夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
2月の審査結果発表
兼題「霞」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
霞とは雌花らの憂き声のやう
川村ひろの
-
夏井いつき先生より
「雌花」とは、単性花。雌蕊はあるけれど雄蕊がない(あるいは退化している)花です。「霞」を様々なものに比喩する句は、今回も多数ありましたが、「雌花らの憂き声」という感覚に驚いてしまいました。
「霞」とは春の天文の季語。空や遠景がぼんやりする現象です。その霞の下には、雌花だけをつける植物たちも生きています。銀杏や南瓜などがそれに当たるのだそうです。背の高い樹木の雌花も、地に蔓を這わせる野菜の雌花も、風に乗ってとどく雄花の花粉をひたすらに待つ。その声にならない「憂き声」のように、「霞」はゆるゆるとたなびいているのです。
「霞」という言葉は、比喩的に心の悩みやわだかまりを表現することもありますが、一句の奥底に「春愁」という季語を横たえているかのような作品です。
頂上の県旗あかるき霞かな
磐田小
県庁のある街の真ん中、小高い丘を思いました。私の住む俳都松山は、まさにこんな感じの街です。丘の頂上に掲げられている県旗が、霞の上に浮かんでいます。「あかるき」の一語が、さりげなくも巧い描写です。
口笛に牛みなうごく夕霞
えりべり
「口笛に」という音から始まる一句。下五の季語「夕霞」によって、放し飼いの牛を集める口笛に違いないと分かります。「みな」の一語が、牛の数と放牧場の広さを思わせ、「夕霞」の映像を補填している点が巧いですね。
瞬膜は水平に閉じ夕がすみ
久留里61
「瞬膜」とは、まぶたの内面にある薄い結膜の襞。一読、鳥の眼のそれを思いました。薄く水平に閉じる眼は、瞬間のアップ。そこから、ゆっくりと広がっていく「夕がすみ」の陰影。美しい映像を切り取りました。
霞より朝日ぼぼんとはずんで来
島田あんず
明るくなってきた山々は、霞に覆われているのです。そこから「朝日」がのぼってくる光景ですが、なんといっても「ぼぼんとはずんで」という描写にオリジナリティがあります。春の喜びに満ちた朝の始まりです。
もう此処は頂といふ霞かな
江口朔太郎
もうこの辺りは、頂だと言われて、なるほどこの辺りが、と見回しているのでしょうか。遠くの山も、見下ろす下界もぼんやりと霞んでいます。「もう此処は頂といふ」の一種曖昧な表現が、季語「霞」のリアリティとなって。
春霞古き団地の母艦めく芍薬@独逸
ロープウェイ放ちて霞といふ空母四條たんし
朝がすみ山は狼祀りけり田村ヒロミ
春霞佐渡大きくて平たくてさかえ八八六
肺までがとほい霞の鼻呼吸ギル
霞てふ広さ未来の使い方久我恒子
あのこゑは仔牛のこうた朝霞栗田すずさん
夕霞ねずみの王とすれちがふ渋谷晶
ゆふがすみ子は東京でスーツ買ふ青居舞
瘢痕の疼き霞に放り込め青空豆千代
ホルンパート課題霞の吹いた音青水桃々@いつき組俳句迷子の会
春霞ヒュッテの甘きカレー食ふ赤尾てるぐ
霞から立ち上がりたり大鳥居赤富士マニア
朝霞恋文のよな母の経秋野しら露
うす霞み空をひらいて烏飛ぶ芥川春骨
朝霞ベッドの母のお下げ結ふあくび指南
鞍馬から京見下ろして春霞麻場育子
春霞和語の使えぬパスワードあたなごっち
ケダモノの死を含有し霞立つat花結い
春霞看板猫はオッドアイ雨戸ゆらら
幾度もゆめ棄てあまやかなる霞あまぶー
朝霞天日が梯子かけにけり天海楓
春霞遺品の時計磨きたる綾竹ろびん
霞立つ今日は妹嫁ぎますあらいゆう
透明になるまであらふ八重霞新多
千代八千代霞向こうに仁徳陵在在空空
ハードルを君と起こすや夕霞粟倉俳句教室宮本モンヌ
海神のやすけき寝息春霞安春
ましゆましゆと動輪まろまろと霞いかちゃん
象の鼻あげて霞の動物園郁松松ちゃん
どつぷりと霞を孕み大黄河池之端モルト
棚霞猫の名をミカエルと決む伊沢華純
山霞後部座席の白昼夢伊澤遥佳
霞濃し人身御供のごとき我石塚碧葉
戻れない藍白の山霞みけり泉晶子
軽トラに父のNikonや春霞いその松茸
霞晴れて知らぬ国旗の貨物船伊藤順女
春霞退官の日の靴みがく伊藤柚良
迷い犬抱いて霞の中をゆく井納蒼求
霞立つ城趾焦げ瓦の欠片いまいみどり
どの人も母かとまがふ夕霞井松慈悦
海霞む鯨はうたひながらしぬ妹のりこ
国境を越えて霞の中に入る岩木順
屋上はやさしきところ薄霞内田こと
霞む日やゆるり羽化してまだ解かず内本惠美子
足の爪切る夫まるい夕霞梅朶こいぬ
城山の霞や不意に武具の音梅野めい
あの山に天狗いるらし遠霞麗し
約束の刻迄の間の霞かな越冬こあら@QLD句会
観覧車霞のなかにゐるふたり絵十
安曇野の霞の中の道祖神榎本奈
春霞フエードアウトもいいなどと遠藤千草
僧院の影古り増さる遠霞近江菫花
通夜明けのあんパン甘し朝霞大岩摩利
朝霞折れた大樹に育つ苔大谷一鶴
朝霞む薄くれなゐのユートピア魚返みりん
夕霞ひとならぬものらしき影可笑式
霞の向こうにも怒れる民住むらむ荻原湧
薄霞補欠合格てふ日延落句言
昨夜の酒霞む渭城を振り返る火炎幸彦
終点は昭和霞を大回り加座みつほ
坂下る仔犬ぽわろと霞食むかしくらゆう
草霞む蛹は空をうたがはず風薫子
古里に七つの峠朝霞加田紗智
切り出せずにいる霞のスワンボートかねつき走流
猫の島猫の形に霞みけり神島六男
霞てふ色あるやうなないやうな加良太知
夕霞シネマライブに持つタオル看板のピン
霞立つ財布の中は小銭だけ北野都留
あんな家帰りたくない叢霞着流きるお
ひとりでもいられる都会朝霞城内幸江
自分には辿りつけずに霞みゆくきのえのき
老木の虚に咲きをる霞かな木ぼこやしき
朝霞クラムチャウダー色の村杏乃みずな
どなたかは思い出せずに夕霞國吉敦子
何を砕いたら霞になるのだらう恵勇
夕霞国の輪郭溶ろけゆくケンG
すぐに泣く弟と居る夕霞幸田梓弓
春霞暮らし刻みし花時計ココヨシ
霞より出づるアンパンマン列車小藤たみよ
霞む丘解雇定まり歩を返す榊昭広
バス降りて新宿見上ぐ朝霞坂野ひでこ
不機嫌な改札並ぶ朝霞さくさく作物
コンビニの跡にコンビニ春霞佐藤志祐
霞の空ゆふべの月のやはらかにさとう昌石
遠霞天辺なしの讃岐富士佐藤浩章
ブルボンのお菓子ほろほろ春霞里山子
さっきまで雲の居た場所春霞彷徨ういろは
山霞む底縫ふやうに木曽路かな沢胡桃
昼霞あかご何度も伸び縮み沢田恵子
霞む日や新羅の国はあの辺り三休
ぶうううん霞む風車や瘴気満つ三水低オサム
きよらかな余白のふりをして霞歯科衛生子
探しゐるゴール霞の中にあり島田順子
江ノ島をかすみ一日乗車券清水三雲
空想は霞の中に膨れだす下丼月光
神々の逢瀬か山の群霞秋芳
霞濃し湖上に小さき櫂の舟白猫のあくび
マナティの脛骨六つ棚霞白プロキオン
霞立つ今日より富士の遠くなり深幽
草霞む下ノ畑ニ居リマスと杉本果ら
吾子の買ふ貝の霞を明るうす瀬央ありさ
霞吸ふ躰やまびこ生む躰ぞんぬ
高層のティータイム終え山は霞駄詩
皺ひとつなきオムレツや朝霞平良嘉列乙
霞みたる山河ここから急登坂たいらんど風人
朝霞名前を知らぬ顔見知り高橋基人
朝練の霞を素振り五十人高橋寅次
年金とやまひの話うすがすみ高橋光加
チェンバロは金粉のごと朝霞たきるか
朝霞昨夜の月は桃色に谷本真理子
春霞みづといふにはまだわかく玉家屋
頓服薬二錠飲み込み夕霞たまのねこ
犬と行くガム二枚分の霞かな丹波らる
霊峰の巫女や禊に霞立つちくりん
吾子の字の婚姻届春がすみちょうさん
霞立つ向こうのお山も百低山辻ホナ
色をなす遠き火山も霞かなつついぐれちゃん
霞立つきれいな蝶を弔ひて津々うらら
はるがすみ悉曇文字は孵化しそう綱川羽音
自転車の練習中や春霞デイジーキャンディー
全力で走れない街夕霞電柱
朝霞抜けて抜けて抜けて出社土井あくび
乳臭き襁褓のにほひ八重霞時まる
秒針の音少し染む霞かなDr.でぶ
富士山の見える北限春霞どくだみ茶
霞立つ浦賀に浮かぶ駆逐艦豊岡重翁
深吉野のうすくれないの霞かなとんぼ
山々の霞手のひらだんご虫内藤由子
山間の霞の溜まりに神集う中村こゆき
牧場の牛糞匂ふ春霞那須のお漬物
富士山のあくびのような春霞夏草はむ
母の里霞の袖のあのあたり夏椿咲く
ボサノヴァへ浸すかすみの鐙骨七瀬ゆきこ
春霞そぞろ神の手白きこと七森わらび
氏神の長い石段春霞⑦パパ・いつき組広ブロ俳句部
耕運のたい肥の匂ひ春かすみ布村柚子
霞食ふ羊を小屋に追ひ込みぬ沼宮内かほる
錆と血と黒土に倦み朝霞乃立喰烟
出張は始発となるや朝霞則本久江
哲学書百ページ目の昼霞蓮井理久
霞む日の心はなべて故郷なり蓮見玲
湯の町に二度寝うながす霞かな畑美穂
まだ眠いキリンの小くび春霞花南天あん
はるかなるハルカスすくと春霞花はな
なゐの報鳳凰堂の霞みけり花和音
竣工を明日に大橋霞たつ浜友輔
あの霞残る辺りが吾が生家はむこ
クラビクラに羽化始まりぬ夕霞巴里乃嬬
ペトリコール沁む廃校へ立つ霞晴田そわか
本山を霞の袖の清き風半ズボンおじいさん
春霞みづきり石のゆくへかな樋口滑瓢
丸で描く日本列島春霞ひなた和佳
霞みたる戸隠連峰おやき食む姫川ひすい
朝霞バーボン入れたスキットル平岡梅
霞より犬咥へ来る鶏の首平本魚水
櫂交はす霞む湖面の出逢ひ舟比良山
定命や海に霞のはかり無く風慈音
炒りぬかの木べら返す背霞かな福田みやき
おのころの島の在処や朝霞藤井眞おん
九龍は霞ネオンが腥い藤白真語
空つぽの貝蛸ひとつ霞立つ舟端玉
ガラスペン霞含みて発色すふみづきちゃこ
山霞抱かれうつらの乳の息古川しあん
霞かな国に鳥啼く山が啼く古瀬まさあき
眠剤は薄紅色に遠霞豊後のすもも
霞からいつもは吠える犬のたり峰晶
霞よりスワンボートの黒き嘴星鴉乃雪
青竜の腹蠢いて霞かなポップアップ
春霞稲荷大社の朱は朱堀邦翔
産声に呼ばれて湧き出づる霞凡狸子
霞立つ住めない街の干しタオル真喜王
九十の端数は忘れ春霞松岡重子
友のごと呼ばるる山や棚霞まめばと
春霞醤油蔵には見学者差しポット
八重霞檜皮の軒に厚き反り満生あをね
爺さんの歯磨きは外朝霞みづちみわ
登校のできる日できぬ日遠霞水上ルイボス茶
裏山は猿に還した春霞宮坂暢介
山裾を霞や確と書く宛名無弦奏
生駒山上電波塔群昼霞もりたきみ
霞から鳥獣保護員のズック山羊座の千賀子
霞中始発電車に息子の背柳井るい
彼方なる風力タービン朝霞簗瀬美嘉
地図に五訓まづ書き入るる霞かな簗瀬玲子
朝霞終の住処に置くこけし八幡風花
三トンの河馬のあくびや昼霞山内彩月
人間の遺した轍霞立つやまさきゆみ
塩むすび霞もろともほおばりぬ山本美奈友
パラグライダー霞の中を降り立ちぬ柚木みゆき
D51の鼻ののつぺり春霞遊羽女
父が見た最後の私夕霞有野安津
産みたての卵霞の中に取り雪子
朝霞ナニカツブヤクユメヲミタ雪音
朝霞今日はそんなに急がない湯屋ゆうや
夕霞きょう君はやけに饒舌横須賀うらが
Amazonの箱に目鼻のある霞横山雑煮
墳丘の埴輪の馬も霞みけり吉田春代
鉄塔の坐骨神経より霞よしぴこ
朝霞影絵の如く猫戻るわかなけん
夕霞ちょっと遅れて笑う母渡邉わかな
嘶くや霞の中を残る声あ・うん
春霞青み帯びたるをんな髪EarlyBird
街宣車野末に朽ちて霞かな相生三楽
随道を回游したる薄霞愛燦燦
できたての霞を喰らふ大地かな青井えのこ
夕霞母の見ている引揚船蒼空蒼子
霞統べて少女の美しきピルエット青田奈央
かすみかすみ昔の女見つけたり青星ふみる
薄霞まだらに消える叔母の時赤尾実果
母の居へ父迷はずに夕霞明惟久里
八重霞きれいデイケアずる休み空地ヶ有
春霞湖上はためく万国旗秋山らいさく
霞伏す土の匂いを身籠りて朝雲列
夕がすみ座席ちひさき観覧車朝月沙都子
霞より霞へ次の箱根へとあさのとびら
霞食べ女の寿命余りあるあじさい卓
夕霞あうらに地球ある気配葦屋蛙城
手探りの夜行列車や朝霞あたしは斜楽
復興の能登を霞がつつみけり跡部榮喜
離陸待つ機内の静か遠霞あなうさぎ
自鳴琴音も消えゆく夕霞あねもねワンオ
霞みたる海どこまでが利尻富士阿部八富利
坂下り霞の町の入口へあまどかに
冒険のはじまり匂ふ霞かな天鳥そら
森林限界越えて道標春霞雨霧彦@木ノ芽
近づきて見る乳鋲なり鐘霞む綾竹あんどれ
被災地の土の嗚咽や春霞荒一葉
待ち人は来るか来ないか夕霞あらあらかしこ
朝霞かばんの形したバス停あらい
Y字路のビルの舳先の薄霞ありいかな
義父(ちち)の忌や白鷺城は夕霞有本としを
六段の調べ霞の中より来アロイジオ
通船の児霞の中の沖島へ淡湖千優
あの世とのそこが境い目橋霞む杏っ子
あづみ野のはては何処ぞ春霞飯沼比呂倫
あの声のやうな霞を抱きをり飯村祐知子
銀鳩のつがい霞の空へ消ゆいくたドロップ
沼に泡泥足抜けば野は霞池田悦子
武蔵野は空の広さや大霞池田桐人
ゆふやけにかはるのだらう遠霞イサク
黄河路の蒸籠の湯気と春霞石岡女依
阿夫利嶺の依代纏ふ霞なり石垣ようせい
霞濃し車掌の配る証明書石川明
霞とは木々の吐き出す息なのか石田ひつじ雲
発電の羽根が霞を散らしおり石本美津
土偶の目霞の中に交わらず磯野昭仁
朝霞明滅止まぬ黄信号石上あまね
半島の霞を揺するフリースローいたまき芯
スタジアムに余韻残りて朝霞市川卯月
岩稜や霞の中の鎖と手市川りす
霞立つ田舎の山の名を知らず一久恵
昼霞行き先決めずに汽車に乗る一秋子
霞より勢い強く愛犬来一杯狸
霞ばかり欲しがる父が消えてゆく伊都
春霞ヘッドライトのやはらかき伊藤薫
丁寧に白和え料る夕霞伊藤亜美子
婚礼の影長くして沖霞む伊藤映雪
朝がすみ稜線白き羽となる伊藤恵美
そろそろと米の研ぎ汁朝霞糸川ラッコ
早番や春霞よりパン焼く香井中ひよこ号
微かなる渡船の軋みゆふかすみ伊奈川富真乃
絹糸の霞む湊に積まれゆく居並小
蓋の猫どかしてピアノ春霞犬山裕之
公園出るわたしを消してゆく霞井上鈴野
かすみ立つ野を男爵のロコモビル井原昇
日曜の重機は叉骨めき霞伊予吟会宵嵐
三塁のスタンドまばら夕霞植木彩由
北斎の版重ねゆく霞かな上原淳子
目隠しの鬼の抱きたる霞かなうからうから
矢はゆるく飛ぶや霞の弓道場宇佐美好子
仮骨は六週半ば霞かなうた歌妙
朝霞集めて放つ太極拳宇田の月兎
今は昔東京遷都や八重霞空木眠兎
ロープウェー下りる霞を振りほどくうつぎゆこ
山鳩の声吸うてさみしき霞かな靫草子
帰る日の霞のにおう村の橋宇野翔月
沖霞応え船笛いきながし海口竿富
あの山に優しい死あり春霞海野青
泣きやまぬ子を抱いてゐる霞かなうみのすな
銀山の瀬音沁み入る霞かな梅尾幸雪
夕霞淡し出張最終日梅田三五
山霞人気少なき自習室梅鶏
海峡や汽笛が編んで行く霞うめやえのきだけ
終筆のわずかな力み遠霞浦野紗知
ほどけたる紐を手探る霞かな吽田のう
山裾の霞の中を大河行くS・葉子
霞みゆく利尻やヒカタ強まりぬ蝦夷やなぎ
こわれゆく母をつつむや春霞笑姫天臼
ニコライの葬送の鐘夕霞朶美子
戦国を垂るる霞の憂ひかな絵夢衷子
霞立つ日吉館疾く消え失せぬ縁穐律
壺ひとつ置きて霞を収めたし遠藤玲奈
集積所まで上り坂朝霞近江菫花
新しき友と霞の高校前おおい芙南
春霞抜け十時発ハノイ行き大久保加州
屋根屋根の下に暮らしや街霞む大澤眞
まつすぐの道の霞の無臭かな大和田美信
ふる里や霞の中の幾曲がり岡井風紋
山の湯に浸かる我ごと霞みけり岡井稀音
霞の野鬼道の地なり纏向は岡崎未知
玄界灘霞みて波も寝る如岡田明子
燃え尽きし父の煙や夕霞おかだ卯月
夕霞纏ふケロイド触れらるる岡田雅喜
釣客は磯の霞を食ひぬべし男鹿中熊兎
ヒーローの結婚を知る夕霞オカメインコ
仙人の酔ふてふ島も霞みけり岡山小鞠
真珠のめざめ賢島霞みたる小川さゆみ
春霞名のある島もなき島も小川しめじ
遠霞今日この尾根を地拵え小川天鵲
ふいご時計やさしく鳴いて遠霞小川都
山二度寝してをるけさの霞かなおきいふ
漢方の舌下にあまし夕霞オキザリス
輪郭の太くなる影夕霞おこそとの
山深し霞の端に屋根ひとつ遅狐歩
藍濃ゆく霞の底の陶の椅子おだむべ
「あれが天狗岳」指さす方は霞かすみ越智空子
合否待つ霞を吸うて霞吐くおでめ
あやとりの橋はあやふし春霞音羽凜
アラム語の道路標識霞立つ海音寺ジョー
朝連のラスト一周薄霞貝田ひでを
枝咥え飛び去る鴉春霞甲斐ももか
空白で終る日もあり春霞甲斐泰子
ひとまずは霞の中に隠す嘘風花まゆみ
托鉢の若き直列朝霞風花美絵
海よりも明るき霞野良の父風早杏
東京の霞の底の昭和かな樫の木
連山にレミファソラシの棚霞華胥醒子
霞深し未だ決まらぬ猫の墓所帷子砂舟
耳に「ヨーヨー・マ」富士は薄霞花鳥風猫
をちこちの山を編みこむ霞かなかつおぶし
塩気なき父のおにぎり昼霞かつたろー。
フルートを奏づ城跡霞立つひだまりえりか
夕霞誰も乗れない列車往く桂葉子
寒村に鉄路響くや夕霞加藤水玉
霞より白衣の博士出て欠伸仮名鶫
牧場にひびくポルカや朝霞かぬまっこ@木ノ芽
霞喰ふごと進む犬と吾と金子あや女
朝霞老人並ぶ教習所金子泰山
春霞たつぷり墨を含ませる加能雅臣
春霞伊吹へ誘う道しるべカバ先生
霞敷くおらほの山の電波塔釜眞手打ち蕎麦
島影は霞か最北の倭国花蜜伊ゆ
ボタ山の黒が滲みし春霞神長誉夫
そこからは絵画となりぬ遠霞紙谷杳子
旅遠く野路に霞みて日暮れかな亀井汀風
登山口捜す山影霞かな亀崎波
磔像の濡れて陰濃き霞かな亀田荒太
エンジンの音の聞こゆる霞かな亀田稇
フレームに霞ばかりの森続き亀山酔田
大山を登る降るも霞かな萱沼八つ帆
朝霞牛乳瓶の底の町加裕子
仰向けの仔犬の腹や朝霞刈屋まさを
大人びる子の肩幅よ春霞河上摩子
消えさうな忌中行灯ゆふがすみ川越羽流
霞立つ山椒大夫の屋敷跡翡翠工房
朝霞登校しぶる子を抱きぬ河村静葩
故郷の縮んだ駅は霞みをり干天の慈雨
霞立つ左回りの観覧車菅野まこ
家路へと女神湖畔は霞の中樺久美
保線区のラジオ体操朝霞閑酉
貝殻の羽化に足らざる霞かな喜祝音
点描は神のいたずら春霞季々諧々
霞たつ樹液樹幹を駆け上る木口まり子
認知症の母と昆布茶夕霞如月ゆう
霞てふ大地の夢の中にゐる岸来夢
撮り鉄も遠き列車も霞みをり季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
霞より菓子折り持ちて現るる喜多柚月
吊り橋の足下深し山霞む喜多丘一路
まだ霞食へぬ若さと確かめて北里有李
のんのんと公転おほらかに霞北藤詩旦
霞てふ幽き大気の甘し北村崇雄
春霞湖畔に恋を棚引ける木寺仙游
脱衣場のタオルごわごわ夕霞きなこもち
春霞水琴窟の音静か木下桃白
弔いへ向かう渋滞夕霞きべし
みちのくの五百羅漢に霞立つ木村隆夫
予備校の資料届くや春霞木村となえーる
山を抱き里を抱きたり春霞木村弩凡
霞より白馬に乗りし父の来る木元紫瑛
昼霞モデルルームの窓に罅Q&A
黄昏の空へと霞む電波塔久えむ茜咲
朝霞かたまって行くランドセルQさん
春霞鉄道延伸祖母の町鳩礼
正眼に構えし剣や朝霞京秋水
トンネルに入口出口昼霞清瀬朱磨
泣きさうなテールランプや夕霞霧賀内蔵
一両車去りて霞の橋残る菫久
退学の日の制服や春霞くぅ
大山の肩に霞を羽織たり鯨之
六甲の峰の霞や入港す楠田草堂
帰りくるポンポン船や夕霞くずもち鹿之助
ぼくんちは霞のかかるあのあたり久保田凡
胎内は凪いだ霞の大観音熊の谷のまさる@いつき組俳句迷子の会
TOKYOに憧れてゐる霞かな蜘蛛野澄香
分け入れば霞み始むる神の山倉岡富士子
鉄臭き霞へ墓花を抱へ眩む凡
霞立つこの街二年あと五年空流峰山
白球や霞の先は蛇か鬼か黒田良@しろい
位牌岳従わせるか霞富士黒猫さとみ
霞立つ鎮守の杜の息遣いくんちんさま
山彦は深き霞に吸われけり月下檸檬
おとがひの泪かわけば夕霞げばげば
夕霞馴染みの猫が来る刻か健央介
鉄橋過ぐ霞を右に置き去りに謙久
木道の友の姿や尾瀬霞紫雲英
狼煙台跡や霞める国境剣橋こじ
霞立つ山より遠き父の墓小池令香
手放しし田んぼ悠々霞満つ郷りん
笹船は霞の川を流れ行く輝雲彩
朝霞日出づる方へ漕ぎにけり剛海
霞曳き回送のバスひた行けり公木正
霞立つ眼科手術の退院日紅紫あやめ
ドロップの缶カラカラと霞かな柑たちばな
下町を昭和に変ふる霞かな宏楽
筆を擱く間をつつみけり八重霞ごーくん
嘶きを宥め霞の阿蘇をゆく古賀
墓掃除煙の向こうに霞む湾古烏さや
霞立つ眼下に墓地を後にするこきん
洗車機をくぐり霞の大平山小笹いのり
大いなる高野霊園霞立つ越乃杏
人吉の町は沈みぬ朝霞小園夢子
改札を出れば東京春霞木染湧水
夕霞急ぐでもなくブルドッグ来冬邦子
霞立つ指揮者はメトロノームじゃない虎堂吟雅
幼馴染と訪ぬる母校春霞後藤真昼
薄霞病棟はるか観覧車後藤三梅
犬用のせんべいかりり霞かな古都鈴
静寂に朽ちし鞦韆晩霞なほ粉山
草霞む掘り起こされし甕棺墓このみ杏仁
春霞傾ぐ夕日の鬼子母神小林昇
霞む街ビルのでこぼこ神めいてこま爺
犬たちの尻の嗅ぎ合ひ朝霞駒村タクト
海霞む乙姫の恋終わりけりこもりく
西行の初期症状として霞GONZA
遠霞電話ボックスまでの距離今藤明
夕霞退職の吾の影洗うコンフィ
霞む島領土と叫ぶ国二つ西條晶夫
高速路霞も匂ふ豊後かな齊藤由樹
酒樽の底で霞を食らう生齋藤鍵子
霞む日をラフマニノフの舟に酔ふ齋藤桃杏
朝霞の晴れて十和田のみづひかるさおきち
テールスープをともに飲もうぞ夕霞酒井春棋
歳月は紅い積木か遠霞坂口いちお
ゆうるりと風力発電霞掻く坂まきか
淡路島優しき碧や春霞咲まこ
霞たつ邑や鍛冶屋の音寂し桜鯛みわ
ニイタカヤマノボレ霞む無線塔雑魚寝
霞立つ松脂しゆいと二胡の弓さざなみ葉
担ぐ荷の重し霞を始発去るさち今宵
信頼に列なる鉄塔霞たつ佐藤似貂
退職の日の駅頭に立つ夕霞佐藤恒治
退職や霞と列車待つホーム佐藤志祐
霞立つ海はもうすぐしゃべりそう佐藤レアレア
霞にはジムノペディがとけてゐるさむしん
朝霞カヤックの櫂ゆったりと紗羅ささら
鴉たち集めてヨーカドー霞むさるぼぼ17
霞立つ羽化せし龍の五六頭沢井如伽
サパテアード打つや霞の晴れるまで澤田紫
行き違ひ待つ駅暫くを霞沢拓庵◎いつき組カーリング部
春霞二歳新馬のファンファーレ三角山子
日の本は山の国なり霞立つ三月兎
青春は硬きマシュマロ遠霞しぼりはf22
切支丹墓地に媼の霞みけり島田ユミ子
三山も藤原京も霞中清水容子
八犬士散りし霞の安房の山清水縞午
結び目の固し仏旗の夕霞釋北城
Baguetteの焼ける匂ひの霞かな芍薬@独逸
切株の窪み尻待つ霞かなじゃすみん
昼霞順に喪服の降りてくる沙那夏
霞より浮き上がりくる武者の列砂楽梨
春霞ちと足浮かす仁王像十月小萩
眼前の石碑果無し霞みをり朱胡江
吊橋の霞の底や打つ湯桶柊二
薄霞自販機が角ばってゐる樹海ソース
霞立つ昨日全米泣いたかな種種番外
両手振る引っ越しの子よ夕霞寿松
玉手箱開けし東京春霞シュリ
朝霞無限階段めくビル街じょいふるとしちゃん
鳥の死が霞に訳されてにほふ常幸龍BCAD
日めくりの艶に触れたり霞立つ白井佐登志
ファの濁るこのオカリナは霞産白よだか
父の背の鈴愛想よく昼霞神宮寺るい
龍の吐息なる霞や貴船川ジン・ケンジ
ふるさとを半分ずつに草霞む新城典午
霞棚引く雲仙の火の静か水蜜桃
神吹きしいろはちりぬる霞かなすがりとおる
朝霞五十町歩を抱きけり杉尾芭蕉
朝霞一礼をして入山す杉柳才
鉋屑に埋もれうたた寝春霞鈴木秋紫
夕霞低い電話のさようなら鈴野蒼爽
信長の現はるる山霞かな鈴野冬遊
序の舞や霞のなかの能舞台主藤充子
点滴の色はくれなゐ薄霞砂山恵子
ゆっくりと風の捏ねゆく山霞外鴨南菊
霞立つ田に墓十基みな同姓空豆魚
空に吠ゆ霞に声の丸くなり大
給餌待つ馬らの息や朝霞高岡つくね
橋上のビル群仰ぎ見て霞高岡春幸
貴婦人てふ機関車あまき朝霞高尾里甫
住吉の神馬の真白夕霞高木音弥
シューベルトの眼鏡も丸し春霞だがし菓子
鈍色の町と詠ずる薄霞高瀬小唄
片恋か微熱か霞晴れるなよ髙田祥聖
朝霞バスを待つ手に単語帳高辺知子
子離れの決意揺らぐや夕霞高嶺遠
夕がすみ畑にシャベルを置きしまま高橋なつ
夢に見た人に電話を夕霞高橋ひろみこ
春霞小さき鳥居並びをり高橋ままマリン
白杖へ霞重しや立ちすくみ高原光津
信濃路は霞み佳人は旅にあり高原徒然想
回送の駅の余白や春霞高山佳風
洋上の風車ゆるらか叢霞滝上珠加
遠霞関東平野明けにけり滝川橋
富士山のおのづと霞む遠さかなタケザワサトシ
ホスピスに子犬の影や夕霞武田豹悟
産土の山は霞みて鳶のこゑ竹田むべ
霞んだらじやんけん負けてばかりゐるたけろー
客待ちの車列微睡む霞む街多胡蘆秋
夕霞ふね二つ三つ貼りつけてただ地蔵
引き潮に道現るる霞かな多々良海月
陽性を告げに霞の駐車場立川茜
夕霞鳥居の奥へ黙礼す立田鯊夢・いつき組広ブロ俳句部
かごめかごめ籠の中に霞の羽根立石神流
妖怪のへそ間近かも春霞田辺ささのは
春霞橋名板の錆碧し田畑整
元伊勢へ霞棚引く古道かな玉家屋
祖母めざめ吐息のやうに霞吐く玉木たまね
夕霞タクシーのみな駅を向き玉響雷子
山里の移動販売昼霞たむらせつこ
夕霞閉山の町縮みゆく田村ヒロミ
ビルごとにビルの灯のいろ夕霞千夏乃ありあり
蝦夷富士の霞む山裾伏流水竹庵
霞たなびく神々の受精卵千歳みち乃
倒木の撤去作業や朝霞ちゃあき
濫伐やメガソーラーを山霞千代之人
春霞けふも開拓中の山彫刻刀
恋を知り自転車並ぶ昼霞塚本隆二
朝霞乳児預けて出社する月夜田しー太
のやまはきだすどくのしづかなかすみつくも果音
百万の都市は霞に沈みけり辻瑛炎
牧の駒霞に出づる親子かな辻美佐夫
霞立つ古文書匂ふ孔子廟辻野花
朝霞む中を端島はなほ眠るつちや郷里
てにをはのつたなきひととゐる霞ツナ好
霊山や霞の川を渡り行く坪山紘士
近道を聞いて霞の畔をゆくツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
霞より来し白鳩の青む影丁鼻トゥエルブ
朝霞うぐひすパンは売切れし哲庵
あまやかな杜のこきふや八重霞でんでん琴女
音のなき霞の湖をひくルアー天陽ゆう
夕闇のゆるりゆるりとかすみ食うどいつ薔芭
霞とはおさなき竜の道標トウ甘藻
マニ石の幾千万個夕霞とかき星
小五郎の隠れ家址や霞立つときめき人
霞から濃き霞へと放る擬似餌常磐はぜ
春霞閃閃と日のリアガラス戸口のふつこ
採用の知らせを待つや昼霞十津川ポロ
古書店の猫の薄目や夕霞苫野とまや
処置室の野良猫を待つ遠霞泊かいひ
呼び声の吸われ霞野果てもなし斗三木童
夕霞より怪人の高笑ひ富野香衣
歪みたる地震の遠浅霞みけり富山の露玉
チューニングはFの音から昼霞鳥田政宗
薪割りの蒼き匂ひや朝霞内藤清瑤
櫓声又川の霞を重ねてゐる内藤羊皐
水煙をしめらせ奈良の霞かな中岡秀次
峻嶺に霞を食べる人探す中島走吟
春霞訪なふ家のやや遠く中嶋敏子
山の端に鉄塔伸びて春霞仲間英与
春霞タマゴボーロをねだる母中村すじこ
旧姓を大空に書く春霞なかむら凧人
立ち漕ぎの子も口ずさみ春霞中山由
昼ドラのうすいテツガク春霞夏風かをる
間近なる不意の羽搏き八重霞夏椿咲く
やわらかき霞の宿のつくも髪菜々乃あや
墓地めけるメトロポリスや夕霞奈良素数
八重霞薄れて日比谷入江かな西川由野
撃たなければあなた霞となるでしょうにしぐちたける
春霞アディダスが来る鴉来る西田月旦
霞の中紙飛行機の失速す西村小市
何ぞ御座す紅紫に金の夕霞二城ひかる
霞立つ湖へとひらく艇庫の扉にゃん
父の下駄履きて霞に佇みぬ庭野環石
春がすみ猿の木乃伊の息衝けり沼野大統領
空っぽのプールすっぽり夕霞猫ふぐ
引退の馬の伏し目や薄霞猫またぎ早弓
あるはずの霞の山よ吾はここに根々雅水
峰々へ朝日霞の螺鈿めく野地垂木
川岸の霞を駆くる神馬かなノセミコ
午後の恐竜どれも霞のせいなのか野点さわ
霞立つ川に隠れる河童かな野中泰風
教え子の訃報聞く朝霞立つ野原蛍草
春霞一朶の枝にみくじ結ふ白庵
霞立ち空の際なる主稜線白雨
霞立つ防災無線は棒読み白山一花
街霞む中を連続十五勤はぐれ杤餅
夕霞乳白色の抗うつ剤はごろも856
神奈備の走り根しとど朝霞長谷川水素
霞立つ喪明けの朝やパンを食ふ長谷機械児
今はいま思い出になる霞かな八田昌代
サーフィンの海のっぺりと霞立つ花弘
釉薬の錆色触れし霞かな花咲春
薄霞防潮堤高し高し花彼岸
霞立つ工場跡のビオトープ英凡水
酒眠る蔵は霞に包まれて花豆
ピンヒールきゆつと霞の裾踏めり花見鳥
立ち漕ぎの自転車赤い朝霞はのん
始発電車霞は二県跨いでいくぱぷりかまめ
遠霞指すや霞の中と知らず葉村直
岬馬霞へ駆ける親子あり林省造
始発へは霞む近道通らざる原田民久
東京の霞の小路清くありharu_sumomo
トラス橋架け替え現場春霞春野ぷりん
霞の山赤いヤッケを遠くして葉るみ
線路霞みて国境の鉄条網春海のたり
駒姫や城無き街に霞立つ万里の森
夕霞の母校よ校歌はうろ覚えピアニシモ
タクシーを降りて霞の町はずれ菱田芋天
御在所の稜線遥か春霞ひすい風香
春霞大阪湾が見渡せぬ一石劣
一両がたごと霞のアーチ橋日向こるり
霞よりゴリラの民主主義のこゑ比々き
朝霞街は雲母のようであるヒマラヤで平謝り
蹲る吾を孕みたる叢霞向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
霞立つ六甲山の夜明けかなひめりんご
戻るまい深呼吸してビル霞む昼寝
朝霞ゆらし配達バイクの来広木登一
対岸の霞んでをりぬ芝居小屋浩子赤城おろし
母危篤車窓の春霞はきれい廣重
海を見るセーラー服や夕霞広島立葵
現国のあくびを噛み殺し霞広瀬康
春霞ラムプふうはり貨車はいま広ブロ&新蕎麦・摂田屋酵道
牛となり霞に浮かぶ筑波峰風泉
父となる霞の中にたたずみてFUFU
登り来て後ろはガレの夕霞深蒸し茶
夕霞錆びた船尾に鳥一羽福前彩芽
波音は沖の霞の懐にふくじん
朝霞畝間に深く球の跡福弓
霞の中の触れた手は誰だらう藤井かすみそう
一万歩の吸へり霞の一片を藤咲大地
夕霞伊豆より届く濁り酒藤原涼
忘れ物して霞の海をかえる舟冬島直
霞より訪ねて逃げた鶏のことふるてい
早朝を駆け足霞立つ皇居碧西里
受信シマシタを霞へ振る手旗へな☆けん
定年日港も山も霞かな鳳凰美蓮
君と朝のコーヒー霞たなびく暮戯
武蔵野は深き地紋の霞かな黒子
確率の答案かざす春霞ほこ
野は霞この自転車にタイヤはあるか星田羽沖
春霞島へ赴任す若き医者星月彩也華
ときをりは霞食ひしか道祖神星詩乃すぴか
オルガンのボサノバ軽き霞かなほしの有紀
ミロの画廊を脱け出しておや霞甫舟
ガントリークレーンの街夕霞細川鮪目
父親としてはさんかく春霞正岡田治
薄霞突き刺して過ぐリニアカー松岡拓司
煮えばなの芯歯に残る春霞まっちゃこ良々
中継に三秒の時差春霞松本裕子
遠霞点検終える滑走路真宮マミ
諍ひの車窓をかすみ美しく毬雨水佳
山霞みスカートの襞初々しまるにの子
千年の大楠の息霞かな美衣珠
白餡の透けゆく木べら春霞三浦海栗
夕霞猫つかぶりを隠しをり三上栞
あさぼらけ英虞湾まろく霞みけり三雲萠永
彼の国の政敵死せり遠霞三茶F
墓碑銘に妻三人や草霞む水須ぽっぽ
昼霞砂糖水のような不倫三隅涙
実家とは霞の中に美しく巳智みちる
朝霞狛犬かつて海超えて美月舞桜
斬首めく山の切り口霞立つ満る
嘘泣きを見逃してやる夕霞みつれしづく
霞に横たふ紫峰や油売南方日午
信号も看板も木も霞なかみなみはな
夕霞あれが母校の大欅宮井そら
風待ちの宿への渡し春霞見屋桜花
女生徒の歌声優し春霞みやかわけい子
知床の断崖かもめとけゆく霞かな宮川令
霞とは星の薄皮大豆炊くみやざき白水
跳ね橋の霞の海を開きたる宮武濱女
娼館の取り壊はされて春霞宮部里美
コンパスの北は赤針八重霞みやま千樹
山裾の霞にゆるり一両電車宮村寿摩子
霞より出で来無人のロープウェイみらんだぶぅ
みよしのの色を秘めたる霞かな麦野光・広ブロ俳句部
重波のあはき霞の伝馬船麦のパパ
霞して毒ガス島は消えにけり椋本望生
近づけば逃げる霞に囲まれる睦月くらげ
霞立つカメラにピントせがまるる紫小寿々
眠そうな今朝の江ノ島春霞暝想華
連絡船夕霞より戻りくる茂木りん
船霞む灯台は淋しき蕾元野おぺら
霞立つ牛舎に並ぶ搾乳機もふもふ
物語紡いでは解き夕霞momo
春霞錨を下ろすクルーズ船桃香
砂糖菓子みたく霞のじゅんわりと百瀬一兎
県境は霞む押すバイクは中古百瀬はな
太陽をろ過し霞の鬱金色桃園ユキチ
トンネルを抜けて浪速の霞かな森佳月
朝霞魂運ぶ鳥の影森佳三
朝霞ふいに巨大な猿二頭森中ことり
蛍めく煙草の父や夕霞杜まお実
霞立ち耳澄ましたるは誰の耳森茉那
国宝の唐門隠すかに霞もりやま博士
紫折戸を押して母屋の霞かな八木実
お母さま霞も食べていいですか弥栄弐庫
観音の甘やかに立つ夕霞安田伝助
おくやみ欄反芻しつつゆく霞痩女
朝方の霞の中を東京へ山尾政弘
山霞む一幕物の草芝居山河穂香
宇治橋をふたつの影や霞立つ山川腎茶
三味線の弦は絹糸夕霞山口一青
稜線を和す霞の遠めがね山口愛
己が色失ひ霞の樹林哉山田啓子
霞立つ道を戻ればまた霞山田翔子
ソイラテの溜まる胃袋春霞山田蚯蚓
霞とは母を呼ぶ声のかたまりやまな未
妣が来て還りしやうな霞かな山野二葉
総務課の丸縁眼鏡春霞山野麓
鳥と湖ことばを交はす霞かな山本先生
煙突の太く溶け合う霞かな山本八
飛び立ちて震ふ餌台朝霞やまもと葉美
霞から会ひたき人ぞ出で来ぬか柚子こしょう
孤立せぬ町は平らか夕霞ゆすらご
夕霞浅く鋭き刺の跡緩木あんず
立ち枯れて摩天楼霞のなかに陽光樹
霞の底はあかときの「夜明駅」羊似妃
春霞夜勤の後のカフェテラス横田信一
もやもやの霞つぶつぶ蓮華経横浜J子
山宿や霞の中に光ありよしぎわへい
霞立つ火傷しそうな朝の風呂吉田蝸牛
家を出て霞の中を漁港まで吉武茂る
霞立つ静かに回るオルゴール吉田まいまい
点滴中硝子向かふの眉山に霞Yoshimin空
新宿のビルはモノクロ霞満つ四葉の苦労婆
生まれたてのような山河朝霞余田酒梨
はるかすみ吾子のあくびのゆるゆるとよみ、ちとせ
打吹の山は霞みて赤瓦楽和音
奥つ城のいろにビル街かすむかすむRUSTY=HISOKA
霞む街昨日別れるはずの街楽花生
なんもかも嫌(や)となり霞に紛るゝらん丸
台船のクレーンゆらり夕霞理佳おさらぎ
霞たなびく神様はお昼寝中リコピン
十割を啜り山家の昼霞柳絮
望遠の霞の沖に鯱の口流流
下り道霞んで真正面は富士良俗倭人
明日手術病窓からの霞かなルージュ
山の端の霞流れて龍となり瑠璃あさがおT
休日の霞ベッドに聞くヴィオロン蓮花麻耶
狛犬の阿の口朱き朝霞六地蔵と狛犬
ちちははを恋ふれば全山霞みをる朗子
霞立つ霊獣麒麟に雄と雌ろまねす子
助六を広げて眺む昼霞わたなべいびぃ
霞立つ山に抱かるる落人村渡辺香野
岐阜城のひかり零さぬ霞かな渡辺桃蓮
霞立つ今朝の鉄塔やわらかし渡辺陽子
静まらぬ八重霞より駆落ちす亘航希
慰めのみづは霞となり骸笑笑うさぎ
円墳の直径を知る霞かな化骨
霞たる岨に佇むヒダルガミ赤目作
一日に二本のバスや春霞伊藤なおじい
春霞一本道をバスが来る遠藤千草
駆け落ちの肩を寄せ合う晩霞かな秋星子
夕霞抜けたら故郷あったらな一愼
生徒らは霞の中へ部活かな蜂鳥子
霞にも愛想尽かされ晴れにけり花咲めだ香
夢すべて置いて来た場所かすみ立つアクエリアスの水
春霞先ゆく影には追いつけず青砥転典
山青く霞吐き出す命かなあおのめ
各停のトンネル出れば霞たり秋月あさひ
内示前上司にやりと春霞秋星みかん
突然の霞切り裂く消防車アツシ
朝霞線路の先の異世界へアニマル可秘跳
脱走の猫呼ぶ河原夕霞雨乙女
パリ便の消えゆく空よ夕霞アンサトウ
定年退職眼下の街の夕霞石垣エリザ
霞青し木の椅子しかとそこに在り石堂多聞
霞ゆく迎賓館の碧き屋根一井かおり
山裾に梵鐘響く春霞いつかある日
霞立つ田の端小さき赤鳥居樹魔瑠
去りし友の古き手紙や夕霞五つ星
日を消して霞が色を奪ってく伊藤テト
信号よ青であれかし朝霞今村ひとみ
復元しまた消去して霞かな彩人色
淡路島霞みて船のゆっくりと植田かず子
ほの甘し鼻腔の奥へ春霞江川月丸
カーナビの示す目的地は霞えりいも
高層階霞む稜線襟すぼめ大越総
海へとゆるり一筋の春霞大越マーガレット
我が人生霞の向こうに陽が昇る大島一声
武蔵野の霞みて富士は遠くなり大塚恵美子
観覧車霞の中を動きおり大津美
晩年の城めぐりなる春霞大野美波
春霞怒られし顔見ないふり大本千恵子
ゆかしかる霞衣の野の緑岡崎佐紅
霞よりバス来て霞に消えゆけり岡田ひろ子
霞積む賽の川原や戻り旅岡塚敬芳
霞立つおらおらでいぐこの家で岡本
見下ろせば霞のかかる我が家かな丘るみこ
姫君の裳裾に惑ふ霞かな小川野棕櫚
透明のきみの横たふ棚霞おきゆきお
朝霞死体ロケあり赤水門お品まり
早朝の山が喜ぶ春霞お寺なでしこ
春霞マニキュアの指透かしみるおひい
里山に霞たなびき水墨画海十全
嬢無口霞と共に始発待つかえるゑる
朝霞はれて清らや遠白山加賀くちこ
朝霞ただ川堰の音ぞする案山子@いつき組広ブロ俳句部
乙女駅涙こぼるる霞かな影夢者
転校の子の残しをり霞かな笠谷タカコ
プロポーズ今日こそと秘め春霞鹿嶌純子
遥かみゆ南アルプス薄霞かじまとしこ
おはよう!に余韻の散歩霞行く風かおる
霞立ち愛犬のリード手繰り寄す片岡明
遠霞全て知りたき訳もなし亀子てん
山一つ霞の奥にどんと有り亀山逸子
父の待つ茅葺き駅舎朝霞鴨の里
稜線の一筆書きや鐘霞む花紋
春霞復興のユンボ動き出す狩谷わぐう
春霞お食い初めはなごやかに川崎ルル
霞む五湖航跡拡がる静寂かな川辺世界遺産の居候
沖船のゆくへも知らぬ霞かな貴田雄介
春霞写生の手元見え難く木村波平
二筋の飛行機雲や朝霞玖
散歩から帰らぬ祖母よ春霞紀友梨
ツマ争い大和三山春霞草道久幸
ドア開くスカイツリーは霞みけりくつのした子
「ください」と娘の彼氏春霞来ヶ谷雪
霞敷く荒れ野にひとつ吾が標家古谷硯翠
香きく霞たなびく野道行く月昭
シンバルと拍手重なる霞かな幸内悦夫
敵味方なき鎮魂碑霞立つ郡山の白圭
陣痛の我つつみ込む春霞後藤光秀
釣舟や霞の向こう淡路島碁練者
窓霞猫が覗いて変な顔コロンのママ
川下る舟は霞に消えゆけり埼玉の巫女
「光君へ」平等院や一霞坂上一秀
夫赦し己れ赦して霞立つ坂田雪華
淋しいよ霞の中へ夫を呼ぶ坂本千代子
前方の友は霞に消えにけり佐倉英華
鳥の群れ霞の中で声残し桜華姫
包丁の音ゆったりと夕霞桜姫5
あくがれてひとり旅路の夕霞笹靖子
霞とも知らずに視力疑って佐々木睦
朝霞通勤のみち足ゆるむさざんか
春霞いまビル群は空となる砂月みれい
里山をアルプスのごと春霞薩摩じったくい
友送る霞む街へと紛れけり塩沢桂子
霞立つ陽昇る迄の隠し事じじょう庵一口
道しるべ霞の向かふ目指しをり実本礼
朝霞抜けて現る摩天楼信濃のあっくん
ガザ地より這うてゆくのか霞まで篠原雨子
霞たなびく飛蚊症の私柴桜子
霞にも遠く近くに出ずる影清水猿虎
エンジンも軽やかとなる朝霞霜月詩扇
屋形船舫ふ長良の薄がすみ霜月ふう
きみとみたよろこびのいろ霞みしも秀花檀々
うたた寝の妻は霞を背負いけり秀道
朝霞裂いて日の出に追いつかむ四郎高綱
朝まだきシュラフで覗く野に霞しろくも
春霞実家へ行ってみようかな森牧亭遊好
霞晴れ谷間の村を旅立ちぬ酔軒
霞立つ川に行き交う屋形船杉浦真子
夕霞夫と泣いた子帰宅する杉沢藍
春霞女人の皮膚の嬉しさう杉田梅香
イージスも眠る春霞の朝よ涼風亜湖
良きことがあるかもしれぬ朝霞鈴子
あしうらに朝の静謐山霞鈴白菜実
キリン舎の玻璃を次々春霞清白真冬
縄文の里すっぽりと霞かな数哩
遠霞満珠干珠の島浮ぶ青児
肺に入る霞に溺れ峠行く青峰桔梗丘
桟橋で見えない吾子に道霞星夢光風
霞来て曖昧模糊を君と生く瀬紀
春霞空の使者呼ぶ儀式かなseki@いつき組広ブロ俳句部
佐渡霞むエルゴメーターひと漕ぎ目せとみのこ
熾くべて珈琲香る朝霞千•広ブロ俳句部
霞立つそこにあるはずの道祖神全美
仙人の食みし霞の穴宇宙そうま純香
山頂に霞たなびく比叡山草夕感じ
地下鉄を抜けて朝霞のビル街たーとるQ
霞む山我が故郷は山の裾平たか子
霞立つ夕日へ語るモネの色高井大督
峠道霞たなびきライト付け高橋紀代子
ハモる声うねりとなりし霞かなたかはし千百
光待つ霞の奥の能登棚田田上コウ
春霞花粉の中を泳ぎゆく滝澤和恵
やわやわと霞わたりて水路橋たけぐち遊子
夕霞人を吸ひ込むムジナ坂多数野麻仁男
姉妹笑み合ひし日や遠霞多田知代子
天邪鬼けえるじぶんだ草霞むだっく
霞立つ緩んだ風を吸う朝よ田鶴子
百名山霞の中を通り抜け蓼科嘉
まとまらぬままに出句す朝霞田中ようちゃん
廃校の校歌聞こえし春霞谷相
海峡にかかる大橋春霞玉井令子
春霞稜線ぼけし富士の峰ダメ夫
地図と杖熊野古道の昼霞千鳥城@チーム広ブロ
戦火の報きな臭くなる霞の香月城龍二
残像は幸福な夢草霞む月待小石
お向ひも起きてゐるらし霞立つ辻内美枝子
霞より際立つ花の紅き色辻本四季鳥
仙人になりたし無職霞食む椿叶@木の芽
ドライバー富士へ大振り春霞津幡GEE
八重霞無言の父と小舟出す坪田恭壱
ほら霞いつの間にやら日ものびて鶴哲
富士の峰霞棚引く目覚めかな手嶋錦流
高速道脇の稲荷の霞かな寺尾当卯
霊峰と下界を分ける霞かな峠南門
霞立つあそこも朝のお味噌汁東森あけば
唐橋を霞剥がしつパッカー車としなり
東山の霞の中のお釈迦様杼けいこ
子等の声霞のかかる丘上る土手かぼちゃん
着陸へ主翼かがやく春霞どゞこ
ニュータウンビル群小さく遠霞戸根由紀
クレヨンの赤丸霞の赤信号冨川友香理
霞から朝帰りの客ぼうと出る豚々舎休庵
夕霞湖上の大橋鐘の音中嶋緑庵
夕霞記憶の箱に蓋をする仲操
春霞行き先見えぬ浪人生中谷扁平足
愛読書最後のページ朝霞凪ゆみこ
水音の瀬にぼんやりす夕霞名計宗幸
憂鬱はつつみもあへず山霞なびい
芦裏に舟隠れ沼霞みたり西尾至雲
法灯の照らす学舎や山霞西尾照常
リムジンは霞の海を沖止めへ二十八
小走りで夫に追いつく夕霞新田ダミアナ
夫の手はほのぼの霞分け行けば暖井むゆき
昨日までまとわりついた春霞ねがみともみ
国道の曲線霞まで三里野井みこ
黄泉比良坂より麻酔めく霞野口雅也
分け入りて霞喰らうや獣問ふ徘徊狂人
霞出て缶コーヒーで一休み橋野虎空
朝霞郵便受けの螺子取れて愛柑
春霞突きて鳥発つ和白潟畑中幸利
ウヰスキー分解中の霞かな八九テン
朝霞内閣不信任否決葉月庵郁斗
春霞離島へ発つ君見送りぬ初野文子
あなたには記憶の消しゴムを霞英ルナ
町並みは霞の中よわが故山花水木
大都会覆い尽くせり八重霞羽馬愚朗
あれ富士か羽田の空の遠霞林めぐみ
霞隠れ吾ら隠れて声たよりはるる
霞の中吾子認識す赤靴下パンドラみかん
対岸は我がふるさとや遠霞ピアノおじさん
春霞空に溶けゆく水平線ひーちゃんw
田の水のひかりしづかに薄霞東田一鮎
霞む日は鳥獣戯画が動くやも東の山
霞立つ海の向こうはニルヴァーナピコリス
知られざる神話宿せる八重霞美竹花蘭
唐国で仲麻呂も見し霞かな檜山省吾
霞ゆく後部座席の子は寝息日吉とみ菜
山霞くぐもる鳩の声とおる平井千恵子
霞立つ金峰山の裾もよう平岡花泉
ゆるるりと三山覆ふ夕霞平林政子
竿肩に霞に歪む渓に降り平松一
野に霞正体見えぬリードの端広野光
二代目ウィッグ霞の中を行くひろ夢
渋滞を抜けて高速春霞琵琶京子
轢死した犬へ優しき霞かな深町宏
袖幕は視野の外なる霞かな福川敏機
草霞むベースキャンプは白きパオ福良ちどり
野良犬の声劈いて霞裂くふくろう悠々
霞の奥歌声響く乙女たち藤川雅子
嫁入りのカラオケ止まず霞立つ藤川好美
北山の稜線遠し春がすみ藤本だいふく
ひとり行くサービスエリアの春霞藤元秀征
仙人に食われ霞が消えてゆく藤原訓子
縄跳びの音を捉える霞かなぶるーふぉっくす
山霞み境界無き国となる古庄萬里
桟橋に船は出入りし朝霞古道具
法起寺の霞に烟る三重塔古谷芳明
夕霞山をくだれば街灯り平馬
地獄か天国霞の向こうは君次第ヘッドホン
廃線の列車消えゆく霞かな北斗八星
蝦夷の地の三笠の山も霞けり堀卓
星からの地球は霞着ていたり堀川絵奈
倫敦の灯し仄めく夕霞前田冬水
病窓の日課遮る霞かな松井酔呆
鐘霞む吾の誕生日祝いかな松井貴代
山霞む作業合間のにぎり飯松浦姫りんご
行く道の山の霞に茫と消ゆ松岡玲子
我忘れ霞たなびきもう一歩松尾美郷
夕霞お陽様ぐしやり笑つてる松風花純
雨止みて土蒸す匂ひ春霞松坂コウ
霞なか√5松高法彦
信号に色つけられて朝霞松野蘭
消えぬ間に霞の中の母の影松本俊彦
いろいろと思案の朝や遠霞瑪麗
登山者の白き顎鬚霞立つ丸山隆子
二階より霞かかりし山が見ゆ三浦ゆりこ
三階のベランダ掃きて霞かな澪つくし
朝餉まで野良着に残る霞の香三日月なな子
あおぞらや富士は霞の向こうなりみかりん65号
朝食のフレッシュバター春霞岬ぷるうと
裸婦像の下のみ隠す薄霞水越千里
春霞包まれたくて山に入る三田忠彦
夕がすみ母の帰りを待つ兄妹みちむらまりな
原っぱの黄ぼうし散りて霞かなみづたま
夜明け前おそらく霞今朝の海ミツの会
霞濃し駅舎に消える君の影皆川徳翁
我が娘霞の中を歩みけりミナガワトモヒロ
丘登り霞の先に飛鳥の香みなづき光緒
霞立ち騎馬武者駆ける関ケ原湊かずゆき
少女らのうたごゑ清し春霞源早苗
バス停に亡き友映す霞かなみのり甘子
ノイズキャンセリングす霞の真中都忘れの音
朝霞朧豆腐の甘い蜜夢雨似夜
発つ船をたぐり寄せたし海霞むねあかどり
山頂や霞を息で吹き飛ばす村田玉うさぎ
春霞朝市輪島を包み込み恵のママ
帆引船ともに流るる霞かなめでかや
根尾谷の薄墨かくす春霞毛利尚人
たびどころ霞ばかりの万里かな本山喜喜
天空の藍や霞の大野城ももくりかんきち
深みます霞の奥に滝の音森茂子
登り来る龍のどう猛霞かな森嶋師子草入道
朝霞光求める千の枝森太郎
霞たるビルの彼方に山景色山内泉
春霞橋の袂に神社有り山川たゆ
在宅で早引けを乞う霞かな山木戸兆舞
背には富士南には浪春霞山里うしを
霞む谷ぬめる石踏み露天浴山田季聴
認知症検査の結果夕霞山田はち
里霞み過ぐる枯れ声街宣車山田睦夫
バイパスの橋から見える山霞む吉田かのこ
鐘の音や霞む教会顧みる麗詩
相模灘護衛艦は航く春霞連雀
ネクタイもヒールも無き町春霞若林かな
桟橋を短くさせて霞む海伊藤れいこ
年上の新人来たる霞濃し伊藤小熊猫
明滅の果てゴジラ撃つ朝霞イワンモ
春霞うっかりと君思い出す上野眞理
あの山の高さ知るなりかすみ晴えのき絵巻
東京覆ふはかの世の霞かな遠藤一治
春霞かおり辿りて鳥の鳴く岡塚敬芳
新しき市長山燃ゆるかに霞けーい〇
紙すきの肌やはらかし春霞小杉泰文
草霞むひよどり濡れし葉引き千切る小林のりこ
チョコ握る今かいや否霞蹴るこまたれぶー
エコー写真孫は横向き春霞こむぎ
霞立つ人形よりも多き黒衣さ乙女龍チヨ
朝霞寝ずにホストのLINE待つ珊瑚霧
霞濃き運河押し来る櫓の軋み秋芳
霞なら光源氏が出て来そうショートケーキ
煩悩のひとつ隠している霞白プロキオン
手繋ぎのはとこ霞の遊園地瀬央ありさ
大人の対応してきたよ棚霞末広野暢一
忘れるは神のギフトよ夕霞鈴木由紀子
春霞見てはいけない祭あり清仁
冒険をしないカーナビ春霞そうり
霞濃し山門仁王瞠目すたか&ひろ
比良比叡湖になだるる棚霞谷町百合乃
これ幸いすっぴんの山に霞ただの山登家
病んだ日の時間(とき)ゆるやかに夕霞(瑞々改め)鱈瑞々
霞朝瞼ぬれぬれ学び舎へ司蓮風
気だるさや後朝の別れは霞天雅
よくはやる店の看板霞かなつついぐれちゃん
心模様山に映して薄霞なか鹿の子
春霞レシピ残して退職すノアノア
春霞母のデイサービスは週五橋爪利志美
古戦場陣旗に纏う春霞火車キッチンカー
透し絵や霞衣を纏へる佐久平美竹花蘭
八重霞白寿紅さすくすりゆび陽
半熟の生理重たき霞かなひなたか小春
春霞正体掴めぬままの礼ひな扶美子
霞より出て自転車に乗れた吾子フージー
記憶とは儚き重さ夕霞風慈音
鐘霞む地産地消の酒肴深町明
学習机下ろし山道霞みたる福田みやき
木々急いて息をするなり春霞福井桔梗
霞吸うて娘の病ふと軽くポップアップ
夕霞古希を過ぎての抜歯かな真理庵
春霞今日は患者として待つ三輪白米
てんごくはかすみがかかりこんなかなムーンさだこ
霞濃し喪明けのひかり探しをり簗瀬玲子
週一度走る高速春霞山田はつみ
火葬前記憶の向こう霞立つ大和杜
朝霞親子で歩く同じ距離山本美奈友
母の「むかしむかし」湯布院の霞山辺道児
獣か落人なのか夕霞唯果
西行も王仁も知らねど春霞遊羽女
尾根を縫う送電線や春霞山吉白米
夕霞砂を払つて下校の子宥光
稜線の厳しさ隠す絹霞吉藤愛里子
露天風呂100も数えし山霞涼えつろう
春霞白砂に被る縮緬波わかなけん
死刑台ボタン三個の指霞和光
春霞たまにかみ合う猫会話わたなべすずしろ
霞かすみ始祖鳥や囀りけむぞんぬ
龍の目よ霞の中にきらびやかあいあい亭みけこ
霞越し彩待つ山々音もなく相澤泉
憧れの女性の影や霞行き会田美嗣
生きながら隣合ふ死と霞かな藍野絣
夕霞手を振る母の消えゆけり青井季節
草霞む山羊現れてまた消えて青井晴空
自転車で琵琶湖一周春霞蒼鳩薫
夕霞イヌ少年の名で呼ばれ青花潜
春霞水面にたゆたふ鴨の群れあお山まみ子
霞立つロープウェイ皆立ち往生赤尾双葉
浮世とは広き獄ぞなほ霞め赤馬福助
混ざりあふ湯気と霞のベランダでacari
山火事の傷にガーゼを春霞あかり
勝ち目指し坂駆ける馬霞かな昭谷
警笛も船もまぼろし夕霞秋野茜
A型ぢやなくなつた日の春霞秋野しら露
霞でも歩幅大きめどこまでも空き家ままごと
霞なり高層積雲時すくう芥川春骨
霞ぬけ走っておいで我が犬よ淺井翠
六甲の山並み平す朝霞あさいふみよ
自転車の影チリリンと朝霞あさぬま雅王
はや起きて遠くに霞古跡城亜紗舞那
闇溶かし燃えて霞のたなびけり飛鳥井薫
喜連川露天の彼方春霞あすなろの邦
六甲の茶屋を愛せし春霞阿曽遊有
霞みをるコテージ二階白ワイン足立智美
彼の岸へ踏み入らむかな霞入る渥美謝蕗牛
霞消ゆさあ再びの日々の山阿部わかえ
役員の交代迫る夕霞あまぐり
春霞吾ひとり下車の無人駅アマリリスと夢
儚きは山の霞か我が恋か雨降りお月さん
春霞万年筆の滲む文字雨李
家出犬夕霞より戻りけり綾竹ろびん
朝霞見え隠れ行くランドセルあらいゆう
畑仕事霞む男体山白き襞あらかわすすむ
面影しのばむ霞立つ二上山に荒木ゆうな
半世紀ぶりの再会春霞新多
芝を読み寄らず入らず春霞井伊塩梅
幼な子を兄が抱いて遠霞飯田淳子
春霞耳順のインナーカラーかな飯沼深生
見上げても孫とブランコ春霞池愛子
山道の霞見下ろせば雲か池田華族
ひとり旅行く手遥かに霞たつ池田炭
息を呑む審議のランプ霞立つ池之端昇雲
春霞一人で生きて行くのです石川巴里
洋上の風力発電霞みたり石塚彩楓
夕霞君は晴れやか新天地石の上にもケロリン
山頂に霞上りてバイク来る石原しょう
亡き夫の想いを誘ふ春霞石原花野
朝霞母の介護で眠れぬ日石村香代子
霞食わぬ仙人居間でうたた寝石山知子
宿を出で霞広がる街を行く和泉明月子
朝霞浅間の山の薄けむり泉恵風
落人の里に修験者山霞む和泉攷
霞からパン焼く匂ひ漂いて遺跡納期
六甲の青き山並み春霞いちばほうすい
鐘楼も堂宇も霞む山の寺いつかある日
分からないことば霞より父さん一斤染乃
ひとしきり涙の後や朝霞一愼
霞立つ吉野の山に静舞う伊藤節子
霞かもいいや雲だと無駄喧嘩伊藤テト
学舎はなみだの霞むエントラス伊藤正規
支へてはまた夢を見る遠霞いとへん製作所
朝霞銃声のトントンとトン伊ナイトあさか
島々が霞の奥に隠れ見え伊那寛太
霞なか苗はむらさき素焼鉢稲葉こいち
杖の音今日は霞を友として稲葉雀子
霞船水平線に落ちてゆくいなほせどり
山並みの墨絵のごとく遠霞井上幸子
能登の地よ春の霞の美しき人猪子石ニンニン
アシュラムやマントラの声朝霞いまいみどり
田畑分け坂東太郎霞立ついまいやすのり
亡き人の現れいづる夕霞井松慈悦
三峰社砂利の音のみ霞中今西知巳
霞敷く日曜の朝ラッパ吹く今乃武椪
薄墨を掃いて斑の山霞今林快波
七変化富士やわらかに春霞伊代ちゃんの娘2
ほらあそこ霞の先にスカイツリーいわさちかこ
谷間より湯気立ち込めて霞見る岩佐りこ
海霞む空に溶けゆくあをとしろ岩清水彩香
八重がすみ目細め食らふ刺身かな岩海苔ソーダ
六甲の朝の霞とミルクティーういろ丑
サイレンも赤い霞の中を行く上田ちゃーりー
春がすみマティーニを教わった人うえともこ
通勤の霞に朝日ふと連写うちだまみ
霞む山越えれば海の見えるはず卯之町空
アンナプルナ内院満たす朝霞梅里和代
歩む先霞も友に我の道江川善光
霞かな味噌汁は汁季語は季語越冬こあら@QLD句会
朝霞とことこ猫の路地をゆく絵十
霞見て語らう友と光る川榎本奈
朝霞愛犬共にたんぼ道えみくれ
草霞む未来背負った第一歩江蓮蒼月
朝霞山並みからの陽にじみし遠藤倫
春霞カタログギフト届きをり旺上林加
霞む角曲がる救急車の静か大岩摩利
居眠りぬ吹く風ぬるく春霞大阪駿馬
汽笛鳴り霞に消える船出かな大嶋宏治
独り占め多摩川に棚霞見ゆ大竹八重子
ふるさとの霞む山あい童歌大野喬
霞立つ山のハイウェイ旅の朝大原妃
車窓から霞に惚け乗り過ごし大原雪
朝霞髭を生やして鍋焦がす大谷一鶴
いつもなら見える富士山春霞大家港一
現世は霞とふとてよかれかなおかえさき
山木々のいろ調へたる霞かなおかげでさんぽ
畦ゆけば田から登りてかすみ立つ岡田瑛琳
霞立つ大海原へルアー投げ岡田恵美子
山霞みうす紅色の里の道岡眞弓
眼下霞紫紫霞荻原湧
水色の風に霞もたなびけリ奥寺窈子
夕霞あごあし付きの原稿料小倉あんこ
遠くから子の声聞こゆ霞の野小島やよひ
春霞在りし日の君思ひ泣く十八番屋さつき
春霞シュークリームをふたつ買ふおひい
わがままは臍帯箱に霞かなおぼろ月
廃校は霞若き友想う小山田之介
山肌に故人踊るや春霞おんあいす
ふれあってとろけるまなこ霞かな械冬弱虫
口惜しや霞みて見えぬ子の学校海堂一花
仮免の車線変更春霞海峯企鵝
年食らい良きも悪しきも霞行く梶浦和子
人の世は霞隠れか明日知れぬ梶浦正子
告白に揺れるスカート春霞かしくらゆう
瀬戸内の霞む島々一周忌片岡まり子
霞立つ駅に始まるものはなし桂もふもふ
霞立つ丘の向こうに君は待つ桂子涼子
手を繋ぐ祖母の霞の甘きこと叶田屋
春霞ペアで揃えた銀の匙花星壱和
一ト霞一声烏浴びに発つ神谷米子
春霞空も思いも定まらず亀山逸子
熱戦の末の引き分け霞立つかもめ
仁王立ち優しくなりぬ霞かな花紋
汽車あらはるるや霞のこ線橋加山シンゴ
山裾に天女の衣夕霞カラハ
立ち漕ぎし霞を抜けてうどん屋へ咖哩亭章之輔
うす明かり霞を食んで漂ひ枯木佳秋
根無し草霞の先の未来かなカワムラ一重
ふわりふわりと飛べそうな春霞川村昌子
秘密基地こっそりラジオ霞かな岸壁の龍崎爺
春霞つぐらの野菜出番待つ岸本元世
息止めて遠霞見る遍路道未央柳
寝過ごして目覚めの渋茶春霞酒暮
医者通い山裾にまだ朝霞北川茜月
朝散歩少し霞んで晴れ渡る北の星
会いたいよ霞を越えて三七日へ木野まち
霞野や丘は腰衣巻いたやう木ぼこやしき
ヨハネ受難曲終わりて帰途の夕霞木村かわせみ
里山に霞たなびく我が家かな木村修芳
煙突の白煙噴く夕霞玖
ゴミの日のこの土手に湧く霞かな清鱒
霞空くしゃみ鼻水目も痒く喜楽胤
過ぎし日々美談に変える霞かな近未来
霞む日の目から鱗の落ちにけり工藤悠久
平安の時代も詠まれし霞かな國吉敦子
父の追ふ霞に揺らぐ幼顔熊谷温古
春霞朝刊配る一呼吸ぐりぐら京子
薄れゆく荼毘の煙や遠霞紅さやか
春霞早朝メールで祖母となり桑田栞
霞越し富士を探して車窓かな慶唯
鳥ひとつ消えて霞の知らん顔恵勇
霞かな留守番嫌と泣いた顔源氏物語
霞立ち破顔一笑仁王様恋瀬川三緒
夕霞ミスディオールをつまさきに幸田梓弓
朝霞猫遊ぶ城址公園ココヨシ
山むこう霞隠れて晴天で越乃光
円覚寺の緩き参道昼霞小嶋芦舟
涅槃像霞を敷いて今日を寝る小薗紀彦
客待ちの夜船灯を入れ夕霞後藤周平
おのが自我不確かにする霞かな小原実穂
春霞黒板アートよコサージュよ駒形さかつ
タクト置き霞の中へ征爾逝く小湊八雲
見つからぬ恋の定義や春霞小山晃
防波堤釣り人浮かぶ春霞小山秀行
鳥たちの大樹を守る霞かな五葉松子
病窓の霞の中に亡母一瞬西條恭子
印旛沼しばし安らぐ春霞さいたま水夢
白き鳥霞を離れ整然とさいとうすすむ
丘を越え霞の中を行く列車齋藤鉄模写
浮き舟や霞たなびく宇治の川さかい癒香
村さ駅水掛け霞消え去らむ坂島魁文
春霞抜けてワイナリ深呼吸坂野ひでこ
椋鳥の合唱届く霞から坂本千代子
E6の車窓京都タワー霞坂本雪桃
お参りの霞の中の杉こだち相良まさと
鐘霞む夕焼けこやけの響きあり咲美マキ
霞かな炭焼小屋へ下る坂さくさく作物
夕霞門構えは蔵の角さくら亜紀女
遠ざかる霞へ向かう汽笛かな櫻井こむぎ
引越しの朝霞の中の粗大ゴミ櫻井弘子
今日もまた犬連れ出会ふ朝霞桜月あい
リアルに修羅場スマホ画面は霞桜月夜
霞たちベールで包む花畑桜華姫
九十歳霞に巡り合う日かなさくら悠日
始発にて巣立ちし息子背の霞佐々木佳芳
始発車や霞に紛れ駅を出る佐藤俊
遠霞また風情かな岩木山佐藤公
朝霞瓦礫に息の音のかすか佐藤茂之
戦争も霞となって消えちまえ佐藤しのぶ
霞へとブラウスの袖引つぱられ佐藤綉綉
ペダル止め霞の沖をみはるかすさとう昌石
昼霞瀬戸内海をすつぽりと佐藤浩章
二月堂霞たなびく大パノラマ佐藤佳子
みずいろの霞裸婦めく相模湾佐藤レアレア
霞む日や我が青春に残る悔いさぶり
夕霞今日の失敗反省すさやじゅん
休日の朝や消えゆく山霞紗藍愛
霞立つ木曽路の山の明けゆけり沢胡桃
薄ら日と霞まといし眠りの木さわだ佳芳
一睡もできず霞に抱かるる三尺玉子
霞より新聞配達バイク音塩の司厨長
ふんわりと野に立ち霞と共にをり塩原香子
三年経ち霞たなびく郷恋ししかの光爺
夕霞白髪混じりのつげの櫛四季彩
息整え新車ドライブ春霞志きの香凛
まあだだよ霞む景色の色味変えじきばのミヨシ
京巡るスタンプラリー春霞紫檀豆蔵
霞より駆け寄る鹿毛は当歳馬じつみのかた
霞立つダム湖に沈む村一つ信濃のあっくん
朝便の汽笛に霞色づきて篠雪
露天風呂ボーッと長湯霞見ゆ芝歩愛美
消ゆる雑念鳥の声のみ朝霞縞子勾苑
霞濃き舞鶴港よ護衛艦島田順子
議事堂に懸かりし霞よう消えず秀耕
ワイン注ぐ夫の手先霞かな秀道
あなたなる故郷(さと)は霞のあなたかな柊瞳子
負けぬよう強く引く紅春霞正念亭若知古
海航る君おくりきて霞かな昭和かぐや
朝霞白湯行渡る全身に白井百合子
始発来る音だけ聞こえ春霞不知飛鳥
シロクマの献花台から朝霞白浜ゆい
霊山も名もなき山も霞かな白猫のあくび
朝の陽に消えて儚き霞かなしんなが新月
霞立つ火牛の計の峠越ゆ新濃健
町内の朝おつとりと霞立つ深幽
霞立つ大山越えの富士の嶺杉浦あきけん
亡き父の積みし石垣草霞み杉岡ライカ
うるう年煙霞にふれし君の手は杉本果ら
山野にも霞のヴェールはためかせすずしず
けふ父は免許返納夕霞鈴白菜実
晴れたれば富士見ゆるらし遠霞清白真冬
袖口のほつれ翳して霞見ゆ素敵な晃くん
春霞山並み眺めひとり旅数哩
ため池の底の残水霞立つ静江
車窓より霞に浮かぶ式根島晴好雨独
吐き出せば愚痴も呑み込む薄霞せいしゅう
霞立つ雨の公園我一人勢田清
ブルートレインもうすぐ郷里や朝霞瀬野広純
特急停まる無人駅霞触れ海星葛
峠はあの霞む辺りか道遠し仙翁花
霞の中歩く犬の背しっとり全美
夕霞ふいに始まる痴話喧嘩惣兵衛
登り来て悟空の渡り来る霞そうま純香
牧場の眼下の光霞たつそしじみえこ
後ろ手に生き永らえて霞食ふそぼろ
稜線を円やかにして霞立つそまり
紫の霞や猫の目を紫染野まさこ
朝起きて見るは川下霞かな宙まあみん
江ノ電と霞広がる富士の峰大康
鉄路越え車窓へ迫る霞かな大ちはる
霞立つ国会の窓民映さず平たか子
霞立つテニスコートのロブショット平良嘉列乙
霞立つ若草山や黒化粧高橋安遍
沖合へ急ぐ釣り船朝霞高見正樹
朝霞ヘッドライトのゆるやかにたかみたかみ・広ブロ俳句部
山霞甍のむこうそのむこう武智操
朝霞山の花そなへ祠道たすく
山歩き霞晴れつつ山姿祐紀杏里
山谷行き桃色霞只中に立花かおる
高尾から霞の先の富士思ひ橘路地
霞む道車の灯り色変えて龍義
能登霞み自衛隊車も減りにけりたていし隆松
窓の外スカイツリーを喰う霞田中紺青
母が言ふ霞の中に父の影田中美蟲角
霞立ちただ元気でと送る朝たなばたともこ
亡き夫の気配感じる夕霞谷口あき子
尖塔の先も和らぐ霞かな谷本真理子
うすしろき丹沢の山霞たつtabei白芙蓉
オフィスから見るアートなり春霞玉川緑風
霞む空溶け込みそうな昼の月田村モトエ
エンジンの音とポルシェの赤霞む田村利平
眼鏡とり遠き山々春霞ダメ夫
サ高住の談話室から夕霞チームニシキゴイ太刀盗人
多島美の霞のころも汽笛鳴るちくりん
対岸は三浦半島遠霞千葉睦女
島のごと霞の向こうの山々ツキミサキ
春霞新居の庭で土遊び月見里ふく
苑内の大池の向こうの春霞辻ホナ
禅寺の読経漏れ来る夕霞辻栄春
霞よりぼふとせつつく鯉の口津々うらら
新幹線霞を抜けて又霞坪田恭壱
霞ぼかすお山の裾は白じろと都留諭
朝霞浮かぶ天辺富士の山哲山(山田哲也)
春霞宙ぶらりんになりし山徹光よし季
春霞異人館という名の喫茶店テレシア
自転車を降りて霞のなかを行く天誠
右脳と左脳ハイタッチする霞天童光宏
静やかに朝霞より夫帰る土井あくび
稀有の人霞を食べに行っちゃった苳
山並みをそっと抱ける春霞峠南門
今日面接天王山の霞晴れ東森あけば
海からの霞覆ふや能登の朝遠峰熊野
霞の日坂の終りの見えぬ道徳庵
艶にして力強くもある霞Dr.でぶ
霞立つ阿蘇の五岳や大観峰どこにでもいる田中
平らかに霞重ぬる丹沢はとなりの天然水
霞晴れ都会へ発つた筈の顔戸部紅屑
霞む街ここで生くると決めし朝友@雪割豆
現実は霞の向こうにある世界登盛満
霞かすみ故郷は山河越えてまだ富山湾
春霞眼下にのぞむ瀬戸大橋とよ
名の通り朝霞立つゴルフ場豊岡重翁
釣舟の消えては浮かぶ遠霞とんぼ
滑り台リニューアル待つ霞立つ内藤未来仁
深呼吸吹き消す山の霞かな内藤由子
展望し霞は遠く空近く中澤孝雄
洛北の寺社を惑わす春霞中島葉月
霞から君現わるる白樺湖中嶋京子
朝霞そろりと引いた大念珠永田千春
霞立つ理科教室の化学式なかにしうさぎ
歌人や霞の奥を覗きゆく中原柊ニ
控えめにと霞に告げて竿を拭く中村こゆき
病室の夫も見てるか春霞中村あつこ
朝霞晴れゆく中から鷺からす七五三五三
日が落ちる鹿の親子か夕霞那須のお漬物
朝霞音無き川の警備員夏雲ブン太
ミシンは油のにほひす霞かな夏雨ちや
母と娘の折り合ひ何処春霞ななかまど
朝ぼらけ梅の社も霞みけり⑦パパ・いつき組広ブロ俳句部
皆留守と投網絡まる昼霞浪速の蟹造
遠霞性善説は限界と名前のあるネコ
島山の影は曖昧霞かな南全星びぼ
濃い顔の君も霞の中ならばにいやのる
ターナーの光差す海霞かなにえ茉莉花
霞みても目には眩しき日の光西尾照常
いくつもの霞の側を急ぎゆく二重格子
すつかり気ゆるし霞を狸かな沼沢さとみ
霞抜けかすみ目撫でりただ歩く猫辻みいにゃん
霞がかる釈迦横たわり大観坊野崎文明
朝霞山登り切り深呼吸野瀬博興
声届く霞分け来た救助隊のの俱楽部
霞みたる山の駅から海の駅野ばら
光るすじ霞と雲の間には野原一草
故郷は霞来るや河向こう則本久江
霞濃く水琴窟の音も籠り波止浜てる
昼霞今日は餡よりカスタード橋本有太津
池越えの7番ホール霞む富士馬笑
里のバス降りれば遠く霞かな蓮見玲
昏睡の吾に叫ぶ名の遠霞葉月庵郁斗
春霞喝采のなか花嫁御花岡淑子
朝霞視力悪し二倍がかり花城キヨトシ
遥かなる地球の記憶春霞花はな
大塔の甍はんなり霞立つはなぶさあきら
中年の吾の潤ふ春霞花水木
宇治霞み浮舟像のうつろひて花和音
釣り人の眠気の向こう霞む島浜友輔
新田に風が霞の幕を張るはむこ
不登校過ぎれば霞ランドセル早川雅世
春霞をさな手を引く野草園林田リコ
霞立つ天橋立股の間に原水仙
山の端に霞たなびく祖母の家原善枝
霞へと消えゆく始発列車かな原島ちび助
旅終わる朝叡山霞みゐて巴里乃嬬
春霞雲とも花ともたがえる眺めharu.k
この街に異国めきたる霞かな春あおい
山青し術後管抜け霞あけはるるん1号
霞よりぬつと幼きみどりがめはれまふよう
朝霞遠くに見ゆる屋形舟伴田聡
復興の能登霞みたること勿れHNKAGA
霞より笑い合う声朝参り東の山
ペダル漕ぎ霞切り裂き通学す東原桜空
霞立ち里の畑も鍬ふるう東山たかこ
ビル群の面取りのごと夕霞匹田小春花
霞立つブギのトモちゃんと呼ばれし日比企野朋詠
さと山に遊びし記憶霞濃しひぐちいちおう(一応)
天空の露天風呂より横霞ピコリス
霞は遠しバイク止めて昼飯ひでやん
山裾の田畑撫でたる霞かなひめのつばき
吊り橋の空中散歩春霞平井由里子
山道の通勤途中霞かな平本文
都会の埃を集めし霞かな平山仄海
仙人の将に現はる霞む谷廣田惣太郎
霞立つ剥げたピンクのネイルかな風民
風そよぎ水面みだれる春霞深澤健
スニーカーひも締め直す霞かな福ネコ
船影や汽笛一声朝霞藤井眞おん
春霞淡路はかなた茅渟の海藤丘ひな子
遠ざかる列車の音も夕霞ふじこ
霞か雲か染める野山に輪郭線藤沢・マグネット
霞立つ故郷の山にうずくまる藤永桂月
朝霞廃棄す椅子を見つつ出社伏見レッサーレッサー
春霞そろりと渡る河鹿橋二見歌蓮
朝霞無事を念じて送り出す船橋こまこ
年下の君に子ありと霞空風友
蝦夷富士を遥か見上ぐや春霞冬野とも
退職の次の次の日霞む道古川しあん
ロケハンや次週に期待春霞古澤久良
ピーエムも恋も取り込む霞かな古庄萬里
積もるエゴ霞がかかる景色かなヘッドホン
荒川の霞に消えし寅次郎べびぽん
春霞過疎の山峡たなびきて望月
霞とは腹ふくるるか迷い道房総とらママ
薄霞緑の崎の青白くほうちゃん
カシミール霞がかった遥か尾根ぽて巻
朝霞名もなき湖の深呼吸堀川絵奈
山路来て喉に佳かれと霞吸ふ堀隼人
春霞五分遅れの始発バス堀邦翔
乳飲みて眠る子と母霞立つ凡狸子
移ろひし青春の地や八重霞前田冬水
霞む天その上の晴れやかな母牧茉侖
音広み香は薄まりて霞かな牧場の朝
お浄土は彼の地にありか夕霞正男が四季
遠ざかる尾灯は片目昼霞眞さ野
春霞印象派的日の出かな増山銀桜
ゆかしさの大きな背中夕霞町田勢
じわっじわり霞がくるよ老い討ちに町屋の日々輝
別れゆく背中(せな)にエールや春霞松浦姫りんご
遠富士や霞か雲か目を凝らし松尾祇敲
夕霞後光と見紛う彼方かな松尾老圃
野山から賑いもらいて霞かな松沢ふじ
さあいよよ晴耕雨読朝霞松平武史
冠雪を残して富士の霞みをり松田寛生
胸の内隠して酔うや春霞松永好子
霞たちそびえて見えぬスカイツリー松本牧子
葉は青く霞に負けぬ鮮やかさまほろば菊池
正面に甲斐駒霞朝のバスまやみこ恭
六甲のたなびく霞神隠すまりい@木ノ芽
この道はかきわけてもかきわけても霞濃し三池のり子
先をゆく人々の影かすみけり美彩
展望台自宅の方角大霞澪つくし
朝霞ふたり昨日と同じ服澪那本気子
新聞を三部霞の坂の上帝菜
明石の門霞ゆくりや汽笛鳴る神酒猫
信号の点滅霞む待ちぼうけMR.KIKYO
大島の富士山霞む展望台水谷未佳
仙人を真似てたらふく霞喰ふ三田忠彦
部屋ごとに老眼鏡や春霞みちむらまりな
山の端にかかる霞や色淡く光月野うさぎ
ひと霞曖昧模糊な私たちミテイナリコ
あらわるるゴール忽然霞明け三群梛乃
機材背負い若草山へ霞立つ都乃あざみ
信貴山や虎の看板霞みけり美山つぐみ
八重霞「雨の慕情」を聴く頃に妙
君の名を辿れば駅は霞の中へミンコフスキー
今日のこと霞のなかに留めおく向井かえ
鉄塔のランプ霞みてじわり赤無弦奏
東山霞んだままで迫り来る霧想衿
霞空あなたの心じれったい村上恭
老犬や霞の中をゆくり行き村上の百合女
夕霞姿を見せぬ富士の山村のあんず
醜聞は霞と共に突然に冥呈
春霞髪はピンクの孫来たる目黒智子
腹の子の性別判定朝霞モコ
さあ行かん憧るる峰朝霞望月ゆう
能面の秘むる情念なほ霞望月朔
春霞走り寄る君目に涙本橋理音
霞食む1000年生きし煌々と樅山楓
年を経て霞と美人こそ遠見モリコリゴリ
日本海と書いてやりたきほど霞むもりさわ
山を消す霞か雲か地球消す森嶋師子草入道
パーおじさん消ゆる夕霞の芝生森太郎
霞でて薄ら黄色い裾野かな森毬子
春かすみ噛み砕きたる砂糖菓子諸岡萌黄
釜めしぃー峠の駅の霞かなもろ智行
花沢の里ゆるゆると春霞焼津昌彦庵
マタニティウェアふんわりふわ霞山羊座の千賀子
海霞み遠音の汽笛に胸騒ぐ矢車草
うす霞日本のチロル賑わいし矢澤かなえ
忘れ物霞の中や後ろ影矢澤瞳杏
霞む瀬を目がけ解禁第一投野州てんまり
由布の先霞の中でうわのそら安元進太郎
むすび一つ霞広がり車中泊柳井るい
スカイツリーついと立ちたる霞かな山内彩月
母が居た施設の奥や薄霞山内文野
春霞瞼のカーテンこじ開けて山内悠生
霞みたる鎮守の杜の騒がしき山川たゆ
無名山霞む山頂地図の皺山口笑骨
大鳴きの二羽の鴉や春霞山口絢子
灯台を霞がつつみ灯がともる山口雀昭
霞たつ連絡船の着く時刻山崎かよ
はるか海か空か過ぎ行く春霞山崎鈴子
朝霞赤坂杜の笑を隠す山崎力
眠りたる校歌霞や呼び覚ます山下義人
春霞微かな香り求めけり山育ち
棚引けど霞の香り薄きだに山田三打ゆう
浮かび来る白鳥(しらとり)の列霞む山やまだ童子
初めての革靴履いて霞立つ山野花子
特養の手を振る母や夕霞山本たか祥
霞をば食うて生きたし雲まとい宙美
道草し手招きされし夕霞夢一成
メガネ越しカーテン越しの霞哉夢散人(光散人)
異世界へ船を誘ふ朝霞夢見昼顔
子ら走る声だけ聞こゆ春霞湯屋ゆうや
見上ぐれば四国カルスト大霞陽花天
みづがきの君家移りし霞濃し夜香
朝霞ワクチン七回目接種横須賀うらが
焼き餅に出でたる富士と霞かな横浜順風
ビル群を下にタワーを薄霞横山雑煮
夕霞スカイツリーの浮く都横山道男
渡船場の離れる舟や霞みゆく吉田春代
霞かなマルチバースが激突しリーガル海苔助
香り残がおぼろげ霞む後ろ姿ruby
あと百歩霞の先に君は居て海神瑠珂
雨上がり石鎚の山どう霞め渡部克三度
集落の小高き山や春霞渡邉花
夜勤明け扉を開ければ霞立ち渡邉わかな
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
●俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。
●兼題とは
- 囀りに瞬き止める赤子かな伊藤ゆめ安
- イタリアも時雨は寒し焼き栗買う岡村恵子
本俳句サイトでは兼題が出題されています。兼題は、テーマではないので、「霞」という季語を詠み込む必要があるのです
次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●俳句の正しい表記とは?
- キリンなら むしゃむしゃ食べたい 山笑う黄金柑とパン
- 霧にいる 君の瞳は 蜃気楼ギザギザ仮面
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●文字化け
- 蘭一輪間違い?嬉し朝霞風かおる
ネット投句欄における文字化けは不可抗力に近いけど、文字化けしそうな字を予測できるかも。
●季重なり
- 花見山はなも盛りの霞かな上野徹
- あまやかにふふむ霞や花見山佐藤儒艮
- 海苔舟を舫ひたゆたふ朝霞清水明美
- 遠足の子らのおしゃべり春霞里こごみ
- ひさかたの夕べの霞あの山は春智同美月
- 春先に霞を飛ばすくしゃみする村田真
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「霞」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
- 歩み行く霞の先は花の海雪兎
- もう会えぬ離す手のひら花霞みひまわりと碧い月
この二句は、むしろ「花」の句と考えるべきかもしれません。
●「霞」とするには微妙な違和感が……
- 大山を隠す綿あめめく霞あみま
- 筑波山女峰隠るや棚霞小田毬藻
- 霞深く蹴った石さえ隠してくさち子
- 発破音武甲山(ぶこう)を隠す昼霞夏目坦
- 低山の登り口の字消す霞むらのたんぽぽ
- 山あいの霞に隣家消ゆる朝森の水車
春の「霧」ならば濃くなることもありますから、分からないではないのですが、向こうの山や登山口の文字、そして隣家が見えないほどの霞というのは、違和感があります。
- ライオンの襲ひ来るかに霞沸くルーミイ
- ジワジワと地熱震えて霞湧く蛙里
- 今朝もまた打ち捨てし田や霞湧き八手薫
霞に対して「沸く」「湧く」という動詞には違和感が残ります。
- 午前四時調教馬場に霞立つギックリ輪投げ
午前四時はまだ明けてないから、「朧」と呼ぶべきかも?
- 霞寒車に水かけ手湿疹山田 一予
「霞寒」という表現に違和感を持ちますが、そのような傍題があるのかな?
●似ているけれど「霞」ではない
- 改札の彼岸は霧の海の底横縞
- 家にいる吾子の駄々こね靄る朝墨純
- 君や逝く靄の中から知らぬ人武小川寿歩
- 喜寿の坂越へる覚悟や霧を裂き大山小袖
「靄」「霧」は、「霞」とは違いますね。どう違うのか、調べてみるのも学びです。
●違う季語
- 妣住みし海辺の札所花霞本間美知子
「花霞」は、満開の桜花が遠目には一面に霞がかかっているように白く見えることを言います。
●「霞」は入っているが季語ではない
- メトロくぐり霞が関は桜舞う幸
- 春の日や歌声響く霞酒藤川鴎叫
- 年取りてかかりぬ霞かな赤子沢赤子
「霞が関」も「霞酒」も、季語の「霞」ではありませんね。
●季語の「霞」とはちょっと違うかも?
- 曖昧な人の心も霞かな本間滋之
- 嫁ぐ娘よ霞に消えてゆく日々よ杜乃しずか
- 年取りてかかりぬ霞かな赤子沢赤子
- 本霞白内障癒え涙する長谷島弘安
心理、時間の経過、目が霞む等の意味合いで「霞」を使っているのではないかと思われます。基本的には、「霞」は春の天文の季語です。
●動詞として使う場合は
- 筑波嶺も遠くとほくに霞けり円美々
- 霞けり畦一列の野辺送り藍創千悠子
- 領事館揺るる国旗の霞けり糺ノ森柊
- 五限は古文平城京も霞をり馨子
- 淡路島大橋の先霞おり朝日雫
- 夫の背の霞て胸に小石積む伊藤柚良
「霞けり」「霞て」ではなく、「霞みけり」「霞みて」等、動詞の表記にすべきです。
- 霞でる瞳も空も心まできもゆう
「霞んでる」としたいのかなあ?
●句意が分かりづらい
- 霞咲く幹満ちてゆく赤き道永松佳奈子
どこで切れるのかな? ひょっとして「花霞」のこと?
●不要な言葉。
- 朝霞ジブリ焦がる幼時憶う兎野紫
俳句においては、「憶う」のような動詞は不要なケースが多いのです。それを思うから、書いているのだものね。
たいへんお待たせいたしました。2月「霞」の結果発表でございます。今回も先生のアドバイスは必読です。「霞」に対してどちらかというとミステリアスなイメージを持っていましたが、投句を読んでいくとそこはやはり春の季語、明るく爽やかな作品もたくさんあるのだなと驚かされました。
この度は編集部の不手際で2月「霞」の結果発表が遅れ、「俳句生活」サイトを楽しみにご参加いただいている皆様、ならびに、関係者の皆さまにご迷惑をお掛けしましたこと、心よりお詫び申し上げます。今後はこのようなことがないように努めてまいりますので、何卒よろしくお願い申し上げます。