夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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12月の兼題

「雪催い」

12月の審査結果発表

兼題「十二月」

お待たせしました!2022年12月の兼題「十二月」の結果発表でございます。今月も夏井先生からの「今月のアドバイス」は必見です。こんなにストレートな季語があるのを初めて知りましたが、SNSでも兼題発表の頃に「そうきたか!」という反応をちらほらお見かけして、発表を楽しみにしてくださっているんだなあと嬉しくなりました。2月の兼題「椿」もふるってご応募ください。(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
日めくりの豊かな虚や十二月

栗田すずさん

夏井いつき先生より

「虚」は、「うろ」と読みます。内部が空になっているところという意味の「うろ」には、「虚」「空」「洞」等の文字がありますが、「虚」という文字は句の内容に対して的確です。
 一日一日「日めくり」を破っていくと、過ぎた日数分の枚数が、破れた断面の厚みとなって残ります。それを「豊かな虚」と表現したのです。時候の季語「十二月」は、本来映像を持たないのですが、目に見える厚みとして実感させているのが、この句の眼目。しかも、その「虚」を「豊かな」と感じているのですから、作者にとってこの一年がどういうものであったかも、読み取ることができます。
 中七の「や」の詠嘆は、作者にとっての「十二月」という季語への詠嘆にも重なってきます。
「日めくり」と「十二月」は、言わばベタな取り合わせですが、中七の工夫があれば十二分に新しくなれる。そんなお手本のような作品です。

地
十二月吐き出る ガムの白鈍い

眩む凡

「吐き出る」のは、誰かの口から出る「ガム」か。あるいは「ガム」に象徴される何か?空白の一マスが、一句の意味を複雑に立体交差させます。「白鈍い」に、十二月の乾いた実感が読み取れて。

こんこんと夜を生む十二月の火よ

常幸龍BCAD

 ガスコンロの火、煙草の火、焚火の火、さらにはコンビナートの火など、「夜を生む」さまざまな火が想起されます。「こんこん」は、一年間という時間を積み重ねてきた「十二月」の感覚でもあります。

象の死の大きく書かれ十二月

有本仁政

 動物園の「象」の檻に訃報が貼られているのでしょう。「大きく書かれ」という中七の描写が、季語「十二月」に被さってくるかのような印象。「象の死」という事実が、淡々と胸を打つ十二月です。

街角に馬の残影十二月

酒井おかわり

 輸送交通手段としての「馬」でしょうか、軍馬の「残像」でしょうか。季語「十二月」に対しては少々深読みになりますが、十二月八日は太平洋戦争の開戦日であり、ジョン・レノンの忌日でもありますね。

ヴァイツェンに花の濁りや十二月

暖井むゆき

「ヴァイツェン」とはドイツビール。フルーティーな香りが特徴ですが、このビール独特の美しい濁りとあわせて、中七を「花の濁り」と映像化しました。季語「十二月」を華やかに薫らせる一句です。

人
  • 白き写譜に音立ち上がる十二月赤尾てるぐ(旧まがりしっぽ)

  • 木立みな誰かの祈り十二月ありあり

  • 突つ張り棒突つ張りなおす十二月木染湧水

  • 大阪支社慶弔5件十二月戸部紅屑

  • 波うてる手打ちガラスや十二月EarlyBird

  • 駆け込みの相続登記十二月藍田落星

  • 親爺らの十二月ロック咆哮す藍野絣

  • 日本酒の表面張力十二月あいむ李景

  • 十二月神御座しますこと近し逢來応來

  • 十二月僧侶のスクーター赤し青井えのこ

  • 道化師の鼻赫赫と十二月蒼月子

  • 出歯を研ぐ母の鼻唄十二月青井晴空

  • 洗濯機のアラート哮る十二月青居舞

  • 息吸って吸って吸い切る十二月青川紅藤子

  • 十二月少女の後の診察室蒼空蒼子

  • 方舟に乗らない鳥の十二月青田奈央

  • 六本の引き込み線や十二月青に桃々@いつき組俳句迷子の会

  • 十二月まで生きた誰か褒めてくれ赤松鴨

  • 木より木へ鳥の消えゆく十二月赤松諦現

  • 十二月内ポケットのロキソニン赤馬福助

  • 十二月深夜の授乳は明日もあるあかり

  • らしきことひとつもできずじふにぐわつ明惟久里

  • 点滴のベッドが横切る十二月阿木びふう

  • 死地は野に首輪緩めた十二月空地ヶ有

  • 静脈の綺麗に透ける十二月秋野しら露

  • 十二月味噌汁すする今日が平和アクエリアスの水

  • 引き潮に溜まる余影や十二月芥川春骨

  • 十二月鈴の音すらしない夜浅井誠章

  • 靴紐をきちんと結ぶ十二月あさいふみよ

  • 十二月ふーぷほわんと鳴る汽笛朝倉カグラ

  • 手配書の「おい!」の字太し十二月朝月沙都子

  • 雑巾の縫ひ目揃ふや十二月明後日めぐみ

  • 十二月眼圧の音漏れそうな字土街海

  • 十二月北へ行く人帰る人あさぬま雅王

  • ラジオより談志の落語十二月あさひ

  • 十二月の音量を下げてくれないか芦幸

  • 錆びつかぬ包丁を買う十二月あじさい卓

  • 十二月ポストに二つ死の報せあじさいパスタ

  • 十二月の固き地面に穿つ杭葦屋蛙城

  • 散髪屋の鏡が映す十二月阿曽遊有

  • 封蝋の鳩飛び疲れ十二月足立智美

  • 十二月サッシの隅にBB弾あたなごっち

  • 革命聞ゆ十二月の街ピアノあなうさぎ

  • おかわりのナンの膨らむ十二月阿部八富利

  • 十二月エレベーターの透けて空天風月日

  • 喪中はがきに取り残されて十二月数多未完

  • 閉店の貼り紙黄ばむ十二月雨戸ゆらら

  • 山門にピザ屋のバイク十二月あまねくみぞれ

  • 十二月の満月一周忌終えてあまぶー

  • 玄関に兄ちゃんの靴十二月網野れいこ

  • 横たはる雲の分厚き十二月あみま

  • りやうせいるいの張り付いてゐた十二月雨霧彦@木ノ芽

  • 十二月胸の高さに海ただよふあやせゆうま

  • 頭から風にめり込む十二月綾竹あんどれ

  • 十二月中三の子の内申点あやや

  • 口先のごめんねばっかり十二月あらせもんじ

  • 十二月しんと混みあふ鍼灸科新多

  • 先生と洗うパレット十二月安良辺小路

  • 割り切れぬ数字多しや十二月在在空空

  • つけでよいと陳氏が笑ふ十二月アロイジオ

  • 星生まる今宵十二月のグラスアンサトウ

  • 落ち合って光の街へ十二月安寿

  • 十二月喪中葉書のみな長寿安春

  • 縁の色褪せた便箋十二月飯田淳子

  • 窓を打つ防水シート十二月飯村祐知子

  • 十二月ポットスチルのにゆんと輝るいかちゃん

  • 十二月の歩幅の小さくなりにけりいくたドロップ

  • 味噌汁や故郷は遠く十二月郁松松ちゃん

  • 骨壷を納めず机十二月池田悦子

  • Love & Peace焦げゆく十二月池之端モルト

  • インサイダー講習十二月の時計イサク

  • 行き交へるひかりの薄さ十二月いさな歌鈴

  • 立食いのうどんに卵十二月石井茶爺

  • 久方の母と湯屋行く十二月石垣葉星

  • 十二月タグ貼りせかす棚卸し石塚碧葉

  • 夕さりの風の尖りや十二月石塚彩楓

  • 夕星の冷たき光り十二月石原花野

  • 宅配車のパンク騎虎の十二月泉晶子

  • 十二月メビウスの輪の継ぎ目遺跡納期

  • 製紙工場三すぢに烟る十二月石上あまね

  • 曇天を食らふ好天十二月いその松茸

  • 小人めくスパイス瓶や十二月板柿せっか

  • 正解のない面接や十二月いたまきし

  • フィナーレの余韻をカフェで十二月市川りす

  • 楼門や猫は爪研ぐ十二月市川隆一

  • 出てる皮膚すべて痛点十二月ゐてふ@QLD句会

  • 十二月まだ居場所なき昼休憩一秋子

  • 馴れし木の切り株光る十二月五つ星

  • 藪おくの家を訪ひをり十二月伊藤節子

  • 浴室にジャズ響かせて十二月伊藤順女

  • 強く手をつなぎアメ横十二月伊藤どらやき

  • タートルネック被り出口は十二月伊藤柚良

  • 十二月の換気流行歌かすか伊藤小熊猫

  • 十二月居間にもすこし赤と金糸川ラッコ

  • 踏切の矢印続く十二月稲垣良一

  • 慰霊碑の献花新し十二月井中ひよこ号

  • 鈴本を跳ねてアメ横十二月いなだはまち

  • まだ灯る子供食堂十二月稲葉雀子

  • 防砂林は祈りの姿勢十二月稲畑とりこ

  • 十二月在りていつ剃る無精髭居並小

  • 貴殿とはここまででした十二月犬山裕之

  • 受話器から目眩の話十二月井上れんげ

  • 干からびしてんとむし掃く十二月井納蒼求

  • 曳き屋台あかし夜秩父十二月ゐのかたゆきを

  • ケーキ屋の置き去りの傘十二月今井モコ

  • 紙で切る中指の傷十二月妹のりこ

  • 水府にて水のもてなし十二月伊予吟会宵嵐

  • 十二月の訃報あの頃のアイドルいわさちかこ

  • 十二月ペダル踏み込む腿に雨岩清水星斗

  • 十二月つくづく礼をする御国磐田小

  • 「Let it Be」のitなお見つからず十二月岩元凡空

  • 嵯峨面の鬼嗤ひをり十二月ういろ丑

  • ストローの蛇腹を伸ばす十二月植木彩由

  • あかときの雲美しや十二月上野徹

  • 湯けむりの固くなる夜十二月上野眞理

  • 手鏡に吾の居ぬ景色十二月うからうから

  • 灰汁掬ふ母のシャンソン十二月うた歌妙

  • 先生も暇そうですね十二月宇田建

  • 十二月トーストの耳の温もり宇田の月兎

  • 炊事場に七輪のある十二月内本惠美子

  • 三角の切手を舐める十二月空木眠兎

  • 硝子戸のいよいよ重し十二月うつぎゆこ

  • 雑踏に吾とすれちがふ十二月靫草子

  • パキラの葉一枚ずつ拭く十二月卯波まり

  • 十二月のゴビ鉄道はカーブ宇野翔月

  • 大道芸へ捻る諭吉や十二月海野あを

  • 義歯馴染むように街ゆく十二月うみのすな

  • 太陽の塔羽ばたかむ十二月梅里和代

  • 隠し味入れすぎました十二月梅野めい

  • 銀の匙落ちる音ひとつ十二月浦野紗知

  • 十二月褒められ慣れて照れ慣れてuryuu202

  • お多福の埃ぬぐいて十二月麗し

  • 十二月死斑のごとインク滲む吽田のう

  • 光には貫く力十二月詠頃

  • 嘘くさい愛という文字十二月蝦夷野ごうがしゃ

  • 駅前に十二月のキャンドル仄か蝦夷やなぎ

  • 十二月脚あるものは立ち尽くし越冬こあら@QLD句会

  • さびしくてあんかけうどん十二月絵十

  • 十二月畳屋バイト募集の紙榎風子

  • うとうととパーマ屋に主婦十二月笑姫天臼

  • 「第三の男」流れるホーム十二月朶美子

  • トレモロに積み上がる事務十二月絵夢衷子

  • 喧騒より遠く暮らして十二月遠藤千草

  • ビル消えて空落ちてくる十二月遠藤一治

  • 十二月公営墓地の香の幾重旺上林加

  • 病床につき抜けて空十二月オオイヌノフグリ

  • 昼休みはバンクシー展十二月おおい芙美子

  • 十二月改札鋏の音の名残り大岡秋

  • がうがうと鳴く脳検査十二月大木紅貴

  • ふくよかに腐るうみがめ十二月大紀直家

  • 渋滞を抜けて鼻歌十二月大久保加州

  • 囚人の点呼の如し十二月大黒とむとむ

  • 十二月LEDの白夜は明けぬ大越総

  • レコードの中心速し十二月大越マーガレット

  • 人は人川はゆったり十二月大阪駿馬

  • 雑踏の緋色の花よ十二月大地茜咲

  • 富士山を転がる夕日十二月大塚恵美子

  • 十二月最終模試の座席表大津美

  • 十二月石屋が石を刻む音大村真仙

  • 十二月の朝愛猫の骨壷大谷一鶴

  • 見も知らぬ着ぐるみとゐる十二月大山和水

  • 十二月背中のやうに皆の影大和田美信

  • みちのくに陸奥のこゑ十二月可笑式

  • 間違いの電話へ会釈十二月おかだ卯月

  • 風照らすセンサーライト十二月小川さゆみ

  • 泣きたくて行く場所のあり十二月小川しめじ

  • 十二月また戦争の来ゆうごたあ小川天鵲

  • 履歴書の出しては戻る十二月小川野雪兎

  • 活き活きと映る故人や十二月小川都

  • 丸眼鏡拭いて綺麗な十二月小川めぐる

  • 十二月チーズ焦げつつ膨らみつ沖原イヲ

  • 十二月入浴剤は乳の色小沢史

  • 塵載せて川面動かぬ十二月おだむべ

  • やはらかき皮膚もつ我ら十二月越智空子

  • 十二月腑分の如く本眺む乙華散

  • 十二月箪笥の隅へ絽の襦袢おでめ

  • 翻車魚の水槽磨く十二月音羽凜

  • 薄く切るハムの塊十二月小野寺さくや

  • ペコちゃんの頭をポンと十二月帯壱

  • エンジンがかからぬボート十二月海音寺ジョー

  • 棒鱈へみづひたひたと十二月かいぐりかいぐり

  • 会長を決めるあみだよ十二月快晴ノセカイ

  • 原稿に十二月色インク散る械冬弱虫

  • 軽トラの振動温き十二月海峯企鵝

  • チャルメラの幽かに十二月の雨火炎幸彦

  • 山だけがどんと構へる十二月風花まゆみ

  • 百円の刻印きれい十二月加座みつほ

  • 鋸引けば木の香鉄の香十二月樫の木

  • 姿見の我が背は丸く十二月鹿嶌純子

  • 十二月母の墓石の苔硬し花純

  • 十二月の音痴は何列目でせうか片岡六子

  • 十二月農夫の掬ふ塵芥加田紗智

  • 空ろなロッカー十二月の部室かつたろー。

  • 白髪に兆す光や十二月桂子涼子

  • 十二月卵の殻を剥くやうに花伝

  • 質草は何もあらずや十二月加藤雄三

  • 賞与後の退職ふたり十二月かなえの

  • 馬跳びのやうに進んで十二月彼方ひらく

  • 東京の空気は温い十二月金田由香

  • 十二月の恋は静電気のしわざ仮名鶫

  • 摘出せる胃の艶艶と十二月金子あや女

  • 十二月ミルキーペンのためし書きかねつき走流

  • 十二月くしゃくしゃの九九検定表カフェオレ草

  • 下されて萎える注連縄十二月神or愛

  • 巨星落つ空はすかすか十二月神谷たくみ

  • ペットボトルペボペボ潰す十二月亀田かつおぶし

  • 十二月厩舎開くと哲学書亀の

  • でこぼこの日々連なりて十二月亀山逸子

  • 十二月皆んな先へと逝きをつて亀山酔田

  • 喉にまだコロナを飼へる十二月加良太知

  • 空箱を端から潰す十二月川越羽流

  • 眉毛描くzoomレッスン十二月川村湖雪

  • 引き出しの奥の指輪や十二月カワムラ一重

  • 顎縫つた跡を十二月が触れる川村ひろの

  • 吾と向き合ひ鏡を磨く十二月川村昌子

  • カステラのザラメ十二月のネオン閑々鶏

  • 「事故あり」の立て看傾く十二月看板のピン

  • フルートを磨く指先十二月喜祝音

  • 建前の槌音高し十二月キートスばんじょうし

  • 地下鉄のぬるき風圧十二月岸来夢

  • 十二月つかのまの青が愛しい規田素乃子

  • 箱の中どれも百円十二月北岳醍醐丸

  • 十二月なにも映さぬやかんの銀北野きのこ

  • 散歩道猫に餌やる十二月北の36号

  • レーズンの糖化ざりりと十二月北藤詩旦

  • 舐らるや吾の眼球の十二月北村崇雄

  • 髭の影濃く十二月の休暇北村季凛

  • 教会の陰影濃ゆし十二月貴田雄介

  • 粉もん屋近所に増えて十二月木寺仙游

  • 朝刊の社説の長し十二月きなこもち

  • 大小のひしやげた箱や十二月城内幸江

  • 落日を入れ子のやうに十二月きのえのき

  • 無音てふ歓声眩し十二月木野桂樹

  • 饒舌な東京タワー十二月木原トモ

  • 工事音絶えし真昼の十二月木原洋子

  • 満天の星も磨かれ十二月きべし

  • 揚げたては奇跡十二月の社食木ぼこやしき

  • ショパン弾く母を送りし十二月木村かわせみ

  • 十二月天体の螺子緩めたし木村となえーる

  • トーキョーに十二月の歪みかなきゅうもん@木の芽

  • 十二月君にはブルーマウンテン紀友梨

  • 夢のやうにキルトはほつれ十二月杏乃みずな

  • 赤い花しこたま買うて十二月菫久

  • 電飾の影の韻律十二月

  • 日々透けてゆく街路樹や十二月くぅ

  • ぽっかりな空や喪中の十二月鯨之

  • 水吸はぬ新の手拭ひ十二月葛谷猫日和

  • 無意識に動く尾骨や十二月ぐずみ

  • 十二月鶏の御霊の数の星くずもち鹿之助

  • 飛行機の大きく見えて十二月工藤雨読

  • 鳳の社にそよぐ十二月國枝瞬山

  • 野良猫が家族になれば十二月国島智香子

  • 呼び込みの声掠れたり十二月國吉敦子

  • 月照らす浅間の嶺や十二月窪田睡鯨

  • ジルコンの屈折率や十二月久保田凡

  • 信号機の擬音速しよ十二月くま鶉

  • ぱっかりと踵が割れて十二月倉岡富士子

  • ふわけするやうにポストを十二月倉木はじめ

  • 賓頭盧のそこだけ静か十二月来ヶ谷雪

  • 十二月鶏舎へ真直ぐ白き道久留里61

  • 十二月の隙間へ生コンを打つ恵勇

  • 足つぼが痛い十二月の十九時けーい〇

  • 吸ひ込まれゆく十二月の巻き尺げばげば

  • 十二月ひとは定規の中にゐる健央介

  • 庖丁だこ夫に示す十二月謙久

  • 空よりもあをき瓦斯の火十二月剣橋こじ

  • 十二月星の溢るるレンガ坂小池令香

  • “WAR IS OVER”十二月の常套句こいぬ

  • ビル間より富士山朱し十二月郷りん

  • サイレンの止まぬ十二月の晴夜剛海

  • 十二月ワゴンセールの文庫抜く公木正

  • 軽やかな決済音や十二月紅紫あやめ

  • 十二月母なき母の家のこと幸田梓弓

  • 筆ペンのお試し講座十二月幸田柝の音

  • 病得て人は空見る十二月幸織奈

  • 竹ささら螺髪を磨く十二月古烏さや

  • 十二月の風呼ぶ大路二の鳥居小嶋芦舟

  • ひと駅へ座席ゆづらる十二月小杉泰文

  • 十二月ビルをまるごとラッピング小だいふく

  • 十二月ジャズのテンポを刻む脚虎堂吟雅

  • 赤紙は一銭五厘十二月後藤三梅

  • 電飾の街に星無し十二月来冬邦子

  • 両替のはしご粛々十二月このみ杏仁

  • 重力のいよよ増したる十二月こま

  • 稜線を目で追う車窓十二月駒野繭

  • 硝子ペンの書き味試す十二月駒村タクト

  • 皇帝が泣いて十二月が真つ赤GONZA

  • 金のなる木のあるお家十二月今藤明

  • 老友の訃報ポトンと十二月西條恭子

  • 十二月旅の足湯にひらく指さいたま水夢

  • 十二月夫に隠れて吸ふ煙草彩汀

  • 自転車のブレーキ固い十二月齋藤ちの

  • 片付かぬ部屋のいごこち十二月さ乙女龍チヨ

  • 大人とは憂う生き物十二月酒井春棋

  • 十二月第九帰りの遠まはりさかえ八八六

  • 十二月夕星墓の上に出づ榊昭広

  • 芝浜の妻にほろりと十二月坂口いちお

  • シの鳴らぬ実家のピアノ十二月坂まきか

  • 削ぎたれば透くる十二月のうろこさくさく作物

  • 十二月手帳は余白なし走れ咲まこ

  • 十二月期限の切れしポン酢かなさくやこのはな

  • 子つぶやく十二月が怒っちゃったね櫻井こむぎ

  • 十二月のバス傾きて右折せり櫻井紫乃

  • 十二月夜半の帰路を饐えし風桜鯛みわ

  • やめたなら楽になること十二月桜月あい

  • 急用を断わる急用十二月さくら悠日

  • 十二月私はシャネルが良く似合う桜よし榮

  • 風呂釜の塩素の臭き十二月迫久鯨

  • 折釘へ暦幾度十二月雑魚寝

  • 吾のための千羽鶴折る十二月さざなみ葉

  • 瘡蓋を剥ぐかに痛む十二月砂舟

  • 十二月アメリカ色のドーナツ屋咲花芳乃

  • 投了は桂馬の詰めで十二月佐藤恒治

  • 日矢潟へ鳥影著き十二月さとうナッツ

  • 煩いを離れ人の死十二月佐藤正温

  • 血の色の花渇きけり十二月佐藤レアレア

  • 点滴のひかり散らばる十二月里すみか

  • 風は十二月うだうだ幸せだ里山子

  • 十二月書店に踊る万の文字真井とうか

  • 十二月の街はひかりを手放さぬ錆田水遊

  • 男は男はと唄ふラジオや十二月さふぁい庵

  • 意地張らぬ入り日でありし十二月さぶり

  • カニューラを纏ひし母と十二月さむしん

  • 誤作動の火災報知器十二月紗羅ささら

  • ゆつくりと立たす電柱十二月さるぼぼ@チーム天地夢遥

  • 十二月の風よしづ子は今どこに澤田紫

  • 英文の不在通知や十二月澤田郁子

  • 福寿暦付きの新聞十二月山海和紀

  • 十二月テールランプの八重洲口三月兎

  • 炉を落とす窯の残り香十二月三休

  • 金くらい貸せる友来る十二月山月

  • ミサイルも虹も在る空十二月塩の司厨長

  • 毛の国の風神暴るる十二月塩原香子

  • 銀行で肩のぶつかる十二月四季彩

  • 元妻と子と街宣の十二月篠崎彰

  • 金の斧だいて十二月の質屋渋谷晶

  • 巫女の摺る足袋裏昏し十二月島田あんず

  • 十二月万年筆の濡羽色嶋村らぴ

  • 吉野家の十二月たる顔かほ貌清水縞午

  • 青竹の目覚める湖底十二月釋北城

  • 裏窓の星形ライト十二月芍薬@独逸

  • 血管の青く蛇めく十二月じゃすみん

  • 笑わなそうなバッハが身近十二月沙那夏

  • 分度器の水平線や十二月砂楽梨

  • 老人の海静かなり十二月秋星子

  • 五線譜のジャンクな休符十二月種種番外

  • 独り身の真っ赤な両手十二月祥雲

  • 十二月腕に眠りし子の湿度庄司しづく

  • 賑やかに別れてひとり十二月庄司芳彦

  • 十二月ずんとマンホールは重い正念亭若知古

  • 歳時記に華葩挿みけり十二月白プロキオン

  • 十二月「かごめ」の籠の鳥、空へ白よだか

  • 布を噛むばかりの鋏十二月ジン・ケンジ

  • 円錐の底面鈍く十二月新城典午

  • 口開けに弄られ寄席の十二月深幽

  • やさぐれの曳く鉄屑や十二月すがりとおる

  • 萎みたる石鹸の泡十二月杉尾芭蕉

  • 灯のすべるエナメル靴や十二月鈴木由紀子

  • 木曜は尖る十二月の言葉鈴白菜実

  • 膨張のプリズム十二月の紐育鈴野蒼爽

  • 重力を解かれ十二月のボレロすりいぴい

  • 山の湯に翳る月あり十二月青児

  • ハスキーの歩み華麗や十二月瀬央ありさ

  • 十二月一円玉が多過ぎる世良日守

  • タイムカプセルは化石の硬度十二月せり坊

  • 砂時計粒われ先に十二月千@いつき組広ブロ俳句部

  • 半音を上げる靴音十二月そうり

  • 巻き爪の角欠け飛びて十二月外鴨南菊

  • 十二月孤独に精米の余熱染井つぐみ

  • そぞろ神つきて退院十二月宙まあみん

  • 十二月の母はパラパラ漫画めく空豆魚

  • 電球のゆたかな丸み十二月ぞんぬ

  • 押し入れの文庫に父の字十二月大河そら

  • 夕刊を雑に畳めり十二月太閤検地郎

  • 小競り合う風呂の順番十二月泰山

  • ガソリンの気化する影や十二月平良嘉列乙

  • ワゴン車の排ガスぼろろ十二月高尾里甫

  • タワマンに雲のゴンドラ十二月高木音弥

  • 十二月ブックカバーの傷あまただがし菓子

  • 十二月どの火も人に看取られて高田祥聖

  • 十二月味醂詰めたり二百本高嶺遠

  • ブレーキのペダルの遊び十二月高橋寅次

  • 十二月仏壇の黒きらいです高橋なつ

  • 十二月金の入れ歯の遺失物高山佳風

  • 十二月叔母の電話の切りどころ瀧本敦子

  • 校正の手止め十二月の乾杯たきるか

  • カニほじる棒買いに行く十二月多喰身・デラックス

  • 斎場の浅葱の空や十二月竹口ゆうこ

  • 十二月湯治の宿の軋む床竹田むべ

  • 隅に積むレンタル布団十二月多事

  • 雨垂れのバケツ錆びたる十二月たすく

  • 十二月止まったままの観覧車唯飛唯游

  • 十二月演歌流るる定期市多々良海月

  • 執行のボタン十二月の暗さ立川茜

  • 土塊を喰いし埴輪や十二月ダック

  • 唇の四分休符めく十二月立石神流

  • 自販機を貫通十二月の十円立部笑子

  • 椅子増やす小さき教会十二月谷本真理子

  • 片付けの途中の読書十二月田畑整

  • 絡まりほどける十二月の轍玉庭正章

  • 足早に向かう新宿十二月たまのねこ

  • 十二月ピアノの蓋も脚も拭く玉響雷子

  • 十二月神舞う白き葛城山玉響海月

  • 寝ころべば空重くなる十二月たむらせつこ

  • 藁を綯う手のひら火照る十二月樽熊

  • ヘルパーに北の訛や十二月たろりずむ

  • 稽古場の鏡の結露十二月ダンサーU-KI

  • 十二月拳広げん何捨てん丹波らる

  • 強かに脛打ち付けて十二月知恵さん

  • 十二月檄文横目に黙食す竹庵

  • 鉛筆の消しゴムてかり十二月ちゃあき

  • 油圧式ジャッキへこへこ十二月千代之人

  • あゝわたし独り身でした十二月つきのひと

  • 十二月未知の地に鳴る鐘清し月待小石

  • 象の眼は優し過ぎるよ十二月辻野花

  • 月光に高き岩波十二月対馬清波

  • 十二月わたしは鬼になりました津々うらら

  • 俯瞰図のここのあたりが十二月綱川羽音

  • 滑走路に生ふる十二月の光芒ツナ好

  • 粉チーズふるふるふたり十二月翼つばさ

  • きりきりと奔る十二月の疏水露草うづら

  • 十二月美貌を買ひに行く天使丁鼻トゥエルブ

  • 白バイに停められてゐる十二月寺尾当卯

  • 十二月働く人の息の綺羅天陽ゆう

  • 十二月かと聞くためのナースコール土井あくび

  • 十二月肥ゆ砂時計落ちきつて常磐はぜ

  • 土くれの芯まで香なき十二月としなり

  • 人混みにぬっと着ぐるみ十二月十津川ポロ

  • 戦争をしてない国や十二月どてかぼちゃん

  • 歯の抜けた猫温めたる十二月鳥羽ししまる

  • 十二月夜更けに風呂を磨きけりとば雪華

  • 軍手並ぶ高等部棟は十二月とまや

  • 東天に月はしろがね十二月豚々舎休庵

  • 十二月のイルカの飛沫受けにゆく内藤羊皐

  • 駅ビルで着替えひかりの十二月へ

  • 十二月十三駅のパチンコ屋中岡秀次

  • シュレッダの卑しき口や十二月中島隆

  • ソプラニスタの星空へ透く十二月永田千春

  • 書写室の墨の香新た十二月中鉢矢的

  • 歯ブラシの開いた毛束十二月中村すじこ

  • 左手でうどんを食らう十二月なかむら凧人

  • ワックスの匂ふ十二月の教場なしむらなし

  • 十二月スタバの列の最後尾夏雲ブン太

  • オルガンの深き呼吸や十二月夏椿咲く

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  • カーナビの矢印真っ赤十二月星善之

  • 掃除中家人ごろ寝の十二月細江隆一

  • 十二月盛りだくさんのスライドショー細野めろん

  • 十二月雑踏の中独りごつ歩楽坂

  • 何をするにも掛け声の十二月堀卓

  • ガラス越し彼と会う日は十二月堀籠美雪

  • サイレンに急ブレーキの十二月堀隼人

  • 欄外に廻礼よてい十二月堀邦翔

  • 手を合はす一日の重ね十二月本間美知子

  • 電飾の競へる団地十二月前田麺

  • 十二月フォークナイフにフランス語まこと(羽生誠)

  • 口まめも床屋政談十二月正岡丹ん

  • 喧騒に僕だけポツン十二月眞さ野

  • 十二月イマジン聞きて夜の更けて松井酔呆

  • 十二月カレンダーの軽さ知る松井研

  • 賑やかに老々介護十二月松岡重子

  • 高枝の赤き実突っ突く十二月松尾祇敲

  • 千円を賽銭箱へ十二月松川梅子

  • 土のみのプランターや十二月松田慶一

  • 十二月外湯巡りの下駄の音松原隆雄

  • どの店もあの曲流る十二月松本千春

  • 一年を父に寄り添うて十二月松本葉ッ双

  • 十二月の電話孫は三センチ松本裕子

  • 罹らぬ身階段を上って下りて十二月まほろば菊池

  • 見たこともない歌手を観る十二月豆福樹々子

  • いひわけが溢れ出てをり十二月まやみこ恭

  • クーポンを使い残して十二月まりい@木ノ芽

  • 忙しい十二月とは決別すみうらゆりこ

  • 手帳には赤字の予定十二月澪つくし

  • ネイルまでイタリア色の十二月澪那本気子

  • 踏み台にルンバ攻め寄る十二月三日月なな子

  • 窓曇り踊る黒豆十二月三島瀬波

  • 鉄筆のガリガリ音や十二月水鏡新

  • 客は愚痴板さん黙十二月水越千里

  • 倍速の主題歌唄ふ十二月MR.KIKYO

  • 十二月眼鏡曇れど脚速めMrふじやん。

  • 子離れの旅立ちの時十二月水谷未佳

  • 灯り消えならば空で詠む十二月水之江辰

  • 予約せし予約に追はれ十二月三田忠彦

  • 十二月書き込み増えしカレンダーみちむらまりな

  • 十二月覆面パトカー急加速美月舞桜

  • 保護猫もすっかり我が子十二月水上ルイボス茶

  • アメ横の裏道もまた十二月皆川徳翁

  • 十二月蕎麦喰う異人神田やぶ和徳

  • 十二月激甚気候温暖化湊かずゆき

  • 尻尾まであん詰まりたる十二月みのり甘味

  • 店頭で土日応販十二月見屋桜花

  • 彩あふる銀座のふたり十二月みやかわけい子

  • 一分の暖機運転十二月梅の木千恵美

  • 猫どもは重なり合って十二月宮原みかん

  • 十二月辞表の日付書き直し雅乃珠晃

  • マンションてあったかいのね十二月みやま千樹

  • 十二月娘の晴れ着丈直す美山つぐみ

  • 親知らず直さないまま十二月ミュミャリャツァオビュビュンピピュプリャプピフンドシン

  • 手繰れない糸半分の十二月三輪白米

  • 十二月毎年かかる同じ曲夢雨似夜

  • 髪結いの予約に思案十二月ムーンさだこ

  • 十二月喪中はがきを深く読む霧想衿

  • 賛美歌の御神拝する十二月むねあかどり

  • 十二月今年に点数つけはじめ村先ときの介

  • 十二月ベンチで分かつ陽の縁むらのたんぽぽ

  • 街の夜は光の坩堝十二月室依子

  • 十二月連休明けを片隅に毛利尚人

  • 本棚の本を戻して十二月茂木りん

  • 友嫁ぎ一人カラオケ十二月もぐぬぬ

  • 十二月明日夜中鐘を聴く木曜日

  • 幾つ寝れば日本へ戻る十二月望月朔

  • トナカイの蹄の下の十二月元野おぺら

  • 立ち位置がわからないまま十二月momo

  • 十二月定期検査後エビカレー桃井ゆらら

  • 電飾明し節電の十二月桃香

  • 何者かに追はるるごとし十二月百瀬つきか

  • 季語までもせわしくみえる十二月森佳月

  • 家事の手の休めとハーブティー十二月もり葵

  • 定期預金の解約凍む十二月森居独人

  • 十二月西の窓辺に舞うほこり森佳三

  • 心技体知も得た老いの十二月森沢英治

  • 洗熊の庭に現はる十二月もりたきみ

  • 亡き犬の茶碗そのまま十二月森山博士

  • 何事も忘れのなき様十二月諸岡萌黄

  • 窓口はシニアサロンの十二月焼津昌彦庵

  • 十二月白熱灯やっとつく薬膳容子

  • 十二月の人差し指に絆創膏安井コスモス

  • 喧噪も白に閉ざさる十二月痩女

  • 十二月「今年は帰る」子のLINE柳井るい

  • 何かせねば何かせねばと十二月柳川耀一郎

  • まず通院済ませ十二月夕辺山内彩月

  • 食材と玩具探しの十二月山口笑骨

  • 重箱の曇り拭き取る十二月山口一青

  • リハビリに歯を食いしばる十二月山口雀昭

  • 子供の手しつかり握る十二月山崎かよ

  • 十二月睡魔はいずこワールド杯山下COO

  • 耳と目にはじける街や十二月山育ち

  • 食べ頃に干物盗られる十二月山田季聴

  • 孫のハグ三年振りの十二月やまだ童子

  • 十二月走ることなど今むかし山田文妙

  • あてもなし喧騒見送る十二月大和杜

  • 後悔と希望を計る十二月山野花子

  • 速達の印くつきりと十二月山野麓

  • 葉の落ちて雲に静脈十二月山本裕之

  • 色の無き空よ海よ十二月山本蓮子

  • 金の葉の魔法も解けた十二月ヤン子

  • 立つて弾くジャズの響や十二月遊羽女

  • 十二月の風新しく懐かしく有野安津

  • 玄関にスリッパ並ぶ十二月ゆうみりん

  • 断捨離の指先割れて十二月ユ綺

  • 横浜駅に四歳の我十二月雪井苑生

  • 暮れ行くやサクリ初期化へ十二月柚子こしょう

  • 息を掛け玻璃戸を拭くや十二月柚木啓

  • 恋も歴も最後は十二月に弓原トーヤ

  • 十二月プレゼントまでのお手伝いゆめの常盤

  • 断捨離と言いつつあらまあ十二月ゆるランナー

  • あきらめのあれやこれやと十二月陽光樹

  • 出征の凛凛しきセピア十二月陽のばぁば

  • 甲高き鳥の声沁む十二月夜香

  • 日記帳七十並んで十二月横田信一

  • 溜息の溜めで乗りきる十二月横浜J子

  • 無職でも暮らし忙しく十二月吉哉郎

  • 噴火した夜に目覚めた十二月吉岡幸一

  • 家々の窓の明るや十二月吉武茂る

  • 十二月吾子の妊娠陽性に四葉の苦労婆

  • タクト追ふ二万個の目や十二月余田酒梨

  • 街なみの眩しかりけり十二月よみ、ちとせ

  • さよならが一番似合う十二月楽笑

  • 年一度馬券購入十二月らりっく

  • 苔色の僧衣に欅十二月らん丸

  • もどかしきセンサーライト十二月流流

  • 十二月ひと息つくや猫丸く麗詩

  • 十二月郵便局へ奔るらむ烈稚詠

  • 高速に「広島」の文字十二月蓮花麻耶

  • 十二月芳友幸あれ数え唄蓮風

  • 十二月デイサービスへ行かぬ母六地蔵と狛犬

  • 十二月里帰りする青い鳥若宮直美

  • 吐く紫煙剥げたネイルよ十二月わたしわたし

  • ベンチには人影在らず十二月海神瑠珂

  • 膝に猫いる日の増えて十二月渡辺香野

  • 留守電のライトちかちか十二月渡邉竹庵

  • 十二月いつか怖い月になり哉渡辺ヤスコ

  • お湯割りで煮やつこつつく十二月渡辺陽子

  • 久々の顔見て安堵や十二月和の光子

  • 人の世は…ふと呟やける十二月侘介

  • 空席の夫の手帳や十二月笑笑うさぎ

  • 池埋まる白鳥啼かぬ十二月小野ぼけろうじん

  • 雪と闘う覚悟する十二月芝G

  • 十二月澄んだ空気に流星群園蜩

  • 業火めく十二月の夕焼け時高橋ままマリン

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増え、混乱が生じています。せめて、俳号に苗字をつけていただけると有り難く。皆で気持ちよく、この広場にて共に学び楽しめますよう、俳号の付け方にご留意ください。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。


●俳句の正しい表記とは?

  • 火焚鳥 庭で暖とる 十二月山田律子
  • サッカー観戦、勇気と眠いな、12月東海の北一グラス

「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●兼題とは

  • 五日ほど納屋から出でし聖樹かな池谷勝利
  • 初雪のみぎりに心モヘア色イチゴまんじゅう
  • 指折りて病落ち着き古暦市場さと枝
  • セール中ネット通販大わらわ大島すみ子
  • 冬ざれや人影失せしシャッター街垣岡凡才
  • 冬ざれや阿蘇の連山銀世界亀井汀風
  • 孫に送る母の手仕事雪聖夜けっぺ
  • 冬冬至にて吹き返すかぜ強くなり清水春風
  • ピザ窯の透けゆくがごと秋夕焼け杉浦昌志
  • スマホ操作息吹きかけ悴む手瀬野広純
  • 光る袖水洟拭うガキ大将西川秀和
  • 賀状書く消しゴムハンコ自慢しぴりけん
  • 眠る街私は白息通勤に山口麻利

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は冬の季語「十二月」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。


●前回の兼題

  • 末期癌のをとこ冬凪のぶらんこ尾頭朔江ヱゐチ
  • 冬凪やクレッシェンドの風立ちぬ唐草もみじ
  • 冬凪を漉いて翅なき鶴を折り銀紙
  • 冬凪や子の行きつけのつけ麺屋まつたいら西
  • 冬凪は臍を見たことないだろう杢いう子

 〆切に遅れました!残念……


●十二月と似た季語ではあるが

  • 年の瀬のなんだかうれし忙しさ荒星笑石
  • 去年今年歴史変はらず変へられず肝付雲水
  • 山銀杏たおやかなる師走かな小林ゆき
  • 冬急ぎ足年末の街ざわついてさんぴん茶
  • メール便ウイズコロナの師走かな高井雅行

 本サイトで出題している兼題は季語です。テーマではないので、「十二月」という季語を詠み込む必要があるのです。


●確かに「十二月」なのですが……

  • 十二月八日のイマジン鎮魂歌西尾至雲
  • ありありと十二月八日おもい今山辺道児

 確かに「十二月」とありますが、「十二月八日」は人事の季語になります。太平洋戦争の開戦日です。詳しくは歳時記を参照して下さい。


●もしや十二月(仲冬/時候)とあるのを勘違いした?

  • 仲冬や戦火報道見る夕餉奥の昼行燈
  • 仲冬や前ゆく君の影薄し梶浦和子
  • 仲冬や窓に薄き朝日入り梶浦正子

 兼題「十二月」の下に、(仲冬/時候)と書かれているのは、この季語が「仲冬」=冬を三等分にした真ん中の時期、「時候」という分類、であることを示しています。


●文字化け

  • 矜羯羅も制?迦もいる十二月幸久
  • けん玉の?げや丸みや十二月塩沢桂子
  • 十二月東京ドームで会う???てんてこ麻衣
  • ?啄のかすかな兆し十二月まるにの子

文字化けは不可抗力に近いけど、文字化けしそうな字を予測できるかも。


●数詞の表記

  • 12月我がアバターも襟を立て相沢薫
  • もっきりは曲がって奥へ12月acari
  • 全惑星集合の空を観る12月聰子
  • 下戸の吾も「芝浜」に酔う12月あくび指南
  • ウキウキと昔はしたな12月飛鳥井薫
  • 12月ポケットの中の彼女の手あすなろの幸
  • 渡蟹孕んだ頃か12月雨降りお月さん
  • 雑踏の吐息あふれん12月あらら
  • 返礼のチョコペン凝る12月石垣
  • 12月うなじの青き托鉢僧井上幸子
  • 急き立てる風の匂いよ12月江川月丸
  • 人急かすごと鳴く鴉12月S・葉子
  • 買い物忘れリストメモする12月大本千恵子
  • 華やぎは知らず終いの12月大山小袖
  • 12月イルミの花も灯り落ち岡塚敬芳
  • 人混みと空っぽの空12月海堂一花
  • 市議選のポスターまんま12月カオス
  • ゲネプロのホールの熱き12月花鳥風猫
  • 12月山の向こうの鬼笑ふかもめ
  • 味噌樽もあと一さじの12月木口まり子
  • 12月少し厚めのハムを盛る鳩礼
  • 畑休め根菜寝かす12月桑原和博
  • 1本の白髪を切って12月こうやこう
  • 何度でも鍋が食べたい12月の夜こふゆ
  • 将軍の南下いくたび12月齋藤杏子
  • 神仏を納めてすがし12月さくら亜紀女
  • 中七が空白のまま12月ささきなお
  • 12月やっと終わった厄年やさざんか
  • 神木の虚暗やみて12月平たか子
  • 12月新カレンダーは背に待たせ高井利峰
  • 思いきり剥がす暦は12月田鶴子
  • 想い出す母の命日12月谷口美奈子
  • 12月海を眺めつ物思ひ柘植雅一
  • 12月7福神も笑顔なり冨川きよこ
  • 諸々の支度そこそこ12月友@雪割豆
  • 12月火の用心の赤い旗中島知恵子
  • 人混みに異邦人なる12月仲操
  • 12月あっという間にお正月#りなりな
  • 12月働き者の顔になり花弘
  • 来年の景色めくって12月原田民久
  • 12月コーヒー味わう受験の子ビッグリバー母さん
  • 手をつけず置くも一手の12月ひな扶美子
  • 12月カレンダー選びに時間かけひめりんご
  • 12月なんにもしない過ぎてゆく平本文
  • 旅先で子は逞しい12月ぶるーふぉっくす
  • 12月返せぬままの車椅子細川小春
  • 鶏もももおめかししてる12月凡狸子
  • 散り花の紅きをよけて12月松本牧子
  • なぜだろう12月だけ早い気がするまゆこ
  • 12月ローマの空は青優し満生
  • 爺婆は喫茶に続続12月宮本モンヌ
  • コロナ禍の接種5回目12月恵のママ
  • 12月一気に急ぐやり残しもか
  • 手で足りぬ多難かぞえる12月杜乃しずか
  • 稼ぎ時定価でも買う12月やのかよこ
  • 12月もうすぐ終わる日は昇る山崎鈴子
  • 独り身に慣れて何する12月山吉白米
  • 歩行リハ猫が付き添い12月よしだばあば
  • 帰宅後も片付け続き12月わきのっぽ

 俳句では、基本的には漢数字を使います。季語の場合は尚更です。
 意図的に、漢数字でない表記をすることもありますが、その場合は内容に似合っているか否か、吟味する必要があります。


●季重なり

  • 母の足しもやけ破裂十二月あいあい亭みけ子
  • 渋滞の顔に夕やけ十二月赤波江春奈
  • 十二月みかんをせがむひよどりの声飯田むつみ
  • 白菜と大根干して十二月いつかある日
  • 先考のツバキ開花の12月小林仁美
  • 十二月寒さ身にしむ風の声椎羅漢須
  • 十二月は山に降る雪すぐ消えて高橋紀代子
  • 十二月辻風巻いて空也忌や旅女
  • 十二月寒さをこえる十二月なかにしはやと
  • 十二月夜の身を焦がす吹雪かな成瀬ぽんぽこ
  • 十二月六甲うっすら雪化粧にえ茉莉花
  • 冬眠がバッチリ決まる十二月へなけん
  • 煩悩の数着ぶくれて十二月星雅綺羅璃
  • 靴底のカイロも凍る十二月まじかにゃんちょろう
  • お飾りの小さくなりぬ十二月松岡玲子
  • 12月笑いなはれと白い息樅山楓
  • 十二月ゆく波蒼し冬の海森りえこ
  • 丸くなる温々ふとん十二月豐田雄二郎

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「十二月」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。

  • 十二月もマスクいっぱいポケットかな四郎高綱

 元々は冬の季語「マスク」ですが、コロナ禍で季節感を失ってしまっている感じです。「マスク」が再び、冬の季語として認識されることを祈るばかりです。
 掲出句の場合、下五「かな」は利いてないし、音数もかなり溢れてしまってますね。

  • 【添削例】十二月のマスクいっぱいポケットに

 上五字余りですが、「十二月のマスク」と季語を合体させる技です。


●読みに困った句

  • もおと来てもおと過ぎ去る十二月vivi

 副詞の「もう」?声?音?そのあたり判断しにくい一句でした。

  • 十二月深新積もる枕かなポト

「深新」?深々?意図的なのか変換ミスなのか……。

  • 書初の準備オタリアの十二月古賀

 オタリアという動物が書初めをするニュースを詠んだ句?今回、オタリアという生き物を初めて知りました。選をすることで、雑学の知識もたまっていくのが、俳句だなあと。

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12月の兼題

「雪催い」

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