夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
4月の審査結果発表
兼題「朧」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
石室を少し開けおくこと朧
磯野昭仁
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夏井いつき先生より
薄暗い石室の空気は、ぬるく湿っています。黴の臭いもします。石室の真ん中には石棺。四方には、月や星や人や獣が描かれた壁画。かつてここに葬られた人がいて、その死を巡る人々の嘆きや憤りや思惑が満ちていた石室。そんな石室を「少し開けおくこと」とは、どういう意味なのでしょう。湿気を逃がすためにしばし開けておくのか。風を入れ黴臭を弱めてから、入ろうとしているのか。いや、ひょっとするとこの石室から「朧」がゆっくりと噴き出しているのかもしれない、と、そんな思いに囚われました。「石室」とは古代につながる隧道。古代と現代の気脈が「朧」という現象となったか……と、そんな妄想が、我が心を生ぬるく占拠していきました。黴の臭いが、鼻腔につんと蘇ってきました。
旧居の灯見にゆくだけの朧かな
さとけん
誰の「旧居」なのでしょう。傾倒している文学者か政治家か俳優か、想像は様々に広がります。「旧居の灯」を見にゆくだけの目的で歩いていく「朧」の夜。下五「かな」の詠嘆に、思いが揺れます。
朧とは巻貝ゆるむ音のやう
ぐ
「朧」そのものを喩える発想はありますが、「巻貝ゆるむ音」とはなんと秀逸な比喩でしょう。音と書かれてはいますが、感覚的には皮膚感。それは巻き貝がゆるんでいくかのような「朧」の肌触り。
マンホールさびて朧の芯となる
はんばぁぐ
マンホールが錆びるのは当たり前ですが、それが「朧の芯」となるという感覚に強い共感を覚えます。マンホールの錆びを芯として育っていく街の「朧」には、かすかに下水の臭いもするのでしょう。
白骨めく松の生家にゐる朧
一斤染乃
「白骨めく」という措辞が、廃れた「生家」を思わせます。「ゐる」とは、自身が滞在しているのか、「朧」という生き物だけが住んでいる生家か……と思ったとたん、静かに鳥肌がたちました。
戦など朧と思ふ朧かな
円美々
季語「朧」を、おぼろげな記憶として誤用した句が多かったのですが、それを逆手にとった一句。おぼろな記憶となっていた戦争が、今起こっている事実。「朧かな」の詠嘆に静かな憤りが滲みます。
朧には朧の芯のありにけり蒼月子
朧なり土偶はふくよかなる歪み字土街海
その時は皆朧になるかしら麻場育子
自販機がなんて明るいこと朧海野碧
いびつなる月が朧の心臓かにゃん
谷朧神は谺をかへしたる青田奈央
店先で閉店を知る辻朧あたなごっち
朧へと帰り行きたる夜の波ANGEL
崩れ字の看板傾ぐ朧かなEarly Bird
終電を待ちたる人の朧なる愛燦燦
草朧売れ残りたる鯉の餌あいむ李景
轟音のこもる空港朧かな青井晴空
彼の道の朧や鎌倉は愛し蒼來応來
意見とふ正義語らふ朧かなあかを実果
朧なりあれは人魚の跳ねた音赤馬福助
草おぼろ穿ち立ちたる碑文かなacari
信号の赤テールランプの赤朧あかり
新宿の朧が僕を閉じ込める秋沙美洋
諦めたものがあふれてくる朧秋野茜
気まぐれをうたう朧と溶かすうたあきののかなた
自転車を漕ぎ朧に溺る秋吉和紀
潜熱の七宝朧を放ちけり麻きなり
かの猫より招待状の来て朧朝月沙都子
アンコール曲口づさむ駅朧なり明後日めぐみ
カチャーシーの十指朧を戯れり芦幸
箱階段抽斗キューと鳴き朧あじさい卓
朧なる山とおやじと菩提寺と明日良い天気
犬の名をくりかへしたる朧かな梓弓
朧踏む忠告は忠告として梓弓
待ちし人来ぬ橋戻る朧かなあたしは斜楽
何語ならむ人魚の歌を朧にて足立智美
この街を去る時告げる朧かな中はじめ
ふしゅふしゅと火を噴くキューポラ影朧at花結い
連なりて朧に見ゆる牝馬かな赤羽跳
朧よりビーズ刺繍の孔雀の目天風月日(天風改め)
眠りへの薬一粒なる朧天風月日(天風改め)
聞き慣れぬ言語朧の路地へ消ゆあまぐり
ボタン押す指が朧の中にあるあまぶー
姨捨の棚田を包み込む朧あみま
朧より髭濡れ濡れと猫出でぬ綾竹あんどれ
金婚の静けさに居る朧かな荒一葉
くどくどしき理屈を聞けば草朧荒井類
鼻濁音のガ行を浚ふおぼろかな新多
古き傷朧の奥に隠したりあらら
だまし絵ににらまれてゐる朧かなありあり
星おぼろ砲撃の地の黒と灰ありいかな
たましひのおぼろ戦火の滑り台有本仁政
フルートの音色濡れ初む朧かなアロイジオ
濃墨の乾きの遅き朧かな安
朧朧早よ寝よ鬼の来る前に杏樹萌香
交番は無人朧と待つジャージ飯村祐知子
タウンページを桴で叩いてゐる朧イエティ伊藤
後漢書の土色深き朧かないかちゃん
祖父の尿ぬくぬくとしてゐる朧生野薫
消えゆくや朧の森を白拍子池之端モルト
ともしびはうごめくまもの草朧イサク
傷翼の天馬が食んでゐる朧いさな歌鈴
噛み煙草吐き捨て馬を牽く朧石井一草
朧よりのつぺらぼうの現るる石井茶爺
質量のある夜風浴ぶ朧かないしきひさき
大海をマンタはばたく朧かな石塚彩楓
白湯うまし一人の刻の朧かな石原(花野)
足裏に母のこゑきく朧かな石原由女
朧やな轢かるるけもの過ぎ去りて石山日滔
街おぼろ近づく影が君になる遺跡納期
歩き出すマンドラゴラの根や朧石上あまね
剥製の目のうすよごれたる朧板柿せっか
門前の朧射抜けり仁王の眼いたまきし
囁きの輪郭なぞる朧かな唯茅古
故郷の甍をつつむ朧かないつかある日
セイレーンの鬼瓦笑む朧かな斎乃雪
三味線の朧に潜む神楽坂一秋子
嗅覚の鋭くなりて朧かな伊藤亜美子
あの世のこと考えてゐる朧かな伊藤順女
おぼろなり眼帯汚す他人の血伊藤ヒンナ
白孔雀羽根をひろげてゐる朧糸川ラッコ
逃れきて尼となりけり草おぼろ伊奈川富真乃
戒名は九文字と笑ふ朧かないなだはまち
木道の昏く濡れたる草朧稲畑とりこ
軟膏に指深々と朧かな犬山裕之
ぞろぞろと戦車60キロ朧井納蒼求
撚られつる糸とほりたる朧かな井原冴
喪帰りに合はす歩幅の影おぼろいまいやすのり
たまごぼうろぼろぼろこぼす子おぼろ居並小
独り居のボウロ溶けゆく朧朧イマスノリコ
朧へと人魚の歌に招かれて妹のりこ
巡検はフタヒトマルマル時おぼろ伊予吟会宵嵐
寒天のごとき内海橋おぼろ五郎八
真後ろに逢えぬ人居る朧かな岩木順
このあざはさっき転んだだけ朧磐田小
故郷のバス停ひとり野は朧ういろ丑
零時五分吊り革に手手手の朧植木彩由
好きだった人の自死知る朧かな上野眞理
駅長の笛うるみゆく朧かなうさぎまんじゅう
新橋の朧スーツの座り皺内田こと
廃校の朧が門を遠ざけるうちだまみ
髪切らば母の縮むや朧の夜内本惠美子
水牛の背に竹笛と朧なり宇野翔月
二階からラジオの響く朧かな梅木若葉
古都の夜や化粧地蔵の路地おぼろ梅里和代
先生が三人辞める朧かな梅野めい
遠ざかる朧の奥に父の海梅原もずく
猿山も象舎もしづかなる朧浦野紗知
朧なり萎れし鼓膜さぼってる吽田のう
セルロイド人形の孤独は朧江川月丸
朧かな廊下に一人父となる越前岬
福耳の人の悲恋を聞く朧越冬こあら@QLD句会
朧なり遠くの喧嘩きれぎれに絵十
朧かな夜の銀座の裏通り朶美子
古文書の文字化けのごと朧かな江見めいこ
一輪の最後の萎みゆき朧絵夢衷子
朧なる墓標ジゼルのアダージオえりべり
フアの音は朧に溶けてピアノ止む旺上林加
朧なり二夜つづきの君の夢淡海かこ
通夜の座の騒き離れて朧影近江菫花
ジェット機の遠くくぐもる朧かなおおい芙美子
転居後の靴底薄し草朧大江鈴
折る指が朧を詩に変えている大紀直家
閉園間近か廻る木馬の朧かな大熊猫@四句八句
朧にてぬぐう真珠のネックレス大小田忍
犬の鳴く声くぐもりぬ朧やも大阪駿馬
朧なるホテルのバーの瓶の棚大塚恵美子
京町家三階歪む朧かな大槻税悦
遠ざかる電車の音を録る朧大和田美信
雨後の雲やさしき宍色して朧おかげでさんぽ
いにしへの名を呼び交はす朧かな可笑式
朧なる祭祀の島に拝しけり岡田明子
朧なる独り住まいの警報音おかだ卯月
さつぱりと子宮失ふ朧かな岡田雅喜
夜半の猫朧を食みて膨れをり岡山小鞠
洗車機の遠くうなりて朧かな小川さゆみ
夜行バス見送りておぼろにぽつん小川天鵲
友禅の色挿してゆく朧かな小川野棕櫚
十字路に狐ふりむく夜の朧小川都
占ひ師の正面あいてゐる朧おきいふ
長編のしおり落として朧かなオキザリス
朧なり駅もドッペルゲンガーも沖らくだ@QLD句会
かくれんぼ声のみ残る朧かな奥寺窈子
密猟の銃声濡らす朧なりおこそとの
朧孕むメタセコイアの気息おだむべ
夜泣き止む母と朧に擁かれて落句言
喪服ぬぎ瞼のうらを朧かなおでめ
木琴を叩いて朧なお朧音羽凜
花嫁の部屋ととのひて朧かなおひい
このおぼろサックス聴かす石畳帯壱
切っ先のような4K朧の夜海瀬安紀子
吾の鼻蛇口に歪む朧かな海峯企鵝
あの人の吸い殻2本朧かなかえるL
終点の先へ線路の這う朧火炎幸彦
海おぼろ男を恨むファドの声カオス
おぼろおぼろ電動車椅子すーっ馨子.N
巫女舞の左右に満つる朧かな風早みつほ
泥川に朽ちゆく舟の朧かな樫の木
テープ切れ人も汽笛も朧なる華胥醒子
焼け跡の朧生み出す朧かな加世堂魯幸
効くツボを指もて探る朧かな加田紗智
まだら痴呆の父と朧を帰るかつたろー。
野良猫の命尽きるを知る朧桂子涼子
琴の音の途切れしあとの朧かな花伝
かっこいい石持ち帰る朧かな加藤ゆめこ
影一つうすずみとなる朧の灯加藤麗未
みづをぬりよるをたらして満つ朧カフェオレ草
山の端は朧に郷は捨てられず神長誉夫
朧満つ皮膚呼吸ひたひたと満つ紙谷杳子
どのビルもビルを映して街朧亀田荒太
回るとも見えず朧の観覧車亀山逸子
人いきれ朧となりて何処まで亀山酔田
爪切つて爪切り嗅ぎて朧かな加良太知
センセイと呼ばれ振り向く朧かなかりかり久助
川下へみづふとりゆく朧かな川越羽流
海朧名も忘れたる遠き恋河村静葩
朧なり回収前のゴミ臭うカワムラ一重
縄文の土偶と見つめあふ朧川村昌子
プラントの煙は垂れて朧かな勘八
野良猫にセンサー動く庭朧看板のピン
住み替はる生家の灯り朧かなキートスばんじょうし
折鶴の嘴硬し鐘朧岸来夢
朧なりこんぺいたうのひけぬ角北藤詩旦
草朧聞こえぬ声のきけたよなきた実実花
参道を行かば朧に入りにけり北村修
月面の微かに匂ふ朧かな城内幸江
酔ひどれの声残りたる朧かな木原洋子
釣舟の曳き波長く朧かなきべし
朧なる帰路をどこかの湯の匂ひ木ぼこやしき
朧なる森の向こうに外宮あり木村かわせみ
二上山朧の中を下山する木村波平
売却のモデルハウスの庭朧Q&A
夜の底へ薄墨しづか朧かな清瀬朱磨
微笑みの円空仏も朧かな桐野鈴子
目薬の舌の裏まで来て朧ギル
目薬のあぢの変はりて朧めく菫久
居酒屋で酔えず朧に酔う夜道銀長だぬき
仮御所の衣擦れ消えて庭おぼろ鳩礼
をんな念仏の御堂たゆたふ朧かな杏乃みずな
惨敗の眼鏡外すや朧濃し霧島ちかこ
イェス様の鼻の穴なる朧かな銀紙
新宿のネオン饐ゑゆく朧かな久我恒子
朧かな気の合ひさうな人ひとり葛谷猫日和
朧へと棚田をアルプホルンのファぐずみ
二十人お見合い終えて街朧くずもち鹿之助
この朧わが吐息なり鏡見る苦泉
焼き方を細かく説かれ朧かなぐでたまご
シンバルのさざれなみ立つ街おぼろくま鶉
ドアを押しだまされに行く路地朧熊谷温古
さそり座と答ふる声の朧めくクラウド坂の上
うしろから何かが付いてくる朧倉岡富士子
光のみ掬つてみせる朧浪倉木葉いわう
また同じ人が前から来る朧倉木はじめ
単純労働終へて朧の沁むからだ眩む凡
大橋や四国を後にする朧久留里61
旧姓をしるす履歴書朧かな紅さやか
缶コーヒーぷすと呟きたる朧恵勇
地下鉄は地上へ新天地はおぼろけーい〇
シマウマ舎曲がるジープや草朧げばげば
朧なほ蛹の翅の透きとほる謙久
廃校の甍の鯱も朧にて紫雲英
朧めく地下から零るバンドゥーラケンG
ビッグイシュー掲げ新宿駅おぼろ剣橋こじ
所持金は八円東京の朧小池令香
廃校の門のみ在りて朧なり郷りん
昨日までサーカスありし朧かな剛海
電話ボックス無人に飽きておぼろ公木正
セコムかけ午前0時の朧かな紅紫あやめ
朧なる梵鐘に夜はふくらめり幸田柝の音
朧なる車輪の外れた装甲車幸内悦夫
再検と言はれて帰路の朧かな宏楽
すいさうをなめるあろわなてふおぼろ古賀
朧おぼろ温き湯舟に乳の張り古烏さや
愛鳥が死んだとメール帰路朧こけぽて丸
豚熱の猪の死にゆく朧の夜小笹いのり
円覚寺の閉門後の朧かな小嶋芦舟
水郷の朧を借りて撮影隊コスモス
沖おぼろ小舟次々生まれ来る木染湧水
黒猫のオリーブの眼よ朧めく小だいふく
島おぼろ江ノ電軋む急カーブ後藤周平
草朧クレーン空に突き立てり後藤三梅
B1の出口登れば街朧来冬邦子
朧めくただ一弦をつまびきてこのねこのこ
皇居へと富士の龍脈おぼろの灯このみ杏仁
靴擦れを隠し御堂筋を朧虎八花乙
新しき戒名見入る朧かな小林のりこ
初めての一人暮らしの夜は朧小藤たみよ
金色に溢るる湯元朧めく五郎島金時
眠らない街が朧へ人を吐くGONZA
朧なるりんかく町の掲示板今藤明
星を溶くパドルの入江朧なり斉実篤
朧よりゆらゆら市電やって来るさいたま水夢
朧めく白蝶貝の釦かな彩汀
朧なる森に眠りし牙の夢さいとうすすむ
ミサイルの突き立ち眠る野は朧榊昭広
石で傷付けられ朧のボンネットさくさく作物
約束の子の窓開かぬ朧かな咲元無有
朧の灯貼り紙の猫に見つめらる櫻井りこ
薬師寺の怒髪神将おぼろなる桜姫5
朧のみこみつばめかはほりとなる迫久鯨
終電の錆びゆく音や朧めく雑魚寝
声明の地より湧きくる朧かな笹かま
怪我の犬抱きて朧のふくよかに笹野夕
下駄の音のふたつになりて朧かなさとう菓子
酔いさめて窓開くる夜の朧かな佐藤恒治
今生のさいごの尿や草朧佐藤儒艮
鏡面にみづうつすらと家朧佐藤里枝子
金網の大きく捲れ草朧里すみか
プロペラの響き征野の朧かなさとマル
悲しみを朧へ溶かす薬です真井とうか
おぼろにて満月ゆれる孤独ですさなぎ
朽骨は朧を破るやうに生え錆田水遊
路地裏に盛り塩の店灯の朧さぶり
さういえばのあとの沈黙の朧さむしん
頑なな京に朧や迷い猫紗羅ささら
鉄塔の紙細工めく朧かなさるぼぼ@チーム天地夢遥
舞台メイクのまゝ朧を逢ひに行く澤田紫
すり減りし靴底跨ぐ朧かな澤田郁子
忘れもの届いてないか星朧沢拓庵
舌に湯葉とろけて朧なる古都よ山海和紀
すれ違ふをんな狐に似て朧三月兎
点字触れ指の息づく朧の夜紫瑛
武勇伝延延新宿は朧獅子蕩児
朧なる鬼千匹の影を絶つ信田龍之介
くちびるに眠るかたちのある朧篠原雨子
対岸はおぼろ原発要らぬ島篠雪
またひとつ人形ふえてゐる朧渋谷晶
犬の無き犬小屋ひとつ朧なりしぼりはf22
朧なり冥王星は今静か島じい子
神庭に鈿女の舞や岩朧島田あんず
鼻唄とすれ違いたる朧かなしまのたび子
朧まだ君を忘れている途中嶋村らぴ
若鳩を父と待ちゐて朧かな清水縞午
一輪が転がる道の朧かな清水 三雲
横町の水かけ不動燭おぼろ清水容子
きぬずれに麝香の猛る朧かなじゃすみん
朧へとゆらり外湯の巡り札柊ニ
乙女座のをとこと酒を呑む朧朱河
朧にて吾が無気力を飼ひ慣らすシュリ
朧なり独りラヂオの深夜便じゅんこ
機械油と土の匂ひの朧かな春幸
鈍色の欄干の果て朧かなじょいふるとしちゃん
おぼろおぼろ機窓の都市の魚卵めく常幸龍BCAD
連敗に水銀灯の影朧正念亭若知古
朧にてバイクエンジン冷ゆを待つ四郎高綱
青と黄色のトゥクトゥク過る朧かな白プロキオン
チャーハンが旨かった町鐘おぼろ白よだか
弁天の琵琶持つ腕の白朧神宮寺チェルシー
匂い来る屋台を視野に朧かな新城典午
古文書は虫の墓地なり朧の夜新濃健
朧かな貨物列車の子守歌森牧亭遊好
空瓶に抜け殻残す朧かな瑞泉
龍の背を撫でて目覚める朧かな水蜜桃
甲板へ海ごと引き上げる朧すいよう
断続の深夜放送朧かな周防子
蝋石の汽車動き出す路地朧すがりとおる
甘樫に着けば朧の神の山杉浦あきけん
湖の天も水面も朧かな杉尾芭蕉
通学路に砂絵売りをり夕朧杉田梅香
浅草の迷子のしるべ鐘朧杉本果ら
神宮の風の朧の一過客杉森大介
雲おぼろ貝の番のゆるみける鈴木由紀子
駒音の止んで朧の日曜日鈴木麗門
踏み痕の鞄をはたく朧かな鈴白菜実
立ち止まり聴く駅ピアノ朧かな清白真冬
ストリップ小屋裏口の灯の朧鈴野蒼爽
ネオン街とおりゃんせ鳴る朧かな主藤充子
アロワナの鱗かぞへて朧かなすりいぴい
口論の男女行き過ぎ朧かな晴好雨独
朧めく遠きに端唄向島青児
蹴轆轤の音鈍くなる朧かなせいしゅう
映画館出でて朧の街外れ勢田清
朧にて歩行者Aとなりにゆく瀬尾白果
早々と暖簾を仕舞う朧かな瀬戸ティーダ
朧とはひかりになまえつけること世良日守
喧嘩して心に染みのある朧千波佳山
夜叉と化す我と向き合う朧かな惣兵衛
看板は残るラーメン屋や朧颯萬
転勤の町は朧で始まりぬそうり
父のつく嘘を数えて朧影曽我真理子
レイトショー終わり朧へ帰るなり素空
みづを溜めこらへし空の底朧外鴨南菊
朧中昨日の我と歩くなりそまり
ゴライアスクレーン軋みをり朧染井つぐみ
星朧ガラス花瓶に湧く気泡空豆魚
自分だけ電車が違ふ朧かなぞんぬ
妹の腕に傷跡谷朧太閤検地郎
地も人も字も科挙の夜の朧めく帝釈鴫
排水の長き濁音朧めく平良嘉列乙
ボウモアのグラス飲み干す朧かな高石たく
灯朧の向こうを爆撃めくネオン高尾里甫
水郷の街朧なる手漕ぎ舟 高木音弥
駅朧ディオールの香の左腕高田祥聖
草朧つないでくれない手の行方高嶺遠
浅瀬には流されぬ月風朧高庭銀雅
捨てられた椅子は傾き朧かなたかはし薫風
店朧硝子張りなるパンの棚高橋なつ
亡き友に空似の肩の朧かな高橋ひろみこ
伐採樹伐られし枝を恋ふ朧高橋ままマリン
朧めくKOUBANの灯滲みけり高山佳己
朧なり漱石の緋の長襦袢滝川橋
ネオン消えタバコのにおい朧めく卓女
車窓より朧の街は動かざる卓鐘
朧とは五感に浸潤する病卓鐘
知らぬ子に抱きつかれたる朧かな竹内一二
蔵カフェを深き焙煎音朧竹口ゆうこ
三夜目の荷解き始めて朧かな竹八郎
野面積みおぼろの山にもどりゆくたすく
朧めくアクアリウムの指紋かな黄昏文鎮@いつき組広ブロ俳句部
朧の夜窯に火入れの音にぶし糺ノ森柊
賀茂川の流れの彼方灯はおぼろ唯飛唯游
朧掻くネオンテトラの尾鰭かな多々良海月
シャンパンの泡立ち昇る朧かな橘萌香
あやかしとあそぶちちははにはおぼろダック
グラタンくつくつ三丁目は朧立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部
播磨までゆけば朧は晴れますか田面類
鉄線の棘をのみこむ朧かな田中木江
朧にもたまごが光る台所田中善美
黒猫のイゾルデが待つ朧かな谷本真理子
胡粉とき描く夜風や海朧玉木たまね
寄港地の酒と女と朧かなたまのねこ
水はさけ酒はみずめく朧かな玉響雷子
朧なるかつて山城ありし嶺田村利平
洗脳や友の目はこの朧のようダンサーU-KI
離婚式するのとK子。おぼろにて丹波らる
涅色のミシン踏む音の朧かな千歳みち乃
鎌倉の古傷疼く朧かな千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
靴音を含みてぬるむ朧かな澄心静慮
朧にてずんべらぼうのむこうづら蝶楽
名優の訃報速報星朧長楽健司
うたた寝のラジオにジュリー朧かなチョコ沢ブラウニー
朧めくアスベスト残りたる屋根月石幸
ドップラー効果の粘る朧かな月岡方円
おしゃかさまおぼろいだかれねてらしてつくも果音
一揖のマスクの女朧かな辻内美枝子
朧かな遺骨に残る六文銭辻野 花
一燈に軋む艫綱朧なり対馬清波
若き日の夫の手紙や鐘朧辻陽気姫
歯磨きのみづ生臭き朧かな土屋ひこぼし
すれ違ふ籠に五匹の犬おぼろ津々うらら
躾糸抜けて朧に消えにけり綱川羽音
こんなにも朧を吐いてさびしい樹ツナ好
朧めく並んですする屋台そば津幡GEE
街朧始祖鳥の影過ぎりたる露草うづら
吊革の握りは緩く朧かな露口全速
朧なりニホンギンコウパリシテン露口全速
本土への橋煌々として朧ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
ビートルの古き音する朧かなツユマメ末っ子10歳@いつき組広ブロ俳句部
野良猫の肥ゆなむ窓の朧めく弦欧淹
鬼瓦麒麟の首の朧なり哲庵
下北のラフロイグの香朧なり哲山(山田哲也)
パステルの指に残りて山おぼろてつねこ
墨を磨る手に力なき朧かなてまり
ゆつくりとセロの弓引く朧かな寺尾当卯
箱河豚に埋まる感触なる朧でんじゃらすババア
朧ゆくヒールの足音の正しさてんてこ麻衣
我ひとり朧の腹のど真ん中でんでん琴女
絵金の絵の濡れ場と化する朧かな天童光宏
たまりゆく青き朧の砂時計天陽ゆう
着流しにおぼろ泳ぐや朔太郎どいつ薔芭
朧なる佐野の渡し場消えて橋苳
由良川のおぼろ丹後鉄道の灯トウ甘藻
嘘ばかりつく男来る朧かな東京堕天使
虚数iのひかりをゆるす朧あり東戎
水の音は天へとかへる谷朧とかき星
城朧夜叉追い払ふ遠太鼓ときめき人
朧ごと抱へて眠るショベルカー常磐はぜ
綿菓子の噛めない甘さ朧かな徳庵
間違へし宛名の手紙着く朧独星
朧なる高架に浮かぶ追尾灯 Dr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
おみくじのやはき結び目朧かなどくだみ茶
朧なる泉鏡花の旧居跡毒林檎
9系統朧なる舟形の邑としなり
朧より九連敗のファンゆらと戸部紅屑
山寺の人魚の鱗朧かなとまや
鬼の子のひたひたと朧の夜は斗三木童
見つからぬ迎えの車朧濃し友@雪割豆
積み上げし砂上の城の朧かな登盛満
和紙染に滲みの走るおぼろかな富山の露玉
東大に行けばなんとかなる朧鳥田政宗
天井の木目たれ下がりし朧とんぶりっこ
古戦場の碑に遊女の名鐘おぼろとんぼ
をさな子の指の爪透く朧かな内藤羊皐
街おぼろ海に沈んだ文明みたい直
覗くなと言はれて覗く朧かななおじい
朧から抜け出したのにまだおぼろなかかな
コントラバス朧の底を震はせて中岡秀次
眉尻を少し付け足す朧かな中島圭子
海鳥や朧の波の柔らかさ中原柊ニ
今泣けば負け犬になる書の朧中平保志
手放した愛車出ていくP朧なかむら凧人
朧ってアフリカゾウのせいらしい新蕎麦句会・凪太
手に慣れし指輪抜きけり街おぼろ凪ゆみこ
生臭き夜を朧に包みをりなしむらなし
山手線ひと駅増えて朧の夜那須のお漬物
「六本木心中」くちずさむ朧夏草はむ
船頭の語りも岩も朧かな夏湖乃
ストレッチャーにぬいぐるみをり朧夏雨ちや
上澄みは秘色 朧の鬱の羽化七瀬ゆきこ
ため息の滴り落ちる朧かな七森わらび
海おぼろ満天荘はジャズに酔い菜々の花畑
餡子めくにほひは朧なる家よ⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
エルビスのバラードに目を閉づ朧名計宗幸
とりあえず会釈しておく朧かな名前のあるネコ
二杯目もシャンパン朧めくタワー奈良素数
家々に夜咲く花のある朧西川由野
友の死をうかと忘るる朧かな西爽子
母似なり朧の夜の骨と皮西田月旦
隣家より赤子泣く声朧かな西村小市
まろやかな湯を手に掬ふ朧かな西村棗
節電の要請ワンルーム朧二重格子
朧とは帰らぬ犬を想ふうた新田ダミアナ
母残し振り返る子の影朧二和田躬江
包帯を焚くや朧の生臭し仁和田永
明日は雨か藻岩山は朧なり庭野環石
針飲みし魚と海と吾と朧鵺之疾秋
夕星を湿す朧の比叡かな暖井むゆき
懐中電灯私を探し朧を来沼沢さとみ
海朧藍に載せたる緋の絵の具根々雅水
担任が入れ墨を彫る朧かな涅槃girl
倍音を自在に聴きたき朧なり野井みこ
朧なる弓へ松脂ぬりにけり濃厚エッグタルト
銀釵はおぼろ胡弓の釉野口雅也
ほろ酔いの甘き足取りめく朧野地垂木
朧とは特攻兵の弾く月光ノセミコ
朧なるオスプレイこの低周波野点さわ
螺鈿細工傾けて見る朧かな野ばら
弧なる灯も朧となるや諏訪の宿則本久江
日雇いとつゆ知らず朧の山房稗島塗小太郎
国生みの島はおぼろに岩屋港白庵
足つりて目覚む朧の町静か 白雨
おぼろおぼろ避難する民次々とパクパクポンタ
朧とは哀しきたましひの揮発はぐれ杤餅
海朧月の道消へはぐれし子橋本恵久子
藤沢の短編に泣く朧の夜馬笑
雲呑のつるり墜落して朧長谷川水素
おぼろおぼろおんぼろの舟もやひたる長谷機械児
所在無げな電信柱朧かな畑 詩音
一人呑む六畳がらん鐘朧葉月けゐ
母指球の脈打ち続く朧の夜パッキンマン
サポーターの声の轟く朧かなはっしー
どこからか獏の匂いがして朧八田昌代
朧かな叫びたくなる三丁目花内淳開
寝袋に潜りて見上ぐ岩朧花弘
生水は夜汽車の匂ひ朧めく花咲明日香
日の丸を降ろす喇叭や海朧はなぶさあきら
おぼろめく手書きの地図の拙さよ花和音
鳥葬や朧に蹲る背中はのん
探しをり厚き朧の結び目を葉村直
辻朧マネキン見れば見返さる林山千港
光る眼のあの猫百歳朧の夜原水仙
朧なる中華の街の二胡の音原田民久
羊水の匂ひにも似て朧かな巴里乃嬬
白峰をだいだらぼうにして朧播磨陽子
朧めく棚田だんだん迫る死期晴田そわか
帰り道酔わず迷わずただ朧晴菜ひろ
部品待つからっぽの棚朧かな葉るみ
耳塚や朧のなかの薄明りはれまふよう
朧なる戦場無辜の骸かなHNKAGA
不機嫌な背なか朧の庭に立つ東の山
休職を母に告げたる夜の朧東原桜空
波音を運ぶ大島朧なり東山たかこ
浮橋はゆらり朧をたたら踏む樋口滑瓢
月隠れ朧朧と山が寄る菱田芋天
反戦のキリル文字見え街朧美竹花蘭
全島沈黙地平ハ朧ナリひでやん
寂しさの喉に溜まつてゆく朧日向こるり
仄甘き十円切手朧かなひなた和佳
遺書を書くためのペン先朧かな緋乃捨楽
分子へと還る朧を吸ひ込んで比々き
海朧輸送檻で死すキリンの子ひまわりちゃんRIP
樹木葬で良しと決めたり朧の夜氷室茉胡
こぐま座の大きく見えて朧かな姫川ひすい
朧なり引き込み線の踏切音日吉とみ菜
孵卵器の孵らぬ卵朧かな比良田トルコ石
理科室の孵卵器昏き朧かな平本魚水
水掻きの跡の疼いてゐる朧広木登一
朧より龍の鼾のやうな風広瀬康
仏間なる表彰状の朧かな弘友於泥
縄文の民現はれん朧影風慈音
ほろ酔うて泪ほろほろほろ朧深町明
鮮血のくすむ速さの朧かな深谷健
補助線を引くも朧の初等幾何福川敏機
谷朧赴任地行きの夜行バスふくじん
立入禁止の立て看朽ち朧福ネコ
朧なり登った先の剣が峰福弓
サファリカー囲む朧の気配たち福良ちどり
裏切った理由など無い朧かなふくろう悠々
廃校のカーテン揺れて草朧房代ちゃん@いつき組広ブロ俳句部
膝を抱く少女まあるい影朧藤井眞魚
大金の財布を拾ふ朧かな藤色葉菜
朧の夜嘘発見機があればな藤倉密子
草朧マザーグースに数え唄ふじこ
朧には隠したいものがあるのさ藤咲大地
すれ違ふひとに尾を見し草朧藤田康子
ビル朧アヤの面接ピンヒール藤田ゆきまち
銀河めく空はおぼろに歪みをり藤田流歌八歳
母逝きて猫の爪切る朧かな藤原涼
朧なる星影ヒトゲノム機関藤雪陽
朧なる廃墟や戦争反対藤原訓子
朧には硝子と氷と琥珀だけ船橋こまこ
身に籠る梵鐘の音朧の夜赴美榮
膀胱のしくしく痛む朧かな文月さな女
逆鱗はちょうど朧の眼のあたり冬のおこじょ
海朧見えざる者と手を繋ぐ冬野とも
潮溜まり饐えて朧の臭ひだす古瀬まさあき
夜や朧ボトルキープに亡師の名ふるてい
風琴の朧なる丘より聞こゆ碧西里
塗り重ね削る油絵朧かなペトロア
月丸く我に優しき朧かな鳳凰美蓮
東山魁夷一本道と言う朧墨純
鐘朧あづまやあまき数え唄ほこ
彫物のあるてふ背中追ふ朧干しのいも子
たましひのお散歩ゆらり朧ゆく星乃ぽっち
転職前夜コンビニを出て朧ほしの有紀
草朧目隠し鬼の鬼は嫌細野めろん
鱗粉のふわりふぅわりと朧ポップアップ
朧なる土嚢の口の開きたる堀川彗直
魚の臓どるんと吐き出され朧ほろろ。
元妻の墓参朧を子と歩く凡々
朧なる多言語の街またあした梵庸子
うすにごり杯をあふるる朧かな凡狸子
籠り居の溺れさうなる朧かな前田冬水
天気痛頭痛耳痛鐘朧茉叶
投函の響きは鈍し町朧まがりしっぽ
もう会はぬ人とタクシにゐて朧牧野冴
ホモサピエンスの星は朧に浮かびをり牧野敏信
四期目の選挙ポスター朧かなまこ@いつき組広ブロ俳句部
オルゴール巻けば朧や森のおとまこちふる
月曜のタワークレーン朧かな正岡丹ん
運ばるる粥を啜りて朧なりまちる
烏の国に轍新し人おぼろ松井酔呆
戦火去ぬ朧々や地下の壕松尾祇敲
生き死にの扉数へて鐘朧まつたいら西
さなずらは薄紫の朧かな松高網代
人工の骨よ朧の熱帯びてまどん
朧かな歌ふ子小さき鳥に見ゆまめばと
四つ辻の野犬の群れや草朧丸山隆子
赤鬼の泣きて朧の満つるらしまんぷく
薔薇窓にミサの残響星おぼろみい
野良猫の髭に触れたる朧かな三浦金物店
ばば様の口承囲む谷朧三浦にゃじろう
ひとりきり酔うて朧のすべり台帝菜
イヤリングはづし素数の朧かな三茶F
砲弾の穴より見ゆる世は朧三島瀬波
吾子泣きてまた乳をやる朧かな水池葉蘭
朧より遮断機の音あらわれりみちむらまりな
朧めく臨時警備のこぶたカフェみづちみわ
子を可愛いと思えない朧かな光峯霏々
へたくそな口笛の来る朧かなみつれしづく
おぼろおぼろ猫の名前が決まらない水上ルイボス茶
石段を登る朧の中にいる水無月葉子
校庭に人影朧バット振る湊かずゆき
椰子蟹がタイヤを登る朧かな南風の記憶
朧道吸はれる車列吐く車列みなみはな
写経する朧の墨のみづみづし宮井そら
みづのなかのごとバス来る朧の夜三宅雅子
もたれかかる肩の無き朧のベンチ宮坂暢介
穴といふ穴へ朧の沁みゆける宮武濱女
砲弾の穴あまたなる朧かな宮部里美
おなかにはおなかを蹴る子朧めくみやま千樹
朧なる竹林ぬけて能楽堂宮村寿摩子
寝静まる朧の底や終電車宮村土々
朧道ここは銀座の八丁目みわ吉
乳吸うてまどろむ吾子や朧なり夢雨似夜
東京はおぼろ言葉がしおからい麦のパパ
まなこ差す影青々と朧かな麦畠案山子
一拍の長き弔辞やみな朧椋本望生
ゼラチンのような微睡み朧かな無弦奏
船底に黒潮ひびく朧かな向原かは
岩礁の波音ほどけゆく朧武者小路敬妙洒脱篤
傷口を朧に癒す野良の猫睦月くらげ
朧なる事故原発の建屋かな無門
肺臓へはこぶ朧のひとすくい村上牛蒡
ドアノブ冷たし朧艶めかし紫小寿々
本日の朧は空を洗ふため村瀬っち
朧の夜街の輪郭重々しむらのたんぽぽ
朧かな閉めて久しき歯科医院目黒千代恵
旅の宿目覚め朧の花街へ茂木りん
革靴の硬さに慣れし朧かなモコ
朧の灯かしこで終える長手紙桃香
朧めく土間すんと鳴る猫の鼻桃花@いつき組俳句迷子の会
月と龍まぐわつてゐる朧かな百瀬一兎
海おぼろチャペルゆつくり海を打つ百瀬はな
始発待つ街の空白朧めく桃園ユキチ
裏木戸の鍵をかけずにおく朧ももたもも
縄のれん出て犬なつく朧かな森佳月
くちびるでさぐるくちびる朧めく森日美香
朧なる腐海の果てにある冀望杜まお実
朧めくスカイツリーは膨張す森 毬子
草朧古墳に眠る渡来人森佳三
引継を引継いでいる朧かなもりさわ
門限をとがむる人もなく朧森田祥子
答え探して朧の古書店街森中ことり
銭湯の戸のきゅるきゅると朧かな森野しじま
外灯にイノシシよけの柵朧森の水車
風呂の窓開けて甘やか庭朧森山博士
川暮れて魚汁喰わばまた朧もろ智行
もう戻ろう神隠しめくこの朧痩女
富士おぼろ酸素の管の車椅子柳川耀一郎
ドラマーの代役探す朧かな簗瀬玲子
学校へは行かぬと決めた夜や朧矢橋
文字小さき手術同意書家朧八幡風花
跳開のせぬ跳ね橋の朧かなヤヒロ
灯台の灯は朧なる海を撫で山内彩月
朧なる島へと舟は恋揺らし山口 絢子
森朧低く漏れくる子守唄山口一青
朧なる雲吊尾根を乗り越えし山口香子
街朧もう転職の話かな山崎砂絵
風見鶏の真珠色めく朧かなやまさきゆみ
草の香にそぞろ歩きのおぼろかな山育ち
湯に浸るやうな息して草朧山田蹴人
朧軋むや誘導棒の老躯山田蚯蚓
をんなやもめはつちやけてゐる朧かな山本先生
カーナビに導かれてや海朧唯果
番台へおやすみといひ朧へと柚木みゆき
真夜中のカーブミラーも朧なり有野 安津
運命線さがす占ひ辻おぼろ宥光
停電の何も無き夜庭朧床寝虫
朧めく坂の誘拐未遂かなユ綺
ハイウェイを誰か歩いてゐる朧雪井苑生
星朧ほわり点きたる真空管雪音
伊予灘の汽笛耳鳴りめき朧ゆすらご
聞こえくる岸のオカリナ朧かな宙美
豆腐屋の隣の更地朧なりゆりのゆき
開けっ放しのカーテン重くする朧宵猫
裸婦像に孔ひとつ無き朧かな八日きりん
朧おぼろ妣の髪なる針山よ羊似妃
上京せし子の標本のてふ朧夜香
詩に満たぬもののけはひのして朧横縞
煮炊きする夫のつぶやく朧かな横田信一
散乱する肉片一つ一つ朧横浜J子
灯がともる街に芸妓の朧かな横山子守熊
朧なりデシリットルといふ単位横山雑煮
朧へと歩きて長針ずれてゐる吉川拓真
山の吐く匂ひ沈もる朧かな吉武茂る
この街も去る夜となれば朧なりよした山月
荷造りのガムテープとぎれておぼろ吉行直人
海朧失くしたものが苦くてね夜紫遠
都電待つ面影橋の朧かなラーラ・K
オンボロ朧ボロボロ吐瀉物羅蒐
草おぼろ龍の眼玉はてのひら大RUSTY=HISOKA
夜行バスシートへ沈む朧かな楽花生
筆止むる履歴書窓の朧かな蓮花麻耶
ショベルカー朧をつかみ取ってゆく若宮直美
新月の薫りしたたる朧かなわたなべすずしろ
愛児抱きロシア民話を読む朧笑笑うさぎ
渡月橋朧となりぬ舟一つ愛華沙羅
浅草寺矢切の渡し鐘朧空木眠兎
浮御堂おぼろに浮かぶ鳰の海洒落神戸
寄席帰りの不忍池朧かな沙那夏
寄席はねてスカイツリーの朧かな季々諧々
遠吠えを呪文と怯ゆ朧かな砂楽梨
終着のかたちは無限おぼろなり蛙里
螺子巻の柱時計の奥朧アンサトウ
君ともす窓は灯台おぼろかな郁松松ちゃん
朧なりきみかこむわにとほきわれ靫草子
草朧一匹だけ吠えてる向き右快晴ノセカイ
亡き父と晩酌したい朧かなきみえは公栄
水占の貴船は朧「好き」京野秋水
球審の判定響く朧かな清永ゆうこ
人見知りの幼子に引かれ朧銀髪作務衣
友の手に盗品見たる朧かなくぅ
墨薄め朧の空なり生温い楠美翠
時告げる振り子時計や庭朧國吉敦子
朧かな二人でくぐる赤暖簾桂月
喜びも憂も溶かす朧かな柑たちばな
もの想う睫毛重たし朧かな幸織奈
吾一人リンチされし日朧かな古賀ちん
山朧慣れぬ介護の車椅子小杉泰文
朧なりガリ版の字の曲がり癖小山秀行
雄叫びも遠く朧に一夜城西條晶夫
幾島の流れの中で朧漕ぐ埼玉の巫女
青と黄の灯りそびえる山朧宰夏海
最寄り駅けつこう歩く草朧さ乙女龍千よ
庭朧あそびつかれて眠る象齋藤杏子
朧にて眠剤飲まず彷徨えり坂上一秀
沼蝦の天衣脱ぎ垂る朧かな桜よし榮
「正解」は前進なのかしら朧澤野敏樹
朧にて苗字のゆゑんたどりけり品川笙女
鳥の声朧に聞けば鬨の声写俳亭みの
白白しいババアめ朧オレハボロ鈴ノ樹
朧めく喘鳴軽く薄荷飴染野まさこ
征く人の背に夫観る朧かな田上コウ
君待つや朧めく工場街を疾り抜けただ地蔵
朧の夜おどけピエロは去って行き谷相
再開のドイツ語講座朧かな道見律子
七回忌布施だけ送る朧かな遠峰熊野
温泉への移住計画練る朧独星
朧なる雲や川面に蘇るどこにでもいる田中
「ただいま」と隣人の来る朧かな内藤未来仁
戒名の夫に懺悔の朧かな中瀬すみっこ
廃神社草木を纏い朧なり名草
朧めく七十刷の「絵のない絵本」夏風かをる
こめかみの疼く会食朧かな夏雲ブン太
朧から邪気を吸うてか四十肩ノアノア
調律を頼みしピアノ朧なりはくたい
秒針に追いつかぬ日々朧かなはごろも856
朧めく病床に浮かぶ濡れ枕長谷島 弘安
去る君の熱と輪郭朧かな畠山悊央
くつ洗う泥遊び後の朧かな花はな
珈琲の美味さ解らぬ吾子朧ぱぷりかまめ
朧なるメリケン波止場の長き足浜友輔
白舟のくゆる朧に羽を震わす針子乃音古
愚痴を吐く四十路女を朧かな万里の森
定年の家路につづく朧かな樋口ひろみ
片方のピアス失い朧かな昼寝
上り坂今日もふたりよ朧なり蛭本喜久枝
板前の煙草休憩朧かな広島立葵
同窓会朧の先の待ち合わせひろ夢
月の王皮膚に交わり朧かな深川佳子
この街の涙集むる朧かなぶちのハチワレ
黄金舞う鎮守の森や野狐朧不洋
寝ずの番車座包む朧かな北欧小町
不眠の子と深夜卓球朧かな星月さやか
お疲れとズームはぷつり朧なり星善之
すれ違ひしは仇ならんか朧堀隼人
ささやきの会話途切れて朧かなまつとしきかわ
リモートの師の声遠い朧かな松原隆雄
星ひとつ記憶の欠片朧かなまやみこ恭
琴の音のほろり俯く朧かな円豆蚕丸
朧は鬱高みに行かず心に這う水乃江辰
食べて吐き「バカみたい」泣く朧かな巳智みちる
お試しの彼氏女々しくなる朧港のパン屋
糸切れし操りのごと朧なり美村羽奏
妣使う箪笥残れる家朧みやかわけい子
もう一つ塾弁作り朧かな雅乃珠晃
口喧嘩矢切のわたしは朧にて妙
朧より妣の現るる気配かな未来に詩編む
トネリコのテニスラケット草朧ミラベル
つなぐ手はおとぎ話や庭朧むねあかどり
灯朧や母のバイタル戻る夜半無恙庵閑酉
背伸びして手を振る人や草朧紫草
漉き込みの花の恋文おぼろかなメレンゲたこ焼き
朧めく外灯側の千切り哉本村なつみ
柵越しの朧の麒麟涙ぐむmomo
介護終え朧纏うて帰る路森翠
銀輪の目映く過ぎる朧かな八重葉
コンビニにお握り並べ町朧矢口知
友逝て朧に暮れるとことはに山口雀昭
谷朧第六感の鋭利なりめの常盤
朧めく屋根のぼる猫空咥え吉岡幸一
齧られし輪郭の街朧かなよし季
叱責のzoomを閉じて庭朧吉田郁
アルプスの山の端重なる朧かな吉田びふう
危篤なる母へと急ぐ谷朧余田酒梨
母初日泣く吾子ゆする朧かなよよ
せせらぎを遠くに聴いて朧かなリコピン
ぽやぽやみなみピラカンサスのとげ朧龍桔花
秒針に脈どくどくと家朧流流
風人の凝視している朧かな鈴音
歯の隙間あまくくすぐる朧かなるんやみ
犬任せ行くの戻るの草朧麗詩
毒呑めば迎えてくれる朧かな烈稚詠
城崎の夜店朧や焼き団子紫雲英田
朧めく塔婆の文字もにじみけり煉獄佐保子
路地に入る「痴漢注意」の朧かな和光
白湯の味窓辺で探す朧かなわたなべいびぃ
秘密めく朧となりぬ水路閣渡邉竹庵
窓に母似の顔映る朧かな渡邉わかな
地球儀を抱え朧を迷いけり和山しなもん
過ぎし日の朧のなかの片思ひあ・うん
朧かな母の餃子のたたみ方蒼空蒼子
朧めくパネルを貼りし山は死ぬ赤松鴨
朧めく月の在り所に思ひ入る秋吉孝治
嵯峨志なる道は朧に山に入る芥川春骨
乳飲み子の泣訴朧なる秒針朝霧七海
亡き母のラヂオネームを朧かな朝倉カグラ
抜足と差足交差する朧あさのとびら
深夜2時朧な闇を笑んだピエロアシツノカラ
朧の向こうに微かなれど軍靴飛鳥井薫
リュウグウノツカイゆるりと宙おぼろat花結い
琵琶法師の語る「芳一」朧めく渥美こぶこ
言いそびれ残り香消える朧かな数多
知る人も知らぬ顔する朧かな数多未完
白粉の残り香ほのか朧かな雨戸ゆらら
落人の里はもうすぐ朧道あらかわすすむ
一万歩おぼろの中の力み抜け阿波オードリー
鯉龍へかはり昇天谷朧安春
朧に包まれジェイソンが来る金曜日粋庵仁空
瓜売りの早口言葉を噛む朧いくたドロップ
振りむきて姿たしかむ朧かな池内ねこバアバ
朧めくべとべとさんに譲る道石上あまね
空床の音赤色灯の朧市川隆一
今日の野の写真見返す朧かな井中ひよこ号
朧なか癖ある歩み老いて妻稲葉雀子
釈迦の掌に乗り居るがごと朧かなゐのかたゆきを
朧めく往来妣に似たる人うからうから
草原の朧や象の糞の湯気宇田建
酌み交わす父子本音の朧かな越後縮緬
五次会へ二人朧を蹌踉と大黒とむとむ
喪帰りのひそひそばなし朧かな大庭慈温
路面店唐揚げばかり朧なり大谷一鶴
反戦の声もあげ得ぬ谷朧岡井風紋
かわたれに鐘の音溶ける朧かな岡崎俊子
海老天の衣くづれてゆく朧沖原イヲ
朧にて夫の寝言を反芻すおぐら徳
鏡には老けた女がああ朧おざきさちよ
朧なりそろりそろりと野良なつくおさだ澄恵
自転車からり裾ぴりり鐘朧尾頭朔江ヱゐチ
店朧ずっと勧誘されているオペラ座の俳人
中華屋の点訳メニュー朧めく海音寺ジョー
ぼそと経読む母の声朧かなかいぐりかいぐり
朧なり空家の窓から人形の目海堂一花
片寄りの脱水エラー音おぼろ灰頭徨鴉
詰め物のぼろつと取れし歯や朧風花まゆみ
朧なる気のよこたはる山の裾風花美絵
朧めき月に龍神昇る夜花純
飲み飽きて氏神社に棲む朧風早杏
六畳に五兄弟寝る朧かな片岡六子
草朧顔無き人とすれ違ふ花伝
薄墨のかなの連綿朧かなかぬまっこ@木ノ芽
龍笛へ牛若丸の呼気朧かねつき走流
鐘朧怒るでしかしとラジオから亀田かつおぶし
黒髪の誉れでありし朧なり亀の
朧なり塗り絵食み出す赤明か唐草もみじ
朧めく限界団地の静けさカワウソヘイヤ
トリは夢八心斎橋朧めく閑々鶏
潮の香の熟るるピアスの穴朧喜祝音
立ち漕ぎの娘の帰り待つ朧かな季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
浜朧踏切の音の橋袂北村崇雄
喉仏鎮座まします骨朧キッカワテツヤ
生きものの夜の涙を朧とも木寺仙游
脱衣場のタオルごわごわ朧かなきなこもち
蝋人形歩み寄れずに朧なり木根川橋デイジー
カド見えぬ朧の中を白く在り321ちいに
吾は三十七兆の粒朧めく藍色の時間
夫を捨て君と行く道朧かな藍雅凛
馴染まぬ新しい靴駅も朧相沢薫
いいねするだけ中指の朧かな青居 舞
涙ぐむ景色朧と思い込む青橘花
ポチと居るうす暗闇の朧かな大竹八重子
生真面目の人より返信の朧青に桃々
中陰の君訪ね来る朧の夜あおのめ
おしやべりの夫のゐるけふ朧なり赤尾双葉
尺八の朧に漂う音色かな赤子沢赤子
はらはらと涙のぬか床の朧明惟久里
今日は富士と丹沢朧に見え聰子
里想う朧に溶けゆく月と雲秋田白熊
キリストの救いを求め朧かな昭谷
話さずに対向車を数え朧彰乃泉
咲けば散る生ずれば逝かん朧かな秋野香
おぼろ月すれ違う人みな朧秋山一男
朧なる野道歩けば黄花みゆ秋代
次のバス気がかりに待つ朧かな芥茶古美
迷い犬朧の町に溶ける聲あさいみどり
列をなす朧震える月の夜浅井誠章
わが齢検索している朧かなあさいふみよ
打刻して朧をひとつ深呼吸朝雲列
遠近を走る男の腕朧朝方静流
メモ紙のガールズトーク朧かな淺野俊也
達成感朧の中にとけていく亜紗舞那
朧庭これが二杯目濁酒あすなろの邦
波の糸素足にからむ朧かなあすなろの幸
長髪を輪ゴムで結ぶ朧かな麻生ツナ子
朧行く電車に爺の標準語新子熊耳
覗き込む形見のカメラ星朧akkotas
草朧鳥ホバリングす夢現つsakura a.
遠き国の戦況を聴く夜朧天川滴翠
行き違ふシャネルの香り朧なり天野幸子
5ページで栞挟めば朧かなアマリリスと夢
遮断機の束ねる人の影朧雨霧彦@木ノ芽
朧めくライトアップのスカイツリー雨李
カーテンを閉める音まで朧めく荒木俊充
忘却の彼方の母へ鐘朧荒木豊
故里にあの君の亡し朧かな有本俊雄
日が沈み朧泣きしやあわあわと在在空空
ものものしデモの気配去り朧飯田淳子
ことことと暗き厨の朧かないくみっ句
キーウかな国後の灯のなほ朧粋田化石
カイゲンの包みに字足らずの朧池内ときこ
ひもといてほどける謎のなおおぼろ池田悦子
眼鏡とり世は朧むべ五芒星池田華族
君の声朧に溶けし逢瀬時池ノ村路
ゲーム漬け三日徹夜の朧かな石岡女依
退勤のスラブの人の背の朧石垣エリザ
見覚えばかり角なき家の朧石川あ世楽
草朧ゴールを逸れていくシュート石川巴里
朧かな四方の山並み遠のけり石倉啓子
遠吠えに合いの手ニヤリ朧かな石の上にもケロリン
谷朧団地の灯にじむ名画かな石原直子
朧なり銀河に浮かぶ青き星石間毅史
晴れの日の母の手握る朧かな泉恵風
路地よぎる素早きものに朧かな和泉攷
鶏舎をもふんわり隠す朧かないその松茸
トイプーの毛玉切り取る朧かな磯むつみ
引く波に砂サラサラと海朧市川りす
介護する君にうなづく草朧いちご一会
孫待つ身箱に終いし朧かないづる葉
緑道に五位鷺一羽夜の朧伊藤節子
訣別は微笑へとけておぼろ橋伊藤治美
ハイボール檸檬の混じりゆく朧伊藤柚良
押入れの手紙の束やおぼろなる伊藤れいこ
他人事にしたい現実湧く朧イトートア
ネオンの灯畳紙の結び朧なる伊ナイトあさか
LED消して飛び石とぶ朧稲葉 こいち
形無く遠く近くに波おぼろ伊縫音々
露天風呂人の姿のおぼろなり井上幸子
朧に吸い込む一合角打伊吹はたき
木の芽みな寝静まりたる朧かな今井淑子
亡き人の笑顔を見たる朧かな井松慈悦
戦闘機朧の時も飛んで行く今西知巳
天空の竹田城跡朧なり入江幸子
靴ずれに絆創膏貼る朧かな彩人色
岩木山歩み寄りたる夕朧岩清水 彩香
パレットにたつぷりブルー朧なり岩橋春海
ライトアップ月が遠くに朧げvivi
朧なる鬼籍のはらから思う夜植田かず子
湯けむりの溢るる街並みの朧上原淳子
寄合でケンカ朧の田舎道うさぎと
戦国風クルーズ船や川朧宇佐美好子
喚鐘や父命日の朧かなうた歌妙
朧道子の身案じる母も一人宇田の月兎
PC閉じ眼鏡むしりとり朧うつぎゆこ
重奏の汽笛の響き海朧海口竿富
金賞は旅のはじめの海朧海葡萄
朧めくジャケットの袖ふれさうな梅井さきこ
ピカソの絵吾は分からぬ朧かな梅尾幸雪
月レモンポタンポタンと朧のもと梅原宏茂
朧とは十代の子ら夜回りす浦文乃
終電車眠りの街はおぼろかな麗し
傘寿夫病妻抱え朧かなS葉子
遅々として済まぬ荷ほどき庭おぼろ蝦夷野ごうがしゃ
夕朧時をかけそな通学路江藤真治
甘噛みか亡き猫とふぁふぁ朧にて榎風子
靴歪みあてなく歩く日の朧戎居多佳子
空見上げほんわか気分これ朧えみばば
靴音も影も朧に消えにけりM・李子
横顔の虚言やさし朧かなえりいも
通夜の帰途一人になるは朧なりえんかず
朧なり三回違ふパスワード遠藤一治
北の果ての朧に君と会ふてより遠藤千草
二十歳なり朧にそびえるスカイツリー遠藤波留
窓の先朧が忍び泣いたよな遠藤百合
ホームランならず朧に塞がれて遠藤玲奈
ベランダの一服スカイツリー朧大泉まる丸
目惚る都市今色褪せて朧かな大江戸小紋
ほろ酔ひて店を出づれば朧かな大谷如水
灯朧アデニウムの胴切りす大野静香
朧めく老人会のうた流れ大野美波
背を伸ばし疲れた顔に朧かな大原妃
珈琲の湯気を吸い込む朧かな大原雪
朧めくなぜかドライブ墓参り大道真波
山麓の百年の家おぼろなり大村真仙
朧雲一人で立てるよ膝の傷大本千恵子
師の訃報遠くに聴きて闇朧大山小袖
巡るやら現場職人目に朧岡崎見風
列車待つ友の瞳の朧かな岡田瑛琳
参道の小石にともる朧の灯岡田恵美子
朧なり制服の裾上げし日は岡田酔夏
ラジオからユーミンの曲夜おぼろ岡田ぴか
朧げに山の地蔵の辿り道岡塚敬芳
山くだり溢れる朧庭にくるオカメインコ
母さんに見え手を振りし朧かな丘るみこ
ドリーム号発って東京タワー朧小川野美卯
篝火の舞台包める朧かな奥田早苗
お好み焼きの音見る母の朧かな奥野悦穂
工事場の点滅灯や赤おぼろ𠮷川壽一
残業の帰途の信号朧かな奥の昼行燈
吾のために塗るマニキュアや朧めく小倉あんこ
赤軸の万年筆の朧かな小栗福祥
会話へりかさむ小銭朧なりおさむらいちゃん
輪郭は朧あなたの声聴けば小沢 史
青と黄の国旗色まとうタワー朧お品まり
悪しき悲しい戦い朧に消えよ尾関みちこ
叱られてぷいと出にけり草朧音のあ子
灯台の光優しく朧かな小野寺さくや
ビル刻むTokioの空も朧とはおぼろ月
コロナ過ぎネオンの朧つかの間か小山田之介
朧めく小雨降り込む停留所菓果
サーファーの減りし房総海朧諧真無子
孫の手のぬくもりあぜ道は朧案山子@いつき組広ブロ俳句部
待ちぼうけ川面の月も朧なり梶浦和子
喜寿と古希かわすグラスの朧かな鹿嶌純子
痛み止め眠けを誘ふ朧かなかじまとしこ
朧なる虐待独裁者を責む柏原淑子
沖を行く船や朧を切り裂いて交久瀬小夜時雨
バンドゥーラ音色の哀し海朧花鳥風猫
向こう岸架かる大橋朧かな勝瀬啓衛門
徒長せるパセリの花や庭朧克巳@夜のサングラス
蛇の目傘庵吸い込まるあか朧桂葉子
見上げて微笑む朧の中で加藤智子
街の灯が朧と消えゆ夢に酔ふ加藤雄三
改札に泥眼立ちぬ朧かなかなえの
チョコミントアイスを齧る朧かな仮名鶫
朧なる門灯見えし我が家かな金子あや女
朧めく初心者マーク夜のみち兼子さとみ
庭朧うつつもおぼろ更けてゆく金子真美
運命の裏木戸おぼろクリスティかぼちゃん
朧めくピンクムーンとシャンパンと釜眞手打ち蕎麦
あえかなる細道一本草朧神谷米子
おぼろめく生ある限り水のように亀井汀風
酔ひ醒ます朧は風も微かなり亀田稇
芝居はね温き夕空朧めくかめよかめ
彼の頬少し湿りたる朧かな加裕子
朧雲明日は洗濯乾燥機翡翠
いろはにほ暇に記す朧かな川端芙弥
人混みのほこり懐かし朧なり皮むきごぼう
ぱっしゃんと魚が跳ねる朧かな川村記陽子
朧にてトレーニングの表情筋川村湖雪
草朧眼鏡を変えてペダル踏む神田優梨
ただ朧白一色の供花抱く邯鄲
三面鏡朧に映る父母の顔漢方十七錠
小説の抹茶カフェの戸朧かな紀杏里
制服の裾ひるがえし路おぼろ岸本元世
朧なる中洲のネオン屋台酒酒暮
さよならのテールランプも朧なり喜多吃音
風呂上がりちょっとうたた寝おぼろかな北岳あきは
観光バスのうしろほつほつ朧きのえのき
古難し友と朧のコップ酒きのかずお
朧なる空を裂くかや鳥の鳴く木村修芳
ジョギングの靴音かすか道朧木村となえーる
朧めく街灯誘ふ異空間教来石
待ちわぶるひとなき家や朧めき工藤悠久
人待ちの駅朧を纏ひつつ久埜見永
宙船は何処に降るや海朧窪田睡鯨
新聞手に読めずアラ還朧かなぐりぐら京子
あわだてきつりさげてある朧かな栗田すずさん
にやおと声したよな道の先朧空流峰山
茶も冷めてトランプ占い朧かな黒瀬三保緑
花粉さえ朧となりて夜が更ける黒田良
吸い込まれ「止まれ」の赤の朧かなクロまま
ひと気なき帰路を急ぐや草朧桑田栞
ああ朧彼の地の戦火画面越し桑田さなえ
衣濡れともしび朧そぞろゆく桑原和博
朧めく一人ぽつりと立ち尽くしくんちんさま
里山の朧になりて目に染むる景清華
夕まぐれビバーク谷に朧の灯鯨野
ほろ酔いに艶めく外気朧かな欅山四十八景
消えてゆく二人の姿朧かな元喜@木ノ芽
歩む先朧の向こうの月あかり研さん
朧なる星に指さし父呼ぶ児源氏物語
お姫様扱いしてよ朧かな研知句詩@いつき組広ブロ俳句部
朧めくコンビナートのシャッター音こいぬ
横文字の単語飛び交う朧かな香田ちり
歓声も滲む朧のスタジアム古賀粋漢
芝居はね人ちりじりと朧影ココヨシ
就活生重い足どりビル朧東風えり
セットリスト思い出しつつ朧かな古都鈴
バロットのいた世界は朧「またね」粉山
掌を零れゆく時間も朧木幡忠文
銭洗弁財天の朧かな小林昇
さざめける湖畔の波の朧の夜小松小雪
飲み込んだ言葉は多し朧かなこむぎ
マイナスをプラスに出来ぬ朧かな小山晃
今の世は朧に映る鏡かな小山祐治
朧より長鳴く汽笛跨線橋今野淳風
幽界を迷いて帰し子目の朧西條恭子
物音に目を凝らしたる家朧斉藤巻繊
照らされた白黒の城朧かな齋藤鉄模写
カンヴァスに孤独重ねて朧かな坐花酔月
荒庭に光る眼ふたつ朧かなさかたちえこ
棟上げの済んで堂々たる朧坂まきか
里山も朧を纏い薄緑 坂本千代子
おぼろかなおからドーナツ並びをり相良まさと
灯台の点滅明かし海朧咲弥あさ奏
サイレンの灯り止まりて朧の夜さくやこのはな
羽衣や雫ひとはけ朧かなさくら亜紀女
手をつなぎ妹と帰る道朧櫻井こむぎ
常夜灯台所は朧眠れぬ日櫻井弘子
六千円のカツ定食って何朧さくら悠日
暖簾入れ朧に消える二人連れ紗々
寝台に待つ猫のいる朧かな砂舟
天ぷら粉ゆるゆるしたる朧かな紗千子
善人と言はれ続けて朧かな佐藤志祐
御霊屋の苔生す墓標朧かな佐藤俊
主人なき荒れ庭の花も朧にて佐藤しらべ
寝不足の心地も朧家路かな里海太郎
朧良し楽しきことだけ思い出に佐藤佳子
提灯のおぼろ過日の焼き鳥屋里山子
お不動へ灯は滲みゆき谷朧錆鉄こじゃみ
朧なる空を孫乗せ翼行くさわだ佳芳
朧げなくちびる隠す黒マスク澤埜正明
六条を行かば河原の朧かな三休
忘れたる君の帽子を嗅ぐ朧三水低オサム
最終の朧電車は母星へさんとうせい
吾はひとり思ふ日もあり朧の夜塩原香子
ヒール音におぼろ浮かぶは摩天楼しかの光爺
朧かな午前一時の子の寝言四季春茶子
きゅるきゅるぐるぐるきゅるきゅるぐるぐる腹痛の朧四條たんし
朧に溶けるタクシーひとつひとつ沈むエビ
朧なる三月ぶりの着信履歴紫檀豆蔵
朧なる宇宙の歴史星の数実本礼
掠れ声軽くなった父朧かな柴桜子
朧にてビールと消えるホームラン柴森爽
ボルシチの味を説明する朧嶋田奈緒
海朧鐘の音すら吸ひ込まる嶋良二
廃校の母校のがれき朧影清水祥月
紙垂の白揺れきや風のなし朧清水明美
震災の体育館はただ朧下丼月光
海朧蹴散らしてゆくマセラッティ芍薬
発つ吾子の朧なる背を見送らんジャスミン
ふと目覚め朧の月で時計見るじゃむぱん泉
御開帳本尊の笑み朧かな秀耕
鐘朧広がる波紋山里へ朱康君
瞬きの今日は優しい朧かな獣羅
朧の夜母に届ける葉物野菜じゅん
朧には神殿語り本屋へとショートケーキ
ひとやとき朧になりて甘苦き白井佐登志
どぶ川に揺れるネオンや猶おぼろ白猫のあくび
老犬と歩合わせ辿る朧かな新花水木
仲直りあとに赤福朧なりしんび
読み終えて文庫閉じれば夕朧水月一睡
犬散歩けだるい夜の朧富士酔軒
朧なる高層ビルの消えぬ灯よ酔芙蓉
手をつなぎ歩く川沿い朧なり杉浦真子
湯屋帰りちょいと寄り道朧かな鈴木もま
寺の音(ね)も包む朧や鍬洗う素敵な晃くん
幻覚と微かに曇る朧かなスパイク
遠ざかるテールライトの影朧静江
誕生日忘れず祝う朧かな星夢光風
首都高や朧に沈むスカイツリー瀬央ありさ
今日おぼろ明日は屹立コントレール瀬紀
ラマダンに入りて朧の夜は熱く背馬
友独り過疎の村なる朧の夜そうま純香
フェリーより蒲刈を見る朧の夜聡練
灯朧やスーパーカブを待つベンチ空野兎
右の手に君の手やさし朧かなソラマーゾフ
受験生朧めく候補地探しそれいゆ
ランチ済み尽きない会話街は朧駄詩
今晩の菜決めかねる朧かな泰山
遠ざかる沖の汽笛のおぼろかな太平楽太郎
地図なぞる憧憬の地や朧げに平たか子
鐘朧初仕事前の鼓動よ高上ちやこ
舌足らず童謡真似る吾子おぼろたか祥
高台のソーラーパネル朧めく高橋基
タオル頭に吾も朧の露天風呂高橋寅次
船窓に見ゆる陸の灯朧かな高見正樹
中途覚醒生ごみを捨つ朧多木紫蝶
朧めくものと朧めかぬものとたけろー
朧より雛呼ぶ声か甲高く多胡蘆秋
曳かれをる我が犬かも朧めく多事
母の背で兄の夢聞く朧なり立花かおる
星見上ぐうたかたの人朧なり橘春容
朧なり汽笛だけ聞く浜静か田鶴子
朧めく汽笛はけふは柔らかく立野音思
背は闇へ逢瀬の後も星朧たていし 隆松
一人待つ母の家まで朧かな蓼科嘉
現実にありて三号炉の朧立部笑子
灯籠のぽつんと揺らぐ朧かな立山枯楓
朧なる月に香りも褪せにけり田中明美
船見坂朧になってゆくリュック田中勲
朧なる幸も不幸も腑に落とす田中邦恵
朧なる倫敦にホームズの影田中紺青
畑仕事終えて家路へ鐘朧田中洋子
別れの日じっと堪えど朧かな谷卓生
朧なる孤高に白き月柔し谷口 あきこ
湯潅囲み見守る母娘朧かな谷町百合乃
朧めく耐震性のない校舎田畑整
漁火の揺らめき幽か朧かな玉井令子
いつも青なのに今赤朧かなタマゴもたっぷりハムサンド
当て馬のスタメン告げる朧かなたま走哉
非常階段朧の腸はまっかっか玉庭マサアキ
追い掛ける路面の影の朧かなたむらせつこ
稜線の空に融けこむ朧かな田村モトエ
暮れなずむ遠き山並み朧かなダメ夫
天ぷらとワインの進む朧かな知音
とぐろ巻きうねる龍神天おぼろちくりん
白間津(しらまづ)の花摘み畑朧なり千葉睦女
とぼとぼと朧の通夜路雨ポツリ茶坊
君乗せた船は東へはや朧千代 之人
久々の旅の三井寺鐘朧つきか
夕餉の香空に溶け合い街朧月硝子
リストラに歩く朧のより深きつきのひと
千鳥足連れ立ち朧にまぎれゆくつきみさとふく
朧なり咲乱るる花々の家辻ホナ
橋の上誰も彼もが朧かな弦巻英理華
開業医皆で励ます朧かなデイジーキャンディー
安らぎを求め朧にまかせけり手毬まりこ
レーシック躊躇っている朧かな電柱
Maxとき315号朧の内にて光る東京子
沖をゆく遊覧船や湖おぼろとき坊
滲む景灯朧なのか涙なのか徳永倍通
浮かびたる頂白し朧かな所陽子
夫とふたりさしつさされつ朧の座戸根由紀
寂れたる床屋に灯り点き朧冨川 友香理
AIに恋のてほどきして朧富野香衣
CTに痛む影なし朧かな戸村友美
赴任地の山河も人も朧なりとよ
サラリーマンおしてもひいても朧めく豐田雄二郎
この朧吾の足先も遠くせし鳥越暁
リモートの社屋スカスカ街朧中十七波
公園に猫の集会おぼろなる中里凜
廃校に灯ぽつんと朧かな中島葉月
寝台車朧の中へ消えてゆき中嶋京子
焼肉の匂ふ河原の朧かな中島走吟
朧なり母のカメラに笑まふ父中嶋敏子
老婆行く湖上の大橋朧かな中嶋緑庵
だしの香に早まる足今宵朧中西歌子
高速道路縦に流れる朧かな中鉢矢的
コーヒーの香を辿りゆく朧かな仲 操
サイレンの朧に届く夜の窓中村こゆき
朧なる宙横切りし「きぼう」の灯中村あつこ
待ち合わせ朧よ可愛さ増す祈り中村鈴蘭
兵の影朧に幽か硫黄島 永谷部流
思い出やしかと掴めぬ朧なり夏空なみ
朧より来て父はまた朧へと夏椿咲く
終電の尾灯朧の中に消ゆ夏目坦
塾の子ら夜道の暗く朧めく七国独楽男
居酒屋を間違え当たってもた朧浪速の蟹造
空見上げ家路を急ぐ朧かな成瀬悠
夕映えの終わりし嶽はいま朧なんじゃもんじゃ
山肌に雲わき出でて朧かな新美妙子
求婚は成らず朧の道歩くにいやのる
通勤の憧れの街また朧2月は30日までない
リード持ち朧に見える顔見知り猫
縦横の二十線なす朧かな野中泰風
天照隠れて朧めく日本ののr
庭先の泣く子抱く母朧かな野々かおり
またひとり知己の訃報や朧の夜野原蛍草
一両の各駅停車朧影のりこさん
窓外にこぼるる灯りもおぼろかな橋爪利志美
去りし背が朧ぽろぽろ泣くなまだ一まどか
すれ違う香りのゆかし朧かな長谷川ろんろん
コンタクトレンズはずして朧の日曜はたやん
宮沢賢治になりきり見つむ朧かな蜂鳥子
残業後コート閉める手止まる朧服部たんぽぽ
海朧一人車を走らせる花岡浩美
心遊ぶ雨の茶席の庭朧花岡淑子
泣いてゐるなにかの赤子朧かな花南天あん
朧めく頬吹く風のやわきことばね指冬子
子の弾きしピアノ眺むる朧かな羽馬愚朗
悔いひとつありて朧に問うてみるはむこ
告知受け朧朧の帰る道早川令子
戦知る父の遠き目海朧アクエリアスの水
猪に庭荒らされた朧かな原島ちび助
新しき自転車きらり朧の夜ぱらん
遠き地の悲しい戦朧に祈るharu.k
線香が朧にたなびき前を向くはるなつきえ
帰り道バックミラーに朧かなばんしょう
土も草も木も匂ひて朧かなひーたん@いつき組広ブロ俳句部
朧な街の灯雨の横羽線ひーちゃんW
町並みは朧の空にネオンなくひいら無云
年老いて何処へ行くでもなく朧光源爺
夜ドラのタネ明かされぬまま朧ひぐちいちおう(一応)
海朧なり黄昏れの田代島ひしぬままき
屹立すタワマンの灯の朧かなひすい風香
草原に三歩前にも朧なり美泉
夕闇の朧に隠れ2人陰秀龍@木ノ芽
久方の友の声とて朧なりひな扶美子
朧かきわけサイレンの迫りくるヒマラヤで平謝り
一人寝に君の残り香朧めく向日葵@いつき組広ブロ俳句部
海岸で朧に見える灯りかなひめりんご
山越えの朧に見ゆる伊豆の町平井千恵子
朧濃しバス誘導の笛ひびく平井由里子
庭朧十二単衣の並び居る平岡花泉
西山の一番星の朧かな平林眞砂
寄り道の駅前ネオン朧かな平松 一
明日退院窓の向こうは朧廣重
朧めき夜学の道は遠ざかり琵琶京子
検問所朧に長き避難民深蒸し茶
草朧肩を並べて散歩道深谷英丸
煎り糠を火元覗きし朧かな福田みやき
朧なり赤子の声のとおのきて藤井かすみそう
朧なる野草の花とむかひあふ藤川鴎叫
朧の日公園内に庭師居る藤川雅子
伴走の襷きらめく朧かな藤白真語
黒猫の夜のお散歩朧かな豚ごりら
ポタージュを温め直し朧かなふりっち
朧なる公園ひとりギター弾く古川シアン
輝きが消えてゆく星朧かなヘッドホン
提灯も揺れる朧の千鳥足ベニヤサン
酔人のスマホ失くして朧の夜べびぽん
湯屋の外の裏山朧独りかな茫々
鎮魂歌のあの日から朧朧星雅綺羅璃
点描の光朧へモノレール星詩乃すぴか
揺りこぼす衣も朧やカフェテラス甫舟
朧なる月もテレビの映像も細江隆一
近くなる父との距離は朧なる細川小春
核兵器ある人の世の朧かな堀卓
摩天楼朧に溶ける女神像堀邦翔
機影は西の朧割き東欧へ凡句楽直
ながらへて浄土見えくる朧かな梵多
友人の離職の知らせ朧哉舞黒祖父登
露天風呂旅の終わりの朧かな前田敏彦
見上げたるハタダの掲示朧かな真喜王
朧気や月の反射に立ち沈む眞熊
手を振りし朧々の君の影雅蔵
焼き鳥の香から膨らむ朧かな眞さ野
朧に消ゆ一本路のテールランプ増田蓮華
甘雨去り匂いまつわる庭朧町田勢
朧の夜月の光が照らす龍松井研治
あと二千万歩計見る朧かな松尾なおゆき
夜の道はっきりと見えぬ朧かなマツケンスライダー
車窓から父待つ町は朧なり松島美絵
鐘の音の余韻吸い込む朧かな松平武史
泣くためのふんわりタオル朧にて抹茶子
見上げれば龍の散歩する朧松虫姫の村人
見送りし朧の後姿かなまつもとをさむ
朧かな船が行き交う瀬戸の凪松本俊彦
亡き君はスマホに生きている朧松本裕子
かの君と出会いしそれは朧なり松本牧子
手をとりて朧な道を二人行く待雪みほこ
朧めく政略結婚のダイヤ真冬峰
朧なり外郎ふたつ豆皿に豆福樹々子
笹鳴りに見上げし空の星朧真理庵
下駄の音朧の中に聞こえ来るまりい@木ノ芽
ブルシット・ジョブとふ勤め夕朧眞理子
意識なき子の隣りなる吾の朧まるにの子
雪壁は18メートル空おぼろ丸山邦晃
おぼろの夜とおくに流れるピアノの音真路巴笛
ビルの上灯り点滅朧かな澪つくし
生き残りかけ空残業朧かな三上栞
観覧車の灯りの遥かおぼろなり三崎扁舟
街灯の川面に映る朧かな水川海豊
朧かなスカイツリーに雲垂れしmr.kikyo
君の背が朧の中に薄れゆきMrふじやん。
戦死てふ吾より若き父朧水野禾甫
車窓朧点となるイルミネーション美月舞桜
坂道は朧ラブホの灯しつぽり満る
君の影駅舎に向かう朧かな皆川徳翁
ひと駅を歩き朧の酔い覚まし見屋桜花
ミッキーを抱いて背にする城おぼろ宮川ニコ
朧月酔眼に増しより朧宮城野萩士
嗅覚の研ぎ澄まされし朧かな宮原みかん
草朧ひとり歩きの父を追う美山つぐみ
月の道朧に漂う割れオール夢民庵世々
船着き場水面に窓の朧なるムーンさだこ
待ち人をあきらめたどる朧道霧想衿
自転車で朧と見あふ間合いかな武藤裕治
朧なる七十路の道手探りで村上照世
足元のおぼつかない日おぼろなる村のあんず
センサーライトぱつと付き庭朧村松登音
参道の砂利に躓く朧かな暝想華
外濠の中は朧に月と鯉恵のママ
新学期列車の外なる海朧目黒智子
明日示す塔のライトのいろ朧毛利尚人
そのつづき婆のはなしを朧の夜望月ゆう
切り傷は腕に5センチああ朧望月朔
赤電話用件のみの朧也本山喜喜
ペダル重し連なる街灯朧かなもり葵
花束を抱え定年朧かな森下薫
遠回りの家路遮断機の朧もりたきみ
おちこちに聞こゆ鐘の音夕朧杜乃しずか
障子戸の向こう朧に屋敷町森谷拓之
海上は朧船内は賑やかし諸岡萌黄
われと影おぼろの道をとぼとぼと焼津昌彦庵
朧のベンチ震う携帯ぽつり山羊座の千賀子
火曜限定カレーパン買う朧柳井るい
朧かな君とドライブ風の音やのかよこ
すうすうとノンアル啜るおぼろかな山河穂香
朧なり厨にモカの香り満つ山川腎茶
寝過ごしてタワマン朧ニ駅先山木戸兆舞
四年程うるさい街の朧かな山口たまみ
朧通夜のこるは優しさのみと知る山?雅代
朧より愛人の声なつかしき哲山(山田哲也)
朧なる後ろ姿に手を振るか山田企鵝
祖父骨よ故郷の海山朧なる山田啓子
丘の上の桃色の木々朧かなやまだ童子
朧なる湖上に月影延びにけり山田文妙
胎動は常より激し朧かなやまな未
はずむ息首里は朧の石畳山野のんき
宅飲み友らの帰りし朧かな山彦一水
病室の比良の山々朧かな山本康
もういいかい鎮守の森に朧かな山吉白米
負け試合涙乾いて影おぼろ裕子
同棲アパート訪へば跡なき朧かなゆうま
玻璃戸開け土の香吸こむ朧かな柚木啓
失恋に星座が滲む星朧弓原トーヤ
音残す介護ベッドの朧かな湯屋ゆうや
締切を破りて散歩朧かな陽花天
摩天楼闇に溶けゆく朧かな陽光樹
蠢くは朧に紛れ影二つ吉哉郎
朧の夜鳴き声切り裂く猫二匹よしぎわへい
草むしり人待ち顔の犬朧吉田蝸牛子
永らへてまた送りたる夜や朧葦たかし
ひっこしのキリン朧へくずれゆく吉野川
朧なる北アルプスや旅の宿吉藤愛里子
髪染める三面鏡の朧かな与志朗
幸せは探しだせうるもの朧四葉の苦労婆
朧めく沼のほとりや遠野村よみちとせ
浜を行く彼の背朧もう見えず世世
帰り道頼まれし酒よおぼろなるらりっく
ヘッドライトの朧に星と連なりてランタン
細道を通りゃんせ翁や朧リーガル海苔助
面会の緩和病棟の灯朧梨音
朧なる伝言板や待ちぼうけ理佳
謳うなら「いとしのエリー」朧の夜柳絮
水田は廣く玄くして夜は朧良俗倭人
影薄き人の紛れる朧かな連雀
軒先や心安まる朧かな蓮風
甃去り行く君の影朧わかなけん
白球よ場外越え朧かなわきのっぽ
夜の村山河草木みな朧海神瑠珂
送って行く君との間の朧かな渡辺香野
この街でさへうるはしみする朧渡辺桃蓮
天に訳なく悲しみに朧なり渡辺ヤスコ
夕刊を取りて街路の朧なる渡辺陽子
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
◆お願い
●俳号には苗字を!○俳号とは、その句が自分のものであることをマーキングする働きもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増えています。せめて、姓をつけていただけると、混乱を多少回避することができます。皆で気持ちよく楽しむための配慮。よろしくご協力下さい。
●俳句の正しい表記とは?
- 朧月青春時代を思い出すかめれおん
- 夕暮れに西に聳える朧富士手嶋錦流
○「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●前回の兼題
○季語「子猫」は、前回の兼題。(全部で10句ありました。)〆切時間に遅れてしまったか……。
●文字化け
- 馬運車の?を溶く朧かな石垣
- 朧かな?に会うとこ一人逝く岡本
○ネット投句の宿命というべき、文字化け。残念……。
- ありったけのこぼるる涙恋おぽろ山崎鈴子
○入力ミスであることは分かるのですが、送信ボタンを押す前に、確認する習慣をつけましょう。
●俳句は五七五
- 朧向こう戦に思い馳せる園城寺の夜ぶるーふぉっくす
○俳句は、五七五が基本です。破調、字余り、自由律など、色々ありますが、内容を巧く五七五に入れられないから、音数を溢れさせてもよい……というものではありません。
●一句一季語から練習
- 微笑む君川沿いの桜朧月相澤和香
- 朧なる雲よりしばし月さやか石井秀一
- 花びらの朧に誘う夜半の城今村ひとみ
- 夕焼けや霞む朧の帰り道帰宅部めんそ
- 紅椿桜花散る朧月蕎仙
- 朧夜や地にひとむらの葱の花志村狂愚
- 山一面桜に染まる春おぼろ隆
- 束の間の桜吹雪や朧月なか京子
- 春ふかし遠くの富士におぼろかな藤拓
- うつむいた朧な眼に映る蛍芳賀猛士
- 田起しや老爺と牛と草朧畑中真土
- 朧夜や花びらを踏む車椅子ポレポレあひる
- 朧月かまびすきや猫の恋吉田空
○一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。
●「春」は不要
- 繰言の母見る実家春おぼろ茜むらさき
- 春朧のりたまご飯を立って食う田川彩
- 急ぐよりのんびりしたい春朧草道久幸
○「朧」そのものが春の季語ですから、「春」は不要です。
- 振り返り百才おぼろ春うららMITSUE桜井
○「麗」についても同じで、「春うらら」という使い方をする人がいますが、こちらも「春」は不要です。そして、この「おぼろ」は季語として使われていません。※「季語深耕」を参照して下さい。
●兼題とは
- 春は旬野菜高騰だが生きる為買う内野淳子
- 落ちて尚命燃えたる寒椿香西敏子
- せつなさに淡く色づくももいろの花なつねぇ♪
- 春の風道の桜を見る君を春谷未知瑠
- 水神の在す箕面の滝涼し丸岡正男
- ながれぼしひかりかがやくよぞらのや 増田花音
- キミの指先肩跳ね笑う雪解けの滴のいゆにか
○今回の兼題は「朧」です。兼題を詠み込むのが、本サイトのたった一つのルールです。
●季語深耕
- 母老し泣いた昔も朧なり雨降りお月さん
- おぼろ世の流転の八十路渋茶碗杏っ子
- ウクライナ朧げならず和平の途泉梅子
- 朧なる縁の君と今生きるいずみ節子
- 桜散る受験結果もおぼろなり今井保夫
- 詩人とは朧の日々を生きること大石聡美
- 朧げな白黒写真世紀末械冬弱虫
- 七回忌面影朧となりにけり各務ちはや
- 朧げな記憶をたどる郷帰りカラハ
- 朧なる記憶の中の君は濃く朽木春加
- 働けど未だ余生は朧かな紫雲
- 亡き夫の朧に刻む置時計塩沢桂子
- 朧めく思ひ出したる目標は縞子勾苑
- 朧気な祖父の写真に手を合わせ杉山博代
- 朧なる記憶の闇に苛まれ杉柳才
- 目の検査まぶたの奥の朧かな高橋光加
- 明け暮るる母は朧の中に居り辰野史会
- 朧なる記憶の中の母恋し谷口美奈子
- 朧げな夢をたどりて山遊び榛名ピグモン
- 懐かしき父母と語りし夢は朧布野悠乃
- 子の未来朧に見えしニュースかな舞い雪
- 五十歳初恋の顔朧なり桃衣ゆらら
- 脳内の朧拭えぬ認知症八木実
○「朧」は天文の季語です。「朧」を、ぼうっとして、はっきりしないさまの意味でつかうと、季語の力はなくなります。
- 歳のせい景色も記憶も朧なり二階堂恵
- 喜寿過ぎし昭和の時代朧かな二上松風
- 忘れしを人のせいと朧の母柿野宮
- 母の見る景色は全て朧かな菊川寝ん猫
- 朧なる景色の向こうに去りし吾子本多幾千
- せんめいな写真の我が子朧かな真壁らん
- 朧なり巣立ちて息子初仕事まじかにゃんちょろう
- 夫逝きて二年すぎおり朧かな松尾美郷
- 胸キュンとはこういうことかああ朧黄桜かづ奴
- 失恋や感情消すは朧かな炯眼
- 赤い糸叶わぬ愛の朧かな球磨太郎
- 朧とは次恋進めし良薬かな喜多武雄
- 艶し目ぞ朧そぞろ頬染めし奴坂島魁文
- 初手繋ぎ去りし君の背朧かな白い追憶
- 朧にてこんなんちがうファーストキス新開ちえ
- はつ恋や朧にくるまれ遠ざかるたなばたともこ
- 朧めく君の記憶は手のひらに杼けいこ
- 朧なる同窓会の声背なに花咲みさき
- 頬染める出会い頭は朧かな和の光子
- 町役や頭体もおぼろかな中嶋緑庵
- しまった赤本開いて朧ひとつ増え羽織茶屋
- 針振れに振れシェイプアップは朧平野風詩
- 朧なるニカブの如きマスク顔比良山
- 顔洗ひマスクで隠す朧かな藤川哲生
- また戦争SGDs朧なり鈴木暮戯
○これらの句も、天文の「朧」のようであり、ぼんやりとしている意味で使っているようでもあり……。天文の季語としての「朧」の本意を掴んだ上で詠む。意識してみましょう。
- 夫ゴルフ土産はいつもおぼろ豆腐りょうちゃんばぁ
- 遠足のおにぎり朧で巻きす玉子百日草
○「おぼろ豆腐」「おぼろ昆布」は、間違いなく季語ではないね。
- 帰る道「朧月夜」の歌のなか山辺道児
- 朧月夜唄う時だけ心落ち着く。こばやしくにえ
○言いたいことは分かるのですが、歌の題名は、微妙……。
- 公園の提灯浮かぶ花朧藤丘ひな子
- 花朧向こうで待ってる人がいる松岡重子
○「花朧」は、植物の季語「桜」「花」の傍題です。
- 塒へと朧にかすむ鷺一羽すう枝
- また負けた朧にかすむ六甲山中村まさあき
- 香港の朧に霞むクルーズ船香港ひこぞう
○「朧にかすむ」という表現は微妙だなあ……。
- 朝ぼらけ船影朧に進みゆく初野文子
- 退院の朝の朧めく山際華樹
- 昼までにこれやっとけと空朧山野花子
○「朧」は夜の現象。ひょっとすると、これらの「朧」は、ぼんやりしている様子を書こうとしたのかも……。
- おぼろ夜や亡夫好みの紅をさしあ・うん
- 教会の十字架に月朧夜や浅井厚視
- 朧夜や小さな背中の振り向いて和泉明月子
- 朧夜や慣れた道さへ後戻り大嶋メデ
- 朧夜に抱かれ揺れる恋の羽大村朱希花
- 朧夜に散じる音やオートバイ緒方朋子
- 朧夜や病室の母小さくてかもめ
- 朧夜の赤線区の灯や昭和いとおし樺久美
- 猫バスが走っていそうな朧夜木村かおり
- 朧夜の女の素顔素手素足健央介
- 朧夜に姿求めし母恋し関根洋子
- 朧夜や海荒れて船遠ざかる仙台駄菓子
- 朧夜や暖簾手招く千鳥足大
- 朧夜の下駄の音は雷門から竹一
- 彼に逢う朧月夜の君の如智同美月
- 朧夜に閻魔のごとき消防車土田耕平
- おぼろ夜や点滴ぽつりぽつり落つ内藤由子
- 朧夜のゆつくり動く亀の足根本葉音
- 朧夜にためすすがめつ花手水北斗星
- 朧夜や噛み跡残る砂糖菓子夢見昼顔
- 朧夜に星のひとつが際立てり若林千影
- おぼろ夜の狐格子に透く火影若林鄙げし
- 朧月夜前だけ照らす懐中電灯幸子.S
- 恋話は電話ボックス朧月あいあい亭みけ子
- 朧月視線合わせぬ人と似て間岳夫
- 朧月無人駅より帰りけり空家ままごと
- 夕釣りや海より出る月朧跡部榮喜
- 朧月別れの酒のほろ苦さ石島多久山
- 子がえりの夫とふたりの朧月石本美津
- 月朧夫もおぼろな幾年や石本美津
- 影薄く見上げてみれば朧月市場さと枝
- おぼろづき詰まり詰まりの七の段梅鶏二号
- 朧月痛む傷口隠せない大本千恵子
- 成せずに吐息し見やるとおぼろ月岡由紀阿希
- 湯の街のゆげに隠れて朧月加賀くちこ
- 恍惚の母追いかけて朧月川野カッパ
- 点滴の窓に音なく朧月Qさん
- 朧月私のブレを直してね草豆
- 竹藪に裸電球朧月楠田草堂
- 朧月ほくろの左右忘れけり栗の坊楚材
- 朧月人それぞれの暮らし方来ヶ谷雪
- 月朧面影匂ふ野天風呂月昭
- 朧月桃色ひらりため息す小鳥乃鈴音
- 朧月宇宙へ還る最終回さかえ八八六
- オランウータン上目を使う朧月じつみのかた
- 救急車裂き行く街や朧月芝G
- かすむ目に目薬さすも月朧ジョン爺
- ポケットの中で繋いだ朧月白とり貝
- 万歳のゴールの橋や月おぼろ関とし江
- 朧月花びら舞う龍の如しそしじみえこ
- 朧月そぼろ食して仰ぐ夜高塚和恵
- おぼろ月あれば楽しい宇宙にも高橋紀代子
- 朧月三面鏡に作り笑み知恵さん
- 朧月平和を照らす彦根城躑躅メリー
- 何者か定年の日の朧月椿律
- 朧月見上げて語る思ひ出を夏目わか
- 月朧蚯蚓腫れなる蕁麻疹なみ夢めも
- ぼんやりと朧月見て癒される西谷寿
- 朧月安寧願ふ彦根の灯猫辻みいにゃん
- 笑う君恋する僕と朧月パーシモン
- 病状を説く医師の背におぼろ月波止浜てる
- 朧月遠い昔さ繋いだ手原善枝
- 朧月ねやの明かりの在り所ろはるる
- 新車来てCD録音朧月古澤久良
- 朧月会えぬ貴方と共有しまあるいあんこ
- 逃げないで貴女の朧づきの夜を松野蘭
- 朧月なつかしき人思わるる三浦ユリコ
- 月おぼろトリケラトプス卵抱くみやざき白水
- 朧月お風呂が沸きましたの曲山野麓
- 防人の出でしいほはら月朧山薔薇
- 終活の1日終えて朧月吉田ばあば
- ひとり酒重ねる杯に月朧Y・りこ
○「朧夜/朧月夜」「朧月/月朧」は、別の季語として丁寧に詠みわけていきたいと、私は思うのだけど、頁数の少ない季寄せなどは、「朧」の傍題として載せているのかもしれないなあ……。
お待たせしました!4月の兼題「朧」の結果発表でございます。今回の夏井先生からの「今月のアドバイス」、必見です。「朧月」は別の季語になってしまうんですね、勉強になります。それでは今月の兼題「紫陽花」の投句、お待ちしております!(編集部より)