夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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9月の兼題

「石榴」

7月の審査結果発表

兼題「稲妻」

遠く光だけが見え、雷鳴が聞こえず雨を伴わないものを指すことが多い。雷と違い、光に注目した季語。

7月兼題『稲妻』は1,772句もの投稿をいただきました。初めて投稿くださる方も増えてきています。4月の開始から7月までの累計で、6,027句もの投稿をいただきました。たくさんの投稿、誠にありがとうございました。
8月以降も引き続きたくさんの投稿をお待ちしています(編集部より)。

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
稲妻や人は獣のごとく産む

テツコ

夏井いつき先生より

 なぜ、稲光を「稲妻」というのか。「稲妻」は「稲の夫(つま)」の意で、古代、稲は稲妻と交尾することで結実すると信じられていました。傍題「稲つるび」は、稲が雷光と交わる=交尾む(つるむ)の意でもあります。「雷」が雷鳴を主体とする夏の季語であるのに対して、秋の季語「稲妻」はその雷光を指します。
 上五「稲妻や」の強調の後に続く「人は獣のごとく産む」という詩語に圧倒されます。確かに、人間が哺乳類=「獣」であることを生々しく実感するのが出産の現場かもしれません。稲が雷光とつるみ結実するように、「人」も「獣のごとく」交わり産むのです。「稲妻」との取り合わせが生と性を腥く匂わせる、迫力ある作品です。

地
稲妻の走って鼬見たような

亀山水田

一瞬の「稲妻」、素早く逃げ走る生き物の影を見たような気がします。あれは「鼬」かもしれないが、それも一瞬のことで定かではない。「稲妻」の光が見せた幻影かもしれないと呟く作者がいます。

魚も人も瞳の濡れて稲つるび

久我恒子

「魚」の「瞳」が濡れているのは当たり前ですが、「魚も人も」とたたみ掛けた後に出現する「稲つるび」に戦きます。一瞬の雷光の下で魚も人も瞳を濡らしながら、交わり産み死んでいくのです。

稲妻を豊かにセイウチの鼾

一阿蘇二鷲三ピーマン

「稲妻」は農耕の歴史から生まれた季語ですが、「セイウチ」たちの空にも雷光を走らせます。走る「稲妻」を横目に「鼾」をかく「セイウチ」たち。「豊かに」という言葉のなんと美しいことか。

稲妻のへし折れたるとしなりたると

塩谷人秀

まさか「稲妻」の一物仕立てに挑む句がでてくるとは思いませんでした。「へし折れたる」稲妻があれば「しなりたる」稲妻もあるという淡々たる描写は、まさに俳人の眼力が捉えた瞬間の映像です。

稲妻やイラクの空はミドリイロ

登るひと

頭上に「稲妻」が走ったのです。この光景はどこかで見た気がするなと思う。空爆のニュース映像の「イラクの空」がこうだったと気づく。「ミドリイロ」の美しさと禍々しさに、胸を衝かれる一句。

人
  • 稲妻や三面鏡に誰かいるじゃすみん

  • 稲妻やカラカラ錆びてゆく欠片じゃすみん

  • 稲妻やたるんたるんの鰐ののどすりいぴい

  • 隣り合ふ町稲妻を奪ひ合ふすりいぴい

  • 稲妻や捗る二〇〇語英作文つながいハツオ

  • LAのコーヒー稲妻の一滴つながいハツオ

  • 稲妻や手足丸めて穴に入るなおこ

  • 稲妻やビルの谷間の古本屋なおこ

  • 稲光祝詞佳境に入りにけりにゃん

  • 稲妻や飯は深謝し食べるものにゃん

  • 稲妻からプラズマ粒子猫のひげぬらりひょん

  • 閨房の鏡の曇り稲妻すぬらりひょん

  • 稲妻や王女の耳の赤き石みやこわすれ

  • 稲光骨に刻みし呪文ありみやこわすれ

  • 走れ走れ稲光であるうちに

  • 鋭角に鴉の聲や稲光

  • 稲妻や産み月の祝女(のろ)脱け出しぬ葦たかし

  • 稲妻や神馬の尿のばうばうと葦たかし

  • 閉じた目の奥まで白しいなびかり遺跡納期

  • 理科室にチョークの音といなびかり遺跡納期

  • 稲妻や鈍色へ沈みゆく阿蘇歌鈴

  • ベートーヴェンの脳へなだれ込む稲妻歌鈴

  • 稲妻の黒き尾暗き尾根を打つ樫の木

  • 相部屋の雑魚寝五人や稲妻す樫の木

  • 稲妻やロックグラスが一度鳴る輝久

  • 稲妻や飯場住まいに抱く枕輝久

  • 稲妻や異世界はさう遠くない玉木たまね

  • 稲妻や空の裏側にも世界玉木たまね

  • 岩稜帯に稲妻の連射かな桑島幹

  • 稲妻や龍を身籠る北の海桑島幹

  • うすら日に遠稲妻の生ぬるき薫子

  • 剥落仏稲妻宿す宵あらん薫子

  • 稲妻や歯医者のドリルのどるるるる鯨木ヤスカ

  • 稲妻や雲に放つた四分休符鯨木ヤスカ

  • 稲光生き生きと闇深まれり古都ぎんう

  • 稲妻や冥き雲まで伸ぶる畝古都ぎんう

  • 稲妻に感光しちまった秘密溝口トポル

  • 稲妻や天竜川はいや遠し溝口トポル

  • 稲妻に打たれむと立つ猛き尾根佐藤比古太

  • 稲妻に足踏み鳴らす駒蒼し佐藤比古太

  • いなびかり縄文遺跡土杭墓彩楓(さいふう)

  • 稲妻や舳先に立てる女神像彩楓(さいふう)

  • カメレオン七色に稲妻を飲む山内彩月

  • 稲びかりてんでを向いて一家族山内彩月

  • 稲妻や隠しカメラの緩いネジ城内幸江

  • 稲妻や夜を半分になるくらい城内幸江

  • 稲妻や義母に抜かるる指の棘中原久遠

  • ぬかるみに嵌まる少年いなびかり中原久遠

  • 稲妻や吾子のあばらの柔らかき渡邉一輝

  • 稲妻や東京は群れても一人渡邉一輝

  • 稲妻や人魚が声をなくした日播磨陽子

  • 稲妻の無口パードレの告解播磨陽子

  • いなづまや菌糸のびゆく榾の中比々き

  • 稲妻を見しより金気くさき舌比々き

  • 裏書に楷書のサイン稲光凡鑽

  • 稲妻や母に繋がる尿の管凡鑽

  • 稲妻や誰か生まれて誰か逝く門未知子

  • 吾妻群嬬恋村や稲光門未知子

  • 稲妻の日に稲妻が濡れてしまう登るひと

  • 稲妻が赤くてすぐに五時がきて登るひと

  • 稲妻やぽぽぽと石は熱を持ち一阿蘇二鷲三ピーマン

  • 鍵盤を殴るバラード稲光塩谷人秀

  • 風冷えて野に稲妻の気配あり本上聖子

  • 益荒男の腹筋固し稲光24516

  • ジャングルの如き配管稲光あいだほ

  • 稲妻や固く握った鞄の紐あまぐり

  • 稲妻や堕胎ゆるさぬ国に来てあまぶー

  • ふるさとへ道しるべなり稲光あめちゃん

  • 赤銅の稲妻を抱く雲沖にうい

  • 稲妻に縁取られたる悪巧みうさぎまんじゅう

  • 稲妻やアインシュタインの眼うみの海月

  • 稲光そんなに嫌われてたなんておくにち木実

  • 稲妻や卍望みし黒き富士おぐもぐ

  • かくれおに納屋の隙間の稲光おっばあ

  • 稲妻の先に君おのD

  • 稲妻や割れた硝子を片付けるかつたろー。

  • 稲妻や右耳音を失ひぬかぬまっこ

  • たちきりのよとぎのまどのいなびかりくま鶉

  • 稲妻や父の大きな口に管クラウド坂上

  • 島津退き口稲妻走る関ヶ原くりでん

  • 稲妻や翡翠を探す光なりくるみだんご

  • 稲妻や一人称で生きてゆくケンG

  • いなづまと母のいかりとはんこうきここな

  • 稲妻や驚く子らの声も光るゴンタ

  • いなたまは非情の槍よ賜物よサイコロピエロ七変化

  • 稲妻やイヤイヤ期の子の握力さきのすけ

  • 稲妻やゴクリと夫の喉仏さくやこのはな

  • 空破れて天啓のごと稲光さくら

  • 稲妻や裂けて光の先尖るさとう菓子

  • 稲妻にはためきたるやパンツ10枚さとう朋子

  • 稲妻にマントルの熱畝りけむさとけん

  • 稲妻や長い電話を切りたくてさとち

  • 稲妻をしもべに世界廻りたししかもり

  • 稲妻や哭かずにすんだ三回忌すずひろ

  • 稲妻が夜の隙間に怒り立つスリム

  • 稲妻や抱く子かばひし母となるせつよ

  • たまごきらいぜったいぜったい稲光そうた(8さい)

  • うたかたの恋となるらむ稲びかりターシェンカ

  • 稲妻やはやくちでえいごしゃべるひとちま(4さい)

  • 稲妻やたまさか覗く異界の街ちゃうりん

  • 稲妻や隣県記録的豪雨てまり

  • 稲妻や嬰はちからづよく眠るときこ

  • 稲妻や寂聴の性おっちょこちょいとしなり

  • 稲妻や毛細血管の怒張としまる

  • 稲妻や軒下の泥の巣は空とものこゆめ

  • 稲妻や大水来る夜の帳とよかわ

  • 骨喰らう癌の痛さや稲光なごやいろり

  • 稲光り十勝平野の大き空ななみ

  • かのじょみててんがいなびかりおとしたナリミナ

  • 稲妻や村半分のジオラマがなんじゃもんじゃ

  • 過去問に賭ける未明や稲光りのっこ

  • 稲妻や夫婦茶碗を五十年のど飴

  • 稲妻や薄荷の飴をピシと噛むはちべえ

  • 「またいつか」小さくなる背よ稲光はちべえ

  • いなびかり卒塔婆小町のまなじりにはむ

  • 稲妻や嫁姑といふ絆ひかるこ

  • 稲妻や関取たちは出稽古へひでやん

  • 稲妻や一人当直最初の日ひとみうさぎ

  • 稲妻やひりひりと残像白しふじこ

  • 洪水の引きし我が町稲光ぼたんのむら

  • 書き記すくさび形文字稲の殿ポリ

  • 扉を叩くベートーベンの稲妻まつぽっくり

  • 稲妻の落ちるスピード恋に似てマドレーヌカフェ

  • 稲妻を放ってミシンうなるうなるまどん

  • 稲妻のヒビ走る硝子の空まなやたか

  • 稲光箪笥のおくに遺言書みさき

  • 稲妻に浮かぶ男の歪む顔ミセウ愛

  • 稲光油まみれの夜勤かなみつよ

  • 遠稲妻軽く眼を閉づ逢瀬かなみなと

  • いなつるび通夜振る舞ひのあやふさにみなと

  • いなずまやらむねをからあってのむんやでゆいのすけ3才

  • 稲妻やフェンスにかかるあかいはたむらさき(6さい)

  • 稲妻の雲の隙間に魔女探すもつこ

  • 稲妻やあめくぢぢめくさんざめくヤッチー

  • 稲妻やひとりで祖父の米食らうゆうほ

  • 稲妻や強き産声母となるゆづ

  • 稲妻やツィゴイネルワイゼンの夜ロマ

  • 稲妻やそこそこ生きて樹木葬亜紀女

  • 稲妻に浮かぶ我が顔の険しき亜美子

  • 稲妻やダムの底なる村の木へ亜来真留美

  • 稲妻や少しそろはぬミシンの目愛燦燦

  • 稲妻や三連休を寝違えて或人

  • 成人誌立ち読み稲妻は止まぬ或人

  • 稲妻の如くこの地に赤子降り安川伊津子

  • 稲妻の夜や稜線の黒痛し伊介

  • 稲妻や叱る母叱らるる父伊予吟会宵嵐

  • ただいまと土のにおい遠くで稲妻一花

  • 稲妻や土偶堂々正中線一斤染乃

  • 稲光武蔵野一隅射ぬきたり影山治子

  • 稲妻を先に行かせる姉小路遠藤百合

  • 気配なき子の部屋真夜の稲光塩沢桂子

  • 稲妻や妻問い婚の口伝あり岡本育子

  • 稲妻の去りて駅前の喧騒温湿布

  • 稲妻やドーベルマンの耳尖る加藤ふみ

  • 稲妻や口答へせし子の静か加藤哲

  • 稲妻や十六羅漢の猛き眉可笑式

  • 稲妻や己の恋に今気づく花伝

  • 稲妻を吐き出し空の軽き青花南天

  • 稲妻や怪談噺いま佳境

  • 稲妻にかすかに動く睫毛かな海碧

  • 稲妻や執事の怪死した館葛谷猫日和

  • 稲妻やこの世の道草気にもせず関口はるな

  • 稲妻を集めた者は死んだとか気球乗り

  • なお深き闇を産み出す稲光亀山逸子

  • 稲光厠の窓の磨りガラス亀田荒太

  • 心臓に稲妻走る痛みかな菊池洋勝

  • 稲妻や卑弥呼にすがる民の声吉田好大

  • ささくれをむきたる夜やイナビカリ居升典子

  • 稲妻や紙屋町西停留所京野さち

  • 稲光焼き付く父のデスマスク空龍

  • 稲妻や明治生まれの母の喝熊女

  • 稲妻の走りて太き生命線硬膜外

  • さっきから無言の妻や稲光紅あずま

  • 稲妻や青く尖れる喉仏紅さやか

  • 稲妻や笑ひ止むトーテムポール香野さとみ

  • 新宿の烏合の衆や稲光高橋寅次

  • 稲妻や茶漬け掻き込む通夜の朝鴻毛

  • 稲妻の残像ひりつく静脈克巳

  • 稲妻や猫の心音感じつつ根本葉音

  • 空の底割って稲妻海に墜つ佐藤千枝

  • 猪威しかっぽんかっぽん稲光座敷わらしなつき(6才)

  • 俎板の包丁跡や稲光斎乃雪

  • 稲妻やははの匂いの濃くなりぬ在芽里子

  • 赫雲を縫うて後退る稲妻山口トシ子

  • 稲妻や飛行機雲のなほ遠し山本彩

  • 稲妻の途(みち)探す闇の耳鳴り

  • 稲妻にこゑなく回転木馬錆ぶ次郎の飼い主

  • 光まず子宮に触れし稲の夫七瀬ゆきこ

  • 稲妻や夜のとばりを金継ぎし汐湯

  • 貴様とふ漢ことばや稲つるび七草

  • 稲妻やこの地球(ほし)の虚の瞬き篠崎幸惠

  • 稲妻や祖父の時計がひとつ鳴り若井柳児

  • 持ち帰る子安の小石稲の妻宗澤美子

  • 稲妻や父の拳固に目をつぶる初野文子

  • 稲妻を見下ろす機内のマティーニ小市

  • 稲妻や姉は非婚でよいと言う小川めぐる

  • 稲妻やがさりとシャツの襟のタグ小泉岩魚

  • 稲妻や螺鈿の箱と海の闇小池玲子

  • 稲妻やダムはやうやう満ちて来し小南子

  • エフェクトの小さき稲妻の無音小野田達仁

  • 稲妻やエンデのものがたり佳境へ松山帖句

  • 稲妻は翼の軋み龍生まる松廣李子

  • ざわめきは職場の死角いなつるび上野眞理

  • 稲妻や遺言状と死刑囚真宮マミ

  • 稲妻や神農さんの虎光る真繍

  • 稲妻よ己の背なは未知のまま真壁正江

  • 『罪と罰』カーテン越しの稲光真野悠

  • 稲光仁王の眼からでるごとし真理庵

  • 稲妻や時にあります不発弾雛まつり

  • 稲妻や夫なし子なし義歯洗う雛鍔

  • 稲妻の傷痕探し帰路の空瀬尾ありさ

  • 稲妻の奇襲や無駄毛剥ぐやうに西川由野

  • 稲妻の罅から空の殻を割る青海也緒

  • 稲光真夜中のアガサ・クリスティ石ころ

  • 稲妻の切っ先小さき波頭を捕らふ石垣エリザ

  • 稲光ネコ科の獣のような空石山俊道

  • さっきまでゐた山の向かうに稲光浅井和子

  • 正解はここになく稲妻の形曽我真理子

  • 留め拍子宵のいなづま薪能痩女

  • 稲妻や遠征帰りのバスしずか走流

  • 稲妻や露店床屋のタルカムパウダ多事

  • いなずまやばっさりショートにしてください大蚊里伊織

  • 稲妻や無音の闇の豊かなり大久保響子

  • 美ら海に稲妻美ら海の機影大小田忍

  • 稲妻や五分ごと寄する陣痛大槻税悦

  • 稲妻のファルセット卵子冷凍す沢田朱里

  • 稲妻や亡父の時計は秒針だけ谷口道子

  • 稲妻や棚田の畦の道祖神知足

  • 稲妻や弦張り替へるバイオリン中岡秀次

  • 竜骨の眼窩めりめり稲つるみ中山月波

  • 山路には獣の匂ひ稲光中西柚子

  • 稲妻や寂しくなればひかります宙のふう

  • 稲妻へ鬼集い風一度止む衷子

  • 稲妻やそろそろ逝くと兄の声長岡ルリ子

  • 稲妻や喪服の丈を少し詰め辻が花

  • 稲妻や仰向けで爪齧る夜天津飯

  • 稲妻や海月降るかに光る雲天野姫城

  • 稲妻や一音違へ曲壊る田村朋子

  • 焦げ臭き稲妻背なを追ひ掛くる田村利平

  • 稲妻や神輿の蔵の扉あけ田畑尚美

  • 稲妻を恐れもせずに君の来る田付一苗

  • 稲妻や時差を数えるビルの角渡辺音葉

  • 稲妻に棚田は上田から孕む渡邉竹庵

  • カテーテル検査の如く稲妻す登音

  • 稲妻や闇に啼く狼の群都金時

  • 片言の日本語の妻いなつるび都乃あざみ

  • 稲妻の楔型文字解読す都忘れ

  • 稲妻や股を開いて塗るルージュ土井探花

  • 天窓に収まりきらぬ稲光土屋虹魚

  • 漆黒の不整脈とや稲光冬のおこじょ

  • 稲妻や感電したる土星の環東奈美

  • 隠されし靴を探して稲光桃猫雪子

  • 稲妻の明石大橋袈裟懸けに藤川哲三

  • 稲妻や野に宇宙船めくサイロ奈良香里

  • いつか終わる介護や遠き稲光奈良素数

  • PKの助走に疾る稲光内藤羊皐

  • 残業の二十五階の稲光内本惠美子

  • 稲妻にをんなの躰確かむる楢山孝明

  • 観測船見送る母よ稲光楠央

  • 絎針に残りし糸や稲妻す猫愛すクリーム

  • あしたも晴れ稲妻に背を向け眠る猫路

  • 稲妻や受付嬢のぴんと座す馬場崎智美

  • 稲妻やたれが臼ひく雲の上馬場東風

  • 稲妻や紫の道海に引き白雨

  • いねのつま水天宮の護符飲みし白樺みかん

  • 太陽と競ふ高千穂の稲妻八幡風花

  • 黎明の厩舎に届く稲光八木実

  • 稲妻や能面のごと顔ありて飯村祐知子

  • 稲妻浴びてより妻のよそよそし彼方ひらく

  • 稲妻の無音無臭の響きかな比良山

  • 稲妻を静かに見入る子抱く夫姫山りんご

  • 稲妻や垂直に立つ湖の上百合乃

  • 稲妻やエロスの落ちてゐる空地百草千樹

  • 宗達の稲妻走るパリの町品子

  • 見えなくていいもの照らす稲光富山の露玉

  • 人を殺すゲーム稲妻鳴りっぱなし福本羽心

  • 稲妻や心折れたる音を足す福良ちどり

  • 稲妻や村道走る霊柩車腹胃壮

  • 初恋の終わりしころや稲びかり文女

  • 稲妻やショートステイに義父送る片岡佐知子

  • 放課後に囚われた日や稲の妻穂積のり子

  • 稲妻や象はアフリカの夢をみる豊田すばる

  • 稲妻とビルは三度目の接吻北野きのこ

  • 稲光融けたヒロシマの青空牧野敏信

  • 稲妻が海のにおいを連れてきた魔女っ子めぐ

  • 稲妻を孕みて鎮座する空よ麻衣

  • 稲妻や逸るフォントのオノマトペ抹茶金魚

  • 暗雲の脈をなぞる稲光未田翌檜

  • 稲妻に浮かぶ無数の尖帽蜜華

  • 稲妻は去りて遺りし嘘一つ蓑田和明

  • いなつるび賽の河原は祭らし椋本望生

  • 稲妻や罅入びびしき青磁壺明惟久里

  • 稲光眼集めて去りにけり明田句仁子

  • 商談は成立昼のいなびかり木村摩耶

  • 稲妻や列車は雨の切れ間抜け野ねずみ

  • 人ごとのやうに見てゐる稲光野ばら

  • 稲妻や手術知らせる友の声野ゆき

  • 稲妻や昨日の嘘が疼きだし野地垂木

  • 稲妻や尖りて赤き時計台油井勝彦

  • 合宿の低き枕や遠稲妻有瀬こうこ

  • いなびかり車庫に沈みしブルドッグ有本仁政

  • 稲妻に発情したる河馬二頭由づる

  • 稲妻や試合前夜の合宿所葉るみ

  • 稲妻や置き去られたる囮缶葉子

  • 稲妻や思はぬことを口走り立川六珈

  • 稲妻や第2コースの塩素臭隆之介11歳

  • 空を嗅ぐ犬稲妻の二度三度鈴木淑葉

  • 稲光笑声炸ず十五歳鈴木由紀子

  • 稲妻やニコライ堂の屋根碧き鈴木麗門

  • いなびかり信仰心は捨てました露砂

  • 親権を譲らぬ妻や稲光蝋梅とちる

  • 稲妻の夜ギザに裁たれし花模様暝想華

  • 遠稲妻横顔深く頷きぬ朶美子

  • 稲妻や宅配便のベルは二度洒落神戸

  • 稲妻や夜の首都高湾岸線淺野紫桜

  • 稲光闇の奥より津軽富士齋藤光子

  • 稲妻の彼方の闇に松の影螢子

  • 能面の額の傷や稲の妻芍薬

  • 稲妻やきみのつく嘘は優しい蓼科川奈

  • 号外に同郷のひとイナビカリ邯鄲

佳作
稲妻怖い、驚く、反応する※類想ごとに分類。
  • 稲妻や子の目に映る青天の霹靂MaSa

  • 留守番の稲妻怖くテレビ付けアガペ

  • あぜ道で母の裾持ついなびかりいくな

  • 稲妻や吾子が飛び込む母の膝つち茶屋

  • 稲妻の光とこわさ正比例ねこバアバ

  • 黒い空驚き直前稲光ファン

  • 稲妻は天の怒りか凄さますやったん

  • 稲妻に身を伏す子猫細く鳴く卯さきをん

  • 吾子震え布団もぐりて稲妻や横地美恵

  • 稲妻や逃げ惑う犬追いかける橋本結女子

  • 赤子の手ぴくり産室の稲妻香織

  • 稲妻や隠れし君に弛むほほ山本よし子

  • 稲妻や耳ふさぎて駈ける子ら志田那子

  • 稲妻や傘捨て夫の手を握る若竹芳子

  • 稲妻はしりきゃと声あぐ六十女(むそめ)かな神本多貴子

  • 稲妻に怯えしクロの換毛舞う生駒しのぶ

  • 稲妻や子猫箪笥に飛び乗りて田中勝之

  • 稲びかり鬼も逃げるやかくれんぼ湯流里参朗

  • 稲妻と動ぜぬ夫と我が悲鳴日々生紡

  • 稲妻に針持つ指のこわばりぬ入江幸子

  • 稲妻や腕に幼子目に涙美乃

  • 稲光帰宅のみちを怖がる子野上浩志

  • 稲妻やべそかく子らがしがみつき有馬裕子

引き裂く、つらぬく、割れる
  • 稲妻が空を裂く夕家を出るかもめ

  • あおじろく闇夜つらぬく稲光かんじゅん

  • 稲妻や天空の城きりさきて渡辺貴砂江

  • ぱきぺきと空割るひかり稲の殿詠み人知らず

  • 稲妻の鋭角鉄の塔を射す敬水

  • 濃紺の空切り裂いて稲光佐保子

  • 稲妻や湖面照らして突き刺さる山本康子

  • 稲光山肌を裂く闇夜かな紫江

  • 稲妻や硝子の空に走るヒビ秋まゆ

  • 通夜の列闇引き裂きて稲交西嶋正身

  • 後悔を切り裂いて落つ稲光理佳

一瞬
  • 一瞬ににぎれず消える稲光Stella

  • シーンと音がして刹那稲光さだとみゆみこ

  • 稲妻やその一瞬の潔さ聖月

  • 漆黒の窓に稲妻刹那の画大山恭子

  • 一瞬の畳を走る稲光中村純代

  • 稲妻の一瞬驟雨を駆ける男白米

人生、生と死、決心、偲ぶ、思い出
  • 稲妻やリセットしたき我が人生KISOBA・U.F.O.

  • いなびかり若気の至り胸の火にあかり

  • 歳ふれば胸すく思い稲光りあきこ

  • 稲光生ききる友の居る辺りこすみ

  • 悩み病む吾を稲妻荒療治スッキリ

  • 母の人生照らせ稲妻狂おしくとっちん

  • 稲妻に背押され言葉切出しぬ愛弓

  • 稲光生まれるいのち死ぬいのち綾夏

  • 稲妻や旅立つ母と最後の夜霞草

  • 稲妻や良くも悪くも60年

  • 稲妻を連れて産声上げにけり宮部里美

  • 稲妻や一瞬想い出よみがえり玉響

  • 最愛ののぼりし空に稲妻知らす犬山いぬこ

  • 蒼極む空を稲妻友逝きぬ今井淑子

  • 故郷の父母に届けよ稲光秋代

  • 様々の生の終わりや稲びかり春耕

  • ゆらぐ決心の背中押す稲光純子

  • 稲妻や孤了のきみの逝く偲ぶ森忠司

  • いなびかり鏡に母を思ひをり深幽

  • 父と見し稲妻鮮烈引っ越しの夜清歌

  • 稲妻が心に力湧き与え中山清充

  • 稲妻届け初孫の誕生祝え美人教師

  • 心音に吾子となりぬや稲光名ばかり宗幸

  • 稲光り幼き記憶に音はなし柚香

急ぐ、あわてる、動きが止まる
  • 稲妻に自転車駆ける帰り途いっこ

  • 稲光りかごをかかえて帰路急ぐさかたちえこ

  • 稲妻や缶蹴りの子の散り散りにすみ

  • 犬も子らも帰途につかせり稲光のりぞう

  • 山際を走る稲妻帰路せかし蒲公英

  • 稲光あたふた探す知人の家吉成しょう子

  • 息をのむ稲の妻みて湯殿より向井こうぼう

  • 稲妻や凝視する猫笑う吾子江川月丸

  • 稲妻に追われるような自転車の群れ紫陽花

  • 走りくる吾子の早さや稲光室依子

  • 公式を書く手の止まる稲光星乃沙耶

  • 稲妻に追いかけられて急ぐ足千川小舟

  • グランドの生徒はダッシュだ稲妻だ村人

  • 稲妻や車庫に逃げ込む下駄二つ駄詩

  • 稲妻を見ず早足のランドセル中神主税

  • 稲妻が自然と足を急がせる鶴谷緑平

  • 道草に早く帰れと稲妻が田中玄華

  • 急かさるる漕ぐ足闇の稲光田中紅雲

  • 農夫走る青き田の原稲光萩時雨

  • 稲妻やきみは立ち漕ぎ猛ダッシュ平田葉

  • 稲妻に抱えて走る散歩道明良稽古

田んぼ、収穫、実り
  • 稲光り祖父の田圃はあの辺りあつちやん

  • 田がビルに変わりて惑う稲の夫おざきさちよ

  • 稲妻や郷里の田畑手放しぬかわせみ

  • 稲妻や俄冷気田を渡るさがの

  • 稲妻へとどけ柏手よき実入りたすく

  • 稲妻や田地にパワー注入すつちのこ

  • 泥の田に力を西の稲妻よ久美子

  • 稲妻や農婦ほくほく早じまひ桜姫5

  • 稲妻や瑞穂の国の祈り込め三茶

  • 漆黒に実れ実れと稲光小枝咲楽

  • 稲妻や割れた田んぼのひびなぞる小池佑紀

  • 稲妻や実る稲待つ夫と妻大山小袖(俳号)

  • 作り手無し稲妻むなし先祖の田卓女

  • 窒素増し根張り(ねはり)豊穣稲光武樹

湖などに映る
  • 稲妻や天空のショウ湖に見るの菊

  • 穏やかな湖面に映る稲光バン

龍、神など
  • 稲妻に天井の龍爛々とANGEL

  • 稲妻や神を見たよな惑いの夜オカメインコ

  • 出番待つ龍のジャンケン稲光おぼろ月

  • 信仰も科学も似稲妻プラズマカオス

  • 神さまにポーズをとって稲光つぼみ

  • いなびかり昇る竜の絵にも似て愛子

  • 稲妻を稲妻走りに昇る神横井隆和

  • 赤道下跳ねるシャーマンと稲妻銀長だぬき

  • 稲妻に姿現す御神木志村紫香

  • 天を裂く龍神如し稲妻や松岡幸子

  • 稲妻が産んだ亀裂に神宿る西村優美子

  • 祈りすぎ天の稲妻怒りだす大本千恵子

  • 稲妻やダナエと雨のゼウスめく中島圭子

  • 稲妻や受胎告知の美術館巫女

  • 雨待ちの筑波のガマに稲光ひふみ

  • 稲光土のにおいに雨感じむな

  • 雨上る遠く稲妻父祖の墓修芳

  • 畑の畝稲妻と共に雨を吸う小島理司

  • 稲妻に振り向く同僚雨は未だ早帆

  • 雨走る窓の稲妻なぞりけり藤井眞おん

  • 稲妻や車中に告知する別離ぐずみ

  • 稲妻が恋の妄想打ち砕くシオン

  • 稲妻や別れ話に雨落ちる縁恵

  • 稲妻やコンマ二秒の一目惚れ宮本敏夫

  • 稲妻やみのりを契る二人の夜三浦ごまこ

  • ギュッと掴むあなたの袖を稲光真冬

  • 別れよう稲妻走る浮気妻大島サザエ

  • 稲光待ってとび込む彼の胸惇壹

~を照らす、稜線くっきり
  • 戦える道すじ見えて稲妻すけい子

  • 放課後に遠き山映ゆ稲光しおみー

  • 鈍色の雲浮き立たす稲光パシフィッコ

  • 稲妻が揺らす子供の胸の奥ヘッドホン

  • 天窓に見える稲妻部屋照らす稲垣由貴

  • 稲妻や闇を明るき照らしをり

  • 稜線を網膜に灼く稲光加裕子

  • いなずまに花うかび立ちにびの空河合久子

  • 絵本閉じれば寝顔を照らす稲光岩永静代

  • 稲光捉えし稜線闇の雲吉田秀一

  • 水平線照らす稲妻隠す雲畦布哲志

  • 昏き窓稲妻照らす我が暮し慈悦

  • 稲妻に山蒼ざめて浮かびけり春野いちご

  • 闇の山稲妻に姿現し晴好雨独

  • 山の背を不意に縁取る稲光中嶋純子

  • 稲妻や遠く近くの田を照らし琵琶京子

  • 稲光あわてて臍を押える子あらさなえ

  • 稲妻に臍をおさえし不惑前吉井迷哲

  • 稲の妻隠しきれるかへそとくり水野白子

道標、案内
  • 灯り消し星のかわりに稲妻をたま

  • 喪の家へ矢印の案内稲光正岡恵似子

  • 稲妻の道案内やトマト畑(はた)鷹野みどり

  • 稲妻に打たれし幹の道しるべ鳩礼

分かつ、つなぐ
  • 夕まぐれ昼夜を分かつ稲光岸本元世

  • 稲光天と地つなぐ糸電話岩沢一行

  • 稲妻や漆黒の闇断ち別つ真紀子

  • 天と地をつなぐギザギザ稲光板倉文音

スポーツ、イベント
  • フェスの夜イナズマ真横おーと歓声阿部佐知子

  • 稲光サッカー応援今日はなし笠原理香

  • 稲妻にひとふり避けて待避場後藤博文

  • 稲妻にバット残るグラウンド黒川光博

  • 稲妻や野外ライブのラスト曲佐藤由子

眼下、足下に稲妻 ~の稲妻
  • 浮雲の棚引く街を稲光きんのすけ

  • 稲妻の下総辺り又光るやまちゃん

  • 稲妻やキリマンジャロの曇り空甘納豆

  • 稲妻は太平洋のまだ向こう月夜同舟

  • 駅のかなたに稲妻を見て転び高橋なつ

  • 稲妻やあちらは夫の住むあたり佐藤儒艮

  • 稲妻ら眼下でスパーク宇宙基地山川芳明

  • 足下に稲妻走る初登頂酔進

  • 谷崎の京よ密かなる稲妻川瀬八弛

  • 摩文仁の碑怒りと哀しみ稲光田良穂

  • 二千段の社の先の稲光渡邉いろは

  • 稲妻や羆の潜む深い森藤田真純

  • 災害の少なき町へ稲光野紺菊

スマホ、パソコン
  • 稲妻やLINEの既読つかぬままきなこもち

  • 稲妻やエクセル講座あたふたしくれいじいそると

  • 世の携帯の数だけ光るいなびかり加藤俊子

  • 稲妻やオフラインにて着信す海野しりとり

その他
  • 障子に稲妻の影さがしけり畑詩音

  • 全盲の友のメールは稲妻だいいむらすず

  • 稲妻を冬の旬だと思い違いしかめっ面

  • 稲妻や寝汗か尿か羊水かももたもも

  • 夕暮れてジョッキにはしる稲びかりれいこ

  • 泣く子も黙る稲妻の子守唄錦之介

  • 稲妻だギュっとリードを引き寄せる原口祐子

  • 偏差値が下がり続ける稲光柴紫

  • 稲妻を姉とおののき夜具被る水面

  • もの思う吾の気持ちはあの稲妻倉澤慶子

  • 稲妻や天から探る忘れ物惣兵衛

  • 稲妻は結局虹と似ているね増田典子

  • 稲妻や頑固親父と子に言わる池田功

  • 稲妻やあっちでほいで姉に勝つ八重葉

  • 一人住む窓に稲妻なぜ悲し美山つぐみ

  • 昼下がり稲妻に共振するスマホ浜けい

  • 稲妻にいびき途切れることもなく野胡のこ

  • 稲妻や実りの約束派手に来い櫻井弘子

  • 稲妻や槍太鼓に輪が動くいずみ

  • イナズマやツワモノどもが夢の中いっちゃん

  • 稲妻の姿に震え脳ドックシロクジラ

  • 稲妻やタロットめくる指の震えすーぱーまみこ

  • 風冷めて胸ざわめくや稲光たかし

  • 曇天に無口な稲妻どこへゆくたなかとまと

  • 稲妻や重い空気のザワザワとたんぽぽ

  • 稲光まぶたこすってまた眠るバードマン

  • カーテンの隙間稲妻人の影ビバノンノン

  • 里帰り稲妻の空最終便ひろ夢

  • 稲妻や糖質制限やめますほしの有紀

  • 稲光ママは笑顔でご本読むほりぐちみほ

  • 稲妻やはやぶさ2はリュウグウへポンタ

  • 稲妻や雨戸の間より強引にまち眞知子

  • 万引き家族最終行に稲妻がみかん

  • 稲妻や君をしとねにする香りミスト

  • 稲妻に追われ泥んこの片足ゆすらご

  • 稲光指さしつぐむ不乱の鉛筆りんご

  • 田圃なき街や何産む稲光穐山やよい

  • 稲妻や消毒したき水の星安曇野多恵

  • 稲妻が単線電車と並走す伊藤悦子

  • 稲光伝染をする勇気かな伊藤順女

  • 縁側の劇場稲妻走る伊藤節子

  • 稲妻や夜空貼りつくカラスかな井蛙

  • 稲光慌てて打つは雷神太鼓井上早苗

  • 稲光ビルにむらくも地の匂い一佐子

  • 稲妻や妻に知られた涙跡永井基美

  • 稲妻を吸い込んでゆく避雷針園田みゆき

  • はしゃぐ父と子稲妻ぴかりぴかり河村あさみ

  • 稲妻や野良猫走る夕まぐれ花柊

  • 停電の夜や眩しき稲光灰田兵庫

  • 稲妻に背中押されて夫に寄る笠江茂子

  • 稲妻に見た宇宙が秘める憤り茅ヶ崎典子

  • お池では遊ぶ鯉たち稲妻と関いと

  • 稲妻に勝負勝負と吼ゆる犬基遊

  • 稲光山掛け試験大当たり希林

  • 稲妻や夜なほ暗き木陰かな宮坂変哲

  • 稲妻の先に何かの兆しあり原田

  • 稲妻や井戸端会議終わりとす原田民久

  • カンカンと指すサイレンや稲光鯉谷明日香

  • 明日までもつか脚摩る窓に稲妻孝子

  • うつららと本を片手に稲妻よ

  • 稲妻に窓のやもり二匹あり香子

  • 稲妻の意志を受け継ぎ空が鳴る合間五百子

  • デロリアンに稲妻我が子にも根本佳城

  • 付出しに錦糸卵やいなびかり砂山恵子

  • すっくと立て夜半に稲妻老い柏砂舟

  • 眠り諦め見つめ続けるいなびかり榊昭広

  • 稲妻とショートカットが背負い投げ作田尚子

  • 朝の四時瞼横切る稲光山川恵美子

  • 稲妻やバラ色の青写真消ゆ山田啓子

  • 稲妻に来るなら来いと神経束をしぼる山本美紀子

  • 稲妻や外気に代わり38度4分四十雀

  • 稲妻や悪口一つまた消去市山利也

  • 稲妻や窓に目をはせルージュひく鹿嶌純子

  • 稲妻や蒼き崖立つ仔犬かな篠原三三子

  • 稲妻や石鹸はねた露天風呂篠崎彰

  • 青筋のごとき稲妻怒濤の天紗桜

  • 稲妻と帰路の競争濡れて負け若葉苗

  • 稲妻に遠吠え連鎖して恐々宗本智之

  • 稲妻や大上段の活人剣秋水

  • 稲妻や煎茶点前す老二人出井早智子

  • 稲妻が迷う道撃つ漆喰の闇順和

  • 稲妻よ被災地はそっとしておいて

  • 稲妻にいるはずのなき人の影小笠原町子

  • 稲妻や鏡は落ちてひび割れて小鞠

  • 早暁の稲妻三つ休耕地小嶋芦舟

  • 稲の夫我をめがけよ天の奥から小澤啓子

  • 稲妻にブランコだけがゆーらゆら松浦晃子

  • はじめて席譲られし日の稲妻よ松浦苳

  • それ子たち稲妻のあいだに宿題を上田夏貴

  • 天かける稲妻仰ぐ猫と我上田明子

  • 稲妻や板書のリズム跳ね上がる城ヶ崎由岐子

  • 稲妻や行こか戻ろか停留所森都

  • 稲妻の由来を話す父の顔真範

  • 稲光自転車立ちこぎせまる夕真優航千の母

  • 稲妻や明日の天気を思ひをり星野茜

  • 仰ぐ児を抱えゐる母稲光清水容子

  • 稲妻や児のまばたきの繁くなり青柳ふみ子

  • 夜間飛行稲妻踊る雲の上赤寝子

  • 稲妻に挑む乗り子の太鼓たち川端孝子

  • 柵握る子の目に走る稲光

  • 稲妻や夜空の毛細血管泉子

  • 稲妻や竜巻三筋定置網早川博子

  • 稲妻や小籠包の小さき富竹伍

  • 稲妻や傘はふり投ぐ登り坂竹口ゆうこ

  • 稲妻とピカドン違うと母憂い中間幸代

  • 稲光ペダル踏む足力入れ中間康博

  • 憧憬は椰子の葉ゆらす稲妻か中谷典敬

  • 稲妻や仮面ライダーポーズの子田中洋子

  • 稲光あやしく光る暗き昼渡邊さゆり

  • 稲妻ひかる夕餉へ駆ける滲みる靴嶋村紀子

  • 稲妻や波形崩れる心電図

  • くの字くの字にいなずま光る黒き空二宮陽子

  • 捨てられぬ小さきこだわり稲光波の音

  • 老猫を抱き窓に寄る稲妻も梅納豆

  • 稲妻や縁側で囲碁老農夫梅里和代

  • 健やかな寝顔を切り取る稲光飯島康司

  • 稲妻やロケットの如し走り抜け尾添ひろ美

  • 稲妻とモニターフラットまじろがず美帆

  • 稲妻に鍬持つ祖母が腰伸ばす冨野千月

  • 葉を摘みし庭に稲妻老い柏福ねこ

  • 稲妻や大盛激辛カレー食ふ文月さな女

  • 稲妻や眠り覚まされ湯飲み取り本銅守

  • 稲妻や風雲急を告げる闇麻琴

  • 耳遠き母が見ている稲光桝元智子

  • 稲妻や胸に飛び込む孫いとし湊かずゆき

  • 稲光わら屋根の色まだらなり妙子

  • 稲妻に痴呆の母が笑みを見せ無頓着

  • 稲妻や三度目にそと鍵を差し野曾良

  • 稲妻や一之太刀に宿りけり野中泰風

  • 稲妻を綺麗だと言う兄不思議矢川コウ

  • 稲妻のタクトよビビれ大太鼓矢野茂樹

  • 稲光赤ちゃんの顔めっちゃ怖柳光辰

  • 稲妻の音なき音に耳塞ぐ有迷人

  • 稲妻を「きれい」と言う祖母逃げる孫湧津雅子

  • 落ちたよね稲妻の先どこの街

  • 稲妻に映る鏡の紅の色葉月けゐ

  • たまりかね呼ぶか稲妻枯れ野菜里恵子

  • 稲妻や一縷の望み安否待つ琉璃

  • 稲妻や話途切れて笑い合う亮介

  • 稲妻やカタカタ回る換気扇鈴木(や)

  • 稲妻や被災情報たにんごと鈴木あむ

  • 稲妻の近づくまでの闇ぞ濃し鈴木眞嘉

  • 稲妻に仁王照らされ凄みます連雀

  • 軽やかに稲妻白く割れて指す和代

  • 宇宙より眺む稲妻瞬くショー惑星のかけら

  • 稲妻やタイプふと止む18階瀟白

  • 稲妻やドリブル模様の回路かな祺埜箕來

  • 牙をむき何に怒るか稲妻よ齋藤典子

  • 稲妻夜田水観し人還り来ぬ茉莉花

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

「稲妻」と「雷」の違い

「雷」は夏の季語、「稲妻」は秋の季語です。以下は、「雷」と混同している(音が鳴る)と思われる句です。二つの季語の違いについて、歳時記を詳しく調べてみましょう。

  • 寝てる時稲妻がなり目が覚めたイスラム
  • 酷い音稲妻の顔雨豊富HAJILOVKAMIL
  • 空爆ぜて万朶の奥へ雷火逃ぐえんやこら
  • 稲妻や息を潜めて音を待つさきまき
  • 稲妻で聞こえないってばアイラブ・ユージュリー
  • 稲妻を聴いたよな気がした目覚めの~しん
  • 稲妻やかすかな音と光ありふじたけ
  • 稲妻夜恋の告白聞き取れずライムライト
  • 稲妻やとどろきわたり雨戸閉め井村澄子
  • 音のやや遅れて聞こゆ稲光岩野翠
  • 稲妻や聞き耳たてるわれ一人枯楓
  • 真夜中のシャツ干す間に遠雷孝啓
  • 稲妻の鳴り響くなか子の寝息川畑彩
  • 窓際の猫の目光る遠雷や早山
  • 稲妻や遠くで響き姿見ず多田ふみ
  • 稲妻雷鳴雲から腕が子ら走る楠田たか久
  • 稲妻に負けぬ産声上げる吾子夕凪

「季重なり」を成立させる。

  • 障子に稲妻の影さがしけり畑詩音

「障子」は冬の季語です。上五にいきなり「障子」とくると、読み手はまず冬を思いますので、語順を変えることで、脇役の季語の印象を薄める方法もあります。
【添削例】 稲妻の影を障子にさがしけり
季重なりの場合は、主役の季語と脇役の季語を区別できる工夫をしてみましょう。

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9月の兼題

「石榴」

過去の審査結果

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