエ
漱石も巡りし池や初蛙田村伊都
転居の夜の蛙の合唱たじろぎぬ田中ようちゃん
夕蛙テンポの早きオーケストラ田中勝之
草揺れて小さき顔出す初蛙田畑尚美
遠蛙かえるの歌の子守歌田本雅子
トラクターのスピード落とす初蛙渡辺おりーぶ
濁声や喉震わせて昼蛙渡辺陽子
ばあちゃんち夜の深さや遠蛙登久光
幼子のはだしの踏みし田の蛙都忘れ
爬虫類カフェの机上の蛙かな冬木ささめ
夜も更けて蛙の経も佳境なり冬野菫
ノー残で肉屋に八百屋夕蛙島村福太郎
いらっしやい手を突く蛙蕗の宿嶋良二
水入りし小田に目覚むる蛙かな藤ちゃん
手を出してごらんと祖母が置く蛙藤井京子
俺たちは自粛はせぬと蛙鳴く藤井聖月
吾子の手に小さな蛙目を凝らす藤橋一憲
絶対音感音程狂ふ初蛙藤原訓子
眠れずに開く句集や遠蛙藤田真純
ランドセル出て黒板に跳ぶ蛙藤乃眞子
お駄賃は林檎飴かな遠蛙徳
数多の願い腹満ちて蛙鳴く徳庵
夢の中蛙の声は現なり内田誠美
この星で明日も生きよ蛙の子内本惠美子
海を見て蛙いるのと母に問う楠田草堂
田蛙や避けよ密集マスクせよ二鬼酒
山深くコントラバスの蛙歌乃良
蛙鳴くさらに激しく赤子泣く埜水
来週の予定キャンセル蛙鳴く波かもめ
田の蛙ケロリコロナとあおり哭き波奈
蹴伸びする蛙艶めく八等身馬祥
水遣れば挨拶返す蛙かな馬笑
新しきローファーの上蛙飛ぶ梅嶋紫
祖父ののどぼとけ震う夜遠蛙梅里和代
ままごとの茶碗飛び付く夕蛙白井百合子
小さき靴笛の止まれば初蛙白瀬いりこ
青い山脈歌えば唱和する蛙白沢修
幾万の蛙轢きけり夜のバス白土景子
遠蛙ともる里の灯母の声白藍こはく
舗装路のかわきひからび蛙かな迫久鯨
頭上には北斗七星蛙鳴く畑詩音
お悔やみに向かう坂道夕蛙八重葉
青々と唄声満たす蛙かな八木実
相合いに傘さしかけて土蛙飯田淳子
眠たげな眼して啼く蛙かな比良山
洗牌の波に呑まれし蛙かな緋乃捨楽
鍵開ける40階にもかわず居り飛来英
庭に棲む蛙跳び出て鳴く子犬尾関みちこ
父と飲む夜蛙聞こえ酔い誘う美山つぐみ
蛙の歌止み懇々と眠る美翠
帰り道彼と鞄と蛙かな浜けい
靴紐を縛る手に飛び来る蛙富田朗
コンクール中止の報せ蛙鳴く富野香衣
蛙舞う青さが香る空の庭浮楽莉
夜蛙の白い腹ヒタリ風呂の窓風ヒカル
寂しさも分かち合いたる夕蛙風紋
近代化蛙さんたち今いづこ風来坊
蛙跳ぶ空映す田にためらわず福ネコ
銘酒旨し夕日の縁と初蛙福弓
遠蛙バカ殿様に泣き笑い福月スミレ
耕運機轍の中に蛙居り福泉
あの人の本音垣間見初蛙文女
夕間暮れ畦道蛙ひとっ跳び平松一
蛙の声窓に飛び込む仕舞風呂平田花子
遥かなる休業の果て遠蛙片栗子
つくばいに自宅待機の夕蛙弁女
川辺りの草盛り上がり昼蛙歩亀
初蛙コロナ籠りの窓厚し穂積のり子
蛙はね追う子もはねて雨模様芳村佳子
高層に暮らせば蛙永く見ず北条暦
窓ガラス蛙の指の丸き粒北川蒼鴉
手押し井戸ポンプに姉妹蛙鳴く北大路京介
痩蛙もう頑張れと言っていい睦月くらげ
井の蛙流行病よ井のままで本間美知子
蛙博士「今度はほんと!新種だよ」凡々
夜蛙尾行するやに歩きたる盆暮れ正ガッツ
この道に蛙見つける嬉しさよ麻場育子
手足生え空を飛べるか田の蛙麻生恵澄
初蛙畔が舞台と如何に鳴き初む麻野文江
女ってドライなものだ遠蛙満る
腹見せて蛙張りつく窓ガラス湊かずゆき
夕蛙ライトアップの謝意の青明惟久里
蛙歌聞こえて浮かぶ友の顔木ノ国天地
大津絵の瓢箪鯰蛙鳴く木寺仙游
大の字の子の掌の初蛙木村かわせみ
住宅地残る蓮沼蛙鳴く木村修芳
単身を迎える宿舎蛙鳴く木村波平
蛙の合唱急な静寂の恐ろしさ夜香
昼蛙月命日の墓遠く野ばら
蛙跳ね未知なる海へ吾も跳べ野上英明
テレワーク窓に監視の夕蛙野木編
合宿の打ち上げ果てて遠蛙唯飛唯游
田んぼ径一歩先跳ぶ蛙跳ぶ友雪割豆
落日を背に夕蛙逍遙す柚木窈子
帰れない我のサドルに蛙居り祐莉亜
横断歩道引きずる足でゆく蛙葉月けゐ
収束し啼き交わしたい蛙かな葉路
子守唄気づくと遠く蛙勝鬨踊るサカナ
あれやこれ惑わぬように蛙鳴く来知万郷
濡れた目に映る青空土蛙来冬邦子
腰引けて蛙と遊ぶ子犬かな隆美
蛙尻下げお天道へいざ跳ばむ龍季
結婚の決まりし夜や遠蛙麗し
豆蛙ポップコーンの飛び方で蓮花麻耶
我が領土蛙一匹泳ぎゆく連雀
ザリガニを蛙で釣りし疎開っ子鷲野の菊
人の世を睥睨しつつ蛙座す侘介
グゲゲゲゲ一人寝の夜蛙鳴く凛
眠たさを根こそぎさらふ蛙かな巫女
掌に宝石のよな蛙かな廣重
夜の塾蛙にエール贈られて戌の箸置
長靴にぽこりぽこりと蛙跳ぶ戌亥
蛙鳴け鳴け村にコンビニ開店す 柝の音
前になり後になりする夕蛙楡野ふみ
指先に蛙友情は一瞬橙と紫
介護って召使じゃないよね蛙啼く櫻井弘子
みっちゃんと道草くった蛙鳴く淺野紫桜
遠蛙踏み跡うすし里の山澤真澄
敷石の真中におわす初蛙澪つくし
蛙見るひと瞬きや視線合う祺埜箕來
臨月の腹にげんこつ蛙跳ぶ齋藤杏子
宝石のごと花の中にあり蛙かな齋藤むつは
一声大きく蛙の一日目齋藤富美代
畦歩き左右に跳ぶは蛙かな笙女
遠蛙もっと遠くの宇宙船籠居子
一瞥をくれて虚空へ跳ぶ蛙苳
洗濯を取り込み忘れ夕蛙蓼科川奈
葉の裏に雨宿り声あり蛙蕾与
里山の蛙大虎も黙る大合唱豐田雄二郎
牛丼を詰めし重箱蛙田へ齊藤裕
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
【重要】俳号には苗字を!
〇俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。姓をつけていただけるだけでも混乱や、投句者同士のトラブルを多少回避することができます。よろしくご協力ください。
●俳句の正しい表記とは?
- 夜が来る 寸前の空 蛙色ツチヤタカユキ
- 蛙なら 翡翠の愛で 掌にベリーベリー
- ガラス越し 蛙潤んだ 目で語り海瀬安紀子
- 新天地 驚きばかり 蛙かな紀つゆ子
- 脇も見ず 跳ねる蛙に 切符切る月草英
- 蛙鳴く ゲコゲコゲコゲ 時折ヴォー大嶋日出子
- 雨粒頬に 確か蛙が 鳴いたよな星野茜
- 五時間目 片目つむる我 昼蛙武田理咲
- はよ鳴けと 蛙のエール 待つ青田西分慶雄
〇「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
- 隻眼に
泣く我もまた
因可蛙(よるかかわず)柚野なつ子
〇テレビの俳句番組で、三行書きしているのは、画面が四角いための苦肉の策。基本はあくまでも「五七五の間を空けないで、一行に書く」です。
●短歌? でもない?
- さくら咲く
穏やかな日よ
静かなる
岡に散りぬる
コロナかな赤石
〇俳句は、五七五が基本。自由律というジャンルのもあるにはあるが、これは、ちと中途半端か……。
●季重なり
- 朝露で葉陰の蛙顔なでるさかたちえこ
- いち早く目覚めし蛙なごり雪ふみくらのな
- 蛙跳ね花びら走る大地かな卯月かりん
- さくら咲く赤門かえる飛び上がる山崎鈴子
〇一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「雪解」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
- 手を入れし田水の蛙ごとぬるみ紅茶一杯
〇これは、微妙だな。「蛙」は勿論、春の季語ですが、「田水張る」という夏の季語があり、「水温む」という春の季語があり。作者が伝えたいことは何かと推測すると……「田水」が主役になっているような気もするし。うーむ、悩ましいですね。
●兼題が入ってない?!
- 咳ひとつ蜘蛛の子散らすコロナかな松嶋蜜尾
〇今回の兼題は「蛙」です。兼題を詠み込むのが、たった一つのルール。次回の兼題を確認して、次の一句に挑戦して下さいね。
●兼題「蛙」は入っているが……
- 安全の蛙置き物収集家久鍋得利子
- かわずがけ大乃国の得意わざ秀和
〇本サイトでは、季語を出題してます。置物の「蛙」は季語とは言いがたいですし、「かわずがけ」は相撲の技の名なので、これまた季語とは言えないなあ。
●これは人事の季語
- 珈琲のかをり蛙の目借時成田わや
〇季語は、【時候・天文・地理・人事・動物・植物】と六つに分類されます。今回の兼題「蛙」は動物の季語で、「蛙の目借時」は人事の季語。種類が全く違う季語になります。
●「蛙」だけど夏の季語
- 牛蛙もおもおと鳴く牛舎址おさむらいちゃん
- つかみきる転校の日の牛蛙小野睦
- 地底より威嚇するかや牛蛙大山小袖
- 牛蛙の跳躍背丈の短き武田朋也
- 蝦蟇蛙愛嬌ある奴渋い奴華
- 迷う青蛙太秦映画村はっかあめ
- 睡蓮の影から影へ青蛙高橋淳子
〇同じ蛙でも、季節の違う蛙たちもいます。「青蛙・蟇蛙・牛蛙」などは夏の季語になります。
- 街分けた流れ彩る河鹿笛梅田カラハ
〇「河鹿」はカジカガエルのこと。「河鹿笛」はその鳴き声を指す季語。いずれも夏の季語です。歳時記を引いてみると、詳しく解説してありますよ。
4月の投句数はなんと過去最多の3934句!毎月、俳句生活を盛り上げていただき本当にありがとうございます。
さて、5月の兼題は『初夏』です。おうち時間が増え、例年とはちがった初夏を感じるなかで、おもわぬ俳句ができるかもしれませんね。みなさまのご投句、お待ちしております!(編集部)。