夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
11月の審査結果発表
兼題「帰り花」
冬の初めに、小春日のようなとき、桜や躑躅が多いが、梨、桃、山吹などの花が咲く。
寒い中、ぽつぽつと咲くので、盛りを背景に想えばどことなく儚く、寂しげである。
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
返り花鶴はもともと真つ四角
椋本望生
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夏井いつき先生より
「返り花」とも「帰り花」とも書くこの季語。「返り花」の「返る」は、もとの状態に戻ることを意味します。作者がこちらの字を選んでいるのは、中七下五「鶴はもともと真つ四角」のイメージからの判断。佳い選択です。
「返り花」とは、基本的には桜の二度咲きのこと。躑躅や山吹などの返り咲きを指す場合もありますが、この句は桜と読みたいですね。日本の美意識を代表する桜と折り鶴を、少しずらして取り合わせてくるのが玄人のセンス。桜はもともと春に咲くものですよ。そして、この複雑に折られた「鶴」はもともと「真つ四角」な一枚の紙なのですよと語りかけます。初冬にひらく「返り花」と一枚の紙に戻ることもできる「鶴」、なんと美しい二つのひかりでしょう。
帰り花さびしき鳥を待つ時間
ぐ
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「帰り花」の「帰る」は、元の所に戻るの意。「鳥」がここに戻ってくるのを「待つ時間」を表現するためにこちらの字を選択しています。「さびしき鳥」を待つ作者の心を慰める「帰り花」です。
太陽は今日も灰色帰り花
松廣李子
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初冬の「太陽」は「今日も灰色」です。「も」という助詞が示す変わらない日常を、ポッと灯すかのように「帰り花」が咲きます。「灰色」との対比という意味でも色のある「帰り花」を想像したい一句。
佇むや帰り花とは日の凝り
播磨陽子
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「帰り花」の咲くさまを「日」が凝ったようなものだと表現。こちらの「帰り花」は桜だと読みたい一句。上五「佇むや」によって、人物と時間が切り取られます。「日の凝り」は純度の高い詩語です
ひしやげたる家に帰り花灯る
宮部里美
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「ひしやげたる家に」が8音、「帰り花灯る」で8音。字足らずですがその呟きに思いが籠もります。災害で壊れた家か、打ち棄てられた生家か。「帰り花」の小さな光は、再生の希望か深い諦念か。
薬抜け戻る月経帰り花
都乃あざみ
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ある種の「薬」は女性ホルモンに影響を及ぼし、月々の生理が止まってしまうことがあります。やっと「薬」が抜け切った証拠に「月経」が戻った。その安堵に咲く「帰り花」に、己を投影します。
車いす体験の庭帰り花播磨陽子
甲比丹の金の右眼や帰り花播磨陽子
返り花時々腫れる淋巴腺冬のおこじょ
忘れ花忘れ形見の美しき眉冬のおこじょ
鈍色の母の紬や帰り花みやこわすれ
絡繰りの箱開けられず帰り花みやこわすれ
膨らみは骨折の痕帰り花あいだほ
返り咲く桜木を明日伐る話あいだほ
帰り花めやにの多き老猫来ぐ
帰り花還暦過ぎた元ヒーローぐ
出航の吾見る猫と帰り花さとけん
東京もたまには恋し帰り花さとけん
鈍色の空を剥がして帰り花じゃすみん
避難所に星を数える帰り花じゃすみん
狂い咲歯を剥きさうな心地してみかりん
帰り花奥さん家出して二年みかりん
考に似る声バスにあり帰り花一斤染乃
あの月をきゅんと絞って帰り花一斤染乃
帰り花ひとつ強情そうな赤可笑式
慰霊碑は海の正面帰り花可笑式
ダンベルの夫たんぽぽの返り花中原久遠
若後家の乳暈めける忘れ花中原久遠
鄙の湯に大人のおもちゃ狂い花ぐずみ
帰り花弥生の土器のレプリカにぐずみ
鉄橋の補強の跡や帰り花けーい○
帰り花技能実習生帰国けーい○
軍港は波静かなり帰り花いくちゃん
薄墨のはがき一葉返り花いくちゃん
黒鍵の音色優しく帰り花さくやこのはな
謎多き写真の人よ帰り花さくやこのはな
二度咲や童貞じやないふりをしてすりいぴい
任侠の父死んだとか帰り花すりいぴい
線量の高き老木帰り花テツコ
元寇の海はおだやか帰り花テツコ
帰り花あるじの居らぬ石舞台とかき星
海を向く砲台跡や忘れ花とかき星
燕の巣のちさき骸や帰り花としなり
契り置く再会反故に帰り花としなり
帰り花夫婦で暮らす施設かなとしまる
帰り花話のはずむ一周忌としまる
帰り花今日は娘と分かる母にゃん
帰り花水占浮かぶ御神水にゃん
手をつなぎたくなる木瓜の帰り花はちべえ
母の手を初めて引くや帰り花はちべえ
返せぬを返すと言ふな返り花ひでやん
一円を軽んずなかれ帰り花ひでやん
帰り花世話を焼きたい父でしたゆすらご
帰り花あなたの歳になりましたゆすらご
真青なる相模の海や帰り花ラーラ
帰り花寡婦なる母の恋ひとつラーラ
帰り花ハーレーで来る老ふたり葦たかし
龍のごと流るる海よ帰り花葦たかし
交番に巡査を待たむ帰り花伊予吟会宵嵐
帰り花卯建を上げし祖父の家伊予吟会宵嵐
永遠と書いて破つて帰り花或人
帰り花あれだけ嫌な思いして或人
平飼ひの地鶏跳ねるや帰り花加藤哲
訳ありの過去は問ふまい返り花加藤哲
懐中時計の進まぬ針や帰り花歌鈴
人殺す神人生かす神かへり花歌鈴
霊園は海見える丘帰り花花南天
逢ひたき人の夢へ出掛けて帰り花花南天
眼帯の少女早足帰り花樫の木
帰り花駅前で買うカレーパン樫の木
ただいまとほころぶやうに帰り花玉木たまね
行間に秘す一行や帰り花玉木たまね
海よりも少しだけ濃い帰り花桑島幹
帰り花吾子との話噛み合わず桑島幹
帰り花なみだはあしたまででない古瀬まさあき
灯台へ気球押す風帰り花古瀬まさあき
公転のスピード緩む帰り花古田秀
エチュードの休符聴くやう帰り花古田秀
帰り花事はかどらず微熱あり古都鈴
くらくらと微熱かさこそ帰り花古都鈴
遊園地にクレーンの爪帰り花紅さやか
無人駅の集札箱や帰り花紅さやか
狂ひ花偏西風は蛇行せり克巳
片麻痺の女房と映画返り花克巳
帰り花薩摩おごじょの眉の美し彩楓(さいふう)
帰り花百年前の星あかり彩楓(さいふう)
帰り花まず後書きを読んでをり斎乃雪
ほつほつと稀薄な空を帰り花斎乃雪
友達です友達でした狂ひ花次郎の飼い主
人形の手術待つ午後帰り花次郎の飼い主
仇討ちとも抜け駆けとも帰り花七瀬ゆきこ
泣くためにかける曲あり帰り花七瀬ゆきこ
吾子の名を刻みし石や返り花小池玲子
吾の歳の不思議を想ふ帰り花小池玲子
サンプル瓶の香りあまやか返り花上原淳子
帰り花ハーモニカのごと風の音上原淳子
わりと挙手できる方です帰り花青海也緒
やはらかなこころをおるなかへりばな青海也緒
死ににゆく猫は小走り帰り花青萄
五つ六つまだ咲くちから帰り花青萄
隙あらば返り咲くのよたんぽぽは雪井苑生
摘んでやるかくも暢気な帰り花雪井苑生
旅先のやうな家路や返り花倉木はじめ
あたらしい母のむつごと帰り花倉木はじめ
帰り花にけふの運勢使ひけり多々良海月
励ましはむしろ辛くて帰り花多々良海月
帰り花初めて買ってみた玉露大小田忍
帰り花願いの叶う指輪買う大小田忍
忘れ花政治のいろは教わりぬ大弐の康夫
イルミネーション笑う帰り花囁く大弐の康夫
ゆるやかに衰ふ国の帰り花中岡秀次
帰り花平等院の水しづか中岡秀次
返り花現像液に浮き上がる宙のふう
重力の少しゆらぎて返り花宙のふう
空耳に父の声する帰り花天満の葉子
帰り花巫女の鈴の音波打てり天満の葉子
正露丸噛み砕く夜や帰り花田川彩
帰り花朝はたのしい夜さみしい田川彩
帰り花孕みしキリンの胴震ひ登りびと
帰り花死んじゃうなんて何か変登りびと
返り花乳首あらはに哺乳類内藤羊皐
信玄に影武者数多帰り花内藤羊皐
重力は今風となる帰り花白よだか
5cmの癌摘んだ母帰り花白よだか
よく怒りすぐ泣く庭に帰り花百合乃
返り花サファイア婚はすでに過ぎ百合乃
帰り花弾けなくなった水の戯れ麻衣
帰り花妣のことばかり詠んでゐる麻衣
帰り花まだ我にあり嫉妬心夢見昼顔
ドッグイヤー幾度も開く帰り花夢見昼顔
帰り花空がどんどん遠くなる野ばら
帰り花声が綺麗だねと言はれ野ばら
後添えは持たぬ約束帰り花野地垂木
崖下る気力体力帰り花野地垂木
帰り花見てきたような空のいろ唯我独善
帰り花何か卒業した気分唯我独善
帰り花父のやうなる友のゐて由づる
フラメンコギターの余韻帰り花由づる
横顔の美しき猫なり帰り花露砂
掌の厚き夫なり帰り花露砂
ゴリラにはゴリラの想い返り花鷲尾さゆり
返り花すこしねじれて私似ね鷲尾さゆり
返り花まさお義弟の三回忌朶美子
帰り花一輪空に星一つ朶美子
人波を他人のそら似帰り花邯鄲
帰り花地方紙記事のしづ子かな邯鄲
朝日とはまこと美し帰り花椋本望生
ぱんぱんの薬袋や帰り花宮部里美
シビ王の肉の欠片よ帰り花松廣李子
帰り花梅か桜か確かめに都乃あざみ
返り花しけたマッチに火が点きぬあー無精
墨をする音のほかなし帰り花あつちやん
帰り花きつぱり別れたはずだつたあまぶー
さしすせそあっさり味に帰り花いわきりかつじ
帰り花鎌倉にある切通しうい
狛犬は備前焼なり帰り花うさぎまんじゅう
湯の郷の湯までの廊の帰り花うたけいこ
力抜きわたしはわたし帰り花うっしー
帰り花の風もうあいつらはいないうどまじゅ
未練てふ色はむらさき帰り花おくにち木実
人並みの道外れ愉快狂い花おざきさちよ
帰り花時藥もう効くころかおぼろ月
厄介な言葉は捨てた狂咲おんちゃん。
たたずんで老いのはじめや帰り花カオス
帰り花口説き文句に負けましたかつたろー。
道ならぬ最後の恋や狂花かぬまっこ
茶をすする硝子隔てて帰り花かわいなおき
明後日はポチの命日帰り花きなこもち
通勤の波黒めきて帰り花くま鶉
帰り花さうか私は風だったクラウド坂の上
潮風の通る廃校帰り花くるみだんご
ままごとのお椀に溢る帰り花くるめ絣
帰り花帰還困難地区の庭ケンG
林中だけつづく雨帰り花サイコロピエロ
置屋から素足の下駄や帰り花さとう菓子
合併と言ひて閉村帰り花すみ
思ひ出し笑ひの円空仏や帰り花せり坊
帰り花スコップで混ぜる山と川ちま(4さい)
帰り花母の点滴替える朝てんてこ麻衣
こと終えて道の無音や帰り花ときこ
帰り花いくとせ同じ通勤路ぬらりひょん
頬を上げ笑みらしきもの帰り花ねぎみそ
帰り花いつしよに落ちてゆきましようはまのはの
白無垢の内の愁眉や忘れ花はむ
美しき語でかたりあう道帰り花ひな芙美子
大空の映す記憶か返り花ふじこ
友の髪ある日金いろ帰り花ほしの有紀
見る時はいつも風あり帰り花まち眞知子
青空へ吸ひ込まれさう帰り花まんたろう
帰り花過疎の風とは豊かなるみなと
陽の中を児のしゃがみをり返り花みやかわけい子
帰り花聴力検査で手をあげたむらさき(6さい)
狂い咲き虫にひかりに猫の糞もつこ
帰り花ほつれる波のしろき翅モッツァレラえのくし
五年目の授かり物や帰り花ヤッチー
かえりばなだいじなもんがみえるんやゆいのすけ4さい
観音の古刹は満車帰り花ゆこ
老妻の笑みて穏やか帰り花ゆづ
返り花再就職の面接日愛宕平九郎
帰り花何かの知らせなのかしら伊藤順女
帰り花あわい嫉妬の曇り空井上繁
雲流る音符のごとき帰り花遠藤百合
万雷の湿気った拍手狂花塩谷人秀
ドグラ・マグラ狂い咲きたる木に凭れ塩谷人秀
故郷よ廃炉の村に帰り花横山薫子
帰り花タンゴながして夕支度岡れいこ
母は今日言葉少なし忘れ花加裕子
墓守は俺で最後と帰り花夏柿
音程の狂ふハモニカ帰り花花伝
三ヵ月振りの散髪帰り花海碧
帰り花眺む神父の髪白し海老名吟
はんちくの故郷への道帰り花(はんちく=中途半端なこと)灰田兵庫
帰り花今年も知らす喪中かな閑話休題
帰り花のエストレリータ輝けり菊原八重
夜も淡き旋律帰り花の風吉良水里
二度咲や誤読も載せて広辞苑久我恒子
廃校の時計の音す帰り花居升典子
お形見の引き出しは空帰り花薫子
帰り花見つけて歩幅広げたり原貴美子
君の声はスマホに遺る帰り花原口祐子
六四の過失割合帰り花湖雪
帰り花見置きて汽笛沖に消ゆ溝口トポル
一輪返り咲く一人友が消ゆ綱長井ハツオ
帰り花寄席は笑ひに行く処高橋寅次
次々と年賀欠礼帰り花今井淑子
アルバムに少女の妣や帰り花根本葉音
帰り花てのひらにあんまんの熱佐藤儒艮
帰り花紙の恐竜吠えにけり砂舟
返り花散る真後ろに星とがる榊昭広
静まりし縄文遺跡帰り花三茶
思ひ出が宙ぶらりん返り花山田啓子
制服とけふで別るる帰り花宗本智之
ゆるゆると呆けゆく義母よ帰り花小鞠
島猫の小さな欠伸帰り花小山晃
帰り花銀髪といふお洒落して小川めぐる
帰り花京三条の刀傷小倉あんこ
塩害の残る大路や帰り花小嶋芦舟
徘徊の父探しけり帰り花松永裕歩
まっすぐとはどちらの道や帰り花松野菜々花
図子うめる黙のさざ波帰り花上田明子
わたくしとなつてしまつた帰り花城内幸江
平らかに津波の海や帰り花深幽
失せ物は出る時あれど帰り花真繍
天主堂再建の地に帰り花真壁正江
帰り花少女の硬き背中あり真野悠
身の内に水の流るる帰り花水夢
二度咲や退職願したためる瀬尾ありさ
帰り花二重瞼の叔父と考西川由野
特養の帰路に坂あり帰り花西村小市
訪ね来し蛇姫の墓碑帰り花青い月
今は戦前かと返り花に問う石垣エリザ
郵政の株を手放し帰り咲双子の父亮介
口論を諌められたり帰り花惣兵衛
帰り花誰もあなたを笑わない増田典子
摩天楼静みゆく濱帰り花多事
わがままを許してあげる帰り花多田ふみ
わすられぬ背信のよう返り花大久保響子
帰り花地球秩序の不整脈大山小袖(俳号)
帰り花娘時代を生きる母大槻税悦
騙されても私はいいの帰り花大本千恵子
褐色の気配の中に帰り花谷口あきこ
放し飼いコーチン跳ぶや帰り花知足
釣り人の瞑想ながし帰り花中山月波
帰り花きっと会えると待っている中山清充
復路にも寄れずじまいよ帰り花衷子
オペラ座に背信揺れる帰り花辻が花
鍵束の錆びた百年帰り花天野姫城
頓挫したダムの夕暮れ帰り花田畑尚美
帰り花焼け棒杭を忘るころ田村利平
帰り花祖母のありがとうの如く渡邉一輝
かへりばな火星の雪はきれいですか土井探花
帰り花旅の一枚遺影とす藤原訓子
好いてくれる人と夫婦に帰り花藤色葉菜
帰り花婦人科棟の話し声徳
朝刊に冤罪の文字帰り花楠央
外環道のぐんぐん延びて返り花猫愛すクリーム
帰り花カーペンターズの澄んだ声波の音
サーカスの一座の跡や帰り花白樺みかん
帰り花炊き出しの列静かなり白米
帰り花退学届け清書せり彼方ひらく
小次郎と名づけたき風返り花比々き
帰り花お目もじめきし帰郷かな比良山
一人分のドリップ早し帰り花富山の露玉
ささくれの街にしなりと帰り花風雅唯
結末は壊すだけなり返り花風来
孫と折る恐竜吠える帰り花福ネコ
歳時記に父の栞や帰り花文月さな女
しろくまのため息一つ帰り花片岡佐知子
あゝこれも君のかけらか忘れ花穂積のり子
帰り花山と言う名の小さき丘豊田すばる
まだ杖の要らぬとみえて帰り花本上聖子
帰り花乳房失くても愛します凡鑽
瘡蓋をはがせし痒み帰り花蓑田和明
帰り花秩父の宿に読むTOTA明惟久里
帰り花父母なき家となりにけり門未知子
廃屋にうたたねの仔や帰り花野ざきひふみ
帰り花東京の空尖りおり野ゆき
われ独り投票すなり帰り花野胡のこ
層雲にすくむ五片の帰り花野曾良
独り寂しく星に立つ帰り花野中泰風
Unicodeに帰り花の絵文字がない野良古
帰り花誰も気付かぬ誕生日有瀬こうこ
病む人もよく笑ふ日や返り花有本仁政
帰り花形見分けする三姉妹葉月けゐ
役名なき大部屋俳優忘れ花鈴木(や)
南座にのばす枝先帰り花鈴木由紀子
帰り花坂の途中のプロポーズ鈴木麗門
桜観は翆微の中や帰り花巫女
告別の彼にも見せよ帰り花楡野ふみ
帰り花うまく吹けないハーモニカ洒落神戸
バーボンはロックと決めて帰り花淺野紫桜
あの日から夢で見る夢帰り花祺埜箕來
裏窓の若き夫婦や帰り花芍薬
川べりの空き缶拾う帰り花いいむらすず
アルバムのうら若き母返り花ぼたんのむら
帰り花愛というまあるい形ほろろ。
帰り花保育園より電話かな菊池洋勝
百年の造り酒屋や帰り花中西柚子
閉ざされた家の表の帰り花吉田末利子
血管の浮いた手の甲帰り花馬場崎智美
帰り花貴方といてもさみしいよ江川月丸
初恋が消えし豚舎の帰り花正岡恵似子
帰り花いぢらしくつて少しばか雪うさぎ
帰り花ハシビロコウはじっとして曽我真理子
こころとは遠きところよ帰り花藤田康子
帰り花探検してたら見つけたよ西村咲音
あいうえおやっと言えたね帰り咲きかもめ
入院の子どもの笑顔帰り花原田民久
木漏れ日を独り占めせり帰り花野木編
観音のまなこの先や帰り花伊藤節子
観音で子規にあいけり帰り花杉本時子
還暦を迎えてふたたび帰り花まゆ
還暦の恋にも似たり帰り花いのり
実らせん五十路の恋や帰り花渚
帰り花この齢にきて恋なんて晴好雨独
恋焦がれ苦しい程に狂い咲き重仁
帰り花思い出包み風に耐えAKI
帰り花雨しのぐ葉も頼りなくANGEL
幹削げしフジの三度の帰り咲きKISOBA・UFO
帰り花も癌もいのちのエラーかなmaimai
何事も無いよな顔の狂い花mika-na
国境の果てに色添ふ帰り花momo
狂い咲き初めて味わう色恋沙汰あけび二号
ポカポカで眠たくなるよ帰り花いずみ
ババ来たよヘッドライトが帰り花いっちゃん
帰り花柔らかな陽にほころびていろをふくむや
忘れじのいじらしさかな帰り花オカメインコ
ゆっくりと母の指さす帰り花おっばあ
病窓に温かきかな返り花お品
亡き友の声聞こえたり帰り花かわせみ
戦下生きフラ舞う婦人帰り花キョロちゃん
千の黙の一挙手清し帰り花くりでん
返り花帰省の便でも作ろうかくる
ひとりぼち目立つピンクの帰り花ここな
見上ぐれば明るさ背負う帰り花こすみ
あの人とあの日この日や帰り花こずみっく
胸キュンと韓流ドラマに帰り花ことこ
帰り花帰らぬ犬との散歩道さかたちえこ
ドンマイとつつく枝さき忘れ花さだとみゆみこ
二度咲きやベリーショートに赤い靴シンディーロウ婆
ラーメン屋も実家も遠き帰り花しんびしんび
水瓶の底貫いて帰り花髙橋眞弓
焼香の列で見上げし帰り花たじま
塩害に育葉うばわれ狂い咲きたすく
何か言いたげ城跡の帰り花てまり
きみ送る野辺に一輪帰り花とっちん
立ち止まるポチの鼻先かえり花とみことみ
素っ気なく名を呼ぶ声や帰り花なおこ
足重き夕に一輪忘れ花なごやいろり
帰り花逝きて帰らぬ人を待つななみ
回覧を届けて話題は帰り花なんじゃもんじゃ
顔なぞる革の表紙や帰り花ねがみともみ
帰り花待てぬ月日の思いとはねこバアバ
板塀のすきまを木瓜の帰り花のど飴
帰り花人の世にもや咲けよ咲けの菊
一瞬で視線を集む帰り花パシフィッコ
ベランダの手終い鉢に帰り花パッキンマン
急登や鼓動の先の帰り花ハルノ花柊
帰り花『ありがたいね』と父が言うパンダ
再会を予告するかに帰り花ひかるこ
読みと書き視線を投げて帰り花ひっそり静か
鴨川で足伸ばし対岸の帰り花ひできの
「待たせたね」聴くひとり咲き帰り花ひろ夢
幼き日狂い咲きなり山桜ふじかよ
我がいえの二本の花の帰り咲くふじたけ
腹筋や六つに割れて帰り花ふみゑ
帰り花凛と佇む強い意志ヘッドホン
古希迎ふ通夜の家路の帰り花ポンタ
焦燥の初老となりて帰り花まつぽっくり
カナリアを埋めた庭咲く帰り花ミセウ愛
帰り花ふるさと遠く友遠くみつえ
何の花?話すきっかけ帰り花みなお
ふと気付くいつもの道に帰り花やったん
くるい花世に何お問う温暖化ゆめおとめ
帰り花微かに不安ただよわせよにし陽子
亡き母の庭に立つかな帰り花ライナス
客去りて遺影の笑みに帰り花りんご
一人でも平気なのよと帰り花るりまつり
骨壺を抱いて見上げる帰り花亜美子
廻り道して教えたし帰り花愛燦燦
帰り花かそけき白の陽に溶けて安田蝸牛
帰り花見つけし友の教え顔安曇野多恵
手術せし母の目に帰り花咲く安部さくら
亡き人に想いかさねる忘れ花伊藤桂子
青空や人立ち止まる帰り花遺跡納期
病室の窓見つめる瞳帰り花井村澄子
たそがれの女子会終えし帰り花一枝
恨みますそれだけのこと帰り花稲垣加代子
青空へ広がる枝に帰り花稲垣由貴
忘れ花咲く力あり我になし右茶
通勤の首同じ向き狂い咲き右龍
人によりも空に親しむ帰り花羽沖
我が身こそ帰り花だと泣く背中卯さきをん
秘め事の翳り払ひて帰り花影山治子
日残りて指折りし間の狂い花永井基美
空広し倒木の森の帰り花永花
瑠璃の空ぽつりぽつりと帰り花円
帰り花ぽつんとひとつ青い空園田みゆき
一人旅挨拶かわす帰り花延杜
杖をつく老父と見やる帰り花縁恵
厳かに山門の在り帰り花塩沢桂子
住めぬ家の土間へ覗くや帰り花横井隆和
わが庭に来年またねと帰り花加藤俊子
狂い花世に何思う温暖化加藤俊子
懐かしき亡母(はは)の便りか帰り花嘉藤継世
やぶにただ一つ紫帰り花河合久子
たまゆらの恋か夜明けの帰り花河村あさみ
その折に帰り花らしぷろぽうず河畔亭
耳なくば音音ならず帰り花花屋
帰り花きのふの夢はあすの夢花節湖
黄昏の鞍馬の山よ帰り花華
修行僧足赤く染め忘れ花海口あめちゃん
忘れ花吾の引越し祝いけり馨子
渓谷の道標なる帰り花蛙里
帰り花これから医者をめざします笠原理香
帰り花野次も懐かしOB戦葛谷猫日和
置き去りの帰り花見る我も又蒲公英
爆撃や世紀外れの狂い花柑斗梨舞礼
若作りうそぶく妻や帰り花甘平
友逝きて車窓にふっと帰り花閑蛙
老母(はは)と見ゆみなわの記憶忘れ花岸本元世
帰り花「夕顔」のごと石山寺岩野翠
帰り花吉野峠の読めぬ句碑幾恋良石
寡夫の庭うす紅二輪帰り花紀泰
佳きことの二つ三つ有り戻り花亀山逸子
蒲公英の帰り花あり地の明かし亀山酔宇
主をらぬ庭の影濃き帰り花亀田荒太
風吹きて花びら散りぬ狂い咲き吉成しょう子
うさばらし酒に酔わんと帰り花吉田びふう
帰り花王将の前に歩歩歩吉田好大
帰り花呼ばれて歩く迷い道橘薫
標本は散る前に折る帰り花橘美智世
きみがいた白い朝に帰り花橘涼子
あの人と別れたという帰り花宮坂変哲
急ぎ足引き止めずや帰り花宮武桜子
桁ひとつ多き財布や帰り花京野さち
侘しさと希望と背負って帰り花銀長だぬき
父去りし庭石の陰帰り花空龍
小銭借り引いた恋くじ忘れ花栗子
仄暗く手には届かぬ帰り花恵花
目赤くうるみうつむき帰り花恵翠
したたかや他者と競わぬ帰り花敬子
憲法は真珠湾の帰り花畦布哲志
青き淵木漏れ日に映え帰り花蛍子
むととせを誰が為に生き帰り花月の砂漠
ほろ酔いの二人の先に返り花月夜同舟
主逝き庭に一輪帰り花原善枝
二度咲きの花の思いや浮きし雲原田
帰り花窓の遮る風の音原田民久
最期にキミはマァ帰り花ねとひとり泣いて笑ったらしいね言調
つつじ垣ひときは白き帰り花古史朗
余す時幾ばくかとて帰り花戸根由紀
帰り花老いの暮らしに色そえる枯楓
懐かしの唄口ずさむ帰り花後藤博文
帰り咲く青き鉄線天空へ光子
帰り花夕暮れのアスファルトに影独り幸子
空見上げ鳥ついばむ実帰り花弘
降りだして困った顔の帰り花江口小春
登り坂青空白き帰り花香子
村の蜂蜜の味濃き返り花高橋なつ
返り花落暉の庭のたたずまひ高村安子
もう一度主役になりたい帰り花合馬博子
ふるさとは被災地となり帰り花佐藤千枝
帰り花幸多かれと娘の縁佐保子
まどろみのみどり児クシュン帰り花坂巻がみ青まきがみ
帰り花歩くわたしにガンバレと桜月夜
ひとり来て独り去り行く帰り花桜姫5
ピーカンの空を見上げる帰り花三浦ごまこ
帰り花渋滞の列見飽きたり三河五郎
頤をくいと迷ひ子帰り花山沖
風の庭枝が窓打つ帰り花山口トシ子
帰り花風に吹かれてきみのもと山上理沙
藪の中犬の鼻先忘れ花山川恵美子
温暖化地球規模での狂い咲き山川芳明
求めぬということ清し帰り花山内彩月
帰り花陽気に浮かれ早散りぬ山本康子
紅き景透けて帰り花の淡し史
園児らの指さす先に帰り花四十雀
帰り花列車一本やり過ごす市山利也
赤まみれ纏いて嬉々と狂い咲紫雲英
生きる人死する人にも返り花紫小寿々
背すじ伸ぶ鼻孔開かる帰り花児玉香織
風の音聴いているのか帰り花鹿嶌純子
行きずりの人にも教へ帰り花室よりこ
喪の明けて雨戸放てば帰り花篠崎幸惠
幾度も腰を屈めて忘れ花柴紫
帰り花見つけて転職決意する紗桜
くちびるに余韻残りし帰り花若井柳児
峠道朽ちた石碑に帰り花修芳
オルガンの響く小路に帰り花秋月なおと
狂い花鞍馬お山の磴険し秋水
ばあちゃんは確信犯や狂い花十村八重
境内を出れば語れり帰り花春風
帰り花父逝きし朝彩りぬ初野文子
復興へひと日の和み帰り花宵猫
カラスやカラス足蹴にするな返り花小南子
咲き方を夫に告げてよ帰り花小澤啓子
同窓会むかし話や返り花松ちゃん
帰り花あなたも還ってくればいい松浦麗久
帰り花かつてここには城ありぬ松山帖句
帰り花健康診断異常なし上野眞理
忘れ花や手伸ばす車椅子の母城ヶ崎由岐子
あらあらと帰り花描く昼下がり植田かず子
結願や夕陽に帰り花二輪色葉二穂
帰り花タイムカプセルある校庭森弘行
帰り花赤いヒールの北新地森田まなみ
帰り花咲きし車窓の山景色真紀子
カットされる再会シーン帰り花真宮マミ
二人旅雲仙すそ野帰り花真冬
吾子想ふ一歩踏みしめ帰り花真優航千の母
白き富士垣根に紅き帰り花真理庵
憂きまでも思い出させる帰り花神谷米子
枝ごとに濃淡ありて返り花神本多貴子
時間厳守の人来て見上げし返り花水口無果
晴れ着の子迎へし躑躅帰り咲く酔進
赦されてふはり朱鷺色帰り花雛まつり
返り花ほっこり巡る社かな杉浦夏甫
手をかざし道を説く君帰り花杉山
老母を娘に帰す笑み帰り花菅原千秋
バス停や錆びたおミズと帰り花星善之
逝きし夫へ心通はす返り花星野茜
怪我あけて弾む駅伝帰り花晴多空
あたら日の終の平成返り花清水容子
有り難や築百年の帰り花生駒しのぶ
始むるに遅きはなしと返り花西原さらさ
路地裏に迷いこんだら帰り花西村圭
帰り咲き香り甘くも姿は寂し西村優美子
帰り花あの抽斗しの三番目西條晶夫
車停め見返る先に帰り花青児
老嫗の紅差し指や帰り花赤馬福助
いくたびも思い出話す帰り花千川小舟
喝采の追善歌舞伎帰り花千鶴
帰り花陽射しふくみて余力みせ千鶴
帰り花ガンと闘う友見舞う川村昌子
斎場の帰途に見つける帰り花川端孝子
帰り花振り返りつつ見とれてる川畑彩
夕暮れに亡き母の声帰り花泉
二度咲きの花色濃ゆくありにけり浅井和子
もういっちょ頑張ってみるか帰り花倉澤慶子
夢人は十五のままに帰り花早川博子
狂い咲門は茶屋なり芸妓ゆく痩女
帰り花赤信号が短くて走流
願わくば遺影の母に帰り花尊雅心
園児らの音聴いてゐる帰り花村松登音
帰り花驚く人の顔が好き村上一杯
ほんの少し間違えただけ狂い咲き村人
帰り花父の歳まであとわずか駄詩
堤防を歩く速さに帰り花大蚊里伊織
帰り花梢の先の空の青大山裕美
茶柱が立った気分の帰り花大野美波
白梅の帰り咲く杜や巫女の舞鷹野みどり
父の庭葬儀の朝の帰り花卓女
下を見よ空に無いもの帰り花谷川秋子
晴天に騙され薄着帰り花知音
帰り花前へ進もう良い予感池愛子
細き腕見えて格子の帰り花池上敬子
生涯に秘めごと一つ帰り花池田功
紬めく木肌の古木帰り花竹口ゆうこ
車椅子止めて見上げる帰り花中村純代
深山の湯けむりむせぶ帰り花中谷典敬
帰り花今更ながらさりながら中島圭子
往年のスター爺役帰り花中嶋純子
旅装解きベランダに会う帰り花昼寝
盛りなる花はいかにと帰り花長岡ルリ子
退院の余命を問うか帰り花長谷島弘安
亡き夫の呼び声聞こゆ帰り花直
帰り花あれから七年経ちました直木葉子
病床の佳人よ帰り花となれ槌田一成
再会に戸惑いありや帰り花田村伊都
ビタミンシー口にふくむや帰り花田中ようちゃん
朋輩も無き古里よ帰り花田中玄華
深更の汽笛の音や帰り花田付一苗
帰り花山の谺は新世界田良穂
愛犬の寝息はほのか帰り花渡り鳥
一輪やおう歌の名ごり帰り花渡辺音葉
日溜まりや齢かかへて帰り花渡辺陽子
恩師逝く古枝に白き帰り花土屋雅修
帰り花一目会ひたき人のゐて土屋虹魚
立入禁止敷地に咲く帰り花嶋良二
雨あがり葉かげにひそと帰り花桃雨
石段を上れば見ゆる帰り花藤井眞おん
おばさんを追い越し行けり帰り花藤川哲三
空蒼し友逝った日の帰り花藤田真純
返り花真昼の道に人気なく藤田早知子
伝わらぬ言の葉もあり帰り花豆柴子
晩節に帰り花たる母強し堂本篤志
松葉杖上げて教える帰り花惇壹
誰がために帰り花咲く獣道奈良香里
新薬の報は命日帰り花奈良素数
帰り花揺らぐ双眼鏡の中内本惠美子
無心され断り切れぬ返り花楢山孝明
バラ売りの温泉饅頭帰り花南行
森閑たるよ妹が家居のかへり花楠田草堂
通院も今日で最後と帰り花二鬼酒
待ち人は我にあらずか帰り花尼島里志
アルバムの笑顔の後ろ返り花入江幸子
帰り花明日の命を計りけり埜水
「今日、行くわ」息子待つ庭帰り花婆若
帰り花はやくも届く御神札馬場東風
帰り花年も忘るるピンバッジ梅笠(代理じゃすみん)
帰り花夕日あつめて赤く咲き梅納豆
「ファー」響く白いボールと返り花梅里和代
急峻の廃寺の黙忘れ花白雨
便りなく帰らぬ吾子や帰り花白瀬いりこ
黒纏ふ吾を待わぶ帰り花麦果酒
受話器越しの声恋に落ち帰り花函
頬かすめ光の先の帰り花畑詩音
忘れ花歩道に白き髪飾り八重葉
帰り花生暖かき夜明け前八木実
再会に戸惑いつつも帰り花鳩礼
帰り花悔ひなきやうに絞り咲く板垣美樹
寂庵の高き門扉や帰り花板柿せっか
帰り花付かず離れず祖母の後飯村祐知子
帰り花被災の街の空晴れて琵琶京子
荒れた庭黄色い一輪忘れ花美山つぐみ
城跡や遠き栄華の帰り花美帆
帰り花結婚相手間違えた姫山りんご
登り着けば露座の大仏返り花浜けい
仏飯の先にひとひら忘れ花武樹
いぢけたる吾子の面影帰り花風紋
帰り花昨日の夜のミステリー福良ちどり
帰り花隣の家は母子家庭文女
時は今熱き血潮の忘れ花弁女
海を越え養父の訃報帰り花牧野敏信
山越へし今や七十路の帰り花本間美知子
電飾を巻きつけ桜帰り花麻場育子
朝もやの意を決めさす帰り花麻妃
枝先のひゃろんとのびて帰り花抹茶金魚
帰り花先ずはぺこりと頭下げ末広乃里子
盛り見ず亡父愛でんや帰り花満る
帰り花かき集めまたプロポーズ未田翌檜
帰り花やわらかな陽に微笑んで蜜華
塩害のニュースで知りし帰り花湊かずゆき
ガジュマルの太き太き根帰り花妙子
君の居ぬ庭の片隅帰り花無頓着
返り花レオナール・フジタの白に似て明田句仁子
職を辞し帰る道端忘れ花明良稽古
忘れ花倦んだ道辺を照らしけり野ねずみ
帰り花去年の母見し雲流る野村相子
果樹園の坊主畑に帰り花矢野茂樹
先駆けか置き去りかしら帰り花柳生典子
胸突きの坂をぽつりと帰り花油井勝彦
出戻った親子の頭上に帰り花有馬裕子
色あせてなお凜として帰り花有迷人
病経て理想とするや帰り花柚香
約束は始発二両目帰り花葉るみ
帰り花不意に別れを切り出され梨音
ほろ酔いの娘を送る帰り花理佳
帰り花見る妻今日で8週目理学療法士
朽ちて生家飛び石の苔帰り花里惠子
白髪をピンクに染めて帰り花琉璃
戻り花母の形見の紺がすり礼子
帰り花トライアウトの投手の眼鈴木あむ
二人分プリン蒸す日や帰り花鈴木淑葉
山下りて深呼吸する帰り花鈴木眞嘉
連山を借景にして帰り花連雀
返り花名を呼ばれたよな心地して蝋梅とちる
王座戦駒しまう手と帰り花惑星のかけら
式の朝逝き人おくる帰り花暝想華
澄み切った空の青さや帰り花櫻井弘子
帰り花想い人は我を知らぬ澪つくし
平凡な日々の暮らしや帰り花苳
帰り花ぽつとひかりを纏ひけり蓼科川奈
命日ね小春日和の帰り花彦坂順子
帰り花ブランコふたつまた明日嶋村紀子
母編みし靴下温し帰り花都忘れ
斜めから西陽受けたり帰り花美山
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
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- 喝采の追善歌舞伎帰り花千鶴(55歳)
- 帰り花陽射しふくみて余力みせ千鶴(80歳)
- わが庭に来年またねと帰り花加藤俊子(69歳)
- 狂い花世に何思う温暖化加藤俊子(49歳)
俳号は、自分の作品を自分のものだとマーキングするための大事な印。全く同じ名前、同じ俳号の投句が増えております。他の人とは違う、俳号を工夫して下さい。
- 朽葉掃く手をとめてまで帰り花nid
- 帰り花玉の汗ぬぐう坂道になを子
- 行く年や思い出めぐる帰り花まさ
- 帰省して祖母と手つなぎ帰り花井上早苗
- 塩害に春が来たかと帰り花慈悦
- つるし富有御簾の向こうに帰り花順和
- 帰り花季節外れの宴は寒し水野祥子
- 剪定どきの百日紅帰り花茉梨花
一句に季語が複数入ることを【季重なり】といいます。タブーではありませんが、季重なりを成功させるのは高度なテクニックが必要。まずは、一句一季語からコツコツ練習していきましょう。
歳時記を開いて、どれが季語なのか、確認してみましょう。- 不気味だな季節外れの桜咲く笠江茂子
「季節外れの桜咲く=帰り花」ですから、中七下五はこれだけの音数を使って説明する必要はありません。
- 薪風呂や煙香流るる帰り道中間幸代
- 初列車手振り返り花は見ず田川さくら
本投句サイトでは、【兼題】と呼ぶ季語がお題として出題されています。兼題を入れた俳句を投句して下さい。次回の投句お待ちしています。
11月兼題『帰り花』は2,062句投稿いただきました。今年の11月は例年に比べて季節の歩みがゆっくりでした。初冬ですが記録的に気温が高い地域もあり、兼題のようにあちらこちらで季節はずれの花を咲かせたのではないでしょうか。
12月「凩」の投稿は25日(火)が締切りとなりますのでご注意ください。(編集部より)。