夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
5月の審査結果発表
兼題「初夏」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
チンアナゴ伸びて光のごとき初夏
抹茶金魚
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夏井いつき先生より
一読、水族館の水槽の「チンアナゴ」を思ったので、「初夏」がどこまで感じとれるかと迷いました。ダイビングかもしれないと調べてみると、チンアナゴは体験ダイビングでも観ることができるぐらいの砂底に生息していることを知りました。そのとたん海底に届く「初夏」の明るい光が見えてきました。「チンアナゴ」の群は同じ方向へ「伸び」上がり、ゆらゆらと揺れています。それはあたかも「光」を求めているかのようです。求める光の先には「初夏」という颯爽たる季節が動きはじめていることを、「チンアナゴ」たちは知っているのでしょう。せめて水族館の「チンアナゴ」に会いたくなってきました。
あおぞらはもとからあけっぱなし初夏
上原淳子
「あおぞら」は「もとから」そうなんだけど、「初夏」を迎えてみるとなんと開放的な「あけっぱなし」の青空か、と実感しているのです。全部足すと17音になる破調が生き生きしたリズムを作っています。表記の工夫もまた佳し。
川へ水切り しょか 初夏 しょか とぷん
いさな歌鈴
表記やリズムは、一句の内容と密接に連動していなくてはなりません。この句の空白の意味、「しょか」「とぷん」のオノマトペの効果、敢えての自由律など、作者自身が表現したい内容を探っていくとこうなったという楽しい佳句。
りるるりるるり初夏の喉ぶくろ
板柿せっか
鳥の名は分からないけど「りるるりるるり」と鳴いているのです。「喉ぶくろ」が膨らんで、音となって発せられる。あの「喉ぶくろ」に溜まっていく声はまさに「初夏」の声であるよ、という作者の感動が素直に伝わってくる作品。
はつなつの風とむらひの歌きれい
RUSTY
「はつなつ」は映像をもたいない時候の季語ですが、「はつなつの風」と書いたとたん揺れる若葉のひかりが広がります。風は「とむらひの歌」を我が耳に届け、「はつなつ」のひかりは悲しみのカタチのように「きれい」なのです。
初夏の鏡にあをみゆく腋窩
比々き
「初夏の鏡」という表現は、鏡は年中そこにあるのだけれど殊に「初夏の鏡」は……というニュアンスです。「腋窩(えきか)」は腋の下。「初夏の鏡」に映る腋の窪みを「あをみゆく」と描写したのが巧み。「初夏」が青臭く匂います。
湖へ舟初夏のひと粒つめたしよ古田秀
はつなつを歌ふくちびるみづのいろ古田秀
変声期のギター明るし初夏の窓上原淳子
指先まで洗ふ初夏これでもかこれでもか上原淳子
初夏のひかり濡れたる牛の鼻板柿せっか
初夏やはがねのごとき鳥の羽板柿せっか
初夏のいきれを掴む土踏まず比々き
人体の隧道とほる首夏の水比々き
理科室の蛇口は初夏へ廻しけり古瀬まさあき
沸騰石こつこつ初夏の試験管古瀬まさあき
おがくずが初夏の熱吸うてをりさとけん
はつ夏のしゆわしゆわと鳴りさうな雲さとけん
初夏てふ名乗りをあげる帆の風よじゃすみん
はつなつの吾はみづいろに生まれたりじゃすみん
渓流きれい山羊の乳搾る初夏トマト使いめりるりら
初夏や七味効かせて煮込む豚トマト使いめりるりら
あとは冷ますだけのプリンや夏始吉行直人
初夏や海賊盤のビートルズ吉行直人
ゴスペルのすきまににほう夏はじめ常幸龍BCAD
鍵盤やはらか初夏のソナタよ常幸龍BCAD
初夏の地球儀の青こぼれさうあきのひなた
地球、包み込みましたと海 初夏あきのひなた
はつなつの太陽ちよつととげとげといかちゃん
ゼリー争奪チョキチョキチョキで勝つはつ夏いかちゃん
はつなつの若き顔してふりかへるいづみのあ
髪切つた初夏第二成長期いづみのあ
初夏や桶に産着の水通しおおい芙美子
カーテンの裾を溢れて初夏の風おおい芙美子
学校は行かない初夏の空を蹴るオサカナクッション
初夏の光を受信する花冠オサカナクッション
はつ夏の連鎖ひつじのはてのくもぐ
心臓に初夏とび火して駆けるぐ
初夏をがぶりと綴じるホッチキスぐでたまご
海底の石像の手に触れて初夏ぐでたまご
初夏はコカコーラを開ける音シュリ
皮剥いてみんな乱切り夏始シュリ
少女らのはみ出る肢体風は初夏しんぷる
初夏の風永遠があるかのごとくしんぷる
仄暗いチーズの穴を抜けて初夏すりいぴい
初夏の孵らぬ卵とは知らずすりいぴい
初夏の光にまみれ白き象とかき星
初夏へ白き翼を広げきるとかき星
初夏の風へピーコが散らす殻トポル
紅しょうが経木の蓋を染めて初夏トポル
保存瓶乾く窓辺や夏始はなあかり
宝箱へゆびわ、おりがみ、初夏のたねはなあかり
初夏のケンタウルス座浸かる海ふじこ
初夏へ腕を開いて一輪車ふじこ
炒飯へ胡椒どばりと溢れ初夏ふるてい
初夏や白湯にきれいになるからだふるてい
背伸びしたかかとが降りて初夏にをりまんぷく
初夏や星は今よりは近かったまんぷく
初夏やデパ地下にボンジョヴィ響くヤヒロ
ベランダの鳩の糞すぐ乾き初夏ヤヒロ
万歩計初めて刻む数や初夏るりぼうし
婿になる人の挨拶初夏の風るりぼうし
湯上りのふぐりを抜ける初夏の風葦たかし
はつなつのひかがみひかるはいひいる葦たかし
水門開く初夏ありったけ弾けとぶ安宅麻由子
初夏や伸身二回宙返り安宅麻由子
初夏はカラスの羽を瑠璃にする一斤染乃
初夏受信中ワオキツネザルの尾っぽ一斤染乃
手ごたえは柵越え初夏の放物線横浜J子
すなめりのおでこぷるんぷるんで初夏横浜J子
ミシン目のよく切れるのは初夏である佳山@水戸
初夏に限り廊下を走ってよし佳山@水戸
初夏の灯を順に点して銀座かな可笑式
初夏や客車は海の風を入れ可笑式
はつなつやしろくまのメランコリック夏雨ちや
初夏や鼈甲飴に透ける街夏雨ちや
初夏や保護猫の名をオイデとす花屋英利
初夏やまだ若やかな千曲川花屋英利
夏始モネは光を描く画家花伝
響き合ふ初夏の音叉の中にゐる花伝
初夏の駅のポスター青・碧・蒼花南天
ドーナツの穴の青空まぶし初夏花南天
立ち漕ぎや初夏のペダルの軽い軽い花紋
初潮むかえる初夏の保健室は静か花紋
岬へのトンネルを抜け初夏の風海口竿富
初夏の埠頭コンテナ船は堆き海口竿富
初夏や子ら手提げごと手を上げる海老海老
初夏や蹴られて缶の歪な孤海老海老
初夏の猫伸び上がる漁船かな樫の木
初夏や荷台から犬乗り出して樫の木
初夏の子駆くるマントの如くシャツひろげ亀田荒太
初夏の女の胸の黒子かな亀田荒太
初夏の鮒が溺れている早瀬蟻馬次朗
息継ぎが同期している初夏の亀蟻馬次朗
初夏や食堂前にチャリ二台久我恒子
はつなつのブランコ空はまだ途中久我恒子
初夏へホルンの朝顔の開き宮武濱女
初夏や指一本で弾くピアノ宮武濱女
初夏の沈黙進路指導室宮部里美
デパートを僧衣抜けゆく夏始め宮部里美
はつなつの火口の村を見はるかし玉響雷子
畳目を前屈に見る初夏の昼玉響雷子
初夏や外箱省きたるテイツシユ戸部紅屑
初夏や鉈煌めきて裏の山戸部紅屑
初夏や根の押し上ぐるアスファルト後藤麻衣子
カセットのダビング最後切れて初夏後藤麻衣子
初夏の湖しんしんと鼓動せり綱長井ハツオ
初夏やチラシの裏のような空綱長井ハツオ
父初夏を介護士と腕組んでゆく高橋寅次
初夏やポニーテールに追ひ付けず高橋寅次
ロック史を聞く初夏の大講堂高橋無垢
ひかるときなみはながれにそむく初夏高橋無垢
初夏や象の耳より風生まる高田祥聖
ピカレスクロマン初夏の未成年高田祥聖
屋上に初夏の影立つ給水塔克巳@夜のサングラス
あらた代に天守を包む初夏の森克巳@夜のサングラス
待つ事にたよりがふたつ初夏の風今井淑子
ポロネーズの音符煌めく初夏の風今井淑子
初夏を知るや琥珀の中の蟲今野淳風
はつなつの古里牛糞臭き駅今野淳風
心音のもんどり打つて夏始今野浮儚
旋律は長調である夏始今野浮儚
初夏の疏水すみずみへ裂けほとばしる佐藤儒艮
なに注がん初夏のバカラのプリズムに佐藤儒艮
右折して叉右折して初夏の海彩楓(さいふう)
豚の顔吊され並ぶ首夏の市彩楓(さいふう)
ブラジャー透く初夏の第二次成長期三浦にゃじろう
はつなつのかけらかなしいこにあげる三浦にゃじろう
初夏の心臓山に脈打てり山内彩月
初夏のカーテン影を深くして山内彩月
大磯は松脂の香や夏始糸川ラッコ
山頂に着けば三百六十度初夏糸川ラッコ
初夏やサイドミラーにカメレオン鹿沼湖
初夏や海岸線を走るカブ鹿沼湖
初夏の濾過されてゆく脳の水七瀬ゆきこ
初夏へとどける風の見本帖七瀬ゆきこ
初夏に乳房は軽くなっている秋さやか
初夏という殻をうっかり出てしまう秋さやか
はつなつの風はからふるちょこあまし潤目の鰯
パラグライダーは空押し広げ初夏へ潤目の鰯
初夏やテトラポットに遊ぶ波小川都
光るもの辿ればあまた初夏の窓小川都
ロケットは青の向こうに消えて初夏上野眞理
流木を品定めして歩き初夏上野眞理
円陣の中の笑いや夏始城内幸江
初夏や炭酸水のやうな午後城内幸江
チェロケース担いで降りる初夏の駅森山博士
歩かねば初夏の海まだ遠いまま森山博士
初夏の風蒼めく地平線の馬仁和田永
色鉛筆の音域は初夏海の駅仁和田永
ゼンリンの地図を拡げて夏はじめ水夢
初夏やふたりで探すシーグラス水夢
悦楽や初夏のカピバラ浸るお湯星埜黴円
初夏に黒き検見川無線送信処星埜黴円
初夏のひかりを注いでゐる欅清島久門
白ワニの吐き出す初夏の光かな清島久門
複線を色鉛筆の走る初夏西川由野
夏始下り放題の乗車券西川由野
ポップコーンポンと弾けて初夏ならむ青い月
ベダル踏む十六インチ初夏の風青い月
はつなつや女性は太陽であった石井一草
袋より真白なる鉢初夏の風石井一草
夏はじめ星はそろそろ降下中石原由女
もう五分歩けば初夏の海に出る石原由女
長髪にギターは不良初夏の街赤馬福助
入り浸るポルノ映画や初夏の街赤馬福助
木造の骨格あらわ夏初め雪華きなこ
はつなつのうがいガロゴロ笑わすな雪華きなこ
透明な器を買うわ初夏だから倉岡富士子
骨髄のほのかに匂ふ初夏の膝倉岡富士子
はつなつの光はじょうろより溢る倉嶋志乃
初夏の陽へゆるやかにコイントス倉嶋志乃
はつなつの夜明けは水族館の色倉木はじめ
ペリットに羽毛と骨や夏はじめ倉木はじめ
ちぎれた写真画鋲が鈍くひかる初夏蒼奏
生まれ立ての朝のグラスに初夏の水蒼奏
初夏の潮をもろ手に掬ひけり蒼鳩薫
初夏や葉擦れの音は光ります蒼鳩薫
ええい、この。コンロの錆しぶとくて初夏足立智美
君の方が濃い影同じ初夏の空足立智美
招き猫磨きて初夏の立ち飲み屋多喰身・デラックス
大鍋にモツ煮ふつふつ夏はじめ多喰身・デラックス
初夏がスプリンクラーに濡れて濃い多々良海月
初夏の空アシカへ餌の放物線多々良海月
航跡の一本太し夏始対馬清波
稜線をよぎるものなき夏初め対馬清波
縫い付ける背番号「8」初夏の夜大小田忍
初夏の雨誰も喋らぬつけ麺屋大小田忍
大盛や初夏が頬張る親子丼大和田美信
初夏の立ち位置は二の腕辺り大和田美信
白だけを踏み行く横断歩道初夏沢拓庵
給食の牛乳は瓶夏始沢拓庵
焼きそばに陣取る初夏の目玉焼き丹波らる
夏始建築用ホチキスたかたかたか丹波らる
はつ夏の夜空を駆けるうしかい座中岡秀次
ピラルクの悠然初夏の大水槽中岡秀次
初夏なのにまだ拗ねている神がゐる宙のふう
伸ばしきるきりんの首や風は初夏宙のふう
色鉛筆が多すぎる夏始椎名貴之
申し訳なさそうな雲初夏の空椎名貴之
とび箱の向こうの私夏始天陽ゆう
変なメモ回る教室なつはじめ天陽ゆう
初夏の声かしこまる薬売藤色葉菜
河内晩柑にずぶりと初夏の指藤色葉菜
恋人はいないと初夏の嘘さらり藤田ゆきまち
初夏の風ルラリラと徘徊の祖母藤田ゆきまち
恐竜の目からこぼれたやうな首夏藤田康子
初夏や空に酸つぱさの微粒子藤田康子
理髪師の剃刀研げる夏はじめ内藤羊皐
初夏や食ひ余したるメロンパン内藤羊皐
初夏やトルソー担ぎ美少年内本惠美子
初夏や澱みに油球光る内本惠美子
初夏の心音ふとき胎児かな楢山孝明
初夏や練習室のドビュッシー楢山孝明
初夏や「復帰の日」の那覇は大雨南風の記憶
初夏や冷たさうな塩の結晶南風の記憶
はつ夏の○○甲子園予選南方日午
初夏のアールグレイの渋さかな南方日午
とんかちを翳して初夏の撮影所播磨陽子
粗挽きの胡椒ひとつぶ光る初夏播磨陽子
悪口までも初夏の風へと溶ける白よだか
初夏といふ絵の具だけ売ってくれ。白よだか
あをによし通天閣の夏はじめ比良山
初夏や有平棒の蜒蜒と比良山
住み慣れし治安の悪き街は首夏緋乃捨楽
初夏のどこでもドアの向こう側緋乃捨楽
初夏の薄暮の街の一市民樋口滑瓢
初夏の腕ここから夏のキリトリ線樋口滑瓢
初夏や古きピアノの蓋開く浜田智恵子
初夏やジャムを最初に開ける音浜田智恵子
漱石の棲みし借家や初夏の風富山の露玉
初夏の朝空に海ある心地して富山の露玉
初夏や解除の空は磨硝子富野香衣
楼門に風のほぐれて夏はじめ富野香衣
初夏の真っ只中にけやき立つ福ネコ
初夏や農婦もろとも草の波福ネコ
感染の微熱を掬ひ街に初夏福良ちどり
難聴の右に鳥の音初夏の朝福良ちどり
ラザーニャの豊かに熱し初夏かをる平本魚水
如雨露重くさげて初夏濡らしたる平本魚水
初夏の月閉じ込めて万華鏡碧西里
駄菓子屋のおもちゃはかろし夏始め碧西里
天と地に樹相を競う夏始め牧野敏信
はつなつや広重展は傘の列麻野文江
寝室を丸ごと初夏へ明け渡す万喜ミツル
波となる前の濃くなる青や初夏北藤詩旦
初夏や瑠璃色賜ふ烏の背北藤詩旦
鱗片をふりまいている初夏の月満る
ダイオウグソクムシの糞鳥羽は初夏満る
はつ夏のラジオ体操カキクケコ椋本望生
ピエロには女はをらぬ夏はじめ椋本望生
空を行く舟造りたし初夏の朝明田句仁子
初夏やドレミの歌のミファソラシ明田句仁子
採点の束持ち帰る初夏の月木下桃白
首夏の壁飾る異国の子の手習い木下桃白
君と分かる遠さはつなつひとつぶん木江
矢印灯しめす先しめす先初夏木江
誰か吹くトランペットや初夏の森門未知子
初夏の朝牛乳瓶の音門未知子
初夏やトッピングには目玉焼き野ばら
初夏の光と風はト長調野ばら
初夏や声あげ滑る草の土手野地垂木
寅さんのゐそうな土手や初夏の空野地垂木
初夏はつるんと剥けたゆで卵隆月
動脈がここにあるなと気付く初夏隆月
足先を瀬に初夏の握り飯鈴木敏之
初夏の矢は潔し白袴鈴木敏之
初夏の花を喰うたか犬の舌鈴木由紀子
初夏やジャムを鍋よりすくいきる鈴木由紀子
はつ夏や白き駅舎の貴賓室鈴木麗門
はごろもを詰めてはつ夏旅かばん鈴木麗門
夏はじめ今日はヨハネの誕生日朶美子
北京語は苦手初夏の長城ゆく朶美子
初夏や1オクターブ上の風淺野紫桜
750ccのアクセル全開初夏の風淺野紫桜
色褪せしポストに封書与へ初夏伊予吟会宵嵐
初夏や煉瓦造りの泌尿器科伊予吟会宵嵐
初夏の島へ水尾のゆつくりカーブしていさな歌鈴
腋の下通り抜けたる初夏の風AKI
消防のサイレン澄む初夏の昼間Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
朝の月光けだるく夏はじめharu.k
群青の夜明けの匂ひ夏始あいだほ
初夏の朝円周率を20まであいみょん
視野検査終え初なつの光濃しあくび指南
初夏の風一億年のオルゴールあさのとびら
週一のシーツ交換初夏の朝あじさい涼音
黒板に白亜の欠片弾み初夏あたなごっち
はつなつのワンピース空孕みけりあまの太郎
公園の錆びたパンダの目にも初夏あわいきりん
姉の部屋弟の部屋分けて初夏いたまきし
初夏の水やはらかく左まきいなだはまち
初夏の雲のびのびとうでひろげいろをふくむや
初夏や犬舐めに来る膝の裏うさぎまんじゅう
初夏の窓見てゐる父と子の癖毛えちごひめ実
青い地球をすっきり洗へ初夏の風えんかず
初夏やまっさらな空と予定表おくにち木実
初夏や飛行機雲の果てる先おざきさちよ
しづかさや聞香の手に初夏のかぜおひい
重力を剥がして鯨初夏の海カオス
アース線ねじる独居の孟夏かなかねつき走流
貝ボタンとれて転がり初夏となるかわいなおき
ブルーインパルス初夏の爪痕きなこもち
泣き顔へ首夏の海原盛り上るくっちゃん
肘膝のたるみあらはに夏はじめくま鶉
初夏のグランドこんなにも広いくりでん
初夏のピラフにひかる黒胡椒けーい〇
炭酸の生まれて消えて初夏の宇宙(そら)こまたれぶー
棟上げの木槌響いて初夏の風さくやこのはな
雲走る初夏の浅瀬や犬と戯むさくら亜紀女
のびるのびる初夏のおうち体操さだとみゆみこ
初夏や乾くトタンの軋みたるさとう菓子
水筒のパッキン替えて夏始しかもり
着心地は風にもありて夏はじめしぼりはf22
初夏やベンチに座る父無職ジャマイカ丼
初夏や子らのカバンの濡れてをりじょいふるとしちゃん
初夏の水ありとあらゆる甕の中すがりとおる
水滴めく親しらず抜き初夏へせり坊
初夏やライスカレーの三杯目そうり
初夏や鶴を折りたる青き紙たむらせつこ
初夏のきれいな鎖骨女の子ちゃうりん
牡蠣筏が見えた初夏の露天風呂ツユマメ末っ子@8歳
石くれに瀬音生まれて夏始テツコ
寝息まで初夏の風孕みをりでぷちゃん
初夏はジャングルジムの頂上にありてんてこ麻衣
初夏や夜の部はねて七つ星ドイツばば
若やかに泡立つ甕よ初夏の藍としなり
はつ夏や子の覚束ぬ投げキッスとりこ
赤信号無限が過ぎ去る孟夏かななかむら凧人
黒猫にうすき縞あり夏はじめなごやいろり
アルパカを走るバリカン夏始にゃん
エチュードを弾いて首夏の水ひと息はのん
初夏やペコちゃん何かたくらみぬはむ
イーゼルのコトンといふや渓の初夏ひでやん
窓枠の隅々拭きて初夏の朝ペトロア
はつなつのはちきれそうな雛の胃よほしの有紀
はつ夏の水はあかるし笛洗ふほろろ。
ブラウスの白に怯みし初夏の恋ポンタ
初夏の午後たわむ日よけに風すべるまこ@いつき組広ブロ俳句部
初夏の帽子ばかりが目立ちたるまりい@
なつのはじめぞうがごろんところんだよまりな(5歳)
航跡や銀に弾ける夏始みつき小夏
初夏や香辛料色のサリーみやこまる
晴れた日の河馬の歯磨き夏はじめみやこわすれ
初夏や海を吸い上げ星真砂みやざき白水
今吸った息も緑ぞ夏始めよにし陽子
初夏や毎夜毎夜のジンライムラーラ
初夏の風まきこめり登窯愛燦燦
はつなつのグラスへミントちるおちる葵新吾
三つ編みを解きて夏の始めかな綾乃栞
初夏の朝尿瓶かざして尿の色伊藤ひろし
ワンピースひらり神戸は初夏の街伊藤亜美子
初夏やコーンフレークさくさくと伊藤興味
湾岸の工場の昼や初夏の風伊藤順女
夏初め博物館に読むミステリー井松慈悦
風が繰るサガンの頁なつはじめ郁松松ちゃん
神遊ぶ大雪山や初夏の池一太郎ラン坊
道ゆずりバイク挨拶受けて初夏稲葉こいち
はみ出して草折る踵初夏匂う稲葉雀子
初夏や新規旅券の北斎画宇田建
はつなつのカシューナッツな逆上がり羽沖
この担任やはり怖いな夏始浦文乃
平日の初夏の日差しと憂鬱と猿猴川のドブネズミ
初夏の卓カレースプーンを小さくす加藤峰子
ほころびの気になっている夏初可藤虚
初夏に繰り出す影蹴って繰り出す火炎猿
歯周病の疼き初恋の痛み夏始花鳥風猫
初夏やお花と話す三歳児華林灯
初夏緑子の書く「ひ」の字飛びそうな海瀬安紀子
ひかり満つはつ夏君を賜はりぬ海野碧
初夏の朝隣の爺さんいなくなり笠原理香
放恣なる緑の濃淡初夏の山閑蛙
初夏なのに君の為とはめんどくさ丸山隆子
夏始秘宝冷たき博物館喜奈子
初夏やツメ飛び跳ねる合わせ爪季音句歩
夏始歯科待合に削る音亀山逸子
初夏や足指見ゆる観世音亀山酔田
避難所のシミュレーションや初夏の風菊池洋勝
なつがはじまるの一年生はいつ?吉田結希
初夏の午後炭酸水の音を聴く吉藤愛里子
初夏やヒメと名のつく草多し久留里
初乗りの自転車止まらぬ初夏宮坂暢介
リコーダー高いミの音外し初夏宮本象三
上出来の段ボールそり土手は初夏玉井瑞月
初夏の空と乾杯誕生日玉井令子
初夏や地球は碧に成長す玉木たまね
初夏や誰にも会へず青い空空
初夏や入港待ちの船あまた熊谷尚
初夏や銀のフォークにカルパッチョ桑島幹
初夏や風はらむ帆のまろきこと薫子(におこ)
葉も空もまだやはらかし夏始畦のすみれ
初夏の風こつんと当たる買い出し日月城花風
はつ夏や二人に広し四畳半古今亭ちくしょう
はつなつのバイエル和音跳ねる跳ねる古都鈴
夏始おもむろに肘出す齢戸根由紀
夏はじめ子の手伝いとシール表胡麻栞
初夏碧くかの日の魚拓目を入れる午餉
初夏なればプラチナなびく旅の国江見めいこ
はつなつの絶壁にひな四方は海高橋なつ
車椅子押す手に初夏の風軽し高石たく
はつなつの吾子は世界のせいふくへ高尾里甫
ピアノ弾く手に糠かおる夏初め佐藤花伎
グーグルで辿るアラスカ初夏の朝砂舟
はつなつや無心にみがく靴あまた斎藤数さ
高原に首夏木馬だつて走れる在芽里子
初夏や素振りを数え合う母子坂まきか
初夏の風井の字に畔を整へて咲弥あさ奏
山を買う一念発起夏始め三ノ宮ねこ
初夏や一緒に歩きはや一人三雲
長調の哀しみに似る初夏の雨三隅昌山
貸しボート舟底見せて夏始三茶F
恍惚は死よりも怖し夏はじめ三泊みなと
軽やかや逆走針の布は初夏山沖阿月子
水仕事なりはひにして夏始山科美穂
初めての父への手紙初夏の候山吉白米
人形の直垂赤し夏始山口香子
お嬢さん海は青いか初夏の風山本ふじ子
初夏の風美田におわす近江富士山本康
採血か初夏か明日を拒むのは山本先生
やみくもに歩けば川に出づる初夏山名凌霄
風車五基離陸体制初夏の山山羊座の千賀子
初めての初夏は憂いか喜びか市川りす
夏始そぎ切りの鶏やはらかし紫小寿々
夏始土の香濃くて練習着芝野麦茶
糊付けのシーツの匂ひ夏始紗智
猫型のギターホール初夏の音蛇井めたる
手つかずの空を画布とし初夏を描く若井柳児
木漏れ日のショパンに酔いて初夏の風秋月なおと
初夏の夜に錆びた音色の古ギター春告げ鳥かずえ
我が鼓動幹より聞こゆ夏始宵猫
街角のオープンカフェや夏はじめ小鞠
歯磨き粉はミント味同棲の初夏小笹いのり
初夏の儒艮の歌ふ入江かな小川めぐる
初夏のバスや面会再開日小倉あんこ
初夏の東京夫の遺作展小池令香
草のこゑ徐々に大きく夏始小田虎賢
初夏ひとつ五十五円の苗を買ふ小田龍聖
首夏の風総身に受く埠頭かな小嶋芦舟
ヴィヴァルディのヴァイオリン駆け上がり初夏小南子
後醍醐の初夏の陵初夏の風小林陸人
初夏の雲を裂く悪口もう飽きた松井くろ
転院の朝やおにぎり白き初夏松山のとまと
初夏の扉を君と開けに行く松本裕子
ポプラ一本ポップアップの夏始焼田美智世
初夏や金魚喫茶で待ち合わせ上原まり
Y軸を突っ切る初夏の疾走線新蕎麦句会・凪太
夏始Uターンして亀拾う新美妙子
初夏の駱駝のくちびるやわらか森中ことり
ガルーダ面を手に初夏のフリマ真宮マミ
初夏のシャワー不思議にひとつ進む恋真繍
初夏の風に転がるイヤリング人見則江
ホスピスの廊下きらきら夏始瀬尾白果
タオル干す手の生き生きと夏はじめ成田こむぎ
ボウリング初夏のマイボール放つ世良日守
広重のブルー初夏の告白成田わや
初夏やバリカン唸る一分刈り清白真冬
初夏や変速ギヤを3に入れ西村小市
樟脳の消えぬ形見の初夏を着る西條恭子
この星の軸の斜めや初夏となる西條晶夫
はねる鎌の手ごたえ初夏の勢い青井晴空
人類の発生はきっと初夏石垣エリザ
山頭火旅の虫出ず夏始跡部榮喜
初夏や沼の匂ひに沈む夜染谷川
夢香山の向こう白山夏始め痩女
初夏やガリレオの見た凸レンズ足長さん
初夏や三回続く二重跳び村松登音
遠出せぬそして星見る夏始め多事
若き犬老人連れて初夏の日に大橋敏子
初夏のきらりと強い走り潮大村真仙
初夏やしょうこおねえさんの歌声大津美
初夏の猫の気持ちの専門家大塚迷路
初夏や湖上を渡るロープウェイ大庭慈温
夏始め朝一粒の氷砂糖第一句けいぜろばん
夏はじめでんと風待つ藍のれん滝川橋
豆腐屋の腕に光る水や初夏滝川端子
初夏や北アルプスを吹きぬける卓女
カンヴァスの下塗りはあを風は初夏谷本真理子
初夏や新橋色の帯清し短夜の月
装蹄し放たれ駆ける夏初め知足
初夏を全開街を一掃せよ知念帆意
初夏は嫌いそこまで若くない池之端モルト
初夏や湘南にハーレーの排気音池之端昇雲
夏の始め雲の白さを知るやうな竹一
初夏や白いギターのピック青竹口ゆうこ
船上に鳴らすシャンパン夏始中原久遠
初夏の鯉は人影知つてゐる中山月波
初夏の風白杖の人空仰ぐ中嶋京子
白山遙か天へと続く初夏の道中鉢矢的
初夏や声高らかにゴンドリエ辻が花
初夏や木の葉流す子魚追う子田村モトエ
人待てば初夏の銀座は雨を恋ふ田村利平
夏始お化け屋敷の面接日杜まお実
初夏は風フランスパンの焼き上がる渡辺みちこ
初夏に挿すストロー氷押し分ける渡邉久晃
飲まなくていいかも薬初夏の朝都乃あざみ
初夏の鳥に聞け田のひかりなら土井探花
恍惚の義母に九十回目の夏始土屋雅修
髪切りてより頬にある初夏の風桃香
十六や夏の初めのぬすみ酒豆風
初夏や少し甘めの稲荷寿司徳
ヴィオロンの音渡りし初夏の空徳庵
初夏や東屋に坐し風を読む独星
迫る初夏ナナハンと吹き飛ばしたい独奏
妊婦先生テニスコートで怒鳴る初夏内田誠美
銀藍の空深くあり初夏の山楠田草堂
童謡の二番出てこず初夏の風二鬼酒
トンネルをまあるく抜ける初夏の風乃良
初夏の窓緑とあとはそれ以外馬祥
君が海に足を浸したから初夏背馬
抱く子の頭は土の香り初夏梅嶋紫
シチリアの遺跡は白し初夏の風梅里和代
膝こぞう薄皮一枚分の初夏白瀬いりこ
初夏や植木屋の刃に光跳ね白藍こはく
手庇で会釈かはすや初夏の風畑詩音
初夏の陽や歩行器に寄り父一歩八重葉
補助輪の外れて進む風は初夏八田昌代
波しぶき水陸機動団の初夏八木実
初夏の日光の地図広げをり飯村祐知子
初夏やピサの斜塔に雲急ぐ百合乃
夏初思い出つれて波がしら蛭本喜久枝
初夏や煮っころがしを少しだけ風慈音
十二兆細胞きしむ今は初夏風峰
教室に何か飛んでる夏初め福井三水低
脱皮したみたいに服が軽い初夏福月スミレ
坂道の五段変速初夏の朝文月さな女
改札出窓反射光今朝も初夏平松一
エチュードのこぼれ来る窓初夏の午後平馬
初夏の風休業あけのシフト表片栗子
はつなつの落としたねじを探す子ら穂積天玲
初夏や田中に繋がらぬ電話北村崇雄
初夏や脚の上がらぬアラベスク北大路京介
初めての店に髪切る夏始名計宗幸
さんずいの筆の勢ひ初夏の朝明惟久里
初夏や爺にゃ爺の秘密基地明日良い天気
初夏や一つ増したる朝仕事木寺仙游
初夏の風寺継ぐ娘剃髪す野原蛍草
初夏の陽やホルスタインの模様を照る野口敏子
初夏のまどか朝倉彫塑館野良古
コロクルとキャリーバッグの軽き初夏唯飛唯游
初夏やタイルの街に通学団有本仁政
置き去りの花冠や初夏の園柚木窈子
初夏のピアノのペダルひんやりと柚木みゆき
吾子抱けば野原の匂い夏始来冬邦子
イヤホンのカバーがにげたなつはじめ流歌6さい
蜘蛛の囲の五線譜すてき初夏の朝緑秀
バレーボール空にぶつかり弾む初夏瑠璃茉莉
はつ夏や南蛮漬けでもこさえよう鈴木淑葉
夏始め真子の煮付けや地酒来る麗し
初夏の野やいつせいに向くトカラ馬蓮花麻耶
護衛艦左舷を洗う初夏の波連雀
初夏や定刻なき回送バス和光
月光も濃き緑なり初夏の帰路侘介
癌研の定期健診初夏の朝凛
はつなつや利根の堤防七千歩 柝の音
初夏や力士奏でるヴァイオリン涅槃girl
初夏や初めて見ゆる君のでこ澪つくし
漣のひかりはじめむ初夏並木齋藤富美代
初夏の街奨学金を返し終え籠居子
江ノ電のドア放たれて海は初夏苳
初夏や青垣山の青谺茫々
ねじ巻いて動きだす街夏はじめ邯鄲
空も風も光も青めいて初夏⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
初夏やグラバー邸の風は碧M.李子
初夏のフランスパンの固さかなmomo
初夏光るカレット入りのアスファルトひなたか小春
バゲットのはみ出す初夏のパリ左岸薫夏
初夏やエスカベーシュは柑橘系蒼空蒼子
離婚届出し初夏のツーリング凡々
洗濯機の音ボレロめく初夏の朝遊飛@蚊帳のなか
アラーム前に起きて夏の始かな田本莞奈
浜焼の海老がおどるや初夏日昭谷
夏始蓋を葉にせし点前かな昇弘偲
初夏の川大岩ポツリ置いてゆき深山涼水
初夏の浜光に磨かるふくろはぎ神長誉夫
初夏や陽射しの中で蕎麦を食う白井百合子
初夏の陽の翳る刹那の静けさや白沢修
初夏の山鳴き声真似て名を当てて六手
初夏や青空めがけて吼えてみる入江幸子
痩せるより太るが上位コロナ初夏なり平松一
初夏の園ルノアール気取る写生家たちANGEL
閉じ籠もる小さき部屋に初夏の風ito
夏始め2ミリ前髪短くすnid
トースターの音響けるや初夏の朝Q&A
ジョギングの揺るる乳房や風は初夏Qさん
爪先はラメ入りシルバー初夏の窓S.組子
初夏や宵の明星愉しめりsakuraa.
空青く窓枠の絵初夏の杜vivi
サーフボード担ぐ若者夏兆すあおばとかおる
野外フェスかかげたタオル初夏の日よあかね
野良亀は丸々太る初夏の池あかり
銭湯や鏡に初夏の蠢きてあきれたホイ
初夏となりモーツァルト聴き家に居るあさいたく
朝漬けのしゃきっと歯ごたえ夏始あさぎけんいち
初夏の糊をきかせた暖簾かなあさふろ
初夏夜風だんじりまでの笛太鼓あざみ
外は初夏のっしのっしと猫横断あざみん
初夏の朝雄花雌花を見つけたりあそぼ葉
はつなつや緑の風に身を包みあつこっとん
収穫の鋏新調きらり初夏あまぶー
初夏眩し車椅子より一歩二歩あらら
風は初夏立ち漕ぐ少女坂の道いまいやすのり
初夏となりホットコーヒーとしばしの別れイルカ
トンネルに風あの緑出口は初夏いろどり五島
巣ごもりの初夏のカーテン開け放つうさぎの飼い主
初夏の風在宅ワーク書類とびうさり
アニメーションの初夏の水色の風うどまじゅ
急坂の木漏れ日逆光夏初めうめがさそう
初夏や木陰ほおばる卵焼きうるる
靴紐をぎゅっと結ばん初夏来たるエナメル巛
初夏の風みんな待ってる笑い顔えみばば
祭無き街閑かなる初夏やえりいも
電柱の遥か上過ぐ初夏の風おうれん
刈られても負けじと香る初夏の風おがたみか
初夏うつすアクアマリンや薬指オカメインコ
初夏の団地日陰にシーチキンおさむらいちゃん
初夏や畑打つ音と「神田川」おぼろ月
はつなつのかぜキャンバスに画家の夢お品まり
初夏や図鑑抱えた男児行くかたちゃん@いつき組広ブロ俳句部
新しきペンの一文字目初夏かつたろー。
田の水や初夏の装い整然とカメ
人気(ひとけ)ない巨大迷路に初夏の風かもめ
初夏の朝肺まで吸い込む5時の風カワムラ
菜を包む農事新聞初夏を告ぐキートスばんじょうし
ピアスは猫空想散歩の初夏の街きみえは公栄
初夏の日本列島忙しかりクジラ
逝きし子のセーター頬ずり初夏の朝クロスケの母
初夏や航跡雲を吸い込んでくんちんさま
悪党が髭面撫でる夏始ケンG
熱風が緑の山に初夏を告ぐこつみ
んんがあと隣で鼾初夏の夜こぶこ
初夏の空背伸びを競う杉木立さいとうすすむ
ステイホームの外眩しかり夏始さいとう若菜
初夏の風トラットリアのテラス席さかたちえこ
巣籠もりの部屋吹き抜ける初夏の風さきまき
初夏のよう廻りの緑に囲まれてさくら
初夏の風通り抜けたり四畳半さこ
繋ぐ手に初夏の日差し熱過ぎるさなぎ
なましろき半袖の腕初夏来たりさぬきのにゃんこ
ペダル漕ぎ西へ西へと初夏の旅しゅういずみ
深呼吸我も夏の始めの光合成シュルツ
糸通しするりと抜けし夏始しらふゆき
眩しくも枝伸びわたる初夏の風すずくら
点滴の雫が光る初夏の朝スッポン
隣の子声変わりして初夏ひらくすぴか
初夏や開け放ちたる自動ドアすみすずき
夏初星が綺麗とライン打ちスローライフ
潮の目の青さ眼にしむ夏始めそうま純香
口元にレース初夏の新たな流行りそれいゆ
ヨガマット初夏出番なく布団下それないよ
ラジオからグリーンスリーブス初夏の夜たじま
新人の袖まくりたる夏始めたすく
初夏色を絵の具で作る子の手青タマゴもたっぷりハムサンド
花の名を尋ねてみたし初夏の路たむこん
夏始小さき急須のおちょぼ口ちっちのきも
初夏や眩しさの中の泡はねるチャーリー・吉田
コロナ禍の遠き友へ吹け初夏の風ちやこ
初夏や『「岩窟王』のエピローグつちのこ
初夏の風係留帆船のマストやつなちゃん
夫買いし初夏のルンバはよく動くツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
アイメイクレベルアップのコロナ初夏つる凛々
初夏の川面を揺らす背びれかなてまり
初夏の朝雨音楽し庭巡りとうじん
風告げる賢治のコトバ初夏の杜ときめき人
マネキンのビーズの腕輪夏始としまる
初夏に割れたかかとでミュール履くとみことみ
花がらを摘めば小き実首夏の風なんじゃもんじゃ
ペダルこぐ我に優しき初夏の風にいやのる
縁側にくつ下二足初夏の朝ねがみともみ
初夏という風運び込む二音節ねぎみそ
ゆるゆるの薄い靴下欲しい初夏ノグチダイスケ
はつなつや少女のピアス藍の色のど飴
落ちた布団見て悪夢思い出す初夏はつ
初夏やカウベル響く喫茶店はっかあめ
敷物を取り換え初夏をよそほへるパッキンマン
初夏UVカットの手袋を買うはなばあば
初夏の夕ひっかかるのは同じ場所バムケロ
距離とってマスクを外す初夏の夕はらぐちゆうこ
初夏眩しセシルカットの美容院ハルノ花柊
初夏やのど越し走る蕎麦の列はるる
緊急事態宣言解除の初夏ぴーちく
鼻先の風にワクワク初夏の香ひーちゃんw
初夏に厳しき昨日の去るを見るひぐちいちおう(一応)
水道の水に指さき初夏光るひっそり静か
トンネルが初夏と明日をわけているひな芙美子
さんざめく庭に降り立つ初夏の朝ビバリベルテ
初夏に短く髪を切り揃えひめりんご
木洩れ陽に愛犬のへそ夏始ひろき
再会は初夏飲み干すコロナの瓶ひろ夢
ホームレス初夏の川辺で犬を飼うふくろう悠々
菓子で釣りバリカンあてる初夏の犬ふみくらのな
初夏なのに不安で煽るTVかなヘッドホン
赤坂は坂多き街初夏の風べびぽん
ペタペタと初夏の床板歩く吾子まいい
川の音も初夏の味わい京の床まこと(羽生誠)
はつ夏の惜別おりん銅鑼木魚まどん
会計はビニールカーテン越しの初夏マムシ銀行
来月はきみに会えたら夏始まるみ
見ゆるもの皆若々し初夏の湖みたせつよ
校庭に声戻りけり夏始みちむらまりな
入りたい行きつ戻りつ初夏の海みなお
初夏やパノラマの空ひとりじめみやかわけい子
風は初夏一歩愛しむ九合目みわ吉
初夏の夢亡き父ついに青年にもつこ
階段を駆けて改札通る初夏ももたもも
初夏やまたゆっくりと会いましょうゆすらご
歯磨きのミントの強さや夏始ゆりこ
プードルのすまし顔なり初夏の道よしこ
初夏や宝石箱のごとき朝わかなけん
蔓草や初夏の陽射しに手を伸ばすわか佐
浮かれ色絵具で切り取る初夏の窓わたなべぃびぃ
パレットに青を垂らして夏初めゐるす
ウィルスの去りし日ねがう初夏の夜亜紗舞那
初夏や糊の利きたる枕カヴァー愛野優
初夏散歩材木屋から山の香や綾月礼
彼の初夏(なつ)を偲ぶ遊就花嫁人形安樂治生
ガラス越しの初夏眩しきウェディングドレス案山子@いつき組広ブロ俳句部
初夏清し「くじらの雲」と吾子が指す杏樹萌香
心地よき初夏の風うけ意識不明以色浮迷
初夏の一直線の水の末伊藤小熊猫
初夏の風日に透ける葉に旅思ふ伊藤節子
初夏や自粛の街に鳩の声遺跡納期
地も空も緑攻め来る初夏の庭井上繁
初夏の嶺青垣のごと連なりて郁楽
成田よりハイジの国へ首夏のころ郁陽
夏始パクチー本葉香る朝一番ぶろ
へそ天は元気の証笑う初夏稲垣由貴
光濃しロックダウンの初夏の空宇佐美好子
窓際のビスク・ドールと初夏の恋雨波流波
こもかぶる茶畑に吹く初夏の風卯さきをん
尖り石ヒスイ海岸に探す初夏卯月かりん
柴犬の尻ほわほわと初夏の風栄
老いてこそ慈しむかな初夏の風永井基美
初夏や生まれ来し日の空思ふ榎本真希子
初夏や木々のきらめき眩しくて円
初夏の陽浴びててくてく次の寺延杜
差し色は淡い藍色初夏嬉し遠藤百合
誕生日に引越初夏の空遠藤愁霞
「海潮音」見つけてうれし夏始塩原香子
初夏の「きぼう」てふ星捉へけり塩沢桂子
金平糖舌でころがし初夏の峰奥ノ木蛍子
清涼の初夏が泡立つスプライト奥間空
ベビーカーはみ出すつぶ足孟夏かな黄桜かづ奴
午後のカフェリボンシトロン初夏の街岡れいこ
夏始そば猪口に蕩う無一物佳子
初夏の風単の袖を駆け抜けし加世堂魯幸
初夏だようがい手洗いマスクして加島
初夏の身の怠惰を叱る妻と居る加茂亘
息つかず飲む水二杯夏始加裕子
流れ出すラジオの曲に初夏と知る夏街人
野地蔵の微笑み返す夏始夏目坦
煩悶を昨日に置いて初夏を行く河村静葩
鋒で初夏の空切る富岳あり河畔亭
足元に影のはりつく初夏の朝河野なお
愛犬のスポーツ刈りに笑う初夏花岡幸嗣
初夏にぱっと飛び出す獅子の岩花岡紘一
夏はじめ一木一草ほっこりと花岡淑子
バインミーピリ辛増しに挑む初夏花結い
静かなる初夏を見つめるマスクして花咲みさき
雑草の匂ひ青々初夏の庭花咲明日香
初夏のノンアルコール三本目雅喜
七分袖若気の至り夏始め海碧
墓を背に光る大橋初夏の風蛙里
宅配の豪華弁当初夏の夕笠原秀夫
雑草の根っこに宇宙初夏の風閑々鶏
初夏の経三たび御堂を駆ける吾子岸本元世
帆を揚げて航跡白し初夏の艇岩井壮介
マスクする初夏生えそうだわ口ヒゲ季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
チェロの音窓をすり抜け初夏の音紀章
クリスマスケーキのミント根付く初夏貴志洋史
初夏によくぞ似合ふや白き花亀田稇
初夏かしら雲の色にも青味さし亀田勝則
出でて初夏挨拶軽し朝散歩吉哉郎
初夏や卑弥呼何処と筑紫野路久子
選ぶ色みずいろ黄色初夏の頃久鍋得利子
目をつむる鼻で食する初夏の味宮崎泉子
空仰ぐ何とは無しに初夏の道宮村寿摩子
初夏や様になりたるリフティング宮武桜子
チャップリンのスマイル歌う初夏の夜朽木春加
コロナ初夏大通りの閑かさよ京野秋水
初めてのドライブスルーに初夏の風教来石
夏始お酒も煙草もやれぬ歳狂乱鬼
初夏らしき薄きグレイの背広かな暁
毟っても毟っても草初夏の朝玉繭
目を射るは腕まくる君夏始金木陽雪
野や風やからくり絵本ごとし初夏銀長だぬき
初夏の風うくる物干しに鳥空の青と海の碧
防護服使い倒して初夏となる空龍
初夏一羽雲突いて鳴く庭閑か窪田睡鯨子
果実酒の瓶洗い干す夏始め桑田栞
五本指ソックスデビューの四十路初夏軽油
会えぬまま都会の子にも初夏の風月影キョロ
初夏や木洩れ日の路風馨る月昭
屋上の庭に散水虹の初夏研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
鉢花の水やり楽し初夏の余暇見屋桜花
静まれる町街路樹ははや初夏の色原善枝
夏始め水筒のお茶氷入れ原田直幹
列車待つベンチの前は初夏の海原田民久
初夏の海受難の鯛も誇らしげ源氏物語
コロナ禍に散歩楽しむ初夏の風古史朗
初夏の海まだ帰らぬと叫ぶ孫戸海倫
初夏や脱水セット3分に湖雪
初夏なりしネクタイ変えて甘き風光子
初夏の真砂の浜を走りけり幸子
レース越し挨拶かわす初夏の疫弘
初夏や愛でし狭庭にほとめかれ江雲
ラストスパート額の初夏が弾け飛ぶ江戸川ちゃあこ
耳たぶに軽やかなキス初夏の風江川月丸
農事待つ雪形馬と初夏の風江田綾子
初夏のステンドグラス天使笑む江藤薫
顔洗う水心地よき初夏の朝甲山
初夏の色アーモンド葉で染めた糸紅さやか
二筋の雲伸びゆきて初夏の青荒木豊性
タピオカは氷少なめ初夏の島香港ひこぞう
初夏やスキップ出来た吾子の笑み高橋光加
初夏の娘に男子から手紙高橋淳子
ソファー来て初夏の午睡の心地良し高野郁子
干し物の二毛作成る初夏の風今村ひとみ
ステイホーム命日忘れ悔いる初夏今田哲和
白波の生まるる所初夏の風根々雅水
吹く風に初夏の微熱が滲む午後佐山守道
散水弁ふたばが揺らぐ初夏の朝佐藤佳子
爪先で初夏に駆け出す月曜日砂楽梨
画用紙をはみ出る初夏の空の色斎乃雪
訪問看護受けし母初夏の午後細川小春
花も草も鳥も風も弾む初夏坂本千代子
初夏の泥あそべるわれの胸に光る榊昭広
初夏迎え孫と一緒に寝ころんで桜月夜
夏はじめ互いに呼び合う鳶の笛桜姫5
初夏や木漏れ日揺れし秘密基地笹川酔進
嗚咽怒号悲鳴コロナ夏始三浦ごまこ
コップについた泥乾く初夏の庭三浦真奈美
初夏やリビア料理を遊びけり三島瀬波
初夏が来る白カーテンの隙間から山﨑瑠美
好き勝手伸びし枝の間初夏の空山育ち
初夏や紅茶カップの気取りすぎ山口たまみ
消防署の訓練眩し初夏の街山口一青
白萩釉かけてちやを飲み初夏を待つ山崎鈴子
子の髪の額に付いて夏始め山城明子
黒々と積み肥の畑匂う初夏山川恵美子
白いぼうし物干しに揺れて初夏山川真誠
公園に子等の声聞く初夏の夕山川芳明
初夏や油絵めける森に入る山太狼
キャンバスに描くごと発句せむ孟夏山田啓子
初夏の市役所眩し入籍や山乃火穂
周航の歌兄在りて青き初夏山辺道児
井戸水や果物ひやす初夏の頃子雀
初夏や海に溶けだす空の色紫雲
換気扇虚しき初夏の芝居小屋紫雲英
灰汁色の指くねらせて初夏を編む紫瑛
教科書に初夏の角度の日の光寺津豪佐
黄緑の風ふくらみて初夏の街鹿嶌純子
夏始めあの娘へ灯すペンライト七夏すばる
青々と初夏の木々らのがなる声篠崎しの
初夏の風バウンドした葉から雫篠崎彰
裾まくり裏路地洗車夏はじめ篠雪
初夏や未来の船の設計図紗千子
かあさんと母に呼ばれる初夏の夜主藤充子
夏始日差し背負いて犬を撫で朱頂蘭
初夏来る白き紫陽花のかたちして珠樹
初夏の風子どもチーターちゅんと鳴く珠桜女絢未来
昨晩のおふろのおもちゃ初夏の風秀たあ
稜線の緑濃し初夏の風疾し秀耕
初夏の夜入り江の波も眠たそう秀道
空に国境ないかのよう初夏の風秋夕介
夏始め朝の光を浴びて立つ秋代
噫初夏よせせらぎの音もうっとりと峻
寄る辺なく波形重なる初夏の砂州春耕
退院日赤丸つけて初夏の風春風
出番待つ旅行鞄に初夏の風初野文子
ランドセル背中になじむ初夏のころ緒方信子
初夏や新調したり風呂の蓋勝山紀子
自転車の錆び磨ひては夫の初夏勝野綾子
芝犬の尾のC三つ並ぶ初夏小だいふく
雲光り梢光る夏始小磯悠人
初夏の風よぎる虫らのファンファーレ小栗福祥
横たわる空風草の初夏の香小此木一佳
初夏の恋保証期間は三ヶ月小山晃
体操のピアノの弾む初夏の庭小杉泰文
初夏の月は檸檬飴の如きかな小川モモンガ
登山靴にワックス塗りこむ夏始小川双月
逼塞の窓見上ぐれば初夏の鳶小川天鵲
初夏の梢オナガのとるリズム小川野棕櫚
自粛にも孤独にも慣れ初夏の部屋小田慶喜
初孫の左手で毬投げし初夏小田和子
待つことも好きかも初夏のコンタクト小野睦
夏始デジタル時計の影縮む小柳悠子
むくむくと森膨らみし首夏の宵小林のりこ
初夏の山でっかい烏丸と二人占め小林一海
野球部の掛け声渡る初夏の道松村貞夫
顔あげよ囁く君は初夏の風松虫姫の村人
初夏の青空吸い込まれし憂鬱松島美絵
湖面眩し昇る日輪初夏の生き松尾義弘
初夏の五十頁を公園で松本哲
起き抜けて飲む水清し初夏の朝笑笑うさぎ
窓つつく鳥に目覚めし初夏や城ヶ崎由岐子
補助輪を外す親子に初夏の風植田かず子
初夏の逆あがりの手鉄匂ふ色葉二穂
初夏やスキップの子らを真似て追う新濃健
明らかなアハ体験や初夏の山森の水車
シーツはためく飛べる気がする夏初め森弘行
セーラー服初夏の風受けペダル踏む森澤佳乃
休校の教室広し夏始深雪
初夏や吾妻小富士の兎帰る真喜王
初操作蛇行跡田に初夏の風真優航千の母
髪染めて古希を迎えし初夏の朝真理庵
初夏の日を浴びる布団に縋る虫水乃江辰
パノラマに大山描く初夏の景杉浦あきけん
初夏の水郷めぐる近江かな杉浦夏甫
外は初夏不要不急とテレワーク杉浦晃
幼子を追いてキリン舎初夏の風杉浦真子
青と白足すは何色初夏の空杉本果蓏
モンゴルの初夏の草原ハーブの香瀬尾ありさ
酢の物はいかがと初夏の夕餉かな政乎
山も野も燃やせ色彩初夏の影星のあゆみ
湯けむりや吊り橋揺れる初夏の風星善之
夏始雑木の匂い山登り星夢光風
ジャングルジム頂き初夏の空の中晴好雨独
朝刊に初投句掲載風は初夏正岡恵似子
初夏や妊活本に付箋あり正山小種
教室に風通り抜けはや初夏に清香
サイクリング肩で風きる初夏の野辺清水容子
航跡雲なき今年の初夏の午後清水祥月
襟足の髪一寸切り初夏の風西原さらさ
初夏の風発声練習聞こえ来る西村愛美
窓の外清し屋内に過ごす初夏西尾至史
マスクに風はらませたり夏はじめ青つかみ
座敷牢外はいつもの夏始青児
日時計の針初夏ほどの短さや青田奈央
おにぎりの向こうに初夏の雲流る静泉
制服の笑顔はじけて初夏の風静葩
初夏の風洗ったシャツを軽くして石ころ
初夏やシャガールの人空飛んで石井茶爺
初夏やインクの出ないボールペン石岡女依
草花全て空仰ぐやうに初夏石崎京子
自粛あけそろりそろりと初夏の午後石田恵翠
花嫁さん初夏の緑と朱の神宮赤ちゃんちとの
青空や白直線の伸びし初夏千家彩香
初夏になり激辛カレー頑張るぞ千鶴姫
初夏やノーネクタイの外回り千葉時郎
初夏や波打ち際のシーグラス千葉睦女
自転車に羽生えしやう初夏の風川村ひろの
嫌がる子の前髪揃えて夏はじめ川村昌子
マスク取り顔で感じる初夏の風川畑彩
初夏の汗新入生の目の中に川畑心奈
肌水とシャンプー替えて夏始め浅井和子
初夏の澱飲み込みて暗き鬼曽我真理子
妙高に早き跳ね馬初夏告げる素敵な晃くん
見上げればシグナルは青初夏の空蘇州
裾踊る初夏色のワンピース双葉
いずこより赤子の笑い初夏の路惣兵衛
抱きしめる日なたの布団初夏の昼早山
駆け上がる初夏の空逆上がり霜月詩扇
初夏の風や日向灘越え美郷まで則本久江
「うぢ山」と言わせぬ初夏ステイホーム村辺史公
初夏の風木蔭でくつろぐ山歩き多田ふみ
風招き揺れるポトスに夏始多風
初夏の木々変わらぬ力が暗雲払う駄詩
流れ込む香りに惑う初夏の闇大原雪
巣籠もりや初夏の風うけ俳句よむ大原妃
躍動の風そら樹々よ初夏の朝大山きょうこ
初夏や茶漬け掻き込むごみの朝大山こすみ
コロナ禍や一筆計上初夏の候大山小袖
初夏や明日で二十歳の娘の帰省大槻正敏
ゼロにする湯量スイッチ初夏の朝大槻税悦
お洒落して初夏の日差しにルイヴィトン大嶋メデ
初夏の扉を開けるフォルテシモ大道真波
2メートルそばで会いたい初夏の風大本千恵子
ひいじいちゃん焼いたと泣く児や初夏の荼毘大野静香
黄昏て乳食む幼初夏の風鷹野みどりり
二の腕の白きも清し初夏の駅谷口あきこ
制服は一日限り夏はじめ池愛子
軽井沢の庭球合宿夏初め池上敬子
目覚めたらお~と一声夏始池田功
木洩れ日をたどればそこに初夏が池田洋子
ビル風が今日は心地よいもう初夏か池田華族
図書館は返却多し初夏の朝池田玉繭
待ち合い室窓より流る初夏の香よ池内ねこバアバ
宇宙までコロナ禍飛ばせ初夏の風竹安修二
テレワークおうちご飯の初夏来る竹内うめ
はつなつの風入れ籠るほかはなし中井一雄
草木映え躍動の僕初夏の音中山清充
文を待つ楽しき今日の初夏の風中山白蘭
香辛料の多きカレーに初夏を嗅ぐ中西柚子
初夏や七分袖より白き腕中島葉月
初夏の校庭になき子等の声中島圭子
初夏の風通り抜け歩道橋昼寝
バックドア開けて木々の葉触れし初夏衷子
竹皮はテーブルに満つ夏始朝雲列
白樺の幹に触るるや夏始長岡馨子
校門へなだるる子らや初夏の風長谷川ろんろん
風なきもガン病棟に初夏の陰長谷島弘安
五日ぶりエントランス越え頬に初夏長尾桃子
初夏やワインの誘ふ闇に入る天野呑水
初夏や帽子の鍔はぴんと張り田村伊都
初夏や掬いし水の青き色田中ようちゃん
夏始めとは真か鍋奉行田中玄華
絵はがきで送った初夏のまぶしさよ田中善美
メッシュ地の初夏の装いさりげなく田中洋子
Tシャツの白さ膨らみ夏始斗三木童
初夏やなんじゃもんじゃの花白し渡辺陽子
初夏を行くおとんとコーギーのお尻渡邉一輝
もう一品十八番料理や初夏の酒登久光
グランドピアノに猫伸びて初夏都忘れ
もくもくと雲空は堂々の初夏土田耕平
ワンエイト鳴子は初夏の空を斬る冬木ささめ
初夏の葉擦れ書聖の筆の走り島村福太郎
初夏の真白き婦人服売場嶋田奈緒
スマホより届く初夏宮古島嶋良二
火球垂る初夏の雲の尻桃子ママ
グラスの炭酸ひとつ弾けて初夏となり桃葉琴乃
初夏や登山鉄道唸り出す藤ちゃん
初夏の子はシャツをくぐって白き腕藤井京子
「つつがなく」が「コロナなく」に変わる初夏藤井聖月
初夏の朝万歩を超えるウォーキング藤原訓子
幼子の手の柔らかさ初夏の夢徳田ヨーコ
路地裏の独り縄跳び初夏静か奈良素数
テーブルを来る皿初夏のプラレール内田英樹
初夏や1人2人と数値追い尼島里志
寝転んで空の近づく初夏の土手入江幸子
からっぽの初夏の校舎に猫つどい猫派
初夏へいざ飛び込まんジップライン埜水
ショートヘア初夏のショーウィンドウ衝動買い波揺
水撒きの光にあの日の初夏の色梅吉
シーツ干す庭の緑に初夏香り博多66
初夏の街車窓の風を先取りて白雨
初夏なれどコロナ自粛の風荒び白土景子
ウエストはゴムに限るよ夏始白浜ゆい
五口六口湯呑み並べて初夏を飲む飯田淳子
初夏の雲元気にしてると天の子に飛来英
初夏や通天閣は「緑」点灯樋熊広美
初夏の風猫のひげ先耳の先琵琶京子
初夏の味届いて浮かぶ母の顔美山つぐみ
初夏の影短くなりて踏んでみる美翠
やや味噌を濃くしたる汁初夏香る菱田芋天
すっぴんをマスクで隠す初夏の朝百均巡
蓋取れて小鳥も子らも初夏の庭浜けい
初夏迎えこの頃素顔好きになり浜千鳥
初夏の朝鞄に忍ばすカーディガン浮楽莉
初夏の故山仰ぎて一万歩赴美榮
さらさらと木々のコーラス初夏の朝撫品
点滴の針刺し変える臨月の初夏風ヒカル
立林を抜ける十勝の初夏の風風花まゆみ
舞ふ光緑深浅初夏の山風花美絵
満帆のマストのTシャツ初夏をゆく風泉
初夏の卓玻璃の器に盛り付けぬ風紋
初夏の風庭の草花なでてゆく風来坊
旧友に絵はがき選ぶ夏初め福泉
半袖の腕白くのび初夏の風文月栞
初夏やショーウィンドーを巡りつつ文女
初夏の道行く少年の脛白し歩亀
病中に溜まりし苔を濯ふ初夏穂積のり子
姿なき鳥初夏の屋上に北原早春
屋根に浮く枝ぴくぴくと猫の初夏北川蒼鴉
初夏やピンクの乳首吸ふ子山羊盆暮れ正ガッツ
借景の窓囚われの初夏麻生恵澄
初夏のおにぎり一個美味かりし抹香
初夏の庭幼葉の力指先に湊かずゆき
滑り台下にサンダル夏始蓑田和明
手の内を明かさぬ仕事初夏の宵眠兎
鉄橋を突っ切る車輌初夏の人茂る
縁側にごろり雲見る夏始木村かわせみ
新調の白いTシャツ夏始木村修芳
初夏の気や腕に絡まれ眼を覚ます木村波平
手桶にも初夏の光や墓参り門前町のり子
初夏の部屋冬服山積み見ぬふりを夜香
孟夏にて静かに眼にす山河かな野中泰風
初夏の風川に夕日を流しゐて野木編
閉まれども咲きこぼれをり初夏の園友雪割豆
初夏に髪束ねて走り背に鼓動祐莉亜
町巡るバスは満員初夏の風葉るみ
初夏のポニーテールや白きシュシュ葉月けゐ
初めての夏と書いて初夏と言う妙葉路
ギプスとれ痒みよさらば来たれ初夏!踊るサカナ
高津川藻を膨らませ初夏の香来知万郷
封筒を透ける文香伽羅の初夏梨音
初夏のみち緑せまりて細くなり立
初夏の夜時忘れさす星が降る隆美
絵の具混ざり空色新た夏始龍季
初夏の森見つけし花の名を知らず林めぐみ
初夏や大中小の犬跳ねる林知智
初夏の風さらさら揺れる神田川林崛起
透明なココナッツオイル初夏の夕玲子
病める父解除待たずに初夏に逝く玲美三
初夏や週に一度の登校日鈴木(や)
夏始寝転び秒針を追って惑星のかけら
初夏や森羅万象影ひそめ鷲野の菊
赤ん坊の大きな欠伸初夏の午後國吉敦子
砂遊び掘って削って夏はじめ崛起
真白なるレースカーテン初夏の風巫女
黒髪にふれたいと恋気づく初夏廣重
珈琲にゼラチン溶かす初夏の午戌亥
深呼吸ガーゼに通る初夏の風暝想華
掌中の液晶きらりとして初夏楡野ふみ
初夏の風モネの庭にも我が家にも櫻井弘子
初夏や風吹き下ろす北野坂洒落神戸
下り坂ペダル開放初夏の風澤真澄
初夏の空に浮かべる太陰や祺埜箕來
指二本しゃぶる緑児初夏まぶし齋藤杏子
うす曇りの朝は水の香夏はじめ齋藤むつは
初夏や肌触り良きサッカー地笙女
はつなつや短く切った髪に風蓼科川奈
初夏の帰省咳をしても一人の車内豐田雄二郎
鏡見てマスクのセンター決めま初夏齊藤裕
豆のすじ取りて初夏の香の夕餉渚
夏始いろいろあつて髪の梳くセントポーリア
マスクして行きかう人や夏始む保土ちゃん
トラクター納車人寄る夏はじめジョビジョバ
夏兆す鎖骨の見える服を着て寿松
校門を白く揃いて夏兆す正子@いつき組
夏きざす樹々は花道トンネルに弁女
占いの一位は射手座初夏の朝井上哲志
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
【重要】俳号には苗字を!
〇俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。姓をつけていただけるだけでも混乱や、投句者同士のトラブルを多少回避することができます。よろしくご協力ください。
【重要】俳号は一つに統一!
○同じ俳号の投句であれば投句数を制限しませんが、お一人が複数の俳号で投句することはお控え下さい。
●俳句の正しい表記とは?
- 初夏の腹 薄着出っ張る 男の子ちとの
- 初夏の道 花びら見つけ 空見上げなかむらあけりん
- 青々と 初夏の大木 山の椅子もりなかあけりん
- 畳替え てぬぐいをどる 初夏たのしなをこ
- しょかのかぜ マスクはずして はしりたいぽんぽん
- 初夏の風 緑を揺らす 万華鏡みなも
- 妻は逝く 窓喧騒の 初夏ありき史郎
- 初夏といふ 言の葉軽し 深呼吸星野茜
- ビンタされ 追い討ちのよう 初夏の雨浅野俊也
- 夏始め 蟻も聞き入る 水遊び早川 尚
- 知らぬ間に ショーウインドウは 初夏の風大嶋日出子
- スリー7 2缶め選ぶ 夏の朝大内美佐
- 頬撫でる たおやかな朝 初夏の風哲泉
- アナウンサー 「し」の音(ね)初口に 初夏翳る山葵梅子
- 勝ち目指し 仲間に渡す 初夏の水山根由紀
- 炊事場は 絡みあう芹 洗う初夏鬼弦千枝子
○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
- 背より高し
初夏の草原
駆ける犬貝貝母 - 小屋の中
初夏の準備に
急ぐ空今林 宏隆 - 卯月波
砂浜かけて
ドルフィンスルー夕凪
○テレビの俳句番組で、三行書きしているのは、画面が四角いための苦肉の策。基本はあくまでも「五七五の間を空けないで、一行に書く」です。
●季重なり
- 風鈴や 出番がきたぞ 初夏の風ヤ?キン
- 風薫る 匂う初夏から 深呼吸関口竜一
- 葉桜の露落つ蒼に初夏を見るなまくら
- 雁風呂の流木探す初夏の浜金輪際
- 天空の雲雀鳴く聲夏始め梅田訓睦
- 初夏と聞きスーパーで探す国産オクラシンタローママ
- デート前日焼け止め塗る夏はじめ井口綾
- 親つばめ今年こそはと初夏に飛ぶ大淵 淳子
- 午睡覚め汗ぬぐう子等里の初夏福弓
- ざあざあとプール開きや初夏の風木目田美咲
- 日々に変わる若葉の色は初夏の味河童翁
- 杏の実袋がけして守る初夏花岡浩美
- 姫蔓蕎麦の花ばらまかれ夏はじめ釜眞手打ち蕎麦
- メイク中ついに冷房初夏の朝玉木幸代
- マルチ敷き芋苗植えし汗が首夏古いっちゃん
- ビードロの器で泡盛夏はじめ山口要人
- 牧草刈る薫ずる日和夏はじめ神谷米子
- 初夏だね冷やし中華始めました尾関みちこ
- 砂浜へずぶりと素足初夏ならんほんみえみねこ
- へちまの芽初夏の朝日に伸びる前いまねずみ
○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「初夏」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●兼題が入ってない?!
- 去る背中 言葉足らずの 梅雨の夜佳乃子
- もりとかけ おいしい時に マスク来ず牧里裕司
- 快走のヨットを眺む昼下がりいつも祝日
- 山風に鳥さえずる山緑なかむら朱美
- 風薫る自粛も何処ぞ夢一夜なやな
- 若葉風ベンチでスマホ見上ぐ犬ブンタ
- 人生向かい風向きを変えれば追い風にれんげ
- 自粛中課題にはげむカタツムリ磯部孝史
- 新じゃがのみそ汁うまい自粛の日々戸崎光子
- ちりたるを踏んでみあげし花とあお大谷貫太郎
- つる伸びてぶらりと胡瓜次々に添野純
- 柿若葉 一年越しのテンプラ屋飯村錦也
- 万緑も慕うる勝山の天守かな上岡涼子
- 蜜すう蜂に首合わす柴五月かな西口まゆみ
- コロナ禍で国力の差夏マスク古澤久良
○今回の兼題は「初夏」です。兼題を詠み込むのが、たった一つのルール。次回の兼題を確認して、次の一句に挑戦して下さいね。
- ファーストサマーウイカ キウイを食む今藤明
○あの威勢のエエお姉ちゃんの名前であって、季語ではない。しかも・・・初夏なら「early summer」じゃねえか?
◆「初夏」とは微妙に違う
- 夏来たり遥か尾瀬沼遠き空本間美知子
- 夏立つやひたりと犬の輝く眼木原洋子
○ページ数の少ない季寄せなどでは、同じ項目として載せていることもあるのですが、「初夏」「夏来る」「夏立つ」それぞれのニュアンスの違いを考えることで、「初夏」という季語の本意をつかむことができるようになります。まずは、兼題そのものに立ち向かってから、傍題その他に挑戦するというスタンスで、学んでまいりましょう。
◆ちょっと添削
- 初夏や素足に清し畳かなふみ
【添削例】 初夏や素足にきよらかな畳
◆深く重い内容をどう表現するか。
- 棘からむ光うしなう初夏の花柚野なつ
@SNSの誹謗中傷で亡くなった木村花さんを想って簡単になりましたが書いてみました。うしなうは、喪うにしたかったのですが光は人間ではないので、平仮名にしました。
○いたたまれない事件でした。その気持ちをなにか表現したいと思うのは当然のことです。しかしながら、俳句はたった17音しかない。「棘からむ光うしなう初夏の花」という情報量だけで、木村花さんを思ってもらえるか。そこが俳句の心許ないところでもあります。この場合は、前書きをつけることも可能です。「木村花さんへ捧ぐ」「追悼木村花さん」と添えるだけで、追悼句としての読みが読者に間違いなく手渡されます。
- 父の遺体は生理の匂い初夏の風よしざね弓
@初夏に発見された父は、私たち遺族は決して見ることができませんでした。しかし、警察から依頼を受け、最後に父の家の鍵をかけようとしたとき、生臭い匂いが玄関の外まで漂ってきたのを今でも忘れられずにいます。父がどんな状態で見つかったのか初めて察した瞬間でした。でもどこかで嗅いだような匂いだと思った時、生理の時の生臭い血の匂いだ、と生理の時にふと気が付いたのです。死ぬ者の匂いが、生命に繋がる匂いであったことの発見。生命って不思議だと感じた瞬間でした。
○この衝撃的な体験を、よく言葉にしようと思われました。勇気と覚悟が必要だったと思います。このように書くことによって、少しずつ自分の人生や体験を客観的に捉えることができるようになっていくのだと思います。言葉が祈りとなり追悼ととなっていくのだと思います。
先ほども書きましたが、俳句はたった17音しかないので、貴方の体験全てを一句で表現することは難しいのですが、この句の場合「初夏の風」という季語が添え物になっていることは否めませんが、上五中七の措辞に衝撃を受けました。どのような禍々しい状況であったか、読者なりの推察が動き出します。これはむしろ自由律で表現されるべきか……とも思います。ひょっとすると「父の遺体は生理の匂い」と、これだけの言葉でよいのではないかと。
以上は、第三者として私の感じたことです。あとは作者にお返しして、是非作品として完成させてやって下さい。
「ステイホーム期間だし、大台の4000句超えたらいいなあ」と思っていましたが、ステイホーム恐るべし。
なんと4911句!!!あわや5000句に届きそうな勢い!ご投句いただいたみなさま、本当にありがとうございました。
6月の兼題は「雲の峰」です。みなさまのご投句、お待ちしております(編集部より)。