夏井いつき先生の俳句生活

夏井先生のプロフィール

夏井先生のプロフィール

夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。

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7月の兼題

「炎天」

4月の審査結果発表

兼題「朧」

お待たせしました!4月の兼題「朧」の結果発表でございます。今回の夏井先生からの「今月のアドバイス」、必見です。「朧月」は別の季語になってしまうんですね、勉強になります。それでは今月の兼題「紫陽花」の投句、お待ちしております!(編集部より)

「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。

天
石室を少し開けおくこと朧

磯野昭仁

夏井いつき先生より

 薄暗い石室の空気は、ぬるく湿っています。黴の臭いもします。石室の真ん中には石棺。四方には、月や星や人や獣が描かれた壁画。かつてここに葬られた人がいて、その死を巡る人々の嘆きや憤りや思惑が満ちていた石室。そんな石室を「少し開けおくこと」とは、どういう意味なのでしょう。湿気を逃がすためにしばし開けておくのか。風を入れ黴臭を弱めてから、入ろうとしているのか。いや、ひょっとするとこの石室から「朧」がゆっくりと噴き出しているのかもしれない、と、そんな思いに囚われました。「石室」とは古代につながる隧道。古代と現代の気脈が「朧」という現象となったか……と、そんな妄想が、我が心を生ぬるく占拠していきました。黴の臭いが、鼻腔につんと蘇ってきました。

地
旧居の灯見にゆくだけの朧かな

さとけん

 誰の「旧居」なのでしょう。傾倒している文学者か政治家か俳優か、想像は様々に広がります。「旧居の灯」を見にゆくだけの目的で歩いていく「朧」の夜。下五「かな」の詠嘆に、思いが揺れます。

朧とは巻貝ゆるむ音のやう

「朧」そのものを喩える発想はありますが、「巻貝ゆるむ音」とはなんと秀逸な比喩でしょう。音と書かれてはいますが、感覚的には皮膚感。それは巻き貝がゆるんでいくかのような「朧」の肌触り。

マンホールさびて朧の芯となる

はんばぁぐ

 マンホールが錆びるのは当たり前ですが、それが「朧の芯」となるという感覚に強い共感を覚えます。マンホールの錆びを芯として育っていく街の「朧」には、かすかに下水の臭いもするのでしょう。

白骨めく松の生家にゐる朧

一斤染乃

「白骨めく」という措辞が、廃れた「生家」を思わせます。「ゐる」とは、自身が滞在しているのか、「朧」という生き物だけが住んでいる生家か……と思ったとたん、静かに鳥肌がたちました。

戦など朧と思ふ朧かな

円美々

 季語「朧」を、おぼろげな記憶として誤用した句が多かったのですが、それを逆手にとった一句。おぼろな記憶となっていた戦争が、今起こっている事実。「朧かな」の詠嘆に静かな憤りが滲みます。

人
  • 朧には朧の芯のありにけり蒼月子

  • 朧なり土偶はふくよかなる歪み字土街海

  • その時は皆朧になるかしら麻場育子

  • 自販機がなんて明るいこと朧海野碧

  • いびつなる月が朧の心臓かにゃん

  • 谷朧神は谺をかへしたる青田奈央

  • 店先で閉店を知る辻朧あたなごっち

  • 朧へと帰り行きたる夜の波ANGEL

  • 崩れ字の看板傾ぐ朧かなEarly Bird

  • 終電を待ちたる人の朧なる愛燦燦

  • 草朧売れ残りたる鯉の餌あいむ李景

  • 轟音のこもる空港朧かな青井晴空

  • 彼の道の朧や鎌倉は愛し蒼來応來

  • 意見とふ正義語らふ朧かなあかを実果

  • 朧なりあれは人魚の跳ねた音赤馬福助

  • 草おぼろ穿ち立ちたる碑文かなacari

  • 信号の赤テールランプの赤朧あかり

  • 新宿の朧が僕を閉じ込める秋沙美洋

  • 諦めたものがあふれてくる朧秋野茜

  • 気まぐれをうたう朧と溶かすうたあきののかなた

  • 自転車を漕ぎ朧に溺る秋吉和紀

  • 潜熱の七宝朧を放ちけり麻きなり

  • かの猫より招待状の来て朧朝月沙都子

  • アンコール曲口づさむ駅朧なり明後日めぐみ

  • カチャーシーの十指朧を戯れり芦幸

  • 箱階段抽斗キューと鳴き朧あじさい卓

  • 朧なる山とおやじと菩提寺と明日良い天気

  • 犬の名をくりかへしたる朧かな梓弓

  • 朧踏む忠告は忠告として梓弓

  • 待ちし人来ぬ橋戻る朧かなあたしは斜楽

  • 何語ならむ人魚の歌を朧にて足立智美

  • この街を去る時告げる朧かな中はじめ

  • ふしゅふしゅと火を噴くキューポラ影朧at花結い

  • 連なりて朧に見ゆる牝馬かな赤羽跳

  • 朧よりビーズ刺繍の孔雀の目天風月日(天風改め)

  • 眠りへの薬一粒なる朧天風月日(天風改め)

  • 聞き慣れぬ言語朧の路地へ消ゆあまぐり

  • ボタン押す指が朧の中にあるあまぶー

  • 姨捨の棚田を包み込む朧あみま

  • 朧より髭濡れ濡れと猫出でぬ綾竹あんどれ

  • 金婚の静けさに居る朧かな荒一葉

  • くどくどしき理屈を聞けば草朧荒井類

  • 鼻濁音のガ行を浚ふおぼろかな新多

  • 古き傷朧の奥に隠したりあらら

  • だまし絵ににらまれてゐる朧かなありあり

  • 星おぼろ砲撃の地の黒と灰ありいかな

  • たましひのおぼろ戦火の滑り台有本仁政

  • フルートの音色濡れ初む朧かなアロイジオ

  • 濃墨の乾きの遅き朧かな

  • 朧朧早よ寝よ鬼の来る前に杏樹萌香

  • 交番は無人朧と待つジャージ飯村祐知子

  • タウンページを桴で叩いてゐる朧イエティ伊藤

  • 後漢書の土色深き朧かないかちゃん

  • 祖父の尿ぬくぬくとしてゐる朧生野薫

  • 消えゆくや朧の森を白拍子池之端モルト

  • ともしびはうごめくまもの草朧イサク

  • 傷翼の天馬が食んでゐる朧いさな歌鈴

  • 噛み煙草吐き捨て馬を牽く朧石井一草

  • 朧よりのつぺらぼうの現るる石井茶爺

  • 質量のある夜風浴ぶ朧かないしきひさき

  • 大海をマンタはばたく朧かな石塚彩楓

  • 白湯うまし一人の刻の朧かな石原(花野)

  • 足裏に母のこゑきく朧かな石原由女

  • 朧やな轢かるるけもの過ぎ去りて石山日滔

  • 街おぼろ近づく影が君になる遺跡納期

  • 歩き出すマンドラゴラの根や朧石上あまね

  • 剥製の目のうすよごれたる朧板柿せっか

  • 門前の朧射抜けり仁王の眼いたまきし

  • 囁きの輪郭なぞる朧かな唯茅古

  • 故郷の甍をつつむ朧かないつかある日

  • セイレーンの鬼瓦笑む朧かな斎乃雪

  • 三味線の朧に潜む神楽坂一秋子

  • 嗅覚の鋭くなりて朧かな伊藤亜美子

  • あの世のこと考えてゐる朧かな伊藤順女

  • おぼろなり眼帯汚す他人の血伊藤ヒンナ

  • 白孔雀羽根をひろげてゐる朧糸川ラッコ

  • 逃れきて尼となりけり草おぼろ伊奈川富真乃

  • 戒名は九文字と笑ふ朧かないなだはまち

  • 木道の昏く濡れたる草朧稲畑とりこ

  • 軟膏に指深々と朧かな犬山裕之

  • ぞろぞろと戦車60キロ朧井納蒼求

  • 撚られつる糸とほりたる朧かな井原冴

  • 喪帰りに合はす歩幅の影おぼろいまいやすのり

  • たまごぼうろぼろぼろこぼす子おぼろ居並小

  • 独り居のボウロ溶けゆく朧朧イマスノリコ

  • 朧へと人魚の歌に招かれて妹のりこ

  • 巡検はフタヒトマルマル時おぼろ伊予吟会宵嵐

  • 寒天のごとき内海橋おぼろ五郎八

  • 真後ろに逢えぬ人居る朧かな岩木順

  • このあざはさっき転んだだけ朧磐田小

  • 故郷のバス停ひとり野は朧ういろ丑

  • 零時五分吊り革に手手手の朧植木彩由

  • 好きだった人の自死知る朧かな上野眞理

  • 駅長の笛うるみゆく朧かなうさぎまんじゅう

  • 新橋の朧スーツの座り皺内田こと

  • 廃校の朧が門を遠ざけるうちだまみ

  • 髪切らば母の縮むや朧の夜内本惠美子

  • 水牛の背に竹笛と朧なり宇野翔月

  • 二階からラジオの響く朧かな梅木若葉

  • 古都の夜や化粧地蔵の路地おぼろ梅里和代

  • 先生が三人辞める朧かな梅野めい

  • 遠ざかる朧の奥に父の海梅原もずく

  • 猿山も象舎もしづかなる朧浦野紗知

  • 朧なり萎れし鼓膜さぼってる吽田のう

  • セルロイド人形の孤独は朧江川月丸

  • 朧かな廊下に一人父となる越前岬

  • 福耳の人の悲恋を聞く朧越冬こあら@QLD句会

  • 朧なり遠くの喧嘩きれぎれに絵十

  • 朧かな夜の銀座の裏通り朶美子

  • 古文書の文字化けのごと朧かな江見めいこ

  • 一輪の最後の萎みゆき朧絵夢衷子

  • 朧なる墓標ジゼルのアダージオえりべり

  • フアの音は朧に溶けてピアノ止む旺上林加

  • 朧なり二夜つづきの君の夢淡海かこ

  • 通夜の座の騒き離れて朧影近江菫花

  • ジェット機の遠くくぐもる朧かなおおい芙美子

  • 転居後の靴底薄し草朧大江鈴

  • 折る指が朧を詩に変えている大紀直家

  • 閉園間近か廻る木馬の朧かな大熊猫@四句八句

  • 朧にてぬぐう真珠のネックレス大小田忍

  • 犬の鳴く声くぐもりぬ朧やも大阪駿馬

  • 朧なるホテルのバーの瓶の棚大塚恵美子

  • 京町家三階歪む朧かな大槻税悦

  • 遠ざかる電車の音を録る朧大和田美信

  • 雨後の雲やさしき宍色して朧おかげでさんぽ

  • いにしへの名を呼び交はす朧かな可笑式

  • 朧なる祭祀の島に拝しけり岡田明子

  • 朧なる独り住まいの警報音おかだ卯月

  • さつぱりと子宮失ふ朧かな岡田雅喜

  • 夜半の猫朧を食みて膨れをり岡山小鞠

  • 洗車機の遠くうなりて朧かな小川さゆみ

  • 夜行バス見送りておぼろにぽつん小川天鵲

  • 友禅の色挿してゆく朧かな小川野棕櫚

  • 十字路に狐ふりむく夜の朧小川都

  • 占ひ師の正面あいてゐる朧おきいふ

  • 長編のしおり落として朧かなオキザリス

  • 朧なり駅もドッペルゲンガーも沖らくだ@QLD句会

  • かくれんぼ声のみ残る朧かな奥寺窈子

  • 密猟の銃声濡らす朧なりおこそとの

  • 朧孕むメタセコイアの気息おだむべ

  • 夜泣き止む母と朧に擁かれて落句言

  • 喪服ぬぎ瞼のうらを朧かなおでめ

  • 木琴を叩いて朧なお朧音羽凜

  • 花嫁の部屋ととのひて朧かなおひい

  • このおぼろサックス聴かす石畳帯壱

  • 切っ先のような4K朧の夜海瀬安紀子

  • 吾の鼻蛇口に歪む朧かな海峯企鵝

  • あの人の吸い殻2本朧かなかえるL

  • 終点の先へ線路の這う朧火炎幸彦

  • 海おぼろ男を恨むファドの声カオス

  • おぼろおぼろ電動車椅子すーっ馨子.N

  • 巫女舞の左右に満つる朧かな風早みつほ

  • 泥川に朽ちゆく舟の朧かな樫の木

  • テープ切れ人も汽笛も朧なる華胥醒子

  • 焼け跡の朧生み出す朧かな加世堂魯幸

  • 効くツボを指もて探る朧かな加田紗智

  • まだら痴呆の父と朧を帰るかつたろー。

  • 野良猫の命尽きるを知る朧桂子涼子

  • 琴の音の途切れしあとの朧かな花伝

  • かっこいい石持ち帰る朧かな加藤ゆめこ

  • 影一つうすずみとなる朧の灯加藤麗未

  • みづをぬりよるをたらして満つ朧カフェオレ草

  • 山の端は朧に郷は捨てられず神長誉夫

  • 朧満つ皮膚呼吸ひたひたと満つ紙谷杳子

  • どのビルもビルを映して街朧亀田荒太

  • 回るとも見えず朧の観覧車亀山逸子

  • 人いきれ朧となりて何処まで亀山酔田

  • 爪切つて爪切り嗅ぎて朧かな加良太知

  • センセイと呼ばれ振り向く朧かなかりかり久助

  • 川下へみづふとりゆく朧かな川越羽流

  • 海朧名も忘れたる遠き恋河村静葩

  • 朧なり回収前のゴミ臭うカワムラ一重

  • 縄文の土偶と見つめあふ朧川村昌子

  • プラントの煙は垂れて朧かな勘八

  • 野良猫にセンサー動く庭朧看板のピン

  • 住み替はる生家の灯り朧かなキートスばんじょうし

  • 折鶴の嘴硬し鐘朧岸来夢

  • 朧なりこんぺいたうのひけぬ角北藤詩旦

  • 草朧聞こえぬ声のきけたよなきた実実花

  • 参道を行かば朧に入りにけり北村修

  • 月面の微かに匂ふ朧かな城内幸江

  • 酔ひどれの声残りたる朧かな木原洋子

  • 釣舟の曳き波長く朧かなきべし

  • 朧なる帰路をどこかの湯の匂ひ木ぼこやしき

  • 朧なる森の向こうに外宮あり木村かわせみ

  • 二上山朧の中を下山する木村波平

  • 売却のモデルハウスの庭朧Q&A

  • 夜の底へ薄墨しづか朧かな清瀬朱磨

  • 微笑みの円空仏も朧かな桐野鈴子

  • 目薬の舌の裏まで来て朧ギル

  • 目薬のあぢの変はりて朧めく菫久

  • 居酒屋で酔えず朧に酔う夜道銀長だぬき

  • 仮御所の衣擦れ消えて庭おぼろ鳩礼

  • をんな念仏の御堂たゆたふ朧かな杏乃みずな

  • 惨敗の眼鏡外すや朧濃し霧島ちかこ

  • イェス様の鼻の穴なる朧かな銀紙

  • 新宿のネオン饐ゑゆく朧かな久我恒子

  • 朧かな気の合ひさうな人ひとり葛谷猫日和

  • 朧へと棚田をアルプホルンのファぐずみ

  • 二十人お見合い終えて街朧くずもち鹿之助

  • この朧わが吐息なり鏡見る苦泉

  • 焼き方を細かく説かれ朧かなぐでたまご

  • シンバルのさざれなみ立つ街おぼろくま鶉

  • ドアを押しだまされに行く路地朧熊谷温古

  • さそり座と答ふる声の朧めくクラウド坂の上

  • うしろから何かが付いてくる朧倉岡富士子

  • 光のみ掬つてみせる朧浪倉木葉いわう

  • また同じ人が前から来る朧倉木はじめ

  • 単純労働終へて朧の沁むからだ眩む凡

  • 大橋や四国を後にする朧久留里61

  • 旧姓をしるす履歴書朧かな紅さやか

  • 缶コーヒーぷすと呟きたる朧恵勇

  • 地下鉄は地上へ新天地はおぼろけーい〇

  • シマウマ舎曲がるジープや草朧げばげば

  • 朧なほ蛹の翅の透きとほる謙久

  • 廃校の甍の鯱も朧にて紫雲英

  • 朧めく地下から零るバンドゥーラケンG

  • ビッグイシュー掲げ新宿駅おぼろ剣橋こじ

  • 所持金は八円東京の朧小池令香

  • 廃校の門のみ在りて朧なり郷りん

  • 昨日までサーカスありし朧かな剛海

  • 電話ボックス無人に飽きておぼろ公木正

  • セコムかけ午前0時の朧かな紅紫あやめ

  • 朧なる梵鐘に夜はふくらめり幸田柝の音

  • 朧なる車輪の外れた装甲車幸内悦夫

  • 再検と言はれて帰路の朧かな宏楽

  • すいさうをなめるあろわなてふおぼろ古賀

  • 朧おぼろ温き湯舟に乳の張り古烏さや

  • 愛鳥が死んだとメール帰路朧こけぽて丸

  • 豚熱の猪の死にゆく朧の夜小笹いのり

  • 円覚寺の閉門後の朧かな小嶋芦舟

  • 水郷の朧を借りて撮影隊コスモス

  • 沖おぼろ小舟次々生まれ来る木染湧水

  • 黒猫のオリーブの眼よ朧めく小だいふく

  • 島おぼろ江ノ電軋む急カーブ後藤周平

  • 草朧クレーン空に突き立てり後藤三梅

  • B1の出口登れば街朧来冬邦子

  • 朧めくただ一弦をつまびきてこのねこのこ

  • 皇居へと富士の龍脈おぼろの灯このみ杏仁

  • 靴擦れを隠し御堂筋を朧虎八花乙

  • 新しき戒名見入る朧かな小林のりこ

  • 初めての一人暮らしの夜は朧小藤たみよ

  • 金色に溢るる湯元朧めく五郎島金時

  • 眠らない街が朧へ人を吐くGONZA

  • 朧なるりんかく町の掲示板今藤明

  • 星を溶くパドルの入江朧なり斉実篤

  • 朧よりゆらゆら市電やって来るさいたま水夢

  • 朧めく白蝶貝の釦かな彩汀

  • 朧なる森に眠りし牙の夢さいとうすすむ

  • ミサイルの突き立ち眠る野は朧榊昭広

  • 石で傷付けられ朧のボンネットさくさく作物

  • 約束の子の窓開かぬ朧かな咲元無有

  • 朧の灯貼り紙の猫に見つめらる櫻井りこ

  • 薬師寺の怒髪神将おぼろなる桜姫5

  • 朧のみこみつばめかはほりとなる迫久鯨

  • 終電の錆びゆく音や朧めく雑魚寝

  • 声明の地より湧きくる朧かな笹かま

  • 怪我の犬抱きて朧のふくよかに笹野夕

  • 下駄の音のふたつになりて朧かなさとう菓子

  • 酔いさめて窓開くる夜の朧かな佐藤恒治

  • 今生のさいごの尿や草朧佐藤儒艮

  • 鏡面にみづうつすらと家朧佐藤里枝子

  • 金網の大きく捲れ草朧里すみか

  • プロペラの響き征野の朧かなさとマル

  • 悲しみを朧へ溶かす薬です真井とうか

  • おぼろにて満月ゆれる孤独ですさなぎ

  • 朽骨は朧を破るやうに生え錆田水遊

  • 路地裏に盛り塩の店灯の朧さぶり

  • さういえばのあとの沈黙の朧さむしん

  • 頑なな京に朧や迷い猫紗羅ささら

  • 鉄塔の紙細工めく朧かなさるぼぼ@チーム天地夢遥

  • 舞台メイクのまゝ朧を逢ひに行く澤田紫

  • すり減りし靴底跨ぐ朧かな澤田郁子

  • 忘れもの届いてないか星朧沢拓庵

  • 舌に湯葉とろけて朧なる古都よ山海和紀

  • すれ違ふをんな狐に似て朧三月兎

  • 点字触れ指の息づく朧の夜紫瑛

  • 武勇伝延延新宿は朧獅子蕩児

  • 朧なる鬼千匹の影を絶つ信田龍之介

  • くちびるに眠るかたちのある朧篠原雨子

  • 対岸はおぼろ原発要らぬ島篠雪

  • またひとつ人形ふえてゐる朧渋谷晶

  • 犬の無き犬小屋ひとつ朧なりしぼりはf22

  • 朧なり冥王星は今静か島じい子

  • 神庭に鈿女の舞や岩朧島田あんず

  • 鼻唄とすれ違いたる朧かなしまのたび子

  • 朧まだ君を忘れている途中嶋村らぴ

  • 若鳩を父と待ちゐて朧かな清水縞午

  • 一輪が転がる道の朧かな清水 三雲

  • 横町の水かけ不動燭おぼろ清水容子

  • きぬずれに麝香の猛る朧かなじゃすみん

  • 朧へとゆらり外湯の巡り札柊ニ

  • 乙女座のをとこと酒を呑む朧朱河

  • 朧にて吾が無気力を飼ひ慣らすシュリ

  • 朧なり独りラヂオの深夜便じゅんこ

  • 機械油と土の匂ひの朧かな春幸

  • 鈍色の欄干の果て朧かなじょいふるとしちゃん

  • おぼろおぼろ機窓の都市の魚卵めく常幸龍BCAD

  • 連敗に水銀灯の影朧正念亭若知古

  • 朧にてバイクエンジン冷ゆを待つ四郎高綱

  • 青と黄色のトゥクトゥク過る朧かな白プロキオン

  • チャーハンが旨かった町鐘おぼろ白よだか

  • 弁天の琵琶持つ腕の白朧神宮寺チェルシー

  • 匂い来る屋台を視野に朧かな新城典午

  • 古文書は虫の墓地なり朧の夜新濃健

  • 朧かな貨物列車の子守歌森牧亭遊好

  • 空瓶に抜け殻残す朧かな瑞泉

  • 龍の背を撫でて目覚める朧かな水蜜桃

  • 甲板へ海ごと引き上げる朧すいよう

  • 断続の深夜放送朧かな周防子

  • 蝋石の汽車動き出す路地朧すがりとおる

  • 甘樫に着けば朧の神の山杉浦あきけん

  • 湖の天も水面も朧かな杉尾芭蕉

  • 通学路に砂絵売りをり夕朧杉田梅香

  • 浅草の迷子のしるべ鐘朧杉本果ら

  • 神宮の風の朧の一過客杉森大介

  • 雲おぼろ貝の番のゆるみける鈴木由紀子

  • 駒音の止んで朧の日曜日鈴木麗門

  • 踏み痕の鞄をはたく朧かな鈴白菜実

  • 立ち止まり聴く駅ピアノ朧かな清白真冬

  • ストリップ小屋裏口の灯の朧鈴野蒼爽

  • ネオン街とおりゃんせ鳴る朧かな主藤充子

  • アロワナの鱗かぞへて朧かなすりいぴい

  • 口論の男女行き過ぎ朧かな晴好雨独

  • 朧めく遠きに端唄向島青児

  • 蹴轆轤の音鈍くなる朧かなせいしゅう

  • 映画館出でて朧の街外れ勢田清

  • 朧にて歩行者Aとなりにゆく瀬尾白果

  • 早々と暖簾を仕舞う朧かな瀬戸ティーダ

  • 朧とはひかりになまえつけること世良日守

  • 喧嘩して心に染みのある朧千波佳山

  • 夜叉と化す我と向き合う朧かな惣兵衛

  • 看板は残るラーメン屋や朧颯萬

  • 転勤の町は朧で始まりぬそうり

  • 父のつく嘘を数えて朧影曽我真理子

  • レイトショー終わり朧へ帰るなり素空

  • みづを溜めこらへし空の底朧外鴨南菊

  • 朧中昨日の我と歩くなりそまり

  • ゴライアスクレーン軋みをり朧染井つぐみ

  • 星朧ガラス花瓶に湧く気泡空豆魚

  • 自分だけ電車が違ふ朧かなぞんぬ

  • 妹の腕に傷跡谷朧太閤検地郎

  • 地も人も字も科挙の夜の朧めく帝釈鴫

  • 排水の長き濁音朧めく平良嘉列乙

  • ボウモアのグラス飲み干す朧かな高石たく

  • 灯朧の向こうを爆撃めくネオン高尾里甫

  • 水郷の街朧なる手漕ぎ舟 高木音弥

  • 駅朧ディオールの香の左腕高田祥聖

  • 草朧つないでくれない手の行方高嶺遠

  • 浅瀬には流されぬ月風朧高庭銀雅

  • 捨てられた椅子は傾き朧かなたかはし薫風

  • 店朧硝子張りなるパンの棚高橋なつ

  • 亡き友に空似の肩の朧かな高橋ひろみこ

  • 伐採樹伐られし枝を恋ふ朧高橋ままマリン

  • 朧めくKOUBANの灯滲みけり高山佳己

  • 朧なり漱石の緋の長襦袢滝川橋

  • ネオン消えタバコのにおい朧めく卓女

  • 車窓より朧の街は動かざる卓鐘

  • 朧とは五感に浸潤する病卓鐘

  • 知らぬ子に抱きつかれたる朧かな竹内一二

  • 蔵カフェを深き焙煎音朧竹口ゆうこ

  • 三夜目の荷解き始めて朧かな竹八郎

  • 野面積みおぼろの山にもどりゆくたすく

  • 朧めくアクアリウムの指紋かな黄昏文鎮@いつき組広ブロ俳句部

  • 朧の夜窯に火入れの音にぶし糺ノ森柊

  • 賀茂川の流れの彼方灯はおぼろ唯飛唯游

  • 朧掻くネオンテトラの尾鰭かな多々良海月

  • シャンパンの泡立ち昇る朧かな橘萌香

  • あやかしとあそぶちちははにはおぼろダック

  • グラタンくつくつ三丁目は朧立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部

  • 播磨までゆけば朧は晴れますか田面類

  • 鉄線の棘をのみこむ朧かな田中木江

  • 朧にもたまごが光る台所田中善美

  • 黒猫のイゾルデが待つ朧かな谷本真理子

  • 胡粉とき描く夜風や海朧玉木たまね

  • 寄港地の酒と女と朧かなたまのねこ

  • 水はさけ酒はみずめく朧かな玉響雷子

  • 朧なるかつて山城ありし嶺田村利平

  • 洗脳や友の目はこの朧のようダンサーU-KI

  • 離婚式するのとK子。おぼろにて丹波らる

  • 涅色のミシン踏む音の朧かな千歳みち乃

  • 鎌倉の古傷疼く朧かな千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部

  • 靴音を含みてぬるむ朧かな澄心静慮

  • 朧にてずんべらぼうのむこうづら蝶楽

  • 名優の訃報速報星朧長楽健司

  • うたた寝のラジオにジュリー朧かなチョコ沢ブラウニー

  • 朧めくアスベスト残りたる屋根月石幸

  • ドップラー効果の粘る朧かな月岡方円

  • おしゃかさまおぼろいだかれねてらしてつくも果音

  • 一揖のマスクの女朧かな辻内美枝子

  • 朧かな遺骨に残る六文銭辻野 花

  • 一燈に軋む艫綱朧なり対馬清波

  • 若き日の夫の手紙や鐘朧辻陽気姫

  • 歯磨きのみづ生臭き朧かな土屋ひこぼし

  • すれ違ふ籠に五匹の犬おぼろ津々うらら

  • 躾糸抜けて朧に消えにけり綱川羽音

  • こんなにも朧を吐いてさびしい樹ツナ好

  • 朧めく並んですする屋台そば津幡GEE

  • 街朧始祖鳥の影過ぎりたる露草うづら

  • 吊革の握りは緩く朧かな露口全速

  • 朧なりニホンギンコウパリシテン露口全速

  • 本土への橋煌々として朧ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部

  • ビートルの古き音する朧かなツユマメ末っ子10歳@いつき組広ブロ俳句部

  • 野良猫の肥ゆなむ窓の朧めく弦欧淹

  • 鬼瓦麒麟の首の朧なり哲庵

  • 下北のラフロイグの香朧なり哲山(山田哲也)

  • パステルの指に残りて山おぼろてつねこ

  • 墨を磨る手に力なき朧かなてまり

  • ゆつくりとセロの弓引く朧かな寺尾当卯

  • 箱河豚に埋まる感触なる朧でんじゃらすババア

  • 朧ゆくヒールの足音の正しさてんてこ麻衣

  • 我ひとり朧の腹のど真ん中でんでん琴女

  • 絵金の絵の濡れ場と化する朧かな天童光宏

  • たまりゆく青き朧の砂時計天陽ゆう

  • 着流しにおぼろ泳ぐや朔太郎どいつ薔芭

  • 朧なる佐野の渡し場消えて橋

  • 由良川のおぼろ丹後鉄道の灯トウ甘藻

  • 嘘ばかりつく男来る朧かな東京堕天使

  • 虚数iのひかりをゆるす朧あり東戎

  • 水の音は天へとかへる谷朧とかき星

  • 城朧夜叉追い払ふ遠太鼓ときめき人

  • 朧ごと抱へて眠るショベルカー常磐はぜ

  • 綿菓子の噛めない甘さ朧かな徳庵

  • 間違へし宛名の手紙着く朧独星

  • 朧なる高架に浮かぶ追尾灯 Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部

  • おみくじのやはき結び目朧かなどくだみ茶

  • 朧なる泉鏡花の旧居跡毒林檎

  • 9系統朧なる舟形の邑としなり

  • 朧より九連敗のファンゆらと戸部紅屑

  • 山寺の人魚の鱗朧かなとまや

  • 鬼の子のひたひたと朧の夜は斗三木童

  • 見つからぬ迎えの車朧濃し友@雪割豆

  • 積み上げし砂上の城の朧かな登盛満

  • 和紙染に滲みの走るおぼろかな富山の露玉

  • 東大に行けばなんとかなる朧鳥田政宗

  • 天井の木目たれ下がりし朧とんぶりっこ

  • 古戦場の碑に遊女の名鐘おぼろとんぼ

  • をさな子の指の爪透く朧かな内藤羊皐

  • 街おぼろ海に沈んだ文明みたい

  • 覗くなと言はれて覗く朧かななおじい

  • 朧から抜け出したのにまだおぼろなかかな

  • コントラバス朧の底を震はせて中岡秀次

  • 眉尻を少し付け足す朧かな中島圭子

  • 海鳥や朧の波の柔らかさ中原柊ニ

  • 今泣けば負け犬になる書の朧中平保志

  • 手放した愛車出ていくP朧なかむら凧人

  • 朧ってアフリカゾウのせいらしい新蕎麦句会・凪太

  • 手に慣れし指輪抜きけり街おぼろ凪ゆみこ

  • 生臭き夜を朧に包みをりなしむらなし

  • 山手線ひと駅増えて朧の夜那須のお漬物

  • 「六本木心中」くちずさむ朧夏草はむ

  • 船頭の語りも岩も朧かな夏湖乃

  • ストレッチャーにぬいぐるみをり朧夏雨ちや

  • 上澄みは秘色 朧の鬱の羽化七瀬ゆきこ

  • ため息の滴り落ちる朧かな七森わらび

  • 海おぼろ満天荘はジャズに酔い菜々の花畑

  • 餡子めくにほひは朧なる家よ⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部

  • エルビスのバラードに目を閉づ朧名計宗幸

  • とりあえず会釈しておく朧かな名前のあるネコ

  • 二杯目もシャンパン朧めくタワー奈良素数

  • 家々に夜咲く花のある朧西川由野

  • 友の死をうかと忘るる朧かな西爽子

  • 母似なり朧の夜の骨と皮西田月旦

  • 隣家より赤子泣く声朧かな西村小市

  • まろやかな湯を手に掬ふ朧かな西村棗

  • 節電の要請ワンルーム朧二重格子

  • 朧とは帰らぬ犬を想ふうた新田ダミアナ

  • 母残し振り返る子の影朧二和田躬江

  • 包帯を焚くや朧の生臭し仁和田永

  • 明日は雨か藻岩山は朧なり庭野環石

  • 針飲みし魚と海と吾と朧鵺之疾秋

  • 夕星を湿す朧の比叡かな暖井むゆき

  • 懐中電灯私を探し朧を来沼沢さとみ

  • 海朧藍に載せたる緋の絵の具根々雅水

  • 担任が入れ墨を彫る朧かな涅槃girl

  • 倍音を自在に聴きたき朧なり野井みこ

  • 朧なる弓へ松脂ぬりにけり濃厚エッグタルト

  • 銀釵はおぼろ胡弓の釉野口雅也

  • ほろ酔いの甘き足取りめく朧野地垂木

  • 朧とは特攻兵の弾く月光ノセミコ

  • 朧なるオスプレイこの低周波野点さわ

  • 螺鈿細工傾けて見る朧かな野ばら

  • 弧なる灯も朧となるや諏訪の宿則本久江

  • 日雇いとつゆ知らず朧の山房稗島塗小太郎

  • 国生みの島はおぼろに岩屋港白庵

  • 足つりて目覚む朧の町静か 白雨

  • おぼろおぼろ避難する民次々とパクパクポンタ

  • 朧とは哀しきたましひの揮発はぐれ杤餅

  • 海朧月の道消へはぐれし子橋本恵久子

  • 藤沢の短編に泣く朧の夜馬笑

  • 雲呑のつるり墜落して朧長谷川水素

  • おぼろおぼろおんぼろの舟もやひたる長谷機械児

  • 所在無げな電信柱朧かな畑 詩音

  • 一人呑む六畳がらん鐘朧葉月けゐ

  • 母指球の脈打ち続く朧の夜パッキンマン

  • サポーターの声の轟く朧かなはっしー

  • どこからか獏の匂いがして朧八田昌代

  • 朧かな叫びたくなる三丁目花内淳開

  • 寝袋に潜りて見上ぐ岩朧花弘

  • 生水は夜汽車の匂ひ朧めく花咲明日香

  • 日の丸を降ろす喇叭や海朧はなぶさあきら

  • おぼろめく手書きの地図の拙さよ花和音

  • 鳥葬や朧に蹲る背中はのん

  • 探しをり厚き朧の結び目を葉村直

  • 辻朧マネキン見れば見返さる林山千港

  • 光る眼のあの猫百歳朧の夜原水仙

  • 朧なる中華の街の二胡の音原田民久

  • 羊水の匂ひにも似て朧かな巴里乃嬬

  • 白峰をだいだらぼうにして朧播磨陽子

  • 朧めく棚田だんだん迫る死期晴田そわか

  • 帰り道酔わず迷わずただ朧晴菜ひろ

  • 部品待つからっぽの棚朧かな葉るみ

  • 耳塚や朧のなかの薄明りはれまふよう

  • 朧なる戦場無辜の骸かなHNKAGA

  • 不機嫌な背なか朧の庭に立つ東の山

  • 休職を母に告げたる夜の朧東原桜空

  • 波音を運ぶ大島朧なり東山たかこ

  • 浮橋はゆらり朧をたたら踏む樋口滑瓢

  • 月隠れ朧朧と山が寄る菱田芋天

  • 反戦のキリル文字見え街朧美竹花蘭

  • 全島沈黙地平ハ朧ナリひでやん

  • 寂しさの喉に溜まつてゆく朧日向こるり

  • 仄甘き十円切手朧かなひなた和佳

  • 遺書を書くためのペン先朧かな緋乃捨楽

  • 分子へと還る朧を吸ひ込んで比々き

  • 海朧輸送檻で死すキリンの子ひまわりちゃんRIP

  • 樹木葬で良しと決めたり朧の夜氷室茉胡

  • こぐま座の大きく見えて朧かな姫川ひすい

  • 朧なり引き込み線の踏切音日吉とみ菜

  • 孵卵器の孵らぬ卵朧かな比良田トルコ石

  • 理科室の孵卵器昏き朧かな平本魚水

  • 水掻きの跡の疼いてゐる朧広木登一

  • 朧より龍の鼾のやうな風広瀬康

  • 仏間なる表彰状の朧かな弘友於泥

  • 縄文の民現はれん朧影風慈音

  • ほろ酔うて泪ほろほろほろ朧深町明

  • 鮮血のくすむ速さの朧かな深谷健

  • 補助線を引くも朧の初等幾何福川敏機

  • 谷朧赴任地行きの夜行バスふくじん

  • 立入禁止の立て看朽ち朧福ネコ

  • 朧なり登った先の剣が峰福弓

  • サファリカー囲む朧の気配たち福良ちどり

  • 裏切った理由など無い朧かなふくろう悠々

  • 廃校のカーテン揺れて草朧房代ちゃん@いつき組広ブロ俳句部

  • 膝を抱く少女まあるい影朧藤井眞魚

  • 大金の財布を拾ふ朧かな藤色葉菜

  • 朧の夜嘘発見機があればな藤倉密子

  • 草朧マザーグースに数え唄ふじこ

  • 朧には隠したいものがあるのさ藤咲大地

  • すれ違ふひとに尾を見し草朧藤田康子

  • ビル朧アヤの面接ピンヒール藤田ゆきまち

  • 銀河めく空はおぼろに歪みをり藤田流歌八歳

  • 母逝きて猫の爪切る朧かな藤原涼

  • 朧なる星影ヒトゲノム機関藤雪陽

  • 朧なる廃墟や戦争反対藤原訓子

  • 朧には硝子と氷と琥珀だけ船橋こまこ

  • 身に籠る梵鐘の音朧の夜赴美榮

  • 膀胱のしくしく痛む朧かな文月さな女

  • 逆鱗はちょうど朧の眼のあたり冬のおこじょ

  • 海朧見えざる者と手を繋ぐ冬野とも

  • 潮溜まり饐えて朧の臭ひだす古瀬まさあき

  • 夜や朧ボトルキープに亡師の名ふるてい

  • 風琴の朧なる丘より聞こゆ碧西里

  • 塗り重ね削る油絵朧かなペトロア

  • 月丸く我に優しき朧かな鳳凰美蓮

  • 東山魁夷一本道と言う朧墨純

  • 鐘朧あづまやあまき数え唄ほこ

  • 彫物のあるてふ背中追ふ朧干しのいも子

  • たましひのお散歩ゆらり朧ゆく星乃ぽっち

  • 転職前夜コンビニを出て朧ほしの有紀

  • 草朧目隠し鬼の鬼は嫌細野めろん

  • 鱗粉のふわりふぅわりと朧ポップアップ

  • 朧なる土嚢の口の開きたる堀川彗直

  • 魚の臓どるんと吐き出され朧ほろろ。

  • 元妻の墓参朧を子と歩く凡々

  • 朧なる多言語の街またあした梵庸子

  • うすにごり杯をあふるる朧かな凡狸子

  • 籠り居の溺れさうなる朧かな前田冬水

  • 天気痛頭痛耳痛鐘朧茉叶

  • 投函の響きは鈍し町朧まがりしっぽ

  • もう会はぬ人とタクシにゐて朧牧野冴

  • ホモサピエンスの星は朧に浮かびをり牧野敏信

  • 四期目の選挙ポスター朧かなまこ@いつき組広ブロ俳句部

  • オルゴール巻けば朧や森のおとまこちふる

  • 月曜のタワークレーン朧かな正岡丹ん

  • 運ばるる粥を啜りて朧なりまちる

  • 烏の国に轍新し人おぼろ松井酔呆

  • 戦火去ぬ朧々や地下の壕松尾祇敲

  • 生き死にの扉数へて鐘朧まつたいら西

  • さなずらは薄紫の朧かな松高網代

  • 人工の骨よ朧の熱帯びてまどん

  • 朧かな歌ふ子小さき鳥に見ゆまめばと

  • 四つ辻の野犬の群れや草朧丸山隆子

  • 赤鬼の泣きて朧の満つるらしまんぷく

  • 薔薇窓にミサの残響星おぼろみい

  • 野良猫の髭に触れたる朧かな三浦金物店

  • ばば様の口承囲む谷朧三浦にゃじろう

  • ひとりきり酔うて朧のすべり台帝菜

  • イヤリングはづし素数の朧かな三茶F

  • 砲弾の穴より見ゆる世は朧三島瀬波

  • 吾子泣きてまた乳をやる朧かな水池葉蘭

  • 朧より遮断機の音あらわれりみちむらまりな

  • 朧めく臨時警備のこぶたカフェみづちみわ

  • 子を可愛いと思えない朧かな光峯霏々

  • へたくそな口笛の来る朧かなみつれしづく

  • おぼろおぼろ猫の名前が決まらない水上ルイボス茶

  • 石段を登る朧の中にいる水無月葉子

  • 校庭に人影朧バット振る湊かずゆき

  • 椰子蟹がタイヤを登る朧かな南風の記憶

  • 朧道吸はれる車列吐く車列みなみはな

  • 写経する朧の墨のみづみづし宮井そら

  • みづのなかのごとバス来る朧の夜三宅雅子

  • もたれかかる肩の無き朧のベンチ宮坂暢介

  • 穴といふ穴へ朧の沁みゆける宮武濱女

  • 砲弾の穴あまたなる朧かな宮部里美

  • おなかにはおなかを蹴る子朧めくみやま千樹

  • 朧なる竹林ぬけて能楽堂宮村寿摩子

  • 寝静まる朧の底や終電車宮村土々

  • 朧道ここは銀座の八丁目みわ吉

  • 乳吸うてまどろむ吾子や朧なり夢雨似夜

  • 東京はおぼろ言葉がしおからい麦のパパ

  • まなこ差す影青々と朧かな麦畠案山子

  • 一拍の長き弔辞やみな朧椋本望生

  • ゼラチンのような微睡み朧かな無弦奏

  • 船底に黒潮ひびく朧かな向原かは

  • 岩礁の波音ほどけゆく朧武者小路敬妙洒脱篤

  • 傷口を朧に癒す野良の猫睦月くらげ

  • 朧なる事故原発の建屋かな無門

  • 肺臓へはこぶ朧のひとすくい村上牛蒡

  • ドアノブ冷たし朧艶めかし紫小寿々

  • 本日の朧は空を洗ふため村瀬っち

  • 朧の夜街の輪郭重々しむらのたんぽぽ

  • 朧かな閉めて久しき歯科医院目黒千代恵

  • 旅の宿目覚め朧の花街へ茂木りん

  • 革靴の硬さに慣れし朧かなモコ

  • 朧の灯かしこで終える長手紙桃香

  • 朧めく土間すんと鳴る猫の鼻桃花@いつき組俳句迷子の会

  • 月と龍まぐわつてゐる朧かな百瀬一兎

  • 海おぼろチャペルゆつくり海を打つ百瀬はな

  • 始発待つ街の空白朧めく桃園ユキチ

  • 裏木戸の鍵をかけずにおく朧ももたもも

  • 縄のれん出て犬なつく朧かな森佳月

  • くちびるでさぐるくちびる朧めく森日美香

  • 朧なる腐海の果てにある冀望杜まお実

  • 朧めくスカイツリーは膨張す森 毬子

  • 草朧古墳に眠る渡来人森佳三

  • 引継を引継いでいる朧かなもりさわ

  • 門限をとがむる人もなく朧森田祥子

  • 答え探して朧の古書店街森中ことり

  • 銭湯の戸のきゅるきゅると朧かな森野しじま

  • 外灯にイノシシよけの柵朧森の水車

  • 風呂の窓開けて甘やか庭朧森山博士

  • 川暮れて魚汁喰わばまた朧もろ智行

  • もう戻ろう神隠しめくこの朧痩女

  • 富士おぼろ酸素の管の車椅子柳川耀一郎

  • ドラマーの代役探す朧かな簗瀬玲子

  • 学校へは行かぬと決めた夜や朧矢橋

  • 文字小さき手術同意書家朧八幡風花

  • 跳開のせぬ跳ね橋の朧かなヤヒロ

  • 灯台の灯は朧なる海を撫で山内彩月

  • 朧なる島へと舟は恋揺らし山口 絢子

  • 森朧低く漏れくる子守唄山口一青

  • 朧なる雲吊尾根を乗り越えし山口香子

  • 街朧もう転職の話かな山崎砂絵

  • 風見鶏の真珠色めく朧かなやまさきゆみ

  • 草の香にそぞろ歩きのおぼろかな山育ち

  • 湯に浸るやうな息して草朧山田蹴人

  • 朧軋むや誘導棒の老躯山田蚯蚓

  • をんなやもめはつちやけてゐる朧かな山本先生

  • カーナビに導かれてや海朧唯果

  • 番台へおやすみといひ朧へと柚木みゆき

  • 真夜中のカーブミラーも朧なり有野 安津

  • 運命線さがす占ひ辻おぼろ宥光

  • 停電の何も無き夜庭朧床寝虫

  • 朧めく坂の誘拐未遂かなユ綺

  • ハイウェイを誰か歩いてゐる朧雪井苑生

  • 星朧ほわり点きたる真空管雪音

  • 伊予灘の汽笛耳鳴りめき朧ゆすらご

  • 聞こえくる岸のオカリナ朧かな宙美

  • 豆腐屋の隣の更地朧なりゆりのゆき

  • 開けっ放しのカーテン重くする朧宵猫

  • 裸婦像に孔ひとつ無き朧かな八日きりん

  • 朧おぼろ妣の髪なる針山よ羊似妃

  • 上京せし子の標本のてふ朧夜香

  • 詩に満たぬもののけはひのして朧横縞

  • 煮炊きする夫のつぶやく朧かな横田信一

  • 散乱する肉片一つ一つ朧横浜J子

  • 灯がともる街に芸妓の朧かな横山子守熊

  • 朧なりデシリットルといふ単位横山雑煮

  • 朧へと歩きて長針ずれてゐる吉川拓真

  • 山の吐く匂ひ沈もる朧かな吉武茂る

  • この街も去る夜となれば朧なりよした山月

  • 荷造りのガムテープとぎれておぼろ吉行直人

  • 海朧失くしたものが苦くてね夜紫遠

  • 都電待つ面影橋の朧かなラーラ・K

  • オンボロ朧ボロボロ吐瀉物羅蒐

  • 草おぼろ龍の眼玉はてのひら大RUSTY=HISOKA

  • 夜行バスシートへ沈む朧かな楽花生

  • 筆止むる履歴書窓の朧かな蓮花麻耶

  • ショベルカー朧をつかみ取ってゆく若宮直美

  • 新月の薫りしたたる朧かなわたなべすずしろ

  • 愛児抱きロシア民話を読む朧笑笑うさぎ

佳作
  • 渡月橋朧となりぬ舟一つ愛華沙羅

  • 浅草寺矢切の渡し鐘朧空木眠兎

  • 浮御堂おぼろに浮かぶ鳰の海洒落神戸

  • 寄席帰りの不忍池朧かな沙那夏

  • 寄席はねてスカイツリーの朧かな季々諧々

  • 遠吠えを呪文と怯ゆ朧かな砂楽梨

  • 終着のかたちは無限おぼろなり蛙里

  • 螺子巻の柱時計の奥朧アンサトウ

  • 君ともす窓は灯台おぼろかな郁松松ちゃん

  • 朧なりきみかこむわにとほきわれ靫草子

  • 草朧一匹だけ吠えてる向き右快晴ノセカイ

  • 亡き父と晩酌したい朧かなきみえは公栄

  • 水占の貴船は朧「好き」京野秋水

  • 球審の判定響く朧かな清永ゆうこ

  • 人見知りの幼子に引かれ朧銀髪作務衣

  • 友の手に盗品見たる朧かなくぅ

  • 墨薄め朧の空なり生温い楠美翠

  • 時告げる振り子時計や庭朧國吉敦子

  • 朧かな二人でくぐる赤暖簾桂月

  • 喜びも憂も溶かす朧かな柑たちばな

  • もの想う睫毛重たし朧かな幸織奈

  • 吾一人リンチされし日朧かな古賀ちん

  • 山朧慣れぬ介護の車椅子小杉泰文

  • 朧なりガリ版の字の曲がり癖小山秀行

  • 雄叫びも遠く朧に一夜城西條晶夫

  • 幾島の流れの中で朧漕ぐ埼玉の巫女

  • 青と黄の灯りそびえる山朧宰夏海

  • 最寄り駅けつこう歩く草朧さ乙女龍千よ

  • 庭朧あそびつかれて眠る象齋藤杏子

  • 朧にて眠剤飲まず彷徨えり坂上一秀

  • 沼蝦の天衣脱ぎ垂る朧かな桜よし榮

  • 「正解」は前進なのかしら朧澤野敏樹

  • 朧にて苗字のゆゑんたどりけり品川笙女

  • 鳥の声朧に聞けば鬨の声写俳亭みの

  • 白白しいババアめ朧オレハボロ鈴ノ樹

  • 朧めく喘鳴軽く薄荷飴染野まさこ

  • 征く人の背に夫観る朧かな田上コウ

  • 君待つや朧めく工場街を疾り抜けただ地蔵

  • 朧の夜おどけピエロは去って行き谷相

  • 再開のドイツ語講座朧かな道見律子

  • 七回忌布施だけ送る朧かな遠峰熊野

  • 温泉への移住計画練る朧独星

  • 朧なる雲や川面に蘇るどこにでもいる田中

  • 「ただいま」と隣人の来る朧かな内藤未来仁

  • 戒名の夫に懺悔の朧かな中瀬すみっこ

  • 廃神社草木を纏い朧なり名草

  • 朧めく七十刷の「絵のない絵本」夏風かをる

  • こめかみの疼く会食朧かな夏雲ブン太

  • 朧から邪気を吸うてか四十肩ノアノア

  • 調律を頼みしピアノ朧なりはくたい

  • 秒針に追いつかぬ日々朧かなはごろも856

  • 朧めく病床に浮かぶ濡れ枕長谷島 弘安

  • 去る君の熱と輪郭朧かな畠山悊央

  • くつ洗う泥遊び後の朧かな花はな

  • 珈琲の美味さ解らぬ吾子朧ぱぷりかまめ

  • 朧なるメリケン波止場の長き足浜友輔

  • 白舟のくゆる朧に羽を震わす針子乃音古

  • 愚痴を吐く四十路女を朧かな万里の森

  • 定年の家路につづく朧かな樋口ひろみ

  • 片方のピアス失い朧かな昼寝

  • 上り坂今日もふたりよ朧なり蛭本喜久枝

  • 板前の煙草休憩朧かな広島立葵

  • 同窓会朧の先の待ち合わせひろ夢

  • 月の王皮膚に交わり朧かな深川佳子

  • この街の涙集むる朧かなぶちのハチワレ

  • 黄金舞う鎮守の森や野狐朧不洋

  • 寝ずの番車座包む朧かな北欧小町

  • 不眠の子と深夜卓球朧かな星月さやか

  • お疲れとズームはぷつり朧なり星善之

  • すれ違ひしは仇ならんか朧堀隼人

  • ささやきの会話途切れて朧かなまつとしきかわ

  • リモートの師の声遠い朧かな松原隆雄

  • 星ひとつ記憶の欠片朧かなまやみこ恭

  • 琴の音のほろり俯く朧かな円豆蚕丸

  • 朧は鬱高みに行かず心に這う水乃江辰

  • 食べて吐き「バカみたい」泣く朧かな巳智みちる

  • お試しの彼氏女々しくなる朧港のパン屋

  • 糸切れし操りのごと朧なり美村羽奏

  • 妣使う箪笥残れる家朧みやかわけい子

  • もう一つ塾弁作り朧かな雅乃珠晃

  • 口喧嘩矢切のわたしは朧にて

  • 朧より妣の現るる気配かな未来に詩編む

  • トネリコのテニスラケット草朧ミラベル

  • つなぐ手はおとぎ話や庭朧むねあかどり

  • 灯朧や母のバイタル戻る夜半無恙庵閑酉

  • 背伸びして手を振る人や草朧紫草

  • 漉き込みの花の恋文おぼろかなメレンゲたこ焼き

  • 朧めく外灯側の千切り哉本村なつみ

  • 柵越しの朧の麒麟涙ぐむmomo

  • 介護終え朧纏うて帰る路森翠

  • 銀輪の目映く過ぎる朧かな八重葉

  • コンビニにお握り並べ町朧矢口知

  • 友逝て朧に暮れるとことはに山口雀昭

  • 谷朧第六感の鋭利なりめの常盤

  • 朧めく屋根のぼる猫空咥え吉岡幸一

  • 齧られし輪郭の街朧かなよし季

  • 叱責のzoomを閉じて庭朧吉田郁

  • アルプスの山の端重なる朧かな吉田びふう

  • 危篤なる母へと急ぐ谷朧余田酒梨

  • 母初日泣く吾子ゆする朧かなよよ

  • せせらぎを遠くに聴いて朧かなリコピン

  • ぽやぽやみなみピラカンサスのとげ朧龍桔花

  • 秒針に脈どくどくと家朧流流

  • 風人の凝視している朧かな鈴音

  • 歯の隙間あまくくすぐる朧かなるんやみ

  • 犬任せ行くの戻るの草朧麗詩

  • 毒呑めば迎えてくれる朧かな烈稚詠

  • 城崎の夜店朧や焼き団子紫雲英田

  • 朧めく塔婆の文字もにじみけり煉獄佐保子

  • 路地に入る「痴漢注意」の朧かな和光

  • 白湯の味窓辺で探す朧かなわたなべいびぃ

  • 秘密めく朧となりぬ水路閣渡邉竹庵

  • 窓に母似の顔映る朧かな渡邉わかな

  • 地球儀を抱え朧を迷いけり和山しなもん

  • 過ぎし日の朧のなかの片思ひあ・うん

  • 朧かな母の餃子のたたみ方蒼空蒼子

  • 朧めくパネルを貼りし山は死ぬ赤松鴨

  • 朧めく月の在り所に思ひ入る秋吉孝治

  • 嵯峨志なる道は朧に山に入る芥川春骨

  • 乳飲み子の泣訴朧なる秒針朝霧七海

  • 亡き母のラヂオネームを朧かな朝倉カグラ

  • 抜足と差足交差する朧あさのとびら

  • 深夜2時朧な闇を笑んだピエロアシツノカラ

  • 朧の向こうに微かなれど軍靴飛鳥井薫

  • リュウグウノツカイゆるりと宙おぼろat花結い

  • 琵琶法師の語る「芳一」朧めく渥美こぶこ

  • 言いそびれ残り香消える朧かな数多

  • 知る人も知らぬ顔する朧かな数多未完

  • 白粉の残り香ほのか朧かな雨戸ゆらら

  • 落人の里はもうすぐ朧道あらかわすすむ

  • 一万歩おぼろの中の力み抜け阿波オードリー

  • 鯉龍へかはり昇天谷朧安春

  • 朧に包まれジェイソンが来る金曜日粋庵仁空

  • 瓜売りの早口言葉を噛む朧いくたドロップ

  • 振りむきて姿たしかむ朧かな池内ねこバアバ

  • 朧めくべとべとさんに譲る道石上あまね

  • 空床の音赤色灯の朧市川隆一

  • 今日の野の写真見返す朧かな井中ひよこ号

  • 朧なか癖ある歩み老いて妻稲葉雀子

  • 釈迦の掌に乗り居るがごと朧かなゐのかたゆきを

  • 朧めく往来妣に似たる人うからうから

  • 草原の朧や象の糞の湯気宇田建

  • 酌み交わす父子本音の朧かな越後縮緬

  • 五次会へ二人朧を蹌踉と大黒とむとむ

  • 喪帰りのひそひそばなし朧かな大庭慈温

  • 路面店唐揚げばかり朧なり大谷一鶴

  • 反戦の声もあげ得ぬ谷朧岡井風紋

  • かわたれに鐘の音溶ける朧かな岡崎俊子

  • 海老天の衣くづれてゆく朧沖原イヲ

  • 朧にて夫の寝言を反芻すおぐら徳

  • 鏡には老けた女がああ朧おざきさちよ

  • 朧なりそろりそろりと野良なつくおさだ澄恵

  • 自転車からり裾ぴりり鐘朧尾頭朔江ヱゐチ

  • 店朧ずっと勧誘されているオペラ座の俳人

  • 中華屋の点訳メニュー朧めく海音寺ジョー

  • ぼそと経読む母の声朧かなかいぐりかいぐり

  • 朧なり空家の窓から人形の目海堂一花

  • 片寄りの脱水エラー音おぼろ灰頭徨鴉

  • 詰め物のぼろつと取れし歯や朧風花まゆみ

  • 朧なる気のよこたはる山の裾風花美絵

  • 朧めき月に龍神昇る夜花純

  • 飲み飽きて氏神社に棲む朧風早杏

  • 六畳に五兄弟寝る朧かな片岡六子

  • 草朧顔無き人とすれ違ふ花伝

  • 薄墨のかなの連綿朧かなかぬまっこ@木ノ芽

  • 龍笛へ牛若丸の呼気朧かねつき走流

  • 鐘朧怒るでしかしとラジオから亀田かつおぶし

  • 黒髪の誉れでありし朧なり亀の

  • 朧なり塗り絵食み出す赤明か唐草もみじ

  • 朧めく限界団地の静けさカワウソヘイヤ

  • トリは夢八心斎橋朧めく閑々鶏

  • 潮の香の熟るるピアスの穴朧喜祝音

  • 立ち漕ぎの娘の帰り待つ朧かな季切少楽@いつき組広ブロ俳句部

  • 浜朧踏切の音の橋袂北村崇雄

  • 喉仏鎮座まします骨朧キッカワテツヤ

  • 生きものの夜の涙を朧とも木寺仙游

  • 脱衣場のタオルごわごわ朧かなきなこもち

  • 蝋人形歩み寄れずに朧なり木根川橋デイジー

  • カド見えぬ朧の中を白く在り321ちいに

  • 吾は三十七兆の粒朧めく藍色の時間

  • 夫を捨て君と行く道朧かな藍雅凛

  • 馴染まぬ新しい靴駅も朧相沢薫

  • いいねするだけ中指の朧かな青居 舞

  • 涙ぐむ景色朧と思い込む青橘花

  • ポチと居るうす暗闇の朧かな大竹八重子

  • 生真面目の人より返信の朧青に桃々

  • 中陰の君訪ね来る朧の夜あおのめ

  • おしやべりの夫のゐるけふ朧なり赤尾双葉

  • 尺八の朧に漂う音色かな赤子沢赤子

  • はらはらと涙のぬか床の朧明惟久里

  • 今日は富士と丹沢朧に見え聰子

  • 里想う朧に溶けゆく月と雲秋田白熊

  • キリストの救いを求め朧かな昭谷

  • 話さずに対向車を数え朧彰乃泉

  • 咲けば散る生ずれば逝かん朧かな秋野香

  • おぼろ月すれ違う人みな朧秋山一男

  • 朧なる野道歩けば黄花みゆ秋代

  • 次のバス気がかりに待つ朧かな芥茶古美

  • 迷い犬朧の町に溶ける聲あさいみどり

  • 列をなす朧震える月の夜浅井誠章

  • わが齢検索している朧かなあさいふみよ

  • 打刻して朧をひとつ深呼吸朝雲列

  • 遠近を走る男の腕朧朝方静流

  • メモ紙のガールズトーク朧かな淺野俊也

  • 達成感朧の中にとけていく亜紗舞那

  • 朧庭これが二杯目濁酒あすなろの邦

  • 波の糸素足にからむ朧かなあすなろの幸

  • 長髪を輪ゴムで結ぶ朧かな麻生ツナ子

  • 朧行く電車に爺の標準語新子熊耳

  • 覗き込む形見のカメラ星朧akkotas

  • 草朧鳥ホバリングす夢現つsakura a.

  • 遠き国の戦況を聴く夜朧天川滴翠

  • 行き違ふシャネルの香り朧なり天野幸子

  • 5ページで栞挟めば朧かなアマリリスと夢

  • 遮断機の束ねる人の影朧雨霧彦@木ノ芽

  • 朧めくライトアップのスカイツリー雨李

  • カーテンを閉める音まで朧めく荒木俊充

  • 忘却の彼方の母へ鐘朧荒木豊

  • 故里にあの君の亡し朧かな有本俊雄

  • 日が沈み朧泣きしやあわあわと在在空空

  • ものものしデモの気配去り朧飯田淳子

  • ことことと暗き厨の朧かないくみっ句

  • キーウかな国後の灯のなほ朧粋田化石

  • カイゲンの包みに字足らずの朧池内ときこ

  • ひもといてほどける謎のなおおぼろ池田悦子

  • 眼鏡とり世は朧むべ五芒星池田華族

  • 君の声朧に溶けし逢瀬時池ノ村路

  • ゲーム漬け三日徹夜の朧かな石岡女依

  • 退勤のスラブの人の背の朧石垣エリザ

  • 見覚えばかり角なき家の朧石川あ世楽

  • 草朧ゴールを逸れていくシュート石川巴里

  • 朧かな四方の山並み遠のけり石倉啓子

  • 遠吠えに合いの手ニヤリ朧かな石の上にもケロリン

  • 谷朧団地の灯にじむ名画かな石原直子

  • 朧なり銀河に浮かぶ青き星石間毅史

  • 晴れの日の母の手握る朧かな泉恵風

  • 路地よぎる素早きものに朧かな和泉攷

  • 鶏舎をもふんわり隠す朧かないその松茸

  • トイプーの毛玉切り取る朧かな磯むつみ

  • 引く波に砂サラサラと海朧市川りす

  • 介護する君にうなづく草朧いちご一会

  • 孫待つ身箱に終いし朧かないづる葉

  • 緑道に五位鷺一羽夜の朧伊藤節子

  • 訣別は微笑へとけておぼろ橋伊藤治美

  • ハイボール檸檬の混じりゆく朧伊藤柚良

  • 押入れの手紙の束やおぼろなる伊藤れいこ

  • 他人事にしたい現実湧く朧イトートア

  • ネオンの灯畳紙の結び朧なる伊ナイトあさか

  • LED消して飛び石とぶ朧稲葉 こいち

  • 形無く遠く近くに波おぼろ伊縫音々

  • 露天風呂人の姿のおぼろなり井上幸子

  • 朧に吸い込む一合角打伊吹はたき

  • 木の芽みな寝静まりたる朧かな今井淑子

  • 亡き人の笑顔を見たる朧かな井松慈悦

  • 戦闘機朧の時も飛んで行く今西知巳

  • 天空の竹田城跡朧なり入江幸子

  • 靴ずれに絆創膏貼る朧かな彩人色

  • 岩木山歩み寄りたる夕朧岩清水 彩香

  • パレットにたつぷりブルー朧なり岩橋春海

  • ライトアップ月が遠くに朧げvivi

  • 朧なる鬼籍のはらから思う夜植田かず子

  • 湯けむりの溢るる街並みの朧上原淳子

  • 寄合でケンカ朧の田舎道うさぎと

  • 戦国風クルーズ船や川朧宇佐美好子

  • 喚鐘や父命日の朧かなうた歌妙

  • 朧道子の身案じる母も一人宇田の月兎

  • PC閉じ眼鏡むしりとり朧うつぎゆこ

  • 重奏の汽笛の響き海朧海口竿富

  • 金賞は旅のはじめの海朧海葡萄

  • 朧めくジャケットの袖ふれさうな梅井さきこ

  • ピカソの絵吾は分からぬ朧かな梅尾幸雪

  • 月レモンポタンポタンと朧のもと梅原宏茂

  • 朧とは十代の子ら夜回りす浦文乃

  • 終電車眠りの街はおぼろかな麗し

  • 傘寿夫病妻抱え朧かなS葉子

  • 遅々として済まぬ荷ほどき庭おぼろ蝦夷野ごうがしゃ

  • 夕朧時をかけそな通学路江藤真治

  • 甘噛みか亡き猫とふぁふぁ朧にて榎風子

  • 靴歪みあてなく歩く日の朧戎居多佳子

  • 空見上げほんわか気分これ朧えみばば

  • 靴音も影も朧に消えにけりM・李子

  • 横顔の虚言やさし朧かなえりいも

  • 通夜の帰途一人になるは朧なりえんかず

  • 朧なり三回違ふパスワード遠藤一治

  • 北の果ての朧に君と会ふてより遠藤千草

  • 二十歳なり朧にそびえるスカイツリー遠藤波留

  • 窓の先朧が忍び泣いたよな遠藤百合

  • ホームランならず朧に塞がれて遠藤玲奈

  • ベランダの一服スカイツリー朧大泉まる丸

  • 目惚る都市今色褪せて朧かな大江戸小紋

  • ほろ酔ひて店を出づれば朧かな大谷如水

  • 灯朧アデニウムの胴切りす大野静香

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  • 珈琲の湯気を吸い込む朧かな大原雪

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  • 参道の小石にともる朧の灯岡田恵美子

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  • 残業の帰途の信号朧かな奥の昼行燈

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  • 青と黄の国旗色まとうタワー朧お品まり

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  • サーファーの減りし房総海朧諧真無子

  • 孫の手のぬくもりあぜ道は朧案山子@いつき組広ブロ俳句部

  • 待ちぼうけ川面の月も朧なり梶浦和子

  • 喜寿と古希かわすグラスの朧かな鹿嶌純子

  • 痛み止め眠けを誘ふ朧かなかじまとしこ

  • 朧なる虐待独裁者を責む柏原淑子

  • 沖を行く船や朧を切り裂いて交久瀬小夜時雨

  • バンドゥーラ音色の哀し海朧花鳥風猫

  • 向こう岸架かる大橋朧かな勝瀬啓衛門

  • 徒長せるパセリの花や庭朧克巳@夜のサングラス

  • 蛇の目傘庵吸い込まるあか朧桂葉子

  • 見上げて微笑む朧の中で加藤智子

  • 街の灯が朧と消えゆ夢に酔ふ加藤雄三

  • 改札に泥眼立ちぬ朧かなかなえの

  • チョコミントアイスを齧る朧かな仮名鶫

  • 朧なる門灯見えし我が家かな金子あや女

  • 朧めく初心者マーク夜のみち兼子さとみ

  • 庭朧うつつもおぼろ更けてゆく金子真美

  • 運命の裏木戸おぼろクリスティかぼちゃん

  • 朧めくピンクムーンとシャンパンと釜眞手打ち蕎麦

  • あえかなる細道一本草朧神谷米子

  • おぼろめく生ある限り水のように亀井汀風

  • 酔ひ醒ます朧は風も微かなり亀田稇

  • 芝居はね温き夕空朧めくかめよかめ

  • 彼の頬少し湿りたる朧かな加裕子

  • 朧雲明日は洗濯乾燥機翡翠

  • いろはにほ暇に記す朧かな川端芙弥

  • 人混みのほこり懐かし朧なり皮むきごぼう

  • ぱっしゃんと魚が跳ねる朧かな川村記陽子

  • 朧にてトレーニングの表情筋川村湖雪

  • 草朧眼鏡を変えてペダル踏む神田優梨

  • ただ朧白一色の供花抱く邯鄲

  • 三面鏡朧に映る父母の顔漢方十七錠

  • 小説の抹茶カフェの戸朧かな紀杏里

  • 制服の裾ひるがえし路おぼろ岸本元世

  • 朧なる中洲のネオン屋台酒酒暮

  • さよならのテールランプも朧なり喜多吃音

  • 風呂上がりちょっとうたた寝おぼろかな北岳あきは

  • 観光バスのうしろほつほつ朧きのえのき

  • 古難し友と朧のコップ酒きのかずお

  • 朧なる空を裂くかや鳥の鳴く木村修芳

  • ジョギングの靴音かすか道朧木村となえーる

  • 朧めく街灯誘ふ異空間教来石

  • 待ちわぶるひとなき家や朧めき工藤悠久

  • 人待ちの駅朧を纏ひつつ久埜見永

  • 宙船は何処に降るや海朧窪田睡鯨

  • 新聞手に読めずアラ還朧かなぐりぐら京子

  • あわだてきつりさげてある朧かな栗田すずさん

  • にやおと声したよな道の先朧空流峰山

  • 茶も冷めてトランプ占い朧かな黒瀬三保緑

  • 花粉さえ朧となりて夜が更ける黒田良

  • 吸い込まれ「止まれ」の赤の朧かなクロまま

  • ひと気なき帰路を急ぐや草朧桑田栞

  • ああ朧彼の地の戦火画面越し桑田さなえ

  • 衣濡れともしび朧そぞろゆく桑原和博

  • 朧めく一人ぽつりと立ち尽くしくんちんさま

  • 里山の朧になりて目に染むる景清華

  • 夕まぐれビバーク谷に朧の灯鯨野

  • ほろ酔いに艶めく外気朧かな欅山四十八景

  • 消えてゆく二人の姿朧かな元喜@木ノ芽

  • 歩む先朧の向こうの月あかり研さん

  • 朧なる星に指さし父呼ぶ児源氏物語

  • お姫様扱いしてよ朧かな研知句詩@いつき組広ブロ俳句部

  • 朧めくコンビナートのシャッター音こいぬ

  • 横文字の単語飛び交う朧かな香田ちり

  • 歓声も滲む朧のスタジアム古賀粋漢

  • 芝居はね人ちりじりと朧影ココヨシ

  • 就活生重い足どりビル朧東風えり

  • セットリスト思い出しつつ朧かな古都鈴

  • バロットのいた世界は朧「またね」粉山

  • 掌を零れゆく時間も朧木幡忠文

  • 銭洗弁財天の朧かな小林昇

  • さざめける湖畔の波の朧の夜小松小雪

  • 飲み込んだ言葉は多し朧かなこむぎ

  • マイナスをプラスに出来ぬ朧かな小山晃

  • 今の世は朧に映る鏡かな小山祐治

  • 朧より長鳴く汽笛跨線橋今野淳風

  • 幽界を迷いて帰し子目の朧西條恭子

  • 物音に目を凝らしたる家朧斉藤巻繊

  • 照らされた白黒の城朧かな齋藤鉄模写

  • カンヴァスに孤独重ねて朧かな坐花酔月

  • 荒庭に光る眼ふたつ朧かなさかたちえこ

  • 棟上げの済んで堂々たる朧坂まきか

  • 里山も朧を纏い薄緑  坂本千代子

  • おぼろかなおからドーナツ並びをり相良まさと

  • 灯台の点滅明かし海朧咲弥あさ奏

  • サイレンの灯り止まりて朧の夜さくやこのはな

  • 羽衣や雫ひとはけ朧かなさくら亜紀女

  • 手をつなぎ妹と帰る道朧櫻井こむぎ

  • 常夜灯台所は朧眠れぬ日櫻井弘子

  • 六千円のカツ定食って何朧さくら悠日

  • 暖簾入れ朧に消える二人連れ紗々

  • 寝台に待つ猫のいる朧かな砂舟

  • 天ぷら粉ゆるゆるしたる朧かな紗千子

  • 善人と言はれ続けて朧かな佐藤志祐

  • 御霊屋の苔生す墓標朧かな佐藤俊

  • 主人なき荒れ庭の花も朧にて佐藤しらべ

  • 寝不足の心地も朧家路かな里海太郎

  • 朧良し楽しきことだけ思い出に佐藤佳子

  • 提灯のおぼろ過日の焼き鳥屋里山子

  • お不動へ灯は滲みゆき谷朧錆鉄こじゃみ

  • 朧なる空を孫乗せ翼行くさわだ佳芳

  • 朧げなくちびる隠す黒マスク澤埜正明

  • 六条を行かば河原の朧かな三休

  • 忘れたる君の帽子を嗅ぐ朧三水低オサム

  • 最終の朧電車は母星へさんとうせい

  • 吾はひとり思ふ日もあり朧の夜塩原香子

  • ヒール音におぼろ浮かぶは摩天楼しかの光爺

  • 朧かな午前一時の子の寝言四季春茶子

  • きゅるきゅるぐるぐるきゅるきゅるぐるぐる腹痛の朧四條たんし

  • 朧に溶けるタクシーひとつひとつ沈むエビ

  • 朧なる三月ぶりの着信履歴紫檀豆蔵

  • 朧なる宇宙の歴史星の数実本礼

  • 掠れ声軽くなった父朧かな柴桜子

  • 朧にてビールと消えるホームラン柴森爽

  • ボルシチの味を説明する朧嶋田奈緒

  • 海朧鐘の音すら吸ひ込まる嶋良二

  • 廃校の母校のがれき朧影清水祥月

  • 紙垂の白揺れきや風のなし朧清水明美

  • 震災の体育館はただ朧下丼月光

  • 海朧蹴散らしてゆくマセラッティ芍薬

  • 発つ吾子の朧なる背を見送らんジャスミン

  • ふと目覚め朧の月で時計見るじゃむぱん泉

  • 御開帳本尊の笑み朧かな秀耕

  • 鐘朧広がる波紋山里へ朱康君

  • 瞬きの今日は優しい朧かな獣羅

  • 朧の夜母に届ける葉物野菜じゅん

  • 朧には神殿語り本屋へとショートケーキ

  • ひとやとき朧になりて甘苦き白井佐登志

  • どぶ川に揺れるネオンや猶おぼろ白猫のあくび

  • 老犬と歩合わせ辿る朧かな新花水木

  • 仲直りあとに赤福朧なりしんび

  • 読み終えて文庫閉じれば夕朧水月一睡

  • 犬散歩けだるい夜の朧富士酔軒

  • 朧なる高層ビルの消えぬ灯よ酔芙蓉

  • 手をつなぎ歩く川沿い朧なり杉浦真子

  • 湯屋帰りちょいと寄り道朧かな鈴木もま

  • 寺の音(ね)も包む朧や鍬洗う素敵な晃くん

  • 幻覚と微かに曇る朧かなスパイク

  • 遠ざかるテールライトの影朧静江

  • 誕生日忘れず祝う朧かな星夢光風

  • 首都高や朧に沈むスカイツリー瀬央ありさ

  • 今日おぼろ明日は屹立コントレール瀬紀

  • ラマダンに入りて朧の夜は熱く背馬

  • 友独り過疎の村なる朧の夜そうま純香

  • フェリーより蒲刈を見る朧の夜聡練

  • 灯朧やスーパーカブを待つベンチ空野兎

  • 右の手に君の手やさし朧かなソラマーゾフ

  • 受験生朧めく候補地探しそれいゆ

  • ランチ済み尽きない会話街は朧駄詩

  • 今晩の菜決めかねる朧かな泰山

  • 遠ざかる沖の汽笛のおぼろかな太平楽太郎

  • 地図なぞる憧憬の地や朧げに平たか子

  • 鐘朧初仕事前の鼓動よ高上ちやこ

  • 舌足らず童謡真似る吾子おぼろたか祥

  • 高台のソーラーパネル朧めく高橋基

  • タオル頭に吾も朧の露天風呂高橋寅次

  • 船窓に見ゆる陸の灯朧かな高見正樹

  • 中途覚醒生ごみを捨つ朧多木紫蝶

  • 朧めくものと朧めかぬものとたけろー

  • 朧より雛呼ぶ声か甲高く多胡蘆秋

  • 曳かれをる我が犬かも朧めく多事

  • 母の背で兄の夢聞く朧なり立花かおる

  • 星見上ぐうたかたの人朧なり橘春容

  • 朧なり汽笛だけ聞く浜静か田鶴子

  • 朧めく汽笛はけふは柔らかく立野音思

  • 背は闇へ逢瀬の後も星朧たていし 隆松

  • 一人待つ母の家まで朧かな蓼科嘉

  • 現実にありて三号炉の朧立部笑子

  • 灯籠のぽつんと揺らぐ朧かな立山枯楓

  • 朧なる月に香りも褪せにけり田中明美

  • 船見坂朧になってゆくリュック田中勲

  • 朧なる幸も不幸も腑に落とす田中邦恵

  • 朧なる倫敦にホームズの影田中紺青

  • 畑仕事終えて家路へ鐘朧田中洋子

  • 別れの日じっと堪えど朧かな谷卓生

  • 朧なる孤高に白き月柔し谷口 あきこ

  • 湯潅囲み見守る母娘朧かな谷町百合乃

  • 朧めく耐震性のない校舎田畑整

  • 漁火の揺らめき幽か朧かな玉井令子

  • いつも青なのに今赤朧かなタマゴもたっぷりハムサンド

  • 当て馬のスタメン告げる朧かなたま走哉

  • 非常階段朧の腸はまっかっか玉庭マサアキ

  • 追い掛ける路面の影の朧かなたむらせつこ

  • 稜線の空に融けこむ朧かな田村モトエ

  • 暮れなずむ遠き山並み朧かなダメ夫

  • 天ぷらとワインの進む朧かな知音

  • とぐろ巻きうねる龍神天おぼろちくりん

  • 白間津(しらまづ)の花摘み畑朧なり千葉睦女

  • とぼとぼと朧の通夜路雨ポツリ茶坊

  • 君乗せた船は東へはや朧千代 之人

  • 久々の旅の三井寺鐘朧つきか

  • 夕餉の香空に溶け合い街朧月硝子

  • リストラに歩く朧のより深きつきのひと

  • 千鳥足連れ立ち朧にまぎれゆくつきみさとふく

  • 朧なり咲乱るる花々の家辻ホナ

  • 橋の上誰も彼もが朧かな弦巻英理華

  • 開業医皆で励ます朧かなデイジーキャンディー

  • 安らぎを求め朧にまかせけり手毬まりこ

  • レーシック躊躇っている朧かな電柱

  • Maxとき315号朧の内にて光る東京子

  • 沖をゆく遊覧船や湖おぼろとき坊

  • 滲む景灯朧なのか涙なのか徳永倍通

  • 浮かびたる頂白し朧かな所陽子

  • 夫とふたりさしつさされつ朧の座戸根由紀

  • 寂れたる床屋に灯り点き朧冨川 友香理

  • AIに恋のてほどきして朧富野香衣

  • CTに痛む影なし朧かな戸村友美

  • 赴任地の山河も人も朧なりとよ

  • サラリーマンおしてもひいても朧めく豐田雄二郎

  • この朧吾の足先も遠くせし鳥越暁

  • リモートの社屋スカスカ街朧中十七波

  • 公園に猫の集会おぼろなる中里凜

  • 廃校に灯ぽつんと朧かな中島葉月

  • 寝台車朧の中へ消えてゆき中嶋京子

  • 焼肉の匂ふ河原の朧かな中島走吟

  • 朧なり母のカメラに笑まふ父中嶋敏子

  • 老婆行く湖上の大橋朧かな中嶋緑庵

  • だしの香に早まる足今宵朧中西歌子

  • 高速道路縦に流れる朧かな中鉢矢的

  • コーヒーの香を辿りゆく朧かな仲 操

  • サイレンの朧に届く夜の窓中村こゆき

  • 朧なる宙横切りし「きぼう」の灯中村あつこ

  • 待ち合わせ朧よ可愛さ増す祈り中村鈴蘭

  • 兵の影朧に幽か硫黄島    永谷部流

  • 思い出やしかと掴めぬ朧なり夏空なみ

  • 朧より来て父はまた朧へと夏椿咲く

  • 終電の尾灯朧の中に消ゆ夏目坦

  • 塾の子ら夜道の暗く朧めく七国独楽男

  • 居酒屋を間違え当たってもた朧浪速の蟹造

  • 空見上げ家路を急ぐ朧かな成瀬悠

  • 夕映えの終わりし嶽はいま朧なんじゃもんじゃ

  • 山肌に雲わき出でて朧かな新美妙子

  • 求婚は成らず朧の道歩くにいやのる

  • 通勤の憧れの街また朧2月は30日までない

  • リード持ち朧に見える顔見知り

  • 縦横の二十線なす朧かな野中泰風

  • 天照隠れて朧めく日本ののr

  • 庭先の泣く子抱く母朧かな野々かおり

  • またひとり知己の訃報や朧の夜野原蛍草

  • 一両の各駅停車朧影のりこさん

  • 窓外にこぼるる灯りもおぼろかな橋爪利志美

  • 去りし背が朧ぽろぽろ泣くなまだ一まどか

  • すれ違う香りのゆかし朧かな長谷川ろんろん

  • コンタクトレンズはずして朧の日曜はたやん

  • 宮沢賢治になりきり見つむ朧かな蜂鳥子

  • 残業後コート閉める手止まる朧服部たんぽぽ

  • 海朧一人車を走らせる花岡浩美

  • 心遊ぶ雨の茶席の庭朧花岡淑子

  • 泣いてゐるなにかの赤子朧かな花南天あん

  • 朧めく頬吹く風のやわきことばね指冬子

  • 子の弾きしピアノ眺むる朧かな羽馬愚朗

  • 悔いひとつありて朧に問うてみるはむこ

  • 告知受け朧朧の帰る道早川令子

  • 戦知る父の遠き目海朧アクエリアスの水

  • 猪に庭荒らされた朧かな原島ちび助

  • 新しき自転車きらり朧の夜ぱらん

  • 遠き地の悲しい戦朧に祈るharu.k

  • 線香が朧にたなびき前を向くはるなつきえ

  • 帰り道バックミラーに朧かなばんしょう

  • 土も草も木も匂ひて朧かなひーたん@いつき組広ブロ俳句部

  • 朧な街の灯雨の横羽線ひーちゃんW

  • 町並みは朧の空にネオンなくひいら無云

  • 年老いて何処へ行くでもなく朧光源爺

  • 夜ドラのタネ明かされぬまま朧ひぐちいちおう(一応)

  • 海朧なり黄昏れの田代島ひしぬままき

  • 屹立すタワマンの灯の朧かなひすい風香

  • 草原に三歩前にも朧なり美泉

  • 夕闇の朧に隠れ2人陰秀龍@木ノ芽

  • 久方の友の声とて朧なりひな扶美子

  • 朧かきわけサイレンの迫りくるヒマラヤで平謝り

  • 一人寝に君の残り香朧めく向日葵@いつき組広ブロ俳句部

  • 海岸で朧に見える灯りかなひめりんご

  • 山越えの朧に見ゆる伊豆の町平井千恵子

  • 朧濃しバス誘導の笛ひびく平井由里子

  • 庭朧十二単衣の並び居る平岡花泉

  • 西山の一番星の朧かな平林眞砂

  • 寄り道の駅前ネオン朧かな平松 一

  • 明日退院窓の向こうは朧廣重

  • 朧めき夜学の道は遠ざかり琵琶京子

  • 検問所朧に長き避難民深蒸し茶

  • 草朧肩を並べて散歩道深谷英丸

  • 煎り糠を火元覗きし朧かな福田みやき

  • 朧なり赤子の声のとおのきて藤井かすみそう

  • 朧なる野草の花とむかひあふ藤川鴎叫

  • 朧の日公園内に庭師居る藤川雅子

  • 伴走の襷きらめく朧かな藤白真語

  • 黒猫の夜のお散歩朧かな豚ごりら

  • ポタージュを温め直し朧かなふりっち

  • 朧なる公園ひとりギター弾く古川シアン

  • 輝きが消えてゆく星朧かなヘッドホン

  • 提灯も揺れる朧の千鳥足ベニヤサン

  • 酔人のスマホ失くして朧の夜べびぽん

  • 湯屋の外の裏山朧独りかな茫々

  • 鎮魂歌のあの日から朧朧星雅綺羅璃

  • 点描の光朧へモノレール星詩乃すぴか

  • 揺りこぼす衣も朧やカフェテラス甫舟

  • 朧なる月もテレビの映像も細江隆一

  • 近くなる父との距離は朧なる細川小春

  • 核兵器ある人の世の朧かな堀卓

  • 摩天楼朧に溶ける女神像堀邦翔

  • 機影は西の朧割き東欧へ凡句楽直

  • ながらへて浄土見えくる朧かな梵多

  • 友人の離職の知らせ朧哉舞黒祖父登

  • 露天風呂旅の終わりの朧かな前田敏彦

  • 見上げたるハタダの掲示朧かな真喜王

  • 朧気や月の反射に立ち沈む眞熊

  • 手を振りし朧々の君の影雅蔵

  • 焼き鳥の香から膨らむ朧かな眞さ野

  • 朧に消ゆ一本路のテールランプ増田蓮華

  • 甘雨去り匂いまつわる庭朧町田勢

  • 朧の夜月の光が照らす龍松井研治

  • あと二千万歩計見る朧かな松尾なおゆき

  • 夜の道はっきりと見えぬ朧かなマツケンスライダー

  • 車窓から父待つ町は朧なり松島美絵

  • 鐘の音の余韻吸い込む朧かな松平武史

  • 泣くためのふんわりタオル朧にて抹茶子

  • 見上げれば龍の散歩する朧松虫姫の村人

  • 見送りし朧の後姿かなまつもとをさむ

  • 朧かな船が行き交う瀬戸の凪松本俊彦

  • 亡き君はスマホに生きている朧松本裕子

  • かの君と出会いしそれは朧なり松本牧子

  • 手をとりて朧な道を二人行く待雪みほこ

  • 朧めく政略結婚のダイヤ真冬峰

  • 朧なり外郎ふたつ豆皿に豆福樹々子

  • 笹鳴りに見上げし空の星朧真理庵

  • 下駄の音朧の中に聞こえ来るまりい@木ノ芽

  • ブルシット・ジョブとふ勤め夕朧眞理子

  • 意識なき子の隣りなる吾の朧まるにの子

  • 雪壁は18メートル空おぼろ丸山邦晃

  • おぼろの夜とおくに流れるピアノの音真路巴笛

  • ビルの上灯り点滅朧かな澪つくし

  • 生き残りかけ空残業朧かな三上栞

  • 観覧車の灯りの遥かおぼろなり三崎扁舟

  • 街灯の川面に映る朧かな水川海豊

  • 朧かなスカイツリーに雲垂れしmr.kikyo

  • 君の背が朧の中に薄れゆきMrふじやん。

  • 戦死てふ吾より若き父朧水野禾甫

  • 車窓朧点となるイルミネーション美月舞桜

  • 坂道は朧ラブホの灯しつぽり満る

  • 君の影駅舎に向かう朧かな皆川徳翁

  • ひと駅を歩き朧の酔い覚まし見屋桜花

  • ミッキーを抱いて背にする城おぼろ宮川ニコ

  • 朧月酔眼に増しより朧宮城野萩士

  • 嗅覚の研ぎ澄まされし朧かな宮原みかん

  • 草朧ひとり歩きの父を追う美山つぐみ

  • 月の道朧に漂う割れオール夢民庵世々

  • 船着き場水面に窓の朧なるムーンさだこ

  • 待ち人をあきらめたどる朧道霧想衿

  • 自転車で朧と見あふ間合いかな武藤裕治

  • 朧なる七十路の道手探りで村上照世

  • 足元のおぼつかない日おぼろなる村のあんず

  • センサーライトぱつと付き庭朧村松登音

  • 参道の砂利に躓く朧かな暝想華

  • 外濠の中は朧に月と鯉恵のママ

  • 新学期列車の外なる海朧目黒智子

  • 明日示す塔のライトのいろ朧毛利尚人

  • そのつづき婆のはなしを朧の夜望月ゆう

  • 切り傷は腕に5センチああ朧望月朔

  • 赤電話用件のみの朧也本山喜喜

  • ペダル重し連なる街灯朧かなもり葵

  • 花束を抱え定年朧かな森下薫

  • 遠回りの家路遮断機の朧もりたきみ

  • おちこちに聞こゆ鐘の音夕朧杜乃しずか

  • 障子戸の向こう朧に屋敷町森谷拓之

  • 海上は朧船内は賑やかし諸岡萌黄

  • われと影おぼろの道をとぼとぼと焼津昌彦庵

  • 朧のベンチ震う携帯ぽつり山羊座の千賀子

  • 火曜限定カレーパン買う朧柳井るい

  • 朧かな君とドライブ風の音やのかよこ

  • すうすうとノンアル啜るおぼろかな山河穂香

  • 朧なり厨にモカの香り満つ山川腎茶

  • 寝過ごしてタワマン朧ニ駅先山木戸兆舞

  • 四年程うるさい街の朧かな山口たまみ

  • 朧通夜のこるは優しさのみと知る山?雅代

  • 朧より愛人の声なつかしき哲山(山田哲也)

  • 朧なる後ろ姿に手を振るか山田企鵝

  • 祖父骨よ故郷の海山朧なる山田啓子

  • 丘の上の桃色の木々朧かなやまだ童子

  • 朧なる湖上に月影延びにけり山田文妙

  • 胎動は常より激し朧かなやまな未

  • はずむ息首里は朧の石畳山野のんき

  • 宅飲み友らの帰りし朧かな山彦一水

  • 病室の比良の山々朧かな山本康

  • もういいかい鎮守の森に朧かな山吉白米

  • 負け試合涙乾いて影おぼろ裕子

  • 同棲アパート訪へば跡なき朧かなゆうま

  • 玻璃戸開け土の香吸こむ朧かな柚木啓

  • 失恋に星座が滲む星朧弓原トーヤ

  • 音残す介護ベッドの朧かな湯屋ゆうや

  • 締切を破りて散歩朧かな陽花天

  • 摩天楼闇に溶けゆく朧かな陽光樹

  • 蠢くは朧に紛れ影二つ吉哉郎

  • 朧の夜鳴き声切り裂く猫二匹よしぎわへい

  • 草むしり人待ち顔の犬朧吉田蝸牛子

  • 永らへてまた送りたる夜や朧葦たかし

  • ひっこしのキリン朧へくずれゆく吉野川

  • 朧なる北アルプスや旅の宿吉藤愛里子

  • 髪染める三面鏡の朧かな与志朗

  • 幸せは探しだせうるもの朧四葉の苦労婆

  • 朧めく沼のほとりや遠野村よみちとせ

  • 浜を行く彼の背朧もう見えず世世

  • 帰り道頼まれし酒よおぼろなるらりっく

  • ヘッドライトの朧に星と連なりてランタン

  • 細道を通りゃんせ翁や朧リーガル海苔助

  • 面会の緩和病棟の灯朧梨音

  • 朧なる伝言板や待ちぼうけ理佳

  • 謳うなら「いとしのエリー」朧の夜柳絮

  • 水田は廣く玄くして夜は朧良俗倭人

  • 影薄き人の紛れる朧かな連雀

  • 軒先や心安まる朧かな蓮風

  • 甃去り行く君の影朧わかなけん

  • 白球よ場外越え朧かなわきのっぽ

  • 夜の村山河草木みな朧海神瑠珂

  • 送って行く君との間の朧かな渡辺香野

  • この街でさへうるはしみする朧渡辺桃蓮

  • 天に訳なく悲しみに朧なり渡辺ヤスコ

  • 夕刊を取りて街路の朧なる渡辺陽子

今月のアドバイス
夏井いつき先生からの一言アドバイス

◆お願い
●俳号には苗字を!

○俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて、姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。皆で気持ちよく楽しむための配慮。よろしくご協力下さい。


●俳句の正しい表記とは?

  • 朧月青春時代を思い出すかめれおん
  • 夕暮れに西に聳える朧富士手嶋錦流

○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪


●前回の兼題

○季語「子猫」は、前回の兼題。(全部で10句ありました。)〆切時間に遅れてしまったか……。


●文字化け

  • 馬運車の?を溶く朧かな石垣
  • 朧かな?に会うとこ一人逝く岡本

○ネット投句の宿命というべき、文字化け。残念……。

  • ありったけのこぼるる涙恋おぽろ山崎鈴子

○入力ミスであることは分かるのですが、送信ボタンを押す前に、確認する習慣をつけましょう。


●俳句は五七五

  • 朧向こう戦に思い馳せる園城寺の夜ぶるーふぉっくす

○俳句は、五七五が基本です。破調、字余り、自由律など、色々ありますが、内容を巧く五七五に入れられないから、音数を溢れさせてもよい……というものではありません。


●一句一季語から練習

  • 微笑む君川沿いの桜朧月相澤和香
  • 朧なる雲よりしばし月さやか石井秀一
  • 花びらの朧に誘う夜半の城今村ひとみ
  • 夕焼けや霞む朧の帰り道帰宅部めんそ
  • 紅椿桜花散る朧月蕎仙
  • 朧夜や地にひとむらの葱の花志村狂愚
  • 山一面桜に染まる春おぼろ
  • 束の間の桜吹雪や朧月なか京子
  • 春ふかし遠くの富士におぼろかな藤拓
  • うつむいた朧な眼に映る蛍芳賀猛士
  • 田起しや老爺と牛と草朧畑中真土
  • 朧夜や花びらを踏む車椅子ポレポレあひる
  • 朧月かまびすきや猫の恋吉田空

○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。


●「春」は不要

  • 繰言の母見る実家春おぼろ茜むらさき
  • 春朧のりたまご飯を立って食う田川彩
  • 急ぐよりのんびりしたい春朧草道久幸

○「朧」そのものが春の季語ですから、「春」は不要です。

  • 振り返り百才おぼろ春うららMITSUE桜井

○「麗」についても同じで、「春うらら」という使い方をする人がいますが、こちらも「春」は不要です。そして、この「おぼろ」は季語として使われていません。※「季語深耕」を参照して下さい。


●兼題とは

  • 春は旬野菜高騰だが生きる為買う内野淳子
  • 落ちて尚命燃えたる寒椿香西敏子
  • せつなさに淡く色づくももいろの花なつねぇ♪
  • 春の風道の桜を見る君を春谷未知瑠
  • 水神の在す箕面の滝涼し丸岡正男
  • ながれぼしひかりかがやくよぞらのや 増田花音
  • キミの指先肩跳ね笑う雪解けの滴のいゆにか

○今回の兼題は「朧」です。兼題を詠み込むのが、本サイトのたった一つのルールです。


●季語深耕

  • 母老し泣いた昔も朧なり雨降りお月さん
  • おぼろ世の流転の八十路渋茶碗杏っ子
  • ウクライナ朧げならず和平の途泉梅子
  • 朧なる縁の君と今生きるいずみ節子
  • 桜散る受験結果もおぼろなり今井保夫
  • 詩人とは朧の日々を生きること大石聡美
  • 朧げな白黒写真世紀末械冬弱虫
  • 七回忌面影朧となりにけり各務ちはや
  • 朧げな記憶をたどる郷帰りカラハ
  • 朧なる記憶の中の君は濃く朽木春加
  • 働けど未だ余生は朧かな紫雲
  • 亡き夫の朧に刻む置時計塩沢桂子
  • 朧めく思ひ出したる目標は縞子勾苑
  • 朧気な祖父の写真に手を合わせ杉山博代
  • 朧なる記憶の闇に苛まれ杉柳才
  • 目の検査まぶたの奥の朧かな高橋光加
  • 明け暮るる母は朧の中に居り辰野史会
  • 朧なる記憶の中の母恋し谷口美奈子
  • 朧げな夢をたどりて山遊び榛名ピグモン
  • 懐かしき父母と語りし夢は朧布野悠乃
  • 子の未来朧に見えしニュースかな舞い雪
  • 五十歳初恋の顔朧なり桃衣ゆらら
  • 脳内の朧拭えぬ認知症八木実

○「朧」は天文の季語です。「朧」を、ぼうっとして、はっきりしないさまの意味でつかうと、季語の力はなくなります。

  • 歳のせい景色も記憶も朧なり二階堂恵
  • 喜寿過ぎし昭和の時代朧かな二上松風
  • 忘れしを人のせいと朧の母柿野宮
  • 母の見る景色は全て朧かな菊川寝ん猫
  • 朧なる景色の向こうに去りし吾子本多幾千
  • せんめいな写真の我が子朧かな真壁らん
  • 朧なり巣立ちて息子初仕事まじかにゃんちょろう
  • 夫逝きて二年すぎおり朧かな松尾美郷
  • 胸キュンとはこういうことかああ朧黄桜かづ奴
  • 失恋や感情消すは朧かな炯眼
  • 赤い糸叶わぬ愛の朧かな球磨太郎
  • 朧とは次恋進めし良薬かな喜多武雄
  • 艶し目ぞ朧そぞろ頬染めし奴坂島魁文
  • 初手繋ぎ去りし君の背朧かな白い追憶
  • 朧にてこんなんちがうファーストキス新開ちえ
  • はつ恋や朧にくるまれ遠ざかるたなばたともこ
  • 朧めく君の記憶は手のひらに杼けいこ
  • 朧なる同窓会の声背なに花咲みさき
  • 頬染める出会い頭は朧かな和の光子
  • 町役や頭体もおぼろかな中嶋緑庵
  • しまった赤本開いて朧ひとつ増え羽織茶屋
  • 針振れに振れシェイプアップは朧平野風詩
  • 朧なるニカブの如きマスク顔比良山
  • 顔洗ひマスクで隠す朧かな藤川哲生
  • また戦争SGDs朧なり鈴木暮戯

○これらの句も、天文の「朧」のようであり、ぼんやりとしている意味で使っているようでもあり……。天文の季語としての「朧」の本意を掴んだ上で詠む。意識してみましょう。

  • 夫ゴルフ土産はいつもおぼろ豆腐りょうちゃんばぁ
  • 遠足のおにぎり朧で巻きす玉子百日草

○「おぼろ豆腐」「おぼろ昆布」は、間違いなく季語ではないね。

  • 帰る道「朧月夜」の歌のなか山辺道児
  • 朧月夜唄う時だけ心落ち着く。こばやしくにえ

○言いたいことは分かるのですが、歌の題名は、微妙……。

  • 公園の提灯浮かぶ花朧藤丘ひな子
  • 花朧向こうで待ってる人がいる松岡重子

○「花朧」は、植物の季語「桜」「花」の傍題です。

  • 塒へと朧にかすむ鷺一羽すう枝
  • また負けた朧にかすむ六甲山中村まさあき
  • 香港の朧に霞むクルーズ船香港ひこぞう

○「朧にかすむ」という表現は微妙だなあ……。

  • 朝ぼらけ船影朧に進みゆく初野文子
  • 退院の朝の朧めく山際華樹
  • 昼までにこれやっとけと空朧山野花子

○「朧」は夜の現象。ひょっとすると、これらの「朧」は、ぼんやりしている様子を書こうとしたのかも……。

  • おぼろ夜や亡夫好みの紅をさしあ・うん
  • 教会の十字架に月朧夜や浅井厚視
  • 朧夜や小さな背中の振り向いて和泉明月子
  • 朧夜や慣れた道さへ後戻り大嶋メデ
  • 朧夜に抱かれ揺れる恋の羽大村朱希花
  • 朧夜に散じる音やオートバイ緒方朋子
  • 朧夜や病室の母小さくてかもめ
  • 朧夜の赤線区の灯や昭和いとおし樺久美
  • 猫バスが走っていそうな朧夜木村かおり
  • 朧夜の女の素顔素手素足健央介
  • 朧夜に姿求めし母恋し関根洋子
  • 朧夜や海荒れて船遠ざかる仙台駄菓子
  • 朧夜や暖簾手招く千鳥足
  • 朧夜の下駄の音は雷門から竹一
  • 彼に逢う朧月夜の君の如智同美月
  • 朧夜に閻魔のごとき消防車土田耕平
  • おぼろ夜や点滴ぽつりぽつり落つ内藤由子
  • 朧夜のゆつくり動く亀の足根本葉音
  • 朧夜にためすすがめつ花手水北斗星
  • 朧夜や噛み跡残る砂糖菓子夢見昼顔
  • 朧夜に星のひとつが際立てり若林千影
  • おぼろ夜の狐格子に透く火影若林鄙げし
  • 朧月夜前だけ照らす懐中電灯幸子.S
  • 恋話は電話ボックス朧月あいあい亭みけ子
  • 朧月視線合わせぬ人と似て間岳夫
  • 朧月無人駅より帰りけり空家ままごと
  • 夕釣りや海より出る月朧跡部榮喜
  • 朧月別れの酒のほろ苦さ石島多久山
  • 子がえりの夫とふたりの朧月石本美津
  • 月朧夫もおぼろな幾年や石本美津
  • 影薄く見上げてみれば朧月市場さと枝
  • おぼろづき詰まり詰まりの七の段梅鶏二号
  • 朧月痛む傷口隠せない大本千恵子
  • 成せずに吐息し見やるとおぼろ月岡由紀阿希
  • 湯の街のゆげに隠れて朧月加賀くちこ
  • 恍惚の母追いかけて朧月川野カッパ
  • 点滴の窓に音なく朧月Qさん
  • 朧月私のブレを直してね草豆
  • 竹藪に裸電球朧月楠田草堂
  • 朧月ほくろの左右忘れけり栗の坊楚材
  • 朧月人それぞれの暮らし方来ヶ谷雪
  • 月朧面影匂ふ野天風呂月昭
  • 朧月桃色ひらりため息す小鳥乃鈴音
  • 朧月宇宙へ還る最終回さかえ八八六
  • オランウータン上目を使う朧月じつみのかた
  • 救急車裂き行く街や朧月芝G
  • かすむ目に目薬さすも月朧ジョン爺
  • ポケットの中で繋いだ朧月白とり貝
  • 万歳のゴールの橋や月おぼろ関とし江
  • 朧月花びら舞う龍の如しそしじみえこ
  • 朧月そぼろ食して仰ぐ夜高塚和恵
  • おぼろ月あれば楽しい宇宙にも高橋紀代子
  • 朧月三面鏡に作り笑み知恵さん
  • 朧月平和を照らす彦根城躑躅メリー
  • 何者か定年の日の朧月椿律
  • 朧月見上げて語る思ひ出を夏目わか
  • 月朧蚯蚓腫れなる蕁麻疹なみ夢めも
  • ぼんやりと朧月見て癒される西谷寿
  • 朧月安寧願ふ彦根の灯猫辻みいにゃん
  • 笑う君恋する僕と朧月パーシモン
  • 病状を説く医師の背におぼろ月波止浜てる
  • 朧月遠い昔さ繋いだ手原善枝
  • 朧月ねやの明かりの在り所ろはるる
  • 新車来てCD録音朧月古澤久良
  • 朧月会えぬ貴方と共有しまあるいあんこ
  • 逃げないで貴女の朧づきの夜を松野蘭
  • 朧月なつかしき人思わるる三浦ユリコ
  • 月おぼろトリケラトプス卵抱くみやざき白水
  • 朧月お風呂が沸きましたの曲山野麓
  • 防人の出でしいほはら月朧山薔薇
  • 終活の1日終えて朧月吉田ばあば
  • ひとり酒重ねる杯に月朧Y・りこ

○「朧夜/朧月夜」「朧月/月朧」は、別の季語として丁寧に詠みわけていきたいと、私は思うのだけど、頁数の少ない季寄せなどは、「朧」の傍題として載せているのかもしれないなあ……。

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「炎天」

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