夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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10月の兼題

「秋の暮」

2月の審査結果発表

兼題「霞」

 たいへんお待たせいたしました。2月「霞」の結果発表でございます。今回も先生のアドバイスは必読です。「霞」に対してどちらかというとミステリアスなイメージを持っていましたが、投句を読んでいくとそこはやはり春の季語、明るく爽やかな作品もたくさんあるのだなと驚かされました。

 この度は編集部の不手際で2月「霞」の結果発表が遅れ、「俳句生活」サイトを楽しみにご参加いただいている皆様、ならびに、関係者の皆さまにご迷惑をお掛けしましたこと、心よりお詫び申し上げます。今後はこのようなことがないように努めてまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
霞とは雌花らの憂き声のやう

川村ひろの

夏井いつき先生より

「雌花」とは、単性花。雌蕊はあるけれど雄蕊がない(あるいは退化している)花です。「霞」を様々なものに比喩する句は、今回も多数ありましたが、「雌花らの憂き声」という感覚に驚いてしまいました。
「霞」とは春の天文の季語。空や遠景がぼんやりする現象です。その霞の下には、雌花だけをつける植物たちも生きています。銀杏や南瓜などがそれに当たるのだそうです。背の高い樹木の雌花も、地に蔓を這わせる野菜の雌花も、風に乗ってとどく雄花の花粉をひたすらに待つ。その声にならない「憂き声」のように、「霞」はゆるゆるとたなびいているのです。
「霞」という言葉は、比喩的に心の悩みやわだかまりを表現することもありますが、一句の奥底に「春愁」という季語を横たえているかのような作品です。

地
頂上の県旗あかるき霞かな

磐田小

 県庁のある街の真ん中、小高い丘を思いました。私の住む俳都松山は、まさにこんな感じの街です。丘の頂上に掲げられている県旗が、霞の上に浮かんでいます。「あかるき」の一語が、さりげなくも巧い描写です。

口笛に牛みなうごく夕霞

えりべり

「口笛に」という音から始まる一句。下五の季語「夕霞」によって、放し飼いの牛を集める口笛に違いないと分かります。「みな」の一語が、牛の数と放牧場の広さを思わせ、「夕霞」の映像を補填している点が巧いですね。

瞬膜は水平に閉じ夕がすみ

久留里61

「瞬膜」とは、まぶたの内面にある薄い結膜の襞。一読、鳥の眼のそれを思いました。薄く水平に閉じる眼は、瞬間のアップ。そこから、ゆっくりと広がっていく「夕がすみ」の陰影。美しい映像を切り取りました。

霞より朝日ぼぼんとはずんで来

島田あんず

 明るくなってきた山々は、霞に覆われているのです。そこから「朝日」がのぼってくる光景ですが、なんといっても「ぼぼんとはずんで」という描写にオリジナリティがあります。春の喜びに満ちた朝の始まりです。

もう此処は頂といふ霞かな

江口朔太郎

 もうこの辺りは、頂だと言われて、なるほどこの辺りが、と見回しているのでしょうか。遠くの山も、見下ろす下界もぼんやりと霞んでいます。「もう此処は頂といふ」の一種曖昧な表現が、季語「霞」のリアリティとなって。

人
  • 春霞古き団地の母艦めく芍薬@独逸

  • ロープウェイ放ちて霞といふ空母四條たんし

  • 朝がすみ山は狼祀りけり田村ヒロミ

  • 春霞佐渡大きくて平たくてさかえ八八六

  • 肺までがとほい霞の鼻呼吸ギル

  • 霞てふ広さ未来の使い方久我恒子

  • あのこゑは仔牛のこうた朝霞栗田すずさん

  • 夕霞ねずみの王とすれちがふ渋谷晶

  • ゆふがすみ子は東京でスーツ買ふ青居舞

  • 瘢痕の疼き霞に放り込め青空豆千代

  • ホルンパート課題霞の吹いた音青水桃々@いつき組俳句迷子の会

  • 春霞ヒュッテの甘きカレー食ふ赤尾てるぐ

  • 霞から立ち上がりたり大鳥居赤富士マニア

  • 朝霞恋文のよな母の経秋野しら露

  • うす霞み空をひらいて烏飛ぶ芥川春骨

  • 朝霞ベッドの母のお下げ結ふあくび指南

  • 鞍馬から京見下ろして春霞麻場育子

  • 春霞和語の使えぬパスワードあたなごっち

  • ケダモノの死を含有し霞立つat花結い

  • 春霞看板猫はオッドアイ雨戸ゆらら

  • 幾度もゆめ棄てあまやかなる霞あまぶー

  • 朝霞天日が梯子かけにけり天海楓

  • 春霞遺品の時計磨きたる綾竹ろびん

  • 霞立つ今日は妹嫁ぎますあらいゆう

  • 透明になるまであらふ八重霞新多

  • 千代八千代霞向こうに仁徳陵在在空空

  • ハードルを君と起こすや夕霞粟倉俳句教室宮本モンヌ

  • 海神のやすけき寝息春霞安春

  • ましゆましゆと動輪まろまろと霞いかちゃん

  • 象の鼻あげて霞の動物園郁松松ちゃん

  • どつぷりと霞を孕み大黄河池之端モルト

  • 棚霞猫の名をミカエルと決む伊沢華純

  • 山霞後部座席の白昼夢伊澤遥佳

  • 霞濃し人身御供のごとき我石塚碧葉

  • 戻れない藍白の山霞みけり泉晶子

  • 軽トラに父のNikonや春霞いその松茸

  • 霞晴れて知らぬ国旗の貨物船伊藤順女

  • 春霞退官の日の靴みがく伊藤柚良

  • 迷い犬抱いて霞の中をゆく井納蒼求

  • 霞立つ城趾焦げ瓦の欠片いまいみどり

  • どの人も母かとまがふ夕霞井松慈悦

  • 海霞む鯨はうたひながらしぬ妹のりこ

  • 国境を越えて霞の中に入る岩木順

  • 屋上はやさしきところ薄霞内田こと

  • 霞む日やゆるり羽化してまだ解かず内本惠美子

  • 足の爪切る夫まるい夕霞梅朶こいぬ

  • 城山の霞や不意に武具の音梅野めい

  • あの山に天狗いるらし遠霞麗し

  • 約束の刻迄の間の霞かな越冬こあら@QLD句会

  • 観覧車霞のなかにゐるふたり絵十

  • 安曇野の霞の中の道祖神榎本奈

  • 春霞フエードアウトもいいなどと遠藤千草

  • 僧院の影古り増さる遠霞近江菫花

  • 通夜明けのあんパン甘し朝霞大岩摩利

  • 朝霞折れた大樹に育つ苔大谷一鶴

  • 朝霞む薄くれなゐのユートピア魚返みりん

  • 夕霞ひとならぬものらしき影可笑式

  • 霞の向こうにも怒れる民住むらむ荻原湧

  • 薄霞補欠合格てふ日延落句言

  • 昨夜の酒霞む渭城を振り返る火炎幸彦

  • 終点は昭和霞を大回り加座みつほ

  • 坂下る仔犬ぽわろと霞食むかしくらゆう

  • 草霞む蛹は空をうたがはず風薫子

  • 古里に七つの峠朝霞加田紗智

  • 切り出せずにいる霞のスワンボートかねつき走流

  • 猫の島猫の形に霞みけり神島六男

  • 霞てふ色あるやうなないやうな加良太知

  • 夕霞シネマライブに持つタオル看板のピン

  • 霞立つ財布の中は小銭だけ北野都留

  • あんな家帰りたくない叢霞着流きるお

  • ひとりでもいられる都会朝霞城内幸江

  • 自分には辿りつけずに霞みゆくきのえのき

  • 老木の虚に咲きをる霞かな木ぼこやしき

  • 朝霞クラムチャウダー色の村杏乃みずな

  • どなたかは思い出せずに夕霞國吉敦子

  • 何を砕いたら霞になるのだらう恵勇

  • 夕霞国の輪郭溶ろけゆくケンG

  • すぐに泣く弟と居る夕霞幸田梓弓

  • 春霞暮らし刻みし花時計ココヨシ

  • 霞より出づるアンパンマン列車小藤たみよ

  • 霞む丘解雇定まり歩を返す榊昭広

  • バス降りて新宿見上ぐ朝霞坂野ひでこ

  • 不機嫌な改札並ぶ朝霞さくさく作物

  • コンビニの跡にコンビニ春霞佐藤志祐

  • 霞の空ゆふべの月のやはらかにさとう昌石

  • 遠霞天辺なしの讃岐富士佐藤浩章

  • ブルボンのお菓子ほろほろ春霞里山子

  • さっきまで雲の居た場所春霞彷徨ういろは

  • 山霞む底縫ふやうに木曽路かな沢胡桃

  • 昼霞あかご何度も伸び縮み沢田恵子

  • 霞む日や新羅の国はあの辺り三休

  • ぶうううん霞む風車や瘴気満つ三水低オサム

  • きよらかな余白のふりをして霞歯科衛生子

  • 探しゐるゴール霞の中にあり島田順子

  • 江ノ島をかすみ一日乗車券清水三雲

  • 空想は霞の中に膨れだす下丼月光

  • 神々の逢瀬か山の群霞秋芳

  • 霞濃し湖上に小さき櫂の舟白猫のあくび

  • マナティの脛骨六つ棚霞白プロキオン

  • 霞立つ今日より富士の遠くなり深幽

  • 草霞む下ノ畑ニ居リマスと杉本果ら

  • 吾子の買ふ貝の霞を明るうす瀬央ありさ

  • 霞吸ふ躰やまびこ生む躰ぞんぬ

  • 高層のティータイム終え山は霞駄詩

  • 皺ひとつなきオムレツや朝霞平良嘉列乙

  • 霞みたる山河ここから急登坂たいらんど風人

  • 朝霞名前を知らぬ顔見知り高橋基人

  • 朝練の霞を素振り五十人高橋寅次

  • 年金とやまひの話うすがすみ高橋光加

  • チェンバロは金粉のごと朝霞たきるか

  • 朝霞昨夜の月は桃色に谷本真理子

  • 春霞みづといふにはまだわかく玉家屋

  • 頓服薬二錠飲み込み夕霞たまのねこ

  • 犬と行くガム二枚分の霞かな丹波らる

  • 霊峰の巫女や禊に霞立つちくりん

  • 吾子の字の婚姻届春がすみちょうさん

  • 霞立つ向こうのお山も百低山辻ホナ

  • 色をなす遠き火山も霞かなつついぐれちゃん

  • 霞立つきれいな蝶を弔ひて津々うらら

  • はるがすみ悉曇文字は孵化しそう綱川羽音

  • 自転車の練習中や春霞デイジーキャンディー

  • 全力で走れない街夕霞電柱

  • 朝霞抜けて抜けて抜けて出社土井あくび

  • 乳臭き襁褓のにほひ八重霞時まる

  • 秒針の音少し染む霞かなDr.でぶ

  • 富士山の見える北限春霞どくだみ茶

  • 霞立つ浦賀に浮かぶ駆逐艦豊岡重翁

  • 深吉野のうすくれないの霞かなとんぼ

  • 山々の霞手のひらだんご虫内藤由子

  • 山間の霞の溜まりに神集う中村こゆき

  • 牧場の牛糞匂ふ春霞那須のお漬物

  • 富士山のあくびのような春霞夏草はむ

  • 母の里霞の袖のあのあたり夏椿咲く

  • ボサノヴァへ浸すかすみの鐙骨七瀬ゆきこ

  • 春霞そぞろ神の手白きこと七森わらび

  • 氏神の長い石段春霞⑦パパ・いつき組広ブロ俳句部

  • 耕運のたい肥の匂ひ春かすみ布村柚子

  • 霞食ふ羊を小屋に追ひ込みぬ沼宮内かほる

  • 錆と血と黒土に倦み朝霞乃立喰烟

  • 出張は始発となるや朝霞則本久江

  • 哲学書百ページ目の昼霞蓮井理久

  • 霞む日の心はなべて故郷なり蓮見玲

  • 湯の町に二度寝うながす霞かな畑美穂

  • まだ眠いキリンの小くび春霞花南天あん

  • はるかなるハルカスすくと春霞花はな

  • なゐの報鳳凰堂の霞みけり花和音

  • 竣工を明日に大橋霞たつ浜友輔

  • あの霞残る辺りが吾が生家はむこ

  • クラビクラに羽化始まりぬ夕霞巴里乃嬬

  • ペトリコール沁む廃校へ立つ霞晴田そわか

  • 本山を霞の袖の清き風半ズボンおじいさん

  • 春霞みづきり石のゆくへかな樋口滑瓢

  • 丸で描く日本列島春霞ひなた和佳

  • 霞みたる戸隠連峰おやき食む姫川ひすい

  • 朝霞バーボン入れたスキットル平岡梅

  • 霞より犬咥へ来る鶏の首平本魚水

  • 櫂交はす霞む湖面の出逢ひ舟比良山

  • 定命や海に霞のはかり無く風慈音

  • 炒りぬかの木べら返す背霞かな福田みやき

  • おのころの島の在処や朝霞藤井眞おん

  • 九龍は霞ネオンが腥い藤白真語

  • 空つぽの貝蛸ひとつ霞立つ舟端玉

  • ガラスペン霞含みて発色すふみづきちゃこ

  • 山霞抱かれうつらの乳の息古川しあん

  • 霞かな国に鳥啼く山が啼く古瀬まさあき

  • 眠剤は薄紅色に遠霞豊後のすもも

  • 霞からいつもは吠える犬のたり峰晶

  • 霞よりスワンボートの黒き嘴星鴉乃雪

  • 青竜の腹蠢いて霞かなポップアップ

  • 春霞稲荷大社の朱は朱堀邦翔

  • 産声に呼ばれて湧き出づる霞凡狸子

  • 霞立つ住めない街の干しタオル真喜王

  • 九十の端数は忘れ春霞松岡重子

  • 友のごと呼ばるる山や棚霞まめばと

  • 春霞醤油蔵には見学者差しポット

  • 八重霞檜皮の軒に厚き反り満生あをね

  • 爺さんの歯磨きは外朝霞みづちみわ

  • 登校のできる日できぬ日遠霞水上ルイボス茶

  • 裏山は猿に還した春霞宮坂暢介

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  • 生駒山上電波塔群昼霞もりたきみ

  • 霞から鳥獣保護員のズック山羊座の千賀子

  • 霞中始発電車に息子の背柳井るい

  • 彼方なる風力タービン朝霞簗瀬美嘉

  • 地図に五訓まづ書き入るる霞かな簗瀬玲子

  • 朝霞終の住処に置くこけし八幡風花

  • 三トンの河馬のあくびや昼霞山内彩月

  • 人間の遺した轍霞立つやまさきゆみ

  • 塩むすび霞もろともほおばりぬ山本美奈友

  • パラグライダー霞の中を降り立ちぬ柚木みゆき

  • D51の鼻ののつぺり春霞遊羽女

  • 父が見た最後の私夕霞有野安津

  • 産みたての卵霞の中に取り雪子

  • 朝霞ナニカツブヤクユメヲミタ雪音

  • 朝霞今日はそんなに急がない湯屋ゆうや

  • 夕霞きょう君はやけに饒舌横須賀うらが

  • Amazonの箱に目鼻のある霞横山雑煮

  • 墳丘の埴輪の馬も霞みけり吉田春代

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  • 夕霞ちょっと遅れて笑う母渡邉わかな

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  • 街宣車野末に朽ちて霞かな相生三楽

  • 随道を回游したる薄霞愛燦燦

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  • かすみかすみ昔の女見つけたり青星ふみる

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  • 母の居へ父迷はずに夕霞明惟久里

  • 八重霞きれいデイケアずる休み空地ヶ有

  • 春霞湖上はためく万国旗秋山らいさく

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  • 夕がすみ座席ちひさき観覧車朝月沙都子

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  • 目隠しの鬼の抱きたる霞かなうからうから

  • 矢はゆるく飛ぶや霞の弓道場宇佐美好子

  • 仮骨は六週半ば霞かなうた歌妙

  • 朝霞集めて放つ太極拳宇田の月兎

  • 今は昔東京遷都や八重霞空木眠兎

  • ロープウェー下りる霞を振りほどくうつぎゆこ

  • 山鳩の声吸うてさみしき霞かな靫草子

  • 帰る日の霞のにおう村の橋宇野翔月

  • 沖霞応え船笛いきながし海口竿富

  • あの山に優しい死あり春霞海野青

  • 泣きやまぬ子を抱いてゐる霞かなうみのすな

  • 銀山の瀬音沁み入る霞かな梅尾幸雪

  • 夕霞淡し出張最終日梅田三五

  • 山霞人気少なき自習室梅鶏

  • 海峡や汽笛が編んで行く霞うめやえのきだけ

  • 終筆のわずかな力み遠霞浦野紗知

  • ほどけたる紐を手探る霞かな吽田のう

  • 山裾の霞の中を大河行くS・葉子

  • 霞みゆく利尻やヒカタ強まりぬ蝦夷やなぎ

  • こわれゆく母をつつむや春霞笑姫天臼

  • ニコライの葬送の鐘夕霞朶美子

  • 戦国を垂るる霞の憂ひかな絵夢衷子

  • 霞立つ日吉館疾く消え失せぬ縁穐律

  • 壺ひとつ置きて霞を収めたし遠藤玲奈

  • 集積所まで上り坂朝霞近江菫花

  • 新しき友と霞の高校前おおい芙南

  • 春霞抜け十時発ハノイ行き大久保加州

  • 屋根屋根の下に暮らしや街霞む大澤眞

  • まつすぐの道の霞の無臭かな大和田美信

  • ふる里や霞の中の幾曲がり岡井風紋

  • 山の湯に浸かる我ごと霞みけり岡井稀音

  • 霞の野鬼道の地なり纏向は岡崎未知

  • 玄界灘霞みて波も寝る如岡田明子

  • 燃え尽きし父の煙や夕霞おかだ卯月

  • 夕霞纏ふケロイド触れらるる岡田雅喜

  • 釣客は磯の霞を食ひぬべし男鹿中熊兎

  • ヒーローの結婚を知る夕霞オカメインコ

  • 仙人の酔ふてふ島も霞みけり岡山小鞠

  • 真珠のめざめ賢島霞みたる小川さゆみ

  • 春霞名のある島もなき島も小川しめじ

  • 遠霞今日この尾根を地拵え小川天鵲

  • ふいご時計やさしく鳴いて遠霞小川都

  • 山二度寝してをるけさの霞かなおきいふ

  • 漢方の舌下にあまし夕霞オキザリス

  • 輪郭の太くなる影夕霞おこそとの

  • 山深し霞の端に屋根ひとつ遅狐歩

  • 藍濃ゆく霞の底の陶の椅子おだむべ

  • 「あれが天狗岳」指さす方は霞かすみ越智空子

  • 合否待つ霞を吸うて霞吐くおでめ

  • あやとりの橋はあやふし春霞音羽凜

  • アラム語の道路標識霞立つ海音寺ジョー

  • 朝連のラスト一周薄霞貝田ひでを

  • 枝咥え飛び去る鴉春霞甲斐ももか

  • 空白で終る日もあり春霞甲斐泰子

  • ひとまずは霞の中に隠す嘘風花まゆみ

  • 托鉢の若き直列朝霞風花美絵

  • 海よりも明るき霞野良の父風早杏

  • 東京の霞の底の昭和かな樫の木

  • 連山にレミファソラシの棚霞華胥醒子

  • 霞深し未だ決まらぬ猫の墓所帷子砂舟

  • 耳に「ヨーヨー・マ」富士は薄霞花鳥風猫

  • をちこちの山を編みこむ霞かなかつおぶし

  • 塩気なき父のおにぎり昼霞かつたろー。

  • フルートを奏づ城跡霞立つひだまりえりか

  • 夕霞誰も乗れない列車往く桂葉子

  • 寒村に鉄路響くや夕霞加藤水玉

  • 霞より白衣の博士出て欠伸仮名鶫

  • 牧場にひびくポルカや朝霞かぬまっこ@木ノ芽

  • 霞喰ふごと進む犬と吾と金子あや女

  • 朝霞老人並ぶ教習所金子泰山

  • 春霞たつぷり墨を含ませる加能雅臣

  • 春霞伊吹へ誘う道しるべカバ先生

  • 霞敷くおらほの山の電波塔釜眞手打ち蕎麦

  • 島影は霞か最北の倭国花蜜伊ゆ

  • ボタ山の黒が滲みし春霞神長誉夫

  • そこからは絵画となりぬ遠霞紙谷杳子

  • 旅遠く野路に霞みて日暮れかな亀井汀風

  • 登山口捜す山影霞かな亀崎波

  • 磔像の濡れて陰濃き霞かな亀田荒太

  • エンジンの音の聞こゆる霞かな亀田稇

  • フレームに霞ばかりの森続き亀山酔田

  • 大山を登る降るも霞かな萱沼八つ帆

  • 朝霞牛乳瓶の底の町加裕子

  • 仰向けの仔犬の腹や朝霞刈屋まさを

  • 大人びる子の肩幅よ春霞河上摩子

  • 消えさうな忌中行灯ゆふがすみ川越羽流

  • 霞立つ山椒大夫の屋敷跡翡翠工房

  • 朝霞登校しぶる子を抱きぬ河村静葩

  • 故郷の縮んだ駅は霞みをり干天の慈雨

  • 霞立つ左回りの観覧車菅野まこ

  • 家路へと女神湖畔は霞の中樺久美

  • 保線区のラジオ体操朝霞閑酉

  • 貝殻の羽化に足らざる霞かな喜祝音

  • 点描は神のいたずら春霞季々諧々

  • 霞たつ樹液樹幹を駆け上る木口まり子

  • 認知症の母と昆布茶夕霞如月ゆう

  • 霞てふ大地の夢の中にゐる岸来夢

  • 撮り鉄も遠き列車も霞みをり季切少楽@いつき組広ブロ俳句部

  • 霞より菓子折り持ちて現るる喜多柚月

  • 吊り橋の足下深し山霞む喜多丘一路

  • まだ霞食へぬ若さと確かめて北里有李

  • のんのんと公転おほらかに霞北藤詩旦

  • 霞てふ幽き大気の甘し北村崇雄

  • 春霞湖畔に恋を棚引ける木寺仙游

  • 脱衣場のタオルごわごわ夕霞きなこもち

  • 春霞水琴窟の音静か木下桃白

  • 弔いへ向かう渋滞夕霞きべし

  • みちのくの五百羅漢に霞立つ木村隆夫

  • 予備校の資料届くや春霞木村となえーる

  • 山を抱き里を抱きたり春霞木村弩凡

  • 霞より白馬に乗りし父の来る木元紫瑛

  • 昼霞モデルルームの窓に罅Q&A

  • 黄昏の空へと霞む電波塔久えむ茜咲

  • 朝霞かたまって行くランドセルQさん

  • 春霞鉄道延伸祖母の町鳩礼

  • 正眼に構えし剣や朝霞京秋水

  • トンネルに入口出口昼霞清瀬朱磨

  • 泣きさうなテールランプや夕霞霧賀内蔵

  • 一両車去りて霞の橋残る菫久

  • 退学の日の制服や春霞くぅ

  • 大山の肩に霞を羽織たり鯨之

  • 六甲の峰の霞や入港す楠田草堂

  • 帰りくるポンポン船や夕霞くずもち鹿之助

  • ぼくんちは霞のかかるあのあたり久保田凡

  • 胎内は凪いだ霞の大観音熊の谷のまさる@いつき組俳句迷子の会

  • TOKYOに憧れてゐる霞かな蜘蛛野澄香

  • 分け入れば霞み始むる神の山倉岡富士子

  • 鉄臭き霞へ墓花を抱へ眩む凡

  • 霞立つこの街二年あと五年空流峰山

  • 白球や霞の先は蛇か鬼か黒田良@しろい

  • 位牌岳従わせるか霞富士黒猫さとみ

  • 霞立つ鎮守の杜の息遣いくんちんさま

  • 山彦は深き霞に吸われけり月下檸檬

  • おとがひの泪かわけば夕霞げばげば

  • 夕霞馴染みの猫が来る刻か健央介

  • 鉄橋過ぐ霞を右に置き去りに謙久

  • 木道の友の姿や尾瀬霞紫雲英

  • 狼煙台跡や霞める国境剣橋こじ

  • 霞立つ山より遠き父の墓小池令香

  • 手放しし田んぼ悠々霞満つ郷りん

  • 笹船は霞の川を流れ行く輝雲彩

  • 朝霞日出づる方へ漕ぎにけり剛海

  • 霞曳き回送のバスひた行けり公木正

  • 霞立つ眼科手術の退院日紅紫あやめ

  • ドロップの缶カラカラと霞かな柑たちばな

  • 下町を昭和に変ふる霞かな宏楽

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  • 静まらぬ八重霞より駆落ちす亘航希

  • 慰めのみづは霞となり骸笑笑うさぎ

  • 円墳の直径を知る霞かな化骨

  • 霞たる岨に佇むヒダルガミ赤目作

佳作
  • 一日に二本のバスや春霞伊藤なおじい

  • 春霞一本道をバスが来る遠藤千草

  • 駆け落ちの肩を寄せ合う晩霞かな秋星子

  • 夕霞抜けたら故郷あったらな一愼

  • 生徒らは霞の中へ部活かな蜂鳥子

  • 霞にも愛想尽かされ晴れにけり花咲めだ香

  • 夢すべて置いて来た場所かすみ立つアクエリアスの水

  • 春霞先ゆく影には追いつけず青砥転典

  • 山青く霞吐き出す命かなあおのめ

  • 各停のトンネル出れば霞たり秋月あさひ

  • 内示前上司にやりと春霞秋星みかん

  • 突然の霞切り裂く消防車アツシ

  • 朝霞線路の先の異世界へアニマル可秘跳

  • 脱走の猫呼ぶ河原夕霞雨乙女

  • パリ便の消えゆく空よ夕霞アンサトウ

  • 定年退職眼下の街の夕霞石垣エリザ

  • 霞青し木の椅子しかとそこに在り石堂多聞

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  • 山裾に梵鐘響く春霞いつかある日

  • 霞立つ田の端小さき赤鳥居樹魔瑠

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  • 日を消して霞が色を奪ってく伊藤テト

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  • 我が人生霞の向こうに陽が昇る大島一声

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  • あくがれてひとり旅路の夕霞笹靖子

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  • 霞立つ陽昇る迄の隠し事じじょう庵一口

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  • ガザ地より這うてゆくのか霞まで篠原雨子

  • 霞たなびく飛蚊症の私柴桜子

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  • エンジンも軽やかとなる朝霞霜月詩扇

  • 屋形船舫ふ長良の薄がすみ霜月ふう

  • きみとみたよろこびのいろ霞みしも秀花檀々

  • うたた寝の妻は霞を背負いけり秀道

  • 朝霞裂いて日の出に追いつかむ四郎高綱

  • 朝まだきシュラフで覗く野に霞しろくも

  • 春霞実家へ行ってみようかな森牧亭遊好

  • 霞晴れ谷間の村を旅立ちぬ酔軒

  • 霞立つ川に行き交う屋形船杉浦真子

  • 夕霞夫と泣いた子帰宅する杉沢藍

  • 春霞女人の皮膚の嬉しさう杉田梅香

  • イージスも眠る春霞の朝よ涼風亜湖

  • 良きことがあるかもしれぬ朝霞鈴子

  • あしうらに朝の静謐山霞鈴白菜実

  • キリン舎の玻璃を次々春霞清白真冬

  • 縄文の里すっぽりと霞かな数哩

  • 遠霞満珠干珠の島浮ぶ青児

  • 肺に入る霞に溺れ峠行く青峰桔梗丘

  • 桟橋で見えない吾子に道霞星夢光風

  • 霞来て曖昧模糊を君と生く瀬紀

  • 春霞空の使者呼ぶ儀式かなseki@いつき組広ブロ俳句部

  • 佐渡霞むエルゴメーターひと漕ぎ目せとみのこ

  • 熾くべて珈琲香る朝霞千•広ブロ俳句部

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  • 朝の陽に消えて儚き霞かなしんなが新月

  • 霞立つ火牛の計の峠越ゆ新濃健

  • 町内の朝おつとりと霞立つ深幽

  • 霞立つ大山越えの富士の嶺杉浦あきけん

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  • 山野にも霞のヴェールはためかせすずしず

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  • ため池の底の残水霞立つ静江

  • 車窓より霞に浮かぶ式根島晴好雨独

  • 吐き出せば愚痴も呑み込む薄霞せいしゅう

  • 霞立つ雨の公園我一人勢田清

  • ブルートレインもうすぐ郷里や朝霞瀬野広純

  • 特急停まる無人駅霞触れ海星葛

  • 峠はあの霞む辺りか道遠し仙翁花

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  • 夕霞ふいに始まる痴話喧嘩惣兵衛

  • 登り来て悟空の渡り来る霞そうま純香

  • 牧場の眼下の光霞たつそしじみえこ

  • 後ろ手に生き永らえて霞食ふそぼろ

  • 稜線を円やかにして霞立つそまり

  • 紫の霞や猫の目を紫染野まさこ

  • 朝起きて見るは川下霞かな宙まあみん

  • 江ノ電と霞広がる富士の峰大康

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  • 霞立つテニスコートのロブショット平良嘉列乙

  • 霞立つ若草山や黒化粧高橋安遍

  • 沖合へ急ぐ釣り船朝霞高見正樹

  • 朝霞ヘッドライトのゆるやかにたかみたかみ・広ブロ俳句部

  • 山霞甍のむこうそのむこう武智操

  • 朝霞山の花そなへ祠道たすく

  • 山歩き霞晴れつつ山姿祐紀杏里

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  • 高尾から霞の先の富士思ひ橘路地

  • 霞む道車の灯り色変えて龍義

  • 能登霞み自衛隊車も減りにけりたていし隆松

  • 窓の外スカイツリーを喰う霞田中紺青

  • 母が言ふ霞の中に父の影田中美蟲角

  • 霞立ちただ元気でと送る朝たなばたともこ

  • 亡き夫の気配感じる夕霞谷口あき子

  • 尖塔の先も和らぐ霞かな谷本真理子

  • うすしろき丹沢の山霞たつtabei白芙蓉

  • オフィスから見るアートなり春霞玉川緑風

  • 霞む空溶け込みそうな昼の月田村モトエ

  • エンジンの音とポルシェの赤霞む田村利平

  • 眼鏡とり遠き山々春霞ダメ夫

  • サ高住の談話室から夕霞チームニシキゴイ太刀盗人

  • 多島美の霞のころも汽笛鳴るちくりん

  • 対岸は三浦半島遠霞千葉睦女

  • 島のごと霞の向こうの山々ツキミサキ

  • 春霞新居の庭で土遊び月見里ふく

  • 苑内の大池の向こうの春霞辻ホナ

  • 禅寺の読経漏れ来る夕霞辻栄春

  • 霞よりぼふとせつつく鯉の口津々うらら

  • 新幹線霞を抜けて又霞坪田恭壱

  • 霞ぼかすお山の裾は白じろと都留諭

  • 朝霞浮かぶ天辺富士の山哲山(山田哲也)

  • 春霞宙ぶらりんになりし山徹光よし季

  • 春霞異人館という名の喫茶店テレシア

  • 自転車を降りて霞のなかを行く天誠

  • 右脳と左脳ハイタッチする霞天童光宏

  • 静やかに朝霞より夫帰る土井あくび

  • 稀有の人霞を食べに行っちゃった

  • 山並みをそっと抱ける春霞峠南門

  • 今日面接天王山の霞晴れ東森あけば

  • 海からの霞覆ふや能登の朝遠峰熊野

  • 霞の日坂の終りの見えぬ道徳庵

  • 艶にして力強くもある霞Dr.でぶ

  • 霞立つ阿蘇の五岳や大観峰どこにでもいる田中

  • 平らかに霞重ぬる丹沢はとなりの天然水

  • 霞晴れ都会へ発つた筈の顔戸部紅屑

  • 霞む街ここで生くると決めし朝友@雪割豆

  • 現実は霞の向こうにある世界登盛満

  • 霞かすみ故郷は山河越えてまだ富山湾

  • 春霞眼下にのぞむ瀬戸大橋とよ

  • 名の通り朝霞立つゴルフ場豊岡重翁

  • 釣舟の消えては浮かぶ遠霞とんぼ

  • 滑り台リニューアル待つ霞立つ内藤未来仁

  • 深呼吸吹き消す山の霞かな内藤由子

  • 展望し霞は遠く空近く中澤孝雄

  • 洛北の寺社を惑わす春霞中島葉月

  • 霞から君現わるる白樺湖中嶋京子

  • 朝霞そろりと引いた大念珠永田千春

  • 霞立つ理科教室の化学式なかにしうさぎ

  • 歌人や霞の奥を覗きゆく中原柊ニ

  • 控えめにと霞に告げて竿を拭く中村こゆき

  • 病室の夫も見てるか春霞中村あつこ

  • 朝霞晴れゆく中から鷺からす七五三五三

  • 日が落ちる鹿の親子か夕霞那須のお漬物

  • 朝霞音無き川の警備員夏雲ブン太

  • ミシンは油のにほひす霞かな夏雨ちや

  • 母と娘の折り合ひ何処春霞ななかまど

  • 朝ぼらけ梅の社も霞みけり⑦パパ・いつき組広ブロ俳句部

  • 皆留守と投網絡まる昼霞浪速の蟹造

  • 遠霞性善説は限界と名前のあるネコ

  • 島山の影は曖昧霞かな南全星びぼ

  • 濃い顔の君も霞の中ならばにいやのる

  • ターナーの光差す海霞かなにえ茉莉花

  • 霞みても目には眩しき日の光西尾照常

  • いくつもの霞の側を急ぎゆく二重格子

  • すつかり気ゆるし霞を狸かな沼沢さとみ

  • 霞抜けかすみ目撫でりただ歩く猫辻みいにゃん

  • 霞がかる釈迦横たわり大観坊野崎文明

  • 朝霞山登り切り深呼吸野瀬博興

  • 声届く霞分け来た救助隊のの俱楽部

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  • 光るすじ霞と雲の間には野原一草

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  • さと山に遊びし記憶霞濃しひぐちいちおう(一応)

  • 天空の露天風呂より横霞ピコリス

  • 霞は遠しバイク止めて昼飯ひでやん

  • 山裾の田畑撫でたる霞かなひめのつばき

  • 吊り橋の空中散歩春霞平井由里子

  • 山道の通勤途中霞かな平本文

  • 都会の埃を集めし霞かな平山仄海

  • 仙人の将に現はる霞む谷廣田惣太郎

  • 霞立つ剥げたピンクのネイルかな風民

  • 風そよぎ水面みだれる春霞深澤健

  • スニーカーひも締め直す霞かな福ネコ

  • 船影や汽笛一声朝霞藤井眞おん

  • 春霞淡路はかなた茅渟の海藤丘ひな子

  • 遠ざかる列車の音も夕霞ふじこ

  • 霞か雲か染める野山に輪郭線藤沢・マグネット

  • 霞立つ故郷の山にうずくまる藤永桂月

  • 朝霞廃棄す椅子を見つつ出社伏見レッサーレッサー

  • 春霞そろりと渡る河鹿橋二見歌蓮

  • 朝霞無事を念じて送り出す船橋こまこ

  • 年下の君に子ありと霞空風友

  • 蝦夷富士を遥か見上ぐや春霞冬野とも

  • 退職の次の次の日霞む道古川しあん

  • ロケハンや次週に期待春霞古澤久良

  • ピーエムも恋も取り込む霞かな古庄萬里

  • 積もるエゴ霞がかかる景色かなヘッドホン

  • 荒川の霞に消えし寅次郎べびぽん

  • 春霞過疎の山峡たなびきて望月

  • 霞とは腹ふくるるか迷い道房総とらママ

  • 薄霞緑の崎の青白くほうちゃん

  • カシミール霞がかった遥か尾根ぽて巻

  • 朝霞名もなき湖の深呼吸堀川絵奈

  • 山路来て喉に佳かれと霞吸ふ堀隼人

  • 春霞五分遅れの始発バス堀邦翔

  • 乳飲みて眠る子と母霞立つ凡狸子

  • 移ろひし青春の地や八重霞前田冬水

  • 霞む天その上の晴れやかな母牧茉侖

  • 音広み香は薄まりて霞かな牧場の朝

  • お浄土は彼の地にありか夕霞正男が四季

  • 遠ざかる尾灯は片目昼霞眞さ野

  • 春霞印象派的日の出かな増山銀桜

  • ゆかしさの大きな背中夕霞町田勢

  • じわっじわり霞がくるよ老い討ちに町屋の日々輝

  • 別れゆく背中(せな)にエールや春霞松浦姫りんご

  • 遠富士や霞か雲か目を凝らし松尾祇敲

  • 夕霞後光と見紛う彼方かな松尾老圃

  • 野山から賑いもらいて霞かな松沢ふじ

  • さあいよよ晴耕雨読朝霞松平武史

  • 冠雪を残して富士の霞みをり松田寛生

  • 胸の内隠して酔うや春霞松永好子

  • 霞たちそびえて見えぬスカイツリー松本牧子

  • 葉は青く霞に負けぬ鮮やかさまほろば菊池

  • 正面に甲斐駒霞朝のバスまやみこ恭

  • 六甲のたなびく霞神隠すまりい@木ノ芽

  • この道はかきわけてもかきわけても霞濃し三池のり子

  • 先をゆく人々の影かすみけり美彩

  • 展望台自宅の方角大霞澪つくし

  • 朝霞ふたり昨日と同じ服澪那本気子

  • 新聞を三部霞の坂の上帝菜

  • 明石の門霞ゆくりや汽笛鳴る神酒猫

  • 信号の点滅霞む待ちぼうけMR.KIKYO

  • 大島の富士山霞む展望台水谷未佳

  • 仙人を真似てたらふく霞喰ふ三田忠彦

  • 部屋ごとに老眼鏡や春霞みちむらまりな

  • 山の端にかかる霞や色淡く光月野うさぎ

  • ひと霞曖昧模糊な私たちミテイナリコ

  • あらわるるゴール忽然霞明け三群梛乃

  • 機材背負い若草山へ霞立つ都乃あざみ

  • 信貴山や虎の看板霞みけり美山つぐみ

  • 八重霞「雨の慕情」を聴く頃に

  • 君の名を辿れば駅は霞の中へミンコフスキー

  • 今日のこと霞のなかに留めおく向井かえ

  • 鉄塔のランプ霞みてじわり赤無弦奏

  • 東山霞んだままで迫り来る霧想衿

  • 霞空あなたの心じれったい村上恭

  • 老犬や霞の中をゆくり行き村上の百合女

  • 夕霞姿を見せぬ富士の山村のあんず

  • 醜聞は霞と共に突然に冥呈

  • 春霞髪はピンクの孫来たる目黒智子

  • 腹の子の性別判定朝霞モコ

  • さあ行かん憧るる峰朝霞望月ゆう

  • 能面の秘むる情念なほ霞望月朔

  • 春霞走り寄る君目に涙本橋理音

  • 霞食む1000年生きし煌々と樅山楓

  • 年を経て霞と美人こそ遠見モリコリゴリ

  • 日本海と書いてやりたきほど霞むもりさわ

  • 山を消す霞か雲か地球消す森嶋師子草入道

  • パーおじさん消ゆる夕霞の芝生森太郎

  • 霞でて薄ら黄色い裾野かな森毬子

  • 春かすみ噛み砕きたる砂糖菓子諸岡萌黄

  • 釜めしぃー峠の駅の霞かなもろ智行

  • 花沢の里ゆるゆると春霞焼津昌彦庵

  • マタニティウェアふんわりふわ霞山羊座の千賀子

  • 海霞み遠音の汽笛に胸騒ぐ矢車草

  • うす霞日本のチロル賑わいし矢澤かなえ

  • 忘れ物霞の中や後ろ影矢澤瞳杏

  • 霞む瀬を目がけ解禁第一投野州てんまり

  • 由布の先霞の中でうわのそら安元進太郎

  • むすび一つ霞広がり車中泊柳井るい

  • スカイツリーついと立ちたる霞かな山内彩月

  • 母が居た施設の奥や薄霞山内文野

  • 春霞瞼のカーテンこじ開けて山内悠生

  • 霞みたる鎮守の杜の騒がしき山川たゆ

  • 無名山霞む山頂地図の皺山口笑骨

  • 大鳴きの二羽の鴉や春霞山口絢子

  • 灯台を霞がつつみ灯がともる山口雀昭

  • 霞たつ連絡船の着く時刻山崎かよ

  • はるか海か空か過ぎ行く春霞山崎鈴子

  • 朝霞赤坂杜の笑を隠す山崎力

  • 眠りたる校歌霞や呼び覚ます山下義人

  • 春霞微かな香り求めけり山育ち

  • 棚引けど霞の香り薄きだに山田三打ゆう

  • 浮かび来る白鳥(しらとり)の列霞む山やまだ童子

  • 初めての革靴履いて霞立つ山野花子

  • 特養の手を振る母や夕霞山本たか祥

  • 霞をば食うて生きたし雲まとい宙美

  • 道草し手招きされし夕霞夢一成

  • メガネ越しカーテン越しの霞哉夢散人(光散人)

  • 異世界へ船を誘ふ朝霞夢見昼顔

  • 子ら走る声だけ聞こゆ春霞湯屋ゆうや

  • 見上ぐれば四国カルスト大霞陽花天

  • みづがきの君家移りし霞濃し夜香

  • 朝霞ワクチン七回目接種横須賀うらが

  • 焼き餅に出でたる富士と霞かな横浜順風

  • ビル群を下にタワーを薄霞横山雑煮

  • 夕霞スカイツリーの浮く都横山道男

  • 渡船場の離れる舟や霞みゆく吉田春代

  • 霞かなマルチバースが激突しリーガル海苔助

  • 香り残がおぼろげ霞む後ろ姿ruby

  • あと百歩霞の先に君は居て海神瑠珂

  • 雨上がり石鎚の山どう霞め渡部克三度

  • 集落の小高き山や春霞渡邉花

  • 夜勤明け扉を開ければ霞立ち渡邉わかな

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

●俳号のお願い二つ

①似たような俳号を使う人が増えています。
 俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。

②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。

※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。


●兼題とは

  • 囀りに瞬き止める赤子かな伊藤ゆめ安
  • イタリアも時雨は寒し焼き栗買う岡村恵子

 本俳句サイトでは兼題が出題されています。兼題は、テーマではないので、「霞」という季語を詠み込む必要があるのです
 次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。


●俳句の正しい表記とは?

  • キリンなら むしゃむしゃ食べたい 山笑う黄金柑とパン
  • 霧にいる 君の瞳は 蜃気楼ギザギザ仮面

「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●文字化け

  • 蘭一輪間違い?嬉し朝霞風かおる

ネット投句欄における文字化けは不可抗力に近いけど、文字化けしそうな字を予測できるかも。


●季重なり

  • 花見山はなも盛りの霞かな上野徹
  • あまやかにふふむ霞や花見山佐藤儒艮
  • 海苔舟を舫ひたゆたふ朝霞清水明美
  • 遠足の子らのおしゃべり春霞里こごみ
  • ひさかたの夕べの霞あの山は春智同美月
  • 春先に霞を飛ばすくしゃみする村田真

 一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「霞」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。

  • 歩み行く霞の先は花の海雪兎
  • もう会えぬ離す手のひら花霞みひまわりと碧い月

 この二句は、むしろ「花」の句と考えるべきかもしれません。


●「霞」とするには微妙な違和感が……

  • 大山を隠す綿あめめく霞あみま
  • 筑波山女峰隠るや棚霞小田毬藻
  • 霞深く蹴った石さえ隠してくさち子
  • 発破音武甲山(ぶこう)を隠す昼霞夏目坦
  • 低山の登り口の字消す霞むらのたんぽぽ
  • 山あいの霞に隣家消ゆる朝森の水車

 春の「霧」ならば濃くなることもありますから、分からないではないのですが、向こうの山や登山口の文字、そして隣家が見えないほどの霞というのは、違和感があります。

  • ライオンの襲ひ来るかに霞沸くルーミイ
  • ジワジワと地熱震えて霞湧く蛙里
  • 今朝もまた打ち捨てし田や霞湧き八手薫

 霞に対して「沸く」「湧く」という動詞には違和感が残ります。

  • 午前四時調教馬場に霞立つギックリ輪投げ

 午前四時はまだ明けてないから、「朧」と呼ぶべきかも?

  • 霞寒車に水かけ手湿疹山田 一予

「霞寒」という表現に違和感を持ちますが、そのような傍題があるのかな?


●似ているけれど「霞」ではない

  • 改札の彼岸は霧の海の底横縞
  • 家にいる吾子の駄々こね靄る朝墨純
  • 君や逝く靄の中から知らぬ人武小川寿歩
  • 喜寿の坂越へる覚悟や霧を裂き大山小袖

「靄」「霧」は、「霞」とは違いますね。どう違うのか、調べてみるのも学びです。


●違う季語

  • 妣住みし海辺の札所花霞本間美知子

「花霞」は、満開の桜花が遠目には一面に霞がかかっているように白く見えることを言います。


●「霞」は入っているが季語ではない

  • メトロくぐり霞が関は桜舞う
  • 春の日や歌声響く霞酒藤川鴎叫
  • 年取りてかかりぬ霞かな赤子沢赤子

「霞が関」も「霞酒」も、季語の「霞」ではありませんね。


●季語の「霞」とはちょっと違うかも?

  • 曖昧な人の心も霞かな本間滋之
  • 嫁ぐ娘よ霞に消えてゆく日々よ杜乃しずか
  • 年取りてかかりぬ霞かな赤子沢赤子
  • 本霞白内障癒え涙する長谷島弘安

 心理、時間の経過、目が霞む等の意味合いで「霞」を使っているのではないかと思われます。基本的には、「霞」は春の天文の季語です。


●動詞として使う場合は

  • 筑波嶺も遠くとほくに霞けり円美々
  • 霞けり畦一列の野辺送り藍創千悠子
  • 領事館揺るる国旗の霞けり糺ノ森柊
  • 五限は古文平城京も霞をり馨子
  • 淡路島大橋の先霞おり朝日雫
  • 夫の背の霞て胸に小石積む伊藤柚良

「霞けり」「霞て」ではなく、「霞みけり」「霞みて」等、動詞の表記にすべきです。

  • 霞でる瞳も空も心まできもゆう

「霞んでる」としたいのかなあ?


●句意が分かりづらい

  • 霞咲く幹満ちてゆく赤き道永松佳奈子

 どこで切れるのかな? ひょっとして「花霞」のこと?


●不要な言葉。

  • 朝霞ジブリ焦がる幼時憶う兎野紫

 俳句においては、「憶う」のような動詞は不要なケースが多いのです。それを思うから、書いているのだものね。

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「秋の暮」

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