夏井先生のプロフィール
夏井いつき◎1957年(昭和32年)生まれ。
中学校国語教諭を経て、俳人へ転身。俳句集団「いつき組」組長。
2015年初代「俳都松山大使」に就任。『夏井いつきの超カンタン!俳句塾』(世界文化社)等著書多数。
5月の審査結果発表
兼題「栗の花」
「天」「地」「人」「佳作」それぞれの入選作品を発表します。
滅びたる民の記厚し栗の花
くま鶉
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夏井いつき先生より
栗は、縄文時代から食料や建築資材として使われてきました。例えば、青森の三内丸山遺跡では、栗の木を植林・栽培し、祭祀のための建物にも栗の木が使われていたことが判明しています。
今回調べてみて知ったのですが、縄文時代に人々が築いた安定的な暮らしは、気温二度の気候変動によって衰退したのだそうです。そんな「滅びたる民の記」とは考古学者の手によるものでしょうか。
眼前の「栗の花」は五千年以上も前から、クリーム色の花を付けてきました。独特の香を放つ「栗の花」は、民人にとって、命を繋ぐ臭いであったのかもしれません。中七「厚し」の一語は、「滅びたる民の記」の嵩であり、「栗の花」の持つ悠久の歴史でもあります。
ほのくらき馬の口内栗の花
早田駒斗
「口内」の一語の印象から、獣医などが覗き診る場面を想像しました。開いた「馬」の口は、奥へ向かってほの暗く続き、腥い獣臭もするのでしょう。「栗の花」の臭いと馬の臭いが混ざる一瞬です。
栗の花饐えたる月のごと匂ふ
広木登一
「栗の花」の独特な青臭さを「饐えたる月のごと」と比喩しました。直喩は、作者の実感を手渡す技法。青白い月は、己に倦んで饐えていくのでしょうか。月を饐えさせているのが「栗の花」なのかもしれません。
いやに人たかれる栗の花の家
飯村祐知子
「いやに~たかれる」という措辞にある負の感情と「栗の花」の存在が相俟って、不穏な気持になります。「栗の花の家」に一体なにが起こっているのか。「栗の花」の臭いが芬々と強くなってきます。
沐浴の僧へまつはる栗の花
仁和田永
この「沐浴」は、身体的汚れや宗教的穢れを祓う儀式。その最中の「僧」へ「栗の花」が落ちて「まつはる」光景に、ささやかな衝撃を受けました。「栗の花」は、寓意を含んでいるかのようにむんむんと匂い立ちます。
栗咲いて妻の授乳をよう見れん
烈稚詠
妊娠・出産を終えた妻は、自然に母となっていきますが、夫の側は慣れるのに少々時間が必要。「よう見れん」という率直な呟きや、「栗咲いて」と取って付けたような季語の配置が、妙なリアリティを醸し出します。
栗の花雲を酢漬けにしたにほひ川越羽流
雨雲は無性生殖栗の花ギル
花栗や河童のお産はじまりぬ津々うらら
栗咲くや雨呼ぶような膿むような夏草はむ
捕獲器にかからぬ野犬栗の花にゃん
本尊を問ふ花栗の中と答ふ沼野大統領
花栗の龍の臓器の匂ひかな常幸龍BCAD
バンパーの獣の傷や栗の花翡翠工房
栗の花月の澱みの決壊す十月小萩
栗の花消毒槽のぬめりおりたばたなおみ
栗の花長女の式の夜の煙草つきのひと
栗の花踏みつつ雨の隙間ゆく相沢薫
栗の花カップ一杯分の憂さ愛燦燦
栗の花丹田にある不発弾藍野絣
生温き風へ触手や栗の花あいむ李景
校庭の水なきプール栗の花青井季節
栗咲くやまた母につく小さき嘘青居舞
妊婦たる姉の戻りぬ栗の花青に桃々@いつき組俳句迷子の会
栗の花丹波亀岡穴太積み蒼鳩薫
一族の旗ここかしこ栗の花青花潜
木陰より豚の鳴きよる栗の花赤尾てるぐ
花栗や胚盤胞に成る過程赤尾双葉
栗の花義母の畑を受け継がん茜咲
栗の花にほふ音読の格子窓茜むらさき
栗の花隠したきことこぼれ落つ赤富士マニア
栗咲く香仮設トイレの中にまで赤松諦現
雨だけが弔問客か栗の花赤馬福助
屋敷神さら地ににほふ栗の花acari
栗の花まだ育休は八週間赤尾実果
母なほも手出し口出し栗の花秋白ネリネ
山姥の伝説の寺栗の花昭谷
どこまでも紫煙栗咲く夜を滑る空地ヶ有
三坪の駄菓子屋覆う栗の花アクエリアスの水
奇書矢鱈ルビ多かりし栗の花あさいふみよ
火山湖に漕ぎ出す小舟栗の花朝霧さら
せんせいのおなかにふたご栗の花朝月沙都子
栗の花もう制服の要らぬ道を明後日めぐみ
始末書は墨で書くもの栗の花あさのとびら
家売って畑も売って栗の花麻場育子
体調を案じてくれよ栗の花亜紗舞那
花栗の雌蕊や二才児の嘘芦幸
栗の花送球ミスの二軍落ち葦屋蛙城
栗の花丹波は雨に暮れにけり阿曽遊有
栗咲くや微睡む猫の髭揺らす愛宕平九郎
縄文のビーナス匂ふ栗の花あたしは斜楽
ままごとに寝たきりの役栗の花足立智美
栗の花遠くに君が代の流るあたなごっち
花栗や偏屈オヤジの製麺所at花結い
狭くなる妻の歩幅や栗の花天晴鈍ぞ孤
背の湿布に今日も皺あり栗の花朝霧七海
老魔女の指やわさわさ栗の花渥美謝蕗牛
栗の花降る男子が掃除やりませんあなうさぎ
栗の花うねる八十号カンバスあねもねワンオ
ぽこぽこと息する酵母栗の花阿部八富利
栗の花夫には見えぬ耳ぼくろ天風月日
脱水症の牛に点滴栗の花あまぐり
栗の花サイクリストの太き腿雨戸ゆらら
移住者の村の結界栗の花あまぶー
花栗や不法投棄のチェーンソー雨乙女
栗の花咲き乱れ不機嫌な君雨李
底光る夜の鏡よ栗の花綾竹あんどれ
雨意や花栗の匂ひは変拍子綾波まこと
少年に晩成の相栗の花荒一葉
いつまでも掛からぬ電話栗の花新多
逝く人の煙小雨の栗の花蛙里
この栗の花に気づきぬ墓終ひありいかな
虚無僧の行列堅し栗の花在在空空
致死量の笛の音栗の花満開アロイジオ
質屋より出づる女や栗の花アンサトウ
縄文のまろき土偶よ栗の花安春
農小屋の低く灯りぬ栗の花杏っ子
臥竜めく花栗の香の吹き溜まりいかちゃん
黒鹿毛のたてがみは糸雨栗の花池之端モルト
花栗や戸籍まばゆきバツひとつイサク
仮殿の裏の本殿栗の花いさな歌鈴
その葉書詐欺かもしれぬ栗の花石岡女依
曲者は酸味が強い栗の花石川明
栗の花縛った古紙のしんなりと石川巴里
見覚えの道を迷ひて栗の花石塚彩楓
栗の花荒ぶ太古の森匂ふ石村香代子
栗の花鈴なり眩し神宿り伊泉不洋
栗の花自転車で来る人攫ひ磯野昭仁
花栗踏みてこの恋も行き止まり板柿せっか
キャラメルの歯につく甘さ栗の花いたまきし
わらわらと雨ぷんぷんと栗の花伊丹春水
嫌ですと言えばよかった栗の花市川卯月
声あげぬシュプレヒコール栗の花無花果邪無
製糸所跡その塀曲がると栗の花一秋子
栗の花君の産まれし日の匂ひ一歩千金
また来いの栗咲く恵那の祖母の声伊藤薫
手術まついづこに咲くか栗の花伊藤節子
栗の花高く生家は縮みけり伊藤亜美子
栗の花百円札のおじいさん伊藤正規
花栗や坊守おらぬ寺の門伊藤柚良
花栗や神がたくさんいる社糸川ラッコ
花栗の抱え込みたる地の湿り井中ひよこ号
雨音の玻璃戸にはげし栗の花伊奈川富真乃
栗の花ここから一人下校路稲葉こいち
栗咲くや二派に分かるる村議会稲畑とりこ
栗の花落ちて飯場のなほ暗し居並小
崩される家の間取りや栗の花井上れんげ
花栗の濡つや己が香にまみれ井納蒼求
栗の花文具屋さんのあったとこ井原昇
一万年前の祭祀や栗の花井松慈悦
役場から夕焼け小焼け栗の花妹のりこ
神々の居宅は雲居栗の花伊予吟会宵嵐
栗の花水のにおいにふさがれていわさちかこ
栗の花やさしい馬の名はきみ子磐田小
栗咲くや介助車両を待つ十時植木彩由
保険屋の来ていた気配くりの花上野眞理
上司は嫌みだし花栗は匂うしうからうから
花栗の香やくらくらと弓を引く宇佐美好子
栗の花ゆううつ歌のテストの日うた歌妙
栗の花園に馴染めぬ子と歩く宇田の月兎
花栗むんむん渋滞の裏道内田こと
星々の遊び場となる栗の花空木眠兎
栗の花歴史ガイドは饒舌にうつぎゆこ
下着干す漠たる闇の栗の花靫草子
叛く子のそのまゝ愛し栗の花海野青
吊り橋の果ては異界か栗の花うみのすな
写経して呼吸整ふ栗の花梅尾幸雪
臨月の腹の青筋栗の花梅里和代
栗の山だったか栗の花溢れ梅鶏
逃亡の犬絡みたる栗の花梅野めい
反射炉の熱吹き込みて栗の花梅原もずく
栗の花ボレロ残響うわわわんうめやえのきだけ
後逸のレフトたらたら栗の花浦野紗知
栗の花空きマンションに鳩は住み麗し
次女は少し変わってるよ栗の花吽田のう
じっちゃんの墓石の上の栗の花江崎味噌拉麺
りうりうと兜太は生きぬ栗の花蝦夷野ごうがしゃ
花栗の香の粘り気に包まれり蝦夷やなぎ
栗の花しをしを猫の通り過ぐ絵十
栗咲いて膝のボルトのきしむ夜朶美子
みどりごはふたごのをのこくりのはなM・李子
栗の花湯に四肢伸びてゆくよ山絵夢衷子
栗の花けふは一日父思ふえりべり
栗の花縄文人は戦せずえんかず
村消えて合祀の社栗の花近江菫花
花栗や紙のストロー舌に付くおおい芙美子
ひとの恋聞きたくもなし栗の花大岩摩利
栗の花血液型はBだろう大越マーガレット
山姥を養分として栗の花大小田忍
栗の花己が匂ひに垂れにけり大谷如水
家族旅行生理二日目栗の花太田鵯
喪服まで捨て身軽なり栗の花大塚恵美子
幻聴のなかを寝落ちし栗の花大津美
口喧嘩口乾くまで栗の花大本千恵子
砂利道に潜む泥水栗の花大谷一鶴
終括の喪服一式栗の花大山小袖
栗の花噴くや結論出ぬ会議大山和水
栗の花つぎつぎ介護施設建つ大和田美信
栗の花鉛丹色に終ひたるおかげでさんぽ
全山が墓地なり栗の花匂ふ可笑式
千載を朽つる城壁栗の花緒方朋子
暗がりの抱擁のごと栗の花岡田雅喜
栗の花こんもり昼からの微熱岡山小鞠
軽トラへ助産婦急かし栗の花小川さゆみ
吸うほどにあふれる母乳栗の花小川しめじ
花栗や前立腺はすでに無く小川天鵲
土捏ぬる毛深きかひな栗の花小川野棕櫚
白濁の眠りに混じる栗の花荻原湧
栗の花小布施の龍の動きたる奥田早苗
栗の花恩師の住まいはまだ遠し奥寺窈子
栗咲けり胸鎖乳突筋緩む小倉あんこ
しずかな過疎村うるさい栗の花おこそとの
あの胡乱この胡乱とて栗の花尾座鬼
栗の花無職生活四年目に小島やよひ
オレンヂにブリキ朽ちるや栗の花音超子
母方は女腹らし栗の花おんちゃん。
そうだここ田中ん家じゃん栗の花かえるゑる
金鳥と崑ちゃん並ぶ栗の花火炎幸彦
階段の先の家墓栗の花風早杏
地に落ちて花栗ぐねと蠢ける霞山旅
栗の花生きていないと死ねませんかしくらゆう
その蔭にへびの道あり栗の花樫の木
花栗やみんなどこかで少数派華胥醒子
夜陰よりもたりと垂るる栗の花片山蒼心
栗の花こっくりさんが帰らない金井登子
花栗や故郷に還る友の骨金子泰山
バス降りて栗の花の町と思ふかねつき走流
糠雨に溶けだしてゐる栗の花釜眞手打ち蕎麦
灰汁抜きの廚の一夜栗咲く香紙谷杳子
どの樹にも爪痕あらむ栗の花亀田荒太
栗の花くろき山々あかるうす亀田かつおぶし
栗の花避けて山路を外れたりかりかり久助
花栗は自らおちてしづ子句集かりそめのビギン
生検の臓は生意気栗の花狩谷わぐう
栗咲く香このからつぽの胎重し川内佳代
花栗に気怠き恍惚がにほふ川村ひろの
羽音の四種類ほど栗の花閑々鶏
栗の花皇女降嫁の細き道邯鄲
これはこれはとばかりに赤城の栗の花樺久美
須佐之男の猛き黥栗咲くや閑酉
雨音は無骨なりけり栗の花喜祝音
栗の花安き貸間の入れ替りキートスばんじょうし
花栗や団地の火報また鳴らむ北村崇雄
マンドリルの陰嚢あをし栗の花きなこもち
栗の花夜の黒さに狼狽える城内幸江
体毛はすべて外向き栗の花木野桂樹
底なしにやさぐれ栗の花ふわり木ぼこやしき
アパートの軋む階段栗咲けり木村隆夫
止まぬ雨道に錆びつく栗の花木村となえーる
立ち入り禁止廃坑口の栗の花きゅうもん@木の芽
花栗の下をわたしの時速かな銀紙
栗の花よりひどい陰口を知らぬぐ
隊長は寺の息子や栗の花くずもち鹿之助
栗の花開いて紙の本を読む工藤雨読
栗の花臣下の墓の湿る土久保田凡
抱き起こす粗石の墓や栗の花熊谷温古
関節痛今年も栗の花のころ球磨太郎
生きるとは腥きこと栗の花熊の谷のまさる@俳句迷子の会
栗の花天狗の鼻を曲げにけり倉岡富士子
花栗の夜の水疱をやぶりたき倉木はじめ
花栗むんむん五人目の出産栗田すずさん
屠られし馬のにほひや栗の花愚老
花栗や手負ひの鳥に死相無し恵勇
栗の花町議のなりて無いってさけーい〇
髪塚は暮れて花栗にほひけりげばげば
栗咲いて旅の磁石が狂い出す健央介
栗咲くや夜空の傷のやうな月剣橋こじ
栗の花ばうばう長兄は帰らず小池令香
深海を沈みゆく夢栗の花郡山の白圭
花栗の香や埴輪みな口呼吸古賀
花栗堕つ自死の理由を知りたくて古烏さや
町営の広き湯船や栗の花小嶋芦舟
落人を祀る塚あり栗の花小だいふく
修羅の棲む家の庭先栗の花虎堂吟雅
古民家の主は山伏栗の花後藤周平
栗の花母の骨壷父に寄せ後藤三梅
花栗の沸き立つ墓石展示場彩汀
人の居ぬ工場となりぬ栗の花坂口いちお
栗の花けふは牛舎のよく匂ふ桜鯛みわ
曇天を山羊の親子や栗の花さくら悠日
栗咲くや永代供養の骨を干す桜よし榮
花栗の香限界集落に飽和雑魚寝
栗咲いて缶コーヒーが甘すぎるさとうナッツ
手を洗いうがい花栗のすこやか佐藤儒艮
花栗のたわわ再婚やめておく佐藤レアレア
忘れぬやう夢書き留める栗の花里すみか
優しさは腐るものなり栗の花錆田水遊
ツチノコを見つけた噂栗の花沢拓庵@いつき組カーリング部
沖つ風きて花栗のしぶきけり山海和紀
交番へ闇より匂う栗の花三角山子
花栗や河童の淵に淀むみづ三月兎
栗咲いてどこか話の食い違う三尺玉子
夜半の瀬の靄よ花栗醸し出づ潮風の台所
ふさふさと不安のしつぽ栗の花渋谷晶
栗の花臭い出す頃ギブス取る島じい子
身籠りし唇の熱栗の花しまのなまえ
龍の死に似て花栗のよく匂う嶋村らぴ
避難所はいつもの分校栗の花じゃすみん
鬼の髪青く匂ふや栗の花シュリ
栗の花くおんと鳴った耳の奥正念亭若知古
遠ざけたままの兄あり栗の花白玉みぞれ
花栗や雄々しき文字の否決票白プロキオン
栗の花実家解体見積もり来水蜜桃
栗花臭みぎ曲がるなり爆発すただ地蔵
盲腸の縫合痕や栗の花田畑整
青くさくだらしなく栗の花散る玉木たまね
骨壷の白き深さや栗の花丹波らる
裏口は線路へ花栗の夜更け千夏乃ありあり
軽トラの荷台の錆へ栗の花千代之人
他所者といふ距離にいて栗の花辻野花
隠沼の端が好きなる栗の花対馬清波
栗の花わたしは夜も眠らないつちのこ
栗の花まつすぐ生きてややこしい露草うづら
縄文のをんな多産や栗の花寺尾当卯
栗の花昔は土葬だったのよ天雅
栗の花くはへ子猿の甘えおり時まる
再婚はせんの嫂(ねえ)さん栗の花戸部紅屑
校訓の金文字太し栗の花富山の露玉
栗の花そよぐ禁野のささめきに中岡秀次
少年に継母の眩し栗の花中里凜
栗の花ここが阿部貞生家跡中鉢矢的
花栗に撫でられてゐる軍馬の碑夏埜さゆり女
呪ひは孔雀のスウプ栗の花西田月旦
重力の蒸れゆく匂い栗の花ねぎみそ
百円はさすがに拾う栗の花猫ふぐ
思春期てふ淡き疼痛栗の花はぐれ杤餅
亮くんは俊くんが好き栗の花花咲明日香
耳鳴りや鼻へ重たき栗の花はなぶさあきら
徘徊の老女捜索栗の花花見鳥
あの小屋は妾宅でした栗の花ぱぷりかまめ
強風を告ぐる有線栗の花巴里乃嬬
通学路ヤクザん家には栗が咲く半ズボンおじいさん
栗の花匂ふ閉経と思ふ万里の森
花栗や火星の獏の屁の匂い弘友於泥
栗の花今週ましな副作用ひろ夢
栗咲くやぬた場の水の葡萄茶色ふくじん
褌も顔も栗咲く川に洗ふ藤白真語
猫屋敷ひたひた栗の咲く音す古瀬まさあき
栗巨木その花どきを慄きぬ星田羽沖
手術後の腸あかるくて栗の花星野はいかい
栗咲いて獣の骨の朽ちる家真冬峰
栗の花まだ死が奇麗だった頃光峯霏々
腹帯のきずは蒸れおり栗の花みやま千樹
煙るごと栗の花咲く愛猫忌みわ吉
住み込みの初日むんむんと花栗百瀬一兎
花栗やビルマの象を待つ獣舎山野麓
花栗の香やばあちやんが母でした山本先生
二人目もどうやら逆子栗の花柚木みゆき
栗ばうと咲いて白猫病んでゐるRUSTY=HISOKA
老年の鬱しくしくと栗の花ルージュ
栗の花背に羽根の跡なかりしかEarlyBird
「おまたせ」と常よりやさし栗咲く辻間岳夫
つながれた管越しに見える栗の花あいのびふう
五六七後の幸何処にや栗の花逢來応來
栗咲いたじぶんのなまえぼくかけた青井えのこ
栗の花片手振る君立ちこぎで葵かほる
栗の花すれ違いざま振る巻き尾蒼空蒼子
チャリティーの声近づき来栗の花青空まる
古里の匂い含んで栗の花大竹八重子
栗の花鄙にもうすぐ星の降る青田奈央
白昼の花火か栗の花ならび青砥転典
墓地ひとり線香代わりの栗の花あかめちゃん
花魁は今も川底栗の花愛柑
フランケンシュタインの五指栗の花明惟久里
面接五社め栗の花踏むヒール敬子
とっくりと磨く陶器や栗の花秋野しら露
栗の花ベンチの午睡あと五分あくび指南
鈿女舞い猿田彦惑う栗の花atoman66
デモの列雨に打たれる栗の花天川滴翠
栗の花異国の葉書に父の癖字あまどかに
地下鉄へ階段長し栗の花あやせゆうま
栗の花笑い上戸の草取女肖草
栗の花や絶滅危惧種ヒト科ヒトいくみっ句
縄文の軌跡を土産栗の花池田華族
花栗や憂悶にほふ男子校池田桐人
祖父危篤栗の花咲く仙郷いしいるぴなす
延命はやめてねの文字栗の花泉晶子
花栗の角でもたつく二枚舌泉水あやめ
栗の花奥歯をしけたポップコーン石上あまね
君そつと撓わを残し栗の花いその松茸
やわやわと風をつかみて栗の花五つ星
栗の花誰かいるのか振り返る伊藤テト
充電のメーターはフル栗の花伊藤なおじい
纏わない心は強く栗の花伊藤れいこ
栗の花新車の施錠外しけり稲垣良一
浮く如く一機動かず栗の花今井淑子
つむじ曲げふて寝してをり栗の花伊予素数
白いシンフォニーにぎはふ栗の花いわきりかつじ
栗の花聴かせた歌は数しれずイワンモ
山里に光あつめて栗の花植田かず子
栗の花白髪は染めぬこと決めて上原淳子
栗咲くや遮光器土偶ぢっと待つ卯波まり
終電を乗り過ごしたり栗の花海口竿富
まばたきの睫毛の影よ栗の花梅朶こいぬ
眉庇の触れ合ふ隘路栗の花詠頃
栗花や風の務めを果たす風越冬こあら@QLD句会
躓きの羞恥儚し栗の花海老海老
栗咲や寡婦二年目の友たづね笑姫天臼
絶交と言はれてしまふ栗の花遠藤一治
栗の花ツアー初日の歌手は古希大岡秋
炒飯はしつとりがよし栗の花大黒とむとむ
花栗や姉は悪性リンパ腫に岡井風紋
青春は尖ってばかり栗の花おかえさき
栗の花こだまのごとく香の広ぐ岡田瑛琳
いつの日か舌から咲けば栗の花岡本朧
夫と顔合わさぬ間取り栗の花小川野雪兎
花栗やチワワ抱えて小走りに小川都
吾もまた遺されし人栗の花おきいふ
栗の花父のにほひの残る部屋オキザリス
守れない約束ばかり栗の花沖らくだ@QLD句会
似合わなくなりしピアスや栗の花小沢史
笠間焼き荒練り小屋の栗の花小田毬藻
栗の花貸農園の畝短かおだむべ
南無妙法蓮華経くりのはなおでめ
金髪は禁止らしいよ栗の花音のあ子
澱みなく続く悪口栗の花音羽凜
栗の花謎々多き神の業沢瀉みやこ
三巡め旗持ち当番栗の花かいぐりかいぐり
野良弁は茶色一色栗の花海瀬安紀子
妖怪の起源だつたか栗の花快晴ノセカイ
栗の花サドルのやうな犬の貌灰頭徨鴉
フランス語らしき沈黙栗の花海峯企鵝
死亡欄に担任の名栗の花加賀くちこ
ちちははの答へ合はせを栗の花化骨
白骨のさらされてをり栗の花笠谷タカコ
栗の花等しく老いるニュータウン加座みつほ
栗の花しづかな寝息ははの部屋かじまとしこ
栗の花みなことごとく屹立す柏原淑子
病伏す夫の髭剃り栗の花花純
花栗や土曜の昼の五百円片岡六子
栗の花逆上がりして鼻血出る片岡龍一
段畑へ堆肥の荷上げ栗の花加田紗智
栗の花最終決定権は母かつたろー。
栗の花溜めて醸していま爆ぜて桂葉子
介護する人のゐなくて栗の花花伝
栗の花三十路男の気楽げに可藤虚
村人かいや人狼か栗の花かなえの
栗の花指定難病更新書仮名鶫
栗の花にほふ歯医者の三番手神長誉夫
伏兵のやうに現われ栗の花神谷たくみ
穿り取る山靴の石栗の花亀山酔田
栗の花半分は嘘という嘘花紋
花栗の匂うナンパはばかみたい加良太知
霜髪を黒く染めたわ栗の花川野カッパ
暫くは暇の小屋や栗の花川辺世界遺産の居候
君捨てに行く栗の花香る道河村静葩
花栗や幼なじみの声変わり季々諧々
栗の花昭和ガラスの勝手口岸来夢
栗の花不妊治療はもうやめじゃ季切少楽@いつき組広ブロ俳句部
AIも愛も要らない栗の花北大路京介
花栗や欠けたオルゴールの一音北川颯
きんせいは宵の約束栗のはな北藤詩旦
妻に謝れなくなって栗の花貴田雄介
二枚目の不在票入れ栗の花ギックリ輪投げ
栗の花満開黒猫左見右見狐雨こじろう
力士らの「一日一番」栗の花木寺仙游
栗の花白しレンタル彼女待つ着流きるお
栗の花離婚した娘は四十三きべし
顔だけじゃ食っていけない栗の花Q&A
鉄棒の錆びの匂ひや栗の花Qさん
三日目の白粥飽きて栗の花紀友梨
(禅の寺)栗の花庭は△〇口京野秋水
別にてふ口癖栗の花匂ふ清瀬朱磨
合宿所のおおをとこたち栗の花菫久
栗の花重し駄菓子屋の割れた窓クウシンサイ
栗の花子らは裸足になりたがる久我恒子
栗の花ストレッチャーへ泥のまま鯨尺
階の古きに風や栗の花楠田草堂
栗の花揺れるピアスの失せにけり蜘蛛野澄香
釜に燻す竹の雫や栗の花紅さやか
波消しの籠る闇がり栗の花くんちんさま
栗の花不審者ありの立看板桂子
やさぐれて花栗つかむ手の迂闊謙久
真夜中の内職ミシン栗の花紫雲英
隠れ里神交合の栗の花ケンG
身に覚えなき噂立つ栗の花恋瀬川三緒
色無くば墓参に手折り栗の花郷りん
細胞はきちんと死すや栗の花剛海
おろしたてグンゼの吐息栗の花公木正
月仰ぎ匂い辿れば栗の花恒産恒心
小走りの仮想被疑者や栗の花幸田梓弓
栗の花ジャズ倶楽部から漏れる息幸内悦夫
冗談と本音のすき間栗の花小園夢子
変声期混じる登校栗の花木染湧水
鷲鼻のをんな不きげん栗の花こてぬぐい
夜の闇にマーキングする栗の花来冬邦子
くりの花こわれちゃったのぼくのかさ古都鈴
栗の花攫つてほしいひとのあるこのねこのこ
試射場に弦音響けり栗の花このみ杏仁
栗の花母が裏戸を開けたかな小林共捺哉読
栗の花不妊治療の注射痕小藤たみよ
ボタ山に昇る太陽栗の花小山秀行
巡礼に父なし子なし栗の花GONZA
コンビニのロゴにたましひ栗の花コンフィ
玉梓の怨み恐ろし栗の花サイコロピエロ
栗の花観光コースなかりけり埼玉の巫女
龍神の気配に騒ぐ栗の花齋藤桃杏
そうはいはれても栗の花ふわふわさおきち
髭を剃るチャルメラおじさん栗の花さ乙女龍チヨ
栗の花喝采のごと匂ひ立つ酒井春棋
縄文の永き平和や栗の花坂上一秀
曇り空栗の花などしたたらせさかえ八八六
栗の花無音の刻が降り積もる榊昭広
栗の花ボレロの太鼓鳴り止まず坂田雪華
首脳らの献花粛々栗の花坂まきか
ドライヤーの熱籠もる髪栗の花さくさく作物
首筋に残る爪痕栗の花櫻井こむぎ
栗の花またぞろ繰り言の電話鳴る櫻井弘子
密閉のホテルの独り栗の花迫久鯨
友の手にヘーゲルの本栗の花笹イボ太郎女
栗の花ひみつの漏れてゆくにほひさざなみ葉
栗の花匂ふ水面へ指輪捨つ砂舟
栗の花耳を離れし君のこゑさち今宵
亡き母のそばにいるらし栗の花さっち
栗の花夜具別々に二十年佐藤明美
出棺の匂ふ柩や栗の花佐藤恒治
兄嫁の愚痴を聞いたか栗の花佐藤しのぶ
ジェンダーレストイレの疵や栗の花佐藤志祐
三班は坐禅体験栗の花里山子
犯人は徒歩で逃走栗の花さふぁい庵
少年のその後如何にや栗の花さぶり
父の目のすうんと澄みて栗の花さむしん
メデューサの髪は哀しと栗の花紗羅ささら
栗の花兄に大人の指生えたさるぼぼ@チーム天地夢遥
辞めたい辞めたい会社辞めたい栗の花澤田紫
花栗や天蓋下のぬるき風三休
栗の花骨の髄までくりのはな塩沢桂子
艶話ひろう補聴器栗の花塩の司厨長
しおしおと煙るしずけさ栗の花じきばのミヨシ
栗の花僕はしつこいよと主治医四季春茶子
腕相撲左で勝つて栗の花実本礼
親不知抜いて栗の花満開篠雪
校庭の蒸れる匂いや栗の花芝G
鼻奥のつんと音する栗の花しぶ亭
焦ってる唇と手と栗の花字坊人造
絎縫いの針先たゆたう栗の花島崎うらら
街に棲む人の木なんよ栗の花島田あんず
くつつきし週刊大衆栗の花嶋田奈緒
栗の花ことばに棘の反抗期清水祥月
匂ひ来る大穂波小波栗の花清水容子
鼻の下はしょはしょしてる栗の花清水縞午
ゼリーめく夜ほど孤独や栗の花清水三雲
縄文の光降る日の栗の花志村狂愚
辞書に無い言葉閃く栗の花下丼月光
酒臭きじっちゃまの髭栗の花芍薬@独逸
駒札の読めぬ年号栗の花沙那夏
栗の花落ちさうホルンの迷宮砂楽梨
長男てふ重き鎖や栗の花洒落神戸
栗の花雲に連なる山並みに秋星子
花栗や地元を少し好きになり秋雪
雨後の花栗赤錆の村営バス樹海ソース
焼跡にざら紙色の栗の花種種番外
駆け抜けしあれは天狗か栗の花じゅんこ
栗の花三人娘は三婆に順之介@QLD句会
先輩の二の腕白き栗の花庄司しづく
栗の花山を見ずして山住まひ庄司芳彦
栗の花今のたのしみ先のたのしみ昭和かぐや
呱呱までの旅の永さや栗の花白よだか
春琴の里子のゆくへ栗咲きぬジン・ケンジ
後悔の軽い方へと栗の花新城典午
栗の花は多々ジャングルジム無人新米いろは
万年の土器の縄目や栗の花深幽
反戦歌独り歌いぬ栗の花酔軒
栗の花夫は己の支度のみ杉沢藍
花栗の香や石鹸の鳴る夜道杉田梅香
栗の花バックヤードの笑い声鈴木もま
ステロイド重ねし皮膚や栗の花鈴木由紀子
花栗の香や「みだれ髪」めくる指鈴白菜実
強情なつむじは二つ栗の花清白真冬
瞳そらす幼なじみや栗の花鈴野蒼爽
栗の花地球に惹かれ枝垂れけり鈴屋いるか
栗の花さらりと逝けぬ空の下主藤充子
昼餉あとは今日もけだるし栗の花砂山恵子
嫋やかな夫でありたし栗の花巣守たまご
米を研ぐリズム孤独や栗の花静江
栗の花あたり吹く風狼狽へて晴好雨独
火花散る鍛刀場や栗の花せいしゅう
山門の阿吽の像や栗の花seki@いつき組広ブロ俳句部
栗の花母が結婚した理由せとみのこ
栗の花クロマニヨンの消えた訳世良日守
栗の花猫は煙てふ新説せり坊
栗の花ざわめくや溺れる光全速
栗の花敗戦の夜の素振り百千波佳山
栗の花拒食のころの茶碗かな草夕感じ
栗の花内臓一つ減りし母外鴨南菊
栗の花雨降る頃か死の頃かそまり
花栗や押しても退かぬブルドッグ染野まさこ
栗の花ブラシに夫の髪一本空豆魚
栗の花法事の僧の生の顔空魚
栗の花満ちて体罰教師の喪ぞんぬ
栗咲ける庭や取壊しの通達たーとるQ
栗の花指でつつけば萎みそう平良嘉列乙
この恋に子宮は要らぬ栗の花高尾里甫
猛き風過ぎて立ちこむ栗の花高瀬小唄
栗の花エデンにイヴの一人きり高木音弥
創世の男女はだかや栗の花?田祥聖
栗の花もう会わぬ人の残像高嶺遠
リハビリの水着乾かぬ栗の花高橋寅次
栗の花男神映り込む水面高橋ままマリン
玉垣に遊女の名あり栗の花たかみたかみ
震災に崩れし谷や栗の花髙見正樹
三秒の後花栗と知る湿度高山夕灯
栗の花出張先の鹿の事故高山佳風
花栗のひとを攫うて夕間暮滝川橋
栗の花こぼれ配達人迷うたきるか
寝たばこと四畳半や栗の花卓女
眼窩底骨折うづく栗の花卓鐘
ミサイルの飛ぶ朝栗の花匂ふ多喰身・デラックス
曇天に尽くる石段栗の花竹田むべ
栗の花ノーブレーキのオバケ坂竹八郎
栗の花喪服の老姉妹笑ふ多数野麻仁男
死にたさを薬で矯むる栗の花多々良海月
みどりごは母の匂ひぞ栗の花だっく
ずる休みは二度目栗の花臭い立田鯊夢@いつき組広ブロ俳句部
童貞の不惑ふらふら栗の花立石神流
さびしさの咲きとどまらず栗の花立部笑子
羊羹を食んでながむる栗の花たなばたともこ
墓じまいの相談あり栗の花谷相
栗の花森の名残の吉祥寺玉家屋
宅地へと変はる畑や栗の花玉井令子
栗の花六十円も増す時給タマゴもたっぷりハムサンド
校庭に秘密を埋めて栗の花たまのねこ
人食いの昔話や栗の花玉響雷子
白き発泡の音弾ける栗の花玉響海月
栗の花駿馬は神となりにけり田村ヒロミ
血液はワインと豪語栗の花田村利平
栗咲きて今日は窯出し伊賀の里ダメ夫
栗の花月曜の香は絡みけり樽熊だん
花栗の郷黒人の義兄のハグダンサーU-KI
誘惑に甘さいらない栗の花ちくりん
命蠢くオールトの雲よ栗の花智同美月
心臓はここと波打つ栗の花千歳みち乃
栗咲く香白いシーツに重ね脚千鳥城@いつき組広ブロ俳句部カナダ支部
独り寝に夢魔忍び込む栗の花千葉睦女
断捨離始めました花栗垂るる千早安寿
禁欲の七日目花栗の微動彫刻刀
点滴の跡また増えし栗の花ちょうさん
栗の花笠打つ雨の東海道月石幸
子の眠り深くなりゆく栗の花月城龍二
大幣の祓ひわさわさ栗の花つくも果音
団地みな喜寿で傘寿で栗の花辻内美枝子
花栗やどうせ不採用の着信つちや海郷
伊邪那美の涙が栗の花なのか綱川羽音
花栗や吠えねば聡き犬だと云ふツナ好
ペット検査精検有りと栗の花椿律
嘘日記出すしかなくて栗の花翼つばさ
隠れ家を曝け出したり栗の花鶴富士
白波の寄せ来るごとく栗の花鶴見ちい子
栗の花怖い影へ匂い放てデイジーキャンディー
栗の花青き空から滴りて寧陪禰
栗の花想われニキビ潰す爪丁鼻トゥエルブ
栗の花黒々とくる能登の浪哲山(山田哲也)
胃薬の残る舌先栗の花てつねこ
青空に晒すメンタル栗の花電柱
この事件は痴情のもつれ栗の花でんでん琴女
会いたくもなき人に会ふ栗の花土井あくび
栗の花未だに売れぬ一軒家どいつ薔芭
栗の花男衆締むるだらり帯トウ甘藻
めばちこの貌が鏡に栗の花東京堕天使
矢じり探す畑へ香る栗の花峠南門
白バイの先導栗の花匂ふ藤白月
花栗や元結解けるごと散りぬ遠峰熊野
栗咲いて靴の中まで濡れているとかき星
栗の花あなたが頼りなんて嘘時小町
里親が見つからぬ猫栗の花とき坊
栗の花龍蜿蜿と木曽大工ときめき人
花火果て花栗の香のあるばかり常磐はぜ
石にあたるしっぽの名残り栗の花独星
栗咲く香鬼の祝言今宵なりどくだみ茶
鶏小屋は雄鶏ばかり栗の花戸口のふつこ
栗の花この尾根道が戦車道となりの天然水
ラテン語で迫る鳥来て栗の花トマト使いめりるりら
子に譲る妖怪図鑑栗の花とまや
三年生もレギュラー落ちや栗の花戸村友美
獣害の看板新たし栗の花豚々舎休庵
花栗のはや毬になる面構へとんぼ
幾度か戦禍潜りて栗の花内藤由子
栗の花遠き浜辺の砂の塔中島圭子
栗の花社務所の窓のぎぎぎ鳴り永田千春
栗の花暫しペン置く進路表中村あつこ
栗の花おとこを棄てる手相あり中村すじこ
牧場の牛糞高し栗の花那須のお漬物
我と犬触ろうとする栗の花夏雲ブン太
栗の花山はとほくに眺むもの夏湖乃
嘘ついた花栗いよよざわめいた夏椿咲く
花栗や放蕩もんも寄せ墓す夏雨ちや
草を食むポニーの歯音栗の花ななかまど
栗の花煙る旧姓に戻れない七瀬ゆきこ
栗の花介護保険証受け取りぬ七森わらび
栗の花ピアノのペダル音広げ名計宗幸
あの恋も若気の至り栗の花奈良素数
その奥に獣の気配栗の花成田麦
栗の花木霊の跡に響いた香成瀬ぽんぽこ
栗の花一人暮らしの母を看る南全星びぼ
幼な木の花嫁姿栗の花にえ茉莉花
栗の花阿修羅に細き腕腕腕西川由野
大叔父の止まぬ講釈栗の花西爽子
栗の花ゴリラの檻のがらんどう螺原トモ
何にでも同意する人栗の花西村小市
栗の花あの医者なんか胡散臭い西村棗
栗の花遡るほど墓丸く二重格子
重怠きラジオ体操栗の花新田ダミアナ
栗の花力尽くして落ちにけり庭野環石
真中より乾くタイルや栗の花暖井むゆき
北斎の壁画へ匂ふ栗の花布村柚子
家じゃない花栗の香に縛られて沼沢さとみ
空振りの中指の先に栗の花ねがみともみ
言い放ち宙浮く台詞栗の花根々雅水
脳髄を揺すぶるやうに栗の花ノアノア
踝のハチマキ痛し栗の花野井みこ
弟の犬歯眩しや栗の花濃厚エッグタルト
卓上の星占ひ吉栗の花野地垂木
花栗の馨り前世は破戒僧ノセミコ
栗の花だが勝手なことを言うな乃立喰烟
しずかに雨ざんばらなる栗の花野中苦泉
妻の内にて子や育つ栗の花野中泰風
午後休の誘惑栗の花匂ふ野々かおり
栗の花討死の如落ちており野原蛍草
栗の花けふ解体のジャングルジム登りびと
やまんばの役で頭に栗の花野間薫陶
栗の花や二勝二負と涙の子則本久江
混沌をえぐる三日め栗の花白庵
震度四不安ざわざわ栗の花波止浜てる
廃道の果ては墓所や栗の花橋本有太津
蝋燭捧ぐ若き僧侶や栗の花橋本こはく
老木に意気地をみたり栗の花蓮見玲
百態の翅の溺るる栗の花はせがわ水素
栗の花退職(死亡)の辞長谷機械児
水割りやドビュッシー愛でる栗の花長谷島弘安
誠意なき謝罪一礼栗の花葉月庵郁斗
栗の花高二の部屋に制汗剤パッキンマン
無駄話楽しい男栗の花八田昌代
栗の花栄えそびれしニュータウン羽奈あかり
蕎麦打ちの宿は故郷栗の花花岡淑子
湿っぽく身の上話栗の花花弘
夜に覆ひ被さる栗の花の香花咲春
栗の花嬌声とほくなりにけり花咲めだ香
栗の花天狗の鼻は千里嗅ぐ花南天あん
吹きあがる水のごとくに栗の花花はな
栗の花をり茫茫の屋敷跡英凡水
分数の割り算不思議栗の花花豆
後ずさる幻視の老爺栗の花花和音
花栗や煙草を探る指忙しはのん
栗の花坐骨神経手術の日浜友輔
鼓膜までべつとり花栗の暗香葉村直
栗の花弟猫のマーキング早川ひろこ
栗の花離るる星の匂ひけり林省造
兄弟でもらふ拳固や栗の花林眞亜紀
倶利伽羅峠肉塊暗く栗の花林山千港
花栗の窓や初潮の保健室原水仙
思い残すこともありけり栗の花原善枝
無呼吸に再呼吸待つ栗の花原田民久
いぢわるは気があるしるし栗の花ぱらん
大島の衿直す指栗の花播磨陽子
しつけ縫い母に習いし栗の花春あおい
笠石の崩落の跡栗の花晴田そわか
ショーケンに逢いてぇんだよ栗の花晴菜ひろ
栗の花止まらぬベルトコンベアー春野ぷりん
納骨の空は鈍色栗の花東原桜空
父伏せり知りて帰らず栗の花光散人
栗の花踏みてグランドゴルフへと比企野朋詠
雨の匂ひと見上ぐれば栗の花樋口ひろみ
栗の花喉に閊えるnの音菱田芋天
第十二皇女の歩揺栗の花ひでやん
栗の花皮膚科通いも六年目日向こるり
栗の花母に隠れて剃る産毛ひなた和佳
白髪の推定二十歳栗の花比々き
栗の花土蔵の闇に匂ひたりヒマラヤ杉
栗咲くや地層のごとき虹の旗141番
栗咲くや限界集落はあをし日吉とみ菜
遠太鼓の音やとほりくる栗の花平井千恵子
闇夜から頭痛の気配栗の花平岡梅
胃の透視終えて見上げる栗の花平岡花泉
雨雲をじゃらしきれずに栗の花比良田トルコ石
狼狽える脳みそ栗の花揺れる平野純平
父が子に子が父に問ふ栗の花平林晶子
先生また産休だつて栗の花平本魚水
栗の花咲いて再結成打診広瀬康
栗の花元安川に波濤なく弘中しかもり
「そそそんなこと」吃つてごめん栗の花広ブロ&;新蕎麦@摂田屋酵道
憎めない悪友みたい栗の花フージー
栗咲くや疚しく歪む記憶の日風慈音
昔日の秘め事嗅ぐや栗の花福川敏機
塗りたての鳥居うるうる栗の花福ネコ
栗の花呪文の解けるごと散りぬ福原あさひ
栗の花解剖実習終へてなほ福良ちどり
栗の花遺品整理は果てしなくふくろう悠々
栗の花自動車税の知らせ来るまろんママ
錦繍の纏足靴や栗の花藤色葉菜
こぬか雨しづかに錆びて栗の花ふじこ
ジーンズの股間の皺よ栗の花藤咲大地
栗の花またまだ恋をすると母藤田ゆきまち
栗の花ギプスに書いたメッセージ藤永桂月
亡き父の人を恋ふ文栗の花藤原涼
栗の花写経邪魔する生の匂い伏見レッサーレッサー
新妻の狸寝入りや栗の花藤雪陽
栗咲いて月光巣くう甘き瘡冬のおこじょ
栗の花心ゆくまで家出する冬野とも
「コロ」の字のうすれ今年も栗の花古川しあん
自販機の補充果てなし栗の花ふわり子
体幹を乱す抜歯や栗の花ペトロア
恐らくは魂胆ありし栗の花べびぽん
侍の下城する路栗の花茫々
来ぬ奴のタイムカプセル栗の花北欧小町
救急車のサイレンひづむ栗の花黒子
耳鳴りのささやく夜の栗の花星鴉乃雪
愛に似たものを愛して栗の花星乃ぽっち
弟は幼虫はかせ栗の花ほしの有紀
栗の花吸って三日月に届いた細川鮪目
腹の澱降りて栗の花も終わりポップアップ
花栗や隣に妻のいない夜堀卓
合宿所の精進飯や栗の花堀邦翔
隙間ない雲にゆさゆさ栗の花ぽんぽこぽんこ
「子無きは去る」笑ひ飛ばせり栗の花凡々
雲水の青き剃りあと栗の花前田冬水
この先も隠すときめき栗の花真喜王
ざわざわと傷をさわるな栗の花まこ@いつき組広ブロ俳句部
前に抱くリュックの重さ栗の花眞さ野
花栗や匣に納むる楽茶碗町田勢
頭上から匂い鞭振る栗の花松井酔呆
負けてあげればよかった栗の花煙る松井くろ
彼の女(ひと)は聴き上手なり栗の花松浦貴子
花栗や大動脈が解離して松高法彦
栗の花匂い白杖止まりけり松田慶一
能登線はとうに廃線栗の花まつとしきかわ
漆黒の何処にあらん栗の花松本牧子
こそばゆき雨の匂ひや栗の花まどけい
栗の花匂えば逸らす話題かなまほろば菊池
栗の花けふのなみだの匂ひとやまめばと
金の匂い銀の匂い栗の花毬雨水佳
道祖神髪に挿したる栗の花真理庵
父と子の襁褓を買へり栗の花丸山隆子
再来週までに立ち退く栗の花まんぷく
ひたひたと爬虫類館栗の花三浦海栗
前世では九尾狐(クミホ)だったか栗の花澪那本気子
山颪嗅覚砕く栗の花三日月なな子
詩で埋まる数学ノート栗の花帝菜
悪しき橋渡りて栗の花におう岬ぷるうと
花栗やちゃんぽん飲みの二日酔い水越千里
跡取りに病弱多し栗の花水須ぽっぽ
栗の花わたしも静かに役を終ふ光月野うさぎ
栗の花けふから君の姓となる満る
栗の花にほふ夜勤の引継ぎ書みつれしづく
透析室一瞬の無栗の花ミテイナリコ
トイレにも吾の居場所なし栗の花南方日午
栗の花香を残し散る憂き心皆川徳翁
おばあちやん笑つたゆらり栗の花看做しみず
掌にハムスター死す栗の花港のパン屋
先住の猫の爪跡栗の花源早苗
栗の花直線をひく漕艇部美村羽奏
終活の話あれきり栗の花宮井そら
栗の花女盛りを過ぎて今みやかわけい子
栗の花二階は父のこども部屋宮坂暢介
洛中に阿国参上栗の花みやざき白水
栗の花女であったのはいつか宮武桜子
花栗ゆさり村人の触れぬこと宮武濱女
栗の花保険の人の目が笑う宮本モンヌ
栗咲くや受け止めきれぬ苦言ありミラベル
嘔吐なる生きるからくり栗の花ミンコフスキー
潜水服脱ぐや栗咲く香漂ふ紫小寿々
星星の四方の広がり栗の花むらのたんぽぽ
痙攣の五キロ地点よ栗の花暝想華
栗の花地が歪なる能登の町恵のママ
砲弾の共振栗の花も散る目黒智子
栗咲くや鎮守の森は保存へと望月ゆう
神様のくせに癖字ね栗の花元野おぺら
曼荼羅の宇宙の果てや栗の花もふもふ
太陽に恋しているわ栗の花樅山楓
栗の花老猫抱え水をやる桃井ゆらら
人間の爪柔らかし栗の花桃園ユキチ
門外で教師喫煙栗の花森佳月
飼ひごろす恋の反芻栗の花森日美香
生きている毛むくじゃらなる栗の花森海まのわ
昨日今日明日も一瞬栗の花モリコリゴリ
トンネル抜けて左が実家栗の花もりたきみ
大木を船と見なして栗の花森田祥子
栗の花母は昔の住所言う森中ことり
辛いとは婚家に言へず栗の花杜乃しずか
手作りの「お守り」重し栗の花杜まお実
栗の花結界はほぼ五軒先森毬子
花栗や陽のあたらない恋に落ちもりやま博士
十までは鬼に匂いし栗の花もろ智行
栗の花彼の枕に顔埋め柳井るい
栗の花孤立や第五駐車場簗瀬玲子
靴とがる不動産屋や栗の花八幡風花
寝がへりの重きゆふべよ栗の花山内彩月
栗の花昨夜の粗相おもいだし山尾政弘
栗咲けり時間管理帳は白紙山河穂香
髪切ろう花栗を振り返る道山口絢子
湯治場の見飽きた欄間栗の花山口一青
眠さうな太陽栗の花匂ふやまさきゆみ
前立腺やや腫れてをり栗の花山里うしを
栗の花一直線に実る恋山育ち
栗の花夜を膨らむ血の重さ山田蚯蚓
栗の花抗がん剤はあと二回唯果
ここ女湯になるってよ栗の花結壱隆月
新任の教師の噂栗の花柚木みゆき
風は樹のこゑを運びて栗の花遊羽女
逆夢のふくらふくらや栗の花有野安津
花栗の匂いの先の黄泉の国宥光
栗の花媚薬の歌の調子良しゆすらご
栗の花夕暮れの雨父が逝く夢散人
髭伸びし父へ吹く風栗の花湯屋ゆうや
花栗や二十歳の老いた冷蔵庫ゆるランナー
朝一の深呼吸あっ栗の花陽子
段畑のむかふも空き家栗の花陽光樹
白亜紀の風は化石に栗の花羊似妃
栗の花鎮守の杜の婚終わるヨーダ鍵
ママといふ渾名きらきら栗の花横縞
裏切りを許しに行けば栗の花吉岡幸一
栗の花新妻連れて孫が来たよしだばあば
栗の花落つるひと夜の愛唱歌吉田わさび
監督の下手なノックや栗の花吉野川
合意なく触れてくれるな栗の花吉村おもち
朝刊の雨の匂いや栗の花楽和音
鬼ごっこひとりが消えて栗の花らりっく
早熟は栗の花の所為と修司らん丸
栗の花不良と悪は違ふだろリーガル海苔助
まず鼻が確と捕ふや栗の花理佳おさらぎ
湯の町と聞かされて下車栗の花柳絮
花栗の匂ひ繁きが初逢瀬良俗倭人
栗の花縄文人の逢瀬かな連雀
栗咲いて門に掛かりし女文字朗子
警官を待ちたる路傍栗の花ろまねす子
栗の花の匂い微かに湿りおりわたなべすずしろ
村すべて爺婆ばかり栗の花渡邉竹庵
皺知らぬ脳のにほひや栗の花亘航希
花栗や父のにほひを解く櫃笑笑うさぎ
水切りのはねて対岸栗の花あ・うん
窓開けて徹夜の課題栗の花青井晴空
あたまやみ栗の花の香むせる夕あおのめ
変わらぬはもののあはれや栗の花赤目作
栗の花二階の窓を開け放つあかり
匂い立つ逢瀬の後に栗の花空き家ままごと
始発待つベンチに堕つる栗の花淺井翠
栗の花雨のにおいの混じりたる朝雲列
栗の花香りは刺激偏頭痛麻丘澪
栗の花匂いし宮よ浮舟よ朝日雫
長雨にずしりと栗の花にほふあじさい卓
ふぅわりと栗咲く丘にシェアハウスあじさいパスタ
栗の花今日もあしたも服を干すアシツノカラ
いやらしいこと一つ二つや栗の花あすか風涼子
無縁墓散るや非情の栗の花梓秋明
栗の花祖谷温泉に薫る雨あすなろの邦
振り返るこの香何処から栗の花愛宕仁
栗の花バス停までのあと二キロ新子熊耳
ままごとの薬の役目栗の花渥美こぶこ
淡黄色の匂ふ借家や栗の花跡部榮喜
栗の花十代男子狼狽し数多未完
雄大に獅子の毛振りか栗の花あまねくみぞれ
精米所跡栗の花賑やかにアマリリスと夢
サンノゼに旅立つ息子栗の花網野睦
栗の花今日は土曜日ランニング網野れいこ
栗の花朝一番の道の駅雨霧彦@木ノ芽
筋トレの帰りに栗の花探すあややaya
栗のはな童が祠を覗きをりあらあらかしこ
栗の花ゆかしき雌花二つほど亜
隠れ家へ続く山道栗の花亜来真留美
たっぷりと雨を吸取り栗の花あらかわすすむ
おばけの髪ふにょふにょゆれて栗の花杏子梅
栗の花やがて実のなる恋となれ荒星笑石
栗の花重き匂ひや熱測る有本としを
軋む音ワイパに積もる栗の花阿波オードリー
栗の花部屋は片付けかけたまま飯田淳子
栗の花自分のしっぽ追う仔犬飯沼深生
山羊の背の栗の花飛ぶ野原かな池田悦子
栗の花こぼるる小道空は碧池田炭
浄土へと誘う匂いか栗の花石馬勢至
雨続き阿夫利嶺見えず栗の花石垣葉星
この風を花栗と知る二十五歳石垣エリザ
一村をうずめ鎮める栗の花石倉啓子
朝靄に朦朧体の栗の花石の上にもケロリン
栗の花屋根を覆て主となる和泉明月子
花栗や轍が轍消す歴史和泉攷
思春期の猛り眩しき栗の花市川りす
老いてなほその香に惑ふ栗の花いつかある日
栗の花青き匂いは朽ちてなお樹魔瑠
はしゃぎたる栗の花遠巻きに見る一久恵
花栗は喩へばたましひのにほひ伊藤映雪
きのふけふ重き頭や栗の花伊藤順女
卒婚はらくらく二年栗の花いなだはまち
袖の紙押さふる袂栗の花犬山裕之
こともなく日々過ぎゆきし栗の花井上幸子
栗の花あき家の背戸のささくれて井上鈴野
栗の花初めて聞きし硬化症井上右彩
栗の花五年日記を読み返し今井みどり
穂先まで陽光集め栗の花今井モコ
空見上げ仔犬戸惑ふ栗の花今乃武椪
青臭い夢は捨てよと栗の花今林快波
主は無きか高みに匂う栗の花今村ひとみ
むせかへる花栗の下へ車椅子芋づる
栗の花かすかに匂ひて見えし屋根彩人色
丑の刻花栗匂ふ百度石岩清水彩香
寝苦しや雨沛然と栗の花岩田勇
栗の花ぽろぽろ落つる袂かな上野徹
雨の間に羽虫誘うや栗の花魚氷橙
急な坂登り墓まで栗の花うさぎと
通学路こぼれ落ちそう栗の花うちだまみ
栗の花血を喀く愛猫むせかえり内本惠美子
郷の山相も変わらぬ栗の花越後縮緬
道急ぐ授業参観栗の花榎本奈
もの忘れ外来の庭栗の花縁穐律
縄文の欠片土器栗の花遠藤千草
牛舎前父植えた木や栗の花遠藤倫
塵垢のにほふがごとく栗咲けり旺上林加
栗の花未だ実らぬ逆上がり大越総
栗咲く香雨上がらぬかキューガーデン大久保加州
栗の花ちゃんと話せばわかるひと大野美波
栗の花弁当広げ打ち仰ぐ大原妃
一瞬で車窓塞ぐや栗の花大原雪
もういいかい鬼の子の上栗の花大矢皓一郎
栗の花縄文の村巨木立つ岡崎未知
数多雄花雌花へ捧ぐ栗の花岡田明子
補聴器を嫌がる母よ栗の花おかだ卯月
栗の花夫の命日小ぬか雨岡れいこ
銀鼠の空呼び揺るる栗の花沖原イヲ
栗の花踏まぬよに行くリサイタルおざきさちよ
人通り少なき町の栗の花お品まり
点滴の落つるを見おり栗の花小野ぼけろうじん
園児らの歌声すぎて栗の花おひい
栗の花ベリーダンスの臍ピアスおぼろ月
栗の花慰めを捨て手を握る械冬弱虫
栗の花なぜと問いたいことばかり海堂一花
眼耳足衰えし吾に栗の花カオス
分け入れば叢林昏し栗の花案山子@いつき組広ブロ俳句部
一人旅車窓溢れる栗の花影夢者
産土は限界集落栗の花風花まゆみ
垂れ込むる雨雲の下栗の花片岡明
花栗や十五のせがれは無口花鳥風猫
編み込んだ花栗伝ふ雨雫勝瀬啓衛門
花栗やけふは床屋にでも行くかかぬまっこ
週二度のゴミ回収日栗の花カバ先生
栗の花リストカットの白き腕花星壱和
古屋敷人影無くて栗の花亀井汀風
栗の花苑に稀なる虫図鑑亀の
栗の花ベビーカーの子眠りをり加山シンゴ
払暁の窓辺に花栗匂いけり加裕子
揉み上げの青き剃り跡栗の花刈屋まさを
堤防へ浸水痕に栗の花川端芙弥
栗の花4・5キロの完歩証川村湖雪
栗の花自給自足の禅寺や川村昌子
アラビアンナイト聞かせて栗の花菅野まこ
登山後の露天の風よ栗の花紀杏里
縄文の香り鮮鮮栗の花木口まり子
栗の花仰ぎてみれば青い空岸本枝光
栗咲くや裾たくしあけ足湯まで岸本元世
バス待ちの峠に匂ふ栗の花酒暮
噂する隣の人や栗の花北野都留
栗の花頁繰る手の青白き木下桃白
闇に降る栗の花の香怖れけり木原洋子
アルゲリッチのバッハ車窓は栗の花木村かわせみ
車止掠れた墨痕栗の花木村修芳
坂上る転居の我が家栗の花木村波平
無人家の屋根に積もれり栗の花木元紫瑛
栗の花幼馴染の長電話鳩礼
リカちやんと呼ばれし老女栗の花杏乃みずな
対岸に匂いし栗の花の白清鱒
トニックをつけ大人びて栗の花銀将
風絡め宵闇絡め栗の花銀長だぬき
花栗の香の満つる夜の君の背なくぅ
栗の花我にも若き時在りし鯨之
山道の陰を選びて栗の花國吉敦子
祖母逝きて光眩しや栗の花窪田睡鯨
栗の花疲れて帰る一年生熊本与志朗
栗の花八十路の母の帰京旅ぐりぐら京子
あの頃の妻は何処へ栗の花栗子
偏頭痛月曜の朝栗の花くりはら風花
静けさや原爆ドーム栗の花来ヶ谷雪
ボランティアの寡黙溢るる栗の花久留里61
ひと駅を歩いて知るや栗の花黒瀬三保緑
命日や栗の花香る道祖神黒田良@しろい
雨の庭誕生木の栗の花桑田栞
雀きて香を頬張るや栗の花景清華
栗の花雨音寂し軒の下家古谷硯翠
栗の花風吹くごとにこぼれおり源氏物語
病室の窓にうねるや栗の花コウ
クイックルワイパーを干し栗の花紅紫あやめ
葬いに行く道すがら栗の花柑たちばな
停留所臭気沈殿栗の花こきん
ウイルス感染の警告音や栗の花小笹いのり
栗花や隣家の屋根にシャトル二個虎八花乙
栗の花匂ひ絡まる一輪車小林昇
点滴の叔母の寝顔や栗の花小林のりこ
保険屋の車へふあさと栗の花こま
うら若き僧の説法栗の花こま爺
花栗や立入禁止の先の家駒村タクト
栗の花夜に溶け込む青の香よこむぎ
高慢な女が嫌ふ栗の花小山晃
落選のポスター虚し栗の花西條晶夫
傷心の日は遠回りする栗の花西條恭子
すれ違ひざまの会釈や栗の花さいたま水夢
廃村を守る地蔵に栗の花さいとうすすむ
望遠の構図の手前は栗の花齋藤鉄模写
行く先を決めず散歩へ栗の花齋藤方南
栗の花匂う古道や一里塚坂田貞雄
近眼のぶわっと眩し栗の花佐々木ヨウジ
栗の花小布施はさぞや街中にさざんか
花栗や目の前過ぐる少年等砂月みれい
曲り家の厩を包む花栗の香佐藤俊
あの人も丸くなつたな栗の花真井とうか
クラクション鳴き栗の花と見送り三水低オサム
栗の花初めて見たる旅二日三泊みなと
待合の姥よくしゃべり栗の花志きの香凛
青年の祖父の写真よ栗の花獅子蕩児
栗の花陽を撥ね五家の能舞台清水明美
白き栗の花防護柵の歪み釋北城
三山の聳えし塚と栗の花柊二
這って行く母の厠に栗の花秀道
石垣に落ちて匂ひぬ栗の花朱康君
熊注意!満開匂う栗の花珠桜女絢未来
絶え間なく噂話来栗の花じょいふるとしちゃん
雨音や捲るページの栗の花松楓凪紗
栗の花ほのかに匂う呼び出し音白井佐登志
大量の鼻血と悪寒栗の花白井百合子
誰か来し月夜に揺れる栗の花白河夜船
花栗や音色も青き新部員四郎高綱
栗の花腥気海馬を疼かしむ白猫のあくび
似た顔の並ぶ賀席や栗の花神宮寺るい
足の重き検診前かな栗の花深仲夏
花栗やパッカー車行く老いの村新濃健
訪ねきて落ち着かぬ友栗の花杉尾芭蕉
うねり増す我が黒髪や栗の花涼風亜湖
炭酸泉の生ずる音や栗の花鈴木秋紫
栗の花匂う杜へと鳴らす砂利素敵な晃くん
戦場のモノトーンの街栗の花諏訪次郎
温けし慈雨のにほひか栗の花青児
栗の花匂うベンチに鬱々と勢田清
雨濡れた卒塔婆の香か花栗か青峰桔梗丘
栗の花雨垂れに聞くショパンかな関根洋子
獣みち過ぎて沼地の栗の花千@いつき組広ブロ俳句部
栗の花行けども行けども栗の花惣兵衛
風向きの変わる真夜中栗の花そうり
隊列を離れて香る栗の花駄詩
にわか雨のシャワー浴びたり栗の花大
遠目にも睦むかのごと栗の花大ちはる
栗の花人指し指の絆創膏太平楽太郎
栗の花苦虫噛んで独り言ち高上ちやこ
栗の花逃れるやうに登校すだがし菓子
見届けし大往生や栗の花高橋基人
洋館の絵画教室栗の花高橋ひろみこ
学生多しバス酔いの栗の花滝上珠加
諸鳥のさざめき栗の花にほふたけぐち遊子
縄文の生き証人や栗の花武田豹悟
行く人の喜怒哀楽よ栗の花武部敞子
栗の花いつぽ歩いて無理でしたたけろー
栗の花無慈悲な雨のやはらかさ糺ノ森柊
むせかえる生きろ生きろと栗の花蓼科嘉
栗の花母の興味の全部失せ田中勲
雨傘にへばりつきたる栗の花田中紺青
風吹いて知る裏庭の栗の花谷口あきこ
栗の花豊かな実り父母有りて谷口美奈子
栗の花旅も終わりの藤村生家谷町百合乃
カラメルの焦げる色合い栗の花種田山頭火マーク2
ちちははの眠れる山や栗の花たむらせつこ
湯上がりの火照りしずめや栗の花田村モトエ
三輪車漕げぬ男の子や栗の花知恵さん
風湿りふくらむ匂ひ栗の花智泉由紀子
栗の花口で息する通学路千葉咲希
花栗や立て掛けてある猫車ちゃあき
憂鬱な引越し作業栗の花塚本隆二
運命は斯のやうに降る栗の花月岡方円
栗の花落つみづいろの雨具買ふ月待小石
栗の花夕暮れの古寺塀に猫辻ホナ
空開く奥本殿の栗の花辻栄春
御身の棘かくしとおせよ栗の花椿カナ
譲り合う一本橋に栗の花ツユマメ@いつき組広ブロ俳句部
栗の花ブラックボックスの恐怖内田隆
跡継ぎのいない放棄地栗の花天陽ゆう
栗の花見るためだけにまわり道ぴょんぴょん侍
栗の花薄暮の遺跡ただよひぬ苳
がやがやと日本語クラス栗の花道見りつこ
花栗の香の濃く強く漕ぐペダルDr.でぶ@いつき組広ブロ俳句部
下草を払わずにいる栗の花どこにでもいる田中
栗の花垂れて北斎なほ画くとしなり
蜜漬けのナッツは苦く栗の花杼けいこ
トップには向かないわたし栗の花とはち李音
輪唱の声いつまでも栗の花斗三木童
栗の花鍛錬しなきゃまだ青い富田涯現(富田松夫)
栗の花良きも悪しきも小さき事友@雪割豆
栗の花雨の匂いを先導す登盛満
雨近し栗咲く小径駆け抜けるとよ
栗の花すえた臭ひの男子寮豊岡重翁
ダム底へ埋もれし村の栗の花豐田雄二郎
転職は合っていたはず栗の花内藤未来仁
くりかえし聴いた音楽栗の花なかかよ
震えてた震度六強栗の花中十七波
蒼天の荒野にたわわ栗の花中島葉月
縄文の本能匂ふ栗の花中島走吟
保育園行かぬと泣けり栗の花なしむらなし
ゼロ戦の飛ぶ映像や栗の花夏目坦
知りつくせば遠のいてく栗の花菜々の花畑
幽霊のやうににほふや栗の花⑦パパ@いつき組広ブロ俳句部
バッグには折りたたみ傘栗の花名前のあるネコ
まといつく栗の花の香テスト前なみ夢めも
栗の花落ちて雨雲広がりぬ西尾照常
路線バス乗客おらず栗の花沼宮内かほる
香気ふかし栗の領空栗の花野口雅也
丁字路を曲がり損ねて栗の花野点さわ
栗の花一房揺れて雨模様のの?楽部
清流や山際むせぶ栗の花白雨
一時間待ちのバス停栗の花白山一花
崖下ゆ臭ひ這い来る栗の花蜂鳥子
栗の花落つバス停への近道浜けい
晴れの日の列席かなわず栗の花早川令子
栗の花垂れ込む雨を滴らす林田リコ
花栗の香の立つ朝の片頭痛原島ちび助
増築の施設は平屋栗の花葉るみ
鈍色の空の吐息か栗の花はれまふよう
茶粥待つ庭に花栗食欲減パンドラみかん
山すそに栗の花咲く小学校桧扇さと子
振り乱す鬼女の蓬髪栗の花東嶋大山
タクシーの屋根に乗り来る栗の花東の山
夜半の風苦しき夢や栗の花東山たかこ
息とめて抜ける花栗たるる径樋口滑瓢
校舎裏譜面の上に花栗落つ火車キッチンカー
テラ覆ふ核の脅威や栗の花ひすい風香
湯治場に噴き零るるや栗の花美竹花蘭
雨音は受話器の向こう栗の花妃可
老いてなお味噌作る母栗の花姫川ひすい
車椅子押す手も老いて栗の花ひめりんご
近道は墓地の裏手や栗の花平井由里子
抜け道の関所の如く栗の花平林政子
花栗やスグソコ男子寮の札比良山
家辞して夜陰ににおう栗の花昼寝
すずろなり毘沙門坂に栗の花廣田惣太郎
縄文の乙女見上げる栗の花琵琶京子
栗の花あのガレージの奥らしき琵琶湖のおばさん
あの毬は山姥の髪ぞ栗の花風泉
栗の花古寺守る留守居役FUFU
くよくよとする夜なりけり栗の花深町明
栗の花耕作放棄の畦の道深蒸し茶
漢らの傅く女王栗の花福井桔梗
立ち漕ぎのサドル消え行く栗の花福田みやき
栗の花みつけし雌花の小さきこと河豚ふく子
生家にはゆかぬと決めて栗の花藤井かすみそう
匂い飛び雨しょぼしょぼと栗の花藤丘ひな子
栗の花十五の君は反抗期藤本だいふく
正論を吐く若者よ栗の花藤原訓子
今は昔飢渇の郷の栗の花布施無門
笠間の地かほりぶはつと栗の花二見歌蓮
栗の花牝牛が一つ二つ三つ船橋こまこ
少年は何に抗ふ栗の花冬島直
栗の花だからあなたは甘くなるぶるーふぉっくす
独りゆく撮影地にて栗の花古澤久良
定年はいつ花栗の声聞こゆ古庄萬里
栗の花窓開け眺む白の波古谷芳明
栗の花母にかぶせる吾の帽子碧西里
栗の花匂い背にして畑仕事望月
背戸道を猫と歩けば栗の花ほうちゃん
茶室へと躙り口まで栗の花星影りこ
古民家に溢れ溢れて栗の花細井博文
栗の花若い尼僧が住まいける細川小春
栗の花開く山路の静けさよ盆暮れ正ガッツ
豊作を祈る幣かな栗の花凡狸子
壁朽ちし土蔵栗の花繚乱正男が四季
遠回り匂ひ避けりて栗の花松井貴代
傍らにぽつくり地蔵栗の花松岡重子
代わり映えせぬ毎日や栗の花松岡玲子
母の忌の夕べの墓参栗の花松平武史
栗の花自我の目覚める子の空気抹茶子
栗の花風吹きすさぶ廃校舎松原隆雄
屋敷林そはそは栗の花の頃松本裕子
むくむくと栗の花立つ飯野山まつんも
栗の花熊野古道を先導すまりい@木ノ芽
栗の花空手の道着湯気放つまるにの子
人並みに来し反抗期栗の花慢鱚
栗の花遠くからでも気づきたり三浦ゆりこ
低気圧ひきずる頭痛栗の花三重野とりとり
溢れ出る枝元は闇栗の花澪つくし
栗の花佐伯祐三観る奇跡三上栞
湯煙に花栗混じる有馬の湯三木崇弘
二人にて最後の句会栗の花三茶F
『罪と罰』背はしわくちゃに栗の花巳智みちる
栗の花匂ふ回覧板厚しみちむらまりな
しまひ湯の窓に匂へり栗の花満生あをね
栗の花ピアスの穴を増やす夜みづちみわ
歳重ねなすこともなし栗の花ミツの会
待つ人の居る家かへる栗の花南風早々
陽あたりの悪き長屋や栗の花みなみはな
栗の花白い独りの通学路みのり甘子
通り風鳥居の奥に栗の花見屋桜花
白々と夜の触手よ栗の花宮部里美
栗の花見れば昔を語る父美山つぐみ
病室はA型ばかり栗の花妙
野仏や息しづかなる栗の花みらんだぶぅ
母帰り匂う靴底栗の花ムーンさだこ
ライオンをじやらすさながら栗の花麦のパパ椋本望生
栗の花部活帰りの車列の荷無弦奏
逢うことをやめて気だるし栗の花霧想衿
葬列のかすかな乱れ栗の花村瀬っち
栗の花つかむ尾もなく消えたくて村先ときの介
栗の花夫を見守りお粥炊く村のあんず
薄雲り沈む匂いや栗の花目黒千代惠
豆柴の子犬ころころ栗の花メレンゲたこ焼き
古傷の痛みの記憶栗の花茂木りん
心音の無くなりし日の栗の花望月朔
花栗や朽ちた門扉に狭き家momo
ゆううつな午後匂ひ濃し栗の花桃香
別荘の小窓を撫でる栗の花百瀬はな
借り手なき貸駐車場栗の花ももたもも
耕運機操る女や栗の花森の水車
持久走ゴールは近し栗の花諸岡萌黄
焼津辺の句碑に重なる栗の花焼津昌彦庵
見えねども続くミャーミャー栗の花八重葉
栗の花たどりつかない市の庁舎山羊座の千賀子
ほろ酔いによろけて笑う栗の花薬膳容子
累代の城主の墓所や栗の花野州てんまり
栗の花母へ我流の観音経安田伝助
空は青眩いほどの栗の花やのかよこ
秘密基地どこかで匂ふ栗の花山川腎茶
ままごとの大もりうどん栗の花山口笑骨
通学路駆け下る先栗の花山口香子
いきものの匂いがすると栗の花山口愛
旅先は至る所に栗の花山崎かよ
栗の花訪ね独居の雀卓へ山田季聴
栗の花今日は両家の顔合せやまだ童子
散歩道ここと覚えし栗の花山田はつみ
雲垂れてうつろに匂ふ栗の花大和杜
青臭し山道匂う栗の花山薔薇
旅行者を迎ふ雨天の栗の花山彦一水
香にあらずやはり臭なり栗の花山辺酔羊
被災地の道並ぶ家具栗の花山本たか祥
黒猫の魔法の杖の尾栗の花ヤン子
栗の花風を捉ふる触手かな雪音
3限を終えてバイトへ栗の花湯湯婆
夢はるか青年栗の花を踏む宙美
栗の花牧野博士の本が見たい夢見月
吐く息のまとわりつくや栗の花緩木あんず
栗の花学祭明けの石畳陽花天
廃屋の屋根に被さり栗の花横田信一
耳打ちの女子ひそひそと栗の花横浜J子
後悔の山を降りるや栗の花吉田蝸牛
限界集落栗の花満開吉武茂る
メデゥーサの髪めく異臭栗の花四葉の苦労婆
頭上より匂ひのしずる栗の花余田酒梨
立札は「入るべからず」栗の花よみ、ちとせ
栗の花振り返りたくない君よリコピン
馬の尾の垂れてなびくや栗の花ルーミイ
硫黄の香出湯たどれば栗の花麗詩
栗咲くや遠方の友見舞う旅わかなけん
休日も気ぜわしい日々栗の花わきのっぽ
夜景にて星座を喰らふ栗の花和光
湿気た庭清める尼と栗の花わたなべいびぃ
坂道を猛ダッシュして栗の花渡辺香野
ゆさゆさと匂ひ湧き立ち栗の花渡邉花
実り待つ小布施は白し栗の花渡辺陽子
反抗期をただ見守る栗の花渡邉わかな
石段に息精張るは栗の花和の光子
- 夏井いつき先生からの一言アドバイス
-
●俳号のお願い二つ
①似たような俳号を使う人が増えています。
俳号は、自分の作品をマーキングするための印でもあります。せめて、俳号に名字をつけていただけると有り難く。共に気持ちよく学ぶための小さな心遣いです。②同一人物が複数の俳号を使って投句するのは、堅くご遠慮下さい。
「いろんな俳号でいっぱい出せば、どれか紹介されるだろう」という考え方は、俳句には馴染みません。丁寧にコツコツと学んでまいりましょう。※同一アドレスからの投句は、同一人物と見なしております。
●俳句の正しい表記とは?
- 子や孫と 佛まみえる 栗の花葉句生
- 栗の花 にてもにつかぬ 実へ変化原澤君子
- 咲き蕾 栗の花感じ ひたりたる春風
「五七五の間を空けないで、一行に書く」のが、俳句の正しい表記です。まずは、ここから学んでいきましょう♪
●兼題とは
- 初夏や浅瀬を急かす地元の子片桐洋
- 麦秋やざわわざわわと雀の蜂起岩清水星斗
- 菜の花やふわり感じる温かさ田中善美
- 銀輪の列踏み散らす柿の花凪ゆみこ
本俳句サイトでは兼題が出題されています。今回は、季語「栗の花」での募集でした。次回の兼題を確認して、再度挑戦して下さい。
●季重なり
- 栗の花咲く 夏の序章を告げる 優しい香り足立清人
- 蝶舞いて香りに溺れし栗の花翡翠詩憶
- 頬に風初夏のにおいと栗の花青空舞華
- 何を呼ぶ夏虫迷い栗の花龍義
- 陽と若葉山に香るは栗の花お寺なでしこ
- 春の歌芽吹かせながら栗咲くよ神宮寺真桜
一句に複数の季語が入ることを「季重なり」といいます。季重なりはタブーではなく、高度なテクニック。季重なりの秀句名句も存在しますが、手練れのウルトラ技だと思って下さい。まずは「一句一季語」からコツコツ練習していきましょう。「栗の花」以外のどれが季語なのか、歳時記を開いて調べてみるのも勉強です。
●類句例
- 強風に歌舞伎て毛振り栗の花ANGEL
- 花栗や歌舞伎役者の毛振りぶり垣岡凡才
- 栗の花あの人のドレッドヘアに似て小林弥生
- 栗の花ドレッドヘアごともじゃもじゃ円美々
- 長老はドレッドヘアー栗の花伊予の大督寺
- 少年のドレッドヘアー栗の花毛利尚人
このような類句例を、データとして自分の中に蓄積していくことも、凡人の沼を回避する具体的なトレーニングになります。
●季語深耕
今回は、取り合わせたフレーズは秀逸なのに、季語が動くのではないかという句が多くありました。
独特の臭いを取り合わせの接点とするのであれば、「栗の花」ではなく「椎の花」でも成立するのではないか。切たる思いを重ねたいのであれば、むしろ「ヒヤシンス」あたりの方が奥行ができるのではないか。そんな句も多かったのです。
選ばれていない、ご自身の句の中には、推敲によって蘇る句がかなりあるはずです。客観的な目でチェックしてみましょう。
お待たせしました! 5月の兼題「栗の花」の結果発表でございます。今回もたくさんのご応募ありがとうございました。「よく閃くよなぁ」というのが個人的な感想です。皆さんの俳句に対する想い、愛する気持ち、伝えたい心に触れられた気がします。夏井先生からのアドバイスも必見です。7月の兼題「河童忌」もふるってご応募ください。(編集部より)