夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
4月の審査結果発表
兼題「蝶」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
摘まれて蝶は淋しき棒となる
ぞんぬ
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夏井いつき先生より
摘んだ蝶を離す、指が鱗粉に汚れる等の句はよく見ますが、摘まれた蝶そのものを描写する句は、少ないかと思います。
中七「淋しき棒」という比喩に心を動かされました。最初、摘まんだ蝶の表現として「棒」は大きすぎるのではと思ったのですが、マッチ棒も綿棒も「棒」ですから、ここは許容してよいかと納得。
唯一といってもよい武器である飛ぶ力を封じられた「蝶」は、一本の「淋しき棒」であるよ、という把握そのものが詩です。我が翅を、巨大な指で摘まれている蝶の無力感は、大きな寓意として読者の心に刺さります。私たちもまた、翅を摘まれて身動きのできない蝶のような「淋しき棒」ではないかと。蝶の句として、忘れ難い愛唱句となりました。
狂う蝶ひかりをざんと持ち上げる
常幸龍BCAD
蝶に対して「狂う」という動詞を使うと、そちらが悪目立ちすることが多いのですが、中七下五の言葉の質量が絶妙なバランスを構成。「ざん」というオノマトペが詩的リアリティを表出しています。
傷つけぬ言いかた蝶の口るるる
川越羽流
誰かに対する「傷つけぬ言いかた」を探しあぐねているのでしょう。蜜や水を求めて伸びる「蝶の口」の「るるる」は、形状であり、対比であり、言葉を探す自分の心のカタチのようでもあります。
蝶あそぶ風の屈折率を知り
古賀
蝶に対する「あそぶ」という擬人化も、失敗する確率の方が高い動詞です。擬人化を成功させる秘訣の一つは映像化。中七「風の屈折率」という詩語が、「蝶あそぶ」を映像として再生させています。
学食は生協のよこ蝶もいる
木染湧水
「学食はどこですか」と問いかけた、その答えのような一句です。「生協のよこ」までは只の道案内ですが、下五「蝶もいる」で一気に俳句となる愉快。口語の軽やかさが「蝶」の明るさにも似合って。
ひりひりと蝶の震へてゐる百年
野点さわ
「百年」は、私にとって思い入れの強いキーワード。「ひりひり」というオノマトペは、種を繋いでいくための切なる生殖の繰り返しでしょうか。「蝶」にとっての百年という時間が、詩的感慨となって深化していきます。
蝶の翅ひらいてとぢる一通りたけろー
蝶の死に間に合わなかった青空どいつ薔芭
蝶々といふひとひらの昼の壊死仁和田永
てふてふのこゑあをじろき妬心かなRUSTY=HISOKA
てふてふは迷子よ夜が来ないのよ足立智美
蝶々の何も壊さぬやう留まる綾竹あんどれ
万国旗そよぐや蝶のよどみなく磐田小
蝶よぎる片言の英語のやうに旺上林加
風に蝶溺れぬようにふよふよと櫻花龍星
陽を浴びて蝶のもつるるオープンカフェあ・うん
蝶に逢ふ心のどこかふるはせて愛燦燦
蝶々の銀粉指に瞼へと藍野絣
昇りゆく紋白蝶の腹暗しあいむ李景
蝶々やセザンヌの絵を散る余白青井えのこ
庭の木の形に沿ひて狂う蝶青井季節
畑飛ぶ蝶に鋼の筋肉よ蒼月子
蝶々やクラス写真の撮影日青居舞
蝶と吾と遊べるここは休火山蒼空蒼子
鱗粉を零して胡蝶目覚めたり蒼鳩薫
風という虎の死にたり蝶の飛ぶ赤尾てるぐ
寄り添ふと見えて別れて追ふや蝶赤富士マニア
ぱつとせぬ色の蝶々こつちへ来赤松諦現
生まれたてのひかりあやすかに蝶は赤馬福助
蝶泊まる寝た子がふっと軽くなるあかり
散水の高く白蝶なほ高く明惟久里
ほろ酔ひのてふてふ風は叱りをり秋白ネリネ
神々の交わす手紙のごと胡蝶秋野茜
そよ風やまだ水底へ行けぬ蝶秋野しら露
指先が弾雨の中で蝶に伸び空き家ままごと
Fコード奏で長閑に飛ぶ蝶よアクエリアスの水
蝶よ蝶わたしの翅は離職票淺井翠
蝶に手伸ばし塹壕に崩れ落つ朝雲列
配役は「謎の乗客」蝶ふわり朝霧さら
羽ひらくときの疼きよ春の蝶朝月沙都子
休館日のゲートを蝶のくぐりゆく明後日めぐみ
黒鍵へショパンの蝶やひらりひら淺野紫桜
暮向き魔女なる祖母の肩に蝶あさのとびら
ムーミンの冒険始まる金の蝶麻場育子
生くといふ摩擦係数蝶の翅芦幸
マーキングされたる蝶の羽重しあじさいパスタ
蝶々を両手でぷなっと捕まえたアシツノカラ
片付かぬ遺品の山よ春の蝶麻生ツナ子
蝶はまたでんぐり返って草に入るあたなごっち
美しき沈黙それは蝶の音熱田俊月
国境の橋の銃痕蝶の無垢at花結い
まっすぐに飛ぶかもしれぬ蝶ここに天晴鈍ぞ孤
蝶のいる方へ方へと生き延びるあなうさぎ
蝶々や大平原にバザー立つ阿部八富利
蝶々やテトラポットに花束を天風月日
こめかみの疼きまとわりついて蝶あまぐり
蝶の羽鋏で切った事がある雨戸ゆらら
母の名を足した墓石に蝶が来てあまどかに
二拍子に残像描き蝶去りぬあまねくみぞれ
白昼に生まるる蝶は王の蝶あまぶー
容赦なき指に鱗粉蝶の翅アマリリスと夢
黄と青の世界を蝶と分け合へりあみま
蝶群れる吾子の頭皮の甘からん雨乙女
うとうとと臨月近し蝶の昼雨李
行く蝶はメモランダムの軽やかさ文子
羽根持て余す雨の日のてふてふあやせゆうま
蝶ひらひら結婚なんてしないしない綾波まこと
風と来て風の連れ去る蝶々かな荒一葉
闇夜かな蝶の眠りはより深くあらあらかしこ
蝶はジュピターへ太陽風に乗りあらかわすすむ
遠き日の蝶の脈動伝ふ指荒木響
ベランダは5階です蝶を待ってます新多
ちひさかりし指先覚ゆ蝶の息ありいかな
きみどりのてふはそうね、きつと母在在空空
ポムペイの壁に手形や蝶の昼アロイジオ
蝶追ふや甘い匂ひと日の匂ひ淡湖千優
隠し持つ媚薬よ蝶の翅の綺羅アンサトウ
蝶とまる黄なる表紙の御朱印帳安春
蝶の来て時間の束も止まるごと杏っ子
蝶乱舞羽根の脆さを厭わずに飯田淳子
海より来雲の境界渡る蝶飯沼深生
もつれつつ高み果てまで蝶の恋飯村祐知子
茎すつと立ちて胡蝶を戴けりいかちゃん
公園の遊具は消えて蝶飛んでいくたドロップ
小田原の道案内や白き蝶郁松松ちゃん
泣きぢやくりつつ蝶々を訝しむ池内ときこ
雨の日は雨を見ている蝶のいて池田悦子
蝶やいま篳篥の音に高く高く池之端モルト
吾子の指ゆらゆら蝶の動線池ノ村路
蝶や蝶や再開発のまつたひらイサク
もう開かぬ翅よ閉じゆく脚よ蝶いさな歌鈴
一頭と数える蝶の軽やかに石井秀一
春の蝶長きスロープ先導す石岡女依
春蝶や弾く象牙の撥の白石垣
擦り硝子に黄蝶休日の朝風呂石川巴里
バラストにやすみし蝶の白さかな石田ひつじ雲
蝶二頭床屋の鏡過ぎにけり石塚彩楓
蝶踊るお向かいさんのバイエルに石の上にもケロリン
痛かろう鱗粉遺し蝶が去る石原邦子
近づいて同じ呼吸の蝶と我石本美津
つきまとふ蝶よあのジャム捨てられた泉晶子
妻二人に逝かれし我や蝶生る和泉攷
空さがす蝶夕暮れのパサージュ遺跡納期
己が影振り払ふごと蝶上る石上あまね
引越しの荷の乗りきらぬ蝶の昼板柿せっか
図書室を一回りして飽きた蝶いたまきし
紋白蝶何か言ってる語ってる市場さと枝
母逝くやふはりふはりと白き蝶いつかある日
旅の蝶うす紫の風となり伊藤亜美子
点字読む人さし指や蝶ほろほろ伊藤映雪
訃報知らぬ野良着の夫よ蝶の飛ぶ伊藤小熊猫
河馬の背を黄蝶ふうはり越え行きぬ糸川ラッコ
小灰蝶ゆるやかに風起こしけり井中ひよこ号
卒婚のゆるき時間をはこぶ蝶いなだはまち
独り身のベンチでランチ蝶二頭稲葉雀子
なんもねえとこだべ酒と蝶以外稲畑とりこ
造花から造花へと透く蝶の脚居並小
蝶飛ぶやグランドゴルフの優勝旗井上れんげ
蜜満ちてゆるりとひらく蝶の翅井納蒼求
蝶くれば蝶と歩くや古都の旅井原昇
気怠さや蝶の仕草に死の匂ふ伊予吟会宵嵐
眼裏に頭痛のかけら小灰蝶伊予素数
ふらふらと蝶わたりゆく墓の供花色葉二穂
蝶の眠り覚まさぬようにやさぐれる岩木順
公園で落ち合ふ蝶のラプソディいわきりかつじ
表みせ裏みせ蝶は道をいくいわさちかこ
この蝶は私が怖くないらしい上野眞理
双蝶のたがひに拗ねて飛ぶ螺旋うからうから
スマホからは母の愚痴目は蝶を追い宇田の月兎
蝶の来て電波途切れたる真昼内田こと
ここよりは暗がり蝶の黄泉の国内本惠美子
紋白蝶ほのかに甘い粉薬空木眠兎
蝶々や総会は今五号議案うつぎゆこ
蝶々や吾に重たき臓器あり靫草子
蝶々と聞く主任司祭の異動卯波まり
蝶止まり翅の機械運動学宇野翔月
光あゝぼくは蝶この風で飛ぶ海野あを
炊き出しの行列最後尾に蝶うみのすな
翅閉じる蝶読み終える啓発本梅鶏
風かすか蝶の匂ひのしたやうな梅野めい
ラブレターアポストロフィは蝶であるうめやえのきだけ
てふてふは春の塊よりほぐれ浦野紗知
一直線に飛んだら蝶じゃない吽田のう
渡り切る蝶はボンネットの高さ詠頃
仄甘く香る胡蝶の前肢かな蝦夷やなぎ
蝶々やゴーシュが背負う弦楽器越冬こあら@QLD句会
三叉路を風にまかせて蝶の影M・李子
心電図トトンあゝ蝶がきたのねおおい芙美子
折り目より写真は枯れるしじみ蝶大紀直家
大陸へ太き翅脈の渡り蝶大久保加州
ゆびきりの指に蝶々きて切れぬ大黒とむとむ
勝手だと言って黙った子に蝶々大野美波
やはらかき靴ぷぴぷぴと追ふてふてふ大山和水
蝶が来て先輩の友達になる大和田美信
蝶たどる空のきざはし見ゆる子か可笑式
練習の自転車ふらり蝶ふはりおかだ卯月
地響きの馬場をなだめよ蝶々よ緒方朋子
睦みつつ色濃くなりぬしじみ蝶岡田雅喜
焼きたてのピザトーストや蝶々来岡山小鞠
迷い人探す放送夕の蝶小川さゆみ
命日はいつも晴れ紋白蝶来小川しめじ
この蝶はいずこの誰の夢なるや小川天鵲
温室の蝶の海馬に果てぬ空小川野雪兎
うすき翅つまめば蝶の底力小川都
蝶愉快なり風に酔ひ蜜に酔ひおきいふ
上書きの朝よ眠たげなる蝶よオキザリス
君らしき人の三人過ぎて蝶沖原イヲ
どこまでが蝶の高さや空に風沖らくだ@QLD句会
蝶瞬いて昼の星と交信おぎわらわき
蝶あまた祈りの羽の摩文仁起つ奥田早苗
白蝶や母の葬列先導す小倉あんこ
どしゃぶりの式には蝶も飛ぶまいか尾座鬼
水落ちてここより暗渠蝶翔ちぬおだむべ
てふてふは女言葉で話します越智空子
背の翅は飛ぶものと知る蝶生る落句言
蝶に触れ四十九日をひらひらとおでめ
五平餅頬張つてゐる蝶の昼音羽凜
蝶の昼ふわりと口へ卵焼きおひい
天動説を信じる蝶もいてもいいおぼろ月
蝶二頭野の千年の生き死にをおんちゃん。
サックスの八分休符蝶の影海峯企鵝
蝶発つや今綻びの多き国香依蒼
濁点の多き暮しや蝶立てり香依蒼
一頭の蝶と交わる目眩かな火炎幸彦
ワンノートサンバのゆるく昼の蝶カオス
蝶来たり手紙を書いてみたくなり案山子@いつき組広ブロ俳句部
蝶の影葬りの夢のほろ苦し加座みつほ
蝶一頭庭師ひとりに驚かず霞山旅
求愛の寄つては弾け蝶と蝶樫の木
きりもみで防風林を越える蝶風早杏
近頃は私に蝶が迫り来る片桐洋
電柱に海抜表示蝶の影加田紗智
生まれくる蝶よ殺処分待つ犬よかつたろー。
ノート空白蝶々に疲れなし桂もふもふ
フオロロマーノ栄華の果の蝶の群桂葉子
蝶よ蝶せめて解けてゆかぬやう花伝
海峡を渡りし蝶の擦れた翅加藤雄三
平日の部屋より眺む黒き蝶金田由香
美容室は本日開店蝶々来金子あや女
だんだんとすることの減り蝶の昼亀田荒太
蝶とまるヤクルト1000の先端へ亀田かつおぶし
もんしろてふ学校絵の具は不透明亀の
重力を捨てて光に遊ぶ蝶亀山逸子
はにかみはひかりゆらゆら紋白蝶花紋
迷い来し蝶に一間を貸してをりかりそめのビギン
ため息は揚力蝶は知ってゐる川内佳代
蝶囲う集積場の網ひとつ翡翠工房
柔らかき肩甲骨と蝶の翅川端芙弥
神木をくすぐり蝶は空に消ゆ河村静葩
夕陽の蝶レコードの神田川川村ひろの
ベランダのチキンラーメンてふてふ来閑々鶏
蝶速し帰宅はすべて上り坂邯鄲
ひかりにも祝福されて蝶の恋菅野まこ
紋白蝶また来や供花の手を止むる閑酉
香り立つ香炉の灰や蝶が吹くKII
賛美歌の息継ぎに蝶生まれけり喜祝音
蝶の名を退院の子の見分けたるキートスばんじょうし
デモ隊の行く手横切る紋黄蝶季々諧々
蝶遊ぶ雲なき空の高音域岸来夢
黎明や羽ばたく蝶の赤き羽根北大路京介
蝶のはばたけば今日のうらがへる北野きのこ
病院の蝶面会は一人まで北の星
白蝶匂ふ翅にレモン色ひとすぢ北藤詩旦
てふてふのしとしと跳ぬるさざれ石北村崇雄
蝶去れり蝶の空間連れて去る木寺仙游
春の蝶けふはきれいな肺でせう城内幸江
割箸のきれいに割れず蝶の昼きのえのき
重吉の詩のいろ蝶の翅のいろ木野桂樹
昼休み蝶が長居のひとり畑きべし
蝶の昼川はちやぽんと鳴つたきり木ぼこやしき
小灰蝶ひみつの色はすみれ色木村となえーる
カステラの薄皮しゅるり蝶生まる木元紫瑛
蝶止まるカーネルサンダースの瞼Q&A
てふてふの過るローカル電車かなQさん
縺れ合ひつオペラ座に散る蝶の翅きゅうもん@木の芽
蝶一つ幹事代表声しずか鳩礼
もんしろちょうつかまり立ちの口への字紀友梨
夢見よと叫びたもうた蝶見えじ許足知
大阿闍梨逝く庭に白い蝶京野秋水
蝶の昼メンチカツ屋の猫太る杏乃みずな
風そよろ蝶山折りに谷折りに清瀬朱磨
窓に蝶漂う休日の二度寝清鱒
蝶の翅見れば痒くなる首筋ギル
この引き出し開けてみ蝶のどっと飛ぶ銀紙
もう少し落ちつけってば紋白蝶菫久
ドアノブは手錠の温度てふの園ぐ
蝶は托鉢の鉢へ吾は地下鉄へくぅ
ほつそりと笑ふ皇女の指に蝶久我恒子
庭に来た蝶この頃は見かけない草道久幸
戦争も飢餓も汚職も蝶ならば鯨之
野ざらしのタイヤの匂い蝶乱舞くずもち鹿之助
夕刊を受け取り蝶と読んでゐる工藤雨読
付き纏う蝶に母かと問うてみる國吉敦子
指に蝶翅脈の熱をほどきたる久保田凡
切り花のみづたくましく蝶の昼くま鶉
左側の景色がすべて蝶の影熊谷温古
太陽と雲の絵の具を混ぜて蝶蜘蛛野澄香
虫籠の翳りに余る蝶の白曇ゆら
白蝶の捕らへて砲声の止みぬクラウド坂の上
まばたきのたびにまぶたを剥がれ蝶倉木はじめ
この蝶が留まればその花は獣眩む凡
乱獲の海を百万頭の蝶栗田すずさん
お世話した蝶はぼくの手から空空流峰山
古墳てふ字は隷書体白蝶来久留里61
レモンの香放つや蝶のホバリング紅さやか
誕生を蝶と祝いて祖母となる桑田栞
迫り来し蝶や我が身を通り抜けくんちんさま
紋白蝶サイコロ振りて家を買ふ桂子
この小屋はペロの抜け殻蝶狂う恵勇
蝶々を追つててふてふすれ違ふけーい〇
蝶飛ぶやわたしの広場恐怖症げばげば
春蝶や遠くに海を見る天守健央介
狂ふ蝶風葬の骨かぞへたり謙久
蝶の乗るここが安全犀の角紫雲英
おそろしや夜の野に満ちて蝶の息剣橋こじ
喪の服を吊るせば白き蝶々来小池令香
蝶集う炊き上げ前の卒塔婆かな恋瀬川三緒
どちらかも分からぬ蝶の番かな剛海
蝶ひらり立体曼陀羅の死角幸田梓弓
ドレミファソ蝶高く翔ぶ低く翔ぶごーくん
蝶飛んで離婚届の薄さかな小笹いのり
日に三度紋白蝶の来しポスト小嶋芦舟
ラテアートミルクふるふる蝶の昼小だいふく
真昼野の形代のごと蝶の翅来冬邦子
石窯のパン工房蝶昇りゆく虎堂吟雅
ひらひらとてふてふくらくらと真昼古都鈴
カルピスに集る蝶らへ集る子ら粉山
霊柩車走らぬ街や蝶の昼このみ杏仁
らしくない人選んだよ小灰蝶虎八花乙
蝶の昼清掃作業トイレから小林昇
野より出づ二頭の蝶の螺旋かな小林のりこ
いままさにてふのかわいてゆくところこま
草叢は蝶の青空かもしれぬこま爺
打ち覆いゆらしてくれよ万の蝶こまたれぶー
隔離病棟迷い込む蝶ふわり駒野繭
神さまの千切りし雲が蝶である駒村タクト
この蝶は夜はどうしているのだろこむぎ
坑道は立入禁止蝶が飛ぶ小山晃
純白の蝶の羽根から金の雨GONZA
白帯と緋縅蝶の対峙せし今藤明
校庭を蝶は正弦波のようにコンフィ
蝶の鱗粉の撥水限界よサイコロピエロ
苦労して蝶になったと告げにくる西條晶夫
蝶の昼異人館まで長き坂さいたま水夢
蝶の昼口紅塗つて落ち着かず彩汀
軍靴に踏まれし庭を蝶の影齋藤桃杏
河底を覗くや蝶の影ひとつ齋藤ちの
蝶の舞うハローワークの帰りかな齋藤方南
わたくしのおほかたはみづ籠の蝶斉藤立夏
蝶の飛ぶ半濁音の多き地へさおきち
蝶ゆかい絆創膏を靴擦へさ乙女龍チヨ
黄昏のたび蝶々と衰えて酒井おかわり
てふてふのくずし字のごと舞ひにけり酒井春棋
蝶追へば蝶の結び目ほどけをりさかえ八八六
立ちて行く阿闍梨の背なか蝶の影榊昭広
ふらふらのファウルボールの先を蝶坂まきか
老犬こたろう蝶々様子見に来る咲美マキ
黒板の湾曲蝶の影ひとひらさくさく作物
カフェラテの泡消えゆきぬ蝶去りぬ櫻井紫乃
五回コールド勝ちネットに蝶櫻井光散人
大使館の厚き門扉をひよいと蝶桜鯛みわ
時々は蝶々の国と交信す桜月あい
春蝶の翅の震えや三回忌桜望子
てふてふと待つリハビリの送迎車さくら悠日
蝶を呼ぶ園庭の花いちもんめ雑魚寝
また忘れし父の命日蝶の昼砂舟
ミシン踏む蝶のうかるる三拍子さち今宵
鱗粉の匂ひの記憶蝶空に砂月みれい
草っ原今朝孵ったか蝶の群れ佐藤しのぶ
蝶々ともう逆上がりできる子と佐藤志祐
しげしげと皺々てふとなるまでを佐藤儒艮
垂直降下の蝶エアーポケット佐藤浩章
蝶休む蔵王権現膝頭佐藤佳子
蝶渡る道の向うは校外区里すみか
狂ふ蝶士林夜市の紙の皿里山子
自由つて時に寂しいものね蝶真井とうか
蝶ふわりしゃべれなくても生きていい錆田水遊
ほんたうにそちらの道でよいな蝶さむしん
道迷ひさつきもここに黄蝶ゐて紗羅ささら
蝶翅を閉づぴつたりと合ふ数字澤田紫
タラップに蝶の影踏む駐機場澤田郁子
八百屋にてサドル蝶々に乗っ取られさわだ佳芳
コマ落ちの8mmフィルムめくや蝶沢拓庵
アルタ前十時集合蝶飛び入り澤野敏樹
蝶死してひかりをひとつ失へり三月兎
蝶々の腹満つ蜜の虚空かな三休
紋黄蝶だった今フロントガラス山月
蝶動かず自分軸とはなんだろな三尺玉子
蝶高く退職願受け取りぬ三水低オサム
まらうどの守護霊のごとてふてふ来塩の司厨長
黄蝶来て開運日和寺の鐘四季彩
蝶羽ばたく私にはこの処方箋志きの香凛
蝶生まれ草の匂いは重たくて四季春茶子
オンライン会議長くて昼の蝶紫檀豆蔵
孔雀舎の水場に狂う蝶の群れじつみのかた
羽たたむ蝶やあかるき死のけはひ渋谷晶
休憩の蝶の羽のみ張りつめる字坊人造
蝶消えて夕空残る川原かなしぼりはf22
約束は解けて飛んで蝶と行く島崎うらら
やめようよここは蝶々の通る道島田あんず
蝶やすむ二十度くらい翅開き嶋田奈緒
道端の屍へ長き蝶の口しまのなまえ
影を得てしまえば蝶の重くなる嶋村らぴ
蝶むれて塔落慶の日和かな清水容子
ため息はひんやり甘い蝶の口清水縞午
対岸にビール工場昼の蝶清水三雲
木登りの僕を追い越す蝶遥か下丼月光
シャンパンの気泡弾けて蝶の昼芍薬@独逸
風の息月の息なり蝶生るじゃすみん
何度目のおんなじ愚痴か蝶の昼沙那夏
上昇の箱に無口な蝶の拉致砂楽梨
蝶だけが国境越えてゆきました十月小萩
ザックは70リットル青蝶は飛ぶ朱胡江
風なくも風を知らせり黄なる蝶秀耕
ゼンマイの一気に戻る蝶の二時柊ニ
絡み合う蝶の昇りて空広く秋星子
蝶あざやかしょっかくがとれてるけど樹海ソース
靴ひもを結ぶ練習紋黄蝶寿松
風の玉跳ね上げ蝶の競ふ庭シュリ
月曜の動物園や蝶の昼じゅんこ
土手の昼ドラムロールの小灰蝶じょいふるとしちゃん
海風に逆らう蝶の力瘤白井百合子
蝶不意に出鱈目を飛び去りにけり白玉みぞれ
渋滞を横切つて蝶いづくへか白猫のあくび
区議候補集へば蝶の諂ひて白プロキオン
ひかり濃き風のタクトや紋白蝶白よだか
蝶生れいきなり空が深すぎる新右衛門
垂木朽つる本堂に蝶ゆらゆらジン・ケンジ
ねむしねむし胡蝶ひらひら源氏閉づ新濃健
蝶つてば体育と物理が得意らし水蜜桃
フランス語訛りの英語きしむ蝶水曜日生まれ
昼の蝶迷ふ積木のやうな家すがりとおる
律儀なる蝶の四つ角曲がりけり杉田梅香
蝶鳴くや今日一斉の誕生日鈴木秋紫
歩むほど蝶わき立ちぬ野辺送り鈴木由紀子
蝶の羽化零るる音の微かなる鈴白菜実
皆スマホ見ているベンチ蝶の昼清白真冬
一頭の象の空へ一頭の蝶鈴野蒼爽
白蝶やいづこの雲に笙の音主藤充子
蝶を追ふ初めて眼鏡かけたる子砂山恵子
抗えぬ睡魔は蝶が連れて来る巣守たまご
ほんたうは青息吐息てふの翅すりいぴい
馬鹿野郎馬鹿野郎とて蝶さりぬ諏訪次郎
墓遠し母命日の夕に蝶静江
エピタフをなぞる指先蝶来るせいしゅう
牛の尾が丁度届かぬ場所に蝶青峰桔梗丘
蝶庭にヴィンテージ品入札す瀬央ありさ
蝶とまる解雇通知書届きたりseki@いつき組広ブロ俳句部
ずる休みの二階へ蝶の遊び来てせとみのこ
蝶生る父の形見がみつからぬ世良日守
置き配の角をてふてふ摘んでゐせり坊
蝶生る白きページの一行目千@いつき組広ブロ俳句部
日当たりを聞く内見の窓を蝶千波佳山
蝶がまた羽ばたいて本気の恋に全美
荒磯の怒涛をかわす胡蝶かな草夕感じ
蝶々や花の置かれる交差点そうり
はばたきて地球瞬く紋黄蝶外鴨南菊
トラックへ小柄なをんな蝶の昼染井つぐみ
蝶々や風を押す押す引いて押す染野まさこ
君の肩かすめる蝶の白香る空野朔月
蝶曰く風の綻びこことそこ空豆魚
蒼き空の重さに震ふ白き蝶大
蝶々の四次元の空あいこでしょ大康
骨納め絡まるやうに蝶二頭大ちはる
渚にも蝶の来れり浮御堂太平楽太郎
狂蝶よまだ月曜の朝である大丸愛実
蝶ゆらゆら飲み屋に置いてきた記憶平良嘉列乙
一対の蝶鱗粉撒き飛ぶ自宅跡高上ちやこ
蝶の翅四枚を繰る胴強(こは)し高尾里甫
ため息の小さきあぶくやしじみ蝶高木音弥
耕運機はお下がり紋白蝶来だがし菓子
うたたねの天球泳ぐ蝶高し高瀬小唄
城壁を昇る蝶たち騎士に似てたか&ひろ
てふてふや痛みのグラフ付ける夜高橋寅次
蝶生る針のやうなる脚を持ち高橋なつ
野に出て蝶の咲き乱れているか高橋ひろみこ
もつれあふリリアンの糸蝶の昼たかみたかみ
耳鳴りを砕けば蝶の弾む駅高山夕灯
紋白蝶濠へ落ちゆくみどりの丘高山佳風
まどろみの蔭より蝶の光の尾滝川橋
ソプラノとアルトで別の蝶が来たたきるか
退院の朝や黄の蝶白の蝶多喰身・デラックス
寝ころべばまなうらに影蝶の息たけぐち遊子
自死選ぶ重き空あり小灰蝶武田豹悟
蝶の空裂く出棺のクラクション竹田むべ
校長の話も空へ春の蝶竹八郎
蝶消ゆる夕闇の波くるごとに武部敞子
蝶を見た夢を見た日に蝶を見た多数野麻仁男
赤土の風すこやかに死する蝶ただ地蔵
重力に一瞬蝶の負けにけり多々良海月
湖はまだ冷たき鏡蝶渡るダック
寂しさを捉えれば手の中に蝶立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部
「グラマンだ」我が名忘れた父へ蝶立石神流
愛猫の墓より出し紋白蝶蓼科嘉
仕立てあげられたわたしを解いて蝶立部笑子
蝶生まる授業中断の歓声谷相
紋黄蝶手向けの花に巴なす谷町百合乃
蝶よ飛ぶ力はあるか戦場へ谷本真理子
公民の授業をふけて蝶の昼田畑整
ハンドルに蝶部活終わりの駐輪場たばたなおみ
風と風縫い閉じるごと蝶翔ける玉家屋
この先の夢は怖くて蝶は飛ぶたまのねこ
悪夢去る額に蝶の降りてきて玉響雷子
何植うと迷う菜園蝶の昼たむらせつこ
臥す人の手鏡に蝶ひらひらと田村モトエ
にじり口閉めるや蝶の翅音つと丹波らる
水嵩やひかりに煽らるる蝶は千夏乃ありあり
土偶から飛び出す蝶はアルタイへ竹庵
銃口で遊ぶ蝶照準器は静か智同美月
捕まえた言葉へ付箋眠る蝶千歳みち乃
贖罪の光縫入る蝶の翅千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
寝転べば風葬めいててふてふ来千早安寿
宿酔や紋白蝶の眼のまだら千代之人
眠る蝶幽かに救急車のサイレン彫刻刀
蝶渡るバシャンバシャンと連結器辻内美枝子
蝶追うて蝶忘れたる白さかな月石幸
蝶の生むゆらぎを得たる家出かな月岡方円
蝶は舞い大人はすぐに愛と言うつきのひと
西へ蝶わたしはどこへむかうのか月待小石
シュウベルト歌ってあげよう蝶のため辻瑛炎
ピアノ搬入蝶も一頭入ります津々うらら
亡き父のギターぶら下げ蝶の土手つちや海郷
蝶ふはり黒鍵だけで弾ける曲綱川羽音
はばたきにてふてふ傷みつつ咲きぬツナ好
蝶のゆく軌道や心電図の所見つばさ
高いレの運指は不確か紋黄蝶翼つばさ
鱗粉のなき蝶の影薄れゆく津幡GEE
クレープの生地の広がる蝶の昼露草うづら
開業の届け出す朝蝶高しツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
世渡りの上手そうな蝶遠近に鶴富士
葬送のちーんどんじゃん昼の蝶寧陪禰
ヒアブ車の掴む丸太を掴む蝶丁鼻トゥエルブ
蝶一頭生態系に現れる寺尾当卯
さよならを言うまで離れざる蝶よ天童光宏
漣へ二グラム分の蝶の風天陽ゆう
添加物なき青空へただ蝶は土井あくび
一両の路面電車で蝶を抜く土井ヨドー
てふてふや翅めく桁の流れ橋トウ甘藻
強風へ蝶のずしりと抗へり藤白月
蝶の翅千切れタクツァン僧院へ遠峰熊野
蝶の昼バレエダンスのような雨とかき星
春の蝶新婦の肩に停まりけりときめき人
蛍光灯ちりちり耳鳴りを蝶常磐はぜ
蝶二頭過ぎて気流の生まれけりDr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
バイエルをやっと一曲春の蝶どくだみ茶
双蝶の光りの奥へ果てにけり戸口のふっこ
蝶の泣く声のわかる子不登校どこにでもいる田中
赤ちゃんのとても軽くて蝶の昼としなり
この蝶に去年も会いしこの水辺どてかぼちゃん
好きっていわなきゃだめかな蝶々どゞこ
双蝶や姉が切り出す仲直り戸部紅屑
ともだちがほしいこそっと蝶の耳とまや
もうだれも弾かぬピアノや蝶の昼富山の露玉
山頂に蝶の舞ひたる姥捨山豊岡重翁
磔刑となりて蝶々の昏き夢豚々舎休庵
中指の蝶の匂ひを残し置く内藤羊皐
おびただし谷より光蝶生る内藤由子
椰子落暉ニライカナイへ蝶渡る直美YC
言いがかりのような話を躱す蝶なかかよ
読みかけて閉じて開いて蝶の昼中十七波
双蝶の高みつつ円描きけり中里凜
フルートのハ調のしらべ春の蝶長嶋佐渡
へろへろと岸に不時着したる蝶永田千春
スケルツオ流るるやうに蝶生る中原柊ニ
馬上花嫁二頭の蝶を供として仲操
蝶ひらり僅かにきしむ車椅子中村あつこ
雨の日の蝶や聖母の祈りの手中村すじこ
てふてふや寅次郎の恋終わるなしむらなし
本におくしおりは紋白蝶の影夏草はむ
象の糞ひらと風揺れ蝶二頭夏雲ブン太
蝶からのお誘ひきたる小道かな夏空なみ
そよ風が翅を持ちたる紋白蝶夏椿咲く
微発泡ロゼの速度で蝶上る七瀬ゆきこ
白き蝶芝生の上は低く飛ぶ七星麦穂
蝶の揺らぎ野をゆく風の五線譜に七森わらび
カピバラの眠そうな顔蝶の昼名前のあるネコ
石棺の縁のまるみに眠る蝶西川由野
わが袖のなにを好むや蝶の舌西爽子
乳輪のむず痒き朝蝶生まる西田月旦
置き去りのバラック街や蝶生る螺原トモ
迷いなく吾を導く蝶白し西村小市
蝶いつか戻れぬ高さまで行かん西村棗
蝶湧くや山を母体として無数二重格子
接戦のスコアボードに蝶が来て二十八
ちょうちょ見たころんだことはもういいや新田ダミアナ
一頭は蝶形骨を出でし蝶にゃん
教室に青空つれて紋黄蝶庭野環石
千の夜の部屋持つ蝶の眼の呂色野地垂木
銀色を蝶から剥いだ指の先乃立喰烟
アリバイはあります蝶が見てました野ばら
紋白蝶サファリパークの犀の背に野原蛍草
罵声めく風に蝶々耐へてをり登りびと
何匹も蝶を壊して育ちたり海苔和
あら楽し蝶々なんにも持ってないのりのりの
水脈は地図となり蝶遊びだす白庵
岐阜蝶や雲の切れ間に経ヶ岳白山一花
蝶よ飛べ被弾のビルの発破式はぐれ杤餅
蝶々や礼節のごと翅たたむはごろも856
父逝きてふわり時々紋黄蝶橋爪利志美
幸せが来るぞ蝶々が病室へ波止浜てる
もつれあう蝶は音楽ミシン踏む橋本こはく
宿酔の蝶は痛点かも知れずはせがわ水素
ふいにした洗濯日和蝶の昼長谷機械児
蝶ひとつ痛む心へ着地する花咲明日香
丁字路は蝶の居さうな右へ往く花咲めだ香
甘過ぎる朝日を蝶の羽化の翅はなぶさあきら
狂ふ蝶追ひかけ太陽は真上花見鳥
ハシビロコウひらふら蝶のひつこくて花和音
青空は今日で見納め紋白蝶ぱぷりかまめ
蝶に問う韃靼の水甘いかとはむこ
蝶に骨あらば此岸へ渡るまじ葉村直
山里は子に似て蝶もはきはきと林省造
じやんけんと無縁の暮し小灰蝶原水仙
軽やかな立ち漕ぎの背を蝶の追ふぱらん
レマン湖に城をゆらして蝶の昼巴里乃嬬
新しい教室蝶の迷い込む播磨陽子
単語帳Aから順に蝶となれ春あおい
明日俺は死ぬのか蝶がひかめいて晴田そわか
ひと筆の蝶たたしめよ蝶の野へ春海のたり
バーゲンの試着疲れた蝶はきれい春村実季果
少女らの手話にさそはれ歌ふ蝶春山菊
てふてふを目で追うて追うてもう空万里の森
昼過ぎの川は穏やか石に蝶ひーたん@いつき組広ブロ俳句部
水たまり逆さの街に蝶一つ樋口ひろみ
片頭痛蝶の羽音はハニホヘト菱田芋天
風ふつとスクランブルの蝶高しひでやん
亡き犬と同じ色して蝶ひらりひと粒の種
しんがりの子らを揶揄ふやうに蝶日向こるり
春の蝶明日には抜ける乳歯ありひなた和佳
蝶もつれ飛ぶ脛に疵もつ国を比々き
虚無孕む腹を摩りて眠る蝶向日葵姐@いつき組広ブロ俳句部
てふてふや大きな落とし穴の上日向守順子
春の蝶「あ」はえんぴつのにおいかな日吉とみ菜
ふうわりと蝶うたふのはさんびょうし平岡梅
ほぎごとの席に迷い来蝶の昼平林晶子
耳小骨疼く蝶の口するする平本魚水
てふてふやネットてくてくさまよふ老比良山
歩むごと蝶湧き上がる島の道昼寝
蝶々蝶々働くだけの考でした広島立葵
火山灰のいたみに蝶もよく耐へて弘中しかもり
蝶はひらひら五年後生存率ひろ夢
朝の蝶やはりポストにこの手紙琵琶京子
放心や蝶々出たり入ったり深町明
立ちこぎの校歌のサビに蝶来たる福田みやき
唇に蝶々はちみつのグロス袋小路綴乃
てふてふやもう酔うてゐる父の客藤色葉菜
ト音記号ほどけて蝶の吻となるふじこ
蝶生るドレミファソラシドの高さ藤咲大地
火口まで二百歩蝶は火の匂ひ藤白真語
コンビニや蝶を見ただけの休憩藤田ゆきまち
植物園群れなす蝶は痩せてゆき藤永桂月
ビル群てふ遺跡を蝶や緑満ち藤雪陽
とんかつのさくさくてふてふひかりけり藤原素粒子
シーツから飛び立つ蝶の影黒し船橋こまこ
ソプラノで歌いだすのはどの蝶か冬のおこじょ
明け渡す午後の公園蝶の空冬野とも
その脆さこそ蝶の武器となる古川しあん
ちょうの羽うらうらおもてうらおもてふる雲
四度目の遺品整理や蝶の昼碧西里
六本採血され蝶の中庭にペトロア
戒名に空の文字あり蝶々来べびぽん
蝶生まる畑に残渣の堆し北欧小町
うつとりと蜜漕ぎあぐる蝶の翅黒子
ぶら下がる蝶の視線の強さかな星田羽沖
心臓が痛い蝶々見失ふ星月彩也華
雲梯に虹のかけらのような蝶星野はいかい
朝礼の倒れるてまへ紋白蝶ほしの有紀
勝手ながらホテルに蝶を放し飼い細川鮪目
陽光や蝶は-1gΦポップアップ
アーケード老人ばかり蝶の昼堀卓
笑わないのだろう泣かないから蝶は梵庸子
翅はさむ指知る蝶の鼓動かな凡狸子
未だ名を呟く恋や小灰蝶前田冬水
蝶々の息継ぐたびに光る翅真喜王
蝶々や電気に支配される星まこ@いつき組広ブロ俳句部
蝶のちがい山の北がわ南がわ正岡丹ん
春の蝶小さくなりゆくペンだこや眞さ野
樹木葬のチラシのゆらり蝶ゆらり増山銀桜
眼前の蝶の不意なる自由律町田勢
埴輪女の眼窩透き来る白き蝶茫々
セロファンの層を嗅ぎ分く紋黄蝶ほこ
昼の雨蝶は寝床に帰りけり星善之
春に逝った人みんな蝶になった?町屋の日々輝
蝶生まる母と別れて得る自由松井くろ
何千の蝶墜ちて初恋終わる松田慶一
蝶よぎる指鉄砲の射程距離松本裕子
綾取りが苦手で蝶も掴めない真冬峰
どれくらい捨てれば蝶の軽さなるまめばと
蝶集う火の見櫓の代赭色まるにの子
うずくまり石になる子よ蝶とまれ丸山隆子
蝶生まれ己が重さを捨てにけりまんぷく
蝶出づる懺悔の指の解ければ三浦にゃじろう
蝶々や迎えの船はまだ来ない澪那本気子
蝶ひらり午後の古文も目を覚ます澪那本気子
黒鍵に白き蝶乗りファのシャープ三日月なな子
蝶ひらひらモーツァルトの音符かな三茶F
つままれて動けぬ蝶の二つ折り岬ぷるうと
荒地の黄蝶ささやき声のディラン三島瀬波
紋白蝶空の丁字路急左折水越千里
8の字に風を結びて紋白蝶水須ぽっぽ
蝶離るや問十七の答はア満生あおね
落選す掴み損ねた蝶高く美月舞桜
イスタンブールを紋黄蝶の朝日みづちみわ
蝶の昼ヤギの右耳よく動く光峯霏々
通らせてもらふ木陰の蝶の道みつれしづく
ガラムスーリヤ染みる蝶の右眼にミテイナリコ
羽衣は蝶一頭の軽さだらう南方日午
蝶々や検査結果は縦に裂く宮井そら
早朝の正拳かぜをつくろふ蝶宮坂暢介
蝶とびたつや打ち上げの種子島みやざき白水
てふてふや転入生の目の碧し宮武濱女
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柩から飛び立つ蝶の白さかなmomo
車庫入れのミラーを白き蝶ふつと百瀬一兎
山頂は風の停車場蝶の群桃園ユキチ
鬼瓦まず下ろされて蝶来るももたもも
海砂のごとき胎盤蝶の昼森日美香
蝶の翅互ひ違ひに重なりぬ森海まのわ
海風や棚田を登る蝶の影森佳三
騙されてゐるしはわせ蝶よくるなくるなもりさわ
此岸の蝶は黄彼岸の蝶は白もりたきみ
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たくさんの蝶とぶ森に埋めました横山雑煮
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王眠る古墳の木棺蝶産まる吉田わさび
はーやんはアル中酒屋まで蝶々吉野川
蝶曰くひとはまっすぐ歩けない吉行直人
蝶探す君のリュックの蓋にいる楽和音
水の輪の生まるるごとに蝶産まれ楽花生
紋白蝶この国のひとみな病んで梨音
遅延また列車遅延や蝶の昼理佳おさらぎ
痛点を軽やかに蝶通過せり流流
幽けさや蝶とまりたるボンネット良俗倭人
蜆蝶の羽裏見てをり病窓に朗子
てふてふやボレロのソロの指づかひろまねす子
蝶止まる後部バンパーの傷跡和光
ビル風や地に食らいつく街の蝶わたなべいびぃ
なあ蝶よ下肢の装具も十五年渡邉竹庵
黒きてふも白きてふもてふてふ渡辺桃蓮
もつれ来て西と東に帰る蝶渡邉わかな
つぎつぎに特急通過蝶の昼亘航希
蝶生まるここはひかりの震源地笑笑うさぎ
路地の奥トロ箱の小花にも蝶相沢薫
波間のペットボトルにとまろうとする蝶あいのびふう
ひなた道蝶が蝶追う重ならず大竹八重子
家族写真蝶もいつしよにおさまりぬ青田奈央
無認可の人形遣ひ去りて蝶青に桃々@いつき組俳句迷子の会
踊る蝶ちかちか光る頭病みあおのめ
おひさまとてふはともだち子へ諭す赤尾双葉
蝶々てふ頁めくれば青弾け赤尾実果
麦畠の弾痕に黄蝶の蛹敬子
蝶の羽明滅犬も片思い空地ヶ有
春の蝶寝たきりの父「靴がない」と秋野萱
嫌われて後姿の蝶を追う明日良い天気
掌に母の手重ね蝶生る葦名雪子
蝶々や光を吸うて腸へ葦屋蛙城
てふてふを追う吾の脚のおぼつかな阿曽遊有
ベンチにて五分やや動く蝶の翅愛宕平九郎
運命の指揮棒めくや狂う蝶あたしは斜楽
蝶誘うありとあらゆる狭間へと新子熊耳
さなぎより今朝孵りたる蝶一頭跡部榮喜
君待つ傍ら何か待つ蝶をりあねもねワンオ
蝶が行く押しつ戻され急降下網野れいこ
山椒をとげのみにして蝶になり雨降りお月さん
ちょっかい出すトウキョウトガリネズミをしばく蝶池田華族
舞う蝶や宙に笑いの漂へり池田昇雲
蝶ことばあらば光ぞ紋白蝶池田桐人
今日我は迷いし蝶と空へいしいるぴなす
天使めく蝶は魔物を産み落とす石垣葉星
夕刊の薄き日経や蝶の翅石川明
ステンドグラス羽織つたやうな蝶石崎京子
蝶二頭前座のごとく野舞台へ石塚碧葉
蝶舞うや新しき靴履いてみる石原花野
蝶は舞う視えぬ亀裂を縫うがごと石馬勢至
蝶追いて明日をさぐるや我が眼いずみ節子
蝶生きて三稜鏡の輝けりいその松茸
蝶よ白銀の糸に潜む罠板橋山容
そこの蝶このかげよそへ連れてゆけ市川卯月
肉球をふわぁり蝶はブランコへ市川りす
蝶もつれ憂きこと捨てて見守れりいちご一会
舞う蝶や空気の波紋かき鳴らし一久恵
汗握るロープの岩場飛ぶ蝶よ一歩千金
シネマ出て幻のごと白き蝶伊藤順女
戯れる蝶の仲良きかは知らず伊藤なおじい
この蝶は吾の歳知らず遊びをり伊藤れいこ
病む母へ低く舞ひたる黄蝶かな伊奈川富真乃
剪定の先へ先へと幼蝶稲葉こいち
蝶追ひて先見えずとも陽の方へ伊縫音々
「ご愛顧に感謝」の下にてふをりぬ犬山裕之
複眼に映る一羽へ絡む蝶ゐのかたゆきを
ふりこぼす碧き鱗粉夢の蝶今井淑子
ビルの上墓石にも似て飛ぶ蝶や今井みどり
花びらの離れる蝶の羽の音今西知巳
連れてゆけ窓外の蝶のかろきよ伊代ちゃんの娘2
てふてふと家路てくてくカレーの香岩清水星斗
蝶蝶や地球はさぞや重かろう植木彩由
指先に残る羽毛や蝶の息植田かず子
ヴィヴァルディの四季は善き哉蝶の舞ふ上野徹
白蝶来赤子はめしを食べこぼす上原淳子
ここに木があったはずだが蝶々来宇佐美好子
向かい風に立ち向かう下校路の蝶丑十八夜書ク
バウンドを過る卍巴の蝶うた歌妙
散歩道次の角にて蝶誘う海口竿富
黄昏て訪う蝶や利休井戸梅里和代
翅のあを空とも海とも渡り蝶梅朶こいぬ
青空は蝶々のためにありしかと麗し
風を読み優しい奇跡起こす蝶江川月丸
真昼時てふの吸いたる光の黄絵十
紋黄蝶二人で持てば持てる岩海老海老
蜜もたぬ母の手に蝶とまりをり笑姫天臼
だんだら蝶名前飛び交う選挙カー絵夢衷子
街宣車交錯ひらり舞ふ蝶やえりいも
花よりもひかりのなかへ双蝶はえりべり
太陽の花弁にいのち尽きし蝶円路
蝶追うて少女一人の失せにけり遠藤千草
日曜やもう酔ひてをり蝶の昼遠藤一治
初恋の人に似た背に飛ぶ蝶遠藤倫
国境や素知らぬ顔をして蝶は大岡秋
ハンドルの蝶静かにそっとペダルこぐ大越総
いく千と万華鏡より蝶は生う大越マーガレット
遮断機をまたたく蝶よ初戦突破大小田忍
蝶出でて背の温みの濃くなりぬ大塚恵美子
蝶々や意識に闇のまじり初む大津美
蝶眠る花の鼓動の子守唄大野喬
ひらひらに代わる言の葉なきや蝶岡井風紋
寄り添ひて魂のこす風の蝶おかえさきこ
陽のおもさ風のおもさを蝶降下おかげでさんぽ
どこで会う約束もなく飛んだ蝶おがたみか
飛蚊症振り払ふ手に惑ふ蝶おざきさちよ
黄と白の蝶が争ふ籠の中小島やよひ
若き蝶活活と蜜喰らうかな沢瀉みやこ
網纏い平面なる蝶のしづか快晴ノセカイ
黎明のシーツに縫われた蝶怠く械冬弱虫
時の間から蝶一匹出づる海堂一花
野ノ花カ互ひを探る蝶二頭灰頭徨鴉
蝶だけが彩るひっつめ髪の君かえるゑる
あをぞらにくんずほぐれつ番蝶垣岡凡才
二拍子の拍とる羽や二胡の蝶華胥醒子
「狂ってなんぞいません」と蝶が言う柏原淑子
てふてふも死装束や山の路片山蒼心
舞う蝶や仰ぐくちびるに唱歌花鳥風猫
あたし悪くないもんと蝶去りぬ葛飾シトロン
弧を描き何か報せに蝶来たる桂子涼子
「ちり紙」を知らぬ世代へ紋白蝶仮名鶫
従兄弟にはとまるな蝶々投票日金子泰山
松ヶ枝を越えたあたりで蝶消えし釜眞手打ち蕎麦
青き蝶導くように騙すよに神長誉夫
ただよひててふてふ刃かはしけり神谷たくみ
蝶は怖い誰もわかってくれぬけど紙谷杳子
君じゃなくちゃ一直線にだんだら蝶亀山酔田
紋白蝶来たりて風景完成す加裕子
前脚で失恋弄ぶ黄蝶唐草もみじ
認知症の母を連れ去つたのは蝶加良太知
そよ風に蘂の手招き蝶眠る刈屋まさを
イヤホンの右耳の痛み蝶も来て狩谷わぐう
押さえ付け閉じ込めた蝶叩き出す枯山日明萌
けふもあひてちやうに○をあをいてふ川村湖雪
あの友は元気だろうか蝶ひらりカワムラ一重
蝶ゆらり黄泉比良坂漂いぬ木口まり子
六歳の友の墓石にとまれ蝶季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
泣くために此処に来たのに蝶2匹狐雨こじろう
蝶の羽根透けて垣間見た未来木下桃白
水煙に透きもつれ合ふ蝶の昼木原洋子
飛ぶ蝶も影を纏って人が好き君村類
野辺送り蝶も乱れてあと追うか木村修芳
だんだらてふ水の星へと舞ひ下りる木村隆夫
秘め事やひらりひらりと蝶が堕つクウシンサイ
歴史的瞬間蝶をつかまえた倉岡富士子
ぺらぺらの蝶のおしゃべり聞こえそうコウ
蝶ならば君の睫毛に触れせしを郷りん
剃刀で顔剃られ蝶の空想公木正
笑い声聞こえるような二羽の蝶柑たちばな
白昼の心変わりや迷い蝶幸織奈
黄蝶舞ふ空に旋律描きつつ小鳥乃鈴音
メロディーをたどる飛び方紋白蝶小藤たみよ
百段駆け合宿勢蝶を捲き斉実篤
和を願う合掌に似て蝶の羽西條恭子
蝶々の鬼ごっこと我一人さいとうすすむ
ふわふわと富士山越ゆる胡蝶かな坂崎守寿
影ふわり背に蝶の重みかな咲まこ
狂ふ蝶堕ちる時間を知る如し迫久鯨
蝶々の空の平和という孤独佐々木ヨウジ
てふてふの遥かなところ飛びたがる紗千子
蝶二つ八幡さまに遊びけり佐藤レアレア
小灰蝶地球かろやかにまはるサトサナ
保護区より蒸発するかに春の蝶さふぁい庵
迷路なき坪庭巡る蝶二頭さぶり
蝶堕ちる宙へのきざはしは気ままさるぼぼ@チーム天地夢遥
魂の清き試練よ白き蝶じきばのミヨシ
蝶ふわり独居老母の「生きてます」篠雪
木曜の真昼無風に浮かぶ蝶庄司しづく
原の蝶たましいの教科書開きしか白井佐登志
獣糞に湧く紅や青やの蝶々四郎高綱
皇居門検査すり抜け入る蝶神宮寺るい
鱗粉のきずあと香る迷い蝶新城典午
ベッドごと散歩す黄蝶先導す新花水木
蝶ひとつまとふ浮力や丘の道深幽
蝶々や草間彌生の森の中鈴木麗門
この蝶の聞いたことなき音のする全速
石仏や両界曼荼羅蝶一羽惣兵衛
乳母車蝶の映りし児の瞳そうま純香
沸沸と片片と蝶てふ真理帝釈鴫
断捨離や主なき部屋に蝶の舞い平たか子
蝶の羽休め退職決めた友滝上珠加
晴れマーク並ぶ紋白蝶乱舞瀧本敦子
墜つる悦エアポケットを紋白蝶多事
蝶ぽつと葉裏で会えた転校生たすく
名も知らぬ野に名も知らぬ蝶の飛ぶ糺ノ森柊
蝶々の「てふ」と空気の水面蹴る立川茜
慣れぬ地でいつもの蝶が待っている田中祐子
夜勤明けドアを開けると蝶笑う谷卓生
飛び立ちし蝶が残した寂しさや谷口美奈子
蝶の羽ばたき嵐となる日を待つ玉響海月
過ぐる風を蝶の味方とまづはせよ田村利平
蝶となりゆららひらひら時間軸段丘崖
母の背のごつごつきっと蝶の翅智泉由紀子
蝶に言う御霊は何処導けと千葉睦女
蝶来る自由に風を従へてちゃあき
なかんずく蝶の進化は恋成就ちくりん
蝶宿りぽつつりみづの螺鈿かなつくも果音
蝶一頭知り尽くすかに小庭へと辻内美枝子
蝶生まる心経の文字描くやうに辻野花
木漏れ日の赤も黄色も蝶の息対馬清波
里山やひとりしずかに紋白蝶辻本四季鳥
蝶が来たバリトン止まる四重奏輝久
掻き集む蝶の欠片や錬金師東京堕天使
刺青師彫るごとうねる蝶の翅時小町
蝶は朧に歌舞伎町の午後二時時まる
ひこうき雲よ陽に射され沖縄の蝶徳庵
魔法陣描くがごとし狂う蝶独星
鉢植えの蜜柑羽化せし蝶九頭鳥羽ししまる
蝶は舞う明日は戦地と化す野にも冨川友香理
落つる蝶震へ幽かな片羽かな斗三木童
力抜きて抜きて挟めり蝶の羽友@雪割豆
あの蝶々おばあちゃんになんか似てる登盛満
肩に寄る蝶の瞳に伯母の声中村雪之丞
折畳傘のごとくに蝶生まる⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
引力に斑あるごとし狂う蝶奈良素数
蝶渡る通学団を導いてにいやのる
暗闇で蝶になる日を待っているにえ茉莉花
鍬の音やわらげくれし蝶の昼沼宮内かほる
今日からは蝶としてゆく軌道かな沼沢さとみ
つくばいの蝶や口先に音消ゆ沼野大統領
羽立てて震える蝶の魂よ根々雅水
童舞の翅は塗りたて蝶の昼ノセミコ
翅うごく蝶の呼吸や石仏野中苦泉
庭に蝶白寿の母の喉渇く野々かおり
アルテミスの炎は揺れ春の蝶白雨
水槽は空と蝶とを捕らへをり蜂鳥子
蝶交じる平和に色のありにけり葉月庵郁斗
盲点を操りながら蝶そぞろ八田昌代
蝶の翅朝日刺すかに破れおり花弘
蝶は舞ふ浴びたひかりをまきながら林眞亜紀
蜜を吸い酔いどれ蝶が乱舞する原厚子
紋白蝶ひらりとかわす恋心ひーちゃんw
何処へでも行けるというのに庭の蝶東の山
樹々の名をよく知る人は逝きて蝶東原桜空
はなひとつつきめいにちの蝶をおい匹田ひとみ
まどふてふふきつのにほふ蜜の味ひぐちいちおう(一応)
垂る翅の耀きはじむ羽化の蝶樋口滑瓢
空の青追はれし蝶を抱き上げり美竹花蘭
こしょばいの黄蝶がいます帰化の印141番
蝶の名を教えてくれし人ぞ今廣重
羽搏けば風押す蝶のかろさかな風慈音
伴奏は砲声胡蝶のホパーク深蒸し茶
柔き葉に蝶たまご置く尻曲げて福井桔梗
葬送の母骨壺に止まる蝶福川敏機
さみどりのシャンツェ下り来る黄蝶かなふくじん
蝶の翅ひきさきそうな誘惑に藤井かすみそう
しじみ蝶抜きつ抜かれつ登山道藤丘ひな子
肩へ蝶命の宿る報せかな三浦海栗
来世での生まるる場所を探す蝶帝菜
夢か現かひとつに紡ぐは齢ひか胡蝶よ光月野うさぎ
蝶生まる身体無き吾は何を生む満る
蝶一羽たわやかなれば悲しかりみやかわけい子
病室の窓や無音の蝶飛ぶ宮本モンヌ
吾の胸に蠢く蝶を解き放つみらんだぶぅ
きらきらと陽光こぼし雨後の蝶暝想華
鉄路とは五線譜のよう蝶の舞う目黒智子
てふてふや嫋嫋と翻りつつしたたかに目黒千代惠
蝶ふたつ空気のなかをからまりてめでかや
蝶の来てラジオに流る昭和歌謡望月ゆう
つきあかりまだ眠れぬか影の蝶望月朔
ポケットの穴それは胡蝶の為に百瀬はな
蝶の腹つまめば指に命あり森佳月
筆跡や蝶の飛跡を準えて森英一
紋白蝶ごっこ遊びのナースかな杜まお実
ウクライナ砲の口から蝶を吐け八木実
蝶一頭翅きしませて海渡る安井コスモス
水切りの美しき波紋を狂う蝶簗瀬玲子
白と黄の蝶で占ふ明日かな八幡風花
蝶の羽根扇子にしたる風の神山口雀昭
蝶ならばひらりふわりと往くものを山口愛
黄色いほてり蝶去りてのちの空山田啓子
白蝶の踏ん張る力風そよぐ山野麓
蝶々の描く螺旋の宇宙音山本蓮子
前世を知られまいとて蝶や蝶唯果
「青」待ちのフロントガラス蝶ひらり柚木みゆき
をちこちで蝶の燦めき漫ろはし有野安津
暮れてより記憶の沈む紋白蝶宥光
夕日より黄色の蝶の生まれ出づ湯屋ゆうや
山頂はしづか風のそよぎと二羽の蝶陽光樹
あくがるる魂に傷あり眠る蝶羊似妃
三日月と背中合せに蝶とまるリーガル海苔助
やはらかな風の結晶紋白蝶柳絮
迷妄のやうなる蝶の一筆書ルーミイ
右に過去左に未来宿し蝶渡辺香野
海渡る蝶の矜持は我になし古烏さや
指先に光る鱗粉蝶放つ岡田瑛琳
蝶追ひて初めての道草ランドセルANGEL
逃げよ蝶猫の目一点定まれりあぁ三輪白米
寸足らぬカーテンくぐり迷ひ蝶EarlyBird
蝶が舞花咲き乱れ宴かなあいあい亭みけ子
孫の右手握る舗道のチョウはしろ葵かほる
教室に迷いし蝶や五時間目青井晴空
赤信号蝶だけ渡る家路かな青蛙
墓参りいつもの道を蝶と行く青空舞華
ピントあう寸時も待たず蝶の舞う青砥転典
一頭と数える蝶や頼りなき茜咲
ふらふわと戦地の蝶は重怠し赤目作
紋黄蝶しづかに離れどこへやら聰子
野草の間花の振りした蝶二頭昭谷
雲端に蝶舞い絶えて過ぐる風芥川春骨
蝶の羽花のごとくに並びけり浅井誠章
粛々と蝶の産卵続き居りあさいふみよ
昼下がり蝶と並びて見上ぐ空麻丘澪
蝶の昼一年過ぎし新天地朝日雫
祖母の輝く記憶蝶舞う故郷亜紗舞那
羽傷めながら千里を渡る蝶あすなろの邦
蜜からのうまい蜜へと旅の蝶あすなろの幸
引越しや荷造り紐に蝶とまりアツシ
ジュラ紀から和み担当だんだら蝶渥美こぶこ
蝶々や若やぐ母の眠る墓渥美謝蕗牛
窓際に蝶止まりし滴飲み阿部京子
紋白蝶風に震えて何処まで数多未完
何故か燃ゆる日の元ゆきし蝶天宮渡
指先になじむ鱗粉紋黄蝶雨霧彦@木ノ芽
指先の鱗粉飛べたかかの蝶はあややaya
廃園や日差しへ出づる蝶の群亜来真留美
岐阜蝶で映え目指してる金華山新井遊休
信濃川渡る自転車蝶ひらんあらせもんじ
立ち漕ぎや先導役の紋白蝶蛙里
蝶々を目で追い掛けて青き空有本としを
風静か空高く舞う蝶見ゆ飯田むつみ
祝い日の朝庭には蝶ニ頭粋庵仁空
連れは黒き影黄蝶も白蝶もいくみっ句
蝶来た花壇輝き美しや池愛子
年々に蝶少なしや狭き庭池内ねこばあば
風にのる蝶は真昼の夢のごと池田炭
蜆蝶バタフライエフェクトいつか石垣エリザ
遠く飛ぶには蜜より水か蝶よ石川あ世楽
蝶が舞うキャベツ畑のラプソディー泉恵風
花の間の蝶舞い上がり逃げ上手伊泉不洋
蝶ひらら花から風へ流さるる樹魔瑠
君でしょと蝶に問うては耳澄ます一秋子
ほどほどの距離むずかしく舞う双蝶五つ星
舞う蝶やひらり逃るる網のさき伊藤薫
蝶々が後ついてくる霧ヶ峰伊藤節子
あの蝶め干してた服に鱗粉が伊藤テト
蝶を追ふトロンプルイユのワンピース伊藤正規
蝶ひくく御魂をたどる合戦場伊藤柚良
大食漢蝶の残せし成長記伊ナイトあさか
蝶ひらり我の好みし花に舞う伊那寛太
帰宅すれば蝶が迎へて退院日井上幸子
黒き蝶闇夜ひらりと仏壇に井上右彩
蝶生れて光の中へ溶け込みぬいまいやすのり
レンズの中で蝶はビルより高く今乃武椪
晴天なりランチ広げて蝶を待つ今村ひとみ
プリンカップ取り合う砂場蝶々来妹のりこ
風だとか光の中とか生まる蝶伊予の大督寺
次々と蕾に魔法かける蝶岩清水彩香
陽光を受け透け光る蝶の羽上田めぐみ
御寺まで蝶の案内や月見坂上原まり
ミステリー読みふけベンチに光る蝶原句ママうちだまみ
終電の白線越ゆる蝶の名よ梅原もずく
光差す花の波間に蝶踊る江口朔太郎
ブッドレア香に誘はれて蝶舞い来S・葉子
蝶々の後を追いたや影法師越後縮緬
散歩道キャベツ畑の蝶の舞い榎本奈
ひらひらと蝶が運ぶよ移り香をえみばば
目には見えぬ糸で繋がれつがいの蝶縁穐律
白蝶の鬼ごっこするかのやうに原句ママ円美々
蝶達慌て選択産卵葉大江戸小紋
蝶が舞うカップ片手にビバルディー大阪駿馬
佐渡ヶ島見えるいただき蝶が舞大島一声
蝶の翅白き陽光翻し大嶋宏治
目の前に止まれば捕れぬ蝶々かな大谷如水
畑との対話か蝶の翅震へ大槻税悦
颯颯と蝶羽ばたき青空に大野純子
孫と蝶追っかけ追っかけ滑り台大原妃
庭掃除蝶を見つけて一服かな大原雪
どこまでも蝶おいかけ役立たず大道真波
あの歌詞のサビだけ届け蝶になれ大本千恵子
早朝に振るプロテイン眠る蝶大谷一鶴
蝶々や上下左右にグッドジョブ大山小袖
夥しく乱舞す蝶や昔日岡由紀阿希
白い蝶海の深さや羽は濡れ岡崎未知
蝶の来て今朝は子孫を残しをり岡田明子
撮り鉄に横槍入れる春の蝶岡田恵美子
ケンパする子にとまらんと蝶ひらり岡田ぴか
蝶追いて堤を下る子を追いて岡塚敬芳
蝶ふわりリトルリーグのヘルメットオカメインコ
碧き蝶遥か江津に涙なし岡本
どこからか舞う蝶の羽根空に消え丘るみこ
宿題の標本作り蝶殺す岡れいこ
海を渡る蝶よわが魂連れていけ奥寺窈子
海渡る蝶よわが魂もろともに奥寺窈子
てふてふのふわふわ踊る雨上がり小栗福祥
新しく刻む墓石の縁に蝶おこそとの
後れ毛と蝶となかよくそよぎをり小沢史
泣き止まぬおんぶの赤子に蝶や飛ぶ小田毬藻
おゆうぎの手本となりし蝶々かな尾田みのる子
蝶になり時に可憐な花になりお寺なでしこ
何者の急かすやキャベツ畑の蝶音のあ子
花の野の蝶に道ありふわふわり小野とらのは
墓前花のかたづけ蝶舞いて来る小野ぼけろうじん
オフィス街蝶に驚き時流れ小山田之介
アイヌ刺繍窓辺へふはと蝶の舞かいぐりかいぐり
蝶を追ふ子を追ふ吾の一と日かな加賀くちこ
うらうらら蝶を追ふ妻陽がくれる香川雅子
蝶舞う野に青空映えそよ風が影夢者
蝶さんよ人の心も吸ってくれ可子
てふてふや脱原発の国ありと化骨
わが吾子はモンシロチョウになったのね笠江茂子
蝶の息結界の赤く染まりし笠谷タカコ
仄かなる蝶の息する飼育籠風花まゆみ
舞い込みし蝶はきみか姿変え梶浦正子
昇進の祝いふわりふわりの蝶鹿嶌純子
蝶ひらりシャッターチャンス逃しけりかじまとしこ
紋黄蝶今日のラッキーカラーは黄花純
昼寝する牛の背中に蝶やすむ片岡明
先づ蝶のゐる中庭へ県人寮片岡六子
蝶飛んで水面に写る笑顔かな片岡龍一
鱗粉を袖に散らすや逃げる蝶勝瀬啓衛門
蝶の来て「ほらばあちゃん」と祖父の言う加藤暖
停戦地ふわりと越ゆ蝶健やかに叶田屋
てふてふの野のランデブー白黄色かぬまっこ
項垂れる影へ一縷のごと蝶はかねつき走流
黒革の手帳の上を蝶が舞いカバ先生
蝶々や猫を追うたり追はれたりカフェオレ草
舞う蝶や失敗しても朝は来る花星壱和
チャペルの音好みへ黄蝶まっしぐら神谷米子
庭先で暫し休むや蝶来たる亀田稇
蝶待つや花の名前は知らねどもかもめ
老桜に寄り添い励ます紋白蝶カラハ
ひとかけのバタを溶かせり春の蝶かりかり久助
老犬の白い瞳に春の蝶川口水明
アセスルファムカリウムに寄りて立つ蝶々川代つ傘
花飾り蝶もふわりと模様替え川辺世界遺産の居候
乱れ飛ぶ蝶の歌の高く低く川村昌子
蝶の舞う蜜のお礼の美しく樺久美
ワンオペのバギー疾走紋白蝶看板のピン
高原のあれよあれよと青蝶よ紀杏里
水遣りの飛沫避けろよ庭の蝶聞亭圭輔
寿命など考えもせず蝶は舞う岸本五月
てふてふと祖母の筆見て蝶と知る岸本元世
うたた寝の夢より醒めし昼の蝶酒暮
菜園に実りの予感蝶来る北川茜月
帰り道夜空の向こうに光る蝶帰宅部めんそ
蝶の髭気になる昼の帰り道北野都留
密を吸う群れから離る蝶ぽつねんギックリ輪投げ
昨日きた蝶がひらひら庭仕事木野まち
故郷の家手放す日蝶の舞う木村かわせみ
春の蝶バランス歩行越えていく木村波平
初おんも同じ色の蝶に越され銀髪作務衣
木立より高速飛翔や紋黄蝶楠田草堂
見つめられ蝶に連れられ舞にけり国後択捉
畑舞はむ言失わば蝶と成り窪田睡鯨
蝶なんて虫よ虫よと君は言ふ倉木葉いわう
インクラインに蝶インスタ女子もまたぐりぐら京子
命とはただよふ蝶の無重力栗の坊楚材
吾は蝶ぞその日その日を愛せバカ来ヶ谷雪
葉裏の蝶雨垂れ弾き羽煌くくるみるく
蝶追って下校に見つけたひみつ道黒瀬三保緑
汗だくのテニスコートや蝶揺らぐ黒田@白井
おだやかな風や光に蝶の舞ふ桑原和博
誰を待つ数えはじめた蝶の昼慶唯
秀逸句吾が驕心に蝶の舞ふ家古谷硯翠
庭先で手で追い回す蝶の群れ元喜@木ノ芽
鱗粉の半ば剥げたりはぐれ蝶ケンG
目で蝶を追いかける吾は松葉杖源氏物語
草原に白と黄塗りて胡蝶かな恒産恒心
虫眼鏡持つ上空を通る蝶紅紫あやめ
紋白蝶超満員のオフピーク幸内悦夫
森の径先行く蝶に続きをり宏楽
狂う蝶一万円が落ちている珈琲喫茶
ふわり来て花掴みけり蝶の足こきん
山門を潜りて蝶の翅たたみココヨシ
高野へと蝶出迎える無人駅越乃杏
手を引かるる夫の記憶は畦の蝶小杉泰文
五線譜の柵に音符のような蝶後藤周平
花びらの如しとみればあれは蝶後藤方丈
夕野原組んづほぐれつ蝶の飛ぶ後藤三梅
めでたしや蝶は耳寄るさくら猫このねこのこ
指標なき挨拶回り黄蝶かな木花薫
ふわりふわ蝶は敗れた恋知らず小林共捺哉読
蝶々や標本作りしJK時代小林弥生
行き先の同じ蝶に出会いけりこひのむ
水平を目指すバランス海の蝶小山秀行
蝶の舞オーケストラの指揮者かな五葉松子
蝶見れば私も飛ぶよ大空へコロンのママ
ふわり蝶はんなりふり先はなの道権田童よしこ
日溜まりへぱつと飛立つ蝶々かな埼玉の巫女
ファインダー横切る蝶にレンズ向け齋藤鉄模写
蝶はまねく墳墓の主の使者のよう坂上一秀
近道を遠回りして蝶に会ふ坂崎守寿
筆伝ふ墨とんと見ず双つ蝶坂島回文
舞ひもつれ吹きもつれつゝ蝶二つ坂田貞雄
通夜帰り袖にまとわる黒き蝶坂田雪華
蝶々や赤いリュックが小さくなるさかたちえこ
蝶とらえ鱗粉撫でし小さき手坂本千代子
蝶止まる一時休み羽広げ相良まさと
鱗粉少か残せし蝶の舞さくら亜紀女
蝶ひらり内緒話の三姉妹櫻井こむぎ
花畑つるみし蝶の移り気や桜華姫
黄の蝶は亡きつまと決め話しかけ桜姫5
蝶々よ其方も宴に入るがよし桜よし榮
吾と読みて強く頷く蝶になれ笹イボ太郎女
指先の鱗粉さらり蝶ひらりさざなみ葉
紋白蝶ダンスしてるかひらひらとさざんか
網迫り蝶舞いかわす鬼ごっこ薩摩じったくい
過疎の村小川は清し蝶の飛ぶ佐藤恒治
渡り初め列の先には胡蝶かな佐藤俊
命継ぐキャベツ畑の蝶忙し里こごみ
新しき職場に行く日蝶ひらり澤真澄
洗濯の白のキャミソールへ蝶々山海和紀
君なのか献花台へと蝶の来る三角山子
蝶の群ジャズを愛せし君逝けり塩沢桂子
望遠鏡ブスリと蜜吸う蝶の口下町古娘
明日さへもわからぬ蝶といる過疎地実本礼
銀傘の下蝶は舞う九回裏柴桜子
葉の裏にお休み処蝶ゆるむ島じい子
おくるみのキルト縫う夫蝶生まる縞子勾苑
進水式の拍手にひらり春の蝶清水祥月
まどろみの母の白髪に紋白蝶清水明美
白蝶や主人のいないレンガ庭シモクレン
追いかけて逆さ登りの園の蝶釋北城
立入禁止だって蝶々が寝てるもの秋雪
パーキンソン病歩く足元蝶の舞う秀道
水鏡見惚れて飛ばぬ白き蝶秋芳
夕暮れの空橙の小灰蝶朱康君
宇宙から猫来る説蝶来る珠桜女絢未来
戯れる蝶や双蝶は撓むる種種番外
蝶々や出鱈目な句の走り書き順之介@QLD句会
おっとりをまといそぞろに春の蝶正念亭若知古
蝶が舞う不思議な異界に誘われショートケーキ
もっと先へ蝶に誘われ一歩ずつ白石梓
のらくらと子らの追撃かわす蝶深仲夏
やはらかな風にうたた寝紋白蝶森牧亭遊好
選挙戦は過熱蝶は音もなく新米いろは
ひらひらの計算式を蝶や知る酔軒
白熱のラリーを蝶の横切りて瑞陽庵
蝶や蝶迷ふ心にわかれ道杉浦あきけん
崖を蝶追いつ追われつ消えにけり杉浦真子
湖風の通り道くる紋白蝶杉尾芭蕉
春の蝶子に読むはらぺこあおむし杉沢藍
蝶越えむ十三憶の星の河杉本果ら
蝶々の華麗なる舞の影知らず杉山書斎庵
鱗粉を空にちりばめ描く蝶杉柳才
兵眠る山に双蝶案内され涼風亜湖
軽やかに子の網かはす春の蝶鈴木静子
眠る蝶母のミキサー歌忘る鈴花茶
あっぱれや芋虫青虫蝶になる鈴木パンダ
網振りて蝶の泣き声聞こえたり鈴木暮戯
蝶逃げる補助輪取りし子の蛇行鈴木リク
手をはなし駆け出す男の子紋白蝶鈴子
二人三脚古希の朝蝶踊る素敵な晃くん
嫉妬心蝶は気ままに空を舞ひ晴好雨独
戯れし胡蝶の夢に朝の酔ひ青児
白い蝶高速道路越えて行く勢田清
あぜ道に咲き誇る蝶忍び足星夢光風
蝶さらば解く家の魂ふわり舞え瀬紀
遊ぶかのやうな飛び方紋白蝶関戸うふふ
死んだ蝶三十年も引き摺って早春SOSHUN
苗に来る蝶を払えぬ虫好きの手そしじみえこ
移り気な蝶はふわりと甘い香りへ園蜩
坂行くや蝶は軽々魔界へとそまり
蝶ふわりあの子の家にお願いよそれいゆ
バリスタのせわしさ眺む白き蝶孫太
正午だけ日が差す小庭蝶来たる駄詩
またパター外して蝶はけらけらとたーとるQ
ハルカスの花壇に蝶の来てゐたり高岡春幸
おひたしや穴あき葉っぱは蝶のわざたかこ姫
蝶が飛ぶ優しい風のその上を高橋紀代子
肘枕とろりとろりと蝶の昼高橋ままマリン
白蝶の我追うような仕草かな高橋光加
大海を越えし蝶舞う道の先田上コウ
もつれ飛ぶ白蝶二頭駅花壇髙見正樹
晴天のブランコに蝶また空へたかゆき
24時間停戦青空まぶし蝶舞うや卓女
戦車のハッチ憩む蝶ウクライナ竹内菊香
はらはらと蝶たゆとうや連れ一羽多胡蘆秋
命つなぐとて翔ぶ田畑の蝶ら立花かおる
蜜求め舞う蝶の群れ人のよう橘春容
髪なびき季節移ろい蝶愁う橘路地
カシャカシャと音の先には椅子と蝶龍𠮷
虫籠に空を閉ざされ蝶の羽田鶴子
兵視たり眼鏡先に周る蝶たていし隆松
あっ、チョウチョが飛んでるぅと空(くう)眺めたり田中美蟲角
冥府への誘いかひらひらと蝶田中紺青
蝶舞うや父の化身かいつまでも田中ようちゃん
ひらひらと舞う花びらは春の蝶田中善美
しゃがみ居り黄色の服に蝶来たるたなばたともこ
草の上離れぬ蝶の明日の夢たなべ早梅
正客は紋白蝶や緋毛氈玉井令子
追ってきた蝶は金網擦り抜けてタマゴもたっぷりハムサンド
ひらひらとからみて踊る蝶ふたわダメ夫
整列の体育館に蝶がゆく樽熊だん
キスマイにガチ恋蝶の羽をもぐダンサーU-KI
白蝶よ近づき離る姪嫁ぐ千夜美笑夢
クラクション鳴らす霊柩車追ふ蝶ちょうさん
ラジコンで操作したいと春の蝶塚本隆二
原っぱを蝶のガイドで花巡り槻島雫
蝶とまる社殿の千木に翅立てて月城龍二
自撮りした背後に二頭の蝶が舞う月見里ふく
葉陰よりふわりと出ししじみ蝶辻ホナ
稚児の手をひらりと交わす蝶々かな辻美佐夫
うは風の田面行き過ぐ蝶の昼辻栄春
気配だけ残し不穏の夜の蝶つちのこ
蝶や舞う人間アーチの退職日椿律
満腹を知らぬは罰か春の蝶坪山紘士
蝶の昼話しかけても返事なくデイジーキャンディー
蝶が舞い池の水面がざわめきて手嶋錦流
舞う蝶や愛づる心を透過して哲庵
蝶の昼写真の父母よ若き声哲山(山田哲也)
山門を出て迷ひおり白き蝶てつねこ
蝶放つミス・ディオールよ我愛す手毬まりこ
伴走は蝶花束かごにペダル踏む輝由里
白蝶や戦メリの音と天高く天雅
紋黄蝶朝の光の奥より来でんでん琴女
小灰蝶口の堅さを君に問ふ苳
曾孫来てわちゃわちゃの日々庭に蝶峠南門
蝶の昼床屋のおやじの声遠くとき坊
ニュータウンに祠残りて蝶ふたつとなりの天然水
蝶々舞うブルードレスに鱗粉をとなりの天然石
不規則にジャズめきて飛ぶ夜の蝶戸根由紀
紋黄蝶道を横切る老女ありとはち李音
手籠にパン届ける子らに蝶お供冨川きよこ
赤ん坊の握りる光や蝶の朝富野香衣
強引にキスされ春の蝶悲し鳥田政宗
夕影やあまき葉裏に蝶の夢とんぼ
パンプスもバッグも黄色蝶ひらり内藤未来仁
月曜日紋黄蝶跳ね目が冴えるなか鹿の子
父の庭蝶が飛来し庭行脚中澤孝雄
蝶速し子の網かわし大空へ中嶋和久
知らぬ街スマホ片手に蝶がくる中島葉月
揚揚とトラクターの男蝶のとぶ中嶋京子
蝶の来て母かもしれぬ法事かな中島圭子
モハメッドアリの墓石を蝶舞へり中島走吟
誇らかや自力で飛んで蝶は皆中嶋敏子
てふてふのあと追いかける子猫かな中嶋緑庵
美しく狂い舞う君朱の蝶長洲雪華
小枝散り蝶の飛べない風の今日中村こゆき
出てこいよ蝶が飛んでる良い天気なかむら凧人
回覧を手に立ち話蝶よぎり中山由
瞬きは蝶のエフェクト我を射る永山玲子
波紋なき水面に映り込む蝶蝶凪ゆみこ
大切な水と空気や蝶生る那須のお漬物
てふてふの戦時最中も番いかな夏目坦
翼針や空も見えない窓を蝶夏雨ちや
国蝶と言われし君の癒し顔ななかまど
夕暮れの酔いどれ指で追う蝶蝶菜々乃あや
来客は爪ほどの蝶緑青色菜々の花畑
吉野家の半額祭り蝶来る浪速の蟹造
新築の次々建ちて紋白蝶名計宗幸
蝶は青い空ゆらゆらゆらと飛ぶ成瀬ぽんぽこ
蝶々やひらりひらりと手のひらに成瀬桃うさぎ
蝶が撒く粉が白粉ならいいのに南全星びぼ
躊躇なく花がら摘みの手に蝶来新美妙子
双蝶や絶えぬ美麗さ死してなお二階堂
裏庭を抜けし風追ふ白き蝶西尾至雲
瞬間に空間移る蝶の技西尾照常
ゆらゆらと子どもの頭上蝶が舞う西谷寿春
陸橋の高みに白き蝶休む西野美之
近づけばまたも距離とる紋白蝶二和田躬江
追いつかず刻の狭間に蝶遊ぶねがみともみ
蝶儚しただしダンスは大胆に猫柳鈴音
低空をさまよふ蝶の重き羽ノアノア
朝方の蝶清音で羽ばたきぬ野井みこ
サラヴォーンの流るる喫茶窓を蝶濃厚エッグタルト
小さな手ふうわり包む蝶の翅軒下の紅紫檀
オクターブ記号の譜面狂う蝶野口雅也
蝶や見て微笑み交わす吾と妻野中泰風
虫かごの動かぬ蝶のりんぷんが野の枯草
廃屋に羽音震わせ蝶会議のの倶楽部
蝶々は船頭となる舳先かなののさわ麗ら
父の煙と共に蝶のぼり逝く野原一草
蝶の軌道追いて8の字ふたり旅野原茉莉
「またきて」と蝶に手紙を書く子かな野間薫陶
蝶飛ぶや令和の廃村墓多し橋本有太津
散歩道蝶が誘うベビーカー馬笑
参道にひらと舞ふ蝶神使かな蓮見玲
草に寝て添い寝の蝶も呆れ果て長谷島弘安
低空飛行風をよけたる蝶の知恵葉月けゐ
蝶になりさなぎの頃を懐かしむ服部たんぽぽ
蝶逃がす指の鱗粉きらめいて初野文子
側に来た蝶はきっとあの仔だね花岡浩美
日の入りて生まれし蝶にしばし雨花岡淑子
蝶群るる星の平和を順守せよ花南天あん
重力に逆らふごとし蝶翔る英凡水
旅ぐせは遺伝の一つ蝶ふらり英ルナ
窓外の蝶目で追ってベッドの子花豆
朝の水吸わせて蝶を飼う狭庭はのん
登校日我と連れ立つ蝶二頭浜けい
我が名無き発表板に蝶の舞浜友輔
手をのばす吾子すりぬける蜆蝶早川令子
黄蝶舞ふひらひら揺れてハ長調林田リコ
蝶ゆらゆらと大欠伸でる昼下がり原善枝
朝日きらり蝶々驚いてひらり原島ちび助
蝶はのいて点字ラインの上だから原田民久
魚とる網出し孫は蝶をとる湯湯婆(ゆたんぽ)
ひらひらとあえかなる蝶苦手なり原野乃衣
小麦粉をつまむ指おぼゆる蝶の羽針子のネコ
寝不足の仮眠とりたる蝶の昼haru_sumomo
蝶二匹溶けゆき空の輝けりはれまふよう
子は飽きて親は形相蝶を追うパンドラみかん
出棺の時クラクション蝶翔ぶやHNKAGA
そとそよと蝶に誘われ一休み榛名ピグモン
眠るごと母旅立ちぬ蝶の昼ピアノおじさん
白き蝶頻りに舞うや妹逝く東山たかこ
てふてふや生食パンを待つ列に比企野朋詠
炊事場の干した砥石に蝶二頭火車キッチンカー
指先のこぼる鱗粉蝶恐しひすい風香
昼下がりまどろみのなか胡蝶舞うビッグなかい子
蝶々の飛び交ふ無人販売所陽
狂う蝶ガードレールに供花二本ヒマラヤで平謝り
四世代集うデッキや蝶の昼姫川ひすい
強風に抗ひゆくか一つ蝶平井千恵子
木々の間の日射しをつたひ蝶の来る平井由里子
空青し交尾しつつも舞う胡蝶平岡花泉
蝶になりエフ分の一揺らぎ舞う平野純平
そっと来て耳すれすれに白い蝶平林政子
烏森昼の屋台に迷い蝶平松一
彼方此方や蝶に誘われ男の児洋江
静もれる句碑てふてふのさつきまで広木登一
幸せを貪るやうに蝶飛べり広瀬康
水たまりに降りし蝶の二頭(にとう)かな廣田惣太郎
ルパン現る瞬きの間に蝶消えて弘友於泥
清水出でしベルナデッタの指に蝶広ブロ&新蕎麦摂田屋酵道
満開の花は蝶々に二つ三つ琵琶湖のおばさん
一頭と呼ばるる蝶の軽やかさ布杏多
ビル風の葉裏に羽根を閉じる蝶風泉
探し物見つかりますか春の蝶FUFU
双蝶や夫婦喧嘩を反省す深谷英丸
草の名を思い出せずに蝶の昼福ネコ
指先に鱗粉残しそよぐ蝶福弓
今朝もまたのたうち回り蝶元気福良ちどり
ストゼロとサプリとパスタ黒い蝶ふくろう悠々
蝶とまる眠い日用のワンピース藤岡美波
あてどなくゆかばふらふら蝶さわぐ藤川雅子
がん告知だれが何癌?蝶の夢藤倉密子
蝶あまた八十路となりし父の畑藤原涼
蔓橋我を置き行く対の蝶伏見レッサーレッサー
紋白蝶呼び鈴そっと押している藤本だいふく
蝶とまる運動ぐつの蝶結び藤原訓子
蝶二頭舞ふや五重の塔の上布施無門
蝶のとぶ建築計画50階風友
蝶の昼もう赤ん坊じゃなくなった子と冬島直
新たなるカメラに蝶の舞い託す古澤久良
発つ蝶余香のごと鱗粉残し古庄萬里
エンドウのつるの間迷う紋白蝶古谷芳明
蝶とまる天秤の針右に振れふわり子
蝶の道空に描きしゆらゆらとヘッドホン
運転席から助手席へ蝶の過ぐへな☆けん
墓石に蝶白檀の香と空へ鳳凰美蓮
山畑や蝶はひらひら道しるべ望月
羽化まじか試練乗り越え蝶となり北斗八星
オアシスの記憶の渦や紋黄蝶甫舟
孫二人風船飛ばす蝶の舞い細井博文
橋の上舟の行き来を蝶も行く細川小春
切花に蛹いたのか部屋に蝶牡丹ゆり
花びらか蝶か綿毛か幻か歩楽坂
君は蝶僕は蜘蛛でも食べれない堀籠美雪
指先に鱗粉きらり蝶空へ堀邦翔
碧空にぐんぐと昇る今日の蝶ほんぽこぽんこ
読みさしのギリシャ案内蝶止まる凡々
蝶遊ぶ糸をめぐらすものの影本間美知子
キミが好きのらりくらりの胡てふかな雅蔵
てふてふさんシーソーのさきでひとやすみ魔星蟲ダークネスライザーI世
初孫や歩き始めて蝶を追い松井酔呆
一瞬に主役を奪う蝶の舞松井貴代
冥府より迷い来たるか銀の蝶松岡玲子
選挙戦パイプ爆弾狂ふ蝶松尾祇敲
陽の光上に下にと蝶二頭松尾老圃
蝶の舞ふ街や碑文の謂れ読む松平武史
スイミーの絵本に余白眠る蝶まつたいら西
水面を泳ぐがごとく蝶は飛ぶ松高法彦
お喋りは大概にせえ狂う蝶抹茶子
花ごとに違ふ夢見て蝶の飛ぶまつとしきかわ
迷い込む蝶はいとこの墓石に松野蘭
蝶の舞黒黒してる犬の鼻松原隆雄
ウォーキング道はのらくら蝶まかせ松本俊彦
ファインダー舞う蝶はどこへやら松本牧子
図書館で捜し物せり春の蝶まどけい
薄羽の蝶とて遥か先へ飛ぶ眞猫
マジシャンの手から旅立ち舞う蝶やまほろば菊池
舞い上がれ蝶よ深き森の隅よりまやみこ恭
目覚めれば蝶鮮やかに像残し瑪麗
草野球ボール転がり蝶ひらり真理庵
突然の蝶に驚く比売神社まりい@木ノ芽
眠さうな赤子の手のひら蝶の昼みい
白き蝶ことしも来たりこの庭にみうらゆりこ
なにげなく庭に来る蝶三回忌三重野とりとり
舞ふ蝶や優雅ね粉が散りさうで三上栞
図鑑より翔び立ちさうな蝶日和神酒猫
棚田俯瞰す目の前を蝶二つ美乎梛
藁筵の小さきおでこに紋白蝶三崎扁舟
蝶放つ手を振る兄の白き指MR.KIKYO
白蝶や慰めるやう初七日忌水谷未佳
蝶なめらかに爪先から旋毛へ三隅涙
蝶飛ぶや視力脚力追ひつけず三田忠彦
うざいほど蝶はチョウチョで吾は一人巳智みちる
縁側の犬の鼻に蝶停まるミツダ
天空に吸い込まれゆく二羽の蝶ミツの会
あの頃の面影は無し今朝の蝶看做しみず
蝶来るひとまず休憩眺めけり湊かずゆき
戦場に花はないのか泣く蝶よ南風草々
蝶々や早世の禎子詩となるみなみはな
美容院向かう小道や蝶の昼源早苗
ゆびさきのあかくほころぶ蝶ひろげ味乃陽湖
初めての蝶指で追う赤子かなみのり甘子
抓む手の鱗粉怖し蝶の魂美村羽奏
土手歩き見知らぬ蝶にスマホ向け見屋桜花
若き蝶ぐんぐん吸いて飛びにけりみやこあけみ
あぜ道の猫飛び跳ねて食む蝶都忘れの音
キャンバスの大きさ決まる春の蝶宮武桜子
産卵の葉を吟味して蝶が舞う宮原みかん
花畑クローバ摘む手しじみ蝶美山つぐみ
激流の巌のしぶき蝶ひらと宮村土々
指と手でハートのかたち眠る蝶ミラベル
君のひざ花蜜ありかな蝶とまるミルクマン
ふわふわと蝶や糸操りの如みわ吉
見舞いまた見え隠れ蝶ベッドからムーンさだこ
プロレスラー蝶のハウスで後ずさる睦月くらげ
雨上がり蝶の伴走通学路村上の百合女
農園で一緒にラヂオ紋白蝶紫小寿々
今いずこ家の緑と蝶の群れ村先ときの介
蝶が舞う夫の病理検査の日村のあんず
蝶舞ふや一輪車乗る子のやうに村松登音
台所出口探して蝶二匹恵のママ
頭の中を白ひ蝶が横切りぬメレンゲたこ焼き
蝶の手招き公園に子らの声毛利尚人
会いに来ん蝶か風かあの雲か木曜日
影落とし蝶はゆらりと躱し飛ぶモコ
雨をライトバン禁地の蝶を二羽籠に元野おぺら
おしゃべりな鼻先止まる迷い蝶樅山楓
中年の額に止まる昼の蝶桃衣ゆらら
朝の陽に身をふるはせて蝶生まる桃香
何処行くか思う向くまま吾子と蝶もり葵
収穫の邪魔をしてをり眠る蝶モリコリゴリ
蘭園の南国の蝶群れて飛び森下薫
炎上かバズるかの世に蝶ひらひら森太郎
波の間に憩いし蝶の長き旅杜乃しずか
花沢の里訪へば蝶の昼焼津昌彦庵
ナオコの木祝福忘れぬ紋白蝶八重葉
人混みを縫うて青信号の蝶野州てんまり
気配は蝶羽の音足の音しなくとも安元進太郎
蝶が舞うハローワークの帰り道柳井るい
水たまりおめかししてる蝶一羽柳荷無花果
蝶遊ぶ花壇眺めて亡母思う山内泉
蛹から蝶へ田舎から街へ山尾政弘
緩和ケア病棟の母蝶来たる山川腎茶
そちこちと蜜吸う蝶の重たかろ山川たゆ
網かまへ蝶より他はミュートにす山口絢子
竿先に蝶もねぶりて夜釣り舟山口笑骨
晴れた朝鉢植えに蝶帰り来る山口香子
野良着褪せ蝶来る庭となりにけり山口たまみ
胡蝶来てシャッターチャンスよ宮参り山崎かよ
籠る部屋出ておいでよと蝶々かな山育ち
急坂を喘ぐ空打ち蝶戯け山田季聴
構えると飛び立つ蝶や二三頭やまだ童子
花畑追いつ追われつ吾子と蝶山田はつみ
蝶走る羽根ゆったりと海越えて山田文妙
弁当に蝶止まりけりヤニ一服大和杜
園庭の蝶必死に舞うカルメンやまな未
窓辺には黄蝶とまりて又飛べり山薔薇
双蝶や高く高く日に溶ける山辺酔羊
深呼吸の蝶のステンドガラスよ山本裕之
木下にて気ままに踊る蝶と吾子ヤン子
てふてふや休らふ先は赤子の手佑灯地蔵
蝶来ればみな揺れ動く庭の花宙美
一休み汗拭く横を紋黄蝶夢見月
柔らかな鎧操り蝶ひらり緩木あんず
蝶生まる一年越しの合格票ゆるランナー
砂浜へ続く抜け道黄蝶かな陽花天
飛ぶ蝶は羽忙しく風を追う陽子
当確を打ちよがる蝶掲示板ヨーダ鍵
窓ごしのてふ消える刹那の強風夜香
保津川や献花の台に蝶とまる横田信一
蝶に問うどの花の種撒けばよい吉岡幸一
蝶とんで蹲の水流れ落ちよしぎわへい
蝶々よこの花の名を知ってるかい好子
本名はステファニーよと春の蝶吉田郁
多宝塔案内するかの蝶消える吉武茂る
気のもつれほどきゆるりと蝶が舞うよしだばあば
だんだら蝶小学生の秘密基地吉田春代
華奢な蝶屋上越えの底力吉藤愛里子
蝶々を摘まみ喰らうやチリの猿Yoshimin空
風をよむ気球レースも蝶々も四葉の苦労婆
けふは雨きのふの蝶のありどころ余田酒梨
公園の二人の会話きく蝶よぶこどり
元気かと聞こヘたやうな背に蝶よみ、ちとせ
野にあれば幼子蝶を追うばかりららら句らら
天空の尾瀬に隠るる青き蝶らりっく
蝶呟くあの日あそこに出向かねばらん丸
生まれくる蝶々の翅の乾くまでリコピン
蝶舞うそっと放すは母の手か龍泉灯
忌明けの経庭先へ蝶二頭ルージュ
逆上がり空蹴っ飛ばし回る蝶麗詩
電柱の花の謂れの胡蝶かな烈稚詠
突と出で白く滲めり昼の蝶蓮花麻耶
おだちんの足うらふむぞ蝶くるぞ煉獄佐保子
人形師操るごとく蝶の舞う連雀
蝶さがし網振りかざし幼子や蓮風
彷徨って川を渡るや小灰蝶わかなけん
窓側はただ乗りの蝶うたた寝中若和志歩
蝶々の黄花に群るる昼下がり若林鄙げし
まっさらのス─ツの子達春の蝶わきのっぽ
昼の陽に閃く蝶の翅模様鷲尾真美
気の済むまで蝶よわが肩にて休め海神瑠珂
果樹園の自動散水蝶群れてわたなべすずしろ
震わせて止まるか否や蝶の足渡邉花
ぽつぽつきて蝶は葉隠れ雨宿り渡辺陽子
父の死後蝶が導く安河原和の光子
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
●俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。ありがちな名、似たような名での投句が増え、混乱が生じています。せめて、俳号に姓をつけて下さい。皆で気持ちよく、この広場にて共に学び楽しめますよう、俳号の付け方にご留意ください。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。
●俳句の正しい表記とは?
- 風香り 心が弾む 紋黄蝶の舞吉田直子
- 静寂の 春風吹くとき 珠玉蝶あーりー
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●兼題とは
- 色変化雨に慣れて鮮やかにのんのん
- 羽渡り止まり行くは極楽の国船出の時
- 夏祭り距離が縮まる君と僕りく
- 挨拶もできず退部の春の雨高嶺遠
- 春雨や花びら模様のアスファルト百瀬晶子
- 春雨や姉はミルフィーユを突き刺すユ綺
本俳句サイトでは兼題が出題されています。「春の雨」は前回の兼題でした。今回は、季語「蝶」での募集。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●季重なり
- シャボン玉消えて孫の手蝶を追う岸壁の龍崎爺
- 花弁と蝶が舞い散る春の宵漢方十七錠
- 春疾風見上げた空には蝶ひらり透夜珀玖
- 菜の花やちょうちょとまりて春うらら松尾美郷
- 蝶淡し黄砂のさなか化けていく妙
- 山道にちょうちょひらりと墓参り中嶋貢
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「蝶」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●季語の蝶ではない
- 蝶結び縦はだめよと孫娘が舞う岡眞弓
- 厨立つ父の前掛け蝶結び横山ひろこ
「蝶結び」は、確かに「蝶」の一字が入ってはおりますが、季語の「蝶」ではありませんね。
●標本の蝶
- 蝶展示蒼に惹かれつ目を背け上川郁子
- しんちゃんの蝶は花色シーラ箱杼けいこ
- コレクション輝き放つ世界の蝶星影りこ
標本となっている「蝶」に季節感があるのか。やはりちょっと厳しいのではないでしょうか。
●蝶が比喩に
- 風に乗る我焦らずとも蝶の如し蘇我牛子
- 蝶のごと白楽天の詩を臨す月丁もち美
- 朝には蝶のやうに動く筆平本文
- 休日にパソコンを打つ蝶のごと山吹縁
季語を比喩として使うと、季語としての鮮度が落ちます。
●季語深耕 「蝶」
兼題 蝶:三春 動物
【傍題】 黄蝶 紋白蝶 紋黄蝶 だんだら蝶 岐阜蝶 小灰(しじみ)蝶 蛺(たては)蝶 緋縅(ひおどし)蝶 胡蝶 蝶々 双蝶 春の蝶 眠る蝶 舞う蝶 狂う蝶
さまざまな傍題のある季語です。同じ「蝶」なのに、違う季節のものとなっているケースもあります。- あっ!アレ何っ!?ゆびのむこうに黒揚羽案子
- 雨雲の去らば帰れよ揚羽蝶可藤虚
- 秋の蝶湖面をすれすれ吹かれゆき河上輝久
- 葉をハムハム黄揚羽乱舞木はボウズ尚月
- あげはちょう二枚の羽根の声しずかはるる
- 枯草に黒羽ひかるアゲハ蝶なわむすび
「揚羽蝶」「黒揚羽」は、夏の季語。同じ蝶だからと油断せず、実際に歳時記を確認する習慣をつけましょう。
- はばたいて初蝶空の深さ知る間岳夫
- 初蝶やまぎれ舞うなり軒の下明かり**
- 初蝶に飛べぬ高さのありにけりあじさい卓
- 初蝶は地より湧きたる自由なり蝦夷野ごうがしゃ
- 初蝶や羽ばたきを知り跳びかえり亀井汀風
- まばたきに合わすよに飛ぶ初蝶が希望来
- 初蝶や休み時間に草むしり銀将
- 初蝶の白し風くる光くる鯨尺
- 初蝶のあはき光をはなちけり愚老
- 初蝶の妖しき雲に姿消し榮秋代
- 初蝶や口髭うすき研修医坂口いちお
- 初蝶や夢道の句碑に纏わりてさやじゅん
- 初蝶や仏前を舞い窓へ去り芝G
- 初蝶や蒟醤茶箱に止まりをりしぶ亭
- 初蝶来石屋は石のこゑを聞く庄司芳彦
- 初蝶の出迎え嬉し参観日信州のあっくん
- 朝の来るふしぎ初蝶来る不思議髙田祥聖
- 初蝶来みたしききたしあるきたし徹光宗光
- 初蝶の鳥居くぐるや重軽石徹光よし季
- 寄り添いて外見る猫や初蝶来てんとかめ
- 初蝶の羽ばたき何を引き起こすとよ
- 初蝶や故郷(さと)の便りは小包で則本久江
- 書斎より口笛かすか初蝶来葉るみ
- 初蝶の燐粉光に撒き撒きてひな扶美子
- 初蝶や靴紐結ぶやうになりフージー
- 初蝶や妻はエプロン外したり藤川 裕明
- 初蝶やいいねボタンを押す軽さ星鴉乃雪
- 初蝶来うとまれし過去脱ぎ捨てて堀隼人
- 初蝶やあおぞらヨガの開講日みちむらまりな
- 初蝶や向かい風強し宙に浮く皆川徳翁
- ベンチにて開く詩集や初蝶来森中ことり
- 初蝶の黄は曇天に穴をあけ遊羽女
- 初蝶や酔拳のごとしなやかに柚木 啓
- 初蝶は星の最期のあかるさで八日きりん
頁数の少ない歳時記や季寄せの中には、「蝶」の傍題として、「初蝶」を載せているものもあります。また、歳時記編者の考え方として、「蝶」の傍題としている場合もありますが、「雪」と「初雪」、「時雨」と「初時雨」の違いは大切にされるべきだと、私は考えています。逆の言い方をすれば、「初」の一字を冠する季語の、こまやかなニュアンスを味わってこその季語だと思うからです。
お待たせしました! 4月の兼題「蝶」の結果発表でございます。今回もたくさんのご応募ありがとうございました。物事のとらえ方や風景の見え方がいつもより新鮮に感じる。そんな気持ちにさせてくれる句をたくさん見つけました。夏井先生からのアドバイスも必見です。6月の兼題「ビール」もふるってご応募ください。(編集部より)