夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
4月の審査結果発表
兼題「薫風」
初夏に吹く柔らかで快い風。風薫(かぜかお)るとも言う。
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
樫の木は無口な木です風薫る
凡鑽
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夏井いつき先生より
一読ハッとしました。「樫の木」の実はどんぐり。身近な木なのに「樫の木は無口な木」だと感じることがなかったので、ハッとしたのだと思います。「樫の木」について改めて調べてみると、堅くて耐湿性があるので船や農具の柄などに使われ、樹皮は染料になり、果実からはデンプンもとれるのだそうです。「樫の木」は地味な木だけど静かに私たちの生活を支えてきたのだなと思うと、「樫の木は無口な木です」という詩語がしみじみと心に広がってきます。
「風薫る」は天文の季語ですが、そこには若葉や青葉の光景も感じられます。常緑樹で一年中表情を変えない印象のある「樫の木」も、いま薫りはじめた風を喜んでいるに違いない、という一句です。
隕石に黒き凸凹風薫る
三重野とりとり
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手にした「隕石」にある「黒き凸凹」。宇宙空間から落ちてきたその石も、今は美しい地球の薫風の中にあります。「隕石」の黒と季語「風薫る」の緑の印象が、鮮やかな対比となっています。
樹木葬てふ遺言や風薫る
くっちゃん
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自分自身の思いでしょうか、父母の「遺言」でしょうか。「樹木葬」という言葉への憧れ、樹木の命と一体となっていく心の安らぎ。それらの感情を「風薫る」という季語が優しく包み込みます。
薫風の抜ける百年続く家
こぼれ花
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「百年続く家」は、家柄という意味ではなく、家屋と読みました。古い大黒柱、黒光りした大きな梁、風の通る土間や廊下。そこここを「薫風」が吹き抜けていきます。「百年」という数詞の力もまた。
口開けて河馬の信頼風薫る
越智空子
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「河馬」の「口」に頭を突っ込んで見せる飼育員さん。大きな歯ブラシで「河馬」の歯磨きに挑戦する子たち。「信頼」という堅い言葉が詩の言葉となれば、季語「風薫る」は益々清々しい味わい。
待たされても薫風が話しかけてくる
登るひと
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俳句を始めると人生に退屈という言葉がなくなります。「待たされても」腹が立たなくなります。なぜって「薫風が話しかけてくる」のですもの。俳句が生活の一部となってきた人の実感の言葉。
薫風や欠伸しそうな鬼瓦あいむ李景
幻臭のひとつ薫風といふ病青萄
薫風や電車遅延の五分間浅田久美子
モーツァルトたゆたふ風のかおる音淺野紫桜
薫風やガーデンチェアに母を干すあまぶー
薫風や毘沙門天の股の下有瀬こうこ
風薫る時給八五〇円或人
出雲路の大注連縄や風薫る飯村祐知子
薫風や地雷埋るる村の子ら石川功也
薙刀の弧よりおくれて風薫る伊介
薫風やほどよく焼けるホカッチオいち瑠
薫風を従え歩む神馬かな斎乃雪
薫風やクラス新聞刷り上がる一斤染乃
薫風の月夜の谷に眠りたしうい
薫風や海辺にめし屋また増えてうさぎまんじゅう
神木の話す声とや風薫る大岸歩美
昼呑みは琉球ガラス風薫る大小田忍
薫風や決勝前の円陣しずか大小田忍
薫風や友の墓前にビスケット大弐の康夫
風薫るいざ画仙紙に向かふとき太田酔子
薫風や道迫り来るハングオン大槻税悦
薫風やこぼるる三色弁当のシャケ大山香雪蘭
風薫る日がな一日機を織る岡本育子
薫風や佳き音の立つグラス買ひ小川めぐる
薫風よ胸の扉ギギと開かん小田風遊子
風薫る鏡の中の裾模様薫子
薫風や棒高跳びの空へ空へ加川峰子
食パンの焦げてかりかり風薫る樫の木
初めてのキャッチボールや風薫るかつたろー。
小さき村の移動図書館風薫る可笑式
薫風や親子と分る鼻の穴菊池洋勝
薫風や天守閣より海見ればきさらぎ恋衣
薫風に乗りて新居へ移りけり喜多輝女
室長のフリルブラウス風薫る北野きのこ
父の指す飛車の道筋風薫るぐ
薫風やマレー語の子の太き眉久我恒子
老聾の筆談風の薫りけりぐずみ
薫風や新刊開くカフェテラス葛谷猫日和
鴨川の亀石渡る風薫るくま鶉
チャイム鳴り鉛筆放る風薫る雲野もくもく
平らかに御料の牧場風薫るくりでん
風薫る放水の弧の光かなくるみだんご
薫風や一葉の舟あらはるるけい
水筒の蓋のコンパス風薫る小市
薫風や牛舎の脇の楠に花小芋
ポケットがあるから手ぶら風薫る香野さとみ
薫風や象形文字の残る壁根本葉音
薫風や制服返しビルを出づ佐藤儒艮
良き事の来給ふ気配風薫る彩楓
風薫る駅西口の乙女像彩楓
薫風やシーツ交換実習中沢田朱里
薫風や百円入れる御みくじ器三泊みなと
風薫るスマホを洩れるビバルディ滋野さち
薫風や胸ふくよかにシャツ干され下町おたま
乳搾る両手のリズム風薫るじゃすみん
山小屋へ荷揚げするヘリ風薫るじゃすみん
名に耳で応えるチワワ風薫る紗蘭
薫風や絆創膏の吾子の膝洒落神戸
風薫る渡り廊下に譜面台宗澤美子
ねこ二匹軽トラの上かぜ薫る純子
薫風やとろけさうなる筆記体次郎の飼い主
薫風や摘果ころころ海めざす真繍
凡人に生まれてよかった風薫る鈴木靖
薫風やぴくりと動く河馬の耳鈴木恭美
薫風や仔牛の生まるる気配あり鈴木芳子
グーテンターク薫風の女たち鈴木麗門
薫風の色は俺着るシャツの白晴好雨独
薫風や父の写真を裏返す曽我真理子
薫風を吸い込む青いノート繰る大蚊里伊織
薫風や天井低き記念館高橋恵子
母葬送の日母に吹く薫風田川有利子
薫風硬化す100㎞のタンデム多事
薫風の散歩杖の弾む音駄詩
薫風や絵筆に水をふくませて立川六珈
薫風やうさぎ抱いて陽のかをり蓼科川奈
一年の四番バッター風薫る谷山みつこ
薫風や山門開門午前九時田村朋子
峠ゆくフェラーリや薫風を切る田村利平
薫風や元素記号の覚え方土居たいめし
江ノ電の玻璃れもんいろ風薫るとしなり
薫風や園内バスの乗車券富山の露玉
薫風に息深くする術後の肺都忘れ
薫風や猫麗しき舌を持つ内藤羊皐
薫風や尾羽ひろげる白孔雀中岡秀次
薫風や自転車かつぎゆく男中西柚子
薫風や荒野は踏破するために中山月波
黒島の牛三千の風薫る七瀬ゆきこ
薫風や渡良瀬川はたうたうと猫愛すクリーム
杖を振り回したくなる風薫る根曲がり
薫風や六法全書から四つ葉野紺菊
薫風やイベントマイクテステステス野地垂木
ボサノバに合はす指先風薫る野ばら
風薫るぷすっときみのガムしぼむ野久多杏
三三九度終へ薫風の神の庭八幡風花
薫風や艾置く手のあたたかさ葉月けゐ
百枚の桃色タオル風薫る花南天anne
新品のテラスの蛇口薫る風花節湖
薫風やつんつるてんの猿の服馬場崎智美
風薫るだし巻き卵のお弁当林薫
風薫るバンドネオンの広場かな腹胃壮
薫風や今日も明日もデモ日和原千代
風薫る山をなしたる紙つぶて播磨陽子
薫風やシーツをマントにして飛べさう春野いちご
薫風のなかハチ公と待つてゐるヒカリゴケ
薫風の戸口に払ふ自治会費比々き
薫風や讃美歌496番雛まつり
薫風や弾き手を知らぬピアノの音百草千樹
不揃ひのおむすび三つ風薫る文月さな女
薫風や龍角散にぱふと蓋冬のおこじょ
風薫るほら焼きたてのメロンパンポンタ
薫風やもの言わぬ娘の初任給牧野敏信
薫風やいただく余命診断書正岡恵似子
薫風や鳩を掲げし少年像松浦孝子
薫風や癌寛解と言う知らせ抹香鯨
薫風や追い抜き際に会釈され松永裕歩
真珠筏ひかる薫風の英虞湾まつぽっくり
薫風や床屋帰りの夫と子とまどん
朝練後のグランドへ礼風薫る真宮マミ
地底湖を抜けて一歩や風薫る巫女
蝦夷百五十年を祝ぐ薫風みなと
薫風や土曜の午後のハイボール蓑田和明
薫風や産湯に揺るる蒙古斑みやこまる
薫風や龍の鱗の光る空みやこわすれ
薫風や暗き天守に連子窓宮本敏夫
えいッと股開き薫風ほしいまま椋本望生
薫風に病みて今日から旅へ出る目箒
詰襟のホックのかたし風薫るももたもも
薫風や湖北入江の隠れ里山下幸子
薫風やカヌ―工房昼下りやまちゃん
薫風や阿弥陀堂へは約2キロ山本ふじ子
教育実習薫風の押す背は伸びてゆうほ
話したら良い人でした風薫るゆすらご
とび箱の三歩目は右風薫る吉田好大
普通にはならんでええよ風薫る礼山
朝市の目玉はタルト風薫る若井柳児
薫風や路地は明治の幅のまま鷲尾さゆり
とんとんと四股踏む少女風薫る24516
薫風やポリカンウキにアタリ来る28あずきち
薫風や親子ですなるへぼ将棋愛燦燦
薫風や町工場前ペダル踏む青海也緒
薫風をまとひ天まですべり台青柳フミ子
風薫る断捨離しつつ捲りめく亜紀女
薫風にさそわれ今日もウォーキング秋代
ふた色のテトラポットや風かをる明惟久里
薫風や義足駆け行く競技場明田句仁子
ふるさとに明るさ照らす薫風よ阿武隈川の桃太郎子
健診の乙女の列に風薫る阿部佐知子
あと2分石段の朝風薫る阿部真緒子
風薫る街並み流るるすべり台あまぐり
薫風に戯る綿毛大鴉とあみのみ
空あおぐ少女の髪に風薫る綾
風薫るつたなきフルートひゅうひゅうと綾夏
薫風や古寺の石段登る猫亜美子
薫風ぞ休めよ休め浅間山新居真留美
薫風にゆれるゼッケン4年2組有馬裕子
場違いの父薫風の参観日有本仁政
深こきゅう五臓六腑に風薫る安藤寿子
薫風や木のてっぺんに鯉の口井石たき
薫風が運ぶ線香の香り背後から飯島久子
薫風を集めて妻の病床へ飯島康司
沙羅ちゃん舞う青春の夢薫風にゆらぎ飯塚幸子
風薫る休日君といる休日飯塚千鶴子
杖ついて大師とあるく薫風を家高千代
各停は君住む町へ風薫るイカロス
薫風やサコちゃん寺の子「ちきょーなんじー」石川和子
楠を鳴らす薫風胸に入る石ころ
老夫婦繋いだ指に風薫る磯部美帆
君の文読み返す午後風薫る磯村正夫
まっさらなノートに書いた風薫る板倉孝敬
頬撫でた薫風いまや彼方かないちかわたける
神前へ薫風が捧ぐ祭りの音伊藤悦子
薫風や観音の手のやはらかさ伊藤節子
風薫る父病床の誕生日伊藤美歌
薫風や孫の押しゆく車椅子伊藤裕子
薫風に小魚の群れ揺られけり伊藤芳雄
薫風や叫ぶ子らスプリンクラー井上顕子
風薫る光る草波愛犬の尾井上早苗
薫風や手術の妹を目覚めさせ今井淑子
薫風に首をかしげる鶏冠かな入江幸子
釣果の骨酒旨し風薫るいろり
風薫る里の学び舎弾む声岩沢一行
納骨の経に目を閉じ風薫る上野眞理
薫風になぞられる髪花のごとく卯さきをん
薫風やほら芽が出てる朝の庭衷子
薫風や彼の人を待つテラスカフェ内本惠美子
悲しみも去りゆき恋へ風薫る海
風薫れ花びらシャワー新婦らへ梅里和代
風薫る校の屋上の椅子二つ梅田大樹
緑児の髪くぐりぬけ風かおる梅納豆
放物線描くブーケや風薫る占新戸
薫風が邪念を払う倦怠期浦野則夫
薫風が北庭楽の襲過ぐ江口小春
薫風に背中押されて図書館へえだまめピーコ
八十路にもことさら優し風薫る烏帽子
薫風だしがみついてろつけまつげ大久保響子
薫風や猫は窓辺で大あくび大倉美邦
教科書を先に進める五月風太田修
薫風や青と緑を溶け合はし大友桃香
薫風やショートカットをオーダーする大野絢香
葉裏から見上げる空や風薫る大野恭子
一列の鈴振るわせて風薫る大野浩平
薫風や宅配の君の残り香大山小袖
青インクまづ薫風と一筆箋岡本海月
風薫る地上の天使手を振りつ荻野愛子
薫風が慣らし保育児のほっぺ撫で奥田洋子
薫風が曲がる背骨を撫で上がるおぐもぐ
薫風や金平糖のイガ丸くおざきさちよ
頂きに鉄塔白雲は薫風に翔ぶ修芳
いつのまに青の混じった風薫る尾白明里
朝の窓薫風なぞる寝る子らの頬小田綾
バツイチとなりし娘に薫る風小田切ゆう
風薫る海中のごと野原しなふ小田妙子
戦友の墓標今年も風薫る織田めい
薫風やマウンティンバイク浮き上がる鬼の子
初打席代打適時打風薫る小野寺久眞
寝違えし痛みとともに風薫るオパール
薫風を呑み青空へレジ袋おぼろ月
額装のクロスステッチと薫風とおりゅうさん
薫風や重さ忘るるランドセル海碧
脆きこころの母を撫でよ薫風佳枝
散歩道老犬の背に風薫る薫桜
薫風にヒゲ撫でられてネコあくびガガーリン
八年目生まれ来る子に風薫る各務順子
風薫る祇園精舎で眠りたや影山治子
薫風や今日も快便行ってきます笠原理香
肌で待つ薫風一本いつの日や梶田健司
平日の風薫る庭不登校和子
薫風に誘われ歩くひと駅分霞草
鬱々とこもる部屋にも風薫るかず爺
薫風を通してたたむ冬コート風歌
緋袴に薫風まとい巫女舞えり片岡佐知子
薫風に鶏糞のにほい競い立つかっちん
風薫る空にハルカス半透明克巳
薫風や廃屋にわの野鳩たち桂木惠
あの声が薫風に乗って燕尾服嘉藤継世
薫風や「子ども食堂」さんざめく加藤賢明
歌舞伎はね大川端に風薫る加藤哲
かぜ薫るまどろむねこの鼻ピクと加藤俊子
風薫るポニーテールの手さばきよ彼方ひらく
ドローンのひらく山河や風薫るかぬまっこ
風薫る白髪頭にベリーショートかばぐっちぴあのーば
風薫る「護憲」の署名太く濃く神無
薫風や猫の両耳横にのび神本多貴子
薫風よ運んでおくれ子の内定神谷千恵子
眠る子のまつ毛ぴくりと風薫る亀山逸子
風薫る子の背に余るランドセル亀山逸子
薫風やゆふべはき出す菷先亀山水田
薫風やスカート2段折り返す鴨頭草
道端の名も知らぬ花風薫る河合敬恵
多摩川の鳥の羽ばたき風薫る川島順子
風薫るこの坂道に妣の跡川尻綾子
風薫る1DKで7万か川瀬八弛
薫風や靴皮すこし馴染みつつ川手絵里子
コーラスは校庭も越え薫風に川端孝子
幼子は薫風を受け口をあけ川原すみ枝
せせらぎとひこうき雲と薫風と河村あさみ
薫風や寄せあい離るちさき花関朋子
人の居ぬ地球を想う風薫る菊地正矩
チャイム鳴る薫風駆ける裾ひらり岸本元世
薫風にはためく鱗に願い込め喜多岡季子
薫風やお重かかげて坂かけるきたじままり
薫風を腹いっぱいに深呼吸北原伸章
風薫る苔庭赤子よく眠る北原信子
薫風や靡く真白のワンピースきなこもち
薫る風外出許可の母を乗せきみよ
薫風や一族郎党五十人木村邦男
薫風に剥がされた嘘二つ三つ木村万里
髪少し明るく染めて風薫る木村摩耶
薫風に鳴る絵馬うつす夢蒼し香子
背を押した薫風ぐいと向かう今年は桐村菜穂美
古寺のまろき石段風薫る希林
薫風や草食む牛の副鼻腔銀雨
風薫るテニスコートや父と孫金城英子
思春期の涙薫風ぬぐい去りくう
薫風やまた巡り来し犬供養国妙子
白寿と還暦同じ薫風が窪島ますみ
グランドの一息つく葉音薫る風倉澤慶子
新人のため息溶ける薫風に倉林豊
薫風に踊るけやきの緑色ぐりぐり
赤ヤシオ薫風の中山一面原ひかり
濡縁に雀の餌皿風薫る小池きよし
ちいさい掌握して香るは薫風小池佑紀
薫風や鉄の匠の熊本城小池玲子
列長きハウスの圃場風薫る小嶋芦舟
薫風や朋の影踏む石畳五島藍
薫風の中へ黄色い帽子たち古東うさ
薫風や帽子かぶらず走る子ら五島みを
青春の匂いをまとい風薫る小林啓子
坂下り流れて絹髪風薫る小林由実
外郎や薫風さそい喉すぐこはる
薫風や古木の樹肌みどり映ゆ小南子
病室に伯母の笑顔に風薫る小森隆
われ先に緑溢れる風薫る小山知子
とねつこの跳ねて駆くるや風薫るコロポックル
薫風の丸めし白猫の抜け毛斉藤潤子
薫風や一人聞きゐる寺の縁齋藤富美代
浮かぶ雲風は緑に染められて坂昭平
タイヤ替え心も変えて風薫る榊原章男
薫風や太極拳と戯れる坂口善行
「はっぱ」と子薫風を背に急ぐ朝坂元奈津子
薫風やせごどん駆けし野に山に坂元玲子
初めてのポニーテールや風薫る作田尚子
薫風にゆれる木漏れ日手で受ける櫻井弘子
少しずつタンス入れ替え風薫る桜姫5
薫風や色とりどりに七変化櫻淵陽子
薫風や里山の先富士の峰サクラ咲く
薫風を広げゆく新しい地図さだとみゆみこ
歩こう会麦田の道に風薫るさちこ
エイサーの地を踏む足や風薫るさちよ
蟻を埋め子が笑う庭風薫る佐藤千枝
薫風や躯のごとく弟眠る佐藤比古太
新任の髪にリボンや風薫るさとう菓子
風薫る黄みどり緑梢揺れ佐保子
背番号十八の子や風薫る塩沢桂子
薫風や老母の寝息軽やかに汐湯
薫風や大の字に寝てひとりじめ鹿嶌純子
薫風や溢れんほどの家と家しかもり
薫風やガラスに笑う白いくつ四十雀
答え待つ薫風のごと君想いしずく
建仁寺肩に薫風初座禅志貴子
薫風や始業チャイムに走れ走れ篠崎彰
薫風や菜を拵へたる爪厚く篠崎幸惠
薫風や渓声眼下になまめきし四宮亨
薫風の水先旗溌剌と過ぐしば蒼玉
風薫る老人ホームの昼ご飯島田恵
おやつ呼ぶ庭泥玉光る風薫る嶋村紀子
風薫る人魚の苦い恋の泡芍薬
包帯をはずし添えた手風薫る紗桜
風薫る腰の懐剣きらら坂秋水
足もとの15デニール風薫るジュミー
風薫る坂を下れば伊豆の海順女
薫風に弾むポニーテール眩し城ヶ崎由岐子
風薫る天上の母目をほそめ彰子
薫風や耳の形は母譲り城内幸江
薫風や両家集ひて宮参り小鞠
薫風や半壊の紙無防備に植朋子
風薫る兄在りし日も亡き後も初野文子
薫風や新米住職すくと立ち白木澤法子
覗き込む地図を上下風薫るシロクジラ
カロリーオフ薫風食べて泳ぐ空信月
故郷へ電車いっぱい風薫る進藤秀子
迷路のごとき薫風の木道睡花
ノリタケへ注ぐミントティー風薫るすーぱーまみこ
服おどる薫風きたり胸おどる杉村美佳
薫風よ渡れ裂かれし半島に鈴木昭
カーテンのなき細めより風薫る鈴木あむ
七十九の胸を薫風にて満たすすずきさちひこ
薫風や子供歌舞伎の名台詞鈴木淑葉
免許証返し薫風身に纏ふ鈴木常郎
薫風や幼き頃に我ふと帰る鈴木雅人
風の香に乗るハーレーのエンジン音鈴木正則
薫風を集めて走るこめらかな鈴木真澄
薫風に走り寄る子のえがおかなすずくら
薫風と金平糖は似ているねすずひろ
死化粧されゆく夫や風薫るすみ
「ふるさと」を歌う墓参や風薫るすみえ
薫風の持ち上げてゐるてふの翅すりいぴい
寝付くまで薫風と押す乳母車瀬尾ありさ
薫風や生を吹き込む崖っぷち関口はるな
目を閉じて吸い込む薫風ほほ撫でるせぴあちょこ
薫風や読みたる本に栞落つ惣兵衛
薫風や穴あきの靴下を干さん走流
薫風よ吹け米朝首脳会談園田輝美
薫風やペダル軽やか自転車道園田みゆき
髪を切り首くすぐられ風薫る空龍
薫風のホールはなやぐ舞扇平迪子
走り来るインディゴブルー風薫る高田留美
縁側のネコ薫風に背伸び高月真
薫風や杜の都にメダリスト高野幸子
薫風や木漏れ日の滝キラキラと高野秀和
薫風や白球追いし無精髭高橋寅次
薫風を描く筆箱みどり十種たかまま
薫風や母の手躱しすべり台高村安子
二度折るデニムの足首に薫風田川彩
薫風に一片ひらり舞い降りて瀧川章子
風薫る一日終えて赤い三日月田口輝子
デコルテの白きに黒子風薫る武井裕子
薄墨の山幾重にも風薫る武樹
オスワリの鼻づら上へ風薫る竹口ゆうこ
風薫る海藻に遊ぶ稚魚の群れ蛸丸
風薫る筑紫の丘に座す学ラン立待
薫風によさこい祭り遠くまで田中慶篤
風かほる嬰の名は帆ニューヨーク田中時子
薫風や棚田に人のあふれ出て田中ようちゃん
薫風の形カーテン膨らみて田邊由利恵
九年ぶり薫風の里になびく鯉田畑尚美
薫風や肩におしゃべり露天風呂たばた三翠
風薫るバイクにひらり若き僧田村美智子
峠道薫風に一歩また一歩田村ゆうこ
富士やまで醸す洋酒に風薫る田良穂
薫風やタペストリーの場所を変へ知足
風薫る天に白球追いかける近田好浩
丘に佇ち薫風食ぶる體かな遅筆
川面に100匹の鯉風薫る千穂
おかっぱの角崩しをり薫る風茶々
電車降りマスク外して風薫る中間康博
薫風やショートカットの15才月丸
薫風や神の渡りし赤い橋辻が花
薫風や就活の君深呼吸つちのこ
風薫るレプリカキャップの青の波土屋幸代
背を伸ばす営業マンに風薫る綱島鈴枝
風薫る読経の唱和澄みにけり鶴田京子
クッションを干すベランダに風薫るディクソンたか子
薫風の重くなりたる肺病みてテツコ
薫風やカタログギフト何にせむてまり
薫風と駆けだす赤いランドセル寺田洋子
薫風や髪結わえしはなで肩に天晴鈍ぞ孤
薫風や野良猫ひとりあぜ道に都靑
薫風を縫へる妊婦の明き昼土井探花
風薫る「心経」読経軽やかに土井ヒロシ
薫風や地蔵のべべのずれてをり遠音
牧場に雲かげ映り風薫る徳
薫風と登りて来たり大手門豊島みる甫
ピピピピと仰ぎ見る空風薫る戸根由紀
薫風や宿より望む東山都乃あざみ
薫風や自転車ライド赤信号とよかわ
背に病院母の手を引く薫風や砥綿晶子
万感の二軍宣告風薫る中神雨水
最上川鯉も踊るや薫風に中川裕子
薫風を掬い溢して砂場の子中島圭子
薫風や遠まわりしてポストまで中嶋さいこ
薫風や悪態をつく墓碑の前中島ふう子
園庭の遊具塗り替え風かおる永瀬薫
ハブアナイスデイショートカットに風薫る永野ひとみ
城跡を犬と歩くや風薫る中村恵理子
薫風に母のまなざしよみがえる中山清充
すれちがい若き乙女の風薫る無餓鬼
薫風と一つになりて子の笑ふ七草
雨上がりボール追う芝に薫風なやもだん
薫風や車椅子から母立ちぬ奈良雅子
薫風の朝に屋台の飲茶かな楢山孝明
薫風や歩幅揃えし石畳成田むぎ
薫風や木目の痕の手紙来て西川由野
薫風になでられ眠る木蔭猫にゃんじ
薫風やトロッコ列車は峠越えぬらりひょん
ヌンチャクで少女は薫風めつた切りぬらりひょん
髪を切り首筋を撫でる薫風かな猫じゃらし
薫風や前行く犬の耳弾む野口富美子
薫風やよちよちの子に向かい風野沢奈々絵
薫風や「生きいきサロン」初デビューのど飴
四万十や薫風満ちる星の肌野中泰風
薫風に押され押されて車いす野古のこ
金時や山にむかひし風薫る野村相子
風薫る一年生ら歩いてくのんのん
「薫風」をはがきに墨書友見舞ふの菊
長休みゴロ寝ゴロ寝で風薫る俳句の鬼平
薫風や欠けた鏡に笑み作る灰田兵庫
薫風が小股で湖面歩きゆきパシフィッコ
風薫るジャガイモ畑昼近し畑耕太
風薫る迷える吾は背伸びする畑詩音
呉まつり華やぐ陽気に風薫る波多野博雄
はい弁当薫風満帆離島へGO葉月かあちゃん
薫風や帰国の孫はパリジェンヌパッキンマン
薫風がボールをはこぶOBゾーンばってん中年隊
黒髪に手を添えし人薫風に鳩子
薫風や故郷のプラットホーム花伝
薫風や年上の子は鬼のそば羽巣
薫風にふわりと一歩踏み出して浜けい
薫風や香花仄か七回忌早川博子
薫風や王子はキルトで跳躍す林訓子
薫風が抜けるワイシャツ初出張早山
夕暮れの薫風の中の散歩かな原田佐恵子
思ひ出よ擦れ合う葉に散れ薫風に原田典子
薫風や葉擦れに秘仏深呼吸原田民久
海峡の橋の散歩や風薫るはるかん
眠る子に涙あとあり風薫る柊月子
電動自転車われの味方は薫風ぞ柊の花
薫風や開け放つ屋を洗い抜け東風
薫風の天に遊びし雲と鯉人見博子
背を押すはゆく平成の薫風よひふみ
都会にも故郷と同じ風薫る姫橘
薫風やテニス決勝戦の朝姫山りんご
薫風や独語の部屋を吹きぬけり平田白想
着納めの黒留袖や風薫る平野千春
薫風に猫のひげ揺る添い寝かな広橋純子
薫風に誘はれ野外オーケストラ博光
風薫るおとつい買ったワンピースひろ夢
風薫るヘアピンカーブ曲がりきり深草あやめ
床払い土踏む我や風薫る深幽
こんちはと知らぬ少年風薫る福岡三佐子
薫風を裂く鷺の目に映る蒼福島陽菜
薫風に火照る顔向け目を閉じる福地悦子
薫風や大の字ねむる猫わらふ福留真弓
薫風に頬なでられて我ひとり福原敏恵
ゆるふわの術後のウィッグ風薫る福良ちどり
薫風だね俳句よまない君が言ふ梟月
夜勤明け草臥れた頬に薫風かな藤智
薫風やフットネールで古希の会藤田民子
薫風や宛名違いのエアメール藤田真純
掃除機はハンディー軽々薫風の窓辺藤本祐子
土佐硯薫風あつめて去る俗世藤原康明
草千里真ただ中や風薫る冬のおこじょ
花びらの百葉箱に風薫るふらり
かけ声に風薫る君白球を追うぷりずむ
薫風や少女と共に走り去るぷりんママ
靴擦れの痛み忘るる風薫るブルー
覚えたてのバイバイ薫風に披露するふわこおばさん
ジュリエットの胸に触れば風薫る文女
クレヨンの鯉薫風の龍となれ米司紀子
薫風を二輪と共に食いつくすヘッドホン
薫風や黄色い花粉のウラン入り宝玉宗匠
風薫る木綿のブラウス似合ふ母星野茜
薫風にマイク割り込む地方選ポスティグの星
風薫る出足揃わぬ寮歌かなぼたんのむら
薫風や梢にカイト揺れ光る堀内淳子
薫風や友とみ空へ二重唱本上聖子
薫風に梳かれて遊ぶ吾子の髪本多千晶
薫風や湖波を喰らう仔柴犬麻衣
亡き母の着物の袖に風薫る舞寿
二輪車の双子わらふや風薫る真壁正江
薫風や母に一歩二歩三歩牧野敏
薫風やつかまり立つ子の尻を押し麻琴
風薫る夜のいや白きスピカかな真柴みこと
薫風に涙預けて歩き出す増田典子
対戦の携帯ゲーム風薫るまち眞知子
病窓に学童保育所の声風薫る松浦富紀子
薫風や江戸を感じる歌舞伎座に松岡幸子
薫風にまどろむ我が子見入る午後松尾洋輔
風薫る東海道となりしかな抹香鯨
薫風弾くる自転車は空色松田てぃ
恋みくじ待ち人過ぎて薫る薫風抹茶アイス
薫風の戻らず山も田も消えて抹茶金魚
薫風や介護相談終えし午後松永裕歩
薫風のごとき一団すれ違ひ松廣李子
モンタナの荒野にひとり風薫る松山帖句
神様のハーブオイルに風薫る茉莉花
薫風や紙飛行機の軌跡追ひ微睡人
薫風や母のバイタル既になく真野悠
「さつきちゃーん」駆け出す少女薫風に真冬
薫風や我が家の庭にレトリバーまめたろう
3回目洗濯託す薫風にまめとかめ
風薫る開港記念大通り真夕子
薫風や嫁ぐ娘の晴れ姿まゆ熊
薫風や笑顔残して母は逝く真理庵
薫風に返るスカート母が照れまる女
薫風の楽園彼の秘密基地三浦理恵
薫風や収穫めざす苗も吾もみかん
薫風や芝に寝転び牛になる岬きさみ
薫風にほぐるる緊張子ら歌う見眞
薫風を行く音高しハイヒールみずえ
薫風や日本海へ立山走り水口無果
さそり座よ薫風の空満ちる月水野祥子
風薫る少年剣士声高しミセウ愛
薫風や草刈る音の遠くよりみっちゃん
薫風や一夜明けたる歌舞伎町碧女
義母逝きて薫風部屋を吹き抜ける緑水
おしゃれして懐かしい友と風薫る南谷とうふ
風薫るや図書館長の鼻歌みやえ
薫風や弾む園児の列続く宮川恵子
風薫る矢筒自転車ヘルメット宮部里美
帰り道カレーライスの風薫る宮本早苗
風薫る校庭の声意気揚々麦まめ
カタカタと休診札や風薫るむつ子
開けた窓薫風ともに観る映画武藤裕子
伸びたねえ抱き上げた孫の髪風薫る武藤義満
薫風に歌声高らか中学生村上やすこ
風薫る背中で笑うランドセル紫香
薫風や亦青々と雨後の山村松登志子
ファンフーレ響く青空風薫る室依子
薫風に母のおもかげ流れ浮く恵風
道塞ぐ猫の日だまり風薫る桃猫雪子
薫風や洗いざらしのシーツ笑ふ森子
謝恩会悪童纏う薫風よやーくん
薫風に花蜜香る雨上がる八重葉
薫風と子等の自転車畦をかけ焼田橘
薫風の移り香白いグライダー八木実
薫風や人みな五感でかぜを承く安川伊津子
薫風や花がらぽとりうたた寝す痩女
花嫁の父薫風に包まるるヤッチー
みまかりし母は土佐へと風薫る矢野立子
薫風に心を任せ高き雲山内彩月
声援の中薫風裂く白球山内佳壽子
薫風や地を踏むわが娘髪揺れてやまぐちよしえ
薫風のアクアラインを東する山田俊弘
薫風や女坂なれど険しき山田洋子
薫風を駆けるサイレンいのちのせ山田芳子
乳飲み児の髪をなでゆく薫風かな山本悦子
薫風と巡るビワイチ湖(うみ)青し山本康子
六十路過ぎ普段着の朝風薫る湧々庵
薫風に誘われ出でる若き力柚香
風薫る街はサンバの昨日今日ゆきゆき
ポニーテール試す姿見風薫るゆづ
薫風のんどよりきたりかういろううり瑩柳
くん風や両手広げて深呼吸ようよう
薫風や赤靴のランナー息を揚げ吉成しょう子
薫る風さらっと悩み吹き飛ばす吉野ふく
風薫りたり羽二重のひやひやりら
薫風や還暦寿ぐ赤ワイン琉璃
薫風を浴びて背伸びす孫と我れ麗夏子
歳重ね新たな職場風薫る連雀
薫風に背中押されて胸をはる老邑敬子
風薫るもう少し一緒にいませんかわこ
薫風や銅山跡に植樹せり渡邉いろは
薫風や浮世絵富士がそのままに渡辺音葉
賀茂川のぬるきベンチや風薫る渡邉一輝
薫風と木々吹きならしくらべ馬渡邊さゆり
薫風や城址に深き空の堀渡邉竹庵
少しだけ慣れた背中を押す薫風ANGEL
受付に木彫りの雷鳥風薫るKISOBA・U.F.O.
跳べ高く挑む若鯉風薫るmichiko
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
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初めて俳句を作ったという方々もいた初回の募集。
- 上田さん「薫風の意味がわからず場が冷める」
ひとまず「薫風」という季語を一つ知ったと、前向きに捉えましょう(笑)。
そして、- 繁さん「575へ誘う薫風乗ってみて」
- 伴野さん「『薫風』の兼題抱き腰上げる」
果敢に挑んで下さっているのが嬉しいです。
まずは基本的なことを解説しておきます。
本サイトでは、毎回兼題(予めの出題)として季語を出題しています。
その季語が入った句を送って下さい。- 谷口さん「風運ぶ拙きドレミ新入生」
風という字はありますが、季語は「新入生」になっていました。残念。
季重なり(季語が複数入っている)の句も多かったです。
- 矢野さん「朝寝して日めくる指に薫る風」
- 小澤さん「様々な新緑の吐息薫る風」
- 小浜川さん「部活終え光る汗ふく薫風」
- ひでざねさん「網戸越し薫風触り鬱やわぐ」
- 笠江さん「薫風と戯れみかん白い花」
- 有馬さん「薫風や黄砂と花粉共にあり」
- 杉田さん「薫風や三つ編みするもいと涼し」
歳時記を買って、季語を調べることを習慣にしましょう。
複数の季語が入った名句もありますが、初心のうちは一句一季語からコツコツ練習していきましょう。- 立原さん「薫風や花粉マスクのもどかしさ」
季語の清々しさに対して、中七下五がそぐわない点が残念。
- 野曾良さん「薫風背に見晴るかせし関東平野」
字余りは上五に置くのが定石。
「関東平野薫風を背に見晴るかす」ならば入選でした。
次回の挑戦をお待ちしています。
4月10日より投稿募集をスタートしました『俳句生活』。
初回にもかかわらず1,319句もの投稿をいただきました。なんと、通販生活の投稿コーナー史上、最多投稿数です。あらためて俳句人気の高さを思い知らされました。
それでは、夏井いつき先生の審査結果を発表いたします。選外の投稿句について夏井先生からの一言アドバイスもございます。
投稿いただいた方も、そうでない方も、先生の評価と一緒に作品をご覧ください(編集部より)。